説明

次亜塩素酸を含有する溶液及びその使用方法

本発明は、次亜塩素酸、水、及び、随意に、緩衝液を含む、低pH抗菌溶液に関する。本発明の低pH抗菌溶液は約4〜約6のpHを有し、障害されたか又は損傷された組織を治療するため及び表面を殺菌するために有用である。塩素ガスが緩衝剤及び水を含む緩衝液に添加される、低pH抗菌溶液の製造のための化学プロセスも提供される。本発明は、低pH抗菌溶液の製造のための電気化学プロセスも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、低pH抗菌溶液及びそのような溶液の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
遊離塩素(FAC)水溶液(超酸化水溶液としても知られる)は、広範な細菌、ウイルス、及び胞子に対するその迅速で高い抗菌活性に起因して、殺菌剤及び創傷処置治療として幅広い用途を示している。FAC水溶液は、典型的には環境上安全であり、従って、コストのかかる廃棄手順の必要がない。また、FAC水溶液は、微生物の抵抗性又は耐性(従来の抗生物質治療では発現され得る)を促進しない。これらの溶液は、典型的には5から7の間のpHを有し、高濃度の多数の反応性の高い塩素種(例、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム等)及び抗菌特性を与える他の酸化性化学種(oxidative species)を含有する。
【0003】
標準のFAC水溶液は効果的な殺菌剤であるが、その中に存在する塩素種及び酸化性化学種の反応性に起因して、それらは一般に極めて限られた貯蔵寿命(通常わずか数時間)を有する。この短い寿命の結果として、FAC水の製造は、多くの場合、FAC水が殺菌剤として使用される場所に近接して行なわれなければならない。このことは、保健医療施設(病院など)がFAC水を製造するために必要な設備を購入し、収容し、そして維持しなければならないことを意味する。また、それらの高い反応性及び非選択性を考えれば、標準のFAC水溶液は、多くの場合、創傷部位に存在する有機物負荷により不活性化され得、それにより創傷処置治療としての有効性を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、上記の標準のFAC水溶液の欠点に対処する新しい殺菌剤及び創傷処置治療の必要性が残っている。本発明はそのような方法を提供する。本発明のこれらの利点及び他の利点、並びに更なる発明の特徴は、本明細書中に提供される本発明の記載から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、次亜塩素酸及び水を含む低pH抗菌溶液に関する。本発明の低pH抗菌溶液は約4〜約6のpHを有し、緩衝液を更に含み得る。このような溶液は、障害された(impaired)か又は損傷された組織を治療するため、及び生体及び/又は無生物の表面を殺菌するために使用され得る。
【0006】
本発明は、次亜塩素酸及び水を含む低pH抗菌溶液の製造のための方法を更に提供する。本発明の一つの方法は、塩素ガスが緩衝剤及び水を含有する緩衝液に添加される化学的手順を含む。別の実施形態において、低pH抗菌溶液は、電気化学プロセスを使用して製造され得る。本発明の特定の態様において、化学プロセス及び電気化学プロセスの両方が連続的であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明は、非限定的例としてのみ添付の図面を参照して説明される:
【0008】
【図1】図1は、本発明の低pH抗菌溶液の加速(40℃)貯蔵寿命遊離塩素(FAC)試験について確立した回帰直線プロットを示す。
【図2】図2は、本発明の低pH抗菌溶液による処理後のPseudomonas aeruginosaサンプルの細胞の形態を示す電子顕微鏡写真を示す。
【図3】図3は、pH7.5の従来技術の溶液による処理後のPseudomonas aeruginosaサンプルの細胞の形態を示す電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、次亜塩素酸及び水を含む低pH抗菌溶液に関する。本発明の低pH抗菌溶液は、約1〜約7の任意の酸性pHであり得る。この関連で、抗菌溶液は、それらが表面を損傷させたり、溶液と接触するヒトの皮膚などの対象を害したりすることなく、表面に適切な量で安全に適用され得るような、任意の低いpHであり得る。典型的には、抗菌溶液のpHは約4〜約6である。更なる実施形態において、本発明の抗菌溶液は約4.9〜約5.6のpHを有する。抗菌溶液は、別の実施形態において約4.5から約5.6のpHを有する。
【0010】
低pH抗菌溶液において用いられる水は、任意の適切な水であり得る。例えば、水は、精製水及びUSPグレードの水を含む、任意の医学上又は医薬上許容される水であり得る。好ましくは、精製水は脱イオン水又は逆浸透水である。他の例示的な水の供給源は、自治体によって供給される商業的な、住宅向けの(residential)、又は工業用の水であり得る。好ましい実施形態において、水は、逆浸透、脱イオン化、又は蒸留などのプロセスによって精製された精製水である。
【0011】
種々のイオン種及び他の化学種が、本発明の低pH抗菌溶液中に存在し得る。例えば、抗菌溶液は塩素を含有し得る。好ましくは、存在する塩素種は遊離塩素である。1つ以上の塩素種の存在は、溶液の抗菌力及び殺菌力に寄与すると考えられる。
【0012】
遊離塩素としては、典型的には、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO)、溶解塩素ガス(Cl)、及び他のラジカル塩素種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
次亜塩素酸及び次亜塩素酸塩は、pH依存性の平衡状態で存在する。従って、決して本発明を限定するものではないが、上記のようなpHの制御は、次亜塩素酸塩(例、次亜塩素酸ナトリウム)及び塩化物イオンが少量で存在し、且つ次亜塩素酸含量が最大化された、安定な抗菌溶液を可能にすると考えられる。このことは、殺菌活性(biocidal activity)が、次亜塩素酸ではなく、次亜塩素酸塩及び塩化物(より迅速な反応性の塩素種の形成につながる)の高い相対濃度のおかげである一般的に知られている塩素含有溶液とは対照的である。
【0014】
この関連で、本発明の低pH抗菌溶液は、所望の抗菌活性を達成するのに必要な任意の適切な量で、次亜塩素酸を含む。典型的には、溶液は、約5mg/L〜約200mg/Lの量で次亜塩素酸を含む。本発明の別の実施形態において、溶液は、約7mg/L〜約110mg/Lの量で次亜塩素酸を含む。
