止血用移植物
【課題】水性生理学的流体の存在によって活性化される乾燥物質と組み合わせた、移植可能なデバイスを備えるインサイチュ軟骨欠損治療を提供すること。
【解決手段】本発明は、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が付着している、多孔性基材;および該多孔性基材に付着したフィルムであって、第二のヒドロゲル前駆体を含有する、フィルム、を備える、移植物を提供する。ある実施形態において、上記多孔性基材は、発泡体であり得る。
【解決手段】本発明は、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が付着している、多孔性基材;および該多孔性基材に付着したフィルムであって、第二のヒドロゲル前駆体を含有する、フィルム、を備える、移植物を提供する。ある実施形態において、上記多孔性基材は、発泡体であり得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2009年10月5日に出願された米国特許出願番号12/573,176の一部継続出願である。米国特許出願番号12/573,176は、2008年10月17日に出願された米国仮特許出願番号61/196,543の利益および優先権を主張する。
【0002】
(背景)
本開示は、移植物に関し、そしてより特定すると、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体が付着している多孔性基材を備える、コラーゲン含有移植物に関する。
【背景技術】
【0003】
インサイチュ軟骨欠損治療は、軟骨欠損部内で前駆体溶液を固体移植物に転換することによって組織足場を作製すること、または予め形成された組織足場を軟骨欠損部に機械的に固定することに、主として焦点を当てている。前駆体溶液の転換は、種々の手段(析出、重合、架橋、および脱溶媒和が挙げられる)によって、達成されている。しかし、インサイチュ軟骨欠損治療のために溶液を使用する場合、かなりの制限が存在する。低粘度の溶液は、流れ去り得、そして転換および固化が起こる前に、塗布部位からなくなり得る。さらに、溶液の処方は複雑であり得る。なぜなら、前駆体溶液の調製は、代表的に、前駆体の再構成を必要とするか、または溶液が凍結保存される場合には、解凍を必要とするからである。三次元足場の機械的固定は、代表的に、縫合糸、鋲または他の機械的取り付け手段を必要とし、これは、軟骨欠損部に隣接する組織に移植物を固定するために、さらなる組織損傷を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、水性生理学的流体の存在によって活性化される乾燥物質と組み合わせた、移植可能なデバイスを備えるインサイチュ軟骨欠損治療を提供することが望ましい。移植可能なデバイスと乾燥物質とのこの組み合わせは、インサイチュ止血治療が移植部位で起こることを確実にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が付着している、多孔性基材;および
該多孔性基材に付着したフィルムであって、第二のヒドロゲル前駆体を含有する、フィルム、
を備える、移植物。
(項目2)
上記多孔性基材が発泡体である、上記項目に記載の移植物。
(項目3)
上記多孔性基材が編地である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目4)
上記多孔性基材が不織布である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目5)
上記多孔性基材が生体吸収性材料から作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目6)
上記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目7)
上記多孔性基材が酸化されたセルロースから作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目8)
上記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目9)
上記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目10)
生物活性剤をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目11)
多孔性基材であって、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が該多孔性基材の第一の部分に付着している、多孔性基材;および
該多孔性基材の第二の部分に付着している第二のヒドロゲル前駆体、
を備え、
該多孔性基材の該第一の部分は、該多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されている、移植物。
(項目12)
上記多孔性基材が発泡体である、上記項目に記載の移植物。
(項目13)
上記多孔性基材が編地である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目14)
上記多孔性基材が不織布である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目15)
上記多孔性基材が生体吸収性材料から作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目16)
上記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目17)
上記多孔性基材が酸化されたセルロースから作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目18)
上記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目19)
上記第二のヒドロゲル前駆体が発泡体である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目20)
上記第二のヒドロゲル前駆体がフィルムである、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目21)
生物活性剤をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目22)
上記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目23)
軟骨の欠損部を同定する工程;
多孔性基材を配向させる工程であって、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が該多孔性基材の第一の部分に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体が該多孔性基材の第二の部分に付着しており、該第二の部分は、該第一の部分よりも該欠損部内の患者の組織に近い、工程;および
該配向された移植物を該患者の組織と接触させる工程、
を包含し、生理学的流体が、該第二の部分を濡らして該多孔性基材に滲み込み、その結果、該第一のヒドロゲル前駆体が該第二のヒドロゲル前駆体と反応し、これによってヒドロゲルを形成する、方法。
(項目24)
上記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、上記項目に記載の方法。
(項目25)
上記第二のヒドロゲル前駆体がフィルムとして上記多孔性基材に付着している、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目26)
上記基材の上記第一の部分が、該多孔性基材の上記第二の部分から空間的に分離されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目27)
上記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0006】
(摘要)
本開示は、多孔性基材を備えるコラーゲン含有移植物に関し、この移植物が移植部位に配置され、そして患者の生理学的流体に曝露されるまで、第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体とが互いに反応しないような様式で、この多孔性基材に第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体が付着している。
【0007】
(要旨)
本開示は、移植物をその使用方法を提供する。ある実施形態において、本開示は、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が付着している多孔性基材、およびこの多孔性基材に付着された、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムを備える、移植物を提供する。この多孔性基材は、発泡体、編地、不織布、およびこれらの組み合わせなどであり得る。この多孔性基材は、生体吸収性材料、および/または非生体吸収性材料から作製され得る。
【0008】
他の実施形態において、本開示の移植物は、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が多孔性基材の第一の部分に付着している多孔性基材;およびこの多孔性基材の第二の部分に付着された第二のヒドロゲル前駆体を備え得、ここでこの基材の第一の部分は、この多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されている。
【0009】
本開示の方法は、ある実施形態において、軟骨の欠損部を同定する工程;多孔性基材を配向させる工程であって、この多孔性基材は、この多孔性基材の第一の部分に付着した、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着された第二のヒドロゲル前駆体を有し、この第二の部分は、この第一の部分よりも、この欠損部内の患者の組織に近い、工程;ならびにこの配向された移植物をこの患者の組織と接触させる工程を包含し、ここで生理学的流体がこの第二の部分を濡らしてこの多孔性基材に滲み込み、その結果、この第一のヒドロゲル前駆体がこの第二のヒドロゲル前駆体と反応し、これによってヒドロゲルを形成する。
【0010】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の実施形態を図示し、そして上に与えられた本開示の一般的な説明および以下に与えられる実施形態の詳細な説明と一緒になって、本開示の原理を説明する役に立つ。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水性生理学的流体の存在によって活性化される乾燥物質と組み合わせた、移植可能なデバイスを備えるインサイチュ軟骨欠損治療が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1A〜図1Dは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図1B】図1A〜図1Dは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図1C】図1A〜図1Dは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図1D】図1A〜図1Dは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図2】図2は、図1A〜図1Dに示される実施形態の1つのバリエーションを概略的に示す。
【図3】図3は、図1A〜図1Dに示される実施形態の別のバリエーションを概略的に示す。
【図4A】図4A〜図4Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図4B】図4A〜図4Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図4C】図4A〜図4Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図5A】図5A〜図5Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図5B】図5A〜図5Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図5C】図5A〜図5Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図6A】図6A〜図6Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図6B】図6A〜図6Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図6C】図6A〜図6Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図7】図7A〜図7Bは、第一のヒドロゲル前駆体を含有する発泡体と発泡体多孔性基材との同時の形成を概略的に示す。
【図8A】図8A〜図8Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図8B】図8A〜図8Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図8C】図8A〜図8Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図9A】図9A〜図9Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図9B】図9A〜図9Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図9C】図9A〜図9Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図10】図10は、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子が第一の部分の部分に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムが第二の部分に付着している、編成繊維の多孔性基材を概略的に示す。
【図11】図11は、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体を含有するコーティングが第一の部分に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムが第二の部分に付着されている、編成繊維の多孔性基材を概略的に示す。
【図12】図12は、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子が第一の部分に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムが第二の部分に付着されている、不織繊維の多孔性基材を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本開示に従うコラーゲン含有移植物は、多孔性基材を備え、この多孔性基材は、この多孔性基材の第一の部分に付着した第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着した第二のヒドロゲル前駆体を有する。使用中に、この移植物は、この第一のヒドロゲル前駆体が付着している部分が組織により近くなり、そして第二のヒドロゲル前駆体が付着している部分が組織から遠くなるように、配向させられる。ある実施形態において、この第一の部分およびこの第二の部分は、コントラスト色素、表面テクスチャー、着色または他の視覚的合図の付与により、互いに区別可能であり得る。組織(例えば、損傷組織)との接触の際に、この移植物は、生理学的流体を吸収し、そして第一のヒドロゲル前駆体がこの流体に溶解する。この流体がこの移植物に滲み込んで移動すると、この流体は、この溶解した第一のヒドロゲル前駆体をこの移植物に沿って運ぶ。最終的に、この流体は、第二のヒドロゲル前駆体が付着している第二の部分に達するために充分に、この移植物を通って移動し、これによって、この第二のヒドロゲル前駆体を溶解する。次いで、この第一のヒドロゲル前駆体とこの第二のヒドロゲル前駆体とが反応して、架橋した生体適合性材料を形成し、これによって、この足場が分解する際に、組織の内方成長および再構築を補助する。いくつかの実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体との反応により生成した、架橋した生体適合性材料はまた、この移植物に接着防止特性を与える。
【0014】
