説明

正孔注入/輸送層組成物およびデバイス

HIL/HTL用途において使用するための組成物は、非水溶媒に溶けることができる、固有導電性ポリマーと、平坦化剤と、ドーパントとを含む。レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-およびアリール-置換ポリチオフェンのブロックコポリマーを使用することができる。組成物を薄膜へと形成することができる。優れた効率および寿命安定性を達成することができる。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる2005年2月10日に提出された米国仮特許出願60/651,211号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、外部電源によりその励起状態へと転移するときに光を生成する有機小分子またはポリマーを利用する有機エレクトロルミネセントデバイスおよびその組成物に関する。励起状態は、プラスおよびマイナス電荷が対向電極からエレクトロルミネセント材料へと流れるときに形成される。1つの電極とエレクトロルミネセント材料との間に1つの層を形成する正孔注入材料および/または正孔輸送材料は、デバイス(HIL層またはHTL層)の効率を高めることができる。これらのデバイスおよび材料は、例えば、白黒またはカラーフラットパネルディスプレイ、有機系発光ダイオード(OLEDS)、看板、白色照明において関心対象である。
【0003】
デバイスの効率、寿命、同調性および非腐食性、構成要素の良好なプロセス可能性を向上させることを含めて、現存するデバイスの性能を向上させることは非常に重要である。特に、材料においては、有機溶媒から簡単に処理できるとともに、電極上にスピンキャストして滑らかで平坦な表面を有する非常に薄い膜を形成できることが求められる。さらに、寿命安定性、バッチ間再現性、抵抗力制御、これらの特性の組み合わせも非常に重要である。
【0004】
OLED材料および用途は一般にKraft et al., Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 402-428(非特許文献1)に記載されている。1つの報告は、導電性ポリマー系、PEDOTとHIL用途における他のポリマーとの混合において不満足な結果を示した。Elschner et al. (Bayer AG), Asia Display, IDW’01, pages 1427-1430(非特許文献2)を参照されたい。1つの文献は、同様のシステムにおける酸性度に関連する問題について記載している。Gong et al., Applied Physics Letters, 83, no. 1, July 7, 2003, pages 183-185(非特許文献3)を参照されたい。ポリマー発光デバイスはPLEDと呼ばれている。
【0005】
【非特許文献1】Kraft et al., Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 402-428
【非特許文献2】Elschner et al. (Bayer AG), Asia Display, IDW’01, pages 1427-1430
【非特許文献3】Gong et al., Applied Physics Letters, 83, no. 1, July 7, 2003, pages 183-185
【発明の開示】
【0006】
概要
本発明は、特に、有機エレクトロルミネセントデバイスにおける正孔注入層または正孔輸送層として機能することができる組成物について記載する。提供される利点としては、OLEDデバイスにおける良好な寿命および良好な効率が挙げられる。本出願は、組成物、組成物を形成する方法、組成物を使用する方法、および組成物から形成されるデバイスを含んだ。組成物は湿式または乾式であってもよい。コーティングまたは印刷することができ、特定の用途に適した乾燥状態まで乾燥させることができるインク配合物が提供される。
【0007】
1つの態様は、以下の構成要素、すなわち、(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマーと、(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパントと、(iii)合成ポリマーである少なくとも1つの平坦化剤とを含む、正孔注入層または正孔輸送層で使用するための混合組成物であって、該構成要素が、非水溶媒中で溶けることができ、組成物が約200nm厚未満の正孔注入層または正孔輸送層の形態を成すときに適合混合物を形成するように配合される、混合組成物を提供する。
【0008】
他の態様は、以下の構成要素、すなわち、(i)非水溶媒に溶けることができる少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマーと、(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパントと、(iii)非水溶媒に溶けることができる合成ポリマーである少なくとも1つの平坦化剤とを含む正孔注入層または正孔輸送層を含むエレクトロルミネセントデバイスであって、正孔注入層または正孔輸送層が約200nm厚未満である、エレクトロルミネセントデバイスを提供する。
【0009】
1つの態様は、以下の構成要素、すなわち、(i)レジオレギュラー(regioregular)3-置換ポリチオフェンである少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマーと、(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパントと、(iii)合成ポリマーである少なくとも1つの平坦化剤とを含む正孔注入層または正孔輸送層で使用するための混合組成物であって、該構成要素が、非水溶媒中で溶けることができ、組成物が約100nm厚未満の正孔注入層または正孔輸送層の形態を成すときに適合混合物を形成するように配合される、混合組成物を提供する。
【0010】
非水性材料、非酸性材料、調整可能材料は、良好な性能を与えるように配合することができる。材料のpHは、ほぼ中性となることができ、発光ポリマーおよび標準的なITO材料に対して実質的に非腐食性である。有機溶媒系インクは、実質的に水を含有していなくても、向上したプロセス可能性を有することがある。同調性は、異なる色のエミッタおよびエミッタの混合を含む異なる光エミッタと共に必要に応じて使用するために調整できる。酸は使用できるが少量であり、そのため、大きな腐食影響を与えず、酸の腐食作用を高める水の使用を伴なわない。
【0011】
詳細な説明
2005年2月10日に提出された優先権仮出願第60/651,211号は、要約部分、特許請求の範囲、図面、および実施例を含めて、参照により本明細書に組み入れられる。1つの態様は、正孔注入層または正孔輸送層で使用するための混合組成物であって、以下の構成要素のうちの少なくとも1つを含む混合組成物を提供する:(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、(ii)導電性ポリマーまたはコポリマーのための0、1または複数の酸化的あるいは還元的ドーピング材料、および(iii)構成要素が非水溶媒中で溶解でき、かつ組成物が約200nm厚未満、好ましくは100nm厚未満の正孔注入層または正孔輸送層の形態を成すときに構成要素が適合混合物を形成するように配合される0、1または複数のマトリクス要素。
【0012】
他の態様は、正孔注入層または正孔輸送層で使用するための混合組成物であって、以下の構成要素のうちの少なくとも1つを含む混合組成物を提供する:(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための0、1または複数の酸化的あるいは還元的ドーピング材料、および(iii)構成要素が非水溶媒中で溶解でき、かつ組成物が約200nm厚未満、好ましくは100nm厚未満の正孔注入層または正孔輸送層の形態を成すときに構成要素が適合混合物を形成するように配合される0、1または複数の緩衝剤または平坦化剤。
【0013】
本発明は、1つの態様において、導電性のポリマーまたはコポリマー、ドーパント系、および平坦化剤からなり、これらの全てが非水溶媒として形成されかつエレクトロルミネセントデバイスの層として適用されるHIL/HTLシステムも提供する。本発明は、エレクトロルミネセントデバイスを形成する方法およびエレクトロルミネセントデバイスを使用する方法も提供する。非水溶媒の混合物を使用することができる。非導電要素の混合物を使用することができる。
【0014】
1つの態様において、本発明の基本的で新規の特徴は、実質的に水が無く、実質的に酸が無く、実質的に残留イオンまたは金属不純物が無く、あるいは実質的に前述した全てのものが無いように正孔注入層が形成されているという点である。
【0015】
本発明をその様々な態様において実施する際には、以下の技術文献および様々な構成要素の説明を使用できる。最後のリストを含む本明細書の全体にわたって挙げられた参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0016】
Williamsらの2004年9月24日に提出された仮特許出願第60/612,640号(「HETEROATOMIC REGIOREGULAR POLY(3-SUBSTITUTEDTHIOPHENES)FOR ELECTROLUMINESCENT DEVICES」)および2005年9月26日に提出された米国の通常出願第11/234,374号は、ポリマーの説明、図面、および特許請求の範囲を含むそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0017】
Williamsらの2004年9月24日に提出された仮特許出願第60/612,641号(「HETEROATOMIC REGIOREGULAR POLY(3-SUBSTITUTEDTHIOPHENES)FOR PHOTOVOLTAIC CELLS」)および2005年9月26日に提出された米国の通常出願第11/234,373号は、ポリマーの説明、図面、および特許請求の範囲を含むそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0018】
Williamsらの2004年11月17日に提出された仮特許出願第60/628,202号(「HETEROATOMIC REGIOREGULAR POLY(3-SUBSTITUTEDTHIOPHENES)AS THIN FILM CONDUCTORS IN DIODES WHICH ARE NOT LIGHT EMITTING」)および2005年11月16日に提出された米国の通常出願第11/274,918号は、ポリマーの説明、図面、および特許請求の範囲を含むそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
