説明

機能材料の積層方法及びシート状構造体

【課題】 バインダを用いずに、シート状構造体の表面上に機能材料を積層させる機能材料の積層方法及び機能材料が積層されたシート状構造体を提供する。
【解決手段】 機能材料の積層方法として、W/O系界面重合法では、シート状構造体を水溶性モノマ水溶液又は水溶性ポリマ水溶液に含浸させた後、油溶性モノマを溶解させた有機溶媒の中に浸積させ、水溶性モノマ又は水溶性ポリマと油溶性モノマとを重合させる。また、O/W系界面重合法では、シート状構造体を油溶性モノマを溶解させた有機溶媒に含浸させた後、水溶性モノマ水溶液又は水溶性ポリマ水溶液の中に浸積させ、水溶性モノマ又は水溶性ポリマと油溶性モノマとを重合させる。また、ポリイオンコンプレックス法では、シート状構造体を多価金属陽イオン水溶液に含浸させた後、ポリアニオン水溶液中に浸積させ、多価金属陽イオンとポリアニオンとを結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、不織布等のシート状構造体にマイクロカプセル、多孔質体等の機能材料を積層する機能材料の積層方法及び機能材料が積層されたシート状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、不織布等のシート状構造体に、マイクロカプセルや、活性炭、ゼオライト等の多孔質体といった機能材料を積層し、シート状構造体を高機能化する試みが活発に行われている。例えば、マイクロカプセルが積層されたシート状構造体は、マイクロカプセルに芯物質として発色剤、農薬、香料、殺虫剤等を内包させることにより、感圧複写紙、徐放性農薬シート、芳香紙、害虫忌避シート等に応用されている。また、多孔質体を積層させたシート状構造体は、多孔質体に触媒、酵素等を担持させて、自動車用触媒、バイオセンサ等に応用されている他、環境浄化分野において、バイオフィルタ、エアフィルタ、水処理フィルタ等に応用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−263931号公報
【特許文献2】特開2000−108509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、シート状構造体に機能材料を積層する方法としてはバインダによる塗工法が用いられていた。しかしながら、バインダを用いるとバインダがその機能材料の表面を覆ってしまい、その機能が十分に発揮できないといった問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、バインダを用いずにシート状構造体に機能材料を積層する機能材料の積層方法及び機能材料が積層されたシート状構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係る機能材料の積層方法は、シート状構造体を水溶性モノマ水溶液又は水溶性ポリマ水溶液に含浸させた後、油溶性モノマを溶解させた有機溶媒の中に浸積させ、上記シート状構造体の表面上で、上記水溶性モノマ又は上記水溶性ポリマと上記油溶性モノマとを重合させる。
【0007】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る機能材料の積層方法は、シート状構造体を油溶性モノマを溶解させた有機溶媒に含浸させた後、水溶性モノマ水溶液又は水溶性ポリマ水溶液の中に浸積させ、上記シート状構造体の表面上で、上記水溶性モノマ又は上記水溶性ポリマと上記油溶性モノマとを重合させる。
【0008】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る機能材料の積層方法は、シート状構造体を多価金属陽イオン水溶液に含浸させた後、ポリアニオン水溶液中に浸積させ、上記シート状構造体の表面上で、上記多価金属陽イオンと上記ポリアニオンとを結合させる。
【0009】
また、本発明に係るシート状構造体は、上述した機能材料の積層方法によって機能材料が積層されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る機能材料の積層方法によれば、バインダを用いずにシート状構造体に機能材料を積層することができる。また、本発明に係るシート状構造体は、バインダが用いられていないため、積層された機能材料の機能を十分に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、バインダを用いずにシート状構造体に機能材料を積層する方法について説明するものである。なお、シート状構造体としては、紙、不織布、無機繊維シート、布等が挙げられ、機能材料としては、マイクロカプセル、多孔質体、ファイバ、膜が挙げられる。
