説明

次亜塩素酸水生成装置

【課題】低コストかつ短時間で次亜塩素酸水のpH値を安定化できる次亜塩素酸水生成装置を提供する。
【解決手段】水Aと、次亜塩素酸ナトリウムBと、塩酸Cとが流れる流路2内に邪魔板3を設けることで、水溶液Dが流路2を流れる際、邪魔板3に衝突させると共に邪魔板3によって流れを妨害し、これにより、水Aと、次亜塩素酸ナトリウムBと、塩酸Cとを十分に混合して、水溶液Dを流路2内で十分に均質化し、その結果、動力やタンクを必要とせず低コストかつ循環を必要とせず短時間で、次亜塩素酸水FのpH値を安定化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸水生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸水は殺菌力が強く、特にpH値が弱酸性領域に調整された次亜塩素酸水は、高い殺菌力を持つ殺菌水として好適に用いられている。このような次亜塩素酸水のpH値の調整は、酸性溶液を添加して行うことから、添加後の次亜塩素酸水のpH値を安定化させるために、水溶液の均質化手段を備えた次亜塩素酸水生成装置が用いられる(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1の装置は、次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈し、pH値を調整すべく希塩酸を反応させ、これをバッチ方式にて循環させることで水溶液の均質化を図っている。また、特許文献2の装置は、次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈し、pH値を調整すべく酸性溶液を反応させ、これを攪拌アキュムレータにおいて攪拌することで水溶液の均質化を図っている。
【特許文献1】特開2006−264996号公報
【特許文献2】特開2005−161142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の次亜塩素酸水生成装置にあっては、水溶液を循環させているだけなので、pH値を安定化させるための均質化に時間がかかる。また、特許文献2に記載の次亜塩素酸水生成装置にあっては、攪拌によるため均質化に要する時間は短縮されるが、攪拌動力が必要となるため、コストがかかる。また、特許文献1及び2の何れにあっても循環タンク、攪拌タンク等のタンクが必要のため、コストがかかる。
【0004】
そこで、本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、低コストかつ短時間で次亜塩素酸水のpH値を安定化できる次亜塩素酸水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明に係る次亜塩素酸水生成装置は、流路中に、水と、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムと、塩酸とを混合するための邪魔板を設けたことを特徴として構成される。
【0006】
この発明によれば、水と、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムと、塩酸とが流れる流路内に邪魔板を設けることで、水溶液が流路を流れる際、邪魔板に衝突すると共に邪魔板によって流れが妨害され、これにより、水と、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムと、塩酸とが十分に混合し、水溶液を流路内で十分に均質化させることができる。従って、動力やタンクを必要とせず低コストかつ循環を必要とせず短時間で、次亜塩素酸水のpH値を安定化できる。
【0007】
ここで、次亜塩素酸水生成装置において、邪魔板より上流の流路を流れる水に、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムと、塩酸とを供給することが好適である。このような構成の次亜塩素酸水生成装置によれば、混合する対象をすべて含んだ水溶液を邪魔板が設けられた流路内に流すことができるため、一層十分に混合することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストかつ短時間で次亜塩素酸水のpH値を安定化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図中の寸法比率は必ずしも説明中のものとは一致していない。
【0010】
先ず、次亜塩素酸水のpHによる有効塩素の存在状態について図4を参照して説明する。図4に示すように、pH5〜6.5の領域では、ほとんどが次亜塩素酸として存在し、pHがアルカリ性になるにつれ次亜塩素酸イオンでの存在が増加し、一方、pHが酸性になるにつれて、塩素ガスの発生領域となる。具体的には、次亜塩素酸は次亜塩素酸イオンと比べ殺菌性能が80倍高くなり、また、塩素ガスの発生領域では、腐食性・毒性が高くなってしまう。従って、本実施形態ではpH5〜6.5の次亜塩素酸水を低コストかつ短時間で生成する次亜塩素酸水生成装置を提供する。
【0011】
図1は本実施形態に係る次亜塩素酸水生成装置1を構成する流路2を示す断面図、図2は図1の次亜塩素酸水生成装置1に用いる邪魔板3を軸線方向からみた図である。この次亜塩素酸水生成装置1は次亜塩素酸水Fを生成するための装置であり、生成された次亜塩素酸水Fは、殺菌力に優れ、特に食品汚れ等の有機性汚れ等を洗浄対象とする洗浄に有効に用いられる。
【0012】
次亜塩素酸水生成装置1は、円筒形状の配管により構成され、水Aが流れる流路2と、流路2に次亜塩素酸ナトリウムB、塩酸Cをそれぞれ供給する流路21、22とを備えて構成されている。この構成によって、次亜塩素酸水生成装置1は、流路2を流れる水Aに対して、次亜塩素酸ナトリウムBを供給すると同時に、pH調整用の塩酸Cを供給して、次亜塩素酸水Fを生成する。
【0013】
ここで、本実施形態の次亜塩素酸水生成装置1の流路2における流路21及び22の下流には、邪魔板3が設けられている。
【0014】
邪魔板3は、流路2内周面において、軸線方向に沿って互いに離間するように複数箇所に配設されており、軸線方向からみて邪魔板3同士が重なり合うように突設されている。図2に示すように、邪魔板3は一部が直線状に切り取られた円形平板とされる。
【0015】
このように構成した次亜塩素酸水生成装置1にあっては、流路2内に邪魔板3が設けられているため、水Aに次亜塩素酸ナトリウムB、塩酸Cが供給された水溶液Dは、邪魔板3に衝突すると共に流れが妨害され、これにより、水Aと、次亜塩素酸ナトリウムBと、塩酸Cとが十分に混合され、水溶液Dを流路2内で十分に均質化させることができる。従って、動力やタンクを必要とせず低コストかつ循環を必要とせず短時間で、次亜塩素酸水FのpH値を安定化できる。
【0016】
また、次亜塩素酸水生成装置1において、邪魔板3より上流の流路2を流れる水Aに、次亜塩素酸ナトリウムBと、塩酸Cとを供給しているため、混合する対象をすべて含んだ水溶液Dを邪魔板3が設けられた流路2内に流すことができるため、一層十分に混合することができる。
【0017】
以上、本発明の好適な実施形態について具体的に説明したが、上記実施形態は本発明に係る次亜塩素酸水生成装置の一例を示すものであり、本発明に係る次亜塩素酸水生成装置は、上記実施形態に係る次亜塩素酸水生成装置に限られるものではない。
【0018】
例えば、上記実施形態においては、一層十分混合できるとして、次亜塩素酸ナトリウムBと塩酸Cを、邪魔板3より上流の流路に供給しているが、邪魔板3のある流路に次亜塩素酸ナトリウムBと塩酸Cを供給しても良い。
【0019】
また、次亜塩素酸水Fの原料として、次亜塩素酸ナトリウムBを使用しているが、次亜塩素酸カルシウムであってもよい。
【実施例】
【0020】
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した実施例及び比較例について述べる。
【0021】
(実施例1)
図1に示す次亜塩素酸水生成装置1を用いた。流路2の径dを20mm、流路2の拡径部の径sを65mm、拡径部の長さLを500mmとした。これは、水Aの供給量を10L/mim(後述)とした場合の適正値から導いた。また、図2に示す邪魔板3の直径S1を65mm、高さS2を60mm、厚さ4mm、開口部の高さS3を5mm、開口部の長さqを35mmとした。また、図1に示す拡径部上流の先端側から下流方向へ178mmの位置において、邪魔板3を下流方向へ順に11枚設置し、その軸線方向ピッチnを10mm、邪魔板3が上下に重なる長さを55mmとした。pH値は6.5とした。このようなpH値を実現する生成条件として、水の供給量を10L/minとし、次亜塩素酸ナトリウムの供給量を、生成される有効塩素濃度(500、1000mg/Lの2通り)に対応する量とした。また、塩酸の供給量は、次亜塩素酸ナトリウムの供給量に対応するpH値調整量とした。
【0022】
(比較例1)
図3に示すように、邪魔板3を設けない点以外は実施例1と同様とした。
【0023】
そして、実施例1の装置と比較例1の装置を用いて次亜塩素酸水を得た。評価は拡径部を通過した後の次亜塩素酸水の目標pH値である6.5に対する変動幅すなわち標準偏差とした。表1に結果を示す。
【表1】