この移植物の多孔性基材は、その表面の少なくとも一部分にわたって、開口部または細孔を有する。これらの細孔は、この基材に、移植前または移植後のいずれかに形成され得る。以下により詳細に記載されるように、多孔性基材を形成するために適切な材料としては、繊維性構造体(例えば、編成構造体、製織構造体、不織構造体など)および/または発泡体(例えば、連続気泡発泡体もしくは独立気泡発泡体)が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、これらの細孔は、この多孔性基材の厚さ全体にわたって相互接続するために充分な数およびサイズであり得る。織布、編地および連続気泡発泡体は、細孔がこの多孔性基材の厚さ全体にわたって相互接続するために充分な数およびサイズであり得る構造体の例示的な例である。ある実施形態において、これらの細孔は、この多孔性基材の厚さ全体にわたって相互接続しない。独立気泡発泡体または融合した不織材料は、細孔がこの多孔性基材の厚さ全体にわたって相互接続しないかもしれない構造体の例示的な例である。これらの発泡体多孔性基材の細孔は、多孔性基材の厚さ全体にまたがり得る。なお他の実施形態において、これらの細孔は、この多孔性基材の厚さ全体にわたって延びず、むしろ、この多孔性基材の厚さの一部分に存在する。ある実施形態において、これらの開口部または細孔は、この多孔性基材の表面の位置部分に位置し、この多孔性基材の他の部分は、非多孔性テクスチャーを有する。他の実施形態において、これらの細孔は、移植後にインサイチュで形成され得る。インサイチュでの細孔形成は、任意の適切な方法を使用して実施され得る。いくつかの非限定的な例としては、接触リソグラフィー、リビングラジカルフォトポリマー(LRPP)系および塩浸出の使用が挙げられる。本開示を読む当業者は、多孔性基材についての他の細孔分布パターンおよび構成を予測する。
【0015】
この多孔性基材が繊維性である場合、これらの繊維は、編成または製織に適したフィラメントまたは糸であり得るか、あるいはステープルファイバー(例えば、不織材料を調製するために頻繁に使用されるもの)であり得る。これらの繊維は、任意の生体適合性材料から作製され得る。従って、これらの繊維は、天然材料から形成されても合成材料から形成されてもよい。これらの繊維が形成される材料は、生体吸収性であっても非生体吸収性であってもよい。天然材料、合成材料、生体吸収性材料および非生体吸収性材料の任意の組み合わせが、繊維を形成するために使用され得ることが、もちろん理解されるべきである。繊維を形成し得る材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(サッカリド)、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、バイオポリマー、ポリマー薬物、およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンドならびに組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
この多孔性基材が繊維性である場合、この多孔性基材は、繊維性構造体を形成するために適した任意の方法(編成、製織、不織技術、湿式紡糸、電子紡糸、押出し、および共押出しなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して形成され得る。繊維性構造体を作製するために適切な技術は、当業者の知識の範囲内である。ある実施形態において、布は、三次元構造を有する(例えば、米国特許第7,021,086号および同第6,443,964号に記載される布であり、これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)。
【0017】
ある実施形態において、この多孔性基材は、酸化されたセルロースの繊維から作製される。このような材料は公知であり、そして商品名SURGICEL(登録商標)のもとで市販されている酸化セルロース止血材料が挙げられる。酸化セルロース止血材料を調製するための方法は、当業者に公知であり、そして例えば、米国特許第3,364,200号;同第4,626,253号;同第5,484,913号;および同第6,500,777号(これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0018】
この多孔性基材が発泡体である場合、この多孔性基材は、発泡体またはスポンジを形成するために適した任意の方法(組成物の凍結乾燥またはフリーズドライが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して形成され得る。この発泡体は、架橋していても架橋していなくてもよく、そして共有結合またはイオン結合を含み得る。発泡体を作製するために適切な技術は、当業者の知識の範囲内である。
【0019】
この多孔性基材は、少なくとも0.1cmの厚さであり得、ある実施形態においては、約0.2cm〜約1.5cmの厚さであり得る。この多孔性基材の細孔のサイズは、約2μm〜約300μmであり得、ある実施形態においては約50μm〜約150μmであり得る。この基材の細孔は、この基材に任意の様式で配置され得ることが想定される。例えば、これらの細孔は、無作為な様式で構成されても均一な様式で構成されてもよい。いくつかの実施形態において、これらの細孔は、アルギン酸銅を使用して、ハニカム形状の多孔性基材を作製することにより形成され得る。さらに他の実施形態において、これらの細孔は、この多孔性基材に勾配を作製するように構成され得る。この勾配は、これらの多孔性基材が生理学的流体を吸収して、第一のヒドロゲル前駆体を第二のヒドロゲル前駆体の方に運ぶ生理学的流体の移動を方向付ける能力を、さらに増強し得る。
【0020】
ある実施形態において、この移植物は、100kDa近くの分子量の、非変性コラーゲン、または加熱もしくは他の任意の方法によってらせん構造を少なくとも部分的に失ったコラーゲン(主として加水分解されていないα鎖からなる)から作製される。用語「非変性コラーゲン」とは、そのらせん構造を失っていないコラーゲンを意味する。本発明の移植物のために使用されるコラーゲンは、ネイティブコラーゲンまたはアテロコラーゲン(顕著には、ペプシン消化により得られるもの、および/もしくは先に定義されたような中程度の加熱後に得られるもの)であり得る。このコラーゲンは、酸化、メチル化、エチル化、スクシニル化、または他の任意の公知のプロセスによって、予め化学修飾させられ得る。このコラーゲンはまた、任意の適切な架橋剤(例えば、ゲニピン、イソシアネート、およびアルデヒド)で架橋させられ得る。コラーゲンの起源および型は、上に記載された非移植物について示されるとおりであり得る。
【0021】
他の実施形態において、コラーゲン(本明細書中に記載される任意のコラーゲンが挙げられる)が、前駆体のうちの一方として利用され得る。以下により詳細に記載されるように、コラーゲン前駆体のアミン基(これらは求核性である)は、第二の前駆体の求電子性基と自由に反応し得、これによって、本開示のヒドロゲルを形成し得る。
【0022】
ある実施形態において、この移植物は、コラーゲンの酸水溶液(2グラム/リットル(g/l)〜50g/lの濃度)を、4℃〜25℃の初期温度でフリーズドライさせることによって、得られ得る。この溶液中のコラーゲンの濃度は、約1g/l〜約30g/lであり得、ある実施形態においては約10g/lであり得る。この溶液は、有利には、約6〜8のpHに中和される。
【0023】
この移植物はまた、様々な相対量のある体積の空気の存在下(空気:水の比は、約1〜約10で変わる)で乳化した、コラーゲンまたは加熱されたコラーゲンの溶液から調製された流体発泡体をフリーズドライさせることによって、得られ得る。
【0024】
この多孔性基材には、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体が付着している。用語「第一のヒドロゲル前駆体」および「第二のヒドロゲル前駆体」の各々は、架橋分子の網目構造(例えば、ヒドロゲル)を形成する反応に関与し得る、ポリマー、機能性ポリマー、高分子、低分子、または架橋剤を意味する。
【0025】
第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の各々は、多官能性である。すなわち、これらの前駆体は、2つ以上の求電子性官能基または求核性反応基をを含み、その結果、例えば、第一のヒドロゲル前駆体の求核性官能基が第二のヒドロゲル前駆体の求電子性官能基と反応して、共有結合を形成し得る。第一のヒドロゲル前駆体または第二のヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも一方が、2つより多くの官能基を含み、その結果、求電子剤−求核剤反応の結果として、これらの前駆体が化合して、架橋したポリマー生成物を形成する。このような反応は、「架橋反応」と称される。
【0026】
ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の各々は、求核性前駆体と求電子性前駆体との両方が架橋反応において使用される限り、1つのみのカテゴリーの官能基(求核性基のみまたは求電子性官能基のみのいずれか)を含む。従って、例えば、第一のヒドロゲル前駆体が求核性官能基(例えば、アミン)を有する場合、第二のヒドロゲル前駆体は、求電子性官能基(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド)を有し得る。他方で、第一のヒドロゲル前駆体が求電子性官能基(例えば、スルホスクシンイミド)を有する場合、第二のヒドロゲル前駆体は、求核性官能基(例えば、アミンまたはチオール)を有し得る。従って、機能性ポリマー(例えば、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、スチレンスルホン酸、またはアミン末端を有する二官能性もしくは多官能性のポリ(エチレングリコール)(「PEG」))が使用され得る。
【0027】
第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体は、生物学的に不活性な水溶性コアを有し得る。このコアが水溶性であるポリマー領域である場合、使用され得る好ましいポリマーとしては、ポリエーテル(例えば、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、co−ポリエチレンオキシドのブロックコポリマーもしくはランダムコポリマー))、およびポリビニルアルコール(「PVA」);ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);ポリ(サッカリド)(例えば、デキストラン;キトサン;アルギネート;カルボキシメチルセルロース;酸化されたセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース;ヒアルロン酸);ならびにタンパク質(例えば、アルブミン、コラーゲン、カゼイン、およびゼラチン)が挙げられる。ポリエーテル、より特定すると、ポリ(オキシアルキレン)またはポリ(エチレングリコール)すなわちポリエチレングリコールが、特に有用である。分子の性質としてコアが小さい場合、種々の親水性官能基のうちの任意のものが、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体を水溶性にするために使用され得る。例えば、ヒドロキシル、アミン、スルホネートおよびカルボキシレートなどの官能基(これらは、水溶性である)が、前駆体を水溶性にするために使用され得る。さらに、スベリン酸(subaric acid)のN−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは、水に不溶性であるが、そのスクシンイミド環にスルホネート基を付加させことによって、スベリン酸(subaric acid)のNHSエステルは、アミン基に対する反応性に影響を与えることなく、水溶性にされ得る。
【0028】
ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体との両方が、架橋し得る大きい分子であり得る。例えば、ある実施形態において、これらの前駆体のうちの一方は、約2,000ダルトン〜約20,000ダルトンの分子量を有する多官能性PEGであり得る。ある実施形態において、求電子性基を有する多官能性PEGは、約100,000ダルトンの分子量を有するコラーゲンと反応し得る。他の実施形態において、約50,000ダルトン〜約100,000ダルトンの分子量を有するゼラチンが、コラーゲンの代わりに使用され得る。これらの大きい分子の前駆体を利用して、得られるヒドロゲルは、軟骨修復が挙げられる用途に適した組織足場として使用され得る。
【0029】
第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体との反応から得られる生体適合性架橋ポリマーが、生分解性または吸収性であることが望ましい場合、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体のうちの1つ以上は、官能基間に存在する生分解性結合を有し得る。この生分解性結合はまた、必要に応じて、これらの前駆体のうちの1つ以上の水溶性コアとして働き得る。代替例において、またはさらに、第一のヒドロゲル前駆体の官能基および第二のヒドロゲル前駆体の官能基は、これらの間の反応の生成物が生分解性結合を生じるように選択され得る。各アプローチのために、生分解性結合は、得られる生分解性の生体適合性架橋ポリマーが所望の期間で分解するか、溶解するか、または吸収されるように、選択され得る。好ましくは、生理学的条件下で分解して非毒性生成物になる生分解性結合が選択される。
【0030】
生分解性結合は、キレートであり得るか、または化学的もしくは酵素的に加水分解可能もしくは吸収可能であり得る。例示的な化学的に加水分解可能な生分解性結合としては、グリコリド、dl−ラクチド、1−ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、およびトリメチレンカーボネートのポリマー、コポリマーおよびオリゴマーが挙げられる。例示的な酵素的に加水分解可能な生分解性結合としては、メタロプロテイナーゼおよびコラーゲナーゼにより切断可能なペプチド結合が挙げられる。さらなる例示的な生分解性結合としては、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(酸無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(サッカリド)およびポリ(ホスフェート)の、ポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0031】
ある実施形態において、生分解性結合は、エステル結合を含み得る。いくつかの非限定的な例としては、コハク酸、グルタル酸、プロピオン酸、アジピン酸、またはアミノ酸のエステル、およびカルボキシメチルエステルが挙げられる。
【0032】
ある実施形態において、多官能請求電子性ポリマー(例えば、複数のNHS基で官能基化されたマルチアームPEG)が、第一のヒドロゲル前駆体として使用され得、そして多官能性求核性成分(例えば、トリリジン)が、第二のヒドロゲル前駆体として使用され得る。他の実施形態において、多官能性求電子性ポリマー(例えば、複数のNHS基で官能基化されたマルチアームPEG)が、第一のヒドロゲル前駆体として使用され得、そして多官能性求核性ポリマー(例えば、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体)が、第二のヒドロゲル前駆体として使用され得る。複数のNHS基で官能基化されたマルチアームPEGは、例えば、4つ、6つ、または8つのアームを有し得、そして約5,000〜約25,000の分子量を有し得る。適切な第一の前駆体および第二の前駆体の他の多くの例が、米国特許第6,152,943号;同第6,165,201号;同第6,179,862号;同第6,514,534号;同第6,566,406号;同第6,605,294号;同第6,673,093号;同第6,703,047号;同第6,818,018号;同第7,009,034号;および同第7,347,850号に記載されており、これらの各々の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0033】
第一のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材の第一の部分に付着させられ、そして第二のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材の第二の部分に付着させられる。例えば、これらの前駆体は、乾燥形態(例えば、粒子状物質)として、または固体状態もしくは半固体状態(例えば、フィルム)として、あるいは発泡体として、付着させられ得る。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体または第二のヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも一方は、多孔性基材にフィルムとして付着させられる。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体が付着している基材の第一の部分は、第二のヒドロゲル前駆体が付着している多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されている。第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体が互いから空間的に分離していることにより、この移植物が移植部位に配置されて患者の生理学的流体に曝露されるまで、これらの前駆体が互いに反応することが防止される。
