説明

止血を促進するためのフィブリノゲン標的微粒子

【課題】薬剤を含む注入可能な薬学的生成物、ペプチドが結合する不溶性のキャリアを含む薬剤、その薬剤が結合したフィブリノゲンを介して不活性血小板よりも活性化血小板に結合するようフィブリノゲンを結合し得るペプチド(そしてここでそのペプチドはフィブリノゲンではない)を提供すること。
【解決手段】本発明は、血小板の数(血小板減少症)または機能(血小板無力症)の遺伝性または獲得性欠陥のような、自身の血小板に欠損を有する患者の治療に有用な血小板代替物(合成または人工血小板とも呼ばれる)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板の数(血小板減少症)または機能(血小板無力症)の遺伝性または獲得性欠陥のような、自身の血小板に欠損を有する患者の治療に有用な血小板代替物(合成または人工血小板とも呼ばれる)に関する。
【背景技術】
【0002】
身体は、血塊を形成することによって出血をコントロールする。安定な不溶性の血塊を形成し、そして出血を止め得るために、多くの異なる構成要素が創傷部位に存在する必要があり、そのうち最も重要なものはトロンビン、フィブリノゲン、および血小板である。創傷部位の損傷した組織は、組織因子を放出し、それは酵素トロンビンの産生を引き起こす凝固カスケードを活性化する。トロンビンは、可溶性の血漿タンパク質であるフィブリノゲンを、不溶性のポリマーに変換し、それは血塊の重要な部分である。創傷部位には活性化血小板も存在する。血小板は、最も小さい血液の細胞構成成分であり、そして一旦活性化されると、血小板も血塊の重要な部分を形成する。最初の段階において、血小板は露出した創傷表面に接着し、そして活性化する。血小板膜糖タンパク質の1つであるGPIIb/IIIaは、形が変化し、それがフィブリノゲンに結合することを可能にする。フィブリノゲンは双極性であり、それはそれが1つ以上の血小板に結合し得、そして従って血小板が互いに凝集することを意味する。フィブリンの網目の中に形成された血小板凝集
物が、血塊の基礎構造を形成する。
【0003】
3つの構成要素(トロンビン、フィブリノゲン、または血小板)のいずれか1つの非存在下で、フィブリン塊は適当に形成できず、そして出血が止まらないことが見られ得る。血小板数の遺伝性または獲得性欠陥(血小板減少症)は、例えば白血病のような悪性腫瘍において、または細胞毒性治療の結果として、骨髄による血小板産生の減少の結果として、または例えば血小板抗原に対する免疫反応の場合において、循環からのクリアランス速度の増加の結果として起こり得る。血小板機能の遺伝性または獲得性欠陥(血小板無力症)、例えばグランツマン血小板無力症(GPIIb/IIIaフィブリノゲン受容体の欠陥)、またはベルナールスーリエ症候群(フォンヴィルブランド因子に対するGPIb受容体の欠陥)、またはGrey Platelet症候群、ヴィスコット−オールドリッチ症候群またはヘルマンスキー−パドラック症候群のような貯蔵プールの欠陥は、不十分な止血または医学的に有意な出血を引き起こし得る。
【0004】
血小板輸血は、急性出血および血小板産生および/または機能の異常を有する患者における出血予防の、現在唯一の有効な治療である。1997年のConsensus Conference on Platelet Transfusionは、血小板に対する常に増加する需要についての懸念を強調した。会議の最終声明において、血小板輸血が貴重であるという多数の臨床的証拠が存在するが、その処置はリスクおよびコストを伴い、これらを利点とバランスを取る倫理的に重大な問題を提起すると締めくくられた。
【0005】
血小板濃縮物の現在の標準的な調製物は、全血の遠心分離(軟膜調製物)またはアフェレーシスによって調製された自己由来血漿中の血小板の懸濁液である。濃縮物の貯蔵寿命は、血小板機能および完全性を維持する(そのためには22℃での保存が最適である)、および細菌の増殖を最小限にする(そのためには4℃での保存が最適である)、競合する必要性の間のバランスである。この対立は、血小板濃縮物を22℃で保存するが、細菌の混入を最小限にするためにその貯蔵寿命を5日間に制限することによって解決される。しかし、この期間においても血小板は着実に活性化される。短い保存期間および新しい治療レジメのために増加する臨床的需要が、世界中でますます供給不足を引き起こしつつある。
【0006】
調製および貯蔵の厳格な条件にも関わらず、血小板輸血は依然として急性の細菌感染のリスクと関連している。血液媒介ウイルスを伝染させる非常に低いが測定可能のリスクもよく認識されており、そしてより最近にはvCJDの伝染の理論的リスクが認識されている。このリスクは、濃縮物中の白血球に関連し、そして従って白血球除去によって抑制、または排除し得ると考えられてきた。しかし、血小板も正常なプリオンタンパク質を有し、それが保存中に放出されることが観察された。血小板が改変体プリオンタンパク質も有し得るかどうかはまだ立証されていないが、これは懸念である。
【0007】
血小板調製物における白血球の存在は、さらなるリスクを提起する。それは、HLA抗原に対する免疫化のリスクを増加させ、それは複数回輸血された患者が血小板に対して免疫性になることを引き起こし得る。それに加えて、保存時に、白血球は発熱性のサイトカインを放出し得、副作用の可能性を増加させる。これらの様々な理由のために、白血球は現在日常的に血小板調製物から枯渇されるが、これは付随する血小板収率の減少およびコストの増加を引き起こす。それに加えて、白血球除去は、これも血小板調製物に対するアレルギー反応と関連付けられた、血小板由来のサイトカイン(TGF−βおよびRANTESのような)の問題を除去しない。
【0008】
血小板輸血に関連する問題は、代替物に関する探索を刺激し、そして現在までに広く3つの異なるアプローチが存在している。
【0009】
血小板、または血小板の断片を安定化してその貯蔵寿命を延長させ、そして細菌およびウイルス不活性化処置の適用を促進する試みがなされた。ソラレン、光化学的薬剤、および紫外光による血小板濃縮物の処理が、血小板濃縮物中の細菌およびウイルス病原体を不活性化することが示された。代替のアプローチは、血小板膜断片の調製物を凍結乾燥することであり、それは限られた数の患者において、一時的に、そして不定に有効であることが示された。しかし、これらのアプローチは依然として、血小板は素材の高度に変動する供給物であるという事実によって制限され、それは再現可能な製造および質のコントロールと両立しがたいことを証明する可能性が高い。
【0010】
2つ目のアプローチは、内因性の血小板産生を刺激する薬剤、例えばトロンボポエチンまたはインターロイキン11のような組換え成長因子の使用である。内因性血小板産生の刺激においては有効であるが、治療および血液中の有意な血小板数の回復の間に遅延が存在するので、このアプローチもまた限界がある。結果として、そのような治療は、急性の出血の治療には不適当である。それに加えて、患者の反応における相違が、血小板の生産不足または過剰生産のいずれかを引き起こし得、それは患者をそれぞれ出血または血栓症のリスクにさらす。
【0011】
3つ目のアプローチは、非血小板由来の止血剤の開発である。このアプローチの利点は、非血小板由来、生体適合性で、特定の素材を用いて、大規模に経済的に製造し得る、滅菌、凍結乾燥した生成物を設計する可能性である。その目的は、血管の損傷部位において残留血小板と相互作用する能力を有し、一方血管の外傷の非存在下では血栓症反応を誘発しない、粒状の物質を開発することである。これを行うために、天然の血小板の作用を厳密に模倣する生成物を設計することが重要である。従って、有効であるために血小板代替物は止血血小板栓の形成における重要な過程を模倣することができなければならないので、正常な血小板機能の理解が、その生成物の開発の必要条件である。さらに、そのように形成された血栓は、正常なフィブリン溶解によって溶解できなければならない。
【0012】
血小板は通常休止状態で循環しているが、血管の損傷後、それらはGPIbα血小板受容体を介して、損傷した内皮下の細胞表面のフォンヴィルブランド因子(vWF)に急速に接着する。この相互作用は、損傷した血管における流動で経験されるような、高い剪断力の条件下で起こり、そしてその重要性は、ベルナール−スーリエ症候群(GPIb受容体を欠く)または重症のフォンヴィルブランド病(vWFを欠く)を有する患者に見られる出血体質によって示される。この接着の過程が、ある範囲の血小板アゴニスト(血管壁のコラーゲン、損傷細胞から放出されるADP、露出した組織因子と血漿凝固因子との相互作用によって局所的に産生されるトロンビン)と共に、血小板の活性化を引き起こす。これは、GPIIb−IIIa受容体複合体のコンフォメーション変化を引き起こし、それが血漿フィブリノゲンに結合し、そしてさらなる血小板を増殖する血栓にリクルートすることを可能にする。血小板はまた、陰性に荷電した表面を露出し得、それにプロトロンビナーゼ複合体が結合し、そしてトロンビンを産生し得、従ってフィブリノゲンを切断してフィブリンを形成することによって止血栓に加える。
【0013】
血小板−血小板凝集は、フィブリノゲンのGPIIb−IIIaとの相互作用−血小板活性化の「最終共通経路」に決定的に依存する。Coller(1980)Blood 55,2は、フィブリノゲンでコートした不活性のビーズは、ADPの存在下または非存在下でGPIIb−IIIa受容体を介して血小板に結合し、従って凝集を引き起こすことにおいて血小板の作用を模倣することを示した。
【0014】
このコンセプトを活用して血小板代替物を開発するために、いくつかの試みがなされた。GPIIb−IIIa血小板受容体と相互作用するよう設計されたRGDペプチド(す
なわち、モチーフArg−Gly−Aspを含むペプチド)が、赤血球に共有結合で結合された。その調製物は低い剪断力の条件下で活性化血小板と相互作用し得たが、それは血小板減少症の霊長類において出血を抑制できなかった(非特許文献1)。別の研究において、ホルムアルデヒドによって赤血球と架橋したフィブリノゲンは、ADPおよびトロンビン誘発血小板凝集を増加させ、そして血小板減少症のラットにおいて出血時間を短縮した(非特許文献2)。いくらか見込を提供したが、これらのアプローチはどちらも依然として細胞材料に依存する不都合を有する。
【0015】
特許文献1は、架橋したヒト血清アルブミンのマイクロカプセル表面をコートしたフィブリノゲンからなる生成物を開示する。これらは、高い剪断力の条件下で血小板と相互作用することが示され、そして血小板減少症ウサギにおいて出血を有意に抑制した。その血小板に対する結合はRGDを含むペプチドによって阻害されたので、フィブリノゲンをコートしたマイクロカプセルは、GPIIb−IIIa受容体と相互作用することが示された。ヒルジンによる活性の部分的な阻害は、トロンビンが固定化されたフィブリノゲンを切断したことを示した。フィブリノゲンをコートしたマイクロカプセルは、アゴニストの存在下で血小板を凝集させたが、アゴニストの非存在下でも血小板の凝集を誘導し得た(すなわち血栓形成性である)。この後者の効果は変動し、そしてバッチおよび血小板ドナー依存性であった。従って、これらの研究は、これらのマイクロカプセルは止血栓の形成を促進し得ることを示したが、その非活性化血小板との相互作用が問題であり、そしてインビボで有害な血栓の発生を引き起こし得る。これらのデータから、その生成物のさらなる開発が必要であることが明らかであった。
【0016】