【0015】
遊離塩素(FAC)種(即ち、二原子塩素、次亜塩素酸、及び次亜塩素酸塩)は、所望の抗菌活性が達成されるような、任意の適切な量で、本発明の低pH抗菌溶液中に存在し得る。典型的には、本発明の溶液は、約10mg/L〜約250mg/LのFAC含量を有する。本発明の別の実施形態において、遊離塩素は、約60mg/L〜約150mg/Lの量で存在する。
【0016】
上記のように、本発明の低pH抗菌溶液は、既知の塩素含有抗菌溶液と比較して、少量で塩化物イオンを含む。塩化物イオン含量は、本発明の溶液中の次亜塩素酸レベルが、所望の抗菌活性をもたらすのに必要な量で維持され得るような、任意の適切な量であり得る。例示的な低pH抗菌溶液は、約4mg/L〜約120mg/Lの量で塩化物イオンを含有する。本発明の別の実施形態において、塩化物イオンは、約4mg/L〜約75mg/Lの量で存在する。より好ましくは、塩化物イオンは、約4mg/L〜約65mg/Lの量で本発明の溶液中に存在する。
【0017】
本発明の低pH抗菌溶液中に存在する種々のイオン種及び他の化学種のレベルは、当該分野において公知の任意の適切な方法により測定され得る。例えば、塩素含量は、DPD比色法(Lamotte Company、Chestertown、Maryland)又は環境保護庁(Environmental Protection Agency)により確立された他の公知の方法などの方法により測定され得る。DPD比色法においては、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)と遊離塩素の反応により黄色に発色し、百万分率で出力を与える較正された比色計を用いて、その強度が測定される。ヨウ化カリウムの更なる添加は、溶液をピンク色に変え、全塩素値を与える。遊離塩素を測定するための別の公知の方法は、特定の波長における紫外(UV)光の吸収を測定することである。各化学種が固有の吸収スペクトルを有するため、この方法は、次亜塩素酸及び次亜塩素酸塩の個別の測定を可能にする。
【0018】
本発明の一実施形態において、本発明の低pH抗菌溶液は、緩衝剤を更に含み得る。緩衝剤は、pHを上記の所望のレベルで維持するために、任意の適切な量で存在し得る。同様に、任意の適切な緩衝剤又は緩衝剤の組合せが、本発明の組成物と関連して使用され得る。適切な緩衝剤の例としては、クエン酸、酢酸、コハク酸、ホウ酸、ギ酸、安息香酸、炭酸、プロピオン酸、リン酸、それらの塩、及びそれらの組合せが挙げられる。一実施形態において、本発明の低pH抗菌溶液は、リン酸緩衝液を含有する。好ましい実施形態において、緩衝剤は、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリン酸塩である。より好ましくは、緩衝剤は、第一リン酸ナトリウム及び第二リン酸ナトリウムの組合せである。
【0019】
本発明はまた、障害されたか又は損傷された組織の治療方法であって、治療有効量の本発明の低pH抗菌溶液と障害されたか又は損傷された組織を接触させる工程を含む方法を提供する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、本発明に関して患者(例、動物、特にヒト)の組織に投与される溶液の「治療有効量」は、妥当な期間にわたり組織における治療反応又は予防反応に影響するのに十分なものであるべきである。用量は、当該分野において周知の方法を使用して容易に決定され得る。当業者は、任意の特定の組織についての具体的な用量レベルが様々な要素に依存することを認識するだろう。例えば、用量は、用いられる特定の低pH抗菌溶液の強さ、状態の深刻さ、患者の体重、患者の年齢、患者の体調及び精神状態、全体的健康状態、性別、食事、などに基づき決定され得る。用量の大きさも、特定の低pH抗菌溶液の投与に付随し得る任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度に基づき決定され得る。可能な限り、有害な副作用を最小限に抑えることが望ましい。
【0021】
具体的な投与について考慮され得る要素としては、例えば、生物学的利用性、代謝プロファイル、投与時間、投与経路、排泄率、特定の患者における特定の低pH抗菌溶液に関連する薬力学、などが挙げられ得る。他の要素としては、例えば、治療される特定の障害又は損傷についての溶液の効能又は有効性、治療の前又は治療の過程において提示される症状の深刻さ、などが挙げられ得る。場合によっては、治療有効量を構成するものは、部分的に、障害されたか又は損傷された組織の治療のための特定の低pH抗菌溶液の薬効を合理的に臨床的に予測する、1つ以上のアッセイ(例、バイオアッセイ)の使用によっても決定され得る。
【0022】
当業者は、本発明の低pH抗菌溶液が、単独で又は1つ以上の他の治療剤と組み合わせて、障害されたか又は損傷された組織と接触させるために使用され得ることを認識するだろう。一実施形態において、1つ以上の他の治療剤は、低pH抗菌溶液と同じ目的のために(即ち、障害されたか又は損傷された組織を治療するために)投与される。更に別の実施形態において、1つ以上の他の治療剤は、例えば、炎症状態又はアレルギー反応などの関連する状態を治療又は予防するために投与される。
【0023】
同様に、本発明の低pH抗菌溶液は、当該分野において公知の1つ以上の医薬上許容される担体、媒体、アジュバント、賦形剤、又は希釈剤と組み合わせて投与され得る。当業者は、本発明に従って溶液を投与するための適切な剤形及び投与方法を決定し得る。
【0024】
本発明に従って障害されたか又は損傷された組織を治療するために、障害されたか又は損傷された組織と接触させるための任意の適切な方法が使用され得る。例えば、障害されたか又は損傷された組織を溶液と接触させるために、障害されたか又は損傷された組織は、本発明の低pH抗菌溶液で組織を洗浄することにより、本発明に従って治療され得る。或いは(及び加えて)、障害されたか又は損傷された組織を溶液と接触させるために、本発明の低pH抗菌溶液は、本明細書中に記載されるように、蒸気又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、噴霧化又は微粒化により、投与され得る。
【0025】
