説明

止水ソケット及び止水ソケットを用いた止水方法

【課題】長さや太さを自由に設定できると共に、軽量にして作業性が高く、且つ、コンパクトにして取り付け場所を自由に選択することができる、水道管の漏水を止めるための止水ソケットを提供する。
【解決手段】円柱の一端に切頭円錐面状のテーパ面22が円柱と同軸心で形成された内リング23が、先に第1ナット24を螺合したボルト25に中心部を螺合され、所定螺合位置で第1ナット24に固定された内リングユニット26と、両端開放の筒状の外リング27の一端部に、内リング23の収納部28が形成されると共に、収納部28底部に内リング23のテーパ面22と水密に密着するテーパ面29が形成され、外リング27の他端部内周部に形成された空洞部30に、ボルト25に螺合する第2ナット31が、相互に所定間隔離間する複数の固定ブリッジによってテーパ面29と同軸心で固定された外リングユニット33とを備えた止水ソケット21を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管の漏水を止めるための止水ソケット及び止水ソケットを用いた止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水道管の一例として、例えば、網走市に敷設された水道管(鉄管)は、水圧20kgf/cmがかかる水を山頂から約60kmの長さに及んで送水している。
その水道管は、地下約1.2mに埋設され、工事完成後60年程度経過しており、地盤の悪い場所では管が腐蝕して例えば1cmほどの孔が開く場合があり、その場合、相当の勢いの水が漏水として出てくる。
【0003】
このように、網走市に限らず、近年、水道管の老朽化が進んでおり、その水道管が漏水する問題が発生している。
従来、水道管の漏水を止める方法として、例えば、水道管のバルブが比較的近い上流側にあり、バルブで水圧が弱くなるように調節できる場合、バルブを閉めて所定幅のバンドで水道管の漏水箇所の全周を囲う方法がある。
一方、上流側のバルブの位置が遠い場合や、バルブが見つからない場合は、ポンプで漏水箇所周辺の水を汲み上げ、漏水箇所を見つけて漏水箇所に木栓等を打ち込んで水を止め、水が止まったら、その上から鉄板を当てて溶接する方法がある。
【0004】
更に、漏水している水に圧力があり、木栓等で水が止まらない場合は、例えば、次に説明する図8に示すような方法で止水する。
又、年数の経った現場では、水道管のバルブの場所がわからない、バルブが動かない等のトラブルが起こる可能性があり、或いは、古い管の場合、バルブを締めて圧力を落とすと、管の中が圧力低下状態となり、再びバルブを開けて水を流すと管の中の不純物、錆、砂、泥等が一気に流れて水が汚れる虞があり、それらの問題発生を避けるために図8のような止水方法が用いられる。
【0005】
図8(a)は水道管1から漏水している状態を示し、図8(b)は漏水している水に圧力があり、木栓等で水が止まらない場合、或いはそれ以外の場合でも用いられる水道管1の漏水を止める方法を示している。
図8に示すように、まず、水道管1の漏水箇所の漏水孔2よりも大きい開口(図示せず)を中央部に開穿し、水道管1の漏水箇所に沿う形状に変形させた当て鉄板3を用意し、当て鉄板3の開口を水道管1の漏水孔2に位置合わせして当て鉄板3を水道管1の漏水箇所にゴムパッキン等(図示せず)を介して当てがい、当て鉄板3を水道管1に溶接して固定する。この時、漏水した水は当て鉄板3の開口から排出される。
【0006】
次に、一端にフランジを備えたフランジ付き鉄管4の他端を当て鉄板3の開口に位置合わせしてフランジ付き鉄管4の他端を当て鉄板3に溶接する。この時、漏水した水はフランジ付き鉄管4のフランジ側である一端から排出される。
次に、両端にフランジを備えたストップバルブ5をバルブ開放状態でストップバルブ5の一端のフランジとフランジ付き鉄管4のフランジとを連結する。この時、漏水した水はストップバルブ5の連結されないフランジ側である他端側から排出される。
最後にストップバルブ5のバルブを閉めて排水を止め、水道管1の漏水を防止する。
【0007】