合成方法、ドーピング、および側基を有するレジオレギュラーポリチオフェンを含むポリマー特性は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、McCulloughらに対して付与された米国特許第6,602,974号およびMcCulloughらに対して付与された米国特許第6,166,172号において提供されている。更なる説明は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Richard D. McCulloughによる論文「The Chemistry of Conducting Polythiophenes」(Adv. Mater. 1998, 10, No.2, pages 93-116)およびこの論文で挙げられている参考文献において見出すことができる。当業者が使用できる他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるMcCulloughらによるHandbook of Conducting Polymers(2nd Ed. 1998, Chapter 9)、「Regioregular, Head-to-Tail Coupled Poly(3-alkylthiophene) and its Derivatives」pages 225-258である。この参考文献はまた、29章、823〜846ページで、「Electroluminescence in Conjugated Polymers」を記載しており、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0020】
さらに、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるThe Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Wiley, 1990, pages 298-300には、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(p-フェニレン硫化物)、ポリピロール、およびポリチオフェンを含む導電性高分子が記載されている。この参考文献はまた、ブロックコポリマー形成を含むポリマーの共重合および混合についても記載している。
【0021】
ポリチオフェンは、例えば、Roncali, J., Chem. Rev. 1992, 92, 711;Schopf et al., Polythiophenes:Electrically Conductive Polymers, Springer:Berlin, 1997に記載されている。
【0022】
高分子半導体は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Katzらによる「Organic Transistor Semiconductors」(Accounts of Chemical Research, vol. 34,no. 5, 2001, pages 365-367を含む第359頁)に記載されている。
【0023】
ブロックコポリマーは、例えば、NoshayおよびMcGrathによるBlock Copolymers, Overview and Critical Survey(Academic Press, 1977)に記載されている。例えば、この教科書は、A-Bジブロックコポリマー(第5章)、A-B-Aトリブロックコポリマー(第6章)、および、(AB)n-マルチブロックコポリマー(第7章)について記載しており、これらは、本発明におけるブロックコポリマータイプの基本となり得る。
【0024】
ポリチオフェンを含む更なるブロックコポリマーは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるFrancois et. al., Synth. Met. 1995, 69, 463-466;Yang et al., Macromolecules 1993, 26, 1188-1190;Widawski et al., Nature(London), vol. 369, June 2, 1994, 387-389;Jenekhe et al., Science, 279, March 20, 1998, 1903-1907;Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 6855-6861;Li et al., Macromolecules 1999, 32,3034-3044;Hempenius et al., J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 2798-2804に記載されている。
【0025】
一般的なエレクトロルミネセントデバイスおよび共役ポリマー
本発明は、特に、固有導電性ポリマーまたはコポリマー、ドーパント系、および平坦化剤からなり、これらの全てが非水溶液として形成できかつエレクトロルミネセントデバイスの層として適用できる正孔注入層または正孔輸送層(HILまたはHTLが置き換え可能に使用される)システムを提供する。本発明は、エレクトロルミネセントデバイスを形成する方法およびエレクトロルミネセントデバイスを使用する方法も提供する。
【0026】
エレクトロルミネセントデバイスにおけるこのシステムの使用は、例えば、デバイスのルミネセンスの増大;低い閾値電圧;長い寿命;デバイス製造中における材料および構成要素の容易なプロセス可能性;エレクトロルミネセントデバイスにおいて正孔注入層または正孔輸送層を適用するためにスピンキャスティング技術、ドロップキャスティング技術および印刷技術を使用できる能力;より柔軟なエレクトロルミネセントデバイスを作ることができる能力;軽量なエレクトロルミネセントデバイスを作ることができる能力;および低コストなエレクトロルミネセントデバイスを作ることができる能力などの幾つかの望ましい特性を与える。
【0027】
本発明の目的のため、エレクトロルミネセントデバイスは、電流を電磁放射線に変換する電気化学デバイスであってもよい。そのようなデバイスの価値は、それが低い電圧および最小の放射熱で光を生成する効率的な方法であるという点である。これらのデバイスは、現在、多くの家庭用電化製品において使用されている。一般的に言えば、これらのデバイスは有機発光ダイオードまたはOLEDと呼ぶことができる。
【0028】
OLEDは、最初、1990年代の初期に設計され、比較的簡単な構造に基づいており、エレクトロルミネセント(EL)ポリマーの薄層は一対の電極の間に封入されていた((a)Burroughes, J. H.;Bradley, D. D. C.;Brown, A. R.;Marks, R. N.;MacCay, K.;K. Friend, R. H.;Burn, P. L.;Holmes, A. B. Nature 1990, 347, 539. (b)Friend, R. H.;Bradley, D. D. C.;Holmes, A. B. Physics World 1992, 5, 42)1。本発明は理論によって制限されないが、電圧が電極に印加されるときに、プラス(アノード)電極およびマイナス(カソード)電極は、正孔および電子のそれぞれのEL共役ポリマー中への注入を行なうことができる。ELポリマー層において、電子および正孔は、印加された電界内で互いの方に向かって移動するとともに、組み合わさって、光子(一般に、可視範囲の波長を伴う)を発することにより発光して基底状態へと緩和することができる束縛励起状態である励起子を形成する。このプロセスはエレクトロルミネセンスとも呼ばれている。しかしながら、これらの初期の比較的簡単なデバイスは特に効率的ではない。すなわち、これらのデバイスは、注入される多数の電荷に対して僅かな数の光子しか発しない。OLED技術が発達するにつれて、電極/ポリマー界面のよりよい理解が、新たな更に高性能でかつ効率的なデバイスの開発をもたらしてきた。
【0029】
現在のELデバイスは、一般に、図1に示されるように5つの構成要素、すなわち、アノードと、正孔注入/輸送層と、ELポリマーを含む電子輸送層(ETL)と、調整層と、カソードとを含む。典型的な材料が図1に示されている。
【0030】
例えば、アノード、一般的には約100nm厚の高仕事関数材料は、プラスチック基板上またはガラス基板上にコーティングされたインジウム酸化スズ(ITO)によって形成することができる。ITO基板組成物は、光学的に透明であり、したがって、デバイスからの光の放射を可能にする。基板に対してITOを付加するために使用される蒸着方法により、デバイスの性能を制限するかまたは悪化させることになりかねない粗い不均一な表面が得られる。
【0031】
カソードは、電子を簡単に注入できるようにカルシウムやアルミニウムのような低仕事関数材料によって形成することができる。カソードは少なくとも100〜200nm厚にすることができる。
【0032】
カソードは、数オングストローム厚の調整層、例えばカソードの寿命および性能を高めるアルカリ金属フッ化物(例えば0.3〜0.7nmのLiF)でコーティングすることができる。幾つかの場合では、カソードをプラスチック基板またはガラス基板などの支持面上にコーティングすることもできる。
【0033】
従来のOLEDは、アノード面を平坦化しかつアノードからELポリマーへの正電荷(すなわち「正孔」)の移送を容易にする1つの層をITOとELポリマーとの間に含む。この層は、一般的には約60〜100nmの厚さであり、正孔注入層(HIL)または正孔輸送層(HTL)と称され得、共役導電性ポリマーまたは小さな有機分子によって形成することができる。
【0034】
EL層またはETL層は、約100nmの厚さにすることができ、多くの場合、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリ(フルオレン)材料、または小さな分子と有機遷移金属の複合体を含む。正孔と電子とが組み合わさると、これらは、一般的には光子を発することにより基底状態へと緩和して戻る励起子をELポリマー中に形成する。これらの材料は1.5〜3.0eVの伝導帯エネルギを有する。そのため、光は、一般的には可視範囲のスペクトルにある。したがって、これらの材料は、効率性に関して、および印加された電界内で電子と正孔とが結合するときにこれらの材料が光子を発する波長に関して選択される。
【0035】
有機エレクトロルミネセントデバイスは様々な形態をとることができ、各形態は、積極的に先端研究および/または商品化が行なわれている。有機発光ダイオードの広範な技術について触れるためにしばしば使用される用語であるOLEDは、具体的には、一般に真空蒸着されるETLとして小さい有機分子を組み込むLEDにおいても使用される。一般に溶解処理される(インクに類似している)エレクトロルミネセントポリマーを含むLEDは、通常、PLED(ポリマー発光ダイオード)と称される。どの説明にも都合よく該当しない他の新規のデバイスも設計されている。例えば、EL材料と固体電解質との混合物は発光電気化学セル(LEEC)を形成する。用途の大部分において、EL層は、赤、緑、および青などの特定の色を発するように設計することができ、これらの色は、その後、組み合わせられ、ヒトの眼で見える色のフルスペクトルを形成することができる。さらに、EL層は、白色照明用途のために、またはフルカラーディスプレイ用途においてカラーフィルタ処理されるべく、白色光を発するように設計することができる。
