説明

欠陥修正方法および欠陥修正装置

【課題】欠陥部に塗布されたインクのレベリング(膜厚均一化)を、常に安定して行なうことができる技術を提供する。
【解決手段】この発明の欠陥修正方法では、基板上の微細領域に液状材料を塗布する工程(S20)を備える。また、基板と対向する平坦面を有する加圧ヘッドを、平坦面が微細領域の全部を覆い隠すように、基板に押し付けることによって、塗布された液状材料を加圧する工程(S40)を備える。微細領域の全部において液状材料を均一に加圧することにより、液状材料の厚みを均一化するレベリングが可能となるので、高品質な欠陥修正が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、欠陥修正方法および欠陥修正装置に関し、特に、基板上の微細領域に液状材料を塗布して欠陥を修正する、欠陥修正方法および欠陥修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD(Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ)の大型化、高精細化に伴い画素数も増大し、LCDを無欠陥で製造することは困難となり、欠陥の発生確率も増加している。このような状況下において歩留まり向上のために、LCDのカラーフィルタの製造工程において発生する欠陥を修正することで良品転換する、欠陥修正装置が生産ラインに不可欠となっている。
【0003】
また最近では、LCDでも37〜45インチ程度のものが市販されており、1画素のサイズも小型パネルの60μm×200μm程度から200μm×600μm程度と大きくなっている。画素サイズが大きくなるに伴い、欠陥サイズも大きくなり、修正サイズも大きくなっている。このような状況において、従来の小さな修正サイズでは問題とされなかった修正品位でも、大きな修正サイズでは目視で見える領域となるため問題になる場合がある。
【0004】
図5(a)〜(c)は、LCDのカラーフィルタの製造工程において発生する欠陥を示す図である。図5(a)〜(c)に示すように、カラーフィルタは、透明基板と、その表面に形成されたブラックマトリクス300と呼ばれる格子状のパターンと、複数組のR(赤色)画素301、G(緑色)画素302、およびB(青色)画素303とを含む。カラーフィルタの製造工程においては、図5(a)に示すように画素やブラックマトリクス300の色が抜けてしまった白欠陥304や、図5(b)に示すように隣の画素と色が混色したり、ブラックマトリクス300が画素にはみ出してしまった黒欠陥305や、図5(c)に示すように画素に異物が付着した異物欠陥306などが発生する。
【0005】
白欠陥304を修正する方法としては、白欠陥304が存在する画素と同色のインクを塗布針の先端部に付着させ、針先端に付着させたインクを白欠陥304に転写し白欠陥304を覆う方法がある。また、黒欠陥305や異物欠陥306を修正する方法としては、欠陥部分をレーザ光の照射により除去してレーザカット部を形成し、レーザカット部が存在する画素と同色のインクをレーザカット部に塗布してインク塗布部を形成する方法がある。インク塗布により欠陥を修正する装置は、たとえば特許文献1で提案されている。
【0006】
図6は、黒欠陥の修正方法を示す模式図である。図6(a)に示すように、たとえばカラーフィルタの透明基板のG画素302に黒欠陥305が発生した場合、黒欠陥305にレーザ光を照射して黒欠陥305およびその周辺のG画素302を除去して、図6(b)に示す矩形のレーザカット部310を形成する。その後、レーザカット部310に、G画素302と同色のインクを塗布することにより、黒欠陥305を修正する。
【0007】
従来は、レーザカット部310の容積よりも多い量のインクを塗布し、インクがレーザカット部310からはみ出る程度に塗布して修正を行なっていた。しかし、LCDの高精密化に伴い、欠陥修正後の品質についても要求が厳しくなり、レーザカット部310からのインクのはみ出しのない修正が求められている。インクのはみ出しのない修正のためには、図6(c)に示すように、インクはレーザカット部310の中心付近に塗布されて、インク塗布部311が形成される。
【0008】