【0034】
第一のヒドロゲル前駆体は、当業者に公知である任意の適切な方法(噴霧、ブラッシング、浸漬、鋳込み、積層などが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して、多孔性基材に付着させられ得る。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体は、止血用移植物を形成し得る任意の濃度、寸法および構成で、コーティングとして基材に付着させられ得る。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体のコーティングは、多孔性基材の細孔に浸入し得る。このコーティングは、非多孔性層を形成しても多孔性層を形成してもよい。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材にフィルムとして付着させられ得、このフィルムは、この基材の少なくとも1つの面に積層される。
【0035】
第二のヒドロゲル前駆体は、同様に、当業者に公知である任意の適切な方法(噴霧、ブラッシング、浸漬、鋳込み、積層などが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して、多孔性基材に付着させられ得る。ある実施形態において、第二のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材を形成する前に、この多孔性基材に組み込まれ得る。他の実施形態において、第二のヒドロゲル前駆体は、この多孔性基材の形成後に、この多孔性基材の細孔内、またはこの多孔性基材の表面に、配置され得る。なお他の実施形態において、多孔性基材は、第二のヒドロゲル前駆体の付着前にカレンダリングされ得、これによって、この第二の前駆体がこの基材の開口部(カレンダリングプロセスにより作製される)に浸入することを可能にし得る。さらに他の実施形態において、第二のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材に溶液として塗布され得、その後、その溶媒を蒸発または凍結乾燥され得る。ある実施形態において、第二のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材の少なくとも1つの面にコーティングとして、または多孔性基材の少なくとも1つの面に積層させられるフィルムとして、この多孔性基材に付着させられ得る。
【0036】
第一のヒドロゲル前駆体または第二のヒドロゲル前駆体のいずれかが非多孔性層(すなわち、フィルム)を形成する実施形態において、このフィルムの厚さは、この移植物が創傷を封止する前に、このヒドロゲル前駆体の一部分のみが他方のヒドロゲル前駆体と反応することを可能にするために十分であり得る。このような実施形態において、残りの未反応のヒドロゲルは、創傷と周囲の組織との間の障壁層として働いて、癒着の形成を防止し得る。ヒドロゲル移植物を形成する際に、これらの前駆体はまた、生理学的流体に、特定の特性(例えば、癒着防止)を与え得る。生理学的流体/ヒドロゲルもまた、創傷と周囲の組織との間の障壁層として働いて、癒着の形成を防止し得る。ある実施形態において、多孔性基材は、癒着を減少させるかまたは防止することが既知である非反応性材料(例えば、ヒアルロン酸など)をさらに含有し得る。このような実施形態において、これらの非反応性材料は、第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体との相互作用後に、癒着の形成を防止し得る。
【0037】
他の実施形態において、本開示の移植物は、三次元の生分解性足場として利用され得る。この三次元足場は、この足場が分解する際に、組織の内方成長および再構築を容易にし得る。ある実施形態において、この足場は、自己接着性である。従って、この移植物は、膠、縫合糸、ステープル、鋲、または他の二次接着のための手段を必要とせずに、組織に付けられて適所に固定され得る。本開示の組織足場は、種々の欠損部(軟骨欠損部が挙げられる);神経修復(脳、脊椎など)、器官欠損部(例えば、心臓(心筋梗塞)、腎臓、および肝臓);筋肉、脂肪(乳房増大術、身体の輪郭形成、顔面移植物など)、腱/靭帯修復、および骨の修復のために使用され得る。
【0038】
例えば、ある実施形態において、ヒトの膝の軟骨とおよそ同じ厚さ(すなわち、約3mm)であるセルロース足場が構築され得る。セルロースは、コラーゲンおよび塩基性塩を含浸され得る。適切な塩基性塩としては、ホウ酸の金属塩(ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウムが挙げられる);炭酸塩(炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが挙げられる);リン酸塩(一塩基性および二塩基性のリン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムが挙げられる);重炭酸塩(重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウムが挙げられる);ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。ある実施形態において、コラーゲンは、塩基性緩衝液(例えば、約8.75のpHを有するホウ酸緩衝液)に溶解され得る。次いで、このセルロースは、緩衝液に浸漬され得、そして即座にフリーズドライされ得る。次いで、上記のようなマルチアーム求電子性PEGが、このセルロース足場に層として付着させられ、そして乾燥させられて、本開示の移植物を形成し得る。他の実施形態において、このPEGの層は、このセルロースの片面に乾式コーティングされ得る。
【0039】
軟骨修復において使用するために、得られた本開示の移植物は、軟骨欠損部に合うように切断され得る。この欠損部は、壊死組織を切除され得、そして微細破損手順および/または微細削開手順が、当業者の知識の範囲内である装置および方法を使用して、この欠損の部位で行われ得る。本開示の移植物は、PEGの面を下にして、欠損部に配置され得る。この欠損部に挿入されると、この欠損部の血液および流体が、これらのPEG、コラーゲンおよび塩を濡らす。第一のヒドロゲル前駆体は、この流体により溶解される。この流体が移植物に滲み込んでこの移植物を通って移動すると、この流体は、溶解した第一のヒドロゲル前駆体をこの移植物に沿って運び、そしてコラーゲンおよび塩と接触させる。これらの塩はpHを上昇させ、求電子性PEGとコラーゲンとの間での反応を誘発し、このセルロース内でのゲル形成、ならびに下にある肋軟骨下の骨および隣接する軟骨への、この移植物の接着をもたらす。
【0040】
止血を提供すること、および/または欠損部(例えば、軟骨欠損部)の処置のために使用することに加えて、これらの移植物は、生物活性剤の送達のためにさらに使用され得る。従って、いくつかの実施形態において、少なくとも1種の生物活性剤が、第一のヒドロゲル前駆体または第二のヒドロゲル前駆体のいずれかと合わせられ得、そして/あるいは多孔性基材に別に付けられ得る。これらの剤は、これらの前駆体と自由に混合され得るか、または任意の種々の化学結合によってこれらの前駆体に繋留され得る。これらの実施形態において、本発明の移植物はまた、生物活性剤の送達のためのビヒクルとして働き得る。用語「生物活性剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素または香料)。あるいは、生物活性剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の剤;組織成長、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物;または、接着防止化合物;生物学的作用(例えば、免疫応答)を引き起こし得る化合物であり得るか;あるいは、1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る。この生物活性剤は、物質の任意の適切な形態(例えば、フィルム、粉末、液体、ゲルなど)で本発明の移植物に付けられ得ることが想定される。
【0041】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬(antiepileptics)、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬(antispasmodics)、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝結因子、および酵素が挙げられる。生物活性剤を合わせたものが使用され得ることもまた意図される。
【0042】
接着防止剤は、移植可能な医療デバイスと、標的組織に対向する周囲組織との間で接着が形成されることを防止するために利用され得る。さらに、接着防止剤は、コーティングされた移植可能な医療デバイスと、包装材料との間で接着が形成されることを防止するために使用され得る。これらの剤のいくつかの例としては、親水性ポリマー(例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の生物活性コーティングに生物活性剤として含有され得る適切な抗菌剤としては、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、プロテイン銀、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、生物活性剤として本発明の生物活性コーティングに含有され得る。
【0044】
本開示により塗布されるコーティング組成物に生物活性剤として含有され得る、他の生物活性剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性抗受精剤;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的剤が挙げられる。
【0045】
コーティング組成物に含有され得る適切な生物活性剤の他の例としては、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、そのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント、例えば免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質、TGF−β、タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態において、生物活性剤(ある実施形態においては、増殖因子または成長因子)を含有するリポソームが、前駆体のうちの少なくとも一方を含む溶液と合わせられ得、その結果、このリポソームが多孔性基材に組み込まれる。例えば、いくつかの場合において、少なくとも1種の増殖因子または成長因子を含むリポソームが、求核性前駆体(例えば、コラーゲン)を含む緩衝溶液と混合され得、そして多孔性基材(例えば、セルロース)に塗布され得る。使用において、コラーゲンと求電子性PEGとの反応の際にヒドロゲルが形成されるにつれて、これらのリポソームが放出され得る。このことは、ある実施形態において、軟骨修復のために、リポソームが増殖因子または成長因子を欠損の部位で放出して軟骨の再生を刺激する場合に、有用であり得る。
【0047】
ここで図1A〜図1Dを参照すると、第一のヒドロゲル前駆体が多孔性基材の細孔内に付着させられ、そして第二のヒドロゲル前駆体がこの多孔性基材の第二の部分に付着させられる、順序が示されている。図1Aにおいて、多孔性基材20は、内部に複数の細孔25が規定された発泡体である。溶液35(溶媒に溶解した第一のヒドロゲル前駆体を含有する)が、容器19内に用意される。多孔性基材20が、溶液35に浸漬され、そして溶液35内に完全に沈められる。取り出してすぐに、この移植物が乾燥させられ、溶媒を溶液35から除去し、そして図1Bに示されるように、第一のヒドロゲル前駆体30を含む粒子を基材20の細孔25内に堆積させる。
【0048】
図1Cにおいて、第一のヒドロゲル前駆体を含有する多孔性基材20が、第二のヒドロゲル前駆体の融解物45と接触させられる。冷却すると、第二のヒドロゲル前駆体の融解物45が固化して、基材20の少なくとも一部分を覆うフィルム40を形成する。第二の前駆体のフィルム40の付着後、この移植物は、端を切られて任意の所望のサイズおよび形状にされ得る。図1Dの移植物10は、多孔性基材20の第一の部分22に付着した粒子30の形態の第一のヒドロゲル前駆体、および多孔性基材20の第二の部分24に付着したフィルム40の形態の第二のヒドロゲル前駆体を有することが示されている。
【0049】
図2の移植物110は、多孔性基材120がメッシュ材料であり、粒子130の形態の第一のヒドロゲル前駆体およびフィルム140の形態の第二のヒドロゲル前駆体がこのメッシュ材料に付着していることを除いて、図1A〜図1Dの順序で示す様式と類似の様式で調製される。不織材料(図示せず)が、図1A〜図1Dに示される発泡体または図2に示されるメッシュの代わりに、多孔性基材として使用されてもよいことが想定される。
【0050】
図3の移植物210は、多孔性基材220がメッシュ材料であり、コーティング230の形態の第一のヒドロゲル前駆体およびフィルム240の形態の第二のヒドロゲル前駆体がこのメッシュ材料に付着していることを除いて、図1A〜図1Dの順序で示す様式と類似の様式で調製される。第一のヒドロゲル前駆体のコーティング230は、多孔性基材220を、第一のヒドロゲル前駆体の溶液に、または第一のヒドロゲル前駆体の融解物に浸漬させることによって、形成され得る。あるいは、第一のヒドロゲル前駆体は、基材に付着してコーティング230を提供する前に、フィルム形成ポリマーと合わせられ得る。本開示を読む当業者は、第一のヒドロゲル前駆体を含有するコーティングを基材に塗布するための他の方法および材料を予測する。
【0051】
ここで図4A〜図4Cを参照すると、第一のヒドロゲル前駆体が多孔性基材の第一の部分に付着させられる順序が示されている。図4Aにおいて、多孔性基材320は、複数の細孔325が規定されている発泡体材料であり、少なくとも第一の部分322および第二の部分324を備える。溶液335(溶媒に溶解した第一のヒドロゲル前駆体を含有する)が、容器319内に用意される。多孔性基材320は、第一の部分322が溶液335に面し、そして第二の部分324が溶液335ではない方に面するように、溶液335の上に配置される。
【0052】
図4Bにおいて、多孔性基材320の第一の部分322は、図4Aにおいて矢印により表わされるように多孔性基材320を溶液335の方向に動かすことによって、溶液335に部分的に沈められる。多孔性基材320の第一の部分322のみが、溶液335と接触し、その結果、充分な量の溶液335が、多孔性基材320に付着して、多孔性基材320の第一の部分322の細孔325を満たし得る。取り出してすぐに、この移植物が乾燥させられ、溶媒を溶液335から除去し、そして図4Cに示されるように、第一のヒドロゲル前駆体330を含む粒子が第一の部分322に堆積する。粒子330は、第一のヒドロゲル前駆体を乾燥形態で含み、そして空間的に、第一の部分322に限られる。
【0053】
図5A〜図5Cにおいて、溶媒に溶解した第二のヒドロゲル前駆体を含有する溶液345が多孔性基材320の第二の部分324に付着させられる順序が示されており、ここで第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子330は、基材320の第一の部分322に予め組み込まれている(図4A〜図4Cを参照のこと)。多孔性基材320は、第二の部分324が溶液345に面し、そして第一の部分322が溶液345ではない方に面するように、溶液345の上に配置される。
【0054】
図5Bに示されるように、多孔性基材320の第二の部分324は、図5Aにおいて矢印により表わされるように多孔性基材320を溶液345の方向に動かすことによって、溶液345に部分的に沈められる。多孔性基材320の第二の部分324のみが溶液345と接触し、その結果、充分な量の溶液345が第二の部分324に付着し得る。取り出してすぐに、移植物が乾燥させられて、第二のヒドロゲル前駆体を含有する第二の粒子340が第二の部分324に堆積する。粒子340は、第二のヒドロゲル前駆体を乾燥形態で含み、そして空間的に、第二の部分324に限られる。図5Cの多孔性基材320は、第一のヒドロゲル前駆体がこの基材の第一の部分に付着し、そして第二のヒドロゲル前駆体がこの多孔性基材の第二の部分に付着し、この基材の第一の部分が、この多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されていることが示されている。