【0012】
本実施の形態では、シート状構造体(以下、単に「シート」という。)に機能材料を積層する方法として、界面重合法とポリイオンコンプレックス法とを用いる。このうち、界面重合法は、水溶性モノマ又は水溶性ポリマと油溶性モノマとを水と有機溶媒との界面で重合させるものである。一方、ポリイオンコンプレックス法は、ポリアニオンと多価金属陽イオンとが静電相互作用により結合し、ゲル膜が形成される性質を利用するものである。
【0013】
まず、界面重合法について説明する。界面重合法にはW/O系界面重合法とO/W系界面重合法とがある。
【0014】
W/O系界面重合法では、まず、シートを水溶性モノマ水溶液又は水溶性ポリマ水溶液に含浸させる。次に、有機溶媒中に水溶性モノマ又は水溶性ポリマが含浸されたシートを浸積させ、室温で所定時間静置して、水と有機溶媒との界面をシート表面上に形成させる。その後、この有機溶媒中に、油溶性モノマを同じ有機溶媒に溶解させた油溶性モノマ溶液を添加し、室温で所定時間静置して、シート表面上で界面重合反応を行わせる。最後に、使用した有機溶媒でシート表面を洗浄し、室温で乾燥させる。この結果、機能材料が積層されたシートが得られる。例えば、水溶性モノマとしてエチレンジアミンを用い、油溶性モノマとして二塩化テレフタロイルを用いた場合、シートに含浸されたエチレンジアミンのアミノ基と有機溶媒に溶解された二塩化テレフタロイルのカルボニル基とのアミド結合により、シート表面上に機能材料が積層されているものと推測される。
【0015】
水溶性モノマの最終濃度としては、1.25重量%乃至25重量%の範囲が好ましい。なお、用いる有機溶媒により最適な濃度は変化するが、濃度が高すぎると積層される機能材料が厚くなり、シートから剥離してしまうため、機能材料がシートから剥離しない濃度を選択するとよい。また、最終濃度が1.25重量%未満では、機能材料は積層しない。
【0016】
水溶性ポリマの最終濃度としては、5重量%乃至25重量%の範囲が好ましい。25重量%を超えると、水溶性ポリマ水溶液は、粘度が高くなるためシートに十分に含浸されず、機能材料は積層しない。また、5重量%未満においても機能材料は積層しない。
【0017】
油溶性モノマの最終濃度としては、0.25重量%乃至12.5重量%の範囲が好ましい。ただし、油溶性モノマとして酸塩化物を用いた場合には、塩酸のような副生成物が生じるため、0.25重量%乃至0.5重量%が好ましい。
【0018】
なお、有機溶媒中には、反応を促進する反応助剤として界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は非イオン性で親油性の高いものが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ソルビタントリステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、グリセロースモノステアレート、グリセロースモノオレエート等が挙げられる。
【0019】
一方、O/W系界面重合法では、まず、油溶性モノマを有機溶媒に溶解させた油溶性モノマ溶液に、シートを含浸させる。次に、そのシートを純水中に浸積させ、室温で所定時間静置して、水と有機溶媒との界面をシート表面上に形成させる。その後、この純水中に水溶性モノマ水溶液又は水溶性ポリマ水溶液を添加し、室温で所定時間静置して、シート表面上で界面重合反応を行わせる。最後に、純水でシート表面を洗浄し、室温で乾燥させる。この結果、機能材料が積層されたシートが得られる。
【0020】
水溶性モノマの最終濃度としては、0.5重量%乃至12.5重量%の範囲が好ましい。なお、用いる有機溶媒により最適な濃度は変化するが、濃度が高すぎると積層される機能材料が厚くなり、シートから剥離してしまうため、機能材料がシートから剥離しない濃度を選択するとよい。また、0.5重量%未満では、機能材料は積層しない。
【0021】
水溶性ポリマの最終濃度としては、2.5重量%乃至12.5重量%の範囲が好ましい。12.5重量%を超えると、水溶性ポリマ水溶液は、粘度が高くなるためシートに十分に含浸されず、機能材料は積層しない。また、2.5重量%未満においても機能材料は積層しない。
【0022】
油溶性モノマの濃度としては、0.5重量%乃至25重量%の範囲が好ましい。ただし、油溶性モノマとして酸塩化物を用いた場合には、塩酸のような副生成物が生じるため、0.5重量%乃至1重量%が好ましい。
【0023】
なお、純水中には、W/O系界面重合法の場合と同様に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、非イオン性で親水性の高いものが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
