説明

止血用インプラント

【課題】水性生理学的流体の存在によって活性化される乾燥した材料と組み合わされる移植可能なデバイスを含む、インサイチュでの止血治療を提供すること。
【解決手段】多孔性基材へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および該多孔性基材へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを有する該多孔性基材を含むインプラント、ならびに、第一ヒドロゲル前駆体を多孔性基材へ塗布する工程;および、第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを該多孔性基材へ塗布する工程を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2008年10月17日に出願された、米国仮特許出願第61/196,543号に対する優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示はインプラントに関しており、より詳細には、多孔性基材へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体を有する多孔性基材を含む止血用インプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
インサイチュでの止血治療は、主として、患者の体内での前駆体溶液の固体への変換に集中してきた。変換は、沈降、ポリマー化、架橋、および脱溶媒和を含む様々な手段によって達成されてきた。しかし、インサイチュでの止血治療のために溶液を用いる場合、重大な制限が存在する。低粘度の溶液は流れ去り得、変換および凝固が起こる前に適用部位から取り除かれ得る。さらに、上記溶液の調合は、代表的には、前駆体溶液の調製が上記前駆体の再構成を必要とする場合、または、上記溶液が冷凍して保存され、解凍される場合、複雑であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、水性生理学的流体の存在によって活性化される乾燥した材料と組み合わされる移植可能なデバイスを含む、インサイチュでの止血治療を提供することが所望される。乾燥した材料と移植可能デバイスとの組み合わせは、インサイチュでの止血治療が移植する部位で起きることを確実にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
多孔性基材へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および該多孔性基材へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを有する該多孔性基材を含む、インプラント。
【0006】
(項目2)
前記多孔性基材が発泡体である、上記項目に記載のインプラント。
【0007】
(項目3)
前記多孔性基材が編成されたテキスタイルである、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0008】
(項目4)
前記多孔性基材が不織テキスタイルである、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0009】
(項目5)
前記多孔性基材が生体吸収性材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0010】
(項目6)
前記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0011】
(項目7)
前記多孔性基材が酸化セルロースから作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0012】
(項目8)
前記第一ヒドロゲル前駆体が粒子を構成する、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0013】
(項目9)
前記第一ヒドロゲル前駆体が発泡体である、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0014】
(項目10)
前記第一ヒドロゲル前駆体がフィルムである、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0015】
(項目11)
生物活性剤をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0016】
(項目12)
多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および該多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有し、該多孔性基材の第一部分が該多孔性基材の第二部分から空間的に分離されている、該多孔性基材を含むインプラント。
【0017】
(項目13)
前記多孔性基材が発泡体である、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0018】
(項目14)
前記多孔性基材が編成されたテキスタイルである、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0019】
(項目15)
前記多孔性基材が不織テキスタイルである、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0020】
(項目16)
前記多孔性基材が生体吸収性材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0021】
(項目17)
前記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0022】
(項目18)
前記多孔性基材が酸化セルロースから作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0023】
(項目19)
前記第一ヒドロゲル前駆体が粒子を構成する、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0024】
(項目20)
前記第一ヒドロゲル前駆体が発泡体である、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0025】
(項目21)
前記第一ヒドロゲル前駆体がフィルムである、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0026】
(項目22)
前記第二ヒドロゲル前駆体が粒子を構成する、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0027】
(項目23)
前記第二ヒドロゲル前駆体が発泡体である、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0028】
(項目24)
前記第二ヒドロゲル前駆体がフィルムである、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0029】
(項目25)
生物活性剤をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0030】
(項目26)
第一ヒドロゲル前駆体を多孔性基材へ塗布する工程;および
第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを該多孔性基材へ塗布する工程
を包含する方法。
【0031】
(項目27)
前記第一ヒドロゲル前駆体を前記多孔性基材へ塗布する工程が
該第一ヒドロゲル前駆体および溶媒を含む溶液中へ、該多孔性基材の少なくとも第一部分を少なくとも部分的に沈める工程;ならびに
該溶媒を蒸発させ、該多孔性基材の孔の内部に該第一ヒドロゲル前駆体を堆積させる工程
を包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0032】
(項目28)
前記第一ヒドロゲル前駆体を前記多孔性基材へ塗布する工程が
該第一ヒドロゲル前駆体および溶媒を含むフィルム形成組成物と、該多孔性基材を接触させる工程;ならびに
該溶媒を蒸発させ、該多孔性基材の少なくとも一部分上に該第一ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを堆積させる工程
を包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0033】
(項目29)
前記第一ヒドロゲル前駆体を前記多孔性基材へ塗布する工程が
第一組成物および第二組成物を同時に凍結乾燥し、
該第一組成物が該多孔性基材を形成し、ならびに該第一ヒドロゲル前駆体および溶媒を含む該第二組成物が、該第一ヒドロゲル前駆体を含む発泡体を形成する工程
を包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0034】