本発明の低pH抗菌溶液がエアロゾル化、噴霧化又は微粒化により投与される場合、好ましくは、約1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の直径を有する液滴の形態で投与される。エアロゾル化、噴霧化及び微粒化のために有用な方法及びデバイスは、当該分野において周知である。例えば、医療用噴霧器は、レシピエントによる吸入のための吸気ガス流中に、計量された用量の生理学的に活性な液体を送達するために使用されている。例えば、米国特許第6,598,602号を参照のこと。医療用噴霧器は、液滴(吸気ガスと共にエアロゾルを形成する)を作り出す働きをすることができる。他の状況においては、医療用噴霧器は、吸気ガス流中に水滴を入れ、適切な含水量を有するガスをレシピエントに提供するために使用され得、これは吸気ガス流が人工呼吸器(respirator)、換気装置(ventilator)又は麻酔送達システムなどの機械的な呼吸補助器具によって提供される場合に特に有用である。
【0026】
例示的な噴霧器は、例えば、WO95/01137に記載されており、この文献は、通過する空気流(吸気ガス流)(マウスピースを通じたレシピエントの吸入により作り出される)中に、医療用液体の液滴を噴出する働きをする携帯型のデバイスを記載する。別の例は、米国特許第5,388,571号中に見出され得、この文献は、正圧換気装置システム(呼吸不全を有する患者のために呼吸の制御及び増強をもたらし、患者の気道及び肺の肺胞内に液剤の粒子を送達するための噴霧器を含む)を記載する。米国特許第5,312,281号は、超音波噴霧器(低温において水又は液体を微粒化し、報告によればミストの大きさを調節することができる)を記載する。また、米国特許第5,287,847号は、新生児、子供及び大人に薬用エアロゾルを送達するための、調整可能な(scalable)流速及び出力体積を有する空気圧式噴霧器具を記載する。更に、米国特許第5,063,922号は、超音波噴霧器(atomizer)を記載する。
【0027】
本発明の方法は、例えば、手術により障害されたか又は損傷された組織の治療において使用され得る。一実施形態において、本発明の方法は、切開により障害されたか又は損傷された組織を治療するために使用され得る。更なる実施形態において、本発明の方法は、口腔手術、グラフト手術、インプラント手術、トランスプラント手術、焼灼、切断、放射線、化学療法、及びそれらの組合せにより、障害されたか又は損傷された組織を治療するために使用され得る。口腔手術としては、例えば、歯科手術(例えば、根管手術、抜歯、歯茎手術、など)が挙げられ得る。
【0028】
本発明の方法には、非外科的手段により障害されたか又は損傷された、組織を治療することも含まれる。例えば、本発明の低pH抗菌溶液は、1つ以上の熱傷、切り傷、擦過傷、掻き傷、発疹、潰瘍、穿刺創、それらの組合せ、など(それらは必ずしも手術によって引き起こされたものではない)を治療するために使用され得る。本発明の方法は、感染されている、障害されたか又は損傷された組織、或いは感染に起因して障害されたか又は損傷された組織を治療するためにも使用され得る。このような感染は、例えば、本明細書中に記載されるような、ウイルス、細菌、真菌、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の微生物などの、1つ以上の感染性病原体によって引き起こされ得る。
【0029】
ウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ライノウイルス、インフルエンザウイルス(例、インフルエンザA型)、肝炎(例、A型肝炎)、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome)(SARS)の原因である)、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス、及び他の感受性のウイルスからなる群から選択される1つ以上のウイルスが挙げられ得る。細菌としては、例えば、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Bacillus athrophaeus、Streptococcus pyogenes、Salmonella choleraesuis、Shingella dysenteriae、Mycobaterium tuberculosis、及び他の感受性の細菌からなる群から選択される1つ以上の細菌が挙げられ得る。本発明の低pH抗菌溶液を用いて治療され得る真菌及び酵母としては、例えば、Candida albicans、Bacillus subtilis、Trichophyton mentagrophytes、及びBacillus athrophaeusの1つ以上が挙げられ得る。
【0030】
更なる実施形態において、本発明の低pH抗菌溶液は、中レベル〜高レベルの有機物負荷(例、創傷部位において分解途上の生体物質)の存在下であっても、本明細書中に説明されるような広範なグラム陽性及びグラム陰性生物に対して有効である。このような活性は、既知の塩素含有溶液(中レベル〜高レベルの有機物負荷が抗菌活性を阻害することが知られている)とは対照的である。
【0031】
本発明は、表面を殺菌する方法であって、有効量の本発明の低pH抗菌溶液と表面を接触させる工程を含む方法を更に提供する。本発明の方法に従って、表面は、任意の適切な方法を使用して接触され得る。例えば、本発明に従って表面を殺菌するために、表面は、本発明の溶液で表面を洗浄することにより接触され得る。また、本発明に従って表面を殺菌するために、表面は、本明細書中に記載されるように、蒸気又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、噴霧化又は微粒化により、本発明の低pH抗菌溶液を表面に適用することにより接触され得る。更に、本発明の溶液は、例えば、クリーニングワイプ、布、スポンジ、ブラシ、などの基材を介して表面に適用され得る。
【0032】
本発明に従って表面を殺菌することにより、表面は、本明細書中に記載されるように、例えば、ウイルス、細菌、真菌、及びそれらの組合せなどの感染性微生物が除去される。或いは(又は加えて)、本発明の低pH抗菌溶液は、感染への障壁を提供するために表面に適用され得、それにより、本発明に従って表面を殺菌する。
【0033】
本発明の方法は、生体、無生物、又はそれらの組合せのものである表面を殺菌するために使用され得る。生体表面としては、例えば、1つ以上の体腔(例えば、口腔、副鼻腔(sinus cavity)、頭蓋腔、腹腔、及び胸腔など)内の組織が挙げられ得る。口腔内の組織としては、例えば、口の組織、歯茎の組織、舌の組織、及びのどの組織が挙げられる。生体組織としては、筋肉組織、骨組織、器官組織、粘膜組織、及びそれらの組合せも挙げられ得る。本発明の方法に従って、内臓器官、内臓(viscera)、筋肉、などの表面(手術中に露出され得る)は、例えば、手術環境の無菌性を維持するために、殺菌され得る。無生物表面としては、例えば、外科的に埋め込み可能なデバイス、補綴具、及び医療デバイスが挙げられる。無生物表面の更なる例としては、例えば、床、カウンター、家庭関連の硬い表面、電気回路、ハードドライブなどの、殺菌が必要とされ得る任意の非生体表面が挙げられる。