【0055】
代替の実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体は、異なる形態で移植物に付着させられ得る。例えば、図6A〜図6Cにおいて、第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子430が第一の部分422に付着しており、第二の部分424が、支持体429に付着した第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム形成溶液445に面している、多孔性基材が示されている。
【0056】
図6Bにおいて、多孔性基材420の第二の部分424は、図6Aにおいて矢印により示される方向に多孔性基材420を動かすことによって、フィルム形成溶液445と接触させられ、そして/またはフィルム形成溶液445に部分的に沈められる。多孔性基材420の第二の部分424のみがフィルム形成溶液445と接触し、その結果、充分な量の材料445が、第二の部分424に付着し得る。フィルム形成溶液445は、(熱を加えてまたは熱を加えずに)固化させられて、第二の部分424の少なくとも一部分を覆うフィルムを形成する。図6Cの多孔性基材420は、この基材の第一の部分に付着した粒子の形態の第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着したフィルムの形態の第二のヒドロゲル前駆体を有し、この基材の第一の部分がこの多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されていることが示されている。
【0057】
ここで図7A〜図7Bを参照すると、多孔性基材と、第一のヒドロゲル前駆体を含有する多孔性層とが一緒に形成されたものが示されている。図7Aにおいて、容器519は、多孔性基材を形成することになっている第一の溶液525、および第一のヒドロゲル前駆体を含有する第二の溶液535を含み、これらの2つの溶液は、実質的に別々の層のままである。これらの2つの溶液は、当業者に公知である任意の方法を使用して凍結乾燥されて、図7Bに示されるような多孔性基材を形成し、この多孔性基材は、凍結乾燥した第二の溶液535から作製された第二の多孔性層530に接続した、凍結乾燥した第一の溶液525から作製された第一の多孔性基材520を備える。第二の多孔性層530は、第一のヒドロゲル前駆体を含有し、そして第一の部分522を介して第一の多孔性基材520に結合されて、2層の多孔性材料を有する移植物を形成する。
【0058】
図8A〜図8Cにおいて、第二のヒドロゲル前駆体を含有する溶液545が、多孔性基材520の第二の部分524に付着させられる順序が示されており、多孔性基材520は、第一の部分522に結合している、第一のヒドロゲル前駆体を含有する多孔性基材530をすでに有する。多孔性基材520は、第二の部分524が溶液545に面し、そして第一の部分522および第二の多孔性層530が溶液545ではない方に面するように、溶液545の上に配置される。
【0059】
図8Bに示されるように、多孔性基材520の第二の部分524は、図8Aにおいて矢印により表わされるように溶液545の方向に多孔性基材520を動かすことによって、溶媒に溶解した第一のヒドロゲル前駆体を有する溶液545に部分的に沈められる。多孔性基材520の第二の部分524のみが溶液545と接触し、その結果、充分な量の溶液545が第二の部分524に付着し得る。取り出してすぐに、この移植物が乾燥させられ、または乾燥して、溶媒を除去し、そして粒子540を第二の部分524に堆積させる。第二の粒子540は、第二のヒドロゲル前駆体を乾燥形態で含有し、そして空間的に、第二の部分524に限られる。図8Cの多孔性基材520は、この基材の第一の部分に付着した発泡体の形態の第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着した粒子の形態の第二のヒドロゲル前駆体を有し、この基材の第一の部分が、この多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されていることが示されている。
【0060】
代替の実施形態において、図7Bに示されるような多孔性基材は、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム形成材料と合わせられ得る。図9A〜図9Cに示されるように、多孔性基材620は、第一の部分622および第二の部分624を備え、第一のヒドロゲル前駆体を含有する第二の多孔性層630が、第一の部分622において多孔性基材620に接続されている。第二の部分624は、支持体629に付着したフィルム形成溶液645に面することが示されている。フィルム形成材料645は、第二のヒドロゲル前駆体および溶媒を含有する。
【0061】
図9Bにおいて、多孔性基材620の第二の部分624は、図9Aにおいて矢印により表わされる方向に多孔性基材620を動かすことによって、フィルム形成溶液645と接触させられ、そして/またはフィルム形成溶液645に部分的に沈められる。多孔性基材620の第二の部分624のみがフィルム形成溶液645と接触し、その結果、充分な量の材料645が第二の部分624に付着し得る。フィルム形成溶液645は、第二の部分624の少なくとも一部分を覆うフィルムを形成する。図9Cの多孔性基材620は、この基材の第一の部分に付着した発泡体の形態の第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着したフィルムの形態の第二のヒドロゲル前駆体を有し、この基材の第一の部分が、この多孔性基材の第二の部分から空間的に分離していることが示されている。
【0062】
図4〜図9に示されるような発泡体であるよりもむしろ、多孔性基材は、繊維性構造体であってもよいことが理解されるべきである。従って、ある実施形態において、図10〜図12に概略的に示されるように、多孔性基材は、繊維性構造体(すなわち、製織構造体または不織構造体)であり得る。第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体は、発泡体多孔性基材20に関して上で記載されたものと実質的に同じ技術を使用して、繊維性多孔性基材に付着させられ得る。従って、上記発泡体多孔性基材と同様に、多孔性基材が繊維性である場合、第一のヒドロゲル前駆体および/または第二のヒドロゲル前駆体は、例えば、溶液から堆積させられた粒子、フィルム形成溶液を乾燥させることにより形成された非多孔性フィルム、または繊維性多孔性基材の少なくとも一部分に付着した発泡体として、付着させられ得る。例えば、図10に示されるように、移植物710は、複数の細孔725が規定され、第一の部分722および第二の部分724を有する、編成多孔性基材720を備える。乾燥形態の第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子730が、例えば、図4A〜図4Cの上記発泡体多孔性基材320に関して上に示された様式と実質的に類似の様式で、第一の部分722に付着させられる。第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム750が、例えば、図5A〜図5Cの上記発泡体多孔性基材320に関して上に示された様式と実質的に類似の様式で、第二の部分724に付着させられる。移植の際に、第二の部分750は、止血を必要とする組織に付着させられる。組織と接触すると、生理学的流体が移植物710に侵入し、そして矢印Aにより表わされる方向に移動し、これによって、フィルム750と相互作用してフィルム750を液状にし、その後、粒子730に達する。流体が基材720の第一の部分722に向かって滲み込むと、フィルム750の溶液が粒子730と接触し、これらの粒子もまた、生理学的流体により溶解され、そして生理学的流体と混合することが想定される。この混合は、第一の前駆体および第二の前駆体を活性化させ、そしてこれらの前駆体に相互作用および架橋を起こさせて、移植物の止血機能を補助するシールを形成させる。ある実施形態において、この新たに形成されたヒドロゲル/生理学的流体移植物もまた、接着障壁として働く。
【0063】
第一のヒドロゲル前駆体および/または第二のヒドロゲル前駆体は、溶液からではなく、第一のヒドロゲル前駆体および/または第二のヒドロゲル前駆体を含有する融解物から付着させられてもよいことが、さらに想定される。例えば、図11において、移植物810は、第一の部分822および第二の部分824を有する編成多孔性基材820を備え、ここでまた第二の部分824は、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム850を備える。しかし、この実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体830は、溶液からの粒子としてではなく、融解物からのコーティングとして第一の部分822に付着させられる。示されるように、融解物830は、基材820の第一の部分822の繊維の少なくとも一部分を本質的に覆い、一方で、細孔825が、多孔性基材820を通る流体の移動を可能にするために充分に開いたままであることを可能にする。コーティング830が不連続であり得、基材820の残りの部分832がコーティングされなくてもよいことが理解されるべきである。
【0064】
上記のように、多孔性基材は、不織繊維の多孔性基材であり得る。例えば、図12において、移植物910は、第一の部分922および第二の部分924を有する不織多孔性基材920として示され、ここで第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子930が、第一の部分922に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム940が、第二の部分924に付着している。
【0065】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例示するために与えられる。これらの実施例は、説明のみであることが意図され、本開示の範囲を限定するとは意図されない。また、他に示されない限り、部および百分率は、重量に基づく。本明細書中で使用される場合、「室温」とは、約20℃〜約25℃の温度をいう。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
トリリジンの飽和ホウ酸緩衝溶液を調製する。この溶液は、溶液1ミリリットルあたり20.6ミリグラムのトリリジンを含有する。この溶液のpHは、約9.2である。酸化されたセルロースのシートをこの溶液に浸漬し、次いで、乾燥のためにラックに固定する。このラックを真空オーブンに入れる。このオーブンをポンプで減圧して約50mTorrにし、そして約25℃の温度に約3日間維持してその水分レベルを2重量%未満まで減少させる。約15,000の分子量を有する8アームN−ヒドロキシスクシンイミジル官能基化ポリエチレングリコールを、ホットプレートで約50℃で融解する。乾燥したトリリジン含有酸化セルロースシートを、融解したPEG成分と接触させて配置する。冷却後、このPEG成分は、移植物の片面にフィルムを形成する。
【0067】
得られた生成物の端を切って2インチ×2インチの正方形にし、乾燥させ、そして箔容器に包装する。
【0068】
使用において、この箔容器を開封し、そして移植物を、PEGフィルムが創傷に面さないようにして、出血している創傷に貼る。数秒以内に止血が起こる。
【0069】
(実施例2)
コラーゲンの飽和ホウ酸緩衝溶液を調製する。この溶液は、溶液1ミリリットルあたり10ミリグラム〜60ミリグラムのコラーゲンを含有する。この溶液のpHは、約9.2である。酸化されたセルロースのシートをこの溶液に浸漬し、次いで、乾燥のためにラックに固定する。このラックを真空オーブンに入れる。このオーブンをポンプで減圧して約50mTorrにし、そして約25℃の温度に約3日間維持してその水分レベルを2重量%未満まで減少させる。約15,000の分子量を有する8アームN−ヒドロキシスクシンイミジル官能基化ポリエチレングリコールを、ホットプレートで約50℃で融解する。乾燥させたコラーゲン含有酸化セルロースシートを、融解したPEG成分と接触させて配置する。冷却後、このPEG成分は、移植物の片面にフィルムを形成する。
【0070】
得られた生成物の端を切って2インチ×2インチの正方形にし、乾燥させ、そして箔容器に包装する。
【0071】
使用において、この箔容器を開封し、そしてこの移植物を、PEGフィルム面を下にして、軟骨欠損部に付着させる。欠損部に挿入されると、この欠損部の血液および流体が、これらのPEG、コラーゲンおよび塩を濡らす。このPEGフィルムが、この欠損の部位で、この流体により溶解される。この流体が移植物に滲み込んでこの移植物を通って移動すると、この流体は、溶解したPEGをこの移植物に沿って運び、そしてコラーゲンおよび塩と接触させる。これらの塩はpHを上昇させ、求電子性PEGとコラーゲンとの間での反応を誘発し、そしてこのセルロース内でゲルを形成し、その結果、下にある肋軟骨下の骨および隣接する軟骨への、この移植物の接着が起こる。
【0072】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、2種より多くの前駆体が多孔性基材に付着させられて、止血用移植物を形成し得る。別の例として、第一の前駆体および第二の前駆体は、それぞれフィルムとして、多孔性基材に付着され得る。従って、当業者は、特許請求の範囲の趣旨および範囲内で他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0073】
19 容器
20 (多孔性)基材
25 細孔
30 第一のヒドロゲル前駆体
35 溶液
40 フィルム(第二のヒドロゲル前駆体)
110 移植物
120 多孔性基材
130 第一のヒドロゲル前駆体
140 第二のヒドロゲル前駆体
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2009年10月5日に出願された米国特許出願番号12/573,176の一部継続出願である。米国特許出願番号12/573,176は、2008年10月17日に出願された米国仮特許出願番号61/196,543の利益および優先権を主張する。
【0002】
(背景)
本開示は、移植物に関し、そしてより特定すると、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体が付着している多孔性基材を備える、コラーゲン含有移植物に関する。
【背景技術】
【0003】
インサイチュ軟骨欠損治療は、軟骨欠損部内で前駆体溶液を固体移植物に転換することによって組織足場を作製すること、または予め形成された組織足場を軟骨欠損部に機械的に固定することに、主として焦点を当てている。前駆体溶液の転換は、種々の手段(析出、重合、架橋、および脱溶媒和が挙げられる)によって、達成されている。しかし、インサイチュ軟骨欠損治療のために溶液を使用する場合、かなりの制限が存在する。低粘度の溶液は、流れ去り得、そして転換および固化が起こる前に、塗布部位からなくなり得る。さらに、溶液の処方は複雑であり得る。なぜなら、前駆体溶液の調製は、代表的に、前駆体の再構成を必要とするか、または溶液が凍結保存される場合には、解凍を必要とするからである。三次元足場の機械的固定は、代表的に、縫合糸、鋲または他の機械的取り付け手段を必要とし、これは、軟骨欠損部に隣接する組織に移植物を固定するために、さらなる組織損傷を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、水性生理学的流体の存在によって活性化される乾燥物質と組み合わせた、移植可能なデバイスを備えるインサイチュ軟骨欠損治療を提供することが望ましい。移植可能なデバイスと乾燥物質とのこの組み合わせは、インサイチュ止血治療が移植部位で起こることを確実にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が付着している、多孔性基材;および
該多孔性基材に付着したフィルムであって、第二のヒドロゲル前駆体を含有する、フィルム、
を備える、移植物。
(項目2)
上記多孔性基材が発泡体である、上記項目に記載の移植物。
(項目3)
上記多孔性基材が編地である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目4)
上記多孔性基材が不織布である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目5)
上記多孔性基材が生体吸収性材料から作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目6)
上記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目7)
