説明

止水継手の締着部構造

【課題】止水ジョイント内部の水圧を締着部の圧縮力に変換させ、止水性能を向上させることが可能な止水継手の締着部構造を提供する。
【解決手段】本発明の止水継手の締着部構造は、弾性変形可能な膨出部と構造物に取り付けるための取付部とからなる止水ジョイント31と、一方が構造物に埋設され、他方のネジ軸部が構造物から突出するように設けられた締着ネジ12、22と、ネジ軸部に挿脱可能に、隣接する構造物側にL状段部を有するように設けられ、ネジ軸部に螺合された固定ナット16で締め付けられたとき、取付部を構造物に押圧して締着する締着板13、23と、中間に屈曲部を有し、一方の側が膨出部外周面に当接するように、他方の側が締着板と取付部との間に設けられ、膨出部に内側から荷重がかかったとき、この荷重を締着ネジ体の軸線方向に取付部を圧縮する圧縮力に変換する変換プレート体32、32とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物間に設けられる止水継手の締着部構造に関する。さらに詳しくは、止水継手の締着部構造において、水圧がかかった場合、その水圧を利用して止水性能を向上させた止水継手の締着部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
止水継手の締着部構造として、平型締着板タイプ、放出防止機能付き締着板タイプ、せん断キー付締着板タイプなどと呼ばれているものが知られている。この従来の締着部構造は、ボルト等の締め付け力のみで固定する構造であり、締め付け不足や、クリープ、水圧による締着部の延び(肉痩せ)などにより締め付け力が低下した場合、漏水が発生するおそれが生じていた。又、漏水の事例があったとの指摘もされている。
【0003】
又、従来の締着部構造では、ボルトの締め付けトルクが低下した場合、増締めを行う必要があるが、現状では保守・点検(メンテナンス)を行う頻度は低い。従って、止水性能を維持できる締め付け力が十分維持されているかは不明であり、継続した水圧や過剰な水圧が作用した場合には、漏水してしまうおそれがあった。
【0004】
特許文献を参考にして、従来の技術についてさらに説明を行う。
外圧により弾性部材に張力がかかった場合、取付手段の傾斜面と弾性部材の傾斜面とにより、弾性部材の突起を碇着部材の表面に押し付ける押圧力を作用させるようにした暗渠の可撓継手に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
又、固定部材およびワッシャーに、相互間の接触面のコンクリート構造物の内周面からの高さが固定部材の支持部が形成されている端部に向かって漸増するようにそれぞれ勾配が設けられ、可撓止水部材に引張り力が働いても可撓止水部材が固定部材から外れるおそれがないコンクリート構造物用伸縮継手に関する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、弾性部材の両端側における取付部が、端部側に向かって徐々に厚みが増す傾斜面を有し、押え金具が当該傾斜面内に配置されている可撓性継手に関する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。又、取付け手段を挟んで構造物の対面側に位置する凸状部の圧縮剛性を、取付け手段の外側に設けた凸状部の圧縮剛性より小さく構成し、外部からの水圧によって取付け部の内側が継手本体側に引き込まれることがない伸縮止水継手に関する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
そして、弾性シール部材の両端開口部は、締付部材の締め付けにより、筒状体の突合わせ端部と、押圧部材とで挟持され、その抜け出し方向においてストッパ部材に圧接されることにより、弾性シール部材の両端部がすっぽりと抜け落ちたり、剪断したりするおそれのない伸縮性可撓継手に関する技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2557378号公報
【特許文献2】特許第3045990号公報
【特許文献3】特開2002−106294号公報
【特許文献4】特許第3666919号公報