【0024】
表1に示すように、比較例1の次亜塩素酸水は、標準偏差が有効塩素濃度500mg/Lの時に0.66、有効塩素濃度1000mg/Lの時に2.63であり、実施例1の次亜塩素酸水は、標準偏差が有効塩素濃度500mg/Lの時に0.03、有効塩素濃度1000mg/Lの時に0.05であった。このように、pH値のばらつきが少ない、すなわち安定した次亜塩素酸水が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る次亜塩素酸水生成装置の流路を示す断面図である。
【図2】図1の次亜塩素酸水生成装置に用いる邪魔板を軸線方向からみた図である。
【図3】比較例1の次亜塩素酸水生成装置の流路を示す断面図である。
【図4】次亜塩素酸水のpHによる有効塩素の存在状態を示す線図である。
【符号の説明】
【0026】
1…次亜塩素酸水生成装置、2…流路、3…邪魔板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路中に、水と、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムと、塩酸とを混合するための邪魔板を設けたことを特徴とする次亜塩素酸水生成装置。
【請求項2】
前記邪魔板より上流の流路を流れる前記水に、前記次亜塩素酸ナトリウム又は前記次亜塩素酸カルシウムと、前記塩酸とを供給することを特徴とする請求項1に記載の次亜塩素酸水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−229555(P2008−229555A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75258(P2007−75258)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】