上記多孔性基材が酸化されたセルロースから作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目8)
上記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目9)
上記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目10)
生物活性剤をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目11)
多孔性基材であって、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が該多孔性基材の第一の部分に付着している、多孔性基材;および
該多孔性基材の第二の部分に付着している第二のヒドロゲル前駆体、
を備え、
該多孔性基材の該第一の部分は、該多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されている、移植物。
(項目12)
上記多孔性基材が発泡体である、上記項目に記載の移植物。
(項目13)
上記多孔性基材が編地である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目14)
上記多孔性基材が不織布である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目15)
上記多孔性基材が生体吸収性材料から作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目16)
上記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目17)
上記多孔性基材が酸化されたセルロースから作製されている、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目18)
上記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目19)
上記第二のヒドロゲル前駆体が発泡体である、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目20)
上記第二のヒドロゲル前駆体がフィルムである、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目21)
生物活性剤をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目22)
上記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の移植物。
(項目23)
軟骨の欠損部を同定する工程;
多孔性基材を配向させる工程であって、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が該多孔性基材の第一の部分に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体が該多孔性基材の第二の部分に付着しており、該第二の部分は、該第一の部分よりも該欠損部内の患者の組織に近い、工程;および
該配向された移植物を該患者の組織と接触させる工程、
を包含し、生理学的流体が、該第二の部分を濡らして該多孔性基材に滲み込み、その結果、該第一のヒドロゲル前駆体が該第二のヒドロゲル前駆体と反応し、これによってヒドロゲルを形成する、方法。
(項目24)
上記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、上記項目に記載の方法。
(項目25)
上記第二のヒドロゲル前駆体がフィルムとして上記多孔性基材に付着している、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目26)
上記基材の上記第一の部分が、該多孔性基材の上記第二の部分から空間的に分離されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目27)
上記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0006】
(摘要)
本開示は、多孔性基材を備えるコラーゲン含有移植物に関し、この移植物が移植部位に配置され、そして患者の生理学的流体に曝露されるまで、第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体とが互いに反応しないような様式で、この多孔性基材に第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体が付着している。
【0007】
(要旨)
本開示は、移植物をその使用方法を提供する。ある実施形態において、本開示は、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が付着している多孔性基材、およびこの多孔性基材に付着された、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムを備える、移植物を提供する。この多孔性基材は、発泡体、編地、不織布、およびこれらの組み合わせなどであり得る。この多孔性基材は、生体吸収性材料、および/または非生体吸収性材料から作製され得る。
【0008】
他の実施形態において、本開示の移植物は、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が多孔性基材の第一の部分に付着している多孔性基材;およびこの多孔性基材の第二の部分に付着された第二のヒドロゲル前駆体を備え得、ここでこの基材の第一の部分は、この多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されている。
【0009】
本開示の方法は、ある実施形態において、軟骨の欠損部を同定する工程;多孔性基材を配向させる工程であって、この多孔性基材は、この多孔性基材の第一の部分に付着した、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着された第二のヒドロゲル前駆体を有し、この第二の部分は、この第一の部分よりも、この欠損部内の患者の組織に近い、工程;ならびにこの配向された移植物をこの患者の組織と接触させる工程を包含し、ここで生理学的流体がこの第二の部分を濡らしてこの多孔性基材に滲み込み、その結果、この第一のヒドロゲル前駆体がこの第二のヒドロゲル前駆体と反応し、これによってヒドロゲルを形成する。
【0010】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の実施形態を図示し、そして上に与えられた本開示の一般的な説明および以下に与えられる実施形態の詳細な説明と一緒になって、本開示の原理を説明する役に立つ。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水性生理学的流体の存在によって活性化される乾燥物質と組み合わせた、移植可能なデバイスを備えるインサイチュ軟骨欠損治療が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1A〜図1Dは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図1B】図1A〜図1Dは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図1C】図1A〜図1Dは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図1D】図1A〜図1Dは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図2】図2は、図1A〜図1Dに示される実施形態の1つのバリエーションを概略的に示す。
【図3】図3は、図1A〜図1Dに示される実施形態の別のバリエーションを概略的に示す。
【図4A】図4A〜図4Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図4B】図4A〜図4Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図4C】図4A〜図4Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、多孔性基材への第一のヒドロゲル前駆体の付着を概略的に示す。
【図5A】図5A〜図5Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図5B】図5A〜図5Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図5C】図5A〜図5Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図6A】図6A〜図6Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図6B】図6A〜図6Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図6C】図6A〜図6Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図7】図7A〜図7Bは、第一のヒドロゲル前駆体を含有する発泡体と発泡体多孔性基材との同時の形成を概略的に示す。
【図8A】図8A〜図8Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図8B】図8A〜図8Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図8C】図8A〜図8Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有する粒子の付着を概略的に示す。
【図9A】図9A〜図9Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図9B】図9A〜図9Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図9C】図9A〜図9Cは、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体がすでに付着している多孔性基材への、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムの付着を概略的に示す。
【図10】図10は、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子が第一の部分の部分に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムが第二の部分に付着している、編成繊維の多孔性基材を概略的に示す。
【図11】図11は、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体を含有するコーティングが第一の部分に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムが第二の部分に付着されている、編成繊維の多孔性基材を概略的に示す。
【図12】図12は、本開示の実施形態のうちの少なくとも1つに記載されるような、第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子が第一の部分に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルムが第二の部分に付着されている、不織繊維の多孔性基材を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本開示に従うコラーゲン含有移植物は、多孔性基材を備え、この多孔性基材は、この多孔性基材の第一の部分に付着した第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着した第二のヒドロゲル前駆体を有する。使用中に、この移植物は、この第一のヒドロゲル前駆体が付着している部分が組織により近くなり、そして第二のヒドロゲル前駆体が付着している部分が組織から遠くなるように、配向させられる。ある実施形態において、この第一の部分およびこの第二の部分は、コントラスト色素、表面テクスチャー、着色または他の視覚的合図の付与により、互いに区別可能であり得る。組織(例えば、損傷組織)との接触の際に、この移植物は、生理学的流体を吸収し、そして第一のヒドロゲル前駆体がこの流体に溶解する。この流体がこの移植物に滲み込んで移動すると、この流体は、この溶解した第一のヒドロゲル前駆体をこの移植物に沿って運ぶ。最終的に、この流体は、第二のヒドロゲル前駆体が付着している第二の部分に達するために充分に、この移植物を通って移動し、これによって、この第二のヒドロゲル前駆体を溶解する。次いで、この第一のヒドロゲル前駆体とこの第二のヒドロゲル前駆体とが反応して、架橋した生体適合性材料を形成し、これによって、この足場が分解する際に、組織の内方成長および再構築を補助する。いくつかの実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体との反応により生成した、架橋した生体適合性材料はまた、この移植物に接着防止特性を与える。
【0014】
この移植物の多孔性基材は、その表面の少なくとも一部分にわたって、開口部または細孔を有する。これらの細孔は、この基材に、移植前または移植後のいずれかに形成され得る。以下により詳細に記載されるように、多孔性基材を形成するために適切な材料としては、繊維性構造体(例えば、編成構造体、製織構造体、不織構造体など)および/または発泡体(例えば、連続気泡発泡体もしくは独立気泡発泡体)が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、これらの細孔は、この多孔性基材の厚さ全体にわたって相互接続するために充分な数およびサイズであり得る。織布、編地および連続気泡発泡体は、細孔がこの多孔性基材の厚さ全体にわたって相互接続するために充分な数およびサイズであり得る構造体の例示的な例である。ある実施形態において、これらの細孔は、この多孔性基材の厚さ全体にわたって相互接続しない。独立気泡発泡体または融合した不織材料は、細孔がこの多孔性基材の厚さ全体にわたって相互接続しないかもしれない構造体の例示的な例である。これらの発泡体多孔性基材の細孔は、多孔性基材の厚さ全体にまたがり得る。なお他の実施形態において、これらの細孔は、この多孔性基材の厚さ全体にわたって延びず、むしろ、この多孔性基材の厚さの一部分に存在する。ある実施形態において、これらの開口部または細孔は、この多孔性基材の表面の位置部分に位置し、この多孔性基材の他の部分は、非多孔性テクスチャーを有する。他の実施形態において、これらの細孔は、移植後にインサイチュで形成され得る。インサイチュでの細孔形成は、任意の適切な方法を使用して実施され得る。いくつかの非限定的な例としては、接触リソグラフィー、リビングラジカルフォトポリマー(LRPP)系および塩浸出の使用が挙げられる。本開示を読む当業者は、多孔性基材についての他の細孔分布パターンおよび構成を予測する。
【0015】
この多孔性基材が繊維性である場合、これらの繊維は、編成または製織に適したフィラメントまたは糸であり得るか、あるいはステープルファイバー(例えば、不織材料を調製するために頻繁に使用されるもの)であり得る。これらの繊維は、任意の生体適合性材料から作製され得る。従って、これらの繊維は、天然材料から形成されても合成材料から形成されてもよい。これらの繊維が形成される材料は、生体吸収性であっても非生体吸収性であってもよい。天然材料、合成材料、生体吸収性材料および非生体吸収性材料の任意の組み合わせが、繊維を形成するために使用され得ることが、もちろん理解されるべきである。繊維を形成し得る材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(サッカリド)、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、バイオポリマー、ポリマー薬物、およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンドならびに組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
この多孔性基材が繊維性である場合、この多孔性基材は、繊維性構造体を形成するために適した任意の方法(編成、製織、不織技術、湿式紡糸、電子紡糸、押出し、および共押出しなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して形成され得る。繊維性構造体を作製するために適切な技術は、当業者の知識の範囲内である。ある実施形態において、布は、三次元構造を有する(例えば、米国特許第7,021,086号および同第6,443,964号に記載される布であり、これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)。
