説明

機能的ヌクレオチド分子の検索方法

遺伝子の発現を効果的に抑制できる核酸の普遍的検索法、該方法に使用する核酸構築物、ベクター、該方法のためのキットに関する。プロモーター配列、少なくとも2つの遺伝子配列及びポリAシグナル配列を有する核酸構築物であって、前記少なくとも2つの遺伝子配列は1分子のRNAとして転写され、少なくとも1つの遺伝子配列が翻訳可能な形であり、少なくとも1つの遺伝子配列が実質的に翻訳されない形でコードされる核酸構築物を構築することに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の発現を効果的に抑制できる核酸の普遍的検索法に関する。さらに、該方法に使用する核酸構築物、ベクター、該方法のためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の発現量は多様な方法で制御されている。例えば、転写因子による遺伝子からmRNAへの転写制御、mRNAからアミノ酸配列への翻訳の制御、ヌクレアーゼによるmRNA分解に対するmRNAの安定性の制御などにより、細胞は常に目的の発現量を保つよう制御している。
【0003】
タンパク質の発現量をmRNAの段階で人工的に抑制する方法として、mRNAに対するアンチセンスRNAによる抑制、リボザイムによるmRNAの分解、RNAi(RNA interference)などが挙げられる。これらの方法においては、タンパク質をコードする核酸配列、およびその周辺の核酸配列のどの領域を標的とするかにより、その抑制効果が著しく異なることが知られている(例えば、非特許文献1)。タンパク質の発現量を確認する方法として、通常、標的のタンパク質とレポータータンパク質の融合タンパク質を合成し、そのレポータータンパク質を指標にタンパク質の発現量を推測している。そして、標的のタンパク質とレポータータンパク質の融合タンパク質の全長が翻訳されているかを確認するために、標的のタンパク質の下流にレポータータンパク質を融合させる方法が通常用いられている。従って、レポーター遺伝子が翻訳可能な形で、これに隣接する標的のタンパク質をコードする核酸配列が翻訳されない形で連結されたDNAは知られていない。
【0004】
例えば、Nilsen TWらは、標的のタンパク質とその下流にレポータータンパク質を融合させた融合タンパク質を発現するDNAを構築し、レポータータンパク質の発現を調べることにより、標的の核酸配列の発現を効果的に抑制できるリボザイム等の検索を行なっている(例えば、特許文献1)。しかしながら、機能を持つ融合タンパクを発現することは容易ではなく、融合したためにタンパク質としての機能を失うことは少なくない。従って、レポータータンパク質が検出されなかったとしても、mRNAの分解によるmRNAの不安定化によるものか、mRNAの立体構造の変化によるものか、翻訳機構の阻害によるものか、レポータータンパク質としての機能を失ったのか、さらなる詳細な検証が必要となる。このような、融合タンパク質、キメラタンパク質を生じることなく、標的遺伝子由来の配列に作用する分子の検索方法は知られていない。
【0005】
従って、より多くの核酸配列に普遍的に対応でき、mRNAの安定性を変化させることにより発現を変化させる機能的ヌクレオチド分子の検索方法が求められていた。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0002278号明細書
【非特許文献1】Nature Medicine Vol.9 No.3 347頁(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、より多くの核酸配列に普遍的に対応できる、標的遺伝子の発現を変化させる機能的ヌクレオチド分子の検索方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の事情を鑑み、鋭意研究及び探索を行った結果、プロモーター配列、少なくとも2つの遺伝子配列及びポリAシグナル配列を有する核酸構築物であって、前記少なくとも2つの遺伝子配列は1分子のRNAとして転写され、少なくとも1つの遺伝子配列が翻訳可能な形であり、少なくとも1つの遺伝子配列が実質的に翻訳されない形でコードされる核酸構築物を構築することにより、より多くの核酸配列に普遍的に対応でき、mRNAの安定性を変化させて翻訳されない形の遺伝子配列がコードするタンパク質の発現を変化させることができる分子を検索できることを見出した。さらに、上記の核酸構築物がより多くの核酸配列に普遍的に対応できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、プロモーター配列、該配列に翻訳可能な形で連結された、少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列、およびポリAシグナル配列を有する核酸構築物であって、
該核酸構築物はプロモーター配列とポリAシグナル配列の間には前記のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とは異なる、翻訳されないヌクレオチド配列を含有し、
プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列と該配列とは異なる翻訳されないヌクレオチド配列は該核酸構築物より1分子のRNAとして転写されるように連結されており、
さらに前記の翻訳されないヌクレオチド配列が下記から選択されることを特徴とする核酸構築物に関する;
(A)タンパク質をコードするヌクレオチド配列または前記タンパク質の一部をコードするヌクレオチド配列、および
(B)天然においてタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域のヌクレオチド配列。
【0010】
本発明の第1の発明において、翻訳されないヌクレオチド配列が、プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の下流に位置している核酸構築物であってもよく、翻訳されないヌクレオチド配列が、プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の上流に位置している核酸構築物であってもよい。また、プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列がレポータータンパク質をコードするものである核酸構築物であってもよい。
【0011】
本発明の第2の発明は、本発明の第1の発明の核酸構築物を含有するベクターに関する。
【0012】
本発明の第3の発明は、翻訳可能な形の少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列と該配列とは異なる、翻訳されないヌクレオチド配列を含有するRNAであって、前記の翻訳されないヌクレオチド配列が下記から選択されることを特徴とするRNAに関する;
(A)前記の翻訳可能な形のタンパク質をコードするヌクレオチドとは異なるタンパク質をコードするヌクレオチド配列または前記タンパク質の一部をコードするヌクレオチド配列、および
(B)天然において前記の翻訳可能な形のタンパク質をコードするヌクレオチドとは異なるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域のヌクレオチド配列。
【0013】
本発明の第4の発明は、機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法であって、下記工程;
(A)翻訳されないヌクレオチド配列として標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する本発明の第1の発明の核酸構築物もしくは本発明の第2の発明のベクターよりRNAを転写させる工程、
(B)工程(A)で転写されたRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(C)工程(B)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(D)工程(C)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいて機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する工程、