特許文献1の生成物のさらなる分析が、非特許文献3において記載され、そこで特許文献1の生成物は「SynthocytesTM」と呼ばれる。SynthocytesTMの血小板凝集を誘導する能力が、不活性および活性化血小板において、すなわちそれぞれ血小板活性化アゴニスト、ADPの非存在下または存在下で分析された。非特許文献3の図2(A)は、血小板計測技術によって測定された、全血(WB)における血小板凝集アッセイの結果を報告する。図2(A)は、不活性血小板(すなわちADPの非存在下)の血小板凝集は、SynthocytesTM無しで約20%、そしてSynthocytesTM存在下で約50%であることを示す。言い換えると、SynthocytesTMは、不活性血小板の凝集の増加を引き起こす。特定の試験条件下で、不活性血小板の凝集における増加は、約2.5倍であった。図2(A)はまた、活性化血小板に対するSynthocytesTMの効果も示す。活性化血小板(すなわちADPの存在下)の血小板凝集は、SynthocytesTMの非存在下で約40%、そしてSynthocytesTMの存在下で約70%である。これは、血小板活性化において2倍より少ない増加である。Daviesらの図2(A)は、SynthocytesTMは、ADP非存在下で血小板凝集活性を有すること、すなわちそれらは不活性血小板を構成的に凝集させることを示す。さらに、図2(A)は、SynthocytesTMは活性化血小板(2倍より少ない)よりも不活性血小板(約2.5倍)の凝集においてより大きな増加を引き起こすことを示す。これらのデータは、SynthocytesTMは、不活性血小板よりも活性化血小板に結合(すなわち凝集)しないことを示す。むしろ、特許文献1のSynthocytesTMは、血小板が活性または不活性であるかどうかに関係なく、血小板の凝集において構成的に活性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第98/017319号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Alvingら、Transfusion、37、1997年、p.866−876
【非特許文献2】AgamおよびLivne、Eu.J.Clin.Invest.、22、1992年、p.105−112
【非特許文献3】Daviesら、Platelets、13、2002年、p.197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、本発明の目的は、改善された血小板代替物を提供することである。特に、従来の技術における、安全な非血栓形成性の血小板代替物に関する必要性に取り組むことが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の説明)
本発明は、薬剤を含む注入可能な薬学的生成物、ペプチドが結合する不溶性のキャリアを含む薬剤、その薬剤が結合したフィブリノゲンを介して不活性血小板よりも活性化血小板に結合するようにフィブリノゲンを結合し得るペプチドを提供し、そしてここでそのペプチドはフィブリノゲンではない。例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
薬剤を含む注入可能な薬学的生成物であって、該薬剤はペプチドが結合される不溶性キャリアを含み、該ペプチドはフィブリノゲンに結合し得、その結果、該薬剤が該結合されたフィブリノゲンを介して、不活性な血小板よりも優先して活性血小板に結合され、ここで、該ペプチドはフィブリノゲンではない、生成物。
(項目2)
前記生成物が静脈内に導入される場合、前記ペプチドがフィブリノゲンに結合し、その結果、該結合されたフィブリノゲンが、血小板がすでに活性化された創傷の部位において血餅の形成に優先的に関与するようになる、項目1に記載の生成物。
(項目3)
前記ペプチドが、血小板膜糖タンパク質GPIIbまたはGPIIIaから得られるフィブリノゲン結合配列(例えば、配列TDVNGDGRHDL)またはそのような配列の改変体を含む、項目1または2に記載の生成物。
(項目4)
前記ペプチドが、TDVNGDGRHDLを含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の生成物。
(項目5)
前記ペプチドが、アミノ末端にGly−(Pro/His)−Arg−Xaaの配列を含み、ここで、Xaaは任意のアミノ酸である、項目1〜4のいずれか1項に記載の生成物。
(項目6)
Xaaが、Pro、Ser、GlyまたはValである、項目5に記載の生成物。
(項目7)
前記ペプチドが、4〜200のアミノ酸を有する、項目1〜6のいずれか1項に記載の生成物。
(項目8)
前記キャリアが、肺毛細血管床を通じる前記薬剤の送達を保証するのに適切なサイズを有する、項目1〜7のいずれか1項に記載の生成物。
(項目9)
前記キャリアが微粒子である、項目1〜8のいずれか1項に記載の生成物。
(項目10)
前記微粒子が、アルブミン微粒子のようなタンパク質微粒子である、項目11に記載の生成物。
(項目11)
前記生成物が、キャリアの集団を含み、該集団のうちの2%未満が最大寸法で6μmを超える、項目8〜10のいずれか1項に記載の生成物。
(項目12)
前記キャリアの大多数が、最大寸法で2μm〜4μmである、項目8〜11のいずれか1項に記載の生成物。
(項目13)
前記ペプチドが、共有結合によって前記キャリアに結合される、項目1〜12のいずれか1項に記載の生成物。
(項目14)
前記ペプチドがシステイン含み、そして該ペプチドが、該システインの−SH基が前記キャリアのチオール反応基に連結することにより該キャリアに結合される、項目13に記載の生成物。
(項目15)
前記生成物が、前記ペプチドに結合されたフィブリノゲン、またはその改変体もしくはフラグメントをさらに含み、該フィブリノゲンまたはその改変体もしくはフラグメントは、誘導性の血小板凝集活性を有する、項目1〜14のいずれか1項に記載の生成物。
(項目16)
前記フィブリノゲン(または改変体もしくはフラグメント)が、非共有結合により前記ペプチドに結合される、項目15に記載の生成物。
(項目17)
前記フィブリノゲン(または改変体もしくはフラグメント)が、共有結合により前記ペプチドに結合される、項目15または16に記載の生成物。
(項目18)
誘導性の血小板凝集活性を有する注入可能な薬学的生成物であって、フィブリノゲンまたはその改変体もしくはフラグメントが一定の構成で結合される不溶性キャリアを含み、その結果、該フィブリノゲンが、不活性な血小板よりも優先して活性血小板に結合する、生成物。
(項目19)
項目18に記載の生成物であって、静脈内に導入される場合、血小板がすでに活性化された創傷の部位における血餅の形成に顕著に関与するようになるのみである、生成物。
(項目20)
項目15〜19のいずれか1項に記載の生成物を調製するための方法であって、
項目1〜14のいずれか1項に記載の生成物を提供する工程、および
フィブリノゲンまたはその改変体もしくはフラグメントと混合する工程
を包含し、そして必要に応じて、以下の工程:
(a)非結合のフィブリノゲンを除去する工程;
(b)該生成物を薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と配合する工程;
(c)該生成物を希釈して、薬学的に受容可能な単位用量を提供する工程;および
(d)該生成物を滅菌するか、または工程(a)〜(c)を通して生成物の無菌性を保証する工程、
のうちの1以上をさらに包含する、方法。
(項目21)
個体において止血を促進する方法であって、項目1〜19のいずれか1項に記載の生成物の薬学的有効量を該個体に投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
血小板減少を有する個体を処置する方法であって、項目1〜19のいずれか1項に記載の生成物の薬学的有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目23)
医学で使用するための、項目1〜19のいずれか1項に記載の生成物。
(項目24)
止血を促進するための医薬の製造における、項目1〜19のいずれか1項に記載の生成物の使用。
(項目25)
血小板減少を有する患者の処置のための医薬の製造における、項目1〜19のいずれか1項に記載の生成物の使用。
(項目26)
前記患者が、400×10/lよりも低い血小板数、好ましくは、150×10/lより低い血小板数を有する、項目21〜25のいずれか1項に記載の方法または使用。
(項目27)
前記血小板数が、10×10/lよりも低い、項目26に記載の方法または使用。
(項目28)
前記患者が、骨髄からの血小板産生不全を有する、項目21〜27のいずれか1項に記載の方法または使用。
(項目29)
前記骨髄からの血小板産生不全が、血液の癌、または細胞毒性を有する化学療法もしくは放射線療法によって引き起こされる、項目28に記載の方法または使用。
(項目30)
前記患者が、血小板の数または機能において遺伝的な障害または薬物性の障害を有する、項目21、23または24のいずれか1項に記載の方法または使用。
(項目31)
前記患者の血小板が機械的に損傷を与えられた、項目21、23または24のいずれか1項に記載の方法または使用。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1つの実施態様において、そのペプチドは、血小板膜糖タンパク質GPIIb−IIIaまたはフィブリンのいずれかによって天然に結合するフィブリノゲンの領域に結合する。
【0022】
好ましい実施態様において、そのペプチドは、GPIIb−IIIaが天然に結合するフィブリノゲンの領域に結合する。GPIIb−IIIaのフィブリノゲンに対する結合は、Bennett、2001、Annals of NY Acad.Sci.、936、340−354において議論される。
【0023】
そのペプチドは、フィブリノゲンのα鎖のカルボキシルまたはアミノ末端ドメインの1つまたは両方に結合し得る。より具体的には、そのペプチドは当該ドメインの1つまたは両方のRGDを含むモチーフに結合し得る。RGDを含むモチーフは、配列RGDXを有し得、ここでXはセリン、バリン、フェニルアラニンまたはアラニンのようなあらゆるアミノ酸であり、そして従ってアミノ酸95−98のRGDF、またはアミノ酸572−575のRGDSであり得る。
【0024】
そのペプチドは、フィブリノゲンのγ鎖のC末端ドメインに結合し得る。より具体的には、そのペプチドは、フィブリノゲンγ鎖のC末端ドメインの最終15、12、10、または4アミノ酸内の配列に結合し得る。最終12アミノ酸は、通常HHLGGAKQAGDVである。
【0025】
別の好ましい実施態様において、そのペプチドはフィブリンが通常結合するフィブリノゲンの領域に結合する。フィブリノゲンに対するフィブリンの結合は、Mosessonら、2001、Ann.N.Y.Acad.Sci.、936、11−30において議論され、その内容は本明細書中で参考文献に組み込まれる。そのペプチドは、残基337−379の間のような、γ鎖のDドメインに結合し得る。そのペプチドは、C末端領域のような、Dドメインのβ鎖部分に結合し得る。
【0026】
そのペプチドは、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、250、300、350、400またはそれ以上のnMの解離定数(K)でフィブリノゲンと結合し得る。約100nMのKが好ましい。
【0027】
本発明の薬剤は、結合した場合にフィブリノゲンが不活性血小板よりも活性化血小板に結合するように、フィブリノゲンに結合する。活性化血小板は、アゴニストによる刺激によって生じる変化が、GPIIb−IIIaのコンフォメーション変化を引き起こし、それが次いでフィブリノゲンが結合することを可能にし、そして従って血小板が凝集し、そしてある場合にはその細胞内顆粒の中身、例えば5HTを放出する、またはその表面に顆粒膜タンパク質、例えばα顆粒Pセレクチンを発現することを可能にする血小板である。その反応の正確な性質は、アゴニスト間およびアゴニストの投与量によって変わる。アゴニストの例は、トロンビン、ADP、およびコラーゲンである。活性化されていない血小板は、そのような変化を受ける可能性を有するが、まだアゴニストによってそうなるよう刺激されていない。