【特許文献5】特許第4186003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この先行文献の技術は、水圧がかかった時に、弾性部材が抜けたり、移動したりしないようにするものにすぎなかった。言い換えると、長期間、継続して使用し、締め付け力低下が発生した場合、漏水の発生など止水性能を低下させる可能性があるという問題点を解決するためのものでなかった。そのため、止水継手の締着部構造において、止水性能の低下をおこさせるおそれがあるクリープ、肉痩せによる締め付け力低下が発生した場合、継続した水圧、過剰な水圧が作用した場合でも、止水性能を維持できる止水継手の締着部構造の開発が要望されていた。
【0010】
本発明の目的は、止水ジョイント内部の水圧を締着部の圧縮力に変換させ、止水性能を向上させることが可能な止水継手の締着部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述した課題を解決するために、以下の手段をとる。
本発明1の止水継手の締着部構造は、隣接する構造物間に設けられる止水継手の締着部構造であって、前記構造物の目地を挟む部位間に跨って設けられ、可撓性を有する膨出部と、この膨出部の両側に連続する部位であって前記構造物に取り付けるための取付部とからなる止水ジョイントと、一方の側の部位が前記構造物に埋設され、他方の側のネジ軸部が前記構造物から突出するように設けられた締着ネジと、前記締着ネジのネジ軸部に挿脱可能に、隣接する前記構造物側にL状段部を有するように設けられ、前記ネジ軸部に螺合された固定ナットで締め付けられたとき、前記止水ジョイントの前記取付部を前記構造物側に押圧して締着する締着板と、中間に屈曲部を有し、一方の側が前記膨出部外周面に当接するように、他方の側が前記L状段部と前記取付部との間に設けられ、前記膨出部に内側から荷重がかかったとき、前記荷重を、前記締着ネジの軸線方向に前記取付部を圧縮する圧縮力に変換する変換プレートとからなることを特徴とする。
【0012】
本発明2の止水継手の締着部構造は、本発明1において、前記止水ジョイントの前記取付部は、下面に、前記締着ネジを挟むように、少なくとも2条の止水凸部が設けられており、前記圧縮力は、前記膨出部側の前記止水凸部に作用するものであることを特徴とする。
【0013】
本発明3の止水継手の締着部構造は、本発明1又は2において、
前記変換プレートは、前記屈曲部又は前記屈曲部近傍を支点とするモーメントが作用するものであることを特徴とする。
【0014】
本発明4の止水継手の締着部構造は、本発明1又は2において、前記締着板と前記変換プレートとの間には、弾性ヒンジ体が一体に設けられ、前記変換プレートは前記弾性ヒンジ体を支点とするモーメントが作用するものであることを特徴とする。
【0015】
本発明5の止水継手の締着部構造は、本発明1〜4において、前記膨出部は、逆U字状又はM字状に形成されている部位であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の止水継手の締着部構造は、止水ジョイントの内部に水圧がかかった場合、その水圧を利用して締着部の圧縮力に変換させ、止水性を向上させることができる。言い換えると、この止水継手の締着部構造は、締着ボルトの締め付けトルクによる圧縮力に加え、水圧を利用した圧縮力を作用させることができ、恒久的に、より安定した止水性能を発揮させることができる。継続した水圧や過剰な水圧が作用した場合においても、漏水してしまうことが生じない。又、この止水継手の締着部構造は、締め付けトルク低下時に行う増締め等の作業が不要であり、メンテナンスの必要が生じない、いわゆるメンテナンスフリーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の止水継手の締着部構造の斜視図である。
【図2】止水継手の締着部構造を断面で示した断面図である。
【図3】水圧を圧縮力に変換させる状態を、模式的に示した部分断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の止水継手の締着部構造において、締着部構造の詳細、及び、圧縮力の作用状態を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態の止水継手の締着部構造の斜視図、図2は、止水継手の締着部構造の断面図、図3は、この締着部構造の詳細、及び、圧縮力の作用状態を説明するための部分断面図である。