この場合、インクの粘性が高く流動性が悪いと、塗布されたインクの表面張力が作用することによって、たとえば先端部にインクを付着させた塗布針を被塗布物に接触させてインクを塗布したときに、インクが本来塗布されるべき領域のすべてに及んで塗布されない場合がある。たとえば、図6(c)において、インク塗布部311がレーザカット部310の全体に及ばず、矩形のレーザカット部310の角部付近において、インクが塗布されていない空隙312が発生している。つまり、図6(c)のVID−VID線による断面を示す図である図6(d)に示すように、レーザカット部310の中心付近ではレーザカット部310全体に渡ってインク塗布部311が形成されている。一方、図6(c)のVIE−VIE線による断面を示す図である図6(e)に示すように、レーザカット部310の角部付近ではインクが塗布されていない空隙312が発生し、空隙312においては基板2が露出している。
【0009】
空隙312を解消するためにレーザカット部310に再度インクを塗布する場合には、逆にインクの塗布量が多くなりすぎ、レーザカット部310からインクがはみ出す、修正後のインク塗布部311の色がG画素302よりも濃くなる、などの、欠陥修正後の品質上の問題が生じる。そのため、空隙312を解消するために、インク塗布部311にエアーを吹き付け、インクの膜厚の均一化(レベリング)を行なう方法が提案されている(たとえば特許文献2参照)。この場合、エアーの吹き付けによりインクがレーザカット部310からはみ出すため、インク塗布部311を露光により硬化させた後、はみ出したインクを洗浄で取り除く工程を設けている。
【特許文献1】特開平9−236933号公報
【特許文献2】特開平1−96601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2で提案されているエアーを吹き付けるレベリング方法では、エアーの吹き付け方向が限られるために、レベリングができない場合がある。図7は、エアー噴射前後のインク塗布部の例を示す模式図である。図7(a)はエアー噴射前のインク塗布部311と、エアー噴射ノズルとを示す平面模式図である。図7(b)は、図7(a)のVIIB−VIIB線による断面を示す模式図である。図7(c)はエアー噴射後のインク塗布部311を示す平面模式図である。図7(d)は、図7(c)のVIID−VIID線による断面を示す模式図である。
【0011】
図7(b)に示すように、エアー噴射ノズル121から噴射されるエアーは、矢印122に沿って流れる。つまり、図7(b)に示すようにエアー噴射ノズル121が基板2の表面に対して傾いて配置された状態でエアーを噴射すると、インク塗布部311の表面におけるエアーの流れ122は、エアー噴射ノズル121に近接する一方側(図7(b)の右側)から、エアー噴射ノズル121から離れる他方側(図7(b)の左側)へ向かう流れとなる。その結果、エアー噴射後において、図7(c)に示すように、上記一方側の空隙312は解消できない。また、図7(d)に示すように、インク塗布部311には上記他方側に偏り313が発生する。このように、インク塗布部311にエアーを吹き付けるレベリング方法では、レーザカット部310の全体にインクをレベリングできない場合が多いという課題がある。
【0012】
それゆえに、この発明の主たる目的は、欠陥部に塗布されたインクのレベリング(膜厚均一化)促進方法において、常に安定したレベリングを可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る欠陥修正方法では、基板上の微細領域に液状材料を塗布して欠陥を修正する。欠陥修正方法は、微細領域に液状材料を塗布する工程を備える。また、基板と対向する平坦面を有する加圧ヘッドを、平坦面が微細領域の全部を覆い隠すように、基板に押し付けることによって、塗布された液状材料を加圧する工程を備える。
【0014】
この場合は、インクなどの液状材料を広げ行き渡らせたい領域である微細領域の全部において、塗布された液状材料を均一に加圧することにより、液状材料の厚みを均一化するレベリングが可能となる。従来の液状材料を再度塗布する方法のように、液状材料のはみ出しや、液状材料がインクの場合に色が濃くなりすぎるという問題もなく、また、一方向からエアー噴射する方法のようにインクの偏りが発生するという不具合もなく、高品質な欠陥修正が可能となる。
【0015】
好ましくは、加圧する工程において、平坦面は樹脂フィルムにより被覆されている。この場合は、樹脂フィルムを介在させて加圧するので、加圧ヘッドに液状材料が付着することを防ぐことができる。よって、加圧ヘッドを洗浄する必要がなく、工程を簡略化することが可能となる。
【0016】