【0036】
OLEDは、フルカラーまたはモノクロのフラットパネルディスプレイを形成するために組み合わせることができる。これらは、互いに直角に堆積されるアノード材料とカソード材料とのストリップ間にHILおよびETLが挟まれるパッシブマトリクスディスプレイであってもよい。1つのアノードストリップと1つのカソードストリップを通じて流れる電流は、その交点に、ディスプレイ中の1つのピクセルとして光を発せさせる。OLEDは、各ピクセルにトランジスタを有する回路のバックプレーンがピクセル電流にしたがってそれぞれの個々のピクセルの輝度を制御するアクティブマトリクスディスプレイであってもよい。アクティブマトリクスディスプレイは、パッシブマトリクスディスプレイと同様、一般に、光が基板を通じて下方へ抜け出る「ボトム発光」デバイスである。アクティブマトリクスディスプレイにおいて、光はまた、トランジスタ回路を通過するか、またはトランジスタ回路の傍を通らなければならない。光がデバイスのカソードを通じて抜け出る、すなわち、トランジスタ回路を含む層および基板の反対方向で抜け出る、代わりの「トップ発光」構造も開発されている。
【0037】
OLED性能測定
エレクトロルミネセントデバイスの性能は、発せられる光エネルギの強度(例えば、1平方メートル当たりのカンデラ、Cd/m2)、電流が光に変換される効率(例えば、1ワット入力当たりのルーメン出力、lumens/W)の測定によって、およびデバイスの寿命(例えば数千時間)によって決定することができる。発せられる光の色は、これらのデバイスの設計において重要な検討材料ともなり得る。
【0038】
外部量子効率(ηEL)、すなわち、OLEDの1注入電子または正孔当たりで発せられる光子の数は、幾つかの要因、すなわち、光ルミネセンス(PL)効率、光アウトカップリング(ξ)、一重項-三重項比(rST)、再結合効率(γ)、および荷電平衡によって影響される。例えば、標準的なデバイス構造および黄色発光ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)ポリマーは、4%の外部効率をもってこれらの要因を生み出すことが分かってきている。高い効率を得るためにこれらの要因を最適化することは、OLED製造メーカにおける主要目的である。
【0039】
最近の研究は、発光π共役ポリマーを用いて構成される理想的な高輝度ELデバイスにおいて高いEL効率(ηEL)を得ることができる(25%より多いエネルギから光への変換)ことを示唆している。長いポリマー鎖を有するポリマー(高分子量)は、50%程度までパーセンテージを増大させることができた(Shuai, Z.;Beljonne, D.;Silbey, R. J.;Bredas, J. L. Phys. Rev. Lett. 2000, 84, 131)2。OLEDの外部量子効率ηELを決定するための理論的な方程式は以下の通りである。
ηEL=ξγrSTηPL (方程式1)
ここで、ξはアウトカップリング効率であり、γは再結合効率であり、rSTは再結合荷電粒子から形成される三重項励起子(TE)に対する一重項励起子(SE)の比率であり、ηPLは光ルミネセンス(PL)量子収量である。この方程式を更に解明するため、次に、各パラメータについて簡単に説明する(Shinar, J. Organic Light-Emitting Devices, Springer-Verlag New-York, Inc. 2004, 30)3
【0040】
アウトカップリング効率ξ(すなわち、デバイスの前面から発せられる光子の割合)は、エミッタ層nの屈折率に依存しており、A/n2に等しい。ここで、等方性ダイポールおよび面内ダイポールのそれぞれにおいて、A?0.75±0.1および1.2±0.1である。大きな屈折率のエミッタにおいて、およびカソードリフレクタの光学干渉に供されない等方性ダイポールにおいて、ξは約0.5/n2である(Kim, J.-S.;Ho, P. K. H.;Greenham, N. C.;Friend, R. H. J. Appl. Phys. 2000, 88, 1073)4
【0041】
再結合効率γは、単に、互いに組み合わさる電子および正孔の割合の指標である。再結合効率は、正孔および電子注入間のバランスの指標として説明することもでき、≦1の値を有する。これまで研究された比較的効率のよいOLEDにおいては再結合効率が1に近いということが論じられてきた(Kim, J.-S.;Ho, P. K. H.;Greenham, N. C.;Friend, R. H. J. Appl. Phys. 2000, 88, 1073)4。この要因は、様々な層の組成および厚さを変えることにより、およびこれらの変化に対するI(V)曲線およびIEL(V)曲線の応答をモニタすることにより最適化される。大部分のキャリア(通常は正孔)の強い注入により、効率が低下する。したがって、注入制限電流方式で作動するデバイスは非常に効率が高いと見なされる。
【0042】
蛍光発光ポリマーは光放射において1つのSEを必要とする。ポラロン対の再結合から形成されるTEに対するSEのrST比率は、スピン統計から決定され、0.25に等しい。しかしながら、前述したように、最近の研究は、比率が理論的に予測されたものよりもかなり高くなる可能性があることを示唆している(Shuai, Z.;Beljonne, D.;Silbey, R. J.;Bredas, J. L. Phys. Rev. Lett. 2000, 84, 131)2
【0043】
各SEは、蛍光を発することができるか、または非放射性プロセスによって減衰する可能性がある。これは、非放射性減衰経路が多く存在する際には低いPL量子収量ηPLによって捕らえられる。多くの発光材料において、PL量子収量ηPLは、溶液中でほぼ100%に達するが、濃度が増大するにつれて降下する。これは「濃度消光」として公知のプロセスである。PPV等の発光(LE)ポリマーにおいては、ηPLが20%を越え、ジフェニル置換ポリアセチレンでは60%程度になる場合がある(Gontia, I.;Frolov, S. V.;Liess, M.;Ehrenfreund, E.;Vardeny, Z. V.;Tada, K.;Kajii, H.;Hidayat, R.;Fujii, A.;Yoshino, K.;Teraguchi, M.;Masuda, T. Phys. Rev. Lett. 1999, 82, 4058)5
【0044】
効率は重要であるが、PLEDの商品化のための他の重要な問題は、それらの長期にわたる安定性または寿命である。これは、発光材料、デバイスの安定性を向上させることにより(例えば、寿命は、カソードのタイプに大きく依存する)、および/または処理条件を向上させることにより高めることができる。
【0045】
正孔注入技術
将来有望な進歩はあるものの、市販のLEDの性能は、様々な市場で広範囲に及ぶ商品化を引き起こすレベルには未だ達していない。効率向上、寿命の延長、および閾値電圧の低下におけるHILの役割は、商業上のの飛躍的進歩における重要な要因となり得る。OLEDの機能におけるHILの目的は、特に、(a)アノードから発光層への正孔の効率的な注入および輸送をこれらの2つの層間のエネルギギャップを埋めることにより可能にすること(Shinar, J. Organic Light-Emitting Devices, Springer-Verlag New-York, Inc. 2004, 9)3、(b)再結合(γ)を伴うことなくアノードへ電子が流入しないようにすることおよび発光層から電子が流出しないようにすること(Kraft, A.;Grimsdale, A. C.;Holmes, A. B. Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 403)6、(c)ITOアノードからELポリマーへの酸素拡散をブロックするとともに、分解酸化を防止すること(Shinar, J. Organic Light-Emitting Devices, Springer-Verlag New-York, Inc. 2004)3、ならびに(d)アノード表面を平坦化して、デバイス寿命および効率を低下させる層間の短絡を防止すること(de Kok, M.M.;Buechel, M.;Vulto, S. I. E.;van de Weijer, P.;Meulenkamp, E. A.;de Winter, S. H. P. M.;Mank, A. J. G.;Vorstenbosch, H. J. M.;Weijtens, C. H. L.;van Elsbergen, V. Phys. Stat. Sol. 2004, 201, 1342)7である。
【0046】
したがって、効率的なHILは、正孔および電子を更に均一に発光層中に凝縮させることができ、低い電力入力レベルでEL層における再結合を最大にするとともに、前述した殆どのカテゴリーにおいてあるいは全てのカテゴリーにおいてデバイス性能を高める。良好に付加された膜の高密度膜構造および形態は、EL/HIL界面への正孔移動の均一な伝導経路を提供し、これにより、ターンオン電圧を減少させることができるとともに、優れた発光性能を得ることができる(Chen, S.;Wang, C. Appl. Phys. Lett. 2004, 85, 765)8
【0047】