【0017】
ある実施形態において、この多孔性基材は、酸化されたセルロースの繊維から作製される。このような材料は公知であり、そして商品名SURGICEL(登録商標)のもとで市販されている酸化セルロース止血材料が挙げられる。酸化セルロース止血材料を調製するための方法は、当業者に公知であり、そして例えば、米国特許第3,364,200号;同第4,626,253号;同第5,484,913号;および同第6,500,777号(これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0018】
この多孔性基材が発泡体である場合、この多孔性基材は、発泡体またはスポンジを形成するために適した任意の方法(組成物の凍結乾燥またはフリーズドライが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して形成され得る。この発泡体は、架橋していても架橋していなくてもよく、そして共有結合またはイオン結合を含み得る。発泡体を作製するために適切な技術は、当業者の知識の範囲内である。
【0019】
この多孔性基材は、少なくとも0.1cmの厚さであり得、ある実施形態においては、約0.2cm〜約1.5cmの厚さであり得る。この多孔性基材の細孔のサイズは、約2μm〜約300μmであり得、ある実施形態においては約50μm〜約150μmであり得る。この基材の細孔は、この基材に任意の様式で配置され得ることが想定される。例えば、これらの細孔は、無作為な様式で構成されても均一な様式で構成されてもよい。いくつかの実施形態において、これらの細孔は、アルギン酸銅を使用して、ハニカム形状の多孔性基材を作製することにより形成され得る。さらに他の実施形態において、これらの細孔は、この多孔性基材に勾配を作製するように構成され得る。この勾配は、これらの多孔性基材が生理学的流体を吸収して、第一のヒドロゲル前駆体を第二のヒドロゲル前駆体の方に運ぶ生理学的流体の移動を方向付ける能力を、さらに増強し得る。
【0020】
ある実施形態において、この移植物は、100kDa近くの分子量の、非変性コラーゲン、または加熱もしくは他の任意の方法によってらせん構造を少なくとも部分的に失ったコラーゲン(主として加水分解されていないα鎖からなる)から作製される。用語「非変性コラーゲン」とは、そのらせん構造を失っていないコラーゲンを意味する。本発明の移植物のために使用されるコラーゲンは、ネイティブコラーゲンまたはアテロコラーゲン(顕著には、ペプシン消化により得られるもの、および/もしくは先に定義されたような中程度の加熱後に得られるもの)であり得る。このコラーゲンは、酸化、メチル化、エチル化、スクシニル化、または他の任意の公知のプロセスによって、予め化学修飾させられ得る。このコラーゲンはまた、任意の適切な架橋剤(例えば、ゲニピン、イソシアネート、およびアルデヒド)で架橋させられ得る。コラーゲンの起源および型は、上に記載された非移植物について示されるとおりであり得る。
【0021】
他の実施形態において、コラーゲン(本明細書中に記載される任意のコラーゲンが挙げられる)が、前駆体のうちの一方として利用され得る。以下により詳細に記載されるように、コラーゲン前駆体のアミン基(これらは求核性である)は、第二の前駆体の求電子性基と自由に反応し得、これによって、本開示のヒドロゲルを形成し得る。
【0022】
ある実施形態において、この移植物は、コラーゲンの酸水溶液(2グラム/リットル(g/l)〜50g/lの濃度)を、4℃〜25℃の初期温度でフリーズドライさせることによって、得られ得る。この溶液中のコラーゲンの濃度は、約1g/l〜約30g/lであり得、ある実施形態においては約10g/lであり得る。この溶液は、有利には、約6〜8のpHに中和される。
【0023】
この移植物はまた、様々な相対量のある体積の空気の存在下(空気:水の比は、約1〜約10で変わる)で乳化した、コラーゲンまたは加熱されたコラーゲンの溶液から調製された流体発泡体をフリーズドライさせることによって、得られ得る。
【0024】
この多孔性基材には、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体が付着している。用語「第一のヒドロゲル前駆体」および「第二のヒドロゲル前駆体」の各々は、架橋分子の網目構造(例えば、ヒドロゲル)を形成する反応に関与し得る、ポリマー、機能性ポリマー、高分子、低分子、または架橋剤を意味する。
【0025】
第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の各々は、多官能性である。すなわち、これらの前駆体は、2つ以上の求電子性官能基または求核性反応基をを含み、その結果、例えば、第一のヒドロゲル前駆体の求核性官能基が第二のヒドロゲル前駆体の求電子性官能基と反応して、共有結合を形成し得る。第一のヒドロゲル前駆体または第二のヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも一方が、2つより多くの官能基を含み、その結果、求電子剤−求核剤反応の結果として、これらの前駆体が化合して、架橋したポリマー生成物を形成する。このような反応は、「架橋反応」と称される。
【0026】
ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体の各々は、求核性前駆体と求電子性前駆体との両方が架橋反応において使用される限り、1つのみのカテゴリーの官能基(求核性基のみまたは求電子性官能基のみのいずれか)を含む。従って、例えば、第一のヒドロゲル前駆体が求核性官能基(例えば、アミン)を有する場合、第二のヒドロゲル前駆体は、求電子性官能基(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド)を有し得る。他方で、第一のヒドロゲル前駆体が求電子性官能基(例えば、スルホスクシンイミド)を有する場合、第二のヒドロゲル前駆体は、求核性官能基(例えば、アミンまたはチオール)を有し得る。従って、機能性ポリマー(例えば、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、スチレンスルホン酸、またはアミン末端を有する二官能性もしくは多官能性のポリ(エチレングリコール)(「PEG」))が使用され得る。
【0027】
第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体は、生物学的に不活性な水溶性コアを有し得る。このコアが水溶性であるポリマー領域である場合、使用され得る好ましいポリマーとしては、ポリエーテル(例えば、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、co−ポリエチレンオキシドのブロックコポリマーもしくはランダムコポリマー))、およびポリビニルアルコール(「PVA」);ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);ポリ(サッカリド)(例えば、デキストラン;キトサン;アルギネート;カルボキシメチルセルロース;酸化されたセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース;ヒアルロン酸);ならびにタンパク質(例えば、アルブミン、コラーゲン、カゼイン、およびゼラチン)が挙げられる。ポリエーテル、より特定すると、ポリ(オキシアルキレン)またはポリ(エチレングリコール)すなわちポリエチレングリコールが、特に有用である。分子の性質としてコアが小さい場合、種々の親水性官能基のうちの任意のものが、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体を水溶性にするために使用され得る。例えば、ヒドロキシル、アミン、スルホネートおよびカルボキシレートなどの官能基(これらは、水溶性である)が、前駆体を水溶性にするために使用され得る。さらに、スベリン酸(subaric acid)のN−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは、水に不溶性であるが、そのスクシンイミド環にスルホネート基を付加させことによって、スベリン酸(subaric acid)のNHSエステルは、アミン基に対する反応性に影響を与えることなく、水溶性にされ得る。
【0028】
ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体との両方が、架橋し得る大きい分子であり得る。例えば、ある実施形態において、これらの前駆体のうちの一方は、約2,000ダルトン〜約20,000ダルトンの分子量を有する多官能性PEGであり得る。ある実施形態において、求電子性基を有する多官能性PEGは、約100,000ダルトンの分子量を有するコラーゲンと反応し得る。他の実施形態において、約50,000ダルトン〜約100,000ダルトンの分子量を有するゼラチンが、コラーゲンの代わりに使用され得る。これらの大きい分子の前駆体を利用して、得られるヒドロゲルは、軟骨修復が挙げられる用途に適した組織足場として使用され得る。
【0029】
第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体との反応から得られる生体適合性架橋ポリマーが、生分解性または吸収性であることが望ましい場合、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体のうちの1つ以上は、官能基間に存在する生分解性結合を有し得る。この生分解性結合はまた、必要に応じて、これらの前駆体のうちの1つ以上の水溶性コアとして働き得る。代替例において、またはさらに、第一のヒドロゲル前駆体の官能基および第二のヒドロゲル前駆体の官能基は、これらの間の反応の生成物が生分解性結合を生じるように選択され得る。各アプローチのために、生分解性結合は、得られる生分解性の生体適合性架橋ポリマーが所望の期間で分解するか、溶解するか、または吸収されるように、選択され得る。好ましくは、生理学的条件下で分解して非毒性生成物になる生分解性結合が選択される。
【0030】
生分解性結合は、キレートであり得るか、または化学的もしくは酵素的に加水分解可能もしくは吸収可能であり得る。例示的な化学的に加水分解可能な生分解性結合としては、グリコリド、dl−ラクチド、1−ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、およびトリメチレンカーボネートのポリマー、コポリマーおよびオリゴマーが挙げられる。例示的な酵素的に加水分解可能な生分解性結合としては、メタロプロテイナーゼおよびコラーゲナーゼにより切断可能なペプチド結合が挙げられる。さらなる例示的な生分解性結合としては、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(酸無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(サッカリド)およびポリ(ホスフェート)の、ポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0031】
ある実施形態において、生分解性結合は、エステル結合を含み得る。いくつかの非限定的な例としては、コハク酸、グルタル酸、プロピオン酸、アジピン酸、またはアミノ酸のエステル、およびカルボキシメチルエステルが挙げられる。
【0032】
ある実施形態において、多官能請求電子性ポリマー(例えば、複数のNHS基で官能基化されたマルチアームPEG)が、第一のヒドロゲル前駆体として使用され得、そして多官能性求核性成分(例えば、トリリジン)が、第二のヒドロゲル前駆体として使用され得る。他の実施形態において、多官能性求電子性ポリマー(例えば、複数のNHS基で官能基化されたマルチアームPEG)が、第一のヒドロゲル前駆体として使用され得、そして多官能性求核性ポリマー(例えば、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体)が、第二のヒドロゲル前駆体として使用され得る。複数のNHS基で官能基化されたマルチアームPEGは、例えば、4つ、6つ、または8つのアームを有し得、そして約5,000〜約25,000の分子量を有し得る。適切な第一の前駆体および第二の前駆体の他の多くの例が、米国特許第6,152,943号;同第6,165,201号;同第6,179,862号;同第6,514,534号;同第6,566,406号;同第6,605,294号;同第6,673,093号;同第6,703,047号;同第6,818,018号;同第7,009,034号;および同第7,347,850号に記載されており、これらの各々の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0033】
第一のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材の第一の部分に付着させられ、そして第二のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材の第二の部分に付着させられる。例えば、これらの前駆体は、乾燥形態(例えば、粒子状物質)として、または固体状態もしくは半固体状態(例えば、フィルム)として、あるいは発泡体として、付着させられ得る。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体または第二のヒドロゲル前駆体のうちの少なくとも一方は、多孔性基材にフィルムとして付着させられる。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体が付着している基材の第一の部分は、第二のヒドロゲル前駆体が付着している多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されている。第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体が互いから空間的に分離していることにより、この移植物が移植部位に配置されて患者の生理学的流体に曝露されるまで、これらの前駆体が互いに反応することが防止される。
【0034】
第一のヒドロゲル前駆体は、当業者に公知である任意の適切な方法(噴霧、ブラッシング、浸漬、鋳込み、積層などが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して、多孔性基材に付着させられ得る。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体は、止血用移植物を形成し得る任意の濃度、寸法および構成で、コーティングとして基材に付着させられ得る。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体のコーティングは、多孔性基材の細孔に浸入し得る。このコーティングは、非多孔性層を形成しても多孔性層を形成してもよい。ある実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材にフィルムとして付着させられ得、このフィルムは、この基材の少なくとも1つの面に積層される。
【0035】
第二のヒドロゲル前駆体は、同様に、当業者に公知である任意の適切な方法(噴霧、ブラッシング、浸漬、鋳込み、積層などが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して、多孔性基材に付着させられ得る。ある実施形態において、第二のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材を形成する前に、この多孔性基材に組み込まれ得る。他の実施形態において、第二のヒドロゲル前駆体は、この多孔性基材の形成後に、この多孔性基材の細孔内、またはこの多孔性基材の表面に、配置され得る。なお他の実施形態において、多孔性基材は、第二のヒドロゲル前駆体の付着前にカレンダリングされ得、これによって、この第二の前駆体がこの基材の開口部(カレンダリングプロセスにより作製される)に浸入することを可能にし得る。さらに他の実施形態において、第二のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材に溶液として塗布され得、その後、その溶媒を蒸発または凍結乾燥され得る。ある実施形態において、第二のヒドロゲル前駆体は、多孔性基材の少なくとも1つの面にコーティングとして、または多孔性基材の少なくとも1つの面に積層させられるフィルムとして、この多孔性基材に付着させられ得る。
【0036】
第一のヒドロゲル前駆体または第二のヒドロゲル前駆体のいずれかが非多孔性層(すなわち、フィルム)を形成する実施形態において、このフィルムの厚さは、この移植物が創傷を封止する前に、このヒドロゲル前駆体の一部分のみが他方のヒドロゲル前駆体と反応することを可能にするために十分であり得る。このような実施形態において、残りの未反応のヒドロゲルは、創傷と周囲の組織との間の障壁層として働いて、癒着の形成を防止し得る。ヒドロゲル移植物を形成する際に、これらの前駆体はまた、生理学的流体に、特定の特性(例えば、癒着防止)を与え得る。生理学的流体/ヒドロゲルもまた、創傷と周囲の組織との間の障壁層として働いて、癒着の形成を防止し得る。ある実施形態において、多孔性基材は、癒着を減少させるかまたは防止することが既知である非反応性材料(例えば、ヒアルロン酸など)をさらに含有し得る。このような実施形態において、これらの非反応性材料は、第一のヒドロゲル前駆体と第二のヒドロゲル前駆体との相互作用後に、癒着の形成を防止し得る。