(項目30)
第一ヒドロゲル前駆体を多孔性基材の第一部分へ塗布する工程;
第二ヒドロゲル前駆体を該多孔性基材の第二部分へ塗布する工程
を包含する方法であって、該多孔性基材の第一部分は該多孔性基材の第二部分から空間的に分離されている方法。
【0035】
(項目31)
多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および該多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有する該多孔性基材を含むシステムであって、ここで、該第一部分が該第二部分より患者の組織に対して近くに配置されるように構成され、ここで、配置されたインプラントが該患者の組織と接触するように構成され、それにより、生理学的流体が該多孔性基材を通して毛管作用で運ばれ、続いて該第一ヒドロゲル前駆体、次いで該第二ヒドロゲル前駆体コーティングを溶解する、システム。
【0036】
(項目32)
前記第一ヒドロゲル前駆体が前記多孔性基材へフィルムとして塗布される、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
【0037】
(項目33)
前記多孔性基材の第一部分が該多孔性基材の第二部分から空間的に分離される、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
【0038】
(項目31A)
多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および該多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有する多孔性基材を配置する工程であって、該第一部分が該第二部分より患者の組織に対して近い状態である工程;および
配置されたインプラントを該患者の組織と接触させ、それにより、生理学的流体が該多孔性基材を通して毛管作用で運ばれ、続いて該第一ヒドロゲル前駆体、次いで該第二ヒドロゲル前駆体コーティングを溶解する工程
を包含する方法。
【0039】
(項目32A)
前記第一ヒドロゲル前駆体が前記多孔性基材へフィルムとして塗布される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0040】
(項目33A)
前記多孔性基材の第一部分が該多孔性基材の第二部分から空間的に分離される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0041】
(摘要)
本開示は、第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体を有する多孔性基材を含む止血用インプラントに関しており、第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体は、上記インプラントが移植する部位に配置され、患者の生理学的流体へさらされるまで、互いと反応しないような様式で上記多孔性基材へ塗布される。
【0042】
(要旨)
本インプラントは、多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体および上記多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有する多孔性基材を含む。実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体または上記第二ヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは、フィルムとして上記多孔性基材へ塗布される。実施形態において、上記基材に塗布される上記第一ヒドロゲル前駆体を有する上記基材の第一部分は、上記多孔性基材の第二部分から空間的に分離され、上記インプラントが移植される部位に置かれて患者の生理学的流体にさらされるまで、第一ヒドロゲル前駆体と第二ヒドロゲル前駆体とが互いに反応するのを防止する。上記インプラントの生理学的流体への曝露は、上記第一ヒドロゲル前駆体が上記多孔性基材の第一部分から上記多孔性基材の第二部分へ向かって移動し、第二ヒドロゲル前駆体との反応を引き起こす。実施形態において、本インプラントはコーティングされた多孔性基材の部分上で止血特性を示すだけでなく、抗癒着特性もさらに示す。
【0043】
出血部位において、インサイチュで止血物質を形成するための方法もまた記載される。本方法に従って、上記多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および上記多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有する多孔性基材を有するインプラントは、患者の生理学的流体と接触するように位置決めされる。上記インプラントは、第二部分よりも、第一部分を患者の組織のより近くにして配置される。そうして配置されたインプラントは次いで患者の組織と接触し、その結果、生理学的流体は上記多孔性基材を通って毛管作用で運ばれ、第一ヒドロゲル前駆体コーティング、次いで第二ヒドロゲル前駆体コーティングを連続的に溶解する。溶解されると、上記第一ヒドロゲル前駆体と第二ヒドロゲル前駆体とが反応し、生体適合性架橋物質を形成する。実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体は、上記基材の第一部分へフィルムとして塗布される。生理学的流体との接触の際、上記フィルムは溶解し、上記第一前駆体は上記多孔性基材中へ毛管作用で運ばれ、上記第二ヒドロゲル前駆体と接触し、生体適合性架橋物質を形成する。
【発明の効果】
【0044】
水性生理学的流体の存在によって活性化される乾燥した材料と組み合わされる移植可能なデバイスを含む、インサイチュでの止血治療が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
添付した図面は、本明細書中に組み込まれ、本明細書の一部分を構成し、上で与えられた本開示の一般的説明および以下で与えられる実施形態の詳細な説明と共に本開示の実施形態を例示し、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図1−1】図1A〜図1Bは、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、多孔性基材への第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体の塗布を概略的に示す。
【図1−2】図1C〜図1Dは、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、多孔性基材への第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体の塗布を概略的に示す。
【図2】図2は、図1A〜図1Cに示される実施形態の変形を概略的に示す。
【図3】図3は、図1A〜図1Cに示される実施形態の別の変化を概略的に示す。
【図4】図4A〜図4Cは、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、多孔性基材への第一ヒドロゲル前駆体の塗布を概略的に示す。
【図5】図5A〜図5Cは、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、多孔性基材へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体をすでに有する多孔性基材への、第二ヒドロゲル前駆体を含む粒子の塗布を概略的に示す。
【図6】図6A〜図6Cは、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、多孔性基材へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体をすでに有する多孔性基材への、第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムの塗布を、概略的に示す。
【図7】図7A〜図7Bは、第一ヒドロゲル前駆体を含む発泡体および発泡体多孔性基材の同時形成を概略的に示す。
【図8】図8A〜図8Cは、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、多孔性基材へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体をすでに有する多孔性基材への、第二ヒドロゲル前駆体を含む粒子の塗布を、概略的に示す。
【図9】図9A〜図9Cは、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、多孔性基材へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体をすでに有する多孔性基材への、第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムの塗布を、概略的に示す。