【0034】
本発明の低pH抗菌溶液は、通常、少なくとも20時間、典型的には少なくとも2日間安定である。より典型的には、溶液は、少なくとも1週間(例、1週間、2週間、3週間、4週間など)、好ましくは少なくとも2ヶ月間安定である。より好ましくは、溶液は、その調製後、少なくとも6ヶ月間安定である。なおより好ましくは、溶液は、少なくとも1年間、最も好ましくは少なくとも3年間安定である。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語安定(stable)とは、通常、標準の保存条件(即ち、室温)下で、その調製後特定の期間、例えば、汚染除去、殺菌、滅菌、抗菌洗浄(anti-microbial cleansing)、及び傷の洗浄におけるその意図された用途に適したままであるという、低pH抗菌水溶液の能力をいう。この関連で、本発明の低pH抗菌溶液は、加速条件(典型的には約30℃〜約60℃、少なくとも90日間、好ましくは180日間)下で保存された場合も安定である。
【0036】
溶液中に存在するイオン種及び他の化学種の濃度は、通常、低pH抗菌溶液の貯蔵寿命の間維持される。典型的には、遊離塩素種の濃度は、低pH抗菌溶液の調製後、少なくとも2ヶ月間、それらの初期濃度の約70%以上に維持される。好ましくは、これらの濃度は、溶液の調製後少なくとも2ヶ月間、それらの初期濃度の約80%以上に維持される。より好ましくは、これらの濃度は、該溶液の調製後少なくとも2ヶ月間、それらの初期濃度の約90%以上、最も好ましくは約95%以上である。
【0037】
本発明の低pH抗菌溶液の安定性は、溶液への曝露の後、試料中に存在する生きた微生物の量の減少に基づき決定され得る。生物濃度の減少の測定は、本明細書中に記載されるような、細菌、真菌、酵母、又はウイルスを含む任意の適切な生物を使用して行い得る。低pH抗菌溶液は、生きた微生物の濃度を4log(10)減少させることができる低レベル殺菌剤、及び生きた微生物の濃度を6log(10)減少させることができる高レベル殺菌剤の両方として有用である。
【0038】
本発明の一実施形態において、低pH抗菌溶液は、溶液の調製後少なくとも2ヶ月で測定した場合、1分間の曝露の後、全生物濃度を少なくとも4log(10)減少させることができる。好ましくは、溶液は、溶液の調製後少なくとも6ヶ月で測定した場合、生物濃度のそのような減少をさせることができる。より好ましくは、溶液は、調製後少なくとも1年で測定した場合、最も好ましくは調製後少なくとも3年で測定した場合、生物濃度のそのような減少をさせることができる。
【0039】
本発明の別の実施形態において、低pH抗菌溶液は、溶液の調製後少なくとも2ヶ月で測定した場合、1分以内の曝露で、全生物濃度を少なくとも6log(10)減少させることができる。好ましくは、FAC水溶液は、調製後少なくとも6ヶ月で測定した場合、より好ましくは調製後少なくとも1年間で測定した場合、この減少を達成することができる。好ましくは、FAC水溶液は、調製後少なくとも2ヶ月で測定した場合、1分以内の曝露で、生きた微生物の濃度を少なくとも7log(10)減少させることができる。
【0040】
本発明は更に、本発明の低pH抗菌溶液を製造するための方法を提供する。一実施形態において、低pH抗菌溶液は、酸化還元法(即ち、電解反応又はレドックス反応)により製造され得、そこでは、電気エネルギーが使用され、水溶液中で化学変化を起こす。電気エネルギーは、電流の形態で1点から別の点への電荷の伝導によって、水に導入されそして水を通って輸送される。電流が生じ、存続するために、水中に電荷担体が存在しなければならず、この担体を動かす力が存在しなければならない。電荷担体は、金属及び半導体の場合のように電子であり得、又はそれらは溶液の場合は陽イオン及び陰イオンであり得る。
【0041】
本発明の場合、低pH抗菌溶液は、アノードチャンバー、カソードチャンバー、及びアノードチャンバー及びカソードチャンバーの間に位置する塩溶液チャンバーを含む、少なくとも1つの電解セルを使用して製造され得る。本発明による溶液の調製のための方法において、還元反応はカソードで生じ、一方酸化反応はアノードで生じる。生じる具体的な還元及び酸化反応は、国際出願WO03/048421A1に記載されている。本明細書中で使用される場合、アノードで生成する水をアノード水といい、カソードで生成する水をカソード水という。アノード水は、電解反応から生成する酸化種(oxidized species)を含有し、一方カソード水は、当該反応からの還元種(reduced species)を含有する。
【0042】
アノード水は一般的に、典型的には約1〜約6.8の低いpHを有する。アノード水は一般的に、種々の形態の塩素を含有し、例えば、塩素ガス、塩化物イオン、塩酸及び/又は次亜塩素酸が挙げられる。種々の形態の酸素も存在し、例えば、酸素ガス、過酸化物及び/又はオゾンが挙げられる。カソード水は一般的に、典型的には約7.2〜約11の高いpHを有する。カソード水は一般的に、水素ガス、ヒドロキシルイオン及び/又はナトリウムイオンを含有する。
【0043】
電解セルのアノードチャンバー及びカソードチャンバーのための水の供給源は、任意の適切な水供給であり得る。水は、自治体の水供給からであり得、或いは電解セルにおける使用前に前処理され得る。好ましくは、前処理水は、軟水、精製水、蒸留水、及び脱イオン水からなる群から選択される。より好ましくは、前処理水源は、逆浸透精製設備を使用して得られる超純水である。
【0044】
塩水チャンバーにおける使用のための塩水溶液は、低pH抗菌溶液を製造するために適切なイオン種を含有する任意の塩水溶液であり得る。好ましくは、塩水溶液は、一般的に生理食塩水ともいわれる塩化ナトリウム(NaCl)塩水溶液である。他の適切な塩溶液としては、塩化カリウム、塩化アンモニウム及び塩化マグネシウムなどの他の塩化物塩、並びにカリウム塩及び臭素塩などの他のハロゲン塩が挙げられる。塩溶液は、塩の混合物を含有し得る。
【0045】
本発明の低pH抗菌溶液は、上記の電気化学プロセスにおいて製造されるアノード水及びカソード水の混合物を含む。従って、好ましい実施形態において、上記の電気化学セルは、アノードチャンバー及びカソードチャンバーに連結されておりそれらの下流にある混合タンクを更に含む。更に、混合タンクは随意に、溶液のレベル及びpHをモニターするために適切なデバイスを含み得る。このように、アノード水、カソード水、及び随意に緩衝剤は、上記のような所望のpHを提供するために、任意の適切な比で混合され得る。