【0028】
フィブリノゲンが活性化血小板に関して結合優先度を有するようにペプチドがフィブリノゲンに結合し得るかどうかを試験するために、試験ペプチドを本発明によってキャリアに結合させ、そしてフィブリノゲンを下記で記載するようにペプチドに結合させ、それによって試験薬剤を作製した。Daviesら、2002、Platelets、13、197で記載されたように、試験薬剤を、懸濁液、例えば全血、血小板に富んだ血漿または適当な緩衝液溶液中で、ADPのような血小板活性化のアゴニストの存在下または非存在下で血小板に加え(すなわち、試験薬剤をそれぞれ活性化または不活性血小板に加える)、そして静かに混合する。次いで血小板懸濁液/試験薬剤の混合物を分析して、例えば以下の実施例またはDaviesらにおいて記載された血小板計数技術を用いることによって、血小板が凝集するかどうかを決定する。以下の実施例またはDaviesらにおいて記載されたように、コントロールとして、血小板凝集のレベルを、試験薬剤を加えずに、ADPの存在下または非存在下で決定する。血小板凝集のレベルは、結合したフィブリノゲンの、血小板に結合する能力と相関する。フィブリノゲンが活性化血小板に対して結合優先性を有するようフィブリノゲンを結合し得るペプチドを有する、本発明による薬剤は、ADPの非存在下よりもADPの存在下において、コントロールおよび薬剤間の凝集においてより大きな増加を示す。当業者は、ADP以外の血小板活性化アゴニストを用いて同じ試験を実施し得ることを認識する。
【0029】
典型的には、フィブリノゲンが活性化血小板に対して結合優先性を有するようフィブリノゲンを結合し得るペプチドを有する、本発明による薬剤は、不活性なコントロールレベルと比較して、不活性血小板の凝集において、140%、130%、120%、110%、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%より少ないような、150%より少ない増加を引き起こすか、または不活性な血小板の凝集において実質的に増加を引き起こさない。より低い数字が好ましい。この文脈において、不活性血小板の凝集の基礎レベルは、100%と取られ、そして従って上記で定義したような100%の増加は凝集レベルの倍増(すなわち2倍増)であり、そして150%の増加は凝集レベルの2.5倍増である。
【0030】
フィブリノゲンが活性化血小板に対して結合優先性を有するようフィブリノゲンを結合し得るペプチドを有する、本発明による薬剤は、活性化コントロールと比較して、活性化血小板の凝集において少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%(すなわち2倍)の増加、またはそれ以上を引き起こし得る。より高い数字が好ましい。本発明の薬剤によって引き起こされる活性化血小板の凝集における増加レベルは、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、またはそれ以上までであり得る。
【0031】
1つの実施態様において、本発明の薬剤は、不活性なコントロール(すなわち、本発明の薬剤非存在下での不活性血小板)と比較した不活性な血小板より、活性化コントロール(すなわち、本発明の薬剤非存在下での活性化血小板)と比較した活性化血小板の凝集においてより大きな倍数の増加を引き起こし得ることが好ましい。
【0032】
生成物は、もしそれが無菌であり、実質的に発熱物質を含まない、そして医学的に許容できない効果を有さなければ、注入可能な薬学的生成物である。例えば、その生成物は、ヒト患者に注射した場合に、医学的に許容できない免疫反応を産生するべきではない。医学的に許容できない効果は、医学の分野における当業者によって決定され得る。
【0033】
重要なことに、本発明の場合、薬剤のフィブリノゲン結合ペプチドは、もしその薬剤にフィブリノゲン結合ペプチドを介してフィブリノゲンを添加し、そして患者に静脈内投与したら、そのペプチドを介して薬剤に結合したフィブリノゲンが、医学的に許容できないレベルの非特異的フィブリン塊の形成において活性でないように、フィブリノゲンに結合し得るべきである。この文脈において、「非特異的」によって、我々は創傷部位における活性化血小板の非存在下で起こるフィブリン塊の形成を含む。
【0034】
上記で議論したように、WO98/17319は、フィブリノゲンでコートしたマイクロカプセルを開示し、それは不活性血小板の血小板凝集を誘導する(すなわち、それらは血栓形成性の生成物である)。これは医学的に許容できない。理論にしばられることなく、我々は、本発明の生成物は、医学的に許容できない構成的なフィブリノゲンの作用を引き起こさないコンフォメーションでフィブリノゲンを結合することによって、以前の技術が直面した不都合に取り組むと考える。従って、本発明の生成物において使用されたような、キャリアに直接結合したフィブリノゲン結合ペプチドは、WO98/17319において定義されたような、フィブリノゲンではない。
【0035】
インビボにおいて、フィブリノゲンは典型的には、ADP、トロンビン、またはコラーゲンのようなアゴニストの存在によって活性化された血小板に結合する。
【0036】
1つの実施態様において、もし患者に静脈内投与されるなら、その生成物は、血小板が既に活性化されている創傷部位において血塊の形成に優先的に関わる。この文脈において、「優先的に関わる」という語句は、その生成物の不活性血小板に対する低レベルの結合は許容し得るが、そのレベルは医学的に許容できないレベルのフィブリン塊形成は引き起こさないことを意味する。
【0037】
その生成物において使用されたフィブリノゲン結合ペプチドは、血小板膜糖タンパク質GPIIbまたはGPIIIaから得た配列を含み得る(Bennett、2001、Annals of NY Acad.Sci.、936、340−354)。
【0038】
特に、そのフィブリノゲン結合ペプチドは、GPIIbまたはGPIIIaのフィブリノゲン結合領域から得ることができる。好ましいフィブリノゲン結合領域は、上記で議論されたような、フィブリノゲンのα鎖アミノおよび/またはカルボキシル末端ドメインに結合する領域、およびフィブリノゲンのγ鎖C末端ドメインに結合する領域を含む。
従って、そのフィブリノゲン結合ペプチドは、GPIIbのアミノ酸294−314の配列を表す、AVTDVNGDRHDLLVGAPLYMの配列、またはそのフィブリノゲン結合断片を含み得る。そのような断片は、配列TDVNGDGRHDL(296−306)、配列GDGRHDLLVGAPL(300−312)および末端テトラペプチドGAPLを含む。これらの配列は、フィブリノゲン、および特にフィブリノゲンのγ鎖の結合に関わると考えられる(Bennett、2001、前掲書中;D’Souzaら、1991、Nature、350、66−68;TaylorおよびGartner、1992、J.Biol.Chem.、267、11729−33)。断片296−306および300−312の類似した効果は、断片300−306もフィブリノゲン結合活性を提供し得ることを示唆する。
【0039】
Grunkemeierら(1996、Molecular Recognition、9、247−257)は、精製TDVNGDGRHDL(「B12」と命名された)ペプチドは、血小板凝集の阻害を引き起こしたことを報告した。Grunkemeierらは、この情報を使用してB12ペプチドでコートした非血小板接着物質を提案し、そしてB12は、GPIIb/IIIa血小板受容体に結合する領域に特異的に、フィブリノゲンに結合し、従って血小板凝集を阻害するという仮説を立てた。従って、Grunkemeierらにおける理解は、固定化された場合、B12ペプチドを、フィブリノゲンの血小板に対する結合を阻害し、そして従って血小板凝集を阻害するために使用し得るということである。この教えを考えると、B12ペプチドが血小板凝集および血塊形成を助ける血小板代替物に使用するために適当であることは明らかでなかった。
【0040】
フィブリノゲン結合ペプチドは、ペプチドAPLHK、EHIPA、およびGAPLのうち1つまたはそれ以上を含み得、それらはGartner、1991、Biochem.Biophys.Res.Commun.、180(3)、1446−52において、GPIIb−IIIaのフィブリノゲン結合ドメインの疎水性親水性指標的に同等のペプチド模倣物であることが示された。
【0041】
フィブリノゲン結合ペプチドは、GPIIIaの残基95−223の配列またはそのフィブリノゲン結合断片を含み得る。例えば、配列SVSRNRDAPEGGを含む残基211−222は、GPIIIaの重要なフィブリノゲン結合ドメインであると考えられる(Charoら、1991、J.Biol.Chem.、266、1415−1421)。
【0042】
GPIIIaの他の適当な領域は、残基109−171および164−202を含む。
【0043】
当業者は、それらが本発明によるフィブリノゲン結合活性を提供するなら、これら配列のいずれの断片または改変体も使用し得ることを認識する。
【0044】
特に好ましいフィブリノゲン結合ペプチドは、血小板膜糖タンパク質GPIIbから得た配列、すなわちTDVNGDGRHDL、またはそのような配列の改変体を含む。
TDVNGDGRHDLの改変体は、
T(D,E)VNG(D,E)GRH(D,E)L
TD(V,L)NGDGRHDL
TDV(N,Q)GDGRHDL
TDVNGDG(R,K)HDL
を含む。
【0045】
そのような改変体は、実質的にTDVNGDGRHDLと同じフィブリノゲン結合活性を有し、ここでそれらはフィブリノゲンに対して実質的に同じ親和性を有し、そして結合した場合、フィブリノゲンは、TDVNGDGRHDLに結合した場合と実質的に同じコンフォメーションおよび活性を有する。「実質的に同じフィブリノゲン結合活性」によって、我々はTDVNGDGRHDLに対して1、2、3、4、5、10、50、100またはそれ以上の桁の程度異なる(より高いまたはより低いかのいずれか)親和性でフィブリノゲンに結合する改変体を含む。より低い数字が好ましい。
【0046】
Kuyasら、1990、Thrombosis and Haemostasis、63(3)、439は、ヒト血漿からフィブリノゲンを単離するために、C末端リジンを介してFractogelに固定化された合成ペプチドGPRPKの使用を記載している。Kuyasらは、ヒトフィブリノゲンはフィブリンに対して強い親和性を有することを説明し、そして著者らはトロンビンの作用によって露出されたフィブリンのα鎖のN末端配列、GPRPを含むペプチドを利用したことを報告し、それはフィブリノゲンに結合することが示された(LaudanoおよびDoolittle、1980、Biochemistry、19、1013;Laudanoら、1983、Ann.N.Y.Acad.Sci.、408、315)。Kuyasらは、「コア」配列GPRが、フィブリノゲンの結合に必要であると結論付けている。
【0047】
従って、その生成物において使用されるフィブリノゲン結合ペプチドは、α鎖のN末端領域またはβ鎖のC末端領域のような、フィブリンのフィブリノゲン結合領域の配列を含み得る。よって、そのペプチドは、アミノ末端に配列Gly−(Pro/His/Val)−Arg−Xaaを有し得、ここでXaaはあらゆるアミノ酸である。この文脈において、「アミノ末端において」によって、我々は、N末端からC末端へ読んだ場合に、上記のテトラペプチド配列のGly残基が、ペプチドの最初のアミノ酸を表すことを意味する。「Pro/His/Val」によって、我々は、その位置にプロリン、ヒスチジン、またはバリンのいずれかが含まれることを意味する。1つの実施態様において、プロリンおよびヒスチジンが好ましく、そしてプロリンが最も好ましい。
【0048】
そのペプチドはFractogelに結合しているので、Kuyasらは本発明による注入可能な薬学的生成物は開示していない。Fractogelは、ポリメタクリル酸からなり、そして20mmの最低粒子サイズを有し、そして従って薬剤学的に許容可能ではない。