【図10】図10は、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、編成された繊維状多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体を含む粒子および上記基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを有する、編成された繊維状多孔性基材を概略的に示す。
【図11】図11は、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、編成された繊維状多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体を含むコーティングおよび上記基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を含む、フィルムを有する編成された繊維状多孔性基材を概略的に示す。
【図12】図12は、本開示中の実施形態のうちの少なくとも1つに記載される、不織繊維状多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体を含む粒子および上記基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを有する不織繊維状多孔性基材を、概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本開示に従う止血用インプラントは、多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体および上記多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有する多孔性基材を含む。使用中に上記インプラントは、上記第一ヒドロゲル前駆体が塗布された部分を組織に対してより近くにし、そして塗布された第二ヒドロゲル前駆体を有する部分を上記組織からより遠くにして配置される。実施形態において、上記第一部分および第二部分は、対照的な染料、表面模様付け、着色、または他の視覚的手がかりの付加によって互いに区別可能であり得る。組織、例えば、損傷した組織との接触のとき、上記インプラントは生理学的流体を吸収し、上記第一ヒドロゲルが上記流体によって溶解される。上記流体は上記インプラント中へ毛管作用で運ばれ、インプラントの反対側まで移動するので、インプラントを通って溶解された第一ヒドロゲル前駆体を一緒に運ぶ。ついには、上記流体は、上記インプラントを通って上記第二ヒドロゲル前駆体が塗布された第二部分へ到達するほど十分に移動し、それによって第二ヒドロゲル前駆体を溶解する。上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体は次いで反応し、生体適合性架橋物質を形成し、それによって止血を助ける。いくつかの実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体と第二ヒドロゲル前駆体との反応により産生される上記生体適合性架橋物質は、止血特性を提供するだけではなく、上記インプラントに抗癒着特性もまた提供する。
【0047】
上記インプラントの多孔性基材は、上記基材の表面の少なくとも一部分に開口部または孔を有する。上記孔は移植の前または後のいずれかに上記基材中に形成され得る。以下により詳細に記載されるように、上記多孔性基材を形成するのに適した物質としては、限定はされないが、繊維状構造物(例えば、編物構造物、織物構造物、不織構造物など)および/または発泡体(例えば、連続気泡発泡体または独立気泡発泡体)が挙げられる。実施形態において、上記孔は、上記多孔性基材の厚い部分全体にわたって、相互に連結するのに十分な数およびサイズであり得る。織物、編物、および連続気泡発泡体は、上記孔が上記多孔性基材の厚い部分全体にわたって相互に連結するのに十分な数およびサイズであり得る構造物の実例である。実施形態において、上記孔は、上記多孔性基材の厚い部分全体にわたって相互に連結しない。独立気泡連続体または溶融不織材料は、上記孔が上記多孔性基材の厚い部分全体にわたって相互に連結しなくともよい構造の実例である。上記発泡体多孔性基材の孔は、多孔性基材の厚い部分全体に広がり得る。さらに他の実施形態において、上記孔は上記多孔性基材の厚い部分全体にわたって伸張しないが、むしろ、上記基材の厚い部分の一部分に存在する。実施形態において、上記開口部または孔は上記多孔性基材の表面上の一部に位置し、上記多孔性基材の他の部分は非多孔性組織を有する。他の実施形態において、上記孔はインサイチュでの移植後に形成され得る。インサイチュでの孔形成は、任意の適切な方法を用いて実施され得る。いくつかの非限定的な例としては、接触リソグラフィー(contact lithography)、リビングラジカル光ポリマー(living radical photopolymer)(LRPP)システム、および塩浸出(salt leaching)の使用が挙げられる。本開示を読む当業者は、上記多孔性基材について他の孔分布パターンおよび配置を想定する。
【0048】
上記多孔性基材が繊維状である場合、繊維は、編成または製織に適したフィラメントまたはスレッドであり得、またはスフ(例えば、不織材料を調製するために頻繁に使用されるもの)であり得る。上記繊維は、任意の生体適合性材料から製作され得る。したがって、上記繊維は、天然材料または合成材料から形成され得る。上記繊維を形成する材料は、生体吸収性または非生体吸収性であり得る。無論、天然材料、合成材料、生体吸収性材料、および非生体吸収性材料の任意の組み合わせが上記繊維を形成するために使用され得ることは理解されるべきである。上記繊維を作製し得る材料のいくつかの非限定的な例としては、限定はされないが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート(oxalate)、ポリ(サッカリド)、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、バイオポリマー、ポリマー薬物(polymer drug)、およびコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、これらのブレンドおよび組み合わせが挙げられる。
【0049】
上記多孔性基材が繊維状である場合、多孔性基材は繊維状構造物を形成するのに適した任意の方法(限定はされないが、編成、製織、不織技術、湿式紡糸、静電紡糸(electro−spinning)、押出し成形、共有押出し成形などが挙げられる)を用いて形成され得る。繊維状構造物を作製するのに適した技術は、当業者の理解し得る範囲内である。実施形態において、上記テキスタイルは、米国特許第7,021,086号および同第6,443,964号に記載されるテキスタイルのような三次元構造を有する(これらの特許文献の開示内容は、本明細書中でここの参考としてその全体が援用される)。
【0050】
実施形態において、上記多孔性基材は酸化セルロースの繊維から作製される。そのような材料は公知であり、商標名SURGICEL(登録商標)の下で市販される酸化セルロース止血用材料が挙げられる。酸化セルロース止血用材料を調製するための方法は、当業者に公知であり、例えば、米国特許第3,364,200号、同4,626,253号、同5,484,913号、同6,500,777号に開示される(これらの特許文献の開示内容は、本明細書中でここの参考としてその全体が援用される)。
【0051】
上記多孔性基材が発泡体である場合、多孔性基材は、発泡体またはスポンジを形成するのに適した任意の方法(限定はされないが、組成物の凍結乾燥またはフリーズドライ(freeze−drying)が挙げられる)を用いて形成され得る。上記発泡体は、架橋されていてもされていなくともよく、共有結合またはイオン結合を含み得る。発泡体を作製するのに適した技術は、当業者の理解し得る範囲内である。
【0052】
上記多孔性基材は少なくとも0.1cmの厚さであり得、実施形態においては約0.2cm〜約1.5cmの厚さであり得る。上記多孔性基材中の孔のサイズは約2μm〜約300μmであり得、実施形態においては約50μm〜約150μmであり得る。上記基材の孔は、基材中で任意の様式で配置され得ることが想定される。例えば、上記孔は、ランダムまたは一定の様式で構成され得る。いくつかの実施形態において、上記孔は、ハニカム形の多孔性基材を作成するためにアルギン酸銅を用いて形成され得る。さらに他の実施形態において、上記孔は、上記多孔性基材中に勾配を作成するように構成され得る。上記勾配は、上記生理学的流体を吸収し、生理学的流体の移動が上記第一ヒドロゲル前駆体を上記第二ヒドロゲル前駆体の方へ運ぶように導く多孔性基材の能力をさらに高め得る。
【0053】