市販のHILは、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸塩(PEDOT-PSS)(de Kok, M.M.;Buechel, M.;Vulto, S. I. E.;van de Weijer, P.;Meulenkamp, E. A.;de Winter, S. H. P. M.;Mank, A. J. G.;Vorstenbosch, H. J. M.;Weijtens, C. H. L.;van Elsbergen, V. Phys. Stat. Sol. 2004, 201, 1342)7およびポリ(アニリン):ポリスチレンスルホン酸塩(PANI-PSS)および小分子アリールアミン(Shirota, Y. K., Y.;Inada, H.;Wakimoto, T.;Nakada, H.;Yonemoto, Y.;Kawami, S.;Imai, K.;Appl. Phys. Lett. 1994, 65, 807)9(例えば、N, N’-ジフェニル-N, N’-ビス(1-ナフチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(NPB))を含む。これらの技術は、OLEDデバイス性能および寿命に対して何らかのプラスの影響を与える。これは、限られた時間において、これらの技術がITOからの偶発的な酸素拡散による酸化からEL層を保護するからである。さらに、これらの技術はITO表面を平坦化し、それにより、デバイスの短絡が排除される。しかしながら、これらをHILとして使用することに対しては、最終的に性能、寿命を制限しかつOLEDの広範囲に及ぶ商品化を妨げる著しい欠点がある。これらの制限としては以下を挙げることができる:(a)PEDOT-PSSおよびPANI-PSSは、溶媒系プロセスのタクトタイムの15倍タクトタイムを増大させるゆっくりとした乾燥プロセスを必要とする水分散液である(Book, K. B.;Elschener, A.;Kirchmeyer, S. Organic Electronics 2003, 4, 227)10。さらに、ELポリマーおよびカソードの酸化により残留水がOLED劣化を促進させる場合がある(Kugler, T. ;Salaneck, W. R. ;Rost, H.;Holmes, A. B. Chem. Phys. Lett. 1999, 310, 391)11。(b)PEDOT-PSSは、OLEDデバイス中に堆積される際にガラス基板を湿らせるためにバインダを必要とする(Book, K. B.;Elschener, A.;Kirchmeyer, S. Organic Electronics 2003, 4, 227)10。(c)PEDOT-PSSおよびPANI-PSSの両方は、本質的にドープされ、酸化状態の非常に限られた維持可能性を与える。(d)加えて、PEDOT-PSSおよびPANI-PSSなどの従来のHILは本質的に酸性であり、それにより、ITOが劣化してインジウムを正孔輸送層中へ浸出させる((a)de Jong, M. P.;de Voigt, M. J. A.;Appl. Phys. Lett. 2000, 77, 2255.(b)Schlatmann, A. R. ;Floet, D. W.;Hilberer, A.;Garten, F.;Smulders, P. J. M.;Klapwijk, T. M.;Hadziioannou, G. Appl. Phys. Lett. 1996, 69, 1764)12。(e)高価な真空蒸着プロセスによってアリールアミンを材料に対して付加しなければならない(Shirota, Y. K., Y.;Inada, H.;Wakimoto, T.;Nakada, H.;Yonemoto, Y.;Kawami, S.;Imai, K.;Appl. Phys. Lett. 1994, 65, 807)9。(f)N, N’-ジフェニル-N, N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)などのアリールアミンは、形態安定性が乏しい傾向があり、ITO表面を適切に平坦化しない。(g)ポリカーボネートなどのポリマー中でアリールアミンを分散させて形態安定性を高めかつ膜形成を促進させることができるが、正孔輸送効率が大幅に減少される(Redecker, M. B.;Inbasekaran, M.;Wu, W, W.;Woo, E. P. Adv. Mater. 1999, 11, 241)13。これは、本質的に有効な正孔導体である高分子材料が、正孔輸送材料として小分子を使用する場合に対し劇的な向上であることを示している。
【0048】
エレクトロルミネセントデバイスにおける次世代のp型ポリマー系HILは、向上した特性を示す必要がある。これらのシステムは、中性状態においてこれらのシステムが一般的な有機溶媒中に溶けることができかつスピンコーティング技術、ドロップキャスティング技術、浸漬コーティング技術、溶射技術、および印刷技術(インクジェット、オフセット、および転写コーティングなど)により短いタクトタイムで簡単に処理できるという点で利点をもたらすことができる。これらのHILシステムは、フレキシブルコンピュータスクリーン、フラットスクリーンディスプレイ、および屋外広告として有機エレクトロルミネセントデバイスにおける新たな用途を開く広域フォーマットで処理することができる。これらの材料は、中性状態で製造されるため、処理した後に用途に適するレベルまで酸化することができる。これは、デバイス設計において更に大きな自由度を与える。ポリマー系材料は、本明細書において更に説明する性能における幾つかの他の利点も与える。
【0049】
HILシステム
本発明においては、システムの正孔注入要素として機能するICPセグメントを含む固有導電性ポリマー(ICP)またはオリゴマーまたはコポリマーと、正孔注入要素を希釈してHILのバルクを形成する平坦化剤と、正孔注入要素を酸化して、システムにおける正孔注入を抑えること(および、隣接するデバイス間で電流フローまたは「クロストーク」を防止すること)が最適となるように正孔注入要素の導電性を調整するドーピング物質とを含むHILシステムが提供される(Gong, X. M. D.;Moses, D.;Heeger, A. J.;Liu, S.;Jen, K. Appl. Phys. Lett. 2003, 83, 183)14。平坦化剤は、HILの光吸収度を減少させるのに役立つこともでき、それにより、それが適用されるOLEDの効率が高められる。更に、前述したHILシステムは、ITO表面を滑らかにする組織化マトリクスまたは超分子骨格として機能することができ、それにより、図2に典型的に示されるようにデバイス短絡が排除される。これらの構成要素の全ては、HILシステムをOLEDデバイスで適用できるようにする非水溶媒中に溶けることができる。
【0050】
特に、1つの態様は、少なくとも1つの以下の構成要素を含む正孔注入層または正孔輸送層において使用するための混合組成物を提供する:
(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパント、および
(iii)少なくとも1つの平坦化剤、
ここで、構成要素は、非水溶媒中で溶けることができ、組成物が約100nm厚未満、特に約2nm〜約100nm厚の正孔注入層の形態を成すときに適合混合物を形成するように配合される。
【0051】
組成物は、例えば、構成要素の量を変えること、異なる構造タイプの組み合わせを変えること、異なる混合条件を使用すること、異なる溶媒を使用すること、異なる膜形成条件を適用すること、異なる浄化方法を使用することなどを含めて、当技術分野において公知の方法により配合物へと配合することができる。
【0052】
混合物は、それが過度の相分離によって特徴付けられないときに適合している可能性があり、正孔注入層として機能できる機能的に有用で機械的に安定した膜を形成する。適合混合物は当技術分野において公知である。例えば、米国特許第4,387,187号;第4,415,706号;第4,485,031号;4,898,912号;4,929,388号;第4,935,164号;および第4,990,557号を参照されたい。適合混合物は、混和性混合物である必要はないが、有用な機能を与えるために十分に混合されて安定しており、特に例えば約2nm〜約100nmの薄膜形態を成している。混合方法は、超音波処理または攪拌による、ナノサイズ粒子(一般的には、数十〜数百ナノメートル)へと分解される中性形態または酸化形態の予め溶解された導電ポリマーの、従来のポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニルアセテート)(PVA))との溶液混合を含んでいてもよい。そのような混合物は、安定したポリマーマトリクス溶液の膜形成サブミクロン粒子の細かい分散を提供する。膜を調製し、スピンコーティングにより、適合性について解析することができる。
【0053】
本発明において、ICPおよび平坦化剤は、ブロックコポリマーを含むコポリマーとして共有結合により結合させることができる。コポリマー構造の幾つかの例が図3に示されている。この態様においては、正孔注入層における使用のために、以下の構成要素のうちの少なくとも1つを含む組成物が提供される:
(i)平坦化剤に対して共有結合する、少なくとも1つの固有導電性ポリマー、および
(ii)導電性ポリマーのための少なくとも1つのドーパント、
ここで、構成要素は非水溶媒中で溶けることができ、組成物は、約2nm〜約100nm厚の正孔注入層の形態を成している。
【0054】
本発明において、HILシステムは、スピンコーティング、ドロップコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティングによって、またはインクジェット印刷、オフセット印刷などの印刷方法によって、あるいは、転写プロセスによって付加することができる。例えば、インクジェット印刷は、OtsukaおよびHebnerらに対して付与された米国特許第6,682,175号(Applied Physics Letters, 72, no.5, February 2, 1998, pages 519-521)に記載されている。
【0055】
本発明においては、厚さが約10nm〜約50μm、典型的には厚さが約50nm〜約1μmの範囲であるHILシステムの膜としてのHILを提供することができる。他の態様においては、厚さを約10nm〜約500nmにすることができ、特に約10nm〜約100nmにすることができる。
【0056】
本質的導電性ポリマー
本質的または固有導電性ポリマー(ICP)は、それらの共役骨格構造に起因して幾つかの条件下で高い導電性を示す有機ポリマーである(従来の高分子材料の導電性に対して)。正孔または電子の導体としてのこれらの材料の性能は、それらが酸化されるかまたは還元されるときに高まる。ICPの酸化(または還元)が低いと、プロセスはしばしばドーピングと称され、電子は、ラジカルカチオン(またはポラロン)を形成する価電子帯の最上位から除去される(あるいは、伝導帯の最下位に加えられる)。ポラロンの形成は、幾つかの単量体単位にわたって部分的な非局在化を形作る。更なる酸化時には、他の電子を別個のポリマーセグメントから除去することができ、それにより、2つの独立したポラロンが生じる。あるいは、不対電子を除去して、ジカチオン(またはバイポラロン)を形成することができる。印加磁場内において、ポラロンおよびバイポラロンの両方は、移動可能であるとともに、二重結合および単結合の再配列によってポリマー鎖に沿って移動できる。さらに、酸化状態におけるこの変化により、新たなエネルギ状態が形成される。このエネルギレベルは価電子帯中の残存電子の一部にアクセスでき、ポリマーが導体として機能できる。この共役構造の度合いは、半導体の平面構造を形成できるポリマー鎖の能力に依存している。これは、リング間からの共役がπ軌道の重なりに依存しているからである。特定のリングが平面性からねじられる場合には、重なり合いを生じることができず、共役バンド構造が乱される可能性がある。何らかの小さなねじれは、チオフェンリング間の重なり度合いがそれらの間のねじれ角のコサインとして変化するため、有害ではない。
【0057】
有機導体としての共役ポリマーの性能は、半導体のポリマーの形態にも依存し得る。電子特性は、導電性およびポリマー鎖同士の鎖間電荷輸送に依存し得る。電荷輸送のための経路は、ポリマー鎖に沿うことができるか、または隣接する鎖間に存在することができる。鎖に沿う輸送は、リング間の二重結合性の大きさに対する電荷輸送部分の依存性に起因して平面骨格構造により促進させることができる。鎖間のこの伝導メカニズムは、π積層と呼ばれる平面のポリマーセグメントの積層、または励起子あるいは電子が脱離している鎖に近接する他の鎖への空間または他のマトリクスを通り抜けるあるいは「飛び越える」ことができる鎖間ホッピングメカニズムを伴うことができる。したがって、半導体のポリマー鎖の順序付けを促すことができるプロセスは、導電ポリマーの性能を高めるのに役立つことができる。ICPの薄膜の吸光特性が半導体で生じるπ積層の増大を反映することは周知である。