【0049】
そのペプチドは、アミノ末端にGly−Pro−Arg−Proの配列を含み得る。
【0050】
あるいは、そのペプチドは、アミノ末端にGly−Pro−Arg−Sar(Sarは、メチルグリシンであるサルコシンの短縮形である)、Gly−Pro−Arg−GlyまたはGly−Pro−Arg−Valの配列を含み得る。
【0051】
そのペプチドは、フィブリノゲン結合配列に加えて、ペプチドのキャリアへの結合を助けるようデザインされたアミノ酸または配列を含み得る。例えば、そのペプチドは、キャリアのチオール反応基と連結するために末端システインを含み得る(下記を参照のこと)。
【0052】
典型的には、そのペプチドは4から200アミノ酸を有する。好ましくは、そのペプチドは長さが150、100、90、80、70、60、50、40、30または20アミノ酸より短い。最低限の長さは、少なくともフィブリノゲン結合配列を全部含むのに十分長くあるべきであるが、好ましくは、そのペプチドは長さが少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11またはより多いアミノ酸である。
【0053】
そのペプチドはまた、スペーサー配列を含み得る。これは、フィブリノゲン結合配列およびキャリアへの連結の間に、空間的な距離を提供し得る。これは、そのペプチドのフィブリノゲン結合活性を保持するのを助け得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のアミノ酸のスペーサー配列が適当であり得る。スペーサーの配列は、アミノ酸の混合を含み得る、または単一のアミノ酸の反復であり得る。例えば、ポリ(グリシン)配列が、スペーサーとして使用するために適当であり得る。
【0054】
そのキャリアは、不溶性、不活性および生体適合性であるべきである。そのキャリアは、キャリアを血漿に加え、そしてカルシウム再添加血漿を活性化するために例えば微粉化カオリン(Helena Laboratories Ltd.によって供給された)を用いた活性化部分トロンボプラスチン凝固時間(APPT)、または例えばManchesterトロンボプラスチン試薬(Helena Laboratories Ltd.によって供給された)を用いたプロトロンビン凝固時間(PT)に影響を与えないことを示すことによって試験される、血液凝固に有意でない影響を示すべきである。同様に、そのキャリアは、上記で記載されたような、Daviesら、2002、Platelets、13、197の方法によって試験された場合に、血小板に影響を示すべきでない。上記で使用される「影響がない」という語句は、そのキャリアが上記で記載したような医学的に許容できない影響を有さないという意味を含む。
【0055】
そのキャリアは、薬剤の肺毛細血管床を通じた薬剤の透過を確実にするために適当なサイズを有するべきである。薬剤の肺毛細血管床を通じて透過する能力を、Perkinsら、1997、The British Journal of Radiology、70、603の方法を用いて決定し得る。あるいは、薬剤の肺毛細血管床を通じて透過する能力を、宿主、例えば麻酔イヌまたはカニクイザルに薬剤を注射し、そして血圧、脈拍酸素測定、呼吸および心拍数、および血液ガス分析のようなパラメーターの分析を含む、循環器および呼吸器の安全性を研究することによって決定し得る。宿主に投与された場合に肺毛細血管床を通じて透過し得る薬剤は、これらのパラメーターに対して実質的に影響を及ぼさない。
【0056】
この実施態様において、そのキャリアは、Coulter Multizer IIのような粒子計数器によって測定される、集団の数の約2%より少ないような少数が最大寸法として6μmを超えるような、最大寸法を有し得る。最大寸法が2から4μmのサイズが適当であり得、それはヒト血小板のサイズに匹敵する。
【0057】
1つの実施態様において、そのキャリアは微粒子であり得る。「微粒子」という用語は、固体、中空、および多孔性の微粒子を含む。その微粒子は球状であり得(すなわち「ミクロスフェア」である)、それによって我々は、全ての実質的に球状の形を含む。
その微粒子を、あらゆる適当な物質で形成し得る。それは、架橋したタンパク質で形成し得る。これらの目的のために典型的なタンパク質はアルブミンであり、それは血清由来または組換え体であり得、そして配列がヒトまたは非ヒトであり得る。タンパク質微粒子を、タンパク質をスプレードライすることによって形成し得る。例えば、本発明によるキャリアとして使用するために適当な微粒子を、WO92/18164におけるような、周知のスプレードライ技術を用いて、ヒト血清アルブミンをスプレードライすることによって形成し得る。
【0058】
キャリアとして微粒子を使用する代わりは、リポソーム、合成ポリマー粒子(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ(乳酸/グリコール酸)のような)、細胞膜断片等を含む。
【0059】
そのペプチドを、あらゆる適当な手段によってキャリアに結合し得る。ペプチドおよびキャリア間の結合は、共有結合または非共有結合であり得る。典型的には、その結合は共有結合である。ペプチドがシステインを含み、そしてキャリアがチオール反応基を含む場合、適当な共有結合が形成され得る。これはシステインの−SH基が、キャリアのチオール反応基と結合することによって、ペプチドがキャリアに結合することを可能にする。上記で議論したように、末端システイン残基を、フィブリノゲン結合ペプチドに組み込んで、ペプチドをキャリアのチオール反応基と架橋し得る。例えば、アルブミンキャリア上の遊離のチオールを使用し得、脱離基(例えば5,5’−ジチオ−bis(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)またはエルマン試薬)を、アルブミンキャリア上の遊離のスルフヒドリル基に置換し得、そしてペプチドのシステインを脱離基で置換する。適当なチオール反応基はまた、Greenら、1982、Cell、28、477において開示されたようなマレイミドも含むが、当業者は、あらゆる適当な方法を使用し得ることを認識する。
【0060】
例えば、例えばマレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)またはスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)架橋剤を用いて、キャリア中のリジン残基をチオール反応性マレイミド基に転換して、キャリアにおいてチオール反応基を利用可能にもし得る。
【0061】
ペプチドをキャリアと結合する代替の方法は、2工程のカルボジイミド法を用いることであり(Grabarek、1990、Analytical Biochemistry、185)、ここでペプチドを1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスルホスクシニミド(スルホ−NHS)とインキュベートし、それは活性エステルの形成を引き起こす。そのペプチドエステルを単離し得、そして次いでキャリアと混合し、そしてエステルをキャリア上のアミンと反応させる。
【0062】
あらゆる数のフィブリノゲン結合ペプチドを、キャリアに結合し得る。血小板は、典型的には50,000−100,000のGPIIb−IIIa表面タンパク質を有する。キャリア上において同様の数のフィブリノゲン結合ペプチドが適当であり得る。例えばキャリアは、5、8、9、10、11、12、13、14、15、20、40万またはそれ以上のフィブリノゲン結合ペプチドのような、少なくとも1,000、5,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、またはそれ以上のそれに結合したフィブリノゲン結合ペプチドを有し得る。1つの実施態様において、フィブリノゲン結合ペプチドの数は、約5,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000またはそれ以上であり得る。
【0063】
フィブリノゲン、またはその改変体または断片を、そのように形成した生成物に結合し、個体に投与するためのフィブリノゲンの固定化形式を提供し得る。
【0064】
上記で記載したような生成物を提供し、そしてそれをフィブリノゲン、またはその改変体または断片と混合する工程を含む方法によって、これを達成し得る。1つの実施態様において、フィブリノゲン(または改変体または断片)は、ペプチドのフィブリノゲン(または改変体または断片)に対する親和性の結果としてペプチドに結合する。従って、フィブリノゲン(または改変体または断片)は、非共有結合によってペプチドに結合し得る。その非共有結合を、続いてフィブリノゲン(または改変体または断片)およびペプチド間、またはフィブリノゲン(または改変体または断片)およびキャリア間にさらなる共有結合を形成することによって安定化し得る。あるいは、フィブリノゲン(または改変体または断片)の結合の唯一の手段は、ペプチドに対する共有結合により得る。
【0065】
フィブリノゲン(または改変体または断片)を非共有結合的に結合する1つの適当な方法は、上記で規定したような生成物を血液、または血漿または血漿由来または組換えフィブリノゲンの濃縮物とインキュベートすることを含み、それは20℃から37℃の間で適当な時間、静脈内で使用するために適当である。我々は、20℃で3時間までのインキュベーションが十分であることを発見した。フィブリノゲンを非共有結合的に結合するさらなる方法を、下記の実施例で議論する。
【0066】
望ましい生成物の特徴を得るために、生成物に結合するフィブリノゲンの量は変動し得る。典型的には、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の生成物中の粒子が、非共有結合したフィブリノゲンを有する生成物を達成するために適当なフィブリノゲン濃度および条件下で、その生成物をフィブリノゲン溶液とインキュベーションする。1つの実施態様において、選択したフィブリノゲンインキュベーション条件は、以下の実施例で開示されたような方法によって決定されるように、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上の蛍光強度中央値(MFI)を有する生成物を産する。
【0067】
より好ましくは、MFIは31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5より少ない。
【0068】
共有結合を達成するために、例えば上記で議論したようなEDCプラススルホ−NHSのような、長さゼロのヘテロ二官能性架橋剤を用いて、フィブリノゲンをペプチドに架橋し得る。
【0069】
注入可能な薬学的組成物の産生における続く工程は、以下のものを含み得る−
(a)結合していないフィブリノゲンを除去する;
(b)薬剤学的に許容できるキャリアまたは希釈剤と共に生成物を処方する;
(c)生成物を希釈して薬剤学的に許容できる単位1回投与量を提供する;そして
(d)生成物を滅菌する。
【0070】
産生の具体的な工程は、以下のように行い得る−
(a)2000×gで15分間、20℃で遠心することによって、結合していないフィブリノゲンを除去し得、そして生成物を続いて、等張緩衝液(例えばpH7.0−7.4の0.15Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、またはpH7.0−7.4の0.15Mの塩化ナトリウムを含む0.02MのTris)に再懸濁することによって洗浄する。あるいは、生成物が膜に保持される場合は、接線方向の(tangential)限外ろ過を用いて、上記の緩衝液の1つで洗浄し得る。