【0037】
他の実施形態において、本開示の移植物は、三次元の生分解性足場として利用され得る。この三次元足場は、この足場が分解する際に、組織の内方成長および再構築を容易にし得る。ある実施形態において、この足場は、自己接着性である。従って、この移植物は、膠、縫合糸、ステープル、鋲、または他の二次接着のための手段を必要とせずに、組織に付けられて適所に固定され得る。本開示の組織足場は、種々の欠損部(軟骨欠損部が挙げられる);神経修復(脳、脊椎など)、器官欠損部(例えば、心臓(心筋梗塞)、腎臓、および肝臓);筋肉、脂肪(乳房増大術、身体の輪郭形成、顔面移植物など)、腱/靭帯修復、および骨の修復のために使用され得る。
【0038】
例えば、ある実施形態において、ヒトの膝の軟骨とおよそ同じ厚さ(すなわち、約3mm)であるセルロース足場が構築され得る。セルロースは、コラーゲンおよび塩基性塩を含浸され得る。適切な塩基性塩としては、ホウ酸の金属塩(ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウムが挙げられる);炭酸塩(炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが挙げられる);リン酸塩(一塩基性および二塩基性のリン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムが挙げられる);重炭酸塩(重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウムが挙げられる);ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。ある実施形態において、コラーゲンは、塩基性緩衝液(例えば、約8.75のpHを有するホウ酸緩衝液)に溶解され得る。次いで、このセルロースは、緩衝液に浸漬され得、そして即座にフリーズドライされ得る。次いで、上記のようなマルチアーム求電子性PEGが、このセルロース足場に層として付着させられ、そして乾燥させられて、本開示の移植物を形成し得る。他の実施形態において、このPEGの層は、このセルロースの片面に乾式コーティングされ得る。
【0039】
軟骨修復において使用するために、得られた本開示の移植物は、軟骨欠損部に合うように切断され得る。この欠損部は、壊死組織を切除され得、そして微細破損手順および/または微細削開手順が、当業者の知識の範囲内である装置および方法を使用して、この欠損の部位で行われ得る。本開示の移植物は、PEGの面を下にして、欠損部に配置され得る。この欠損部に挿入されると、この欠損部の血液および流体が、これらのPEG、コラーゲンおよび塩を濡らす。第一のヒドロゲル前駆体は、この流体により溶解される。この流体が移植物に滲み込んでこの移植物を通って移動すると、この流体は、溶解した第一のヒドロゲル前駆体をこの移植物に沿って運び、そしてコラーゲンおよび塩と接触させる。これらの塩はpHを上昇させ、求電子性PEGとコラーゲンとの間での反応を誘発し、このセルロース内でのゲル形成、ならびに下にある肋軟骨下の骨および隣接する軟骨への、この移植物の接着をもたらす。
【0040】
止血を提供すること、および/または欠損部(例えば、軟骨欠損部)の処置のために使用することに加えて、これらの移植物は、生物活性剤の送達のためにさらに使用され得る。従って、いくつかの実施形態において、少なくとも1種の生物活性剤が、第一のヒドロゲル前駆体または第二のヒドロゲル前駆体のいずれかと合わせられ得、そして/あるいは多孔性基材に別に付けられ得る。これらの剤は、これらの前駆体と自由に混合され得るか、または任意の種々の化学結合によってこれらの前駆体に繋留され得る。これらの実施形態において、本発明の移植物はまた、生物活性剤の送達のためのビヒクルとして働き得る。用語「生物活性剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素または香料)。あるいは、生物活性剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の剤;組織成長、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物;または、接着防止化合物;生物学的作用(例えば、免疫応答)を引き起こし得る化合物であり得るか;あるいは、1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る。この生物活性剤は、物質の任意の適切な形態(例えば、フィルム、粉末、液体、ゲルなど)で本発明の移植物に付けられ得ることが想定される。
【0041】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬(antiepileptics)、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬(antispasmodics)、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝結因子、および酵素が挙げられる。生物活性剤を合わせたものが使用され得ることもまた意図される。
【0042】
接着防止剤は、移植可能な医療デバイスと、標的組織に対向する周囲組織との間で接着が形成されることを防止するために利用され得る。さらに、接着防止剤は、コーティングされた移植可能な医療デバイスと、包装材料との間で接着が形成されることを防止するために使用され得る。これらの剤のいくつかの例としては、親水性ポリマー(例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の生物活性コーティングに生物活性剤として含有され得る適切な抗菌剤としては、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、プロテイン銀、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、生物活性剤として本発明の生物活性コーティングに含有され得る。
【0044】
本開示により塗布されるコーティング組成物に生物活性剤として含有され得る、他の生物活性剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性抗受精剤;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的剤が挙げられる。
【0045】
コーティング組成物に含有され得る適切な生物活性剤の他の例としては、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、そのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント、例えば免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質、TGF−β、タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態において、生物活性剤(ある実施形態においては、増殖因子または成長因子)を含有するリポソームが、前駆体のうちの少なくとも一方を含む溶液と合わせられ得、その結果、このリポソームが多孔性基材に組み込まれる。例えば、いくつかの場合において、少なくとも1種の増殖因子または成長因子を含むリポソームが、求核性前駆体(例えば、コラーゲン)を含む緩衝溶液と混合され得、そして多孔性基材(例えば、セルロース)に塗布され得る。使用において、コラーゲンと求電子性PEGとの反応の際にヒドロゲルが形成されるにつれて、これらのリポソームが放出され得る。このことは、ある実施形態において、軟骨修復のために、リポソームが増殖因子または成長因子を欠損の部位で放出して軟骨の再生を刺激する場合に、有用であり得る。
【0047】
ここで図1A〜図1Dを参照すると、第一のヒドロゲル前駆体が多孔性基材の細孔内に付着させられ、そして第二のヒドロゲル前駆体がこの多孔性基材の第二の部分に付着させられる、順序が示されている。図1Aにおいて、多孔性基材20は、内部に複数の細孔25が規定された発泡体である。溶液35(溶媒に溶解した第一のヒドロゲル前駆体を含有する)が、容器19内に用意される。多孔性基材20が、溶液35に浸漬され、そして溶液35内に完全に沈められる。取り出してすぐに、この移植物が乾燥させられ、溶媒を溶液35から除去し、そして図1Bに示されるように、第一のヒドロゲル前駆体30を含む粒子を基材20の細孔25内に堆積させる。
【0048】
図1Cにおいて、第一のヒドロゲル前駆体を含有する多孔性基材20が、第二のヒドロゲル前駆体の融解物45と接触させられる。冷却すると、第二のヒドロゲル前駆体の融解物45が固化して、基材20の少なくとも一部分を覆うフィルム40を形成する。第二の前駆体のフィルム40の付着後、この移植物は、端を切られて任意の所望のサイズおよび形状にされ得る。図1Dの移植物10は、多孔性基材20の第一の部分22に付着した粒子30の形態の第一のヒドロゲル前駆体、および多孔性基材20の第二の部分24に付着したフィルム40の形態の第二のヒドロゲル前駆体を有することが示されている。
【0049】
図2の移植物110は、多孔性基材120がメッシュ材料であり、粒子130の形態の第一のヒドロゲル前駆体およびフィルム140の形態の第二のヒドロゲル前駆体がこのメッシュ材料に付着していることを除いて、図1A〜図1Dの順序で示す様式と類似の様式で調製される。不織材料(図示せず)が、図1A〜図1Dに示される発泡体または図2に示されるメッシュの代わりに、多孔性基材として使用されてもよいことが想定される。
【0050】
図3の移植物210は、多孔性基材220がメッシュ材料であり、コーティング230の形態の第一のヒドロゲル前駆体およびフィルム240の形態の第二のヒドロゲル前駆体がこのメッシュ材料に付着していることを除いて、図1A〜図1Dの順序で示す様式と類似の様式で調製される。第一のヒドロゲル前駆体のコーティング230は、多孔性基材220を、第一のヒドロゲル前駆体の溶液に、または第一のヒドロゲル前駆体の融解物に浸漬させることによって、形成され得る。あるいは、第一のヒドロゲル前駆体は、基材に付着してコーティング230を提供する前に、フィルム形成ポリマーと合わせられ得る。本開示を読む当業者は、第一のヒドロゲル前駆体を含有するコーティングを基材に塗布するための他の方法および材料を予測する。
【0051】
ここで図4A〜図4Cを参照すると、第一のヒドロゲル前駆体が多孔性基材の第一の部分に付着させられる順序が示されている。図4Aにおいて、多孔性基材320は、複数の細孔325が規定されている発泡体材料であり、少なくとも第一の部分322および第二の部分324を備える。溶液335(溶媒に溶解した第一のヒドロゲル前駆体を含有する)が、容器319内に用意される。多孔性基材320は、第一の部分322が溶液335に面し、そして第二の部分324が溶液335ではない方に面するように、溶液335の上に配置される。
【0052】
図4Bにおいて、多孔性基材320の第一の部分322は、図4Aにおいて矢印により表わされるように多孔性基材320を溶液335の方向に動かすことによって、溶液335に部分的に沈められる。多孔性基材320の第一の部分322のみが、溶液335と接触し、その結果、充分な量の溶液335が、多孔性基材320に付着して、多孔性基材320の第一の部分322の細孔325を満たし得る。取り出してすぐに、この移植物が乾燥させられ、溶媒を溶液335から除去し、そして図4Cに示されるように、第一のヒドロゲル前駆体330を含む粒子が第一の部分322に堆積する。粒子330は、第一のヒドロゲル前駆体を乾燥形態で含み、そして空間的に、第一の部分322に限られる。
【0053】
図5A〜図5Cにおいて、溶媒に溶解した第二のヒドロゲル前駆体を含有する溶液345が多孔性基材320の第二の部分324に付着させられる順序が示されており、ここで第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子330は、基材320の第一の部分322に予め組み込まれている(図4A〜図4Cを参照のこと)。多孔性基材320は、第二の部分324が溶液345に面し、そして第一の部分322が溶液345ではない方に面するように、溶液345の上に配置される。
【0054】
図5Bに示されるように、多孔性基材320の第二の部分324は、図5Aにおいて矢印により表わされるように多孔性基材320を溶液345の方向に動かすことによって、溶液345に部分的に沈められる。多孔性基材320の第二の部分324のみが溶液345と接触し、その結果、充分な量の溶液345が第二の部分324に付着し得る。取り出してすぐに、移植物が乾燥させられて、第二のヒドロゲル前駆体を含有する第二の粒子340が第二の部分324に堆積する。粒子340は、第二のヒドロゲル前駆体を乾燥形態で含み、そして空間的に、第二の部分324に限られる。図5Cの多孔性基材320は、第一のヒドロゲル前駆体がこの基材の第一の部分に付着し、そして第二のヒドロゲル前駆体がこの多孔性基材の第二の部分に付着し、この基材の第一の部分が、この多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されていることが示されている。
【0055】
代替の実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体は、異なる形態で移植物に付着させられ得る。例えば、図6A〜図6Cにおいて、第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子430が第一の部分422に付着しており、第二の部分424が、支持体429に付着した第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム形成溶液445に面している、多孔性基材が示されている。
【0056】
図6Bにおいて、多孔性基材420の第二の部分424は、図6Aにおいて矢印により示される方向に多孔性基材420を動かすことによって、フィルム形成溶液445と接触させられ、そして/またはフィルム形成溶液445に部分的に沈められる。多孔性基材420の第二の部分424のみがフィルム形成溶液445と接触し、その結果、充分な量の材料445が、第二の部分424に付着し得る。フィルム形成溶液445は、(熱を加えてまたは熱を加えずに)固化させられて、第二の部分424の少なくとも一部分を覆うフィルムを形成する。図6Cの多孔性基材420は、この基材の第一の部分に付着した粒子の形態の第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着したフィルムの形態の第二のヒドロゲル前駆体を有し、この基材の第一の部分がこの多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されていることが示されている。
【0057】
ここで図7A〜図7Bを参照すると、多孔性基材と、第一のヒドロゲル前駆体を含有する多孔性層とが一緒に形成されたものが示されている。図7Aにおいて、容器519は、多孔性基材を形成することになっている第一の溶液525、および第一のヒドロゲル前駆体を含有する第二の溶液535を含み、これらの2つの溶液は、実質的に別々の層のままである。これらの2つの溶液は、当業者に公知である任意の方法を使用して凍結乾燥されて、図7Bに示されるような多孔性基材を形成し、この多孔性基材は、凍結乾燥した第二の溶液535から作製された第二の多孔性層530に接続した、凍結乾燥した第一の溶液525から作製された第一の多孔性基材520を備える。第二の多孔性層530は、第一のヒドロゲル前駆体を含有し、そして第一の部分522を介して第一の多孔性基材520に結合されて、2層の多孔性材料を有する移植物を形成する。
【0058】
図8A〜図8Cにおいて、第二のヒドロゲル前駆体を含有する溶液545が、多孔性基材520の第二の部分524に付着させられる順序が示されており、多孔性基材520は、第一の部分522に結合している、第一のヒドロゲル前駆体を含有する多孔性基材530をすでに有する。多孔性基材520は、第二の部分524が溶液545に面し、そして第一の部分522および第二の多孔性層530が溶液545ではない方に面するように、溶液545の上に配置される。
【0059】