【0046】
本発明の別の実施形態において、本発明の低pH抗菌溶液は、化学プロセスにより製造され得、そこでは、塩素が緩衝剤及び水を含む緩衝液に添加される。
【0047】
化学プロセスのための水の供給源は、任意の適切な水供給であり得る。水は、自治体の水供給からであり得、或いは電解セルにおける使用前に前処理され得る。好ましくは、前処理水は、軟水、精製水、蒸留水、及び脱イオン水からなる群から選択される。より好ましくは、前処理水源は、逆浸透精製設備を使用して得られる超純水である。
【0048】
塩素は、任意の適切な形態で緩衝液に添加され得る。例えば、塩素は、水溶液又はガスとして緩衝液に添加され得る。好ましくは、塩素は、ガスとして緩衝液に添加される。同様に、塩素は、任意の適切な手段により添加され得る。緩衝液に塩素を添加するための例示的な手段としては、例えば、連続的噴霧(spraying)及び吹き込み(bubbling)が挙げられる。最も好ましくは、塩素ガスは、緩衝液に吹き込まれる。塩素は、所望のpH及び成分含量(例、遊離塩素)が得られるような、任意の適切な量及び速度で緩衝液に添加され得る。
【0049】
その調製の後、本発明の低pH抗菌溶液は、例えば、保健医療施設(病院、療養所、医院、外来手術センター、歯科医院、などを含む)などのエンドユーザーへの配給及び販売のために密封容器に移され得る。その容器に保持された低pH抗菌溶液の無菌性及び安定性を維持する任意の適切な密封容器が使用され得る。容器は、溶液と適合性のある任意の材料から構成され得、溶液中に存在するイオンが任意の感知できる程度まで容器と反応しないように、通常は非反応性であるべきである。
【0050】
好ましくは、容器は、プラスチック又はガラスから構成される。容器が棚の上で保存できるように、プラスチックは硬質であり得る。或いは、プラスチックは、フレキシブルバッグのように柔軟性であってよい。
【0051】
適切なプラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択されるポリエチレンを含む。最も好ましくは、容器は高密度ポリエチレン又はポリエチレンテレフタレートである。
【0052】
容器は、低pH抗菌溶液の分配を可能とする開口部を有する。容器の開口部は、任意の適切な様式で密封され得る。例えば、容器は、回転して外すキャップ又はストッパーで密封され得る。随意に、開口部は、フォイル層で更に密封され得る。
【0053】
密封容器のヘッドスペースのガスは、空気、又は低pH抗菌溶液と反応しない他の適切なガスであり得る。適切なヘッドスペースのガスとしては、窒素、酸素、及びそれらの混合物が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、勿論、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0055】
実施例1
本実施例は、緩衝液への塩素の添加を含む化学プロセスにより1リットルの低pH抗菌溶液を製造する本発明の一実施形態を示す。
【0056】
1.0gの第一リン酸ナトリウム(NaHPO)及び1.08gの第二リン酸ナトリウム(NaHPO・7HO)を1リットルの精製水(RO、DI、又は蒸留水)に添加し、撹拌し、およそ8.0のpHを有する希釈緩衝液を得る。遊離塩素含量が150mg/Lのレベルに達するまで、塩素ガス(Cl)を希釈緩衝液にゆっくりと吹き込む。結果として得られる低pH抗菌溶液は、5.6のpHを有する。
【0057】
実施例2
本実施例は、電気化学プロセスを用いて低pH抗菌溶液を製造する本発明の別の実施形態を示す。
【0058】
第一リン酸ナトリウム(NaHPO)及び第二リン酸ナトリウム(NaHPO)を10リットルのプロセス水に撹拌しながら添加することにより、希釈緩衝液を調製する。プロセス水に添加されるリン酸塩の量を、それらの水和に応じて、以下に提供する:
第一リン酸ナトリウム(以下のうちの1つ):
1. 1430g NaHPO
2. 1645g NaHPO・HO、又は
3. 1859g NaHPO・2H
第二リン酸ナトリウム(以下のうちの1つ):
1. 64g NaHPO
2. 121g NaHPO・7H
3. 161g NaHPO・12H
【0059】
塩が溶解するためには、5−10分かかるはずである。塩が溶解した後、溶液は粒子の兆候なく清澄なはずであり、溶液のpHはおよそpH4.7のはずである。
【0060】
緩衝液を、3チャンバー電気化学セルにより供給されるカソード水及びアノード水に別々に添加する。緩衝液を、(両方のセルについて)全カソード及びアノード流量の1%の速度で添加する。例えば、各セルについてのアノード流量が3リットル/分であり、カソードが2リットル/分で流れる場合、その系についての全流量は10リットル/分であり、リン酸緩衝液を100ml/分で添加する。pH及びORP測定前に、ペリスタルティックポンプを使用して、アノード水及びカソード水混合コンパートメントにリン酸溶液を添加する。緩衝液が各混合コンパートメント(即ち、アノード水混合コンパートメント及びカソード水混合コンパートメント)に添加されるように、添加ラインを添加点の直前で2つのラインに分ける。次いで、アノード水及びカソード水を混合し、140−150ppmの遊離塩素レベル及び5.5−5.8のpHを有する溶液を得る。
【0061】
次いで、フィンガースプレーキャップを取り付けることができる120mL PETボトルに低pH抗菌溶液を入れる。
【0062】
実施例3
本実施例は、本発明の低pH抗菌溶液の安定性を示す。上記実施例2において(即ち、電気化学プロセスにより)製造した1ロットの低pH抗菌溶液を、1サンプル/ロット;1サンプル/時点で、40℃における安定性試験に供した。フィンガーポンプスプレーヘッド(製造の時点でボトルに固定した)を有する120mL PET容器に溶液を入れた。加速試験のために40℃±2℃に設定した環境試験チャンバーにサンプルを置いた。ロットリリースデータは、T=0を表した。各データ点を未開封のボトルで表した。
【0063】
加速貯蔵寿命の決定を確立するために、合計で40個のボトル(フィンガースプレーキャップを有する)を種々の時点において試験した。1つのボトルを各時点において試験した。各ボトルを、所定の時点における遊離塩素含量及びpHについて試験した。サンプルを試験し、以下の許容基準を満たすことを分析した:
試験 仕様
遊離塩素(FAC) 70−150ppm
pH 4.5−6.0 pH単位
【0064】