(b)生理的pHで等張緩衝液に再懸濁することによって、生成物を処方し得る(例えば、上記で記載した緩衝液の1つを用いて)。例えばマンニトールまたはグルコースを含む緩衝液も使用し得る。1つの実施態様において、生成物を凍結乾燥して、凍結乾燥した製剤形式を産生し得、それを使用の直前に再構成し得る。適当な製剤形式は、0.5グラムから5グラムの間の生成物であり得る。
【0071】
工程(b)および(c)は同じまたは異なり得ることが認識される。
【0072】
工程(d)は不必要であり得ることも認識される。生成物は典型的には無菌的に産生され、そして好ましい実施態様において、さらに最終的な熱処理を受ける。液体懸濁液の適当な最終熱処理の例は、適当な温度、例えば60℃で10時間加熱することである。あるいは、生成物を最初に凍結乾燥し、そして次いで例えば80℃で72時間加熱し得る。そのような手順は、血液タンパク質中のウイルスを破壊するために通常使用され、そして細菌を破壊することが期待される。あるいは、熱処理工程を、ガンマ線照射、例えばコバルト60線源を用いて25−35Kgyに曝露することで置換し得る。
【0073】
結合したフィブリノゲン(または改変体または断片)が、不活性血小板よりも活性化血小板に結合し、そして好ましくは、静脈内投与後に、血小板が既に活性化されている創傷部位においてのみ血塊の形成に関わるかぎり、結合の形式は異なり得る。
【0074】
よって、その生成物はさらに、当該ペプチドに結合した、誘導性の血小板凝集活性を有するフィブリノゲン、またはその改変体または断片を含み得る。
【0075】
「誘導性の血小板凝集活性」によって、我々は、フィブリノゲンが不活性血小板よりも活性化血小板に結合することを意味する。好ましくは、もし患者に静脈内投与されたら、生成物のフィブリノゲン部分が、血小板が既に活性化されている創傷部位において血塊の形成に優先的に関わる。フィブリノゲンの血小板凝集活性が「誘導性」かどうかを決定する方法は、上記で議論する。
【0076】
フィブリノゲンの供給源は、例えば血漿または血液から、または組換え供給源から得た精製タンパク質であり得る。フィブリノゲンは、配列がヒトまたは非ヒトであり得る。
【0077】
それが有用なレベルの誘導性血小板凝集活性を有するなら、フィブリノゲンのあらゆる改変体または断片を使用し得る。この文脈において、有用なレベルの誘導性血小板凝集活性は、その改変体または断片を本発明の生成物と共に使用して、上記で記載したように、不活性血小板よりも活性化血小板の凝集を引き起こし得ることを意味する。好ましくは、あらゆるそのような改変体または断片は、フィブリノゲンのガンマ鎖の残基398−411を含む。好ましい実施態様において、その改変体または断片は、HHLGGAKQADVを含み得るか、またはそれから成りさえし得る。
【0078】
よって、本発明はまた、フィブリノゲンまたはその改変体または断片が、フィブリノゲン(または改変体または断片)が不活性血小板よりも活性化血小板に結合するような配置で結合する不溶性のキャリアを含む、誘導性の血小板凝集活性を有する注入可能な薬学的生成物を提供する。
【0079】
典型的には、その生成物は、静脈内に投与された場合、血小板が既に活性化された創傷部位においてのみ血塊の形成に関わる。フィブリノゲン、またはその改変体または断片は、典型的には上記で定義したようなフィブリノゲン結合ペプチドを介してキャリアに間接的に結合している。
【0080】
代替の実施態様において、上記で定義したような生成物を、フィブリノゲン無しで投与し得る。この場合、その生成物は、生成物が投与された個体の内因性のフィブリノゲンに結合し得る。
【0081】
よって、本発明はまた、薬剤学的に有効な投与量の上記で定義したような生成物を投与することを含む、止血を促進する、すなわち個体がフィブリン塊を産生する能力を改善する方法を提供する。従ってその生成物を使用して、創傷部位から離れた、医学的に許容できないレベルのフィブリン塊の非特異的形成を避けながら、個体の創傷部位においてフィブリン塊を形成する能力を促進し得る。典型的には、その方法は、血小板減少症の患者を治療する方法である。
【0082】
血小板減少症は、増加した血小板の破壊を引き起こす状態から起こり得る。これらは、免疫性血小板減少性紫斑病、汎発性血管内凝固症候群、ヘパリン誘発血小板減少症、他の薬剤誘発血小板減少症、全身性エリテマトーデス、HIV−1関連血小板減少症、血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒症症候群、分類不能型免疫不全、輸血後紫斑病、および2B型フォンヴィルブランド病を含む。
【0083】
血小板減少症は、減少した血小板の産生を引き起こす状態から起こり得る。これらは、血小板減少−橈骨欠損症候群(TAR)、無巨核球性血小板減少症、巨大血小板症候群(ベルナール−スーリエ症候群、メイ−ヘグリン異常、Fechtner症候群、Sebastian症候群、Epstein症候群、Montreal血小板症候群のような)、およびヴィスコット−オールドリッチ症候群を含む。
【0084】
血小板減少症は、腐骨形成(例えば、脾機能亢進症またはNasabach−Merritt症候群)または増加した血小板の破壊および血液希釈(体外灌流のような)を引き起こす状態から起こり得る。
【0085】
本発明の方法をまた、上記の状態のいずれか1つを有する患者を治療するために使用し得る。
【0086】
しかし、その方法を用いて、血小板無力症(すなわち遺伝性または後天性)の患者も治療し得る。後天的な血小板機能の欠陥は、尿毒症、骨髄増殖性の異常(特発性血小板血症、真性赤血球増加症、慢性骨髄性白血病、および原因不明骨髄様化生のような)、急性白血病および骨髄異形成症候群、異常蛋白血症、体外灌流、後天性フォンヴィルブランド病、後天性貯蔵プール欠如症、抗血小板抗体、肝臓病、薬剤または他の薬剤から起こり得る。遺伝性の血小板機能の欠陥は、血小板接着状態(ベルナール−スーリエ症候群およびフォンヴィルブランド病のような)、アゴニスト受容体状態(インテグリンαβ(コラーゲン受容体)欠損症、P2Y12(ADP受容体)欠損症またはトロンボキサンA受容体欠損症のような)、シグナル伝達経路状態(Gαq欠損症、ホスホリパーゼC−β欠損症、シクロオキシゲナーゼ欠損症、トロンボキサンシンセターゼ欠損症、リポキシゲナーゼ欠損症、またはカルシウム動員における欠陥のような)、分泌状態(貯蔵プール病、ヘルマンスキー−パドラック症候群、チェディアック−東症候群、グレイ血小板症候群、Quebec症候群およびヴィスコット−オールドリッチ症候群のような)、凝集状態(グランツマン血小板無力症または先天性無フィブリノゲン血症のような)および血小板−血液凝固タンパク質相互作用状態(Scott症候群のような)から起こり得る。
【0087】
その方法は、冠動脈バイパス手術および/または血液透析における体外循環の間に起こるような、その血小板に持続する機械的損傷を有する患者を治療するために使用し得る。
【0088】
Michelson、2002、Platelets、第36章:The Clinical Approach to Disorders of Platelet Number and Function、Elsevier Science(USA)、541−545は、血小板の数および機能の様々な異常の総説を提供し、その内容は本明細書中において参考文献に組み込まれる。
【0089】
従って本発明は、医学において使用するための、上記で定義したような生成物を提供する。本発明はまた、止血を促進する薬剤の製造において、上記で定義したような生成物を提供する。
【0090】
例えば、本発明はまた、上記で記載した状態のような、血小板減少症の状態を有する患者を治療するために薬剤の製造において、上記で定義したような生成物を提供する。
【0091】
血小板減少症は、血球を計数することによって診断される。正常な血小板カウントは150−400×10/lである。この範囲より下は、基本的な止血が損なわれ、そして出血時間が延長する。しかし、自然発生的な生命を危うくする出血は、通常血小板カウントが10×10/lより下に減少した時にのみ起こる。
【0092】
よって、患者が400×10/lより少ない、好ましくは150×10/lより少ない、およびより好ましくは10×10/lより少ない血小板数を有する場合、上記で定義した方法または使用を適用し得る。
【0093】
血小板減少症の最もよくある原因は、血液癌、または細胞毒性化学療法または放射線療法後におけるような、骨髄からの血小板産生の不全である。
【0094】
よって、患者が血液癌、または細胞毒性化学療法または放射線療法によって引き起こされるような、骨髄からの血小板産生の不全を有する場合、上記で定義したような方法または使用を適用し得る。
【0095】
患者が、上記で記載したような、血小板機能における遺伝性または薬剤誘発性の異常を有する場合、上記で定義したような方法または使用を適用し得る。
【0096】
冠動脈バイパス手術または血液透析における体外灌流の間に起こるように、患者の血小板が機械的に損傷された場合、上記で定義したような方法または使用を適用し得る。
【0097】
上記で使用したような「治療」によって、我々は予防における上記の生成物の使用を含む。従って、例えば本発明の生成物を、細胞毒性化学療法または放射線療法、血小板機能における薬剤誘発性の異常、冠動脈バイパス手術または血液透析における体外灌流の前に、患者に投与し得る。
【0098】
本発明はさらに、以下の制限しない実施例において説明される。
【実施例】
【0099】
(実施例1:フィブリノゲン結合粒子(FLP)の産生および結合したフィブリノゲンの測定)
(1.0、3または6グリシン残基から成るスペーサーを有するペプチドGPRPを用いた、フィブリノゲン結合ミクロスフェアを産生する一般的な方法)
(i)洗浄したヒトアルブミンミクロスフェアの10mgアルブミン/mlの懸濁液を、pH7.4の等張緩衝液(例えばリン酸緩衝化生理食塩水)中で調製した。使用したアルブミンミクロスフェアは、静脈内で使用するのに適当な直径であり、そして従って6μmより小さかった。適当なアルブミンミクロスフェアは当該分野において公知である。例えば、WO03/015756は、pH7.4、2−3μmの直径を有するアルブミン微粒子を開示する。
(ii)30μlの10mM 5,5’−ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を、10mgのミクロスフェアに加え、そして室温で2時間混合した。ミクロスフェアを次いで、上清から分離し、そして3000×gで少なくとも5分間の遠心を用いて、緩衝液(我々はリン酸緩衝化生理食塩水を用いた)中で少なくとも2回洗浄した。
(iii)ペレットを1mlのリン酸緩衝化生理食塩水のような適当な緩衝液に再懸濁した。Merck Biosciencesから供給されたペプチド(GPRPC、GPRPGGGC、またはGPRPGGGGGGCのいずれか)をリン酸緩衝化生理食塩水に溶解し、そして0.23mMの最終濃度でミクロスフェアに加えた。これを室温で24時間混合した。調製物を0.23mMのL−システイン(システインコントロール)で処理することによって、適当なネガティブコントロールを与えた。3000×gで5分間遠心し、そしてリン酸緩衝化生理食塩水に再懸濁することによって洗浄した。洗浄工程を2回繰り返し、続いて1mlの容積に最終的に再懸濁した。
(iv)凍結乾燥フィブリノゲンのバイアル(例えばScottish National Blood Transfusion Serviceによって供給される材料)を再構築し、そして3mgのフィブリノゲンを、工程(iii)から得られた1mlのアルブミンミクロスフェアに加え、そして室温で1時間混合した。混合物を次いで3000×gで5分間遠心し、そして上清を除去した。ミクロスフェアを、以前に記載したようにリン酸緩衝化生理食塩水で3回洗浄した。最終的なペレットを、1mlのリン酸緩衝化生理食塩水に再懸濁した。
【0100】
(2.フィブリノゲン結合アッセイ)