を包含することを特徴とする標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法に関する。
【0014】
本発明の第5の発明は、機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法であって、下記工程;
(A)翻訳されないヌクレオチド配列として標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する本発明の第3の発明のRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(B)工程(A)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(C)工程(B)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいて機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する工程、
を包含することを特徴とする標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法に関する。
【0015】
本発明の第4、5の発明において、機能的ヌクレオチドによる標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出することを特徴とする、標的遺伝子の発現を変化させる機能的ヌクレオチド分子の検索方法であってもよく、細胞内もしくは無細胞タンパク質合成系でヌクレオチド分子のRNAへの接触が行われる機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法であってもよい。
【0016】
本発明の第6の発明は、ヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を検索する方法であって、下記工程;
(A)翻訳されないヌクレオチド配列として任意の遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する本発明の第1の発明の核酸構築物もしくは本発明の第2の発明のベクターよりRNAを転写させる工程、
(B)工程(A)で転写されたRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(C)工程(B)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(D)工程(C)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいてヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を同定する工程、
を包含することを特徴とするヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法に関する。
【0017】
本発明の第7の発明は、ヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を検索する方法であって、下記工程;
(A)翻訳されないヌクレオチド配列として任意の遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する本発明の第3の発明のRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(B)工程(A)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(C)工程(B)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいて標的遺伝子の発現を変化させる機能的ヌクレオチド分子を同定する工程、
を包含することを特徴とするヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法に関する。
【0018】
本発明の第6、7の発明において、細胞内もしくは無細胞タンパク質合成系でヌクレオチド分子のRNAへの接触が行われるヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、より多くの標的遺伝子に普遍的に対応でき、RNAを不安定化させることにより標的遺伝子の発現を抑制するヌクレオチド分子の検索方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の機能的ヌクレオチド分子の検索方法による検索の結果を示す図である。
【図2】本発明の機能的ヌクレオチド分子の検索方法による検索の結果を示す図である。
【図3】本発明の機能的ヌクレオチド分子の検索方法による検索の結果を示す図である。
【図4】本発明の機能的ヌクレオチド分子の検索方法による検索の結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に関して具体的に説明する。
【0022】
本明細書において、核酸構築物はDNAおよび/またはRNAで構成された構築物である。核酸構築物は、上記DNA、RNAのアナログや修飾化合物から構成されていてもよく、また、その一部に含んでいても良い。
本明細書において、標的遺伝子とは、発現の変化を起こすことが望まれる標的タンパク質をコードする核酸配列、および/または、その前後の核酸配列であり、本発明の核酸構築物又はベクターから転写されうる配列のことを示す。本明細書においては、目的の核酸配列、標的核酸配列と記載することもある。標的遺伝子は標的タンパク質の全長又はその一部をコードするヌクレオチド配列であっても良く、さらにその前後の5’UTR(Untranslated Region:非翻訳領域)、3’UTRであっても良い。特に限定はされないが例えば、RNAi作用により発現を抑制することが望まれる対象であるタンパク質をコードする塩基配列及びその前後の配列(siRNA)のような機能的ヌクレオチド分子のことであり、ヌクレオチド分子を介した配列特異的mRNAの分解の対象となる核酸配列をいう。遺伝子のエキソンに相当する配列、開始コドンとして機能する配列を含有しないように改変された配列も好適に使用できる。標的遺伝子は、真核細胞生物由来の配列、ウイルス由来の配列、原核細胞生物由来の配列のいずれであってもよい。ウイルス由来の標的遺伝子は、該ウイルスゲノムの分解、ウイルスの複製、増殖の抑制にかかわる機能的ヌクレオチド分子の検索に有用である。
【0023】
本明細書において、コード領域とは、タンパク質のアミノ酸配列を直接規定する遺伝暗号からなる遺伝子内の領域を意味する。
【0024】
本明細書において、mRNAの不安定化とは、mRNAの分解反応の増大を意味する。mRNAは、合成と分解の2つの反応によりその蓄積量が決定されるが、合成反応と分解反応のバランスが分解反応に傾いた場合にmRNAが不安定化されるという。mRNAの分解は、標的遺伝子由来の核酸配列を含むmRNAの分解であれば特に限定はなく、エンド的な分解、エキソ的な分解のどちらも含まれる。
【0025】
本明細書において、ヌクレオチド分子とは、ヌクレオシドのリン酸エステル化合物を示す。ヌクレオチド分子は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはそれらのキメラ分子であってよく、アナログや修飾されたヌクレオチドもヌクレオチド分子に含まれる。また、タンパク質、糖質などと共に複合体を形成していてもよい。
【0026】
本明細書において、機能的ヌクレオチド分子とは、タンパク質の発現を変化させるヌクレオチド分子のことをいう。機能的ヌクレオチド分子には、標的タンパク質の発現を阻害する分子、本発明のRNAの中の翻訳されないヌクレオチド配列に配列特異的に作用し、最終的にRNA全体を不安定化させる分子、RNAの中の翻訳されないヌクレオチド配列を配列特異的に分解し、最終的にRNA全体を不安定化させる分子も含まれる。機能的なヌクレオチド分子は、タンパク質や糖質などとともに複合体を形成していてもよい。