【0058】
本発明においては、OLEDまたはPLED中にHIL材料としてICPを含むHILシステムが提供される。この用途におけるICPの適した例としては、レジオレギュラーポリ(3-置換チオフェン)およびその誘導体、ポリ(チオフェン)またはポリ(チオフェン)誘導体、ポリ(ピロール)またはポリ(ピロール)誘導体、ポリ(アニリン)またはポリ(アニリン)誘導体、ポリ(フェニレンビニレン)またはポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)またはポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(ビス-チエニレンビニレン)またはポリ(ビス-チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)またはポリ(アセチレン)誘導体、ポリ(フルオレン)またはポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(アリレン)またはポリ(アリレン)誘導体、あるいは、ポリ(イソチアナフタレン)またはポリ(イソチアナフタレン)誘導体が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0059】
ポリマーの誘導体は、基本ポリマーの本質的な骨格構造を保持するが基本ポリマーにわたって構造的に修飾されるポリ(3-置換チオフェン)などの修飾ポリマーであってもよい。誘導体は、基本ポリマーと共にグループ化して、ポリマーの関連ファミリーを形成することができる。誘導体は、一般に、基本ポリマーの導電性などの特性を保持する。
【0060】
米国特許第6,824,706号および米国特許出願第2004/0119049号(Merck)は、本発明で使用できる電荷輸送材料についても記載しており、これらの文献はそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0061】
本発明において、これらの材料のコポリマーは、レジオレギュラーポリ(3-置換チオフェン)またはその誘導体、ポリ(チオフェン)またはポリ(チオフェン)誘導体、ポリ(ピロール)またはポリ(ピロール)誘導体、ポリ(アニリン)またはポリ(アニリン)誘導体、ポリ(フェニレンビニレン)またはポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)またはポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(ビス-チエニレンビニレン)またはポリ(ビス-チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)またはポリ(アセチレン)誘導体、ポリ(フルオレン)またはポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(アリレン)またはポリ(アリレン)誘導体、あるいは、ポリ(イソチアナフタレン)またはポリ(イソチアナフタレン)誘導体、および、CH2CHAr(Ar=任意のアリールまたは官能基を有するアリール基)、イソシアン酸塩、エチレンオキシド、共役ジエン、CH2CHR1R(R1=アルキル、アリール、またはアルキル/アリール官能基、およびR=H、アルキル、Cl、Br、F、OH、エステル、酸またはエーテル)、ラクタム、ラクトン、シロキサン、およびATRPマクロイニシエータなどのモノマーから形成されるポリマーからなるセグメントなどの固有導電性ポリマー(ICP)として規定される材料のうちの一つまたは複数を組み込むブロックコポリマー、交互コポリマー、グラフトコポリマー、グラジエントコポリマー、およびランダムコポリマーであってもよい。
【0062】
本発明において、コポリマーは、レジオレギュラーポリ(3-置換チオフェン)またはその誘導体、ポリ(チオフェン)またはポリ(チオフェン)誘導体、ポリ(ピロール)またはポリ(ピロール)誘導体、ポリ(アニリン)またはポリ(アニリン)誘導体、ポリ(フェニレンビニレン)またはポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)またはポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)またはポリ(アセチレン)誘導体、ポリ(フルオレン)またはポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(アリレン)またはポリ(アリレン)誘導体、あるいは、ポリ(イソチアナフタレン)またはポリ(イソチアナフタレン)誘導体、ならびに一つまたは複数の共役単位を含むランダムなあるいは明確に定義されているコポリマーとの一つまたは複数の官能基を有するICPポリマーまたはオリゴマーのコポリマーを含むブロックなどの固有導電性ポリマー(ICP)のランダムなあるいは明確に定義されているコポリマーとして提供することができる。チオフェン誘導体のレジオレギュラーコポリマーの場合、コモノマーは、アルキル、アリール、アルキル-アリール、フルオロ、シアノ、または置換アルキル、アリールあるいはアルキル-アリール官能基をチオフェンリングの3-または4-位置のいずれかに含んでいてもよい。
【0063】
レジオレギュラリティの度合いは、例えば、約90%以上、あるいは、約95%以上、あるいは、約98%以上、あるいは、約99%以上であり得る。レジオレギュラリティの度合いを測定するために、例えばNMRなどの当技術分野において公知の方法を使用できる。
【0064】
マトリクス要素または平坦化剤
本発明では、正孔注入層または正孔輸送層のための平坦化などの必要とされる特性を与えるのに役立つマトリクス要素を使用することができる。平坦化剤を含むマトリクス要素は、正孔注入要素と混合されると、OLEDデバイス内のHILまたはHTL層の形成を容易にする。マトリクス要素はまた、HILシステムを適用するために使用される溶媒に溶けることができる。平坦化剤は、例えば、ポリ(スチレン)またはポリ(スチレン)誘導体、ポリ(ビニルアセテート)またはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)またはその誘導体、ポリ(エチレンコビニルアセテート)、ポリ(ピロリドン)またはその誘導体(例えば、ポリ(1-ビニルピロリドンコビニルアセテート))、ポリ(ビニルピリジン)またはその誘導体、ポリ(メチルメタクリレート)またはその誘導体、ポリ(ブチルアクリレート)またはその誘導体などの有機ポリマー等のポリマーまたはオリゴマーを含んでいてもよい。より一般的には、平坦化剤は、CH2CHAr(Ar=任意のアリールまたは官能基を有するアリール基)、イソシアン酸塩、エチレンオキシド、共役ジエン、CH2CHR1R(R1=アルキル、アリール、またはアルキル/アリール官能基、およびR=H、アルキル、Cl、Br、F、OH、エステル、酸またはエーテル)、ラクタム、ラクトン、シロキサン、およびATRPマクロイニシエータなどのモノマーから形成されるポリマーまたはオリゴマーを含み得る。
【0065】
複数の非導電性ポリマーを配合物中に使用することができる。
【0066】
本発明において、平坦化剤および正孔注入要素は、本明細書において説明した組成に類似する組成を有する非共役セグメントおよびICPセグメントを含むコポリマーによって表わすことができる(描かれた構造例について図3を参照されたい)。
【0067】
本発明において、平坦化剤はまた、適用溶媒に溶けることができるが溶媒の除去時に蒸発しない「一過性でない」小分子であってもよい。平坦化剤は、アルキル、アリール、または官能基を有するアルキル、アリール特徴を有していてもよい。
【0068】
HIL層に対する滑らかな表面の付与を容易にすることに加えて、マトリクス要素または平坦化剤は、抵抗性制御および透明性制御などの他の有用な機能を与えることもできる。平面性は、AFM測定を含む当技術分野において公知の方法によって決定できる。
【0069】
ドーピング
HIL用途における固有導電性ポリマーの使用は、性能を高めることができる所望の導電状態を得るためにポリマーの制御された酸化すなわち「ドーピング」を伴う。酸化時、電子が価電子帯から除去される。酸化状態におけるこの変化により、新たなエネルギ状態が形成される。このエネルギレベルは価電子帯中の残存電子の一部にアクセスでき、ポリマーが導体として機能できる。
【0070】
導電性薄膜用途において、導電率は約1×10-8S/cm〜約104S/cmの範囲をとることができるが、最も一般的には、導電率は約1S/cm〜約500S/cmの範囲をとる。導電性薄膜の重要な特徴は、導電性薄膜が通常の使用条件下で数千時間にわたってそれらの導電率を保持しかつ高い温度および/または湿度で適切なデバイス応力試験を満たすという点である。これにより、活発な電荷移動性の動作範囲が促進され、ドーピング種の量および同一性を制御することにより特性を調整でき、ICPの一次構造の変化によりこれらの特性を調整できる能力が補完される。
【0071】
導電特性を調整するために使用されてもよい多くの酸化剤が存在する。臭素、ヨウ素、および塩素などのハロゲン分子は幾つかの利点を与える。ポリマー膜をドーパントに対して曝す量を制御することにより、結果として得られる薄膜の導電率を制御できる。ハロゲンは、有機溶媒中でのそれらの高い蒸気圧および溶解度により、気相内または溶液中で適用されてもよい。ポリマーの酸化は、中性状態の溶解度に比べて材料の溶解度を著しく減少させる。それにもかかわらず、調製されてデバイス上にコーティングされる溶液もある。
【0072】
他の例としては、鉄三塩化物、金三塩化物、ヒ素ペンタフッ化物、次亜鉛素酸塩のアルカリ金属塩、ベンゼンスルホン酸およびその誘導体、プロピオン酸、および他の有機カルボン酸およびスルホン酸などのプロトン酸、NOPF6またはNOBF4などのニトロソニウム塩、またはテトラシアノキノン、ジクロロジシアノキノンなどの有機酸化剤、およびヨードシルベンゼンおよびヨードベンゼンジアセテートなどの超原子価ヨウ素酸化剤が挙げられる。ポリマーはまた、ポリ(スチレンスルホン酸)などの酸または酸化力のあるあるいは酸性の機能を含むポリマーの付加によって酸化されてもよい。
【0073】
酸化還元反応によってICPをドープするために、鉄三塩化物、金三塩化物、およびヒ素ペンタフッ化物などの幾つかのルイス酸酸化剤が使用されてきた。これらのドーパントは、結果として安定した導電膜を形成すると報告されてきた。これは、主に、金属塩化物の溶液に対するキャスト膜の処理によって達成されるが、ドープされた膜のキャスティングが可能であるにもかかわらず殆ど報告されていない。
【0074】