ペプチド結合ミクロスフェアに対するフィブリノゲンの結合を示す方法を下記に記載し、ここでミクロスフェアに結合したフィブリノゲンを検出するために、抗ヒトフィブリノゲンFITC標識抗体を使用する。
(i)上記の方法1の工程(iv)から得た人工血小板の5μlの懸濁液を、1μlのヒトフィブリノゲンに対するFITC標識ウサギ抗体(DakoCytomation;F0111)を含む50μlのHEPES緩衝化生理食塩水に加えた。混合物を20℃で20分間インキュベートした。ブランクのミクロスフェア(DTNB処理またはペプチドなし)またはシステインコントロール試料を、これらのアッセイのネガティブコントロールとして使用した。
(ii)20分後、0.5mlの生理食塩水を加えることによって反応を止めた。さらに10分後、試料を生理食塩水で1/10に希釈し、そしてフローサイトメーター(例えばCoulter XL−MCL Flow Cytometer)において分析した。
(iii)データを、フィブリノゲンに関して陽性のミクロスフェアのパーセンテージおよび粒子の蛍光強度の中央値として記録した。後者は、ミクロスフェアに結合したフィブリノゲンの量の測定値であり、そして任意単位(対数目盛)である。
【0101】
上記の方法1によって産生された生成物を、方法2を用いて試験した。具体的には、試験した生成物は、結合ペプチドとして、「ペプチドGly=0」(すなわちGPRPC)、「ペプチドGly=3」(すなわちGPRPGGGC)または「ペプチドGly=6」(すなわちGPRPGGGGGGC)のいずれかを有していた。システインコントロール試料も含まれていた。結果を下記の表1で報告する。
【0102】
(表1:ペプチド結合ミクロスフェアに対するフィブリノゲンの結合)
【0103】
【表1】

その結果は、GPRP N末端配列を含むペプチドのフィブリノゲンに結合する能力は、ペプチドおよびミクロスフェア間にスペーサーを含むことによって修飾し得ることを示す。スペーサー無しでは、6%のミクロスフェアのみがフィブリノゲンを有するが、3または6グリシン残基からなるスペーサー有りでは、90%より多いミクロスフェアがフィブリノゲンに結合する。
【0104】
(実施例2:フィブリノゲン結合粒子のさらなる分析)
以下の生成物を産生した−
生成物1:工程(iv)で3mg/mlではなく0.1mg/mlのフィブリノゲンを用いた以外は、上記で議論したような実施例1の方法1の工程(i)から(iv)までを用いて、結合したフィブリノゲンを有するペプチドGPRPGGGGGGC(すなわちGly=6)を用いて、人工血小板を産生した。
【0105】
生成物2:上記で議論したような方法1の工程(i)から(iii)までを用いて、フィブリノゲンなしのペプチドGPRPGGGGGGC(すなわちGly=6)を用いて、人工血小板を産生した。
【0106】
参照バッチ:ミクロスフェアの参照バッチを、WO98/17319において記載された方法を用いて調製した。具体的には:
(i)1グラムのミクロスフェアを洗浄し、そして50mlの0.01M リン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0に懸濁した。
(ii)凍結乾燥フィブリノゲンのバイアル(例えばScottish National Blood Transfusion Serviceによって供給される材料)を再構築した。
(iii)フィブリノゲンを、0.01Mのリン酸ナトリウムの緩衝液、pH6.0を用いて10mg/mlに希釈した。
(iv)15mlの希釈フィブリノゲン溶液を、ミクロスフェアのグラムあたり加え、そして室温(例えば20℃)で4時間混合した。
(v)混合物を次いで2000×gで、20℃で15分間遠心し、ミクロスフェアをペレット化した。上清を除去し、そしてペレットを0.01Mのリン酸ナトリウムpH6.0で洗浄した。
(vi)次いで混合物を、上清のE280での吸光度によって決定されるタンパク質が少なくなるまで少なくとも2回、0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液中で遠心および再懸濁した。
(vii)ミクロスフェアを次いで最終的に洗浄し、そしてリン酸緩衝化生理食塩水pH7.4に10mg/mlで再懸濁した。
(viii)フィブリノゲンでコートしたミクロスフェアを次いで500μlのアリコートに満たし、そしてマイナス70℃で保存した。
【0107】
まとめると、生成物1は、ペプチドGPRPGGGGGGCを介して結合したフィブリノゲンを有し、そのペプチドはミクロスフェアに結合している、本発明のFLP(フィブリノゲン結合粒子)である。生成物2は、ペプチドGPRPGGGGGGCにフィブリノゲンが結合していない以外は、生成物1と同じである。参照生成物は、WO98/17319およびDaviesら、前出におけるような、以前の技術から公知の方式で、ミクロスフェアの表面に直接結合したフィブリノゲンを有する。
【0108】
これらの生成物を、上記の実施例1の方法2を用いてフィブリノゲンの結合に関して試験した。その結果を下記の表2で報告する。
【0109】
(表2:生成物1、生成物2、およびミクロスフェアの参照バッチに対するフィブリノゲンの結合)
【0110】
【表2】

これらの結果は、フィブリノゲンをコートしたミクロスフェアの相対的蛍光は、フィブリノゲンとインキュベートしなかったミクロスフェアのものより大きかったことを示す。生成物1は、表1で記載されたGly=6生成物より低い陽性パーセントおよびMFI値を示す。理論に拘束されることなく、我々は、その違いは生成物1の産生に使用したフィブリノゲン濃度が低かった結果であると考える。
【0111】
本発明の生成物の活性に対するフィブリノゲン濃度の影響を決定するために、上記で記載した方法によって、GPRPGGGGGGCを結合するためにDNTBを用いて、ミクロスフェアを調製した。
【0112】
実施例1の方法1の工程(iii)から得た1mlのミクロスフェアに、1mlのフィブリノゲンを1mg/ml、0.1mg/ml、または0.01mg/mlで加え、そして室温で1時間混合した。濃度ゼロのコントロールを含めた。
【0113】
ミクロスフェアの表面に共有結合したフィブリノゲンを有する、参照バッチコントロール(上記で議論した方式で調製した)も、分析に含めた。
【0114】
上記で議論したように、吸光パーセンテージおよび蛍光強度中央値を測定することによって、ミクロスフェアに対するフィブリノゲンの結合を比較した。結果を下記の表3に示す。
【0115】
(表3:様々なフィブリノゲン濃度中でインキュベートした本発明の生成物、またはミクロスフェアの参照バッチに対するフィブリノゲンの結合)
【0116】
【表3】

これらの結果は、ミクロスフェアと混合したフィブリノゲンの濃度に依存して、異なる量のフィブリノゲンが生成物に結合し得ることを示す。これは、抗フィブリノゲン抗体に結合するミクロスフェアのパーセンテージおよび各ミクロスフェアに結合したフィブリノゲンの量の測定値であるミクロスフェアの蛍光を考慮することに基づいている。見られるように、参照バッチの95%のミクロスフェアがフィブリノゲンに関して陽性であり、蛍光強度中央値(MFI)は22.4である。対照的に、人工血小板に対するフィブリノゲン結合のMFIは、12.5(1mg/mlでインキュベーションした場合)、4.6(0.1mg/ml)、および1.24(0.01mg/ml)である。
【0117】
Biocytexによって提供されるような、較正した標準蛍光ビーズを参照することによって、分子の絶対数を決定し得る(例えば、血小板糖タンパク質発現レベル、およびあらゆる他のヒト血小板表面分子を測定するための較正キット、生成物番号7011、Biocytex、140 Ch.Armeed’Afrique、13010 Marseille、France)。
【0118】
あるいは、キャリア中の構成要素に結合するのに適当な抗体(例えば、キャリアがヒトアルブミンを含む場合、抗ヒトHSA抗体を使用し得る)を固相捕捉抗体として、そしてフィブリノゲンを検出するためにHRP結合ウサギ抗ヒトフィブリノゲン抗体を用いた修飾ELISAアッセイを用いて、薬剤中のフィブリノゲン含有量を測定し得る。プレートに結合した可溶性フィブリノゲンを、標準として使用し得る。
【0119】
(実施例3:生成物の活性の評価)
本発明の薬剤上のペプチドに結合したフィブリノゲンが、依然としてトロンビンによって切断されてフィブリンを形成し得るかどうか決定するために、本発明の薬剤を、ヒトトロンビンで処理し得る。フィブリン−フィブリン架橋による、本発明の薬剤の架橋を、修飾凝集アッセイ、例えばLeviら、1999、Nature Medicine、51、107−111に基づくプロトコールにおいて試験し得る。我々が使用した方法を下記に報告する。
【0120】
(1.血小板を含まない血漿においてトロンビンに対する生成物の反応を評価する方法)
光透過血小板凝集計を用いてアッセイを行った(我々はPAP4血小板凝集計(BioData Corporation)を用いた)。トロンビンを、血漿(血小板無し)および生成物の混合物に加えた。トロンビンは血漿中およびミクロスフェア上でフィブリノゲンを切断し、隣接するミクロスフェア間でフィブリン架橋を形成するのを可能にする。ミクロスフェアの凝集は、光透過性の増加を引き起こし、それを血漿単独に相対的な「凝集」パーセンテージとして記録し得る。
(i)生成物、参照バッチ、またはコントロールのカウントを、100×10/mlに調整した。フローサイトメーター(例えばBeckman Coulter MCL−XL)またはCoulterZ2のような粒子計数器を用いてミクロスフェアを計数し得る。
(ii)血液を1500×gで30分間遠心し、そして上清を回収することによって、血小板を含まない血漿を調製した。
(iii)350μlの血小板を含まない血漿を、血小板凝集計のキュベットに入れ、そして50μlのブランクミクロスフェアを加えた。10、20または40μlのトロンビンを、PAP4血小板凝集計中の各アリコートに3.2u/mlで加え、0.08、0.04、または0.02u/mlトロンビンの最終濃度を達成した。光透過性の変化を、10分間にわたって測定した。最適下限の光透過性(すなわち、血漿との最低限の凝固)のみを与えるトロンビン濃度を選択した。典型的には、これは20μlであることが見出された。
(iv)50μlの各試験調製物または生成物、参照バッチまたはコントロールミクロスフェアを、350μlの血小板を含まない血漿に加えた。最適下限のトロンビン(上記で記載したように決定した)の存在および非存在下で、20分間にわたる光透過性の増加を測定した。結果を表4に報告する。
【0121】
(表4:血小板を含まない血漿における、生成物1、生成物2、およびミクロスフェアの参照バッチの凝集(4つの実験の平均±sd))
【0122】
【表4】

これらの結果は、生成物1は、その表面に結合したフィブリノゲンに対するトロンビンの作用によって凝集したことを示す。参照バッチは、トロンビンによってより効率が悪く凝集し、有効なフィブリン−フィブリン架橋を形成し得ない、フィブリノゲンのより有利でない配置を示した。
【0123】
生成物1は、トロンビンの添加後5分以内に凝集を示し、一方その表面にフィブリノゲンを有さないアルブミンミクロスフェア(生成物2)は、より低い凝集を示した(表4)。理論に拘束されることなく、アッセイ条件が、トロンビンの添加前に血漿からフィブリノゲンを結合するのに十分な時間を許さなかったと考えられるので、生成物2は生成物1と比較して抑制された凝集を示すと考えられる。
【0124】
我々は、上記で議論した同じ方法によって、上記の表3において報告された生成物(すなわち様々な濃度のフィブリノゲンとインキュベーションすることによって産生された)のトロンビンに対する反応も評価した。その結果を、下記の表5で報告する(n=4)。
【0125】
(表5:血小板を含まない血漿における、様々なフィブリノゲン濃度においてインキュベートした本発明の生成物およびミクロスフェアの参照バッチに対する凝集(4つの実験の平均±sd))