【0024】
本実施の形態で用いる水溶性モノマとしては、分子中に2個以上のアミノ基又はカルボキシル基を有することが必要である。このような水溶性モノマとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、メタンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチル)シクロヘキシルノメタン、イソフォロンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、o−ヒドロキシフェノール、m−ヒドロキシフェノール、p−ヒドロキシフェノール、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、α―メチルベンジリデンビスフェノール、シクロヘキシリデンビスフェノール、アリル化ビスフェノール等が挙げられる。
【0025】
また、本実施の形態で用いる水溶性ポリマとしては、末端にアミノ基を有していることが必要である。このような水溶性ポリマとしては、例えば、ゼラチン、にかわ、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、L−リジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。
【0026】
また、本実施の形態で用いる有機溶媒としては、水と混和しないことが必要である。このような有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘプタン、四塩化炭素、キシレン、ニトロベンゼン、n−ヘキサン、トルエン、エチルエーテル、酢酸エチル等が挙げられる。なお、これらの有機溶媒を2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0027】
また、本実施の形態で用いる油溶性モノマとしては、前記の水溶性モノマ又は水溶性ポリマのアミノ基又はカルボキシル基と界面重合反応できることが必要である。このような油溶性モノマとしては、例えば、酸無水物(無水マレイン酸、無水o−フタル酸、無水コハク酸等)、酸ハロゲン化物(二塩化テレフタロイル、二塩化アジポイル、二塩化γ−ベンゾイルピメリン酸、二塩化γ−アセチルピメリン酸等)、イソシアネート類(ヘキサメチレンジイソシアネート、メタフェニレンイソシアネート、トルイレンイソシアネート、トリフェニルメタン−トリイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート)等が挙げられる。
【0028】
なお、油溶性モノマとして酸塩化物を用いた場合、副生成物である塩酸が生じ、機能材料の積層を阻害する場合がある。そこで、副生成物である塩酸を中和する目的で純水中にアルカリ水溶液を添加することが好ましい。そのアルカリ水溶液には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等を用いることができる。
【0029】
次に、ポリイオンコンプレックス法について説明する。
【0030】
ポリイオンコンプレックス法では、まず、シートを多価金属陽イオン水溶液に含浸させる。次に、そのシートをポリアニオン水溶液中に浸積させ、室温で所定時間静置し、シート表面上にゲル膜を形成させる。この結果、機能材料を積層させたシートが得られる。例えば、多価金属陽イオン水溶液として塩化カルシウム水溶液を用い、ポリアニオン水溶液としてアルギン酸ナトリウムを溶解した水溶液を用いた場合、シート中のカルシウムイオンとアルギン酸ナトリウムのカルボキシル基とが静電相互作用により結合し、架橋構造を形成することにより、ゲル膜状の機能材料がシート表面上に積層される。
【0031】
本実施の形態で用いる多価金属陽イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、銅イオン、鉄イオン等が挙げられる。これらとゲル形成能を有するポリアニオン水溶液には、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、カラギーナン、ヒアルロン酸等を用いることができる。
【0032】
多価金属陽イオンの濃度としては、15重量%乃至30重量%が好ましい。30重量%を超えると機能材料は積層するが、多価金属類の溶解に時間がかかる。また、15重量%未満では、機能材料は積層しない。
【0033】
ポリアニオンの濃度としては、膜積層能、溶解性、粘度を考慮して、1重量%乃至2重量%が好ましい。