また好ましくは、加圧する工程の後に、樹脂フィルムにおいて加圧する工程の実施時に平坦面を被覆していた部分とは異なる部分が平坦面を被覆するように、樹脂フィルムを加圧ヘッドに対して相対的に移動させる工程をさらに備える。この場合は、液状材料が樹脂フィルムに付着した場合でも、樹脂フィルムを加圧ヘッドに対して相対的に移動させることで、加圧ヘッドを被覆する樹脂フィルムの部分が交換され、常に清浄な樹脂フィルム面を基板に接触させて加圧することが可能となる。
【0017】
また好ましくは、塗布する工程と加圧する工程との間に、液状材料を硬化させる工程をさらに備える。この場合は、加圧する前に液状材料を乾燥させ、液状材料が塑性変形可能な程度に硬化させることによって、液状材料が加圧ヘッドまたは樹脂フィルムに一層付着しにくくなる。よって、加圧ヘッドの洗浄や樹脂フィルムの交換のために必要とされる工数を低減することができる。
【0018】
この発明に係る欠陥修正装置は、上記の欠陥修正方法のいずれかに用いられる欠陥修正装置である。欠陥修正装置は、基板上の微細領域に液状材料を塗布する塗布機構を備える。また、基板と対向する平坦面を有する加圧ヘッドを備える。また、加圧ヘッドを基板の表面に対して交差する方向に移動させる駆動部を備える。そして、平坦面の基板への正射影は、微細領域の全部を覆い隠し得るものである。この場合は、微細領域の全部において液状材料を均一に加圧することにより、液状材料の厚みを均一化するレベリングが可能となるので、高品質な欠陥修正が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の欠陥修正方法および欠陥修正装置によれば、欠陥部に塗布されたインクのレベリング(膜厚均一化)を、常に安定して行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0021】
図1は、欠陥修正装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、この欠陥修正装置1は、観察光学系6、CCDカメラ7、レーザ8、インク塗布機構9、インク硬化用照明10および加圧機構11から構成される欠陥修正ヘッド部を備える。
【0022】
また、欠陥修正ヘッド部と基板テーブルとを相対的に移動させて位置決めを行なう位置決め機構を備える。位置決め機構は、欠陥修正ヘッド部を基板2に対して垂直方向(Z軸方向)に移動させる、第1の副駆動部としてのZ軸テーブル5を含む。また位置決め機構は、Z軸テーブル5を搭載して、基板2に略平行なX軸方向にZ軸テーブル5を移動させる、第2の副駆動部としてのX軸テーブル3を含む。また位置決め機構は、基板2が載置され、X軸方向と直交し基板に略平行なY軸方向に基板2を移動させるための、基板テーブルとしてのY軸テーブル4を含む。
【0023】
欠陥修正装置1はまた、装置全体の動作を制御する制御用コンピュータ12と、制御用コンピュータ12に作業者からの指令を入力するための操作パネル13とを備える。
【0024】
観察光学系6は、基板2の表面状態(基板2の表面上の欠陥部を含む)を観察するためのものである。観察光学系6によって観察される画像は、CCDカメラ7により電気信号に変換され、制御用コンピュータ12のモニタ画面に表示される。レーザ8は、基板2にレーザ光を照射するために用いられる。基板2がLCDのカラーフィルタが形成されたものである場合、レーザ光の照射により、基板2に発生した黒欠陥や異物欠陥が除去される。
【0025】
インク塗布機構9は、基板2上の微細領域に、塗布針の先端部に付着したインクを塗布して修正する。つまり、インク塗布機構9は、液状材料としてのインクを基板上の微細領域に塗布する、塗布機構である。基板2がLCDのカラーフィルタが形成されたものである場合、微細領域とは、白欠陥、または、黒欠陥もしくは異物欠陥が除去されたことにより基板2に形成された凹形状のレーザカット部である。インク硬化用照明10は、インク塗布機構9で塗布されたインクを硬化させるための光を照射する。インクが紫外線硬化タイプの場合は、紫外線照明がインク硬化用照明10として選択されて装置に搭載される。インクが熱硬化タイプの場合は、ハロゲンランプ照明がインク硬化用照明10として選択されて装置に搭載される。
【0026】