下記表1に示すように、試験したサンプルについて、全てのサンプルが、70ppm−150ppmのFAC仕様範囲内及び4.5−6.0のpH仕様範囲内であった。
【0065】
【表1】

【0066】
加速(40℃)貯蔵寿命FACデータ(表1)について、Statgraphicsを使用して、回帰直線を確立した(図1)。貯蔵寿命は、製造仕様の下限で製造した(即ちワーストケースシナリオ)製品のFACについての下側の95%信頼区間が70ppmに達した時点で設定した。5.8という係数を確立し、40℃で得た貯蔵寿命を22℃での期待される貯蔵寿命と関連付けた。回帰直線予測は、28ヶ月をはるかに上回る潜在的な貯蔵寿命を示す。
【0067】
実施例4
本実施例は、より高いpHの既知の塩素含有溶液と比較して、本発明の低pH抗菌溶液の安定性の向上を示す。より具体的には、3つの溶液をガラスバイアル中に密封し、80℃に加熱し、分解を比較した。第一のものは7.3のpHを有し、第二のものは緩衝液を含まず5.6のpHを有し、そして第三のものは5.6のpHを有しリン酸緩衝液を含有した。3つの溶液はいずれも、およそ130mg/Lの遊離塩素含量を有した。87時間後の反応速度(1/3が分解した)を下記表2に記載する。
【0068】
【表2】

【0069】
上記表2に示すように、本発明の低pH溶液(5.6のpH)は、より高いpH(7.3のpH)を有する溶液と比較して、分解速度においておよそ10倍の低下を示す。
【0070】
実施例5
本実施例は、より高い塩化物含量を有する既知の塩素含有溶液と比較して、本発明の低pH抗菌溶液の安定性の向上を示す。pH4−6における分解の速度への塩化物イオンの効果を試験した(表3)。引き上げ式のふたを有する8oz HDPEボトルに3つの溶液を入れ、40℃で保管した。
【0071】
【表3】

【0072】
表3に示すように、塩化物含量の増加は、分解速度を顕著に増加させる。従って、本発明の溶液(0.03%の塩化物含量)は、典型的な電気分解水製品(0.5−1%の塩化物含量)よりも、より安定である。
【0073】
実施例6
本実施例は、本発明の低pH抗菌溶液と従来技術の高塩化物/pH溶液との間の反応機構の違いを示す。特に、Pseudomonas aeruginosaを、2つの溶液(即ち、pH5及びpH7.5)で処理した。処理後、電子顕微鏡を使用して、細胞サンプルを評価した。全ての細菌が両方の溶液により殺された。しかしながら、pH5溶液で処理した細菌(図2)についての細胞の形態は、pH7.5で処理した細菌(図3)とは異なっていた。本発明のpH5溶液を使用した処理は、細胞の形態の変化がない(即ち、膜損傷がない)死んだ細菌細胞を示す電子顕微鏡写真を与えた。一方、従来技術の溶液(即ち、7.5のpHを有する溶液)を使用した処理は、破裂した細胞由来の大量の残骸及び膜損傷の証拠を示す電子顕微鏡写真をもたらした。このデータは、本発明のHOCl溶液(pH5)が、従来技術のHOCl/NaOCl/ClO溶液(pH7.5)とは異なる抗菌機構により反応していることを支持する。
【0074】
実施例7
本実施例は、より高いpHを有する溶液と比較して、本発明の低pH抗菌溶液についての有機物負荷の処理の改善を示す。特に、2つの溶液(pH4.9及び7.0)を、アルブミン(傷の有機物負荷を刺激し、抗菌剤を不活性化することが知られている妨害物質)の存在下で、種々の細菌に対して試験した。血清アルブミンは、ヒト血漿中の最も多いタンパク質の1つであるため、有機物負荷を表すための論理的な選択である。結果を下記表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
データは、pH7.0(従来技術)において細菌の殺菌を阻害するためのアルブミン(即ち、有機物負荷)よりも、pH4.9(本発明)において細菌の殺菌を阻害するためのアルブミン(即ち、有機物負荷)の方が多いことを示す。従って、本発明の低pH抗菌溶液は、傷(そこでは、有機物負荷の存在が従来技術の治療溶液を不活性化し得る)においてより良く働くだろう。
【0077】
本明細書中に引用された全ての参考文献(刊行物、特許出願、及び特許を含む)は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々に且つ具体的に示され、またその全体が本明細書中で説明されたのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
本発明(特に添付の特許請求の範囲に関して)を記載することに関して、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別途示されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、別途言及されない限り、オープンエンドな(open-ended)用語(即ち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別途示されない限り、この範囲内に入るそれぞれ別々の値に個々に言及する省略方法として機能することを意図するに過ぎず、それぞれ別々の値は、それが本明細書中に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書中に提供されるあらゆる、そして全ての例示、又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより明確にすることを意図するに過ぎず、別途主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる語句も、主張されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0079】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されており、本発明を実施するための、本発明者らが知る最良の形態を含む。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのようなバリエーションを使用することを予期し、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で、本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変物及び均等物を含む。更に、上記要素の全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸及び水を含有する低pH抗菌溶液であって、約4〜約6のpHを有する溶液。
【請求項2】