【0126】
【表5】

これらの結果は、参照バッチの最適下限のトロンビンに対する反応は、分析の前にフィブリノゲンが結合していなかったペプチドで見られるものと匹敵することを示す。ペプチドに結合したフィブリノゲンを有する生成物における反応は、0.1mg/mlのフィブリノゲンを用いて産生した試料において最も大きい(それは4.6のMFIを示す)。
【0127】
結合したフィブリノゲンに対するトロンビンの作用の程度に加えて、放出された物質を、American Diagnosticaによって供給される、市販で入手可能なELISA法を用いて、線維素ペプチドAに関して分析し得る。
【0128】
血小板代替物の組成物を、薬理学的活性に関して確認し得る。固定化されたフィブリノゲンは、血小板との相互作用に関して、可溶性フィブリノゲンと同じまたは同様の特徴を示すことを示し得る。生成物は活性化血小板と優先的に(すなわちアゴニスト、例えばADPまたはトロンビンの存在下でのみ)相互作用することを示す方法を下記で記載する。
【0129】
(2.特定のインビトロアッセイにおける本発明の薬剤の調製物候補の活性の評価)
本発明の薬剤と血小板および止血システムの相互作用の異なる局面、すなわち血小板凝集、血小板活性化、血小板依存性の血栓形成および流動条件下での接着、トロンビン産生およびフィブリン溶解を評価するために、多くのよく規定されたインビトロアッセイを使用し得る。
【0130】
正常なボランティアから局所的に得た、新しい血小板を使用する。21ゲージの翼状針による清潔な静脈穿刺によって、抗凝固剤(通常クエン酸3ナトリウム)または抗凝固剤クエン酸デキストロース(ACD)のいずれかの中に血液を採取し、そして試験の前にインビトロでの血小板の活性化を避けるために、できるだけ早く、好ましくは採取から15分、より好ましくは10分以内に使用する。低い血小板カウントの血液における本発明の薬剤の効果を研究するために、遠心によって血小板を枯渇させ、そして下記で記載するように、自己由来の血漿で血液を再構築する。
【0131】
正常な血液において血小板を人工的に枯渇させるために、血液を室温で、150×gで20分間遠心し得る。血小板が豊富な血漿を除去し、そして1800×gで30分間遠心した血液の別のチューブから調製した、自己由来の血漿で希釈する。次いで血小板の乏しい血漿を、血小板が豊富な血漿に戻し加え、そして注意深く混合する。この血小板枯渇血漿をまた、自己由来赤血球に戻し加えて、血小板枯渇全血を調製し得る。この方法によって、もとの血小板カウントの約65から95%の減少が達成される。ACDiff(Beckman−Coulter)のような血球計数器を用いて、全ての試料において血小板カウントを測定する。
【0132】
我々が使用した方法を下記に記載する。
【0133】
(3.研究室において「血小板減少血液」を調製する方法)
(3.1 血小板枯渇全血の調製)
(i)2つのチューブの血液を、21ゲージの翼状針による清潔な静脈穿刺によって、クエン酸3ナトリウム抗凝固剤中へ採取した。インビトロにおける血小板の活性化を最小限にするために、血液を採取から10分以内に処理した。
(ii)血液の1つのチューブを、20℃で、150×gで20分間遠心し、血小板が豊富な血漿(PRP)を調製した。
(iii)血液の2番目のチューブを、20℃で、1500×gで30分間遠心し、血小板が乏しい血漿(PPP)を調製した。
(iv)PRPを血球画分から除去し、そしてPPPで置換した。この手段によって、血小板カウントは、約75%減少し、約50×10血小板/mlのカウントを達成した。
(v)いくつかの血液チューブを使用することによって、より多くの容量の血小板枯渇血液を調製し得る。
【0134】
(3.2 血小板枯渇血漿の調製)
(i)2つのチューブの血液を、21ゲージの翼状針による清潔な静脈穿刺によって、クエン酸3ナトリウム抗凝固剤中へ採取した。インビトロにおける血小板の活性化を最小限にするために、血液を採取から10分以内に処理した。
(ii)血液の1つのチューブを、20℃で、150×gで20分間遠心し、血小板が豊富な血漿(PRP)を調製した。
(iii)血液の2番目のチューブを、20℃で、1500×gで30分間遠心し、血小板が乏しい血漿(PPP)を調製した。
(iv)PRPを血球画分から除去し、そしてPPPと混合して、10から50×10血小板/mlの間の血小板カウントを達成した。
(v)いくつかの血液チューブを使用することによって、より多くの容量の血小板枯渇血漿を調製し得る。
【0135】
両方の方法で、例えばJanesら、Thrombosis&Haemostasis、1993、70、659−666によって記載されたもののような、当該分野において公知の方法によって、血漿フィブリノゲンの活性化GPIIb−IIIaへの結合を測定することによって、血液または血漿中の残留血小板を試験して、調製中に血小板が活性化されなかったことを保証し得る。
【0136】
(4.血小板凝集に対する本発明の薬剤の評価)
この方法を用いて、本発明の薬剤が、アゴニストの存在下でのみ血小板凝集を増強することを示し得る。Beckman Coulter MCL−XLフローサイトメーター、およびACDiff細胞計数器、およびPAP4 Bio/Data Corporation血小板凝集計が、全血、血小板が豊富な血漿(PRP)、血小板枯渇全血または血小板枯渇血漿において、血小板の凝集を測定するために利用可能である。自発的な凝集(アゴニストの非存在下)またはADP(アデノシン二リン酸)、TRAP(トロンビン受容体活性化ペプチド)およびCPR(コラーゲン関連ペプチド)のようなアゴニスト存在下での凝集のいずれかを決定し得、そして例えば攪拌システムにおいて、試験ミクロスフェア有りまたは無しで得られた結果を比較し得る。
【0137】
例えば、本発明の薬剤を、血小板が豊富な血漿または血小板枯渇血漿のいずれかへ加え、そして攪拌しながら37℃でインキュベートし得る。PAP4のような凝集計において、光透過性の増加を測定することによって、割合および凝集%を測定し得る。
【0138】
アゴニストの存在下および非存在下における人工血小板と血小板の相互作用を研究する典型的な方法を、下記で記載する。
【0139】
(4.1 フローサイトメーターで計数することによって凝集を測定する方法)
残留単独血小板の数を計数し、そしてそれによって人工血小板に結合した血小板のパーセンテージを計算するためにフローサイトメトリーを使用し得る。試料を前方および側方散乱光によって分析し、そして電子ゲートを単独血小板の集団付近にセットする。これを行うために、EDTAを含む血小板が豊富な血漿の試料を使用して、血小板−血小板凝集の発生を防止する。血小板を、全ての血小板上のGPIb受容体に結合するCD42bモノクローナル抗体のような、蛍光が結合した抗体で標識する。この方法において、特に試料がCD42b抗体に結合しない人工血小板を含む場合には、血小板ゲートにおけるCD42b陽性発生の数は、血小板の数の正確な測定を与える。
【0140】
凝集が起こるにつれて、ゲート中の血小板の数は減少する。人工血小板は、非活性化(「休止」)血小板の凝集を誘導すべきでない。しかし、もし例えばADPによって血小板が活性化されるなら、それらは人工血小板と凝集するべきである。このアッセイにおいて、血小板欠乏性の血漿における人工血小板の効果を区別するために、ADPの最適下限の濃度を使用する。
(i)血小板ゲートをセットするために、EDTA中に採取された全血を使用した。5μlのEDTA抗凝固血液を、50μlのHepes緩衝化生理食塩水に加え、そしてフローサイトメーター(例えばBeckman Coulter MCL−XL)において前方および側方散乱光によって分析した。>98%の単独血小板が血小板ゲートに含まれるように、ゲートを血小板集団周辺にセットした。
(ii)10−60×10/mlの血小板カウントを有する400μlの血小板枯渇血漿を、20μlのコントロールミクロスフェア(実施例1、方法1(i)において開示されたブランクカプセル)と10mgアルブミン/mlで混合し、そしてADPを1から4×10−5Mの間の最終濃度で加えた。試料を血小板凝集計のキュベット中で10分間まで、37℃で900rpmで攪拌し、そして光透過性の変化として凝集を測定した(下記の4.2項で記載するように)。続く生成物と血小板枯渇血漿の相互作用の分析のために、>0%および<20%の凝集を与えたADP濃度を使用した。我々は、2×10−5MのADP濃度が適当であることを見出した。
(iii)生成物を試験するために、10−60×10/mlの血小板カウントを有する400μlの血小板枯渇血漿を、20μlの試験ミクロスフェアと10mgアルブミン/mlで、そしてADPと上記で記載したように決定した濃度で混合した。試料を900rpmで10分まで混合した。適当な時間で、5μlのアリコートを以下のようなフローサイトメトリー分析のために除去した。
(iv)分析のために、5μlの試験試料を、適当な濃度の全ての血小板上に存在する抗原に対する蛍光結合抗体を含む、50μlのHepes緩衝化生理食塩水に加えた。我々は、1μlのRPE結合CD42bモノクローナル抗体を使用した(我々はBD Pharmingenによって提供された抗体555473を使用した)。試料を室温(典型的には20℃)で20分間インキュベートし、次いで0.5mlのホルミル生理食塩水(0.9%のNaCl中0.2%のホルマリン)で希釈した。
(v)次いで希釈した試料を、フローサイトメーター(例えばBeckman Coulter MCL−XL)において、固定した容量の試料(例えば20μl)がサイトメーターを通過することを可能にする、コントロール試料における血小板集団周辺にセットしたゲートを用いて(4.1.iを参照のこと)、前方および側方散乱光によって分析した。血小板ゲート中に囲い込まれた粒子を蛍光に関して分析し、ゲート中の単独血小板の数を同定した。蛍光のネガティブコントロールを、同じ蛍光色素に結合した抗血小板抗体(例えばBD PharmingenからのRPE−マウスIgG1κ)のアイソタイプコントロールを用いて設定した。
(vi)血小板ゲートからの単独血小板(すなわち、CD42b陽性粒子)の損失パーセントとしてデータを記録した。結果を下記の表6に示す。
【0141】
(表6:血小板枯渇血漿における、生成物1、生成物2およびミクロスフェアの参照バッチの凝集(3つの実験の平均±sd))
【0142】
【表6】

これらの結果は、生成物1が、血小板枯渇血漿において、血小板単独で見られるものよりも、有意に大きい程度の活性化血小板の凝集を提供するが、ADPの非存在下において不活性血小板の凝集を提供しないことを示す。対照的に、本質的にWO98/17319において述べられたように調製された参照バッチは、休止(不活性)および活性化血小板両方で同様のおよび有意なレベルの凝集を引き起こした。
【0143】
ペプチド結合ミクロスフェアも、血漿中に存在するフィブリノゲンを利用して血小板を凝集し得ることを説明するために、同じ方法を使用し得る。この例において、ペプチド結合ミクロスフェアは、ADPの非存在下において17.8±3.5%の凝集しか引き起こさないが、血小板がADPで活性化された場合には57.3±9.3%の凝集を引き起こした。
【0144】
我々はまた、上記で議論した同じ方法によって、ADPの存在下および非存在下において、血小板欠乏血漿の凝集に対する、上記の表3で報告した生成物(すなわち、様々な濃度のフィブリノゲンとインキュベーションすることによって産生された)の効果を評価した。その結果を下記の表7において報告する(n=3)。
【0145】
(表7:血小板枯渇血漿(PDP)における、様々なフィブリノゲンの濃度でインキュベートした本発明の生成物およびミクロスフェアの参照バッチの凝集)
【0146】
【表7】

これらの結果は、最も高い結果、65.6%の凝集が、4.6のMFIを示す試料で得られたことを示す。対照的に、参照バッチは活性化血小板において50%の凝集しか誘導せず、この結果はADPの非存在下でも(すなわち不活性血小板においても)観察された。