【0019】
この実施の形態の止水継手の締着部構造1は、コンクリート製の構造物10とコンクリート製の構造物20とに跨って設けられている。この止水継手の締着部構造は、樋門、放水路、とう道、共同溝、沈埋トンネル、原子力発電所、上水道など様々な構造物の止水装置として適用可能なものである。
【0020】
構造物10、構造物20の目地10a、20a近傍には、各々、凹部10b、20bが形成されている。止水継手の締着部構造1は、この凹部10b、20bに設けられている。構造物10の凹部10bには、L字状の締結プレート11が設けられている。構造物20の凹部20bには、L字状の締結プレート21が設けられている。
【0021】
構造物10の凹部10bには、目地10aから所定量離れた直線上に、所定の間隔毎に、締着ボルト12の埋設部12aが埋設されている。同様に、構造物20の凹部20bには、目地20aから所定量離れた直線上に、所定の間隔毎に締着ボルト22の埋設部22aが埋設されている。締着ボルト12、22は、金属(例えば、ステンレス鋼材、鋼材)製の締着ボルトであり、いわゆるアンカーボルトである。構造物10の目地10aと構造物20の目地20aとの間には、目地材15が充填されている。
【0022】
止水ジョイント31は、可撓性を有し、弾性変形可能なゴム〔例えば、クロロプレン系ゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)〕製で、構造物の不等沈下、伸縮等を吸収するとともに、構造物と止水ジョイントとの間の浸水、漏水を防止するためのものである。止水ジョイント31は、側面視略Ω型形状、略M字形状等の形状をしたものである。この実施の形態の止水ジョイント31は略Ω形状をしたものであり、逆U字状をし、内部に水圧がかかった場合膨出変形するとともに、水圧がなくなった場合変形前の形状に戻る膨出部31aと、膨出部31aの両側に、膨出部31aに連続するように設けられる部位であって、構造物10、構造物20に各々取り付けられる取付部31b、31bとからなっている。
【0023】
取付部31b、31bの端部には凸部31d、31dが形成されている。凸部31d、31dは、締結板13、23に係止されて、止水ジョイント31が締結板13、23に対して離脱しようとするのを防止するためのものである。止水ジョイント31の取付部31bの下部には、構造物10、20に取付部31b、31bを取り付けたとき目地10a、20aに対して平行になる方向に、2条の止水凸部(止水凸条とも言う)31e(31e1、31e2)が設けられている。そして、この2条の止水凸部31e(31e1、31e2)を圧縮することにより、止水ジョイント31と構造物10の締結プレート11、及び、止水ジョイント31と構造物20の締結プレート21との間の浸水、漏水等を防止する。
【0024】
取付部31bの止水凸部31e1、31e2の間には、所定の間隔毎に、締着ボルト12、22のネジ軸部12b、22bを挿通可能なボルト穴31f(図3参照)が形成されている。2条の止水凸部31e1、31e2の中心に締着ボルト12、22が設けられているため、2条の止水凸部31e1、31e2を均等に圧縮することができ、締め付けトルク管理が確実にできるようになっている。取付部31bには、補強繊維31cが含芯され、取付部31bの強度を向上させている。なお、図3には、構造物10側の締着部構造の詳細、圧縮力の作用状態等を図示しているが、構造物20側にも同一の締着部構造が設けられている(図1、2参照)。すなわち、図2に示すように、この実施の形態の止水継手の締着部構造1は、構造物10側と構造物20側とが、左右対称な構成となっている。
【0025】