【0027】
本発明において、翻訳可能な形のヌクレオチド配列とは、適切な条件、環境下において、タンパク質の合成が行われるように配置されたヌクレオチド配列である。翻訳は多数の因子の協働によりなされるが、翻訳開始シグナル(翻訳アクチベーター)、翻訳開始コドン、翻訳終止コドンなど、翻訳に最低限必要な因子を含む形態であれば本発明では翻訳可能な形であることを意味する。
【0028】
本発明において、翻訳されない形のヌクレオチド配列とは、理論上翻訳されることの無いように設計された形態であり、翻訳された場合でもその存在が無視できる程度に微量であること、言い換えれば実質的に翻訳されないことを示す。ごく微量の翻訳が確認されたとしても、融合タンパク質による影響を排除できるという本発明の特徴を否定する量でなければ、実質的に翻訳されないのと同等である。つまり、翻訳されない形のヌクレオチド配列は、該ヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列と、翻訳可能な形のヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列とが、融合タンパク質として翻訳されることのない配列のことである。翻訳されない形のヌクレオチド配列は、翻訳に最低限必要な因子を欠くことにより翻訳されない配列である。
【0029】
本明細書において、上流および下流とは、本発明の核酸構築物のプロモーターからRNAが転写される方向に対する位置関係を示す。本発明の核酸構築物においては、プロモーター配列に近い方が上流であり、ポリAシグナル配列に近い方が下流となる。
【0030】
(1)本発明の核酸構築物
本発明の核酸構築物は、プロモーター配列、該配列に翻訳可能な形で連結された、少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列、およびポリAシグナル配列を有する核酸構築物であって、
該核酸構築物はプロモーター配列とポリAシグナル配列の間には前記のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とは異なる、翻訳されないヌクレオチド配列を含有し、
プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列と該配列とは異なる翻訳されないヌクレオチド配列は該核酸構築物より1分子のRNAとして転写されるように連結されており、
さらに前記の翻訳されないヌクレオチド配列が下記から選択されることを特徴とする核酸構築物である。
(A)タンパク質をコードするヌクレオチド配列または前記タンパク質の一部をコードするヌクレオチド配列、および
(B)天然においてタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域のヌクレオチド配列。
また、本発明の核酸構築物の1つの態様として、プロモーター配列、ポリAシグナル配列、およびプロモーター配列とポリAシグナル配列の間に挿入された、前記プロモーターの作用により1分子のRNAとして転写されるDNA配列を有する核酸構築物であって、前記DNA配列が下記から選択されることを特徴とする核酸構築物が例示される。
(A)レポーター遺伝子配列に接続された翻訳されないヌクレオチド配列を有するDNA配列であって、当該DNAからは、レポーター遺伝子産物が翻訳可能な形で、ヌクレオチド配列は翻訳されない形でコードされるRNAが転写されるDNA配列、および
(B)レポーター遺伝子配列とこれに隣接する制限酵素認識切断部位を有するDNA配列であって、前記制限酵素認識切断部位にヌクレオチド配列が挿入された場合、当該DNAからは、レポーター遺伝子産物が翻訳可能な形で、かつヌクレオチド配列は翻訳されない形でコードされるRNAが転写されるDNA配列。
【0031】
本発明を特に限定するものではないが、通常、前記の翻訳されないヌクレオチド配列は、翻訳可能な形のヌクレオチド配列とは異なる遺伝子に由来する。本発明の核酸構築物としては、特に限定はされないが例えば、プロモーター配列、レポーター遺伝子配列、終止コドンとして機能する配列、翻訳されないヌクレオチド配列、ポリAシグナル配列の順に並んだ核酸構築物であってもよい。また、プロモーター配列、翻訳されないヌクレオチド配列、開始コドンとして機能する配列、レポーター遺伝子配列、ポリAシグナル配列の順に並んだ核酸構築物であってもよい。
【0032】
本発明の核酸構築物において、翻訳されないヌクレオチド配列(例えば標的遺伝子由来の配列)は該核酸構築物から転写されるRNAのUTRとして存在し、翻訳されないため、融合タンパク質が生じることなく、翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えばレポータータンパク質をコードする遺伝子配列)からは前記タンパク質が機能を保った形で発現される。前記RNA中の翻訳されないヌクレオチド配列をコードする領域を分解するようなヌクレオチド分子、例えばリボザイムやsiRNAが存在すると、RNA全体が不安定となり、この結果翻訳可能な形で連結されたヌクレオチド配列にコードされたタンパク質の発現が減少する。したがって、本発明の核酸構築物から転写されるRNAまたは該RNAからの翻訳産物の変化を追跡することにより、翻訳されないヌクレオチド配列の発現を効果的に抑制できる分子を普遍的かつ容易に検索できる。
【0033】
翻訳されないヌクレオチド配列は実質的に翻訳されない配列であれば、翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の上流にあってもよく、下流にあってもよい。また、翻訳されないヌクレオチド配列は翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列と異なる遺伝子由来の配列であっても良い。
【0034】
翻訳されないヌクレオチド配列が翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の上流にある場合、本発明の核酸構築物は翻訳されないヌクレオチド配列が翻訳されないよう配置されていれば特に限定はないが、例えば翻訳の開始コドン(例えばATG)を含まないように特定の領域を選択して翻訳されない形の配列としても良く、開始コドンとして機能する可能性を有する配列があれば、塩基の置換、付加、欠失、挿入を行うことにより前記コドンを改変し、翻訳されない配列としても良い。
【0035】
翻訳されないヌクレオチド配列が翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の下流にある場合、本発明の核酸構築物は翻訳されないヌクレオチド配列が翻訳されないよう配置されていれば特に限定はない。例えば翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列と翻訳されないヌクレオチド配列の間に終止コドンとして機能する配列(TAA、TAG、TGA)を配置すれば良い。この場合、翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の開始コドンから連続する3塩基ずつの読み枠(コドン)が終止コドンを規定し、この終止コドンによりRNAの翻訳が翻訳可能な形で連結されたタンパク質でストップし、下流の翻訳されないヌクレオチド配列が翻訳されない。従って、翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列と翻訳されないヌクレオチド配列がコードするタンパク質の融合タンパク質が生じることなく、翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の翻訳産物がmRNAの安定性を反映しながら発現することが期待できる。
【0036】
本発明の核酸構築物は、機能的ヌクレオチド分子による遺伝子発現の変化を検出する方法に用いることができる。
【0037】