ベンゼンスルホン酸およびその誘導体、プロピオン酸、他の有機カルボン酸およびスルホン酸などのプロトン性の有機酸および無機酸、ならびに硝酸、硫酸、および塩酸などの鉱酸は、ICPをドープするために使用できる。
【0075】
NOPF6およびNOBF4などのニトロソニウム塩は、不可逆酸化還元反応で安定した一酸化窒素分子を生成する反応によりICPをドープするために使用できる。
【0076】
テトラシアノキノン、ジクロロジシアノキノンなどの有機酸化剤、ならびにヨードシルベンゼンおよびヨードベンゼンジアセテートなどの超原子価ヨウ素酸化剤もICPをドープするために使用できる。
【0077】
これらのドーパントは、それらの固有の化学的特性に応じて、固体、液体、気体であってもよい。ある場合には、これらのドーパントは、HIL配合物またはコーティングの熱可塑性成分との複合体を形成してもよくあるいは当該複合体として加えられてもよい。
【0078】
他の態様は外気ドーピングである。この場合、ドーピング剤は、酸素、二酸化炭素、蒸気、浮遊酸、浮遊塩基または大気中の何らかの他の物質または周囲のポリマーから生じる。外気ドーピングは、例えば溶媒の存在や不純物の量などの要因に依存し得る。
【0079】
非水性ドーピング
非水溶媒は特に制限されず、当技術分野において公知の溶媒を使用できる。ハロゲン化溶媒、ケトン、エーテル、アルカン、芳香族化合物、アルコール、エステルなどを含む有機溶媒を使用することができる。溶媒の混合物も使用できる。例えば、1つの溶媒が1つの構成要素の溶解を促進させてもよく、他の溶媒が異なる構成要素の溶解を促進させてもよい。さらに、共通の有機溶媒からの構成物質の処理により、有機試薬を劣化させてそれによりデバイス性能に大きな影響を及ぼすとともにその寿命を低下させるおそれがある望ましくない水依存性の副反応が抑制される。水は一般に好ましくはないが、ある場合には、望ましいドーパント特性を安定化させるために限られた量の水が存在してもよい。例えば、5wt%以下、1wt%以下、または0.1wt%以下の量で水を存在してもよい。これらの濃度での水の影響を決定するために組成物を検査することができる。加えて、OLED劣化を促進させるカソードおよびELポリマーを酸化させるための酸性成分の能力のために、それらの使用は一般に非常に望ましくない(Kugler, T. ;Salaneck, W. R. ;Rost, H.;Holmes, A. B. Chem. Phys. Lett. 1999, 310, 391)11
【0080】
本発明において、利用される多くのポリマー溶解溶媒は、非常に親水性であり、極性があり、プロトン性である。しかしながら、幾つかの場合では、非水溶媒中に構成物質を溶かすことに加え(本発明は理論によって制限されないが)、後者は構成要素のうちの1つまたは全てを大きく分散させるだけでよい。例えば、固有導電性ポリマーは、非水溶媒中で真溶液を形成するのとは対照的に、大きく分散されるだけでよい。平坦化剤およびドーパントと混合されあるいは重合された均質に浮遊されるICPの固体は、容易に処理できかつOLEDにおける新規のHILの製造に適用できる非水システムを形成する。水-有機溶媒界面の欠如に起因して、基板およびOLED構成物質の両方の拡散限界が排除される。さらに、それにより、構成物質の濃度を制御しあるいは範囲を操作/調整することができ、または混合実験のデータベースを構築して最良のOLED性能を得ることができる。例えば、ICPは0.5%〜25wt%の量で存在することができ、平坦化剤は0.5%〜70wt%の量で存在することができ、ドーパントは、有機溶媒中における固体含有量が1.5%〜5wt%の状態で、0.5%〜5wt%の量で存在することができる。あるいは、ICPは0.5%〜25wt%の量で存在することができ、平坦化剤は0.5%〜80wt%の量で存在することができ、ドーパントは、有機溶媒中における固体含有量が1.5%〜5wt%の状態で、0.5%〜5wt%の量で存在することができる。
【0081】
インクジェット印刷を含む配合および堆積方法については、例えば、LyonらのWO/02/069,119に記載されている。インク粘度は、例えば約10〜約20cpsなどのインクジェット印刷を可能にするように定めることができる。
【0082】
デバイスおよび製造
OLEDデバイスを製造するために当技術分野において公知の方法を使用することができる。例えば、実施例に記載された方法を使用できる。輝度、効率、および寿命を測定するために、当技術分野において公知の方法を使用できる。
【0083】
輝度は、例えば、少なくとも250cd/m2、または少なくとも500cd/m2、または少なくとも750cd/m2、または少なくとも1000cd/m2にすることができる。
【0084】
効率は、例えば、少なくとも0.25Cd/A、または少なくとも0.45Cd/A、または少なくとも0.60Cd/A、または少なくとも0.70Cd/A、または少なくとも1.00Cd/Aにすることができる。
【0085】
寿命は、50mA/cm2において時間で測定することができ、例えば、少なくとも900時間、または少なくとも1,000時間、または少なくとも1,100時間、または少なくとも2,000時間、または少なくとも5,000時間にすることができる。
【0086】
輝度、効率、および寿命の組み合わせを達成することができる。例えば、輝度を少なくとも1,000cd/m2にすることができ、効率を少なくとも1.00Cd/Aにすることができ、寿命を少なくとも1,000時間、少なくとも2,500時間、または少なくとも5,000時間にすることができる。
【0087】
Jonasらに対して付与された米国特許第4,959,430号に記載されたPEDOT材料などの制御材料を配合することができる。例えばBrunnerらのWO2004/072205にはカルバゾール化合物が記載されている。
【0088】
以下の非限定的な実施例の使用をもって本発明を更に説明する。
【0089】
実施例
実施例A:
PLED HTLの製造のために使用されるHILシステムを形成する一般的な手続きは以下の通りである:
1)使用前に、ピリジンが乾燥されて窒素下で水素化カルシウムから蒸留された。市販の化学物質、ポリ(ビニルピロリドン)ヨウ素複合体(PVP-I)がAldrich Chemical Co. ,Incから購入されて更なる浄化を伴うことなく使用された。これは、平坦化剤として使用されるとともに、ドーピング剤すなわちヨウ素分子のキャリアとしての機能も果たした。
2)Plexcore MP、可溶性レジオレギュラー3-置換ポリチオフェン(Plextronics,ピッツバーグ、ペンシルベニア州)がグリニャール転換(GRIM)法を使用して重合された(Lowe, R. S.;Khersonsky, S. M.;McCullough, R. D. Adv. Mater. 1999, 11, 250)15。一般に、使用される反応条件は、レジオレギュラーポリ(3-置換チオフェン)の重合において適用された反応条件と同じである。この場合、合成経路は、等モル量のグリニャール試薬 R’MgX(XはBrまたはClであってもよい)を用いた2,5-ジブロモ-3-置換チオフェンの処理を伴っている。Ni(dppp)Cl2の付加時、ポリマーは、濃紫色/青色の固体として非常にレジオレギュラーな(98%頭-尾結合より多い)ポリマーを与えるようにモノブロモ-ハロマグネシオ-3-置換チオフェンの選択結合によって形成される。一般に、GRIM重合は、比較的高い分子量(例えば、Mn=18,000Da;Mw/Mn=1.6)のPlexcore MPを生じる。重合は鎖成長メカニズムによって進行するため((a)Sheina, E. E.;Liu, J.;Iovu, M. C. ;Laird, D. W.;McCullough, R. D. Macromolecules 2004, 37, 3526.(b)Yokoyama, A.;Miyakoshi, R.;Yokozawa, T. Macromolecules 2004, 37, 1169)16、様々な分子量のポリマーを簡単に合成することができる。さらに、ポリマー骨格中に異なる置換基を組み込むことにより、多くの一般的な有機溶媒に容易に溶けることができかつ優れた膜形成能力を有するポリマーが得られる。
3)平坦な底部を有する乾燥した500mLのワンネックフラスコにN2が浴びせかけられるとともにPlexcore MP(2.95g)およびピリジン(441mL)が充填された。これにはメスシリンダを介して溶媒が加えられた。
4)40分〜1時間にわたってポリマー溶液が超音波分解された。この場合、超音波分解槽が約62℃まで予熱された。溶解されたポリマーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)0.45μmフィルタにより濾過された。
5)PVP-I(8.85g、3ポーション〜1ポーションのPlexcore MPがポーションに加えられた)(注記:構成要素は、付加間で1分間にわたり「渦流ミキサ」を使用してかき混ぜられた)。
6)乾燥した4オンス(125mL)琥珀色ガラス容器にN2が浴びせかけられて100mLの濾過されたHIL溶液が加えられた。
7)容器は、電気的なテープでシールされるとともに、62℃で更に10分間にわたり超音波分解された。
【0090】
実施例B:
PLED HTLの製造のためにHILシステムを回転させる一般的な手続き
なお、この実施例で与えられている全ての工程は、好ましくはクリーンルーム雰囲気中で行なわれるべきである。
【0091】
ポリマー混合溶液がITO表面上に堆積される前に、以下の手続き(注記:各工程は20分の長さである)にしたがってITO表面の事前調整が行なわれる:
1)洗浄力のあるDI水を用いた基板の超音波(US)攪拌。
2)DI水を用いた基板のUS攪拌。
3)アセトンを用いた基板のUS攪拌。
4)イソプロピルアルコールを用いた基板のUS攪拌。
5)乾燥窒素を用いて各基板を1つずつブロー乾燥させる。
6)120℃に設定された真空オーブンへ基板を移動させ、実験のために使用されるまで不完全真空下に維持する(窒素流がオーブンをパージする)。
7)実験前の20分間にわたるオゾン処理。
【0092】
さらに、ポリマー混合溶液がITO表面上に堆積される前に、PTFE0.45μmフィルタによるポリマー溶液の濾過が行なわれる。ポリマー混合溶液をフィルタに通過させるために圧力の増大が必要とされる場合には、フィルタを交換しなければならない。
【0093】
一般に、ITOパターン基板上に対するスピンコーティング後におけるHILの厚さは、回転速度、回転時間、基板サイズ、基板表面の質、およびスピンコータのデザインなどの幾つかのパラメータによって決定される。したがって、特定の層厚を得るための一般規則を設けることが省かれる。一例として、均一に分散されるポリマー混合溶液の膜を得るために以下の条件が適用され、それに応じて、得られた結果が示されている。
1)基板サイズは、前述したように事前調整された2×2インチITOパターンガラス基板(Polytronics)であった。
2)約1〜2mLのポリマー混合溶液が殆どの基板表面を覆うように基板に対して塗布された。
3)スピンコーティング中に基板を4つの角部で保持する基板のための全周支持を行なうことを可能にした特注の受けチャックを有するスピンコータを使用して回転結果が得られた。