締着ボルト12のネジ軸部12bには、構造物10側の締結プレート11との間に、止水ジョイント31の取付部31bを締着ボルト12の軸線方向に挟むように締着板13が設けられている。締着板13は、金属(例えば、鋼材、ステンレス鋼材、鋳鉄材)製の部材であって、止水ジョイント31の膨出部31aと凸部31dとの間に設けられている。締着板13のボルト穴13c(図3参照)に締着ボルト12のネジ軸部12bが挿通しており、ネジ軸部12bの雄ネジに固定ナット(例えば、六角ナット)16をねじ込むことにより、締着板13は、構造物10及び締結プレート11に、止水ジョイント31の構造物10側の取付部31bを強固に押圧し締着する。締着ボルト12に対して固定ナット16を締め付ける締め付けトルクが、2条の止水凸部31e1、31e2を締着ボルト12の軸線方向に圧縮する圧縮力F1として作用する。締着板13とナット16との間にはワッシャが設けられている。
【0026】
同様に、締着ボルト22のネジ軸部22bには、構造物20との間に、止水ジョイント31の取付部31bを締着ボルト22の軸線方向に挟むように締着板23が設けられている(図2参照)。締着板23は、止水ジョイント31の膨出部31aと凸部31dとの間に設けられている。締着板23のボルト穴に締着ボルト22のネジ軸部22bが挿通しており、ネジ軸部22bの雄ネジに固定ナット(例えば、六角ナット)26をねじ込むことにより、締着板23は、構造物20及び締結プレート21に、止水ジョイント31の構造物20側の取付部31bを強固に押圧し締着する。締着ボルト22に対して固定ナット26を締め付ける締め付けトルクが、2条の止水凸部を締着ボルト22の軸線方向に圧縮する圧縮力として作用する。締着板23とナット26との間にはワッシャが設けられている。
締着板13の構造物20側の下部には、L状段部13aが形成されている。又、締着板23の構造物10側の下部には、L状段部23aが形成されている。
【0027】
止水ジョイント31の膨出部31aの外周側には変換プレート32が設けられている。この変換プレート32は、中間(例えば、中央部又は略中央部)に屈曲した部位(屈曲部)32cが形成された側面視「く」字状をしたプレートであって、一方の側の部位32bが膨出部31aの外周側に当接するとともに、他方の側の部位32aがL状段部13aと取付部31bとの間、又は、L状段部23aと取付部31bとの間に位置するように設けられている。言い換えると、他方の部位32aは、L状段部13aと取付部31bとの間、又は、L状段部23aと取付部32bとの間に、挿入可能に、又は、挟み込むことが可能に設けられている。又、締着板13の先端斜面部13bが、屈曲部32c又は屈曲部32c近傍に当接し、変換プレート32のモーメント動作のヒンジの支点を形成する(図3参照)。変換プレート32は、金属(例えば、鋳鉄材、鋼材、ステンレス鋼材)製の部材である。
【0028】
次に、この実施の形態の止水継手の締着部構造1の作用について説明を行う。
通常、止水ジョイント31の内部側に水圧Pがかかることは少ない。このように水圧Pがかかっていない場合、止水ジョイント31は、締結ボルト12、22とナット16、26との締め付けトルクにより、構造物10、20に締結されている。この場合、止水凸部31e1、31e2には、締め付けトルクにより、締着ボルト12、22の軸線方向の圧縮力F1、F1が作用することになる。
【0029】
仮に、止水ジョイント31の内部を流れる水量が増加し、止水ジョイント31の膨出部31aの内部に水圧Pがかかった場合、膨出部31aが2点鎖線で示した膨出部31a’ように膨出するとともに、変換プレート体32には、締結板13の先端斜面部13bをヒンジの支点とするモーメントMが発生し作用する。このモーメントMは、膨出部31a側に位置している止水凸部31e1に、締着ボルト12の軸線方向の圧縮力F2を発生するように作用する。言い換えると、水圧Pにより、膨出部31aに内側から荷重がかかったとき、変換プレート体32、先端斜面部13b等の構成を介して、この荷重を締着ボルト12の軸線方向の圧縮力F2に変換している。また、大きな水圧Pが作用するほど、止水凸部31e1に大きな圧縮力F2が発生し作用するようになっている。止水凸部31e1には、締め付けトルクによる締着ボルト12の軸線方向の圧縮力F1に加え、水圧Pが変換された締着ボルト12の軸線方向の圧縮力F2が作用するため、止水ジョイント31の内部側の水が構造物10側に漏水等することがない。
【0030】