本発明の核酸構築物に含まれるプロモーター配列は、真核細胞内またはそれに類似した環境(例えば、無細胞タンパク質発現系)においてRNAの転写開始反応に関与する活性を有する配列であれば何でもよく、真核細胞生物由来のプロモーター配列(例えば、βアクチンプロモーター、U6プロモーター)、真核細胞内でプロモーター活性を有するウイルス由来のプロモーター配列(例えば、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター)のいずれもが使用できる。また、転写反応が行われる環境(生物個体、培養細胞、無細胞タンパク質合成系、等)に応じて適切なプロモーターを選択することができる。例えば、無細胞タンパク質合成系の場合には、使用されるRNAポリメラーゼに対応するものを選択すればよく、上記真核細胞生物由来、ウイルス由来のプロモーター配列のほか、T7ファージなどのファージ由来のプロモーター配列を選択しても良い。特に限定はされないが、タンパク質の発現を抑制する機能的ヌクレオチド分子を検索する場合は、明確にその抑制の程度を判断できるように、恒常的に強く発現するプロモーターが好適に使用できる。
【0038】
本発明の核酸構築物に含まれる翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列として、レポーター遺伝子配列が挙げられる。レポーター遺伝子配列は、直接的及び/又は間接的に検出しうる任意のタンパク質をコードする遺伝子の核酸配列であれば限定は無い。レポーター遺伝子がコードするタンパク質(レポータータンパク質)としては、特に限定はされないが、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼなどの特異的に検出可能な物質を生産する酵素、ならびに直接的に検出されうるタンパク質が例示される。前記レポーター遺伝子は、その有用な特徴を保持する範囲において、その一部のみを選択して使用してもよく、複数のレポーター遺伝子を組み合わせても良い。直接的にタンパク質を検出する方法としては、レポータータンパク質を認識する特異抗体の使用により検出する方法、蛍光シグナルを生じるレポータータンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)の蛍光を検出する方法、及び薬剤耐性形質を付与するような選択マーカータンパク質が例示される。これらのレポータータンパク質により細胞をsortingすることができる。例えば蛍光シグナルを生じるレポータータンパク質の場合は、そのタンパク質を発現する細胞をFACS(fluorescence activated cell sorting)法により選択することができ有用である。
【0039】
本発明の核酸構築物に含まれる翻訳されないヌクレオチド配列は、興味の対象である(発現を変化させることが望まれる)標的遺伝子のいずれの領域であってよく、標的タンパク質のコード領域、コード領域の一部、3’UTR、5’UTRのいずれもが翻訳されないヌクレオチド配列として選択できる。また、翻訳されないヌクレオチド配列は複数の遺伝子由来の配列が並んでいてもよい。さらに興味の対象である生物由来のゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、特定の器官、時期で発現しているcDNAライブラリーなどから作製された核酸(群)を、翻訳されないヌクレオチド配列としてもよい。
【0040】
本発明の核酸構築物は、導入された宿主細胞中もしくは転写反応液中において、1分子のRNAとして転写される。該RNAは、機能的ヌクレオチド分子により不安定化されうる。例えば、機能的ヌクレオチド分子として、RNAの翻訳されないヌクレオチド配列領域に、該領域の塩基配列を認識して作用し、結果的にRNA全体を不安定化させる分子が挙げられる。例えば、RNAi機構におけるdsRNA、siRNA、shRNA、ヌクレアーゼ複合体(RISC:RNA−induced silencing complex)、生物の発生段階に関与しているとされるstRNA(small temporal RNA)、広範な生命現象に関与していると思われるmiRNA(micro RNA)、miRNAを含むタンパク質複合体miRNP、リボザイム、マキシザイム、ハンマーヘッドリボザイム、アンチセンスRNA、EGS(External Guide Sequence)、およびこれらのヌクレオチド分子を含むタンパク質複合体などについて、本発明の方法によりその作用を調べることができる。
【0041】
本発明の核酸構築物より転写されたRNAから、レポータータンパク質などの翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、融合タンパク質となることなく、単独のタンパク質として自然に近い状態で安定的に発現する。したがって、本発明の遺伝子発現の検出方法においては、例えば、レポータータンパク質の発現が抑制された場合、この現象が標的遺伝子にコードされるタンパク質とレポータータンパク質が融合タンパク質となったために、レポータータンパク質の本来の機能に変化を生じたことに起因する現象である可能性を排除することができる。また、機能的なヌクレオチド分子が翻訳されないヌクレオチド配列に翻訳機構を阻害するように作用して、レポータータンパク質の本来の機能に変化を生じたことに起因する現象である可能性を排除することができる。
さらに、翻訳されないヌクレオチド配列はタンパク質に翻訳する必要がないため、翻訳されないヌクレオチド配列の読み枠(コドン:それぞれのアミノ酸に対応する3塩基連鎖)を合わせる必要がない。従って、本発明の核酸構築物は、適切な制限酵素認識部位を選択する、塩基を挿入もしくは削除するなどの読み枠を合わせる必要がないため、翻訳されないヌクレオチド配列と翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の連結が容易である。
【0042】
本発明においては、翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列とこれに隣接する制限酵素認識切断部位を有する核酸構築物であって、前記制限酵素認識切断部位に翻訳されないヌクレオチド配列が挿入された場合、当該核酸構築物からは、翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列が翻訳可能な形で、かつ翻訳されないヌクレオチド配列は実質的に翻訳されない形でコードされるRNAが転写される核酸構築物も本発明の核酸構築物に含まれる。該核酸構築物は、使用する際に目的に応じて自由に標的遺伝子配列を挿入することができ有用である。制限酵素認識切断部位は、興味の対象である標的遺伝子配列を挿入するのに都合のよい配列であれば何でもよい。特に限定はされないが、例えばクローニングサイト、マルチクローニングサイトと呼ばれる1つもしくは複数の制限酵素サイトが並んだ配列が挙げられ、市販のベクター、リンカーなどで広く一般に使用されている配列が好適に使用できる。
【0043】
本発明の核酸構築物において、ポリAシグナル配列はmRNAの3’末端にポリA付加反応を生じさせる配列である。ポリAシグナル配列は、ポリA付加反応を生じさせる配列であれば特に限定はない。例えば、高等真核生物のmRNAに高度に保存されていて、通常ポリA付加部位の11〜30塩基上流に存在するAAUAAA塩基配列が挙げられる。
【0044】
本発明の核酸構築物において、ポリAシグナル配列の下流にターミネーター配列を配置してもよい。ターミネーター配列は、RNAポリメラーゼによるmRNAの転写を終結させる機能を有する配列であれば何でもよい。特に限定はされないが、高等真核生物においては、RNAポリメラーゼはターミネーター配列内の複数の部位でRNAの合成を終結する。
【0045】
本発明の核酸構築物に含まれるポリAシグナル配列、ターミネーター配列は、RNAの転写反応を行う環境に合わせて適宜選択することができる。タンパク質の発現ベクターが宿主に合わせて多数市販されており、これらのベクターを基に、又は組み合わせることにより、本発明の核酸構築物を作成してもよい。特に限定はされないが、例えば、ウシ由来のBGHpolyAシグナル配列、ターミネーター配列が使用できる。