図8Bに示されるように、多孔性基材520の第二の部分524は、図8Aにおいて矢印により表わされるように溶液545の方向に多孔性基材520を動かすことによって、溶媒に溶解した第一のヒドロゲル前駆体を有する溶液545に部分的に沈められる。多孔性基材520の第二の部分524のみが溶液545と接触し、その結果、充分な量の溶液545が第二の部分524に付着し得る。取り出してすぐに、この移植物が乾燥させられ、または乾燥して、溶媒を除去し、そして粒子540を第二の部分524に堆積させる。第二の粒子540は、第二のヒドロゲル前駆体を乾燥形態で含有し、そして空間的に、第二の部分524に限られる。図8Cの多孔性基材520は、この基材の第一の部分に付着した発泡体の形態の第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着した粒子の形態の第二のヒドロゲル前駆体を有し、この基材の第一の部分が、この多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されていることが示されている。
【0060】
代替の実施形態において、図7Bに示されるような多孔性基材は、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム形成材料と合わせられ得る。図9A〜図9Cに示されるように、多孔性基材620は、第一の部分622および第二の部分624を備え、第一のヒドロゲル前駆体を含有する第二の多孔性層630が、第一の部分622において多孔性基材620に接続されている。第二の部分624は、支持体629に付着したフィルム形成溶液645に面することが示されている。フィルム形成材料645は、第二のヒドロゲル前駆体および溶媒を含有する。
【0061】
図9Bにおいて、多孔性基材620の第二の部分624は、図9Aにおいて矢印により表わされる方向に多孔性基材620を動かすことによって、フィルム形成溶液645と接触させられ、そして/またはフィルム形成溶液645に部分的に沈められる。多孔性基材620の第二の部分624のみがフィルム形成溶液645と接触し、その結果、充分な量の材料645が第二の部分624に付着し得る。フィルム形成溶液645は、第二の部分624の少なくとも一部分を覆うフィルムを形成する。図9Cの多孔性基材620は、この基材の第一の部分に付着した発泡体の形態の第一のヒドロゲル前駆体、およびこの多孔性基材の第二の部分に付着したフィルムの形態の第二のヒドロゲル前駆体を有し、この基材の第一の部分が、この多孔性基材の第二の部分から空間的に分離していることが示されている。
【0062】
図4〜図9に示されるような発泡体であるよりもむしろ、多孔性基材は、繊維性構造体であってもよいことが理解されるべきである。従って、ある実施形態において、図10〜図12に概略的に示されるように、多孔性基材は、繊維性構造体(すなわち、製織構造体または不織構造体)であり得る。第一のヒドロゲル前駆体および第二のヒドロゲル前駆体は、発泡体多孔性基材20に関して上で記載されたものと実質的に同じ技術を使用して、繊維性多孔性基材に付着させられ得る。従って、上記発泡体多孔性基材と同様に、多孔性基材が繊維性である場合、第一のヒドロゲル前駆体および/または第二のヒドロゲル前駆体は、例えば、溶液から堆積させられた粒子、フィルム形成溶液を乾燥させることにより形成された非多孔性フィルム、または繊維性多孔性基材の少なくとも一部分に付着した発泡体として、付着させられ得る。例えば、図10に示されるように、移植物710は、複数の細孔725が規定され、第一の部分722および第二の部分724を有する、編成多孔性基材720を備える。乾燥形態の第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子730が、例えば、図4A〜図4Cの上記発泡体多孔性基材320に関して上に示された様式と実質的に類似の様式で、第一の部分722に付着させられる。第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム750が、例えば、図5A〜図5Cの上記発泡体多孔性基材320に関して上に示された様式と実質的に類似の様式で、第二の部分724に付着させられる。移植の際に、第二の部分750は、止血を必要とする組織に付着させられる。組織と接触すると、生理学的流体が移植物710に侵入し、そして矢印Aにより表わされる方向に移動し、これによって、フィルム750と相互作用してフィルム750を液状にし、その後、粒子730に達する。流体が基材720の第一の部分722に向かって滲み込むと、フィルム750の溶液が粒子730と接触し、これらの粒子もまた、生理学的流体により溶解され、そして生理学的流体と混合することが想定される。この混合は、第一の前駆体および第二の前駆体を活性化させ、そしてこれらの前駆体に相互作用および架橋を起こさせて、移植物の止血機能を補助するシールを形成させる。ある実施形態において、この新たに形成されたヒドロゲル/生理学的流体移植物もまた、接着障壁として働く。
【0063】
第一のヒドロゲル前駆体および/または第二のヒドロゲル前駆体は、溶液からではなく、第一のヒドロゲル前駆体および/または第二のヒドロゲル前駆体を含有する融解物から付着させられてもよいことが、さらに想定される。例えば、図11において、移植物810は、第一の部分822および第二の部分824を有する編成多孔性基材820を備え、ここでまた第二の部分824は、第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム850を備える。しかし、この実施形態において、第一のヒドロゲル前駆体830は、溶液からの粒子としてではなく、融解物からのコーティングとして第一の部分822に付着させられる。示されるように、融解物830は、基材820の第一の部分822の繊維の少なくとも一部分を本質的に覆い、一方で、細孔825が、多孔性基材820を通る流体の移動を可能にするために充分に開いたままであることを可能にする。コーティング830が不連続であり得、基材820の残りの部分832がコーティングされなくてもよいことが理解されるべきである。
【0064】
上記のように、多孔性基材は、不織繊維の多孔性基材であり得る。例えば、図12において、移植物910は、第一の部分922および第二の部分924を有する不織多孔性基材920として示され、ここで第一のヒドロゲル前駆体を含有する粒子930が、第一の部分922に付着しており、そして第二のヒドロゲル前駆体を含有するフィルム940が、第二の部分924に付着している。
【0065】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例示するために与えられる。これらの実施例は、説明のみであることが意図され、本開示の範囲を限定するとは意図されない。また、他に示されない限り、部および百分率は、重量に基づく。本明細書中で使用される場合、「室温」とは、約20℃〜約25℃の温度をいう。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
トリリジンの飽和ホウ酸緩衝溶液を調製する。この溶液は、溶液1ミリリットルあたり20.6ミリグラムのトリリジンを含有する。この溶液のpHは、約9.2である。酸化されたセルロースのシートをこの溶液に浸漬し、次いで、乾燥のためにラックに固定する。このラックを真空オーブンに入れる。このオーブンをポンプで減圧して約50mTorrにし、そして約25℃の温度に約3日間維持してその水分レベルを2重量%未満まで減少させる。約15,000の分子量を有する8アームN−ヒドロキシスクシンイミジル官能基化ポリエチレングリコールを、ホットプレートで約50℃で融解する。乾燥したトリリジン含有酸化セルロースシートを、融解したPEG成分と接触させて配置する。冷却後、このPEG成分は、移植物の片面にフィルムを形成する。
【0067】
得られた生成物の端を切って2インチ×2インチの正方形にし、乾燥させ、そして箔容器に包装する。
【0068】
使用において、この箔容器を開封し、そして移植物を、PEGフィルムが創傷に面さないようにして、出血している創傷に貼る。数秒以内に止血が起こる。
【0069】
(実施例2)
コラーゲンの飽和ホウ酸緩衝溶液を調製する。この溶液は、溶液1ミリリットルあたり10ミリグラム〜60ミリグラムのコラーゲンを含有する。この溶液のpHは、約9.2である。酸化されたセルロースのシートをこの溶液に浸漬し、次いで、乾燥のためにラックに固定する。このラックを真空オーブンに入れる。このオーブンをポンプで減圧して約50mTorrにし、そして約25℃の温度に約3日間維持してその水分レベルを2重量%未満まで減少させる。約15,000の分子量を有する8アームN−ヒドロキシスクシンイミジル官能基化ポリエチレングリコールを、ホットプレートで約50℃で融解する。乾燥させたコラーゲン含有酸化セルロースシートを、融解したPEG成分と接触させて配置する。冷却後、このPEG成分は、移植物の片面にフィルムを形成する。
【0070】
得られた生成物の端を切って2インチ×2インチの正方形にし、乾燥させ、そして箔容器に包装する。
【0071】
使用において、この箔容器を開封し、そしてこの移植物を、PEGフィルム面を下にして、軟骨欠損部に付着させる。欠損部に挿入されると、この欠損部の血液および流体が、これらのPEG、コラーゲンおよび塩を濡らす。このPEGフィルムが、この欠損の部位で、この流体により溶解される。この流体が移植物に滲み込んでこの移植物を通って移動すると、この流体は、溶解したPEGをこの移植物に沿って運び、そしてコラーゲンおよび塩と接触させる。これらの塩はpHを上昇させ、求電子性PEGとコラーゲンとの間での反応を誘発し、そしてこのセルロース内でゲルを形成し、その結果、下にある肋軟骨下の骨および隣接する軟骨への、この移植物の接着が起こる。
【0072】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、2種より多くの前駆体が多孔性基材に付着させられて、止血用移植物を形成し得る。別の例として、第一の前駆体および第二の前駆体は、それぞれフィルムとして、多孔性基材に付着され得る。従って、当業者は、特許請求の範囲の趣旨および範囲内で他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0073】
19 容器
20 (多孔性)基材
25 細孔
30 第一のヒドロゲル前駆体
35 溶液
40 フィルム(第二のヒドロゲル前駆体)
110 移植物
120 多孔性基材
130 第一のヒドロゲル前駆体
140 第二のヒドロゲル前駆体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が付着している、多孔性基材;および
該多孔性基材に付着したフィルムであって、第二のヒドロゲル前駆体を含有する、フィルム、
を備える、移植物。
【請求項2】
前記多孔性基材が発泡体である、請求項1に記載の移植物。
【請求項3】
前記多孔性基材が編地である、請求項1に記載の移植物。
【請求項4】
前記多孔性基材が不織布である、請求項1に記載の移植物。
【請求項5】
前記多孔性基材が生体吸収性材料から作製されている、請求項1に記載の移植物。
【請求項6】
前記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製されている、請求項1に記載の移植物。
【請求項7】
前記多孔性基材が酸化されたセルロースから作製されている、請求項1に記載の移植物。
【請求項8】
前記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、請求項1に記載の移植物。
【請求項9】
前記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項10】
生物活性剤をさらに含有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項11】
多孔性基材であって、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が該多孔性基材の第一の部分に付着している、多孔性基材;および
該多孔性基材の第二の部分に付着している第二のヒドロゲル前駆体、
を備え、
該多孔性基材の該第一の部分は、該多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されている、移植物。
【請求項12】
前記多孔性基材が発泡体である、請求項11に記載の移植物。
【請求項13】
前記多孔性基材が編地である、請求項11に記載の移植物。
【請求項14】
前記多孔性基材が不織布である、請求項11に記載の移植物。
【請求項15】
前記多孔性基材が生体吸収性材料から作製されている、請求項11に記載の移植物。
【請求項16】
前記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製されている、請求項11に記載の移植物。
【請求項17】
前記多孔性基材が酸化されたセルロースから作製されている、請求項11に記載の移植物。
【請求項18】
前記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、請求項11に記載の移植物。
【請求項19】
前記第二のヒドロゲル前駆体が発泡体である、請求項11に記載の移植物。
【請求項20】
前記第二のヒドロゲル前駆体がフィルムである、請求項11に記載の移植物。
【請求項21】
生物活性剤をさらに含有する、請求項11に記載の移植物。
【請求項22】
前記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、請求項11に記載の移植物。
【請求項1】
コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が付着している、多孔性基材;および
該多孔性基材に付着したフィルムであって、第二のヒドロゲル前駆体を含有する、フィルム、
を備える、移植物。
【請求項2】
前記多孔性基材が発泡体である、請求項1に記載の移植物。
【請求項3】
前記多孔性基材が編地である、請求項1に記載の移植物。
【請求項4】
前記多孔性基材が不織布である、請求項1に記載の移植物。
【請求項5】
前記多孔性基材が生体吸収性材料から作製されている、請求項1に記載の移植物。
【請求項6】
前記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製されている、請求項1に記載の移植物。
【請求項7】
前記多孔性基材が酸化されたセルロースから作製されている、請求項1に記載の移植物。
【請求項8】
前記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、請求項1に記載の移植物。
【請求項9】
前記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項10】
生物活性剤をさらに含有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項11】
多孔性基材であって、コラーゲンを含有する第一のヒドロゲル前駆体が該多孔性基材の第一の部分に付着している、多孔性基材;および
該多孔性基材の第二の部分に付着している第二のヒドロゲル前駆体、
を備え、
該多孔性基材の該第一の部分は、該多孔性基材の第二の部分から空間的に分離されている、移植物。
【請求項12】
前記多孔性基材が発泡体である、請求項11に記載の移植物。
【請求項13】
前記多孔性基材が編地である、請求項11に記載の移植物。
【請求項14】
前記多孔性基材が不織布である、請求項11に記載の移植物。
【請求項15】
前記多孔性基材が生体吸収性材料から作製されている、請求項11に記載の移植物。
【請求項16】
前記多孔性基材が非生体吸収性材料から作製されている、請求項11に記載の移植物。
【請求項17】
前記多孔性基材が酸化されたセルロースから作製されている、請求項11に記載の移植物。
【請求項18】
前記第一のヒドロゲル前駆体が粒子を構成している、請求項11に記載の移植物。
【請求項19】
前記第二のヒドロゲル前駆体が発泡体である、請求項11に記載の移植物。
【請求項20】
前記第二のヒドロゲル前駆体がフィルムである、請求項11に記載の移植物。
【請求項21】
生物活性剤をさらに含有する、請求項11に記載の移植物。
【請求項22】
前記第一のヒドロゲル前駆体が、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、およびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の塩基性塩をさらに含有する、請求項11に記載の移植物。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−96038(P2012−96038A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241476(P2011−241476)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【出願人】(507156015)コンフルエント サージカル, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【出願人】(507156015)コンフルエント サージカル, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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