図3に示していないが、構造物20側に設けられた取付部31bも同様な締着部構造の構成となっている。言い換えると、止水ジョイント31の膨出部31aの内部に水圧Pがかかった場合、膨出部31a側の止水凸部31eに、締着ボルト22に固定ナット26を締め付ける締め付けトルクによる締着ボルト22の軸線方向の圧縮力(図3の圧縮力F1に相当)に加え、水圧Pが変換された締着ボルト22の軸線方向の圧縮力(図3の圧縮力F2に相当)が作用する同様の作用が生じ、止水ジョイント31の内部側の水が構造物20側に漏水等することがない。
このように、水圧がかかり漏水が発生しやすい側の止水凸部に、締め付けトルクによる締着ボルト22の軸線方向の圧縮力F1と、水圧Pが変換された締着ボルト22の軸線方向の圧縮力F2とを作用させることで、止水凸部からの浸水、漏水等が発生することがない。この止水継手の締着部構造は、止水ジョイント31に継続した水圧や過剰な水圧が作用した場合においても、漏水等を発生させることがなく、恒久的に、より安定した止水性能を発揮させることができる。
【0031】
〔止水継手の締着部構造の他の実施の形態〕
止水継手の締着部構造の他の実施の形態について説明を行う。
図4は、本発明の他の実施の形態の止水継手の締着部構造を示す図であって、締着部構造の詳細、及び、圧縮力の作用状態を説明するための部分断面図であり、前述した図3の部分断面図に相当する図である。
なお、この他の実施の形態の説明では、前述した実施の形態と同一に部位には同一の符号を付与し詳細な説明を省略している。又、図4には、構造物20側の締着部構造の詳細、圧縮力の作用状態等を図示していないが、構造物20側にも同一の構成の締着部構造が設けられている。この他の実施の形態の止水継手の締着部構造は、構造物10側と構造物20側とが左右対称な構成となっている。
【0032】
この止水継手の締着部構造は、L状段部73a、先端斜面部73bが形成された締着板73、変換プレート82との間に、弾性ヒンジ体であるゴム製のヒンジゴム体74が一体に設けられている。すなわち、締着板73の先端斜面部73bと変換プレート82の屈曲部近傍面82cとに、ヒンジゴム体74が、加硫圧縮成形することで一体に接合されている。締着板73は、ボルト穴73cに締着ボルト12のネジ軸部12bが挿通しており、ネジ軸部12bの雄ネジに固定ナット(例えば、六角ナット)16をねじ込むことにより、締着板73は、構造物及び締結プレートに、止水ジョイント31の構造物10側の取付部31bを強固に押圧し締着する。変換プレート体82は、中間(例えば、中央部又は略中央部)に屈曲した部位(屈曲部)が形成された側面視「く」字状をしたプレート体であって、一方の側の部位82bが膨出部31aの外周側に当接するとともに、他方の側の部位82aがL状段部73aと取付部31bとの間に位置するようになっている。なお、弾性ヒンジ体は、ゴム製の弾性ヒンジ体だけでなく、経年変化、耐久性に優れた弾性材料(例えば、合成樹脂、エラストマー)製のものであってもよい。
【0033】
このヒンジゴム体74が、変換プレート82のモーメント動作におけるヒンジの支点として作用する以外は、前述した形態の止水継手の締着部構造と同じ作用をする。すなわち、止水ジョイント31の内部を流れる水量が増加し、止水ジョイント31の膨出部31aの内部に水圧Pがかかった場合、膨出部31aが、2点鎖線で示した膨出部31a’のように膨出するとともに、変換プレート体82には、ヒンジゴム体74をヒンジの支点とするモーメントMが発生し作用する。このモーメントMは、膨出部31a側に位置している止水凸部31e1に締着ボルト12の軸線方向の圧縮力F2に変換するように作用する。
【0034】
言い換えると、水圧Pにより、膨出部31aに内側から荷重がかかったとき、変換プレート体82、ヒンジゴム体74等の構成により、この荷重を締着ボルト12の軸線方向の圧縮力F2に変換している。又、大きな水圧Pが作用するほど、止水凸部31e1に大きな圧縮力F2が発生し作用するようになっている。止水凸部31e1には、締め付けトルクによる締着ボルト12の軸線方向の圧縮力F1に加え、水圧Pが変換された締着ボルト12の軸線方向の圧縮力F2が作用するため、止水ジョイント31の内部側の水が構造物10側に漏水等することがない。止水ジョイント31に継続した水圧や過剰な水圧が作用した場合においても、漏水等を発生させることがない。