【0046】
(2)本発明のベクター
本発明のベクターは、本発明の核酸構築物を含有するベクターであり、適当な宿主細胞中やその環境に類似した反応溶液中においてレポーター遺伝子配列に代表される翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列、標的遺伝子配列に代表される翻訳されないヌクレオチド配列、ポリAシグナル配列を同一分子内に含有するRNAが転写されるベクターであれば何でもよい。また、本発明のベクターを作製するために使用するベクターも、本発明の核酸構築物を含有していれば本発明のベクターに含まれる。本発明のベクターは、プラスミドベクター、ファージベクター、自立複製しうるベクター、ウイルスベクター、宿主の染色体に組み込まれるベクター、一時的、一過的に発現するベクターのいずれであってもよい。本発明の核酸構築物に含まれるプロモーター配列、遺伝子配列、機能的ヌクレオチド分子に応じて、適合する種由来のベクター、宿主を選択することが好ましい。現在、多くの宿主−ベクター系が市販されており、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
(3)本発明のRNA
本発明のRNAは、翻訳可能な形の少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列と該配列とは異なる、翻訳されないヌクレオチド配列を含有するRNAであって、前記の翻訳されないヌクレオチド配列が下記から選択されることを特徴とするRNAである;
(A)前記の翻訳可能な形のタンパク質をコードするヌクレオチドとは異なるタンパク質をコードするヌクレオチド配列または前記タンパク質の一部をコードするヌクレオチド配列、および
(B)天然において前記の翻訳可能な形のタンパク質をコードするヌクレオチドとは異なるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域のヌクレオチド配列。
【0048】
本発明のRNAは、本発明の核酸構築物をインビボ、インビトロにおいて、転写することにより作製することができる。また、本発明のRNAを構成する各構成成分であるRNAを連結して作製することができる。
【0049】
本発明のRNAは、本発明の標的遺伝子の発現を変化させる機能的ヌクレオチド分子を検索する方法、ヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を検索する方法に使用することができる。
【0050】
(4)本発明の機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用の検出方法
本発明の機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法は、下記工程;
(A)翻訳されないヌクレオチド配列として標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する(1)記載の核酸構築物もしくは(2)記載のベクターよりRNAを転写させる工程、
(B)工程(A)で転写されたRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(C)工程(B)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(D)工程(C)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいて機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する工程、
を包含することを特徴とする標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法である。
【0051】
また、本発明の機能的ヌクレオチド分子を検索する方法の1つの態様として、以下の工程を包含する機能的ヌクレオチド分子の検索方法が挙げられる。
(A)本発明の核酸構築物もしくはベクター、つまりプロモーター配列、ポリAシグナル配列、およびプロモーター配列とポリAシグナル配列の間に挿入された、前記プロモーターの作用により1分子のRNAとして転写されるDNA配列を有する核酸構築物もしくは該核酸構築物を含有するベクターを用意する。ここで前記DNA配列はレポーター遺伝子配列に接続された翻訳されないヌクレオチド配列を有するDNA配列であって、当該DNAからは、レポーター遺伝子産物が翻訳可能な形で、ヌクレオチド配列は翻訳されない形でコードされるRNAが転写されるDNA配列である。
(B)(A)の核酸構築物もしくはベクターを用いてRNAを転写させる。
(C)(B)のRNAにヌクレオチド分子を接触させる。
(D)RNAのレポーター遺伝子領域またはレポータータンパク質を検出する。
【0052】
本発明の核酸構築物又は該核酸構築物を含有するベクターを用いて翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列、翻訳されないヌクレオチド配列、ポリAシグナル配列の一連の配列を含むRNAを転写し、もしくは本発明のRNAを用意し、このRNAとヌクレオチド分子と接触させて、RNAの翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相当する部分や翻訳されたタンパク質を検出、比較し、機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出することができる。上記検出の結果、変化を生じるヌクレオチドが機能的なヌクレオチドであると判断することができる。また、本発明においては、上記検出方法を用いて、複数のヌクレオチド分子の中から標的遺伝子の発現を変化させる機能的なヌクレオチド分子を検索(スクリーニング)することが可能である。上記RNAの転写、ヌクレオチド分子との接触、タンパク質の発現は、細胞内、細胞外のいずれで行われてもよく、並行して、もしくは順に行われてもよい。機能的ヌクレオチド分子を検索する方法に特に限定はないが、例えば、本発明の核酸構築物又は本発明のベクターと、機能的ヌクレオチド分子を宿主細胞に導入し、翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現を確認すればよい。
【0053】
機能的ヌクレオチド分子は、標的とする核酸配列もしくはその一部を基に化学的に合成してもよく、生合成してもよく、宿主細胞で生産されるように設計されたベクターを宿主細胞に導入して細胞中で発現した生産物であってもよい。また、機能的ヌクレオチド分子は複数の種類であっても良く、ゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、器官・時期特異的cDNAライブラリー由来の複数のヌクレオチドであってもよい。このようなライブラリーを用いることにより、標的遺伝子の発現を変化させる機能的ヌクレオチド分子をスクリーニングすることができる。
【0054】
本発明の方法においては、本発明の核酸構築物、ベクターから転写されたRNAや本発明のRNAにヌクレオチド分子を接触させ、接触後のRNAを直接検出もしくは該RNAの翻訳産物を検出することができる。RNAを直接検出する方法は、多くの方法が報告されているが、RNAの定性的または定量的な検出が可能な方法であれば何でもよい。特に限定はされないが、例えば濃度の測定、ゲル電気泳動法、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、リアルタイムPT−PCR法、TAS(Transcription−based Amplification System)法、3SR(Self−Sustained Sequence Replication)、NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)法、Qβレプリカーゼ法、TMA(Transcription Mediated Amplification)法、が挙げられる。
【0055】