実施形態において、上記インプラントは非変性コラーゲン、または、加熱もしくは任意の他の方法を通してそのらせん構造を少なくとも部分的に失い、主に非加水分解性α鎖からなり、分子量は100kDaに近いコラーゲンから作製される。用語「非変性コラーゲン」は、そのらせん構造を失っていないコラーゲンを意味する。本インプラントのインプラントのために使用されるコラーゲンは、特に、ペプシン消化を通して、および/もしくは、前に規定された通りの適度な加熱後に得られるような天然コラーゲンまたはアテロコラーゲンであり得る。上記コラーゲンは、酸化、メチル化、エチル化、スクシニル化、または任意の他の公知のプロセスにより前もって化学的に改質され得る。上記コラーゲンはまた、任意の適した架橋剤(例えば、ゲニピン(genipin)、イソシアネート、およびアルデヒド)を用いて架橋され得る。コラーゲンの由来および種類は、上記の非インプラントに対して示された通りであり得る。
【0054】
実施形態において、上記インプラントは、2g/l〜50g/lの濃度で最初の温度が4℃〜25℃のコラーゲンの酸性水溶液をフリーズドライすることにより得られ得る。上記溶液中のコラーゲンの濃度は約1g/l〜約30g/lであり得、実施形態においては約10g/lであり得る。この溶液は都合よく、約6〜8のpHへ中和される。
【0055】
上記インプラントはまた、コラーゲンまたは加熱されたコラーゲンの溶液から調製される流動性発泡体をフリーズドライすることにより得られ得、可変するそれぞれの量(空気の体積:水の体積は約1〜約10に変わる)の中で、ある量の空気の存在下、乳化され得る。
【0056】
上記多孔性基材は、多孔性基材へ塗布された第一ヒドロゲル前駆体および多孔性基材へ塗布された第二ヒドロゲル前駆体を有する。用語「第一ヒドロゲル前駆体」および「第二ヒドロゲル前駆体」はそれぞれ、ポリマー、機能性ポリマー、巨大分子、小分子、または架橋分子(例えば、ヒドロゲル)の網目構造を形成する反応に貢献し得る架橋剤を意味する。
【0057】
実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体または第二ヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは、約1000Da以下の小分子であり、「架橋剤」と呼ばれる。上記架橋剤は、好ましくは、水溶液中に少なくとも1g/100mLの溶解性を有する。架橋分子は、イオン結合もしくは共有結合、物理的な力、または他の引力によって架橋され得る。
【0058】
実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体または第二ヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは巨大分子であり、「機能性ポリマー」と呼ばれる。上記巨大分子は、架橋剤と組み合わせて反応する場合、好ましくは、上記小分子である架橋剤より少なくとも5〜50大きい分子量であり、約60,000Da未満であり得る。実施形態において、上記架橋剤より7〜30倍大きい分子量である巨大分子が使用され、実施形態においては、重量で約10〜20倍異なる巨大分子が使用される。さらに、5,000〜50,000の巨大分子の分子量が有用である。用語ポリマーは、本明細書中で使用される場合、少なくとも3回繰り返される基から形成される分子を意味する。
【0059】
上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体のそれぞれは、多官能性であり、それぞれが2つ以上の求電子性官能基または求核性官能基を含み、その結果、例えば、上記第一ヒドロゲル前駆体上の求核性官能基が上記第二ヒドロゲル前駆体上の求電子性官能基と反応し得、共有結合を形成し得ることを意味する。上記第一ヒドロゲル前駆体または第二ヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは、2つより多く官能基を含み、その結果、求電子−求核反応の結果として、上記前駆体は結合して架橋ポリマー生成物を形成する。そのような反応は「架橋反応」と呼ばれる。
【0060】
実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体のそれぞれは、求核性前駆体および求電子性前駆体の両方が架橋反応に使用される限りは、官能基の1つのカテゴリーのみ、求核基のみかまたは求電子性官能基のみのいずれかを含む。したがって、例えば、上記第一ヒドロゲル前駆体が求核性官能基(例えば、アミン)を有する場合、上記第二ヒドロゲル前駆体は求電子官能基(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド)を有し得る。他方で、第一ヒドロゲル前駆体が求電子性官能基(例えば、スルホコハク酸イミド)を有する場合、そのとき、上記第二ヒドロゲル前駆体は求核性官能基(例えば、アミンまたはチオール)を有し得る。したがって、機能性ポリマー(例えば、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、スチレンスルホン酸、またはアミン末端二官能性もしくはアミン末端多官能性ポリ(エチレングリコール)(「PEG」))が使用され得る。
【0061】
上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体は、生物学的に不活性かつ水溶性のコアを有し得る。上記コアが水溶性のポリマー領域である場合、使用され得る好ましいポリマーとしては、ポリエーテル、例えば、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、co−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーまたはco−ポリエチレンオキシドランダムコポリマー)、ならびにポリビニルアルコール(「PVA」);ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);ポリ(サッカリド)(例えば、デキストラン、キトサン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒアルロン酸);および、タンパク質(例えば、アルブミン、コラーゲン、カゼイン、およびゼラチン)が挙げられる。上記ポリエーテル、より詳細には、ポリ(オキシアルキレン)またはポリ(エチレングリコール)またはポリエチレングリコールは特に有用である。上記コアが事実上小さな分子である場合、様々な親水性官能基のいずれも、上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体を水溶性にするために使用され得る。例えば、水溶性であるヒドロキシル基、アミン基、スルホネート基、およびカルボキシレート基のような官能基は、上記前駆体を水溶性にするために使用され得る。加えて、スベリン酸のN−ヒドロキシコハク酸イミド(「NHS」)エステルは水不溶性であるが、コハク酸イミドの環にスルホネート基を付加することにより、アミン基への反応性に影響を与えることなくスベリン酸のNHSエステルは水溶性になり得る。
【0062】
第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体の反応の結果生じる生体適合性架橋ポリマーは、生物分解性または吸収性であることが所望される場合、第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体のうちの1つ以上が上記官能基間に存在する生物分解性結合を有し得る。上記生物分解性結合はまた、必要に応じて、上記前駆体のうちの1つ以上の水溶性コアとして役立ち得る。あるいは、または加えて、上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体の官能基は、上記前駆体間の反応の生成物が生物分解性結合をもたらすように選択され得る。各アプローチについて、生物分解性結合は、生じる生物分解性の生体適合性架橋ポリマーが所望される時間の中で分解する、溶解する、または吸収されるように選択され得る。好ましくは、生理学的条件下で非毒性生成物へ分解する生物分解性結合が選択される。
【0063】
上記生物分解性結合はキレートであるか、または化学的もしくは酵素的に加水分解可能または吸収可能であり得る。例示的な、化学的に加水分解可能な生物分解性結合としては、グリコリド、dl−ラクチド、l−ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、およびトリメチレンカーボネートのポリマー、グリコリド、dl−ラクチド、l−ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ならびにグリコリド、dl−ラクチド、l−ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、およびトリメチレンカーボネートのオリゴマーが挙げられる。例示的な、酵素的に加水分解可能な生物分解性結合としては、メタロプロテアーゼおよびコラーゲナーゼによって開裂されるペプチド結合が挙げられる。追加の例示的な生物分解性結合としては、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(サッカリド)、およびポリ(ホスホネート)のポリマー、ならびにポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(サッカリド)、およびポリ(ホスホネート)のコポリマーが挙げられる。