【0035】
この他の実施の形態の止水継手の締着部構造は、図4に示していない構造物20側に設けられた締着部構造でも、同様な作用、効果を呈している。すなわち、水圧Pにより、止水ジョイント31の膨出部31aに内部から荷重がかかった場合、膨出部31a側の止水凸部に、締着ボルト22に固定ナット26を締め付ける締め付けトルクによる締着ボルト22の軸線方向の圧縮力(F1に相当)に加え、水圧Pが変換された締着ボルト22の軸線方向の圧縮力(F2に相当)とが作用する構成になっている。
【0036】
以上、本発明の実施の形態の説明を行ったが、本発明はこの形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、止水凸部の条数は2条より多くてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 … 止水継手の締着部構造
10、20…構造物
11、21…締結プレート
12、22…締着ボルト
13、23、73…締着板
15 … 目地材
16、26…固定ナット
31 … 止水ジョイント
31a… 膨出部
31b… 取付部
32、82…変換プレート
74 … 弾性ヒンジ体(ヒンジゴム体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する構造物間に設けられる止水継手の締着部構造であって、
前記構造物の目地を挟む部位間に跨って設けられ、可撓性を有する膨出部と、この膨出部の両側に連続する部位であって前記構造物に取り付けるための取付部とからなる止水ジョイントと、
一方の側が前記構造物に埋設され、他方の側のネジ軸部が前記構造物から突出するように設けられた締着ネジと、
前記締着ネジのネジ軸部に挿脱可能に、隣接する前記構造物側にL状段部を有するように設けられ、前記ネジ軸部に螺合された固定ナットで締め付けられたとき、前記止水ジョイントの前記取付部を前記構造物側に押圧して締着する締着板と、
中間に屈曲部を有し、一方の側が前記膨出部外周面に当接するように、他方の側が前記L状段部と前記取付部との間に設けられ、前記膨出部に内側から荷重がかかったとき、前記荷重を、前記締着ネジの軸線方向に前記取付部を圧縮する圧縮力に変換する変換プレートとからなる
ことを特徴とする止水継手の締着部構造。
【請求項2】
請求項1に記載された止水継手の締着部構造において、
前記止水ジョイントの前記取付部は、下面に、前記締着ネジを挟むように、少なくとも2条の止水凸部が設けられており、
前記圧縮力は、前記膨出部側の前記止水凸部に作用するものである
ことを特徴とする止水継手の締着部構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された止水継手の締着部構造において、
前記変換プレートは、前記屈曲部又は前記屈曲部近傍を支点とするモーメントが作用するものである
ことを特徴とする止水継手の締着部構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された止水継手の締着部構造において、
前記締着板と前記変換プレートとの間には、弾性ヒンジ体が一体に設けられ、
前記変換プレートは前記弾性ヒンジ体を支点とするモーメントが作用するものである
ことを特徴とする止水継手の締着部構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の止水継手の締着部構造において、
前記膨出部は、逆U字状又はM字状に形成されている部位である
ことを特徴とする止水継手の締着部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−58232(P2011−58232A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207815(P2009−207815)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000220147)東京ファブリック工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】