宿主細胞に本発明の核酸構築物、本発明のベクター、機能的ヌクレオチド分子、機能的オリゴヌクレオチド分子を生産しうる核酸構築物を導入する方法は、核酸構築物、ベクターに応じて適切な方法を選択すればよく、特に限定はされないが、物理的、化学的に直接導入してもよく、感染により導入してもよい。
【0056】
(5)本発明のヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法
本発明のヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を検索する方法は、下記工程;
(A)翻訳されないヌクレオチド配列として任意の遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する本発明の第1の発明の核酸構築物もしくは本発明の第2の発明のベクターよりRNAを転写させる工程、
(B)工程(A)で転写されたRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(C)工程(B)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(D)工程(C)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいてヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を同定する工程、
を包含することを特徴とするヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法である。
【0057】
本発明のヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法においては、ゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、器官時期特異的cDNAライブラリー由来の複数の標的配列を翻訳されないヌクレオチド配列として作製した本発明の核酸構築物又はベクターを用意し、複数種の翻訳されないヌクレオチド配列を含む複数種のRNAを転写しもしくは複数種の本発明のRNAを用意し、該RNAに機能的ヌクレオチド分子を接触させ、RNAの翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相当する部分又は翻訳されたタンパク質を検出することにより、該機能的ヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子をスクリーニングでき、該機能的ヌクレオチド分子の作用を検索することもできる。この方法には、プロモーター配列、ポリAシグナル配列、およびプロモーター配列とポリAシグナル配列の間に挿入された、前記プロモーターの作用により1分子のRNAとして転写されるDNA配列を有する核酸構築物が好適に使用できる。ここで前記DNA配列はレポーター遺伝子配列とこれに隣接する制限酵素認識切断部位を有するDNA配列であって、前記制限酵素認識切断部位に標的遺伝子配列が挿入された場合、当該DNAからは、レポーター遺伝子産物が翻訳可能な形で、かつ標的遺伝子配列由来の産物は翻訳されない形でコードされるRNAが転写されるDNA配列である。
【0058】
(6)本発明のキット
本発明は、前述の(4)、(5)で例示した本発明の機能的ヌクレオチド分子を検索する方法や、ヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を検索する方法に使用されるキットを提供する。1つの実施態様において、パッケージされた形態において、前出の(1)で示した本発明の核酸構築物、もしくは、該核酸構築物中の翻訳されない形の遺伝子配列の代わりにクローニングサイトに置き換え、使用者が好みの標的遺伝子由来の配列を挿入できる核酸構築物を含有するキットも本発明のキットに含まれる。また本発明のキットには、指示書が含まれていてもよい。
【0059】
上記「指示書」とは、当該キットの使用方法、例えば試薬液の調製方法、推奨される反応条件等を記載した印刷物であり、パンフレットまたはリーフレット形式の取り扱い説明書のほか、キットに添付されたラベル、キットが納められたパッケージ等に記載されたものを含む。さらに、インターネットのような電子媒体を通し、開示、提供された情報も含まれる。
【0060】
さらに、前述の(2)で示したベクター、(3)で示したRNAを包含したキットも本発明のキットに含まれる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。また、本明細書に記載の操作のうち、プラスミドDNAの調製、制限酵素消化などの基本的な操作にてついては上記のモレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル第2版に記載の方法によった。さらに、以下に示す大腸菌を用いたプラスミドの構築には、特に記載のない限り大腸菌JM109を宿主として使用した。また、形質転換された大腸菌は100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5% NaCl、pH7.0)、あるいは上記培地に1.5%の寒天を加え固化させたLB−アンピシリンプレートを用いて37℃で好気的に培養した。細胞の培養は、培地としてダルベッコ改変イーグル培地(バイオウィタカ社製)に10%ウシ胎児血清(バイオウィタカ社製)を加えたものを使用し、細胞培養用シャーレ(イワキガラス社製)に接種し、37℃、5% COの条件で湿潤培養インキュベーター内において行なった。キットの使用および各種機器の取り扱いは添付の操作説明書に従って行なった
【0062】
実施例1 マウスFas遺伝子配列を持つ標的プラスミドの構築
プラスミドpQBI25(Wako Chemicals USA社製)はCMVプロモーター、rsGFP(red shifted Green Fluoresence Protein)遺伝子、BGHpolyAを持ち、細胞内で効率よくrsGFPを発現する。rsGFP遺伝子とBGHpolyAの間には制限酵素部位BamHIおよびEcoRIが存在する。マウスFas遺伝子(GenBank Accession:M83649)の開始コドンの75塩基下流から終止コドンまでの配列の両端に制限酵素BamHIおよびEcoRI cohesive末端が付加されたdsDNA(配列表の配列番号1)をpQBI25のBamHI、EcoRIサイトに挿入することにより標的プラスミドpTargetFasを構築した。標的プラスミドは細胞内でrsGFP遺伝子配列とFas遺伝子の部分配列をもつRNAを転写する。
【0063】
実施例2 効果的にFas遺伝子の発現を抑制するsiRNAの検索
マウスFas遺伝子の部分配列を持つ21bpの5種のdsRNAを準備した。RNA2−1(配列番号2)とRNA2−2(配列番号3)をアニールしてRNA2、RNA3−1(配列番号4)とRNA3−2(配列番号5)をアニールしてRNA3、RNA4−1(配列番号6)とRNA4−2(配列番号7)をアニールしてRNA4、RNA5−1(配列番号8)とRNA5−2(配列番号9)をアニールしてRNA5、RNA6−1(配列番号10)とRNA6−2(配列番号11)をアニールしてRNA6を調製した。これらのdsRNAをそれぞれpTargetFasと共に293細胞(ATCC No:CRL−1573)に導入した。遺伝子導入はリポフェクタミン2000(Invitrogen社製)とRibojuice(タカラバイオ社製)を用いて行なった。細胞を2日間培養したのち、トリプシンを用いてシャーレから剥がし、MoFlo(タカラバイオ社製)により細胞の蛍光強度を測定した。結果を図1に示す。図1は、対照としてRNAを導入しなかった細胞の蛍光強度を100とした場合の相対値を示す。RNA2とpTargetFasとを導入した細胞は最も蛍光強度が弱いことから、RNA2を効果的にFas遺伝子の発現を抑制するsiRNAであると判断した。
【0064】
実施例3 実施例2の結果の確認
実施例2で得られたsiRNAが有効である確認を次のようにして行なった。Fasを発現しているNIH3T3細胞(ATCC No:CRL−1658)にRNA2、RNA3、RNA4、RNA5、RNA6をそれぞれRiboJuice(タカラバイオ社製)で導入した。2日後にこれらの細胞からRNAを抽出し、リアルタイムRT−PCRにより、Fas mRNAを定量した。対照としてRNAを導入していない細胞を使用し、ハウスキーピング遺伝子GAPDH(Glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)を用いてデータの補正を行なった。リアルタイムRT−PCRはリアルタイムRT−PCRコアキット(タカラバイオ社製)、スマートサイクラーシステム(タカラバイオ社製)を用いて行い、Fasのプライマーとして配列番号12、13のオリゴDNAを、GAPDHのプライマーとしてReal time RT−PCR primer(タカラバイオ社製)のプライマーをそれぞれ使用した。結果を図2に示す。図2は、対照としてRNAを導入しなかった細胞のmRNA量を100とした場合の相対値を示す。Fas mRNA量の減少は実施例2で得られたrsGFPの蛍光強度の減少と一致することから、本スクリーニング法が有用であることが確認できた。
【0065】
実施例4 rsGFP(red shifted Green Fluoresence Protein)遺伝子配列を持つ標的プラスミドの構築
rsGFP−1(配列番号14)とrsGFP−2(配列番号15)をプライマーとし、pQBI25を鋳型として、PCRによりrsGFP遺伝子の開始コドンから終止コドン付近までを含み両端に制限酵素XbaIおよびNheIを有するDNA断片(配列番号16)を調製した。このDNA断片を制限酵素XbaIおよびNheIで処理して得られた、約720bpのDNA断片をプラスミドpGL3control(Promega社製)のホタルルシフェラーゼ遺伝子とSV40polyAの間に存在する制限酵素部位XbaIに挿入し、標的プラスミドpGL3−3’(GFP)を構築した。
【0066】
実施例5 効果的にrsGFP遺伝子の発現を抑制するsiRNAの検索
rsGFP遺伝子の部分配列を持つ21bpの5種のdsRNAを準備した。RNA7−1(配列番号17)とRNA7−2(配列番号18)をアニールしてRNA7、RNA8−1(配列番号19)とRNA8−2(配列番号20)をアニールしてRNA8、RNA9−1(配列番号21)とRNA9−2(配列番号22)をアニールしてRNA9、RNA10−1(配列番号23)とRNA10−2(配列番号24)をアニールしてRNA10を調製した。これらのdsRNAをそれぞれpGL3−3’(GFP)、さらにインターナルコントロールとしてウミシイタケルシフェラーゼを発現するpRL−TK(Promega社製)と共に293細胞(ATCC No:CRL−1573)に導入した。遺伝子導入はTransIT293(タカラバイオ社製)とTransIT−TKO(タカラバイオ社製)を用いて行なった。siRNA濃度は終濃度が1.25〜160nMとなるように決定した。細胞を24時間培養したのち、培養上清を除去した後PBSで一度洗浄し、脱イオン水で5倍希釈した5×Passive Lysis Buffer(Promega社製)により細胞を溶解した。この溶解液10μlよりDual Luciferase Assay System(Promega社製)のプロトコールに従い、発光プレートリーダーであるMithras940(Berthold社)を用いて、ホタルルシフェラーゼ発光値とウミシイタケルシフェラーゼ発光値を測定した。得られた発光値をもとに(相対発光強度)=(ホタルルシフェラーゼ発光値)/(ウミシイタケルシフェラーゼ発光値)を算出した。結果を図3に示す。図3において、横軸は導入時のsiRNA濃度、縦軸は対照としてRNAを導入しなかった細胞の(相対発光強度)を100%とした場合の各サンプルの相対発光強度の相対値を示す。図3からRNA8、RNA10、RNA9、RNA7の順に相対発光強度の相対値が低い値を示すことが分かった。このことから、RNA8、RNA10、RNA9、RNA7の順に効果的にrsGFP遺伝子の発現を抑制するsiRNAであると判断した。
【0067】
実施例6 リアルタイムRT−PCRによるRNAi効果の比較
293細胞に、各siRNA7〜10およびrsGFP発現プラスミド(pQBI25)を、TransIT293およびTransIT−TKOを用いて導入した。2日後にこれらの細胞からRNAを抽出し、リアルタイムRT−PCRにより、rsGFP mRNAを定量した。対照としてpQBI25のみを導入した細胞を使用し、pQBI25に乗っているネオマイシン耐性遺伝子を用いてデータの補正を行なった。リアルタイムRT−PCRはリアルタイムRT−PCRコアキット(タカラバイオ社製)、スマートサイクラーシステム(タカラバイオ社製)を用いて行い、rsGFPのプライマーとしてGFP−B−F(配列番号25)、GFP−B−R(配列番号26)を、ネオマイシン耐性遺伝子のプライマーとしてNeo−F(配列番号27)、Neo−R(配列番号28)のオリゴDNAをそれぞれ使用した。結果を図4に示す。図4において、横軸は使用したsiRNA名、縦軸は対照としてpQBI25のみを導入した細胞のmRNA量を100とした場合の相対値を示す。図4においてrsGFP mRNA量の減少は実施例5で得られたホタルルシフェラーゼの相対発光強度の相対値の減少と一致することから、実施例4〜5記載のsiRNA検索法が有用であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明により、より多くの標的遺伝子に普遍的に対応でき、RNAを不安定化させることにより標的遺伝子の発現を抑制するヌクレオチド分子の検索方法が提供された。
【配列表フリーテキスト】
【0069】
SEQ ID NO:2:Chimeric oligonucleotide designed as RNA2−1.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:3:Chimeric oligonucleotide designed as RNA2−2.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:4:Chimeric oligonucleotide designed as RNA3−1.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:5:Chimeric oligonucleotide designed as RNA3−2.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:6:Chimeric oligonucleotide designed as RNA4−1.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:7:Chimeric oligonucleotide designed as RNA4−2.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:8:Chimeric oligonucleotide designed as RNA5−1.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:9:Chimeric oligonucleotide designed as RNA5−2.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:10:Chimeric oligonucleotide designed as RNA6−1.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:11:Chimeric oligonucleotide designed as RNA6−2.“nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides”
SEQ ID NO:12:Designed PCR primer to amplify a portion of mouse Fas gene.