4)回転が2つの連続したサイクルに分割された。最初のサイクルは、基板表面全体にわたって溶液を均一に広げることができるように低い毎分回転数(RPM)で行なわれた(例えば、300RPMで1.2秒)。2番目の回転サイクルは、基板にわたって均一の層厚を得るために2600RPMで40秒間にわたり設定された。
5)スピンコーティング後、HIL層が100〜120℃で10分間にわたって空中のホットプレート上で乾燥される。
6)60〜65nmの層厚は、DekTak表面形状測定装置により測定され、基板の縁部で僅かな増大を伴って基板にわたり均一であることが分かった。
7)一般に、膜は透明であり(例えば、透過率(%T)は83%を越えた)かつ均質であった。
【0094】
更なる実施例
実施例1〜5における単一成分HILインクのための代表的な手順
DMF中のPlexcore MPの原液(0.8重量%)が用意された。この原液は、窒素雰囲気下で3時間にわたって110℃まで加熱された後、室温まで冷まして置かれた。この原液の7.5gが取り除かれて超音波槽内に30分間にわたって置かれた。その後、p-トルエンスルホン酸(またはDDBSA)が加えられ、溶液が超音波槽に30分間にわたって戻された。ポリ(4-ビニルピリジン)(またはポリ(4-ビニルフェノール))がDMF(またはDMF/Dowanol PMアセテート混合物)中で溶解されて超音波槽内に30分間置かれた。その後、2つの溶液が組み合わされて超音波槽内に30分間にわたって戻された。その後、溶液は0.45ミクロンPTFEシリンジフィルタに通された。その後、ジクロロジシアノキノンの溶液が濾過された溶液に対して加えられた(170mgのDDQが1.0mLのDMFに対して加えられた;0.1mLのこの溶液はシリンジを介して加えられた)。

Dowanol PMアセテートは1―メトキシ-2-プロパノールアセテートである。
【0095】
デバイス製造:
下記のデバイス製造は、一例として意図されており、決して該製造プロセス、デバイス構造(層の順序、数など)あるいは本発明で主張されるHIL材料以外の材料に対する本発明の限定を示唆するものではない。
【0096】
本明細書において説明したOLEDデバイスは、ガラス基板上に堆積されたインジウムスズ酸化物(ITO)表面上に形成された。0.9cm2のピクセル領域を画定するためにITO表面が予めパターニングされた。デバイス基板は、石鹸中で超音波処理により洗浄された後、それぞれ20分間蒸留水により洗浄された。この後、イソプロパノールのビーカー内で超音波処理が行なわれた。基板は、窒素流下で乾燥された後、300Wで動作するUV-オゾンチャンバにより20分間にわたって処理された。
【0097】
洗浄された基板は、その後、正孔注入層でコーティングされた。コーティングプロセスは、スピンコータ上で行なわれたが、スプレーコーティング、インクジェット、密着焼付け、または結果として所望の厚さのHIL膜を得ることができる任意の他の堆積方法を用いて同様にかつ簡単に達成することができる。この後、本実施例では市販のポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系蛍光ポリマーである発光層のスピンコーティングが行なわれた。ポリマー層は約70nm厚であると測定された。
【0098】
その後、基板が真空チャンバへと移送され、この真空チャンバ内で物理蒸着法によりカソード層が堆積された。この実施例では、カソード層が2つの金属層の連続的な堆積により形成された。すなわち、5×10-7Torrのベース圧をもって、最初にCaからなる5nm層が堆積され(0.1nm/秒)、その後、Alからなる200nm層が堆積された(0.5nm/秒)。
【0099】
このようにして得られたデバイスは、80W/cm2UV露光4分で硬化されたUV光硬化エポキシ樹脂により周囲状態に曝されることを防止するためにガラスカバースリップで密閉された。このようにして得られたデバイスが検査され、そのデータが表Iに示されている。
【0100】
(表I)本発明で説明した異なる実施例のHIL材料からの寿命データ

加速寿命値、70℃で50mA/cm2
**寿命は、初期値から推定され、したがって概算値である。
【0101】
一連の、好ましい、番号が付された態様が与えられている。
【0102】
態様
以下は、当業者により実施できる本発明の更なる好ましい態様を示している。
【0103】
1)ICPと、平坦化剤と、非水溶媒に溶けることができるドーパントとを含むHILシステム。
【0104】
2)ICPがレジオレギュラーポリ(3-置換チオフェン)またはその誘導体のうちの1つである態様#1。
【0105】
3)ICPがポリ(チオフェン)またはポリ(チオフェン)誘導体である態様#1。
【0106】
4)ICPがポリ(ピロール)またはポリ(ピロール)誘導体である態様#1。
【0107】
5)ICPがポリ(アニリン)またはポリ(アニリン)誘導体である態様#1。
ICPがポリ(フェニレンビニレン)またはポリ(フェニレンビニレン)誘導体である態様#1。
【0108】
6)ICPがポリ(チエニレンビニレン)またはポリ(チエニレンビニレン)誘導体である態様#1。
【0109】
7)ICPがポリ(ビス-チエニレンビニレン)またはポリ(ビス-チエニレンビニレン)誘導体である態様#1。
【0110】
8)ICPがポリ(アセチレン)またはポリ(アセチレン)誘導体である態様#1。
【0111】
9)ICPがポリ(フルオレン)またはポリ(フルオレン)誘導体である態様#1。
【0112】
10)ICPがポリ(アリレン)またはポリ(アリレン)誘導体である態様#1。
【0113】
11)ICPがポリ(イソチアナフタレン)またはポリ(イソチアナフタレン)誘導体である態様#1。
【0114】
12)ICPが、モノマーCH2CHAr(Ar=任意のアリールまたは官能基を有するアリール基)、イソシアン酸塩、エチレンオキシド、共役ジエンから形成されるポリマーからなるポリマーまたはオリゴマーセグメントとICPセグメントとのコポリマーである態様#1〜11。
【0115】
13)ICPが、CH2CHR1R(R1=アルキル、アリール、またはアルキル/アリール官能基、R=H、アルキル、Cl、Br、F、OH、エステル、酸またはエーテル)、ラクタム、ラクトン、シロキサン、およびATRPマクロイニシエータから形成されるポリマーからなるポリマーまたはオリゴマーセグメントとICPセグメントとのコポリマーである態様#1〜11。
【0116】
14)コポリマーがブロックコポリマーまたはオリゴマーである態様#12〜13。
【0117】
15)コポリマーが交互コポリマーまたはオリゴマーである態様#12〜13。
【0118】
16)コポリマーがグラフトコポリマーである態様#12〜13。
【0119】
17)コポリマーがグラジエントコポリマーである態様#12〜13。
【0120】
18)コポリマーがランダムコポリマーである態様#12〜13。
【0121】
19)平坦化剤がポリマーまたはオリゴマーを含む態様#1〜18。
【0122】
20)平坦化剤がポリ(スチレン)またはポリ(スチレン)誘導体である態様#1〜18。
【0123】
21)平坦化剤がポリ(ビニルアセテート)またはその誘導体である態様#1〜18。
【0124】
22)平坦化剤がポリ(エチレンコビニルアセテート)である態様#21。
【0125】
23)平坦化剤がポリ(エチレングリコール)またはその誘導体である態様#1〜18。
【0126】
24)平坦化剤はポリ(ピロリドン)またはその誘導体である態様#1〜18。
【0127】
25)平坦化剤がポリ(1-ビニルピロリドンコビニルアセテート)である態様#24。
【0128】
26)平坦化剤がポリ(ビニルピリジン)またはその誘導体である態様#1〜18。
【0129】
27)平坦化剤がポリ(メチルメタクリレート)またはその誘導体である態様#1〜18。
【0130】
28)平坦化剤がポリ(ブチルアクリレート)またはその誘導体である態様#1〜18。
【0131】
29)平坦化剤がCH2CHAr(Ar=任意のアリールまたは官能基を有するアリール基)などのモノマーから形成されるポリマーまたはオリゴマーを含む態様#1〜18。
【0132】
30)平坦化剤がイソシアン酸塩である態様#1〜18。
【0133】
31)平坦化剤がエチレンオキシドである態様#1〜18。
【0134】
32)平坦化剤が共役ジエンである態様#1〜18。
【0135】
33)平坦化剤がCH2CHR1R(R1=アルキル、アリール、またはアルキル/アリール官能基、およびR=H、アルキル、Cl、Br、F、OH、エステル、酸またはエーテル)である態様#1〜18。
【0136】
34)平坦化剤がラクタムから誘導されるポリマーである態様#1〜18。
【0137】
35)平坦化剤がラクトンから誘導されるポリマーである態様#1〜18。
【0138】
36)平坦化剤がシロキサンから誘導されるポリマーである態様#1〜18。
【0139】
37)平坦化剤が小分子である態様#1〜18。
【0140】
38)ドーパントがハロゲン分子である態様#1〜18。
【0141】
39)ドーパントが鉄三塩化物または金三塩化物である態様#1〜18。
【0142】
40)ドーパントがヒ素ペンタフッ化物である態様#1〜18。
【0143】
41)ドーパントが次亜鉛素酸塩のアルカリ金属塩である態様#1〜18。
【0144】
42)ドーパントがプロトン酸である態様#1〜18。
【0145】
43)ドーパントが有機酸またはカルボン酸である態様#1〜18。
【0146】
44)ドーパントがニトロソニウム塩である態様#1〜18。
【0147】
45)ドーパントが有機酸化剤である態様#1〜18。
【0148】
46)ドーパントが超原子価ヨウ素酸化剤である態様#1〜18。
【0149】
47)ドーパントが高分子酸化剤である態様#1〜18。
【0150】
48)平坦化がドーパントと錯体を形成する態様#1〜47。
【0151】
49)平坦化剤およびICPがコポリマーとして結合される態様#1〜48。
【0152】
50)HILシステムが平坦化剤のための架橋剤を含む態様#1〜49。
【0153】
51)HILシステムがICPのための架橋剤を含む態様#1〜50。
【0154】
52)HIL膜が態様#1〜51からキャスティングされる。
【0155】
53)膜がスピンキャスティングによって形成される態様#52。
【0156】
54)膜がドロップキャスティングによって形成される態様#52。
【0157】
55)膜が浸漬コーティングによって形成される態様#52。
【0158】
56)膜がスプレーコーティングによって形成される態様#52。
【0159】
57)膜が印刷法によって形成される態様#52。
【0160】
58)印刷方法がインクジェット印刷である態様#57。
【0161】
59)印刷方法がオフセット印刷である態様#57。
【0162】
60)印刷方法が転写プロセスである態様#57。
【0163】
61)態様#52〜60を組み込むデバイス。
【0164】
62)態様#1〜61を形成するための方法。
【0165】
63)態様#61の使用。
【0166】
以下の33個の態様は、2005年2月10日に提出された優先権仮出願第60/651,211号に記載された。
【0167】
態様1.