この種技術に関連する先行文献としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、水道管漏水部をカバーし、その漏洩水を外部に排水する排水用パイプを備えたゴムシール部材と、ゴムシール部材を水道管の外周に圧着するバンドと、ゴムシール部材とバンドを含む水道管全体をカバーする2つ割補修鋼管とを具備する水道管漏水部仮止水装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−41994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図8に示した止水方法の場合、水道管の漏水を防止する効果はあるが、フランジ付き鉄管やストップバルブ等が比較的設置スペースを要し、特に、埋設管等、場所によっては、取り付けづらいという問題があり、又、ストップバルブは比較的重量があり、作業性が悪いという問題がある。
【0010】
以上の現状に鑑み、本発明は、長さや太さを自由に設定できると共に、軽量にして作業性が高く、且つ、コンパクトにして取り付け場所を自由に選択することができる、水道管の漏水を止めるための止水ソケット及び止水ソケットを用いた止水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
本発明の止水ソケットは、所定長さの円柱の一端に切頭円錐面状のテーパ面が形成され、中心部に雌ネジが刻設された内リングが、先に第1ナットを螺合したボルトに前記雌ネジを介して螺合され、前記ボルトの所定螺合位置で前記第1ナットに固定された内リングユニットと、
両端開放の筒状の外リングの一端部に、前記内リングを収納自在の穴状の収納部が形成されると共に、前記収納部底部に前記内リングの切頭円錐面状のテーパ面と水密に密着するテーパ面が形成され、前記外リングの他端部内周部に形成された空洞部に、前記ボルトに螺合する第2ナットが相互に所定間隔離間する複数の固定ブリッジによって固定された外リングユニットとを備え、
前記内リングユニットのボルトを前記外リングユニットの第2ナットに浅く螺合させ、前記内リングのテーパ面を前記外リングのテーパ面から離間させると、離間する前記テーパ面間の間隙により水の通過を許容し、前記外リングユニットの空洞部内に入った水を前記テーパ面間の間隙を介して前記外リングユニットの外方へ排出させ、
前記内リングユニットのボルトを前記外リングユニットの第2ナットに深く螺合させ、前記内リングのテーパ面を前記外リングのテーパ面に圧着させると、圧着する前記テーパ面により水の通過を規制し、前記外リングユニットの空洞部内に入った水を前記テーパ面側から前記外リングユニットの外方へ排出させないように構成されたことを特徴とする。
【0012】
又、本発明の止水ソケットを用いた止水方法は、請求項1記載の止水ソケットを用いた止水方法であって、
水道管の漏水口周辺部に当てがうために、水道管の漏水口よりも大なる開口部が中央部に開穿され、前記漏水口周辺部の形状に沿うように変形された当て鉄板を準備する工程と、
水道管の漏水口に前記当て鉄板の前記開口部を位置合わせし、水道管の漏水口周辺部に止水用ゴムパッキンを介して前記当て鉄板を水密に固定し、前記漏水口から漏水する水を前記開口部から排出させる工程と、
前記内リングユニットのボルトを前記外リングユニットの第2ナットに浅く螺合させ、前記内リングのテーパ面を前記外リングのテーパ面から離間させた前記止水ソケットを準備する工程と、
前記当て鉄板の前記開口部に前記止水ソケットの前記外リングの前記空洞部を位置合わせして前記当て鉄板に前記外リングの他端を水密に固定し、前記外リングユニットの空洞部内に入った水を前記テーパ面間の間隙を介して通過させ、前記外リングの一端外方へ排出させる工程と、
前記内リングユニットのボルトを前記外リングユニットの第2ナットに深く螺合させ、前記内リングのテーパ面を前記外リングのテーパ面に圧着させ、圧着する前記テーパ面により前記外リングユニットの空洞部内に入った水の通過を規制して、前記テーパ面側から前記外リングの一端外方への水の排出を止める工程とを実行することにより、水道管の漏水を止めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長さや太さを自由に設定できると共に、軽量にして作業性が高く、且つ、コンパクトにして取り付け場所を自由に選択することもできる、水道管の漏水を止めるための止水ソケット及び止水ソケットを用いた止水方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る止水ソケットの正面断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る止水ソケットの平面図である。