加圧機構11は、基板2と対向する平坦面を有する加圧ヘッドと、加圧ヘッドを基板2の表面に対して交差する方向に移動させる駆動部とを含む。平坦面の基板2への正射影が微細領域の全部を覆い隠し得るものであるように、加圧ヘッドは成形される。つまり、たとえば平坦面が矩形である場合、矩形の四辺から基板2に下ろした垂線の足の集合である正射影が、基板2の表面において微細領域の全部を覆うように、加圧ヘッドは成形される。よって、駆動部を駆動させて加圧ヘッドを基板2へ向かって移動させ、加圧ヘッドを基板2に接触させた場合、加圧ヘッドにおいて基板2に接触する部位である平坦面は微細領域よりも大きく、したがって平坦面が微細領域の全部を覆うことができる。このとき微細領域に液状材料が塗布されていれば、液状材料を微細領域の全部において均一に加圧することができる。
【0027】
なお、加圧ヘッドの平坦面の形状は矩形に限られず、たとえば円形状や他の多角形状など任意の形状とすることができる。平坦面のサイズは微細領域の全部を覆うことができるものであればよい。たとえば基板がカラーフィルタの場合、ブラックマトリクスで囲まれた1つの画素の寸法に合わせて(たとえば、一つの画素の寸法と同じ寸法になるように)平坦面の寸法を決定してもよく、また1つの画素の寸法よりも平坦面の寸法が大きくても構わない。たとえば平坦面の外周形状が一つの画素の形状と相似形であってもよく、その形状において画素内部を一度に押圧できるような寸法、または対応する画素の寸法の95%となるようにしてもよい。また、加圧ヘッドは樹脂成形品であってもよく、後述するように樹脂フィルムを介在させて加圧ヘッドが基板と接触するのであれば加圧ヘッドは金属製であってもよい。
【0028】
図2は、欠陥修正装置の構成要素を示すブロック図である。図2に示すように、欠陥修正装置1の各構成要素、すなわち、観察光学系6、レーザ8、インク塗布機構9、インク硬化用照明10、加圧機構11、位置決め機構の動作は、制御用コンピュータ12により制御される。加圧機構11は、加圧ヘッドを基板表面に対して交差する方向、たとえば垂直方向に移動させる駆動部としての加圧ヘッド駆動機構と、樹脂フィルムを加圧ヘッドに対して相対的に移動させる樹脂フィルム移動機構とを含む。本装置構成により、基板上の微細領域の欠陥、たとえば、カラーフィルタに発生した白欠陥、黒欠陥、異物欠陥の修正が可能である。
【0029】
次に、欠陥修正装置1を用いて、基板2上の微細領域に液状材料を塗布して欠陥を修正する方法について説明する。図3は、欠陥修正方法を示す流れ図である。図4は、インク加圧工程を示す模式図である。図4(a)は、カラーフィルタのG画素302に発生した黒欠陥をレーザ光の照射により除去した後の、レーザカット部にインクを塗布した状態を示す平面図である。図4(b)は、図4(a)に示すIVB−IVB線による断面における、基板2の断面図であり、インク塗布部311に接触する前の加圧ヘッド21が併せて示されている。図4(c)は、加圧ヘッド21がインク塗布部311に接触し、液状材料としてのインクを加圧している状態を示す、基板2の断面図である。図4(d)はインク加圧後の状態を示す平面図である。図4(e)は、図4(d)に示すIVE−IVE線による断面における、基板2の断面図である。
【0030】
まず工程(S10)において、前処理として、位置決め機構を駆動し、Y軸テーブル4に載置された基板2に対して欠陥修正ヘッド部を相対的に移動させる。そして、観察光学系6を用いて観察された黒欠陥の真上にレーザ8を配置させ、黒欠陥にレーザ光を照射して、黒欠陥およびその周辺のカラーフィルタの樹脂材料を除去し、レーザカット部310(図6(b)参照)を形成する。
【0031】
次に工程(S20)において、レーザカット部310の真上にインク塗布機構9を配置させ、基板上の微細領域としてのレーザカット部310に、液状材料としてのインクを塗布する。インクがレーザカット部310に充填され、インク塗布部311が形成された状態を図4(a)に示す。レーザカット部310が形成されている画素(すなわち、図4(a)の場合はG画素302)と同色のインクが、レーザカット部310に塗布される。図4(a)では、塗布されたインクの粘性が高いために、インク塗布部311がレーザカット部310の全体に及ばず、矩形のレーザカット部310の角部付近において、インクが塗布されていない空隙312が発生している。
【0032】
次に工程(S30)において、インク塗布部311の真上にインク硬化用照明10を配置させる。そして、インク塗布部311にインクを硬化させるための光(紫外光またはハロゲン光)を照射し、液状材料としてのインクを乾燥させ、インク塗布部311をインクが塑性変形可能な程度に硬化させる。
【0033】