SEQ ID NO:13:Designed PCR primer to amplify a portion of mouse Fas gene.
SEQ ID NO:14:Designed PCR primer rsGFP−1 to amplify a portion of rsGFP gene.
SEQ ID NO:15:Designed PCR primer rsGFP−2 to amplify a portion of rsGFP gene.
SEQ ID NO:16:rsGFP gene
SEQ ID NO:17:Chimeric oligonucleotide designed as RNA7−1.″nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides″
SEQ ID NO:18:Chimeric oligonucleotide designed as RNA7−2.″nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides″
SEQ ID NO:19:Chimeric oligonucleotide designed as RNA8−1.″nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides″
SEQ ID NO:20:Chimeric oligonucleotide designed as RNA8−2.″nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides″
SEQ ID NO:21:Chimeric oligonucleotide designed as RNA9−1.″nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides″
SEQ ID NO:22:Chimeric oligonucleotide designed as RNA9−2.″nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides″
SEQ ID NO:23:Chimeric oligonucleotide designed as RNA10−1.″nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides″
SEQ ID NO:24:Chimeric oligonucleotide designed as RNA10−2.″nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides−other nucleotides are deoxyribonucleotides″
SEQ ID NO:25:Designed PCR primer GFP−B−F to amplify a portion of rsGFP gene.
SEQ ID NO:26:Designed PCR primer GFP−B−R to amplify a portion of rsGFP gene.
SEQ ID NO:27:Designed PCR primer Neo−F to amplify a portion of neomycin resistant gene.
SEQ ID NO:28:Designed PCR primer Neo−R to amplify a portion of neomycin resistant gene.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーター配列、該配列に翻訳可能な形で連結された、少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列、およびポリAシグナル配列を有する核酸構築物であって、
該核酸構築物はプロモーター配列とポリAシグナル配列の間に前記のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とは異なる、翻訳されないヌクレオチド配列をさらに含有し、
プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列と該配列とは異なる翻訳されないヌクレオチド配列は該核酸構築物より1分子のRNAとして転写されるように連結されており、
さらに前記の翻訳されないヌクレオチド配列が下記から選択されることを特徴とする核酸構築物;
(1)タンパク質をコードするヌクレオチド配列または前記タンパク質の一部をコードするヌクレオチド配列、および
(2)天然においてタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域のヌクレオチド配列。
【請求項2】
翻訳されないヌクレオチド配列が、プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の下流に位置している請求項1記載の核酸構築物。
【請求項3】
翻訳されないヌクレオチド配列が、プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列の上流に位置している請求項1記載の核酸構築物。
【請求項4】
プロモーター配列に翻訳可能な形で連結されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列がレポータータンパク質をコードするものである請求項1記載の核酸構築物。
【請求項5】
請求項1記載の核酸構築物を含有するベクター。
【請求項6】
翻訳可能な形の少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列と該配列とは異なる、翻訳されないヌクレオチド配列を含有するRNAであって、前記の翻訳されないヌクレオチド配列が下記から選択されることを特徴とするRNA;
(1)前記の翻訳可能な形のタンパク質をコードするヌクレオチドとは異なるタンパク質をコードするヌクレオチド配列または前記タンパク質の一部をコードするヌクレオチド配列、および
(2)天然において前記の翻訳可能な形のタンパク質をコードするヌクレオチドとは異なるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域のヌクレオチド配列。
【請求項7】
機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法であって、下記工程;
(1)翻訳されないヌクレオチド配列として標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する請求項1記載の核酸構築物もしくは請求項5記載のベクターよりRNAを転写させる工程、
(2)工程(1)で転写されたRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(3)工程(2)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(4)工程(3)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいて機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する工程、
を包含することを特徴とする標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法。
【請求項8】
機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法であって、下記工程;
(1)翻訳されないヌクレオチド配列として標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、標的遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する請求項6記載のRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(2)工程(1)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(3)工程(2)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいて機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する工程、
を包含することを特徴とする標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の方法により、機能的ヌクレオチドによる標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出することを特徴とする、標的遺伝子の発現を変化させる機能的ヌクレオチド分子の検索方法。
【請求項10】
細胞内もしくは無細胞タンパク質合成系でヌクレオチド分子のRNAへの接触が行われる請求項7または8記載の機能的ヌクレオチド分子による標的遺伝子の発現を変化させる作用を検出する方法。
【請求項11】
ヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を検索する方法であって、下記工程;
(1)翻訳されないヌクレオチド配列として任意の遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する請求項1記載の核酸構築物もしくは請求項8記載のベクターよりRNAを転写させる工程、
(2)工程(1)で転写されたRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(3)工程(2)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(4)工程(3)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいてヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を同定する工程、
を包含することを特徴とするヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法。
【請求項12】
ヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子を検索する方法であって、下記工程;
(1)翻訳されないヌクレオチド配列として任意の遺伝子中のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の一部、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側もしくは3’側に位置する非翻訳領域から選択されるヌクレオチド配列を有する請求項6記載のRNAにヌクレオチド分子を接触させる工程、
(2)工程(1)のRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物を検出する工程、および
(3)工程(2)で検出されたRNAまたは該RNAより翻訳される翻訳産物の量に基づいて標的遺伝子の発現を変化させる機能的ヌクレオチド分子を同定する工程、
を包含することを特徴とするヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法。
【請求項13】
細胞内もしくは無細胞タンパク質合成系でヌクレオチド分子のRNAへの接触が行われる請求項11または12記載のヌクレオチド分子によって発現が変化する遺伝子の検索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/021752
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513439(P2005−513439)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012172
【国際出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】