【図3】本発明の実施例に係る止水ソケットの底面図である。
【図4】本発明の実施例に係る内リングユニットの正面図である。
【図5】本発明の実施例に係る止水ソケットの内リングのテーパ面と外リングのテーパ面を離間させた状態を示す正面断面図である。
【図6】(a)本発明の実施例に係る止水ソケットを水道管の漏水箇所に固定し、排水状態を示す正面断面図である。(b)本発明の実施例に係る止水ソケットを水道管の漏水箇所に固定し、止水状態を示す正面断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る当て鉄板と止水用ゴムの平面図である。
【図8】(a)水道管の漏水状態を示す斜視図である。(b)従来例の水道管の止水方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1及び図2に於いて、21は、本発明の止水ソケットであり、止水ソケット21は、図4に示すように、所定長さの円柱の一端に切頭円錐面状のテーパ面22が前記円柱と同軸心となるように形成され、中心部に雌ネジが刻設された内リング23が、先に第1ナット24を螺合したボルト25に前記雌ネジを介して螺合され、ボルト25の所定螺合位置で第1ナット24に溶接により固定された内リングユニット26と、図1に示すように、両端開放の筒状の外リング27の一端部に、内リング23を収納自在の穴状の収納部28が形成されると共に、収納部28底部に内リング23の切頭円錐面状のテーパ面22と水密に密着する逆切頭円錐面状のテーパ面29が形成され、外リング27の他端部内周部に形成された円柱状の空洞部30に、ボルト25に螺合する第2ナット31が図3に示す如く相互に所定間隔離間する複数の固定ブリッジ32,32…によって収納部28底部のテーパ面29と同軸心となるように固定された外リングユニット33とを備えている。
【0016】
本発明の止水ソケット21は、鉄製であるが、鉄製に限定されるものではなく、他の金属、或いは、樹脂で形成することも可能である。又、一部の部品を鋳鉄製としたり、ポリパイプ、塩ビパイプを用いて作ることも可能である。
【0017】
そして、図5に示す如く、前記止水ソケット21は、内リングユニット26のボルト25を外リングユニット33の第2ナット31に浅く螺合させ、内リング23のテーパ面22を外リング27のテーパ面29から離間させると、離間するテーパ面22,29間の間隙により水の通過を許容し、外リングユニット33の空洞部30内に入った水を離間するテーパ面22,29間の間隙を介して外リング27の一端外方へ排出させるように構成されている。
【0018】
又、図1に示す如く、内リングユニット26のボルト25を外リングユニット33の第2ナット31に深く螺合させ、内リング23のテーパ面22を外リング27のテーパ面29に圧着させると、圧着するテーパ面22,29により水の通過を規制し、外リングユニット33の空洞部30内に入った水を前記テーパ面22,29側から外リングユニット33の外方へ排出させないように構成されている。
【0019】
次に、前記止水ソケット21を用いた止水方法について説明する。
先ず、図6(a)に示す如く、水道管41の漏水口42周辺部に当てがうために、図7に示す如く、水道管41の漏水口42よりも大なる開口部43が中央部に開穿され、漏水口42周辺部の形状に沿うように変形された当て鉄板44を準備する。
尚、図示された当て鉄板44は、方形であるが、特に方形に限定するものではなく、円形や、その他の形状のものを使用しても良い。又、図示された開口部43も、方形であるが、特に方形に限定するものではなく、円形や、その他の形状に形成しても良い。
【0020】
次に、図6(a)に示す如く、水道管41の漏水口42に当て鉄板44の開口部43を位置合わせし、水道管41の漏水口42周辺部に止水用ゴムパッキン45を介して当て鉄板44を水密に固定する。この時、漏水口42から漏水する水を開口部43から排出させる。
尚、当て鉄板44を水密に固定する場合、例えば溶接により固定するが、溶接に限定されるものではなく、バンド掛けで固定しても良く、当て鉄板44を半割り形状にしてボルト締めしても良く、種々の固定方法が可能である。
【0021】
次に、図5に示す如く、内リングユニット26のボルト25を外リングユニット33の第2ナット31に浅く螺合させ、内リング23のテーパ面22を外リング27のテーパ面29から離間させた状態にした止水ソケット21を準備する。