【0034】
界面重合法では、マイクロカプセル状、多孔質体状、ファイバ状、膜状の機能材料が、また、ポリイオンコンプレックス法では、膜状の機能材料がシート表面上で積層される。
【0035】
積層されたマイクロカプセルに、医薬品、農薬、殺虫剤、香料、酵素、高分子物質のモノマ、反応触媒等の芯物質を内包することにより、機能材料が積層されたシートを、感圧複写紙、徐放性農薬シート、芳香紙、害虫忌避シート等に応用することができる。マイクロカプセルに芯物質を内包する方法としては、芯物質が水溶性である場合には水溶性ポリマ水溶液に、また、芯物質が油溶性である場合には油溶性ポリマ水溶液に、予め芯物質を添加しておく方法、又は、積層されたマイクロカプセルが多孔質である場合には、芯物質溶液中に、多孔性マイクロカプセルが積層されたシートを含浸させる方法が挙げられる。
【0036】
また、積層された多孔質体、ファイバ、及び膜に、触媒、酵素等を担持させることにより、自動車用触媒、バイオセンサ等に応用することができる他、環境浄化分野においては、バイオフィルタ、エアフィルタ、水処理フィルタ等に応用することができる。
【0037】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0038】
[実施例1]
実施例1では、まず、ろ紙(3×2.5cm、厚さ:270μm、ADVANTEC NO.2)をエチレンジアミン水溶液と1M水酸化ナトリウム水溶液とを1:1の割合で混合し、エチレンジアミンの最終濃度を2.5重量%とした溶液10mLに含浸させた。次に、このろ紙をシクロヘキサン10mLに浸積させ、10分間静置して水−油界面を形成させた。これに、二塩化テレフタロイルの最終濃度が0.5重量%となるように、二塩化テレフタロイル/シクロヘキサン溶液10mLを添加し、室温で20分間静置後、10℃以下でさらに12時間静置した。その後、シクロヘキサンで過剰の二塩化テレフタロイルを除去し、室温で乾燥させ、機能材料が積層されたシートを得た。
【0039】
[実施例2]
実施例2では、水溶性モノマ溶液としてエチレンジアミンの最終濃度を1.25重量%とし、有機溶媒としてシクロヘキサンとクロロホルムとを1:3の割合で混合する以外は、実施例1と同様に行った。
【0040】
[実施例3]
実施例3では、水溶性モノマ溶液としてエチレンジアミンの最終濃度を12.5重量%とし、有機溶媒としてシクロヘキサンとクロロホルムとを3:1の割合で混合する以外は、実施例1と同様に行った。
【0041】
[実施例4]
実施例4では、まず、ろ紙(3×2.5cm、厚さ:270μm、ADVANTEC NO.2)を25重量%ゼラチン水溶液に含浸させた。次に、このろ紙をシクロヘキサン10mLに浸積させ、10分間静置して水−油界面を積層させた。これに、二塩化テレフタロイルの最終濃度が0.5重量%となるように、二塩化テレフタロイル/シクロヘキサン溶液10mLを添加し、20分間静置後、10℃以下でさらに12時間静置した。次に、ろ紙表面の過剰の二塩化テレフタロイルをシクロヘキサンで除去し、純水で洗浄した。その後、イソプロパノール溶液で脱水した。最後に、室温で乾燥させ、機能材料を積層させたシートを得た。
【0042】
[実施例5]
実施例5では、まず、ろ紙(3×2.5cm、厚さ:270μm、ADVANTEC NO.2)を1重量%二塩化テレフタロイル/シクロヘキサン溶液に含浸させた。次に、このろ紙を純水10mLに浸積させ、10分間静置して水−油界面を積層させた。これに、エチレンジアミンの最終濃度が1.25重量%となるように、エチレンジアミン水溶液と1M水酸化ナトリウム水溶液とを1:1の割合で混合した溶液10mLを添加し、20分間静置後、10℃以下でさらに12時間静置した。その後、純水で過剰のエチレンジアミンを除去し、室温で乾燥させ、機能材料を積層させたシートを得た。
【0043】
[実施例6]
実施例6では、有機溶媒としてシクロヘキサンとクロロホルムとを、1:1の割合で混合する以外は、実施例5と同様に行った。
【0044】
[実施例7]
実施例7では、まず、ろ紙(3×2.5cm、厚さ:270μm、ADVANTEC NO.2)を15重量%塩化カルシウム水溶液に含浸させた。次に、1重量%アルギン酸ナトリウム水溶液10mLに浸積させた。その後、1分間静置して機能材料を積層させたシートを得た。
【0045】
[実施例8]
実施例8では、多価金属陽イオン水溶液として30重量%塩化カルシウム水溶液を用いる以外は、実施例7と同様に行った。
【0046】
[比較例1]
比較例1では、二塩化テレフタロイル/シクロヘキサン溶液を添加しない以外は、実施例1と同様に行った。
【0047】
[比較例2]
比較例2では、エチレンジアミンの最終濃度を15重量%とする以外は、実施例2と同様に行った。
【0048】
[比較例3]
比較例3では、二塩化テレフタロイルの最終濃度を15重量%とする以外は、実施例1と同様に行った。
【0049】
[比較例4]
比較例4では、ゼラチンの濃度を30重量%とする以外は、実施例4と同様に行った。
【0050】
[比較例5]
比較例5では、エチレンジアミン水溶液と1M水酸化ナトリウム水溶液とを、1:1の割合で混合した水溶液を添加しない以外は、実施例5と同様に行った。
【0051】
[比較例6]
比較例6では、ろ紙を1重量%二塩化テレフタロイル/シクロヘキサン溶液に含浸させない以外は、実施例5と同様に行った。
【0052】
[比較例7]
比較例7では、塩化カルシウムの濃度を5重量%とする以外は、実施例7と同様に行った。
【0053】
実施例1〜8及び比較例1〜7における結果を以下の表1に示す。なお、機能材料の形態は、電子顕微鏡(日本電子株式会社、JSM−5510V)により確認し、マイクロカプセル、多孔質体、及びファイバの径は、加速電圧15kV、倍率35−10000倍で、計測ソフト(Smile View Ver.2.05,日本電子株式会社)を用いて測定した。また、膜厚は、紙厚計(熊谷理器工業製)を用いて、(膜厚)=(反応後のろ紙厚)−(反応前のろ紙厚)により算出した。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1では、図1の電子顕微鏡写真に示すように、ろ紙表面上に平均粒径が4.36μmであるマイクロカプセルが積層された。
【0056】
実施例2では、図2(A)及び図2(B)の電子顕微鏡写真に示すように、ろ紙表面上に平均粒径が5.08μmであるマイクロカプセルと平均孔径が2.96μmである多孔質体とが積層された。
【0057】
実施例3では、図3の電子顕微鏡写真に示すように、ろ紙表面上に平均径が0.96μmであるファイバが積層された。
【0058】
実施例4では、図4の電子顕微鏡写真に示すように、ろ紙表面上に膜厚が4.01μmである膜が積層された。
【0059】
実施例5では、図5の電子顕微鏡写真に示すように、ろ紙表面上に平均粒径が約100μmであるマイクロカプセルが積層された。
【0060】
実施例6では、図6の電子顕微鏡写真に示すように、ろ紙表面上に平均粒径が約100μmであるマイクロカプセルが積層された。
【0061】
実施例7では、図7に示すように、ろ紙表面上に膜厚が477μmである膜が積層された。
【0062】
実施例8では、ろ紙表面上に膜厚が490μmである膜が積層された。
【0063】
比較例1では、二塩化テレフタロイルを添加していないことにより、機能材料が積層されなかった。
【0064】
比較例2では、エチレンジアミンの最終濃度が15重量%と高いため、機能材料が厚くなり、ろ紙から機能材料の剥離が生じた。
【0065】
比較例3では、二塩化テレフタロイルの最終濃度が15重量%と高いため、ろ紙から機能材料の剥離が生じた。
【0066】
比較例4では、ゼラチンの濃度が30重量%であることから、粘度が高くなり、ろ紙への含浸が十分に行われず、機能材料が積層されなかった。
【0067】
比較例5では、水溶性モノマであるエチレンジアミンを添加しないことから、機能材料が積層されなかった。
【0068】
比較例6では、油溶性モノマである二塩化テレフタロイルにろ紙を含浸させないことから、機能材料が積層されなかった。
【0069】
比較例7では、塩化カルシウムの濃度が低いため、機能材料が積層されなかった。
【0070】
以上、実施例1〜8、比較例1〜7の結果について説明したが、その他の実験例について以下に説明する。
【0071】
エチレンジアミンと最終濃度が0.5重量%二塩化テレフタロイルとを用いたW/O系界面重合法において、エチレンジアミンの濃度及びシクロヘキサンとクロロホルムとの混合比を変化させた場合の結果を図8に示す。この図8から分かるように、シクロヘキサン:クロロホルム=10:0では、エチレンジアミンの濃度を変化させても、ろ紙表面上に積層された機能材料はマイクロカプセルのみであったが、シクロヘキサンとクロロホルムとの混合比を変化させた場合、各混合比におけるエチレンジアミンの濃度変化に伴い、種々の形態の機能材料が積層された。
【0072】
また、エチレンジアミンと最終濃度が1重量%二塩化テレフタロイルとを用いたO/W系界面重合法において、エチレンジアミンの濃度及びシクロヘキサンとクロロホルムとの混合比を変化させた場合の結果を図9に示す。この図9から分かるように、ろ紙表面上にマイクロカプセルのみが積層された。このマイクロカプセルの平均粒径は約100μmであった。
【0073】