以下の構成要素、すなわち、
(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパント、および
(iii)少なくとも1つの平坦化剤
を含む、正孔注入層または正孔輸送層で使用するための混合組成物であって、
該構成要素は、非水溶媒中で溶けることができ、組成物が約100nm厚未満の正孔注入層または正孔輸送層の形態を成すときに適合混合物を形成するように配合される、混合組成物。
【0168】
態様2.
固有導電性ポリマーがポリチオフェンである態様1に係る組成物。
【0169】
態様3.
固有導電性ポリマーがレジオレギュラー3-置換ポリチオフェンである態様1に係る組成物。
【0170】
態様4.
固有導電性ポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーである態様1に係る組成物。
【0171】
態様5.
平坦化剤が合成ポリマーである態様1に係る組成物。
【0172】
態様6.
組成物が約2nm〜約100nm厚の膜の形態を成している態様1に係る組成物。
【0173】
態様7.
固有導電性ポリマーまたはコポリマー、平坦化剤、およびドーパントの量がそれぞれ、約0.5wt%〜約25wt%、約0.5wt%〜約70wt%、および約0.5wt%〜約5wt%である態様1に係る組成物。
【0174】
態様8.
固有導電性ポリマーまたはコポリマー、平坦化剤、およびドーパントの量がそれぞれ、約25wt%、約70wt%、および約5wt%である態様1に係る組成物。
【0175】
態様9.
組成物が非水溶媒を更に含み、固有導電性ポリマーがレジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンであり、平坦化剤が合成ポリマーであり、構成物質は、非水溶媒中に固体含有量全体として約1.5wt%〜約5wt%の量で存在している態様1に係る組成物。
【0176】
態様10.
固有導電性ポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーであり、非ポリチオフェンブロックが平坦化剤と実質的に類似している態様1に係る組成物。
【0177】
態様11.
ドーパントが外気ドーパントとして存在している態様1に係る組成物。
【0178】
態様12.
アノードと、カソードと、正孔注入層または正孔輸送層とを含むエレクトロルミネセント(EL)デバイスであって、正孔注入層または正孔輸送層が、以下の構成要素、すなわち、
(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパント、および
(iii)少なくとも1つの平坦化剤
のうちの少なくとも1つを含む正孔注入層または正孔輸送層で使用するための混合組成物を含み、
該構成要素は、非水溶媒中で溶けることができ、組成物が約2nm〜約100nm厚の正孔注入層または正孔輸送層の形態を成すときに適合混合物を形成するように配合される、エレクトロルミネセント(EL)デバイス。
【0179】
態様13.
デバイスが調整層を更に含む態様12に係るELデバイス。
【0180】
態様14.
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがポリチオフェンである態様12に係るELデバイス。
【0181】
態様15.
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがレジオレギュラー置換ポリチオフェンである態様12に係るELデバイス。
【0182】
態様16.
固有導電性ポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーである態様12に係るELデバイス。
【0183】
態様17.
平坦化剤が合成ポリマーである態様12に係るELデバイス。
【0184】
態様18.
以下の構成要素、すなわち、
(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパント、および
(iii)少なくとも1つの平坦化剤
のうちの少なくとも1つを含み、組み合わせることを含む、正孔注入層で使用するための組成物を形成する方法であって、構成要素(i)、(ii)および(iii)が非水溶媒に溶けることができる方法。
【0185】
態様19.
以下の構成要素、すなわち、
(i)平坦化剤に対して共有結合される少なくとも1つの固有導電性ポリマー、および
(ii)導電性のポリマーのための少なくとも1つのドーパント
のうちの少なくとも1つを含む、正孔注入層または正孔輸送層で使用するための組成物であって、
該構成要素が非水溶媒中で溶けることができ、組成物が約2nm〜約100nm厚の正孔注入層の形態を成している、組成物。
【0186】
態様20.
以下の構成要素、すなわち、
(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパント、および
(iii)少なくとも1つの平坦化剤
から本質的になる、水の実質的存在を伴うことなく正孔注入層または正孔輸送層で使用するための混合組成物であって、
該構成要素は、非水溶媒中で溶けることができ、組成物が約100nm厚未満の正孔注入層または正孔輸送層の形態を成すときに適合混合物を形成するように水の実質的使用を伴うことなく配合される、混合組成物。
【0187】
態様21.
以下の構成要素、すなわち、
(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパント、および
(iii)ポリマーまたはコポリマーおよびドーパントとの混合物を形成するためのマトリクス要素
を含む、混合組成物を正孔注入層または正孔輸送層として含むエレクトロルミネセントデバイスであって、
構成要素が非水溶媒に溶けることができる、エレクトロルミネセントデバイス。
【0188】
態様22.
以下の構成要素、すなわち、
(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマー、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパント、および
(iii)ポリマーまたはコポリマーおよびドーパントとの混合物を形成するためのマトリクス要素
を含む、エレクトロルミネセントデバイスで正孔注入層または正孔輸送層として使用するための組成物であって、
構成要素が非水溶媒に溶けることができる、組成物。
【0189】
態様23.
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがポリチオフェンである態様22に係る組成物。
【0190】
態様24.
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがレジオレギュラー3-置換ポリチオフェンである態様22に係る組成物。
【0191】
態様25.
固有導電性ポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーである態様22に係る組成物。
【0192】
態様26.
マトリクス要素が合成ポリマーである態様22に係る組成物。
【0193】
態様27.
約2nm〜約100nm厚の膜の形態を成している態様22に係る組成物。
【0194】
態様28.
固有導電性ポリマーまたはコポリマー、マトリクス要素、およびドーパントの量がそれぞれ、約0.5wt%〜約25wt%、約0.5wt%〜約70wt%、および約0.5wt%〜約5wt%である態様22に係る組成物。
【0195】
態様29.
固有導電性ポリマーまたはコポリマー、マトリクス要素、およびドーパントの量がそれぞれ、約25wt%、約70wt%、約5wt%である態様22に係る組成物。
【0196】
態様30.
非水溶媒を更に含み、固有導電性ポリマーがレジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンであり、マトリクスが合成ポリマーであり、構成物質は、非水溶媒中に固体含有量全体として約1.5wt%〜約5wt%の量で存在している態様22に係る組成物。
【0197】
態様31.
固有導電性ポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーであり、非ポリチオフェンブロックがマトリクス要素と実質的に類似している態様22に係る組成物。
【0198】
態様32.
ドーパントが外気ドーパントとして存在している態様22に係る組成物。
【0199】
態様33.
態様22〜32に係る任意の組成物を含む正孔注入層または正孔輸送層を含むエレクトロルミネセントデバイス。
【0200】
以下の巻末注の文献1〜16は先に引用されている。
【0201】

【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】有機発光ダイオード(OLED)の概略図である。
【図2】共役ポリマーとバルクプラスチックとの混合物を含む新規のHILへの2つの経路は合成(例えばコポリマー)および配合を経由する。上側の図はITOアノードのAFM図である。下側の図はITOの上端の滑らかな平面HIL層(青色のボックス輪郭)を指示的に示している(図は、G. Liu et al. Synth. Met. 2004, 144, 1.から引用されて書き換えられている)。
【図3】Plextronics職員によって研究されかつ合成された2つのコポリマー例である。これらは、レジオレギュラーポリ(3-置換チオフェン)と「熱可塑性」モノマーとのブロックコポリマーの例である。コポリマーは、新規のHIL技術への正確に制御可能な経路を与えることができる。
【図4】市販の正孔注入層(PEDOT)を含む異なる正孔注入層を比較する、PLEDデバイスにおける電流密度対電圧データである。
【図5】実施例4の性能と市販の正孔注入層(PEDOT)のそれとを比較した、50mA/cm2のストレスが掛けられたPLEDデバイスにおける作動電圧および輝度の経時的な変化である。
【図6】明るいエレクトロルミネセンスを示すPLEDデバイスの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒中で溶けることができ、組成物が約200nm厚未満の正孔注入層または正孔輸送層の形態を成すときに適合混合物を形成するように配合される、以下の構成要素、
(i)少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマーと、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパントと、
(iii)合成ポリマーである少なくとも1つの平坦化剤とを含む、
正孔注入層または正孔輸送層で使用するための混合組成物。
【請求項2】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがポリチオフェンである、請求項1記載の混合組成物。
【請求項3】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがレジオレギュラー(regioregular)3-置換ポリチオフェンである、請求項1記載の混合組成物。
【請求項4】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがホモポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーがブロックコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーであり、非ポリチオフェンブロックが平坦化剤と実質的に類似している、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
層が約100nm厚未満である、請求項1記載の混合組成物。
【請求項10】
約2nm〜約100nm厚の膜の形態を成している、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーおよび平坦化剤の量がそれぞれ約0.5wt%〜約25wt%および約0.5wt%〜約70wt%である、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーおよび平坦化剤の量がそれぞれ約0.5wt%〜約25wt%および約0.5wt%〜約80wt%である、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
平坦化剤が有機ポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
ドーパントが有機酸化剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
ドーパントが酸性ドーパントである、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