pHが約4.5〜約6.0である、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
該溶液が約5mg/L〜約200mg/Lの量で次亜塩素酸を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
該溶液が約7mg/L〜約110mg/Lの量で次亜塩素酸を含む、請求項3に記載の溶液。
【請求項5】
該溶液が約10mg/L〜約250mg/Lの遊離塩素含量を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
該溶液が約60mg/L〜約150mg/Lの遊離塩素含量を有する、請求項5に記載の溶液。
【請求項7】
該溶液が約4mg/L〜約120mg/Lの塩化物イオン含量を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
該溶液が約4mg/L〜約65mg/Lの塩化物イオン含量を有する、請求項7に記載の溶液。
【請求項9】
該溶液が緩衝剤を更に含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項10】
緩衝剤が第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の溶液。
【請求項11】
該溶液が少なくとも6ヶ月間安定である、請求項9に記載の溶液。
【請求項12】
該溶液が少なくとも1年間安定である、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
該溶液が少なくとも3年間安定である、請求項12に記載の溶液。
【請求項14】
障害されたか又は損傷された組織の治療方法であって、次亜塩素酸及び水を含有する治療有効量の低pH抗菌溶液と障害されたか又は損傷された組織を接触させる工程を含み、該溶液が約4〜約6のpHを有する、方法。
【請求項15】
該溶液が約4.9〜約5.6のpHを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該溶液が約5mg/L〜約200mg/Lの量で次亜塩素酸を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
該溶液が約7mg/L〜約110mg/Lの量で次亜塩素酸を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該溶液が約10mg/L〜約250mg/Lの遊離塩素含量を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
該溶液が約60mg/L〜約150mg/Lの遊離塩素含量を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該溶液が約4mg/L〜約120mg/Lの塩化物イオン含量を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
該溶液が約4mg/L〜約65mg/Lの塩化物イオン含量を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該溶液が緩衝剤を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
緩衝剤が第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該溶液で組織を洗浄する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
該溶液を蒸気又はスプレーとして組織に投与する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
該溶液をエアロゾル化、噴霧化、又は微粒化により組織に投与する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
組織が手術により障害されているか又は損傷されている、請求項14に記載の方法。
【請求項28】
組織が、外科的切開、口腔手術、グラフト手術、インプラント手術、トランスプラント手術、焼灼、切断、放射線、化学療法、又はそれらの組合せにより障害されているか又は損傷されている請求項27に記載の方法。
【請求項29】
組織が、熱傷、切り傷、擦過傷、掻き傷、発疹、潰瘍、穿刺、又はそれらの組合せにより障害されているか又は損傷されている、請求項14に記載の方法。
【請求項30】
障害されたか又は損傷された組織が感染されている、請求項14に記載の方法。
【請求項31】
感染された組織が中レベル〜高レベルの有機物負荷を含有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
感染が、ウイルス、細菌、真菌、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の微生物によるものである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
1つ以上のウイルスが、アデノウイルス、HIV、ライノウイルス、及びインフルエンザウイルスから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
1つ以上の細菌が、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Mycobaterium tuberculosisからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
1つ以上の真菌が、Candida albicans、Bacillus subtilis及びBacillus athrophaeusからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
該溶液の調製後少なくとも2ヶ月で測定した場合、該溶液が、1分以内の曝露で、生きた微生物の試料の濃度を少なくとも10減少させることができる、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
該溶液の調製後少なくとも2ヶ月で測定した場合、該溶液が、1分以内の曝露で、生きた微生物の試料の濃度を少なくとも10減少させることができる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
表面を殺菌する方法であって、次亜塩素酸及び水を含有する有効量の低pH抗菌溶液と表面を接触させる工程を含み、該溶液が約4〜約6のpHを有する、方法。