次に工程(S40)において、インク塗布部311の真上に加圧機構11を配置させる。ここで加圧ヘッド21は、図4(b)に示すように、基板2と対向する平坦面が、たとえばポリイミドフィルムのような、耐屈曲性などの機械的特性に優れた樹脂材料からなる薄膜である、樹脂フィルム22により被覆されている。そして、図示しない駆動部としての加圧ヘッド駆動機構の駆動により加圧ヘッド21を基板2に対して垂直なZ軸方向に移動させて加圧ヘッド21を基板2に近接させ、Z軸テーブル5により加圧ヘッド21をZ軸方向に沿って基板2にさらに接近させる。そして図4(c)に示すように、平坦面を被覆した樹脂フィルム22を基板2の表面のインク塗布部311に接触させる。
【0034】
このとき、加圧ヘッド21の平坦面は微細領域としてのレーザカット部310の全部を覆うことができるものであるように成形されており、図4(c)に示すように、平坦面を被覆した樹脂フィルム22がレーザカット部310の全部を覆うように、加圧ヘッド21を移動させる。そして、加圧ヘッド21の平坦面がレーザカット部310の全部を覆い隠すように、平坦面を基板2に押し付ける。これにより、レーザカット部310に塗布されているインクは、凹形状のレーザカット部310と平坦面とが形成する空間の内部に閉じ込められた状態で加圧ヘッド21によって押圧されるために、加圧される。加圧されたインクはレーザカット部310の全体に広がり、レーザカット部310全体にインクが充填される。つまり図4(d)(e)に示すように、インク加圧後には、空隙312は消滅する。レーザカット部310の全部においてインクが均一に加圧されるので、インクの厚みが均一化される。すなわち、インク加圧によって、レーザカット部310内でのインクのレベリングが可能となる。
【0035】
加圧ヘッド21は、正常なカラーフィルタ面を基準にして、基板2に押し付けられる。つまり、図4(c)に示すように、インクを加圧するときに、樹脂フィルム22の基板2と対向する側の面が正常なカラーフィルタ面と揃うように、加圧ヘッド21のZ軸方向の位置が制御される。このようにすれば、加圧後のインク塗布部311は、図4(e)に示すように、正常なカラーフィルタ面を基準としてレベリングされる。つまり、インク塗布部311の厚みを、正常なカラーフィルタ面(G画素302など)の厚みに揃えることができる。
【0036】
ここで、加圧ヘッド21の平坦面は樹脂フィルム22により被覆されており、樹脂フィルム22を介在させてインク塗布部311を加圧するので、加圧ヘッド21にインクが付着することを防ぐことができる。樹脂フィルム22を設けずに加圧ヘッド21を直接インクに接触させて加圧してもよいが、インクが加圧ヘッド21に付着する可能性がある。インクが付着すると加圧ヘッド21をクリーニングする必要が生じ、毎回残留物のないようにクリーニングするのは困難である。よって、樹脂フィルム22を介在させてインク塗布部311を加圧するのがより好ましく、このようにすれば加圧ヘッド21を洗浄する必要がなく、工程を簡略化することが可能となる。なお、前工程(S30)においてインクを塑性変形可能な程度に硬化させていることから、一層インクが樹脂フィルム22に付着しにくくなっている。インクを予め硬化させなくても加圧時の樹脂フィルム22へのインク付着が問題とならない程度に抑えられる場合には、インクを硬化させる工程(S30)を省略しても構わない。
【0037】
図3に戻って、次に工程(S50)において、樹脂フィルム22を加圧ヘッド21に対して相対的に移動させる。たとえば、供給リールと巻取リールとによって構成される巻取り機構を設けることができる。そして、樹脂フィルム22をテープ状とし、テープ状の樹脂フィルム22の一方端を供給リールに固定し、他方端を巻取リールに固定し、供給リールと巻取リールとを任意に調整される同一の速度で回転させれば、樹脂フィルム22を巻き取って加圧ヘッド21に対して相対的に移動させることができる。
【0038】
樹脂フィルム22を加圧ヘッド21に対して相対的に移動させることで、樹脂フィルム22において加圧する工程(S40)の実施時に平坦面を被覆していた部分とは異なる部分が平坦面を被覆する。よって、加圧する工程(S40)において液状材料としてのインクが樹脂フィルム22に付着した場合でも、加圧ヘッド21を被覆する樹脂フィルム22が交換されるので、常に清浄な樹脂フィルム22面を基板2に接触させて加圧することが可能となる。なお、樹脂フィルム22にインクが付着していない場合には、本工程(S50)を省略しても構わないことは勿論である。
【0039】
次に工程(S60)において、後処理として、位置決め機構の駆動によりインク塗布部311の真上にインク硬化用照明10を配置させ、光を照射してインク塗布部311に充填されたインクを硬化させる。これによって、黒欠陥305が発生していた箇所にはその周辺と同品質のG画素302が形成され、黒欠陥305の修正が完了する。
【0040】
以上説明したように、この欠陥修正方法においては、微細領域としてのレーザカット部310の全部においてインクなどの液状材料を均一に加圧することにより、液状材料の厚みを均一化するレベリングが可能となる。従来の液状材料を再度塗布する方法のように、液状材料のはみ出しや、液状材料がインクの場合に色が濃くなりすぎるという問題もなく、また、一方向からエアー噴射する方法のようにインクの偏りが発生するという不具合もなく、高品質な欠陥修正が可能となる。なお、これまでの説明においては、LCDのカラーフィルタの製造工程において発生する欠陥修正用のインクを液状材料の例として説明したが、塗布される材料はこれに限られるものではなく、粘性が高く流動性が悪い材料であれば、この発明の欠陥修正方法が適用可能である。たとえば、ゲル状の柔らかい半固体または固体である材料であっても、適用することができる。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】欠陥修正装置の全体構成を示す図である。
【図2】欠陥修正装置の構成要素を示すブロック図である。
【図3】欠陥修正方法を示す流れ図である。
【図4】インク加圧工程を示す模式図である。
【図5】カラーフィルタの製造工程において発生する欠陥を示す図である。
【図6】黒欠陥の修正方法を示す模式図である。
【図7】エアー噴射前後のインク塗布部の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 欠陥修正装置、2 基板、3 X軸テーブル、4 Y軸テーブル、5 Z軸テーブル、6 観察光学系、7 CCDカメラ、8 レーザ、9 インク塗布機構、10 インク硬化用照明、11 加圧機構、12 制御用コンピュータ、13 操作パネル、21 加圧ヘッド、22 樹脂フィルム、121 エアー噴射ノズル、122 エアーの流れ、300 ブラックマトリクス、301 R画素、302 G画素、303 B画素、304 白欠陥、305 黒欠陥、306 異物欠陥、310 レーザカット部、311 インク塗布部、312 空隙、313 インクの偏り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の微細領域に液状材料を塗布して欠陥を修正する欠陥修正方法において、
前記微細領域に前記液状材料を塗布する工程と、
前記基板と対向する平坦面を有する加圧ヘッドを、前記平坦面が前記微細領域の全部を覆い隠すように、前記基板に押し付けることによって、塗布された前記液状材料を加圧する工程とを備える、欠陥修正方法。
【請求項2】
前記加圧する工程において、前記平坦面は樹脂フィルムにより被覆されている、請求項1に記載の欠陥修正方法。
【請求項3】
前記加圧する工程の後に、前記樹脂フィルムにおいて前記加圧する工程の実施時に前記平坦面を被覆していた部分とは異なる部分が前記平坦面を被覆するように、前記樹脂フィルムを前記加圧ヘッドに対して相対的に移動させる工程をさらに備える、請求項2に記載の欠陥修正方法。
【請求項4】
前記塗布する工程と前記加圧する工程との間に、前記液状材料を硬化させる工程をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載の欠陥修正方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の欠陥修正方法に用いられる、欠陥修正装置であって、
基板上の微細領域に液状材料を塗布する塗布機構と、
前記基板と対向する平坦面を有する加圧ヘッドと、
前記加圧ヘッドを前記基板の表面に対して交差する方向に移動させる駆動部とを備え、
前記平坦面の前記基板への正射影は、前記微細領域の全部を覆い隠し得るものである、欠陥修正装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−180796(P2008−180796A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12796(P2007−12796)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】