【0064】
実施形態において、上記生物分解性結合はエステル結合を含み得る。いくつかの非限定的な例としては、コハク酸、グルタル酸、プロピオン酸、アジピン酸、またはアミノ酸のエステル、およびカルボキシメチルエステルが挙げられる。
【0065】
実施形態において、多官能性の求核性ポリマー(例えば、トリリジン)は第一ヒドロゲル前駆体として使用され得、多官能性の求電子性ポリマー(例えば、多数のNHS基で官能化されたマルチアーム(multi−arm)PEG)は第二ヒドロゲル前駆体として使用され得る。上記多数のNHS基で官能化されたマルチアームPEGは、例えば、4本、6本、または8本のアームを有し得、約5,000〜約25,000の分子量を有し得る。適した第一前駆体および第二前駆体の多くの他の例は、米国特許第6,152,943号、同第6,165,201号、同第6,179,862号、同第6,514,534号、同第6,566,406号、同第6,605,294号、同第6,673,093号、同第6,703,047号、同第6,818,018号、同第7,009,034号、および同第7,347,850号に記載される(これらの特許文献それぞれの内容全体が本明細書中で参考として援用される)。
【0066】
上記第一ヒドロゲル前駆体は上記多孔性基材の第一部分へ塗布され、第二ヒドロゲル前駆体は上記多孔性基材の第二部分へ塗布される。例えば、上記前駆体は乾燥形態(例えば、粒状物質)、または固体状態もしくは半固体状態(例えば、フィルムまたは発泡体)で塗布され得る。実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体または第二ヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも1つは、上記多孔性基材へフィルムとして塗布される。実施形態において、上記基材の第一部分へ塗布された上記第一ヒドロゲル前駆体を有する基材の第一部分は、上記基材の第二部分へ塗布された上記第二ヒドロゲル前駆体を有する多孔性基材の第二部分から空間的に分離される。互いに空間的に分離された上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体を有することは、上記インプラントが移植部位に配置されて、患者の生理学的流体へさらされるまで、前駆体が互いと反応するのを防止する。
【0067】
上記第一ヒドロゲル前駆体は、当業者に公知の任意の適した方法(限定はされないが、噴霧、はけ塗り、浸漬、注入(pouring)、積層(laminating)などが挙げられる)を用いて上記多孔性基材へ塗布され得る。実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体は、上記多孔性基材を形成する前に多孔性基材へ組み込まれ得る。他の実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体は、上記基材の形成後、上記多孔性基材の孔の中または多孔性基材の表面上に位置決めされ得る。さらに他の実施形態において、上記多孔性基材は上記第一ヒドロゲル前駆体の塗布前にカレンダーにかけられ得、それによって、カレンダーがけプロセスにより生成された上記基材上の開口部の中へ、第一前駆体が浸透することを可能にし得る。さらに他の実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体は溶液中で上記多孔性基材へ塗布され得、続いて、溶媒の蒸発または凍結乾燥が実施される。実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体は、上記基材の少なくとも1つの面上にコーティングとして、または上記基材の少なくとも1つの面上へ積層されるフィルムとして上記多孔性基材へ塗布され得る。
【0068】
上記第二ヒドロゲル前駆体は同様に、当業者に公知の任意の適した方法(限定はされないが、噴霧、はけ塗り、浸漬、注入、積層など)を用いて上記多孔性基材へ塗布され得る。実施形態において、上記第二ヒドロゲル前駆体は、止血用インプラントを形成することが可能な任意の濃度、範囲、および構成で上記基材上にコーティングとして塗布され得る。実施形態において、上記第二ヒドロゲル前駆体コーティングは上記多孔性基材の孔に浸透し得る。上記コーティングは非多孔質層または多孔質層を形成し得る。実施形態において、上記第二ヒドロゲル前駆体は、上記基材の少なくとも1つの面上に積層されるフィルムとして上記多孔性基材へ塗布され得る。
【0069】
上記第一ヒドロゲル前駆体か、または上記第二ヒドロゲル前駆体のいずれかが非多孔質層、すなわち、フィルムを形成する実施形態において、フィルムの厚さは、上記インプラントが創傷を密封する前に、上記ヒドロゲル前駆体の部分のみが他のヒドロゲル前駆体と反応することを可能にするのに十分であり得る。そのような実施形態において、残った未反応のヒドロゲルフィルムは、創傷と周囲の組織との間のバリア層として作用し得、癒着の形成を防止し得る。上記ヒドロゲルインプラントを形成するとき、上記前駆体はまた、上記生理学的流体上で特定の特性(例えば、抗癒着性)を与え得る。上記生理学的流動性ヒドロゲルはまた、創傷と周囲の組織との間のバリア層として作用し得、癒着の形成を防止し得る。実施形態において、上記多孔性基材は、癒着を減少させるまたは防止することが知られる非反応性材料(例えば、ヒアルロン酸など)をさらに含み得る。そのような実施形態において、上記非反応性材料は、上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体が相互作用した後の、癒着の形成を防止し得る。
【0070】
止血性を提供することに加えて、上記インプラントは、生物活性剤の送達のためにさらに使用され得る。したがって、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物活性剤が上記第一ヒドロゲル前駆体か、または上記第二ヒドロゲル前駆体のいずれかと組み合わされ得、そして/または、上記多孔性基材へ別々に塗布され得る。上記薬剤は、上記前駆体と自由に混合され得るか、または任意の様々な化学結合を通して上記前駆体へ結び付けられ得る。これらの実施形態において、本インプラントはまた、上記生物活性剤の送達のためのビヒクルとしても役立ち得る。用語「生物活性剤」は、本明細書中で使用される場合、その最も広範な意味で使用され、臨床用途を有する任意の物質または、物質の混合物を含む。その結果、生物活性剤はそれ自体が薬理学的活性を有していてもいなくともよい(例えば、染料または芳香剤)。あるいは、生物活性剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の薬剤、組織の成長、細胞の成長、細胞の分化に影響を与えるもしくは関与する化合物、抗癒着性化合物、生物学的作用(例えば、免疫応答)を生じさせることが可能であり得る化合物であり得、または1つ以上の生物学的プロセスにおいて任意の他の役割を果たし得る。上記生物活性剤は、物質の任意の適した形態(例えば、フィルム、粉末、液体、ゲルなど)で本インプラントへ塗布され得ることが想定される。
【0071】
本開示に従って利用され得る生物活性剤の分類の例としては、抗癒着剤、抗菌剤、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬、診断薬、交感神経興奮剤、コリン様作用剤、抗ムスカリン剤、抗痙攣薬、ホルモン剤、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制剤、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬、凝固因子、および酵素が挙げられる。また、生物活性剤の組み合わせが用いられ得ることも意図される。
【0072】
抗癒着剤は、移植可能な医療用デバイスと標的組織の反対にある周囲組織との間に癒着が形成するのを防止するために使用され得る。加えて、抗癒着剤はコーティングされた移植可能な医療用デバイスとパッケージ材料との間に癒着が形成するのを防止するために使用され得る。これらの薬剤のいくつかの例としては、限定はされないが、親水性ポリマー、例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