【請求項39】
該溶液が約4.5〜約6.0のpHを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
該溶液が約5mg/L〜約200mg/Lの量で次亜塩素酸を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
該溶液が約7mg/L〜約110mg/Lの量で次亜塩素酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
該溶液が約10mg/L〜約250mg/Lの遊離塩素含量を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
該溶液が約60mg/L〜約150mg/Lの遊離塩素含量を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
該溶液が約4mg/L〜約120mg/Lの塩化物イオン含量を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
該溶液が約4mg/L〜約65mg/Lの塩化物イオン含量を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
該溶液が緩衝剤を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
緩衝剤が、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
該溶液で表面を洗浄する工程を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
蒸気又はスプレーの形態の該溶液と表面を接触させる工程を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
エアロゾル化、噴霧化又は微粒化により該溶液と表面を接触させる工程を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
表面が生体、無生物、又はそれらの組合せのものである、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
表面が生体のものである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
生体組織が1つ以上の体腔内の組織を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
組織が口腔内、副鼻腔内、頭蓋腔内、腹腔内、又は胸腔内にある、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
表面が、筋肉組織、骨組織、器官組織、粘膜組織、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の生体組織を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
表面が外科的に埋め込み可能なデバイスのものである、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
表面が医療デバイスのものである、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
該溶液の調製後少なくとも2ヶ月で測定した場合、該溶液が、1分以内の曝露で、表面上の生きた微生物の試料の濃度を少なくとも10減少させることができる、請求項38に記載の方法。
【請求項59】
該溶液の調製後少なくとも2ヶ月で測定した場合、該溶液が、1分以内の曝露で、表面上の生きた微生物の試料の濃度を少なくとも10減少させることができる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
次亜塩素酸及び水を含有する低pH抗菌溶液の製造のための方法であって、該溶液が約4〜約6のpHを有し、緩衝剤及び水を含む緩衝液に塩素ガスを添加する工程を含む、方法。
【請求項61】
該方法が約4.9〜約5.6のpHを有する溶液を製造する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
該方法が約5mg/L〜約200mg/Lの量で次亜塩素酸を含む溶液を製造する、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
該方法が約7mg/L〜約110mg/Lの量で次亜塩素酸を含む溶液を製造する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
該方法が約10mg/L〜約250mg/Lの遊離塩素含量を有する溶液を製造する、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
該方法が約60mg/L〜約150mg/Lの遊離塩素含量を有する溶液を製造する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
該方法が約4mg/L〜約120mg/Lの塩化物イオン含量を有する溶液を製造する、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
該方法が約4mg/L〜約65mg/Lの塩化物イオン含量を有する溶液を製造する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
塩素ガスが緩衝液に吹き込まれる、請求項60に記載の方法。
【請求項69】
緩衝剤が、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項70】
連続的である、請求項60に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−530142(P2012−530142A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516208(P2012−516208)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/038697
【国際公開番号】WO2010/148004
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(505234465)オキュラス イノヴェイティヴ サイエンシズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】