また、ゼラチンと最終濃度が0.5重量%二塩化テレフタロイルとを用いたW/O系界面重合法において、ゼラチンの濃度及びシクロヘキサンとクロロホルムとの混合比を変化させた場合の結果を図10に示す。この図10から分かるように、シクロヘキサン:クロロホルム=10:0ではろ紙表面上に膜が積層されたが、他の混合比では機能材料は積層されなかった。
【0074】
また、塩化カルシウムと1重量%アルギン酸ナトリウムとを用いたポリイオンコンプレックス法において、塩化カルシウムの濃度及びアルギン酸ナトリウム水溶液への浸積時間を変化させた場合にろ紙表面上に積層された膜の膜厚(mm)を以下の表2に示す。この表2から分かるように、上記膜厚(mm)は、塩化カルシウムの濃度に依存せず、さらにアルギン酸ナトリウム水溶液への浸積時間が約50分以上でほぼ一定になることがわかった。
【0075】
【表2】

【0076】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1でろ紙表面上に積層されたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】実施例2でろ紙表面上に積層されたマイクロカプセル及び多孔質体の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図3】実施例3でろ紙表面上に積層されたファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】実施例4でろ紙表面上に積層された膜の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】実施例5でろ紙表面上に積層されたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】実施例6でろ紙表面上に積層されたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】実施例7でろ紙表面上に積層された膜を示す図である。
【図8】エチレンジアミンと最終濃度が0.5重量%二塩化テレフタロイルとを用いたW/O系界面重合法において、エチレンジアミンの濃度及びシクロヘキサンとクロロホルムとの混合比を変化させた場合の結果を示す図である。
【図9】エチレンジアミンと最終濃度が1重量%二塩化テレフタロイルとを用いたO/W系界面重合法において、エチレンジアミンの濃度及びシクロヘキサンとクロロホルムとの混合比を変化させた場合の結果を示す図である。
【図10】ゼラチンと最終濃度が0.5重量%二塩化テレフタロイルとを用いたW/O系界面重合法において、エチレンジアミンの濃度及びシクロヘキサンとクロロホルムとの混合比を変化させた場合の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状構造体の表面上に機能材料を積層する機能材料の積層方法であって、
シート状構造体を水溶性モノマ水溶液又は水溶性ポリマ水溶液に含浸させた後、油溶性モノマを溶解させた有機溶媒の中に浸積させ、上記シート状構造体の表面上で、上記水溶性モノマ又は上記水溶性ポリマと上記油溶性モノマとを重合させる
ことを特徴とする機能材料の積層方法。
【請求項2】
シート状構造体の表面上に機能材料を積層する機能材料の積層方法であって、
シート状構造体を油溶性モノマを溶解させた有機溶媒に含浸させた後、水溶性モノマ水溶液又は水溶性ポリマ水溶液の中に浸積させ、上記シート状構造体の表面上で、上記水溶性モノマ又は上記水溶性ポリマと上記油溶性モノマとを重合させる
ことを特徴とする機能材料の積層方法。
【請求項3】
シート状構造体の表面上に機能材料を積層する機能材料の積層方法であって、
シート状構造体を多価金属陽イオン水溶液に含浸させた後、ポリアニオン水溶液中に浸積させ、上記シート状構造体の表面上で、上記多価金属陽イオンと上記ポリアニオンとを結合させる
ことを特徴とする機能材料の積層方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1記載の機能材料の積層方法によって機能材料が積層されたことを特徴とするシート状構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−335819(P2006−335819A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159985(P2005−159985)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(592134583)愛媛県 (53)
【Fターム(参考)】