【0147】
これらのデータから、我々は、ミクロスフェアに結合したフィブリノゲンの量およびミクロスフェアの活性の間に、単純な比例関係は存在しないかもしれないと結論づける。それに加えて、参照バッチ生成物は高いフィブリノゲン含有量を示すという事実にも関わらず、それは本発明の人工血小板と同じくらい活性ではない。
【0148】
本発明の薬剤を全血に加えると、例えばフローサイトメーターにおいて、残留血小板を計数することによって、割合または凝集%も測定し得る。
【0149】
(4.2 PAP−4血小板凝集計を用いた、光透過性によって凝集を測定する方法)
このシステムにおいて、生成物を9000rpmでの攪拌システムにおいて血小板枯渇血漿と混合し、そして光透過性の変化によって凝集を測定した。
(i)400μlの血小板枯渇血漿を、20μlのブランクミクロスフェアと10mgアルブミン/mlで混合した。
(ii)ADPを1から4×10−5Mの間の濃度で加えた。
(iii)凝集を20分間にわたって測定し、そして100%の凝集の値を設定するために自己由来の血漿を用いて、最大値のパーセンテージとして記録した。
【0150】
凝集測定法によって測定する、上記の方法を用いて、血小板枯渇血漿において生成物1、生成物2、およびミクロスフェアの参照バッチの凝集を試験した結果は、参照バッチがADPの非存在下で高い凝集を引き起こし、一方生成物1および2は、ADPの非存在下で低いレベルの凝集しか示さなかったことを示した。さらに、生成物1は、ADPを加えた場合に、有意に高いレベルの凝集を示した。
【0151】
典型的には、本発明の薬剤は、これらの方法によって試験した場合、上記で定義したような不活性血小板よりも、活性化血小板の凝集においてより大きな増加を示す。これは、生成物1に関して表6および7において説明される。
【0152】
(5.本発明の薬剤と血小板の相互作用のフローサイトメトリー分析)
血小板および本発明の薬剤間の相互作用の化学量論を調査するために、および本発明の薬剤が、外来性の刺激の非存在下で表面抗原(例えばPセレクチン)の変化によって示されるような、血小板活性化を引き起こすかどうかをアッセイするために、Coulter
Epics XL MCLフローサイトメーターを使用し得る。Pセレクチンは、血小板脱顆粒の、そして従って血小板活性化のマーカーである。
【0153】
本発明の薬剤を全血に加え、そしてADP、TRAP、およびCRPのような外来性のアゴニスト有りおよび無しで、コントロールされた方式で混合する。これら混合物のアリコートを、蛍光結合Mabを含むHEPES緩衝化生理食塩水で希釈し、そして抗体を結合させるためにインキュベートする。例えば、BD Biosciences、Oxford、UKから入手可能なヒトGPIbに対するR−フィコエリトリン(RPE)結合マウスモノクローナル抗体(Cy5RPE)、およびヒト血清アルブミンに対するFITC標識ポリクローナル抗体(Autogen Bioclear Ltd)を、それぞれ血小板および本発明の薬剤を同定するために、そしてアゴニストの刺激有りおよび無しで、血小板および本発明の薬剤間の相互作用を測定するために使用し得る。それに加えて、血小板活性化のマーカーに対するFITC結合Mabを使用して、遊離しているかまたは本発明の薬剤に結合しているかどちらかの血小板が活性化されているかどうか示し得る。GPIIb−IIIa複合体の活性化(血小板凝集の必要条件)を、血小板フィブリノゲン受容体で、またはその近くで、活性化血小板のGPIIb/IIIa複合体上のエピトープを認識するMab PAC−1を用いて測定し得る(Becton Dickenson Immunocytometry Systems)。あるいは、血小板Pセレクチンに特異的なMabを、血小板脱顆粒のマーカーとして使用し得る(Serotec)。
【0154】
関連する抗体とインキュベーションした後、蛍光をフローサイトメーターで測定する。典型的には、本発明の薬剤は、上記で記載したようなPAC−1 MabまたはPセレクチン結合によって測定されるような、比較的少ない血小板の活性化しか引き起こさない。1つの実施態様において、「比較的少ない」という用語は、本発明の薬剤は、上記で定義したような以前の技術の血小板代替物よりも少ない血小板活性を引き起こすことを意味する。
【0155】
(6.高いせん断速度流動の条件下における、本発明の薬剤と血小板の相互作用の研究)
様々なせん断速度を用いた流動条件下で、本発明の薬剤と血小板の相互作用を研究するために、Parallel Plate Perfusion Chamberを使用し得る。
【0156】
コントロールとして、正常血液試料を異なるせん断速度で内皮下のマトリックスまたはコラーゲン基質に灌流した場合に、表面の被覆を観察する(Leviら、1999、Nature Medicine、51、107−111)。次いで同じプロトコールで、しかし上記で記載したように調製した血小板枯渇試料を用いて、表面の被覆を観察する。表面の被覆は、正常血液試料と比較して、血小板枯渇試料において抑制される。本発明の薬剤は、好ましくは血小板枯渇試料に加えた場合に表面の被覆を増加させ得る。
【0157】
本発明の薬剤を、枯渇した血小板を化学量論的に置換するのに十分な数で、血小板枯渇試料に加えた場合(すなわち、上記で記載したように調製された血小板枯渇試料は、非枯渇試料の約25%の血小板カウントまで抑制されている:この試験の目的のために、本発明の薬剤を、残っている血小板プラス本発明の薬剤の全体の数を、非枯渇試料のもとの血小板カウントの実質的に100%まで戻すのに十分な数で加える)、もし本発明の薬剤が血小板欠乏試料における表面の被覆を、同じ流動条件下で正常血液で観察される表面の被覆レベルと実質的に同等(例えば50、60、70、80、90または100%)、またはより高いレベルにさえ増加させ得るなら特に好ましい。
【0158】
血小板または血小板および本発明の薬剤の組み合わせの沈着による表面の被覆の程度を、顕微鏡で決定し得る。
【0159】
(実施例4:インビボモデルにおけるFLPの評価)
(1.血小板減少ウサギモデルにおける、用量依存性の止血活性)
オスNew Zealand白色ウサギ2.5−3.0kg(約4ヶ月齢)を、信頼できる供給業者から得る。6匹のウサギのグループを、研究日のそれぞれ12日および9日前に、ブスルファンの2回投与を用いて血小板減少症にする。ブスルファンの投与量は、必要な血小板減少症の重症度によって変化する、例えば20mg/kgの2回投与は、一般的に血小板カウントを10−20×10/lに減少させ、一方25mg/kgの2回投与は、血小板カウントを10×10/lより少なく減少させる。血小板カウントの減少に加えて、ブスルファンの投与は白血球の枯渇に関連するが、ヘマトクリットをわずかに減少させるのみであり、そして明白な毒性を有さない。この手順に麻酔は必要でない。
【0160】
これらの研究に関して、ヒト血小板濃縮物をポジティブコントロールとして使用する。これは、動物のグループあたり1つの血小板濃縮物しか必要としない。ヒト血小板は、網内系による取り込みのために、ウサギにおいて約5分間しか循環しないことが以前に示された。従って、これらの実験において、実験日の24時間前にパルミチン酸エチルをウサギに投与することによって、マクロファージ機能を阻害する。一貫性のために、パルミチン酸エチルを全てのグループの動物に使用する。
【0161】
実験日に、試験薬剤を耳静脈に静脈内注入する。出血時間の測定によって効果を評価し、それを耳の標準的な(Simplate)切開を用いて行う。
【0162】
出血時間の可変性を、動物が静かでそして暖かく、そして一様な温度であることを保証することによって、可能な限りコントロールし(Roskam、1993、Comptes Rendus des Seances de la Societe de Biologie、114、166−169)、そして血液試料の数を最小限にする。BlajchmanおよびLee、1997、Transfusion Medical Reviews、11、99−105。試験投与の投与直前および投与の24時間後まで4回の時点において、出血時間を測定する。20分間を超える出血時間は、創傷を圧迫することによって止める。研究の完了時に動物を屠殺する。
【0163】
出血時間の減少によって定義される血小板代替物の用量依存性活性を、ヒト血小板の活性と比較する(投与量/kgに基づいて)。同じサイズであるが結合したペプチドを有さないHSAマイクロ粒子を、ネガティブコントロールとして使用する。24時間の研究時間にわたる効果の期間の比較も行う。
【0164】
血小板減少ウサギにおいて、約20分間の出血時間は典型的である。本発明の血小板代替物は、一般的に6匹のグループの試験ウサギのうち、最低3匹、そして好ましくは6匹全てにおいて、10分以下まで出血時間を抑制し得る。
【0165】
(2.ウサギWesslerモデルにおける本発明の薬剤の血栓形成性の評価)
候補FLP調製物の潜在的血栓形成性を、実質的にWesslerら、1959、Journal of Applied Physiology、14、943−946によって記載されたように、しかし血小板代替物に適当なコントロールを含めて、Wesslerモデルにおいて評価する。コントロールは、インビトロにおける方法から得たデータを考慮して規定する。
【0166】
オスNew Zealand Whiteウサギ、体重2.5−3.0kg(約4ヶ月)を、認可された供給業者から得て、そして6匹のウサギのグループを麻酔する。右および左頸静脈の部分を露出し、そして周囲の組織から剥離する。試験調製物を、耳静脈から投与し、3分間の循環時間の後、頸静脈の部分を結紮し、インサイツでさらに10分間置く。その部分を注意深く切除し、そして内腔を露出する。血管を、発達した血栓の存在に関して調査し、それを視覚的に記録する。
【0167】
本発明の血小板代替物は、出血時間の最適な減少と関連する投与量よりも5倍、好ましくは10倍高い濃度において、血栓を産生するべきでない。
【0168】
適当な投与量は、患者の体重1kgあたり1×10から2×10生成物粒子の間であり得る。例えば、投与量は(体重1kgあたりの生成物粒の数で表した場合)、約2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010、または2×1010であり得る。
【0169】
適当な投与量はまた、患者の体重1kgあたりの全タンパク質のミリグラムとして表し得る。これに基づいて、適当な投与量は、5−200mg/kgの間であり得る。例えば、投与量は約5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、150または200mg/kgであり得る。
【0170】
理想的な投与量は、少なくとも2倍、好ましくは約10倍の安全域を有する。言い換えると、理想的な投与量は、2倍または約10倍に増加した場合でさえ、有効であるが安全なままである。安全な投与量は、上記で記載したようなWessler試験を用いて血塊を形成しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【公開番号】特開2011−184465(P2011−184465A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−143587(P2011−143587)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【分割の表示】特願2006−530592(P2006−530592)の分割
【原出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(506117127)ヘモスタティクス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】