本開示の生物活性コーティング中に生物活性剤として含まれ得る適した抗菌剤としては、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしても知られる)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジングルコネート、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンを含む)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、プロテイン銀、およびスルファジアジン銀を含む)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、エノキサシン、およびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノノキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。加えて、抗菌性タンパク質および抗菌性ペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシンB(lactoferricin B))が、本開示の生物活性コーティング中に生物活性剤として含まれ得る。
【0074】
本開示に従って塗布されるコーティング組成物中に生物活性剤として含まれ得る他の生物活性剤としては:局所麻酔薬;非ステロイド系避妊剤;副交感神経作用剤;精神治療剤;精神安定薬;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経興奮剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗偏頭痛剤;抗パーキンソン病剤(例えば、L−ドパ);抗痙攣薬;抗コリン作用薬(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬(例えば、冠血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、およびモルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリシレート、アスピリン、アセトアミノフェン、およびd−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗ガン剤;鎮痙剤;制吐剤;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、プレドニソン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬物;化学療法薬、エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウィルス剤;抗凝固剤;鎮痙剤;抗うつ剤;抗ヒスタミン薬;ならびに、免疫学的薬剤が挙げられる。
【0075】
コーティング組成物中に含まれ得る適した生物活性剤の他の例としては、ウィルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、これらのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント、例えば、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFN、およびγ−IFN)、エリトロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原、およびウィルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば、神経成長因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質、TGF−B、タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニストおよびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド、ならびにリボザイムが挙げられる。
【0076】
ここで図1A〜1Dを参照すると、第一ヒドロゲル前駆体が多孔性基材の孔の内部に塗布され、第二ヒドロゲル前駆体が上記多孔性基材の第二部分へ塗布されるシークエンスが示される。図1Aにおいて、多孔性基材20は、多数の孔25(図1Aにおいて規定される)を有する発泡体である。溶液35は、溶媒中に溶解された第一ヒドロゲル前駆体を含み、容器19中に供給される。多孔性基材20は溶液35へ浸され、溶液35中に完全に沈められる。取り除く際、上記インプラントは乾燥され、溶液35からの溶媒を除去され、図1Bに示されるように、基材20の孔25の内部に第一ヒドロゲル前駆体30を含む粒子を堆積する。
【0077】
図1Cにおいて、上記第一ヒドロゲル前駆体を含む多孔性基材20は、上記第二ヒドロゲル前駆体の溶融物45と接触する。冷却の際、上記第二ヒドロゲル前駆体の溶融物45は凝固し、基材20の少なくとも一部分上にフィルム40を形成する。上記第二前駆体のフィルム40の塗布後、上記インプラントは任意の所望されるサイズおよび形状に仕上げられ得る。図1Dのインプラント10は、上記多孔性基材20の第一部分22へ塗布された粒子30の形態の第一ヒドロゲル前駆体、および上記多孔性基材20の第二部分24へ塗布されたフィルム40の形態の第二ヒドロゲル前駆体を有することが示される。
【0078】
図2のインプラント110は、上記多孔性基材120が、粒子130の形態の第一ヒドロゲル前駆体、およびメッシュ状材料へ塗布されたフィルム140の形態の第二ヒドロゲル前駆体を有するメッシュ状材料であることを除いて、図1A〜1Dのシークエンスに示すものとある程度同様に調製される。不織材料(示されない)は、図1A〜1Dに示される発泡体または図2に示されるメッシュの代わりに多孔性基材として使用され得ることが想定される。
【0079】
図3のインプラント210は、上記多孔性基材220が、コーティング230の形態の第一ヒドロゲル前駆体、およびメッシュ状材料へ塗布されたフィルム240の形態の第二ヒドロゲル前駆体を有するメッシュ状材料であることを除いて、図1A〜1Dのシークエンスに示すものとある程度同様に調製される。上記第一ヒドロゲル前駆体のコーティング230は、上記第一ヒドロゲル前駆体の溶液へまたは上記第一ヒドロゲル前駆体の溶融物へ多孔性基材220を浸すことにより形成され得る。あるいは、上記第一ヒドロゲル前駆体は、上記基材への塗布前にフィルム形成ポリマーと組み合わされ得、コーティング230を提供し得る。この開示を読む当業者は、上記第一ヒドロゲル前駆体を含むコーティングを上記基材へ塗布するための他の方法および材料を想定する。
【0080】
ここで図4A〜4Cを参照すると、第一ヒドロゲル前駆体が多孔性基材の第一部分へ塗布されるシークエンスが示される。図4Aにおいて、多孔性基材320は、多数の孔325(図4Aにおいて規定される)を有する発泡体材料であり、少なくとも第一部分322および第二部分324を含む。溶液335は溶媒中に溶解された第一ヒドロゲル前駆体を含み、容器319中に供給される。多孔性基材320は、溶液335上で第一部分322が溶液335に面し、第二部分324が溶液335から背けられた状態で位置決めされる。
【0081】
図4Bにおいて、多孔性基材320の第一部分322は、図4A中の矢印により表される通りの、溶液335の方向に多孔性基材320を移動させることにより、溶液335中に部分的に沈められる。多孔性基材320の第一部分322のみが溶液335と接触し、その結果、十分な量の溶液335が、多孔性基材320の第一部分322の孔325へ塗布され得、孔325を満たし得る。取り除く際、上記インプラントは乾燥され、溶液335からの溶媒を除去され、図4Cに示されるように、第一部分322に上記第一ヒドロゲル前駆体330を含む粒子を堆積する。粒子330は、乾燥形態で上記第一ヒドロゲル前駆体を含み、第一部分322へ空間的に限定される。
【0082】
図5A〜5Cにおいて、溶媒中に溶解された第二ヒドロゲル前駆体を含む溶液345が多孔性基材320の第二部分324へ塗布されるシークエンスが示され、ここで、第一ヒドロゲル前駆体を含む粒子330は、基材320の第一部分322へ前もって組み込まれている(図4A〜4C参照)。多孔性基材320は、溶液345上で第二部分324が溶液345に面し、第一部分322が溶液345から背けられた状態で位置決めされる。
【0083】
図5Bに示されるように、多孔性基材320の第二部分324は、図5A中の矢印により表される通りの、溶液345の方向に多孔性基材320を移動させることにより、溶液345中に部分的に沈められる。多孔性基材320の第二部分324のみが溶液345と接触し、その結果、十分な量の溶液345が、第二部分324へ塗布され得る。取り除く際、上記インプラントは乾燥され、第二部分324に第二ヒドロゲル前駆体を含む第二粒子340を堆積する。粒子340は、乾燥形態で上記第二ヒドロゲル前駆体を含み、第二部分324へ空間的に限定される。図5Cの多孔性基材320は、上記基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および上記多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有しており、上記基材の第一部分は上記多孔性基材の第二部分から空間的に分離されていることが示される。
【0084】
代替の実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体は、異なる形態で上記インプラントへ塗布され得る。例えば、図6A〜6Cにおいて、多孔性基材は、第一部分422へ塗布された上記第一ヒドロゲル前駆体を含む粒子430を含み、支持体429へ塗布されていた上記第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルム形成溶液445に第二部分424が面していることが示される。
【0085】
図6Bにおいて、多孔性基材420の第二部分424は、図6A中の矢印により示される方向に多孔性基材420を移動させることにより、フィルム形成溶液445と接触し、そして/またはフィルム形成溶液445中に部分的に沈められる。多孔性基材420の第二部分424のみが、フィルム形成溶液445と接触し、その結果、十分な量の材料445が第二部分424へ塗布され得る。フィルム形成溶液445は、(加熱しながらか、または加熱せずに)凝固し、第二部分424の少なくとも一部分上にフィルムを形成することが可能である。図6Cの多孔性基材420は、上記基材の第一部分へ塗布される粒子の形態の第一ヒドロゲル前駆体、および上記多孔性基材の第二部分へ塗布されるフィルムの形態の第二ヒドロゲル前駆体を有し、上記基材の第一部分は上記多孔性基材の第二部分から空間的に分離されていることが示される。
【0086】
ここで図7A〜7Bを参照すると、上記多孔性基材および第一ヒドロゲル前駆体を含む多孔質層は一緒に形成されることが示される。図7Aにおいて、容器519は上記多孔性基材を形成することが予定されている第一溶液525、および上記第一ヒドロゲル前駆体を含む第二溶液535を含み、ここで、上記2つの溶液は実質的に別々の層としての状態である。上記2つの溶液は、当業者に公知の任意の方法を用いて凍結乾燥され、図7Bに示されるような多孔性基材を形成する。この多孔性基材は、凍結乾燥された第一溶液525から作製される第一多孔性基材520を含み、この第一多孔性基材520は、凍結乾燥された第二溶液535から作製される第二多孔質層530へ連結される。第二多孔質層530は上記第一ヒドロゲル前駆体を含み、第一部分522を介して第一多孔性基材520へ結合され、多孔性材料の2つの層を有するインプラントを形成する。
【0087】
図8A〜8Cにおいて、第二ヒドロゲル前駆体を含む溶液545が、第一部分522で第二部分524へ結合する上記第一ヒドロゲル前駆体を含む多孔性基材530をすでに有する多孔性基材520の第二部分524へ塗布されるシーケンスが示される。多孔性基材520は、溶液545上で第二部分524が溶液545に面し、第一部分522および第二多孔質層530が溶液545から背けられた状態で位置付けられる。
【0088】
図8Bに示されるように、多孔性基材520の第二部分524は、図8A中の矢印により表される通りの、溶液545の方向に多孔性基材520を移動させることにより、溶媒中に溶解された上記第一ヒドロゲル前駆体を有する溶液545中に部分的に沈められる。多孔性基材520の第二部分524のみが溶液545と接触し、その結果、十分な量の溶液545が第二部分524へ塗布され得る。取り除く際、上記インプラントは乾燥されるか、または、乾燥し、溶媒を除去し、第二部分524に粒子540を堆積することが可能である。第二粒子540は乾燥形態で上記第二ヒドロゲル前駆体を含み、第二部分524へ空間的に限定される。図8Cの多孔性基材520は、上記基材の第一部分へ塗布される発泡体形態の第一ヒドロゲル前駆体、および上記多孔性基材の第二部分へ塗布される粒子形態の第二ヒドロゲル前駆体を有し、上記基材の第一部分が上記多孔性基材の第二部分から空間的に分離されていることが示される。
【0089】
代替の実施形態において、図7Bに示されるような多孔性基材は、上記第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルム形成材料と組み合わされ得る。図9A〜図9Cに示されるように、多孔性基材620は第一部分622および第二部分624を含み、ここで、第一ヒドロゲル前駆体を含む第二多孔質層630は、第一部分622で多孔性基材620へ連結される。第二部分624は、支持体629へ塗布されるフィルム形成溶液645に面していることが示される。フィルム形成材料645は、第二ヒドロゲル前駆体および溶媒を含む。
【0090】
図9Bにおいて、多孔性基材620の第二部分624は、図9A中の矢印により表される方向に多孔性基材620を移動させることにより、フィルム形成溶液645と接触し、そして/または、フィルム形成溶液645中に部分的に沈められる。多孔性基材620の第二部分624のみがフィルム形成溶液645と接触し、その結果、十分な量の材料645が第二部分624へ塗布され得る。フィルム形成溶液645は、第二部分624の少なくとも一部分上にフィルムを形成することが可能である。図9Cの多孔性基材620は、上記基材の第一部分へ塗布される発泡体形態の第一ヒドロゲル前駆体、および上記多孔性基材の第二部分へ塗布されるフィルム形態の第二ヒドロゲル前駆体を有し、上記基材の第一部分が上記多孔性基材の第二部分から空間的に分離されていることが示される。
【0091】
図4〜図9に示されるような発泡体ではなく、上記多孔性基材は繊維状構造物であり得ることが理解されるべきである。したがって、実施形態において、図10〜図12に概略的に示されるように、上記多孔性基材は繊維状構造物、すなわち、織物構造物または不織構造物であり得る。上記第一ヒドロゲル前駆体および第二ヒドロゲル前駆体は、発泡体多孔性基材20に関して上で記載された実質的に同じ技術を用いて、繊維状多孔性基材へ塗布され得る。したがって、上記の発泡体多孔性基材を用いた場合と同様に、上記多孔性基材が繊維状である場合、上記第一ヒドロゲル前駆体および/または第二ヒドロゲル前駆体は、例えば、溶液から堆積される粒子、フィルム形成溶液を乾燥することにより形成される非多孔質フィルム、または上記繊維状多孔性基材の少なくとも一部分へ塗布される発泡体として塗布され得る。図10に示されるように、例えば、インプラント710は、多数の孔725(図10において規定される)を含み、かつ第一部分722および第二部分724を有する、編成された多孔性基材720を含む。乾燥形態で第一ヒドロゲル前駆体を含む粒子730は、例えば、図4A〜図4Cにおける発泡体多孔性基材320に関して上で示された様式と実質的に同様の様式で、第一部分722へ塗布される。第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルム750は、例えば、図5A〜図5Cにおける発泡体多孔性基材320に関して上で示された様式と実質的に同様の様式で第二部分724へ塗布される。移植の際、第二部分724は止血を必要とする組織へ適用される。組織との接触の際、生理学的流体はインプラント710に浸透し、矢印Aにより表される方向に移動し、それにより、粒子730に到達する前にフィルム750と相互作用し、フィルム750を溶かす。上記流体は基材720の第一部分722の方へ毛管作用で運ばれるので、フィルム750の溶液は、生理学的流体により溶解もされ、生理学的流体と混合もされた粒子730と接触することが想定される。この混合は、上記第一前駆体および第二前駆体を活性化し、これらが相互作用し、架橋し、上記インプラントの止血作用を助けるシールを形成することを可能にする。実施形態において、この新たに形成されるヒドロゲル/生理学的流体インプラントはまた、癒着バリアとしても作用する。
【0092】
上記第一ヒドロゲル前駆体および/または第二ヒドロゲル前駆体は、第一ヒドロゲル前駆体および/または第二ヒドロゲル前駆体を含む溶液からではなく、溶融物から塗布され得ることがさらに企図される。図11において、例えば、インプラント810は、第一部分822および第二部分824を有する編成された多孔性基材820を含み、ここで、第二部分824は第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルム850を再び含む。しかし、この実施形態において、上記第一ヒドロゲル前駆体830は、溶液から粒子としてではなく、溶融物からコーティングとして第一部分822へ塗布される。示されるように、溶融物830は本質的に、基材820の第一部分822の繊維の少なくとも一部分をコーティングする一方で、孔825が、多孔性基材820を通しての流体の移動を可能にするのに十分開いたままであることを可能にする。上記コーティング830は不連続であり得、上記基材820の一部832をコーティングされていないままにし得ることが理解されるべきである。
【0093】
上で言及された通り、上記多孔性基材は不織繊維状多孔性基材であり得る。図12において、例えば、インプラント910は、第一部分922および第二部分924を有する不織多孔性基材920として示され、ここで、粒子930は第一部分922へ塗布された上記第一ヒドロゲル前駆体を含み、フィルム940は第二部分924へ塗布された上記第二ヒドロゲル前駆体を含む。
【実施例】
【0094】
トリリジンの飽和ボレート緩衝溶液を調製する。この溶液は、溶液1mLあたり20.6mgのトリリジンを含む。この溶液のpHは約9.2である。1シートの酸化セルロースを上記溶液へ浸し、次いで、乾燥のためにラックへ固定する。上記ラックを真空オーブン中に置く。このオーブンをポンプを使用して約50mTorr(約6.7Pa)へ下げ、約25℃の温度に約3日間保ち、湿度レベルを2重量%未満へ下げる。約15000の分子量を有する、8本のアームのN−ヒドロキシコハク酸イミドで官能化されたポリエチレングリコールを、ホットプレート上で約50℃で溶融する。乾燥したトリリジンを含む酸化セルロースシートを溶融したPEG成分と接触するように置く。冷却後、上記PEG成分は、インプラントの1つの面上にフィルムを形成させる。
【0095】
結果として生じる生成物を2インチ(5.08cm)×2インチ(5.08cm)の正方形へ形を整え、乾燥し、箔の容器の中に包む。
【0096】
使用の際、上記箔の包みを開き、上記インプラントを出血する創傷へ、上記PEGフィルム面を上記創傷とは反対側にして適用する。数秒以内に止血が起こる。
【0097】
様々な改変が本明細書中で開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、2つを超える前駆体が上記多孔性基材へ塗布され得、上記止血用インプラントを形成し得る。別の例として、上記第一前駆体および第二前駆体はそれぞれ、上記多孔性基材へフィルムとして塗布され得る。したがって、当業者は特許請求の範囲および意図の範囲内での他の改変を想定する。
【符号の説明】
【0098】
10、110、210、710、810、910 インプラント
19、319、519 容器
20、120、220、320、420、520、620、720、820、920 多孔性基材
22、322、422、522、622、722、822、922 第一部分
24、324、424、524、624、724、824、924 第二部分
25、325、725、825 孔
30、130、340、540、730、930 粒子
35、335、345 溶液
40、140、240、750、850、940 フィルム
45 溶融物
230、830 コーティング
429、629 支持体
445、645 フィルム形成溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および該多孔性基材へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを有する該多孔性基材を含む、インプラント。
【請求項2】
前記多孔性基材が発泡体である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記多孔性基材が編成されたテキスタイルである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記多孔性基材が不織テキスタイルである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記多孔性基材が生体吸収性材料から作製される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記多孔性基材が酸化セルロースから作製される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第一ヒドロゲル前駆体が粒子を構成する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記第一ヒドロゲル前駆体が発泡体である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記第一ヒドロゲル前駆体がフィルムである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
生物活性剤をさらに含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および該多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有し、該多孔性基材の第一部分が該多孔性基材の第二部分から空間的に分離されている、該多孔性基材を含むインプラント。
【請求項13】
前記多孔性基材が発泡体である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記多孔性基材が編成されたテキスタイルである、請求項12に記載のインプラント。
【請求項15】
前記多孔性基材が不織テキスタイルである、請求項12に記載のインプラント。
【請求項16】
前記多孔性基材が生体吸収性材料から作製される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項17】
前記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項18】
前記多孔性基材が酸化セルロースから作製される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項19】
前記第一ヒドロゲル前駆体が粒子を構成する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項20】
前記第一ヒドロゲル前駆体が発泡体である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項21】
前記第一ヒドロゲル前駆体がフィルムである、請求項12に記載のインプラント。
【請求項22】
前記第二ヒドロゲル前駆体が粒子を構成する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項23】
前記第二ヒドロゲル前駆体が発泡体である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項24】
前記第二ヒドロゲル前駆体がフィルムである、請求項12に記載のインプラント。
【請求項25】
生物活性剤をさらに含む、請求項12に記載のインプラント。
【請求項26】
第一ヒドロゲル前駆体を多孔性基材へ塗布する工程;および
第二ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを該多孔性基材へ塗布する工程
を包含する方法。
【請求項27】
前記第一ヒドロゲル前駆体を前記多孔性基材へ塗布する工程が
該第一ヒドロゲル前駆体および溶媒を含む溶液中へ、該多孔性基材の少なくとも第一部分を少なくとも部分的に沈める工程;ならびに
該溶媒を蒸発させ、該多孔性基材の孔の内部に該第一ヒドロゲル前駆体を堆積させる工程
を包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第一ヒドロゲル前駆体を前記多孔性基材へ塗布する工程が
該第一ヒドロゲル前駆体および溶媒を含むフィルム形成組成物と、該多孔性基材を接触させる工程;ならびに
該溶媒を蒸発させ、該多孔性基材の少なくとも一部分上に該第一ヒドロゲル前駆体を含むフィルムを堆積させる工程
を包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第一ヒドロゲル前駆体を前記多孔性基材へ塗布する工程が
第一組成物および第二組成物を同時に凍結乾燥し、
該第一組成物が該多孔性基材を形成し、ならびに該第一ヒドロゲル前駆体および溶媒を含む該第二組成物が、該第一ヒドロゲル前駆体を含む発泡体を形成する工程
を包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
第一ヒドロゲル前駆体を多孔性基材の第一部分へ塗布する工程;
第二ヒドロゲル前駆体を該多孔性基材の第二部分へ塗布する工程
を包含する方法であって、該多孔性基材の第一部分は該多孔性基材の第二部分から空間的に分離されている方法。
【請求項31】
多孔性基材の第一部分へ塗布される第一ヒドロゲル前駆体、および該多孔性基材の第二部分へ塗布される第二ヒドロゲル前駆体を有する該多孔性基材を含むシステムであって、ここで、該第一部分が該第二部分より患者の組織に対して近くに配置されるように構成され、ここで、配置されたインプラントが該患者の組織と接触するように構成され、それにより、生理学的流体が該多孔性基材を通して毛管作用で運ばれ、続いて該第一ヒドロゲル前駆体、次いで該第二ヒドロゲル前駆体コーティングを溶解する、システム。
【請求項32】
前記第一ヒドロゲル前駆体が前記多孔性基材へフィルムとして塗布される、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記多孔性基材の第一部分が該多孔性基材の第二部分から空間的に分離される、請求項31に記載のシステム。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−94519(P2010−94519A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239895(P2009−239895)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(507156015)コンフルエント サージカル, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】