次に、図6(a)に示す如く、当て鉄板44の開口部43に止水ソケット21の外リング27の空洞部30を位置合わせして当て鉄板44に外リング27の他端を溶接により水密に固定する。この時、外リングユニット33の空洞部30内に入った水はテーパ面22,29間の間隙を通過して外リング27の一端外方へ排出する。
【0022】
次に、図6(b)に示す如く、内リングユニット26のボルト25を外リングユニット33の第2ナット31に深く螺合させ、内リング23のテーパ面22を外リング27のテーパ面29に圧着させる。
これにより、圧着するテーパ面22,29によって外リングユニット33の空洞部30内に入った水の通過が規制され、テーパ面22,29側から外リング27の一端外方への水の排出が止められ、水道管41の漏水が止められる。
【符号の説明】
【0023】
21 止水ソケット
22 テーパ面
23 内リング
24 第1ナット
25 ボルト
26 内リングユニット
27 外リング
28 収納部
29 テーパ面
30 空洞部
31 第2ナット
32 固定ブリッジ
33 外リングユニット
41 水道管
42 漏水口
43 開口部
44 当て鉄板
45 止水用ゴムパッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの円柱の一端に切頭円錐面状のテーパ面が前記円柱と同軸心となるように形成され、中心部に雌ネジが刻設された内リングが、先に第1ナットを螺合したボルトに前記雌ネジを介して螺合され、前記ボルトの所定螺合位置で前記第1ナットに固定された内リングユニットと、
両端開放の筒状の外リングの一端部に、前記内リングを収納自在の穴状の収納部が形成されると共に、前記収納部底部に前記内リングの切頭円錐面状のテーパ面と水密に密着するテーパ面が形成され、前記外リングの他端部内周部に形成された空洞部に、前記ボルトに螺合する第2ナットが相互に所定間隔離間する複数の固定ブリッジによって前記収納部底部のテーパ面と同軸心となるように固定された外リングユニットとを備え、
前記内リングユニットのボルトを前記外リングユニットの第2ナットに浅く螺合させ、前記内リングのテーパ面を前記外リングのテーパ面から離間させると、離間する前記テーパ面間の間隙により水の通過を許容し、前記外リングユニットの空洞部内に入った水を前記テーパ面間の間隙を介して前記外リングユニットの外方へ排出させ、
前記内リングユニットのボルトを前記外リングユニットの第2ナットに深く螺合させ、前記内リングのテーパ面を前記外リングのテーパ面に圧着させると、圧着する前記テーパ面により水の通過を規制し、前記外リングユニットの空洞部内に入った水を前記テーパ面側から前記外リングユニットの外方へ排出させないように構成されたことを特徴とする止水ソケット。
【請求項2】
請求項1記載の止水ソケットを用いた止水方法であって、
水道管の漏水口周辺部に当てがうために、水道管の漏水口よりも大なる開口部が中央部に開穿され、前記漏水口周辺部の形状に沿うように変形された当て鉄板を準備する工程と、
水道管の漏水口に前記当て鉄板の前記開口部を位置合わせし、水道管の漏水口周辺部に止水用ゴムパッキンを介して前記当て鉄板を水密に固定し、前記漏水口から漏水する水を前記開口部から排出させる工程と、
前記内リングユニットのボルトを前記外リングユニットの第2ナットに浅く螺合させ、前記内リングのテーパ面を前記外リングのテーパ面から離間させた前記止水ソケットを準備する工程と、
前記当て鉄板の前記開口部に前記止水ソケットの前記外リングの前記空洞部を位置合わせして前記当て鉄板に前記外リングの他端を水密に固定し、前記外リングユニットの空洞部内に入った水を前記テーパ面間の間隙を介して通過させ、前記外リングの一端外方へ排出させる工程と、
前記内リングユニットのボルトを前記外リングユニットの第2ナットに深く螺合させ、前記内リングのテーパ面を前記外リングのテーパ面に圧着させ、圧着する前記テーパ面により前記外リングユニットの空洞部内に入った水の通過を規制して、前記テーパ面側から前記外リングの一端外方への水の排出を止める工程とを実行することにより、水道管の漏水を止めることを特徴とする止水ソケットを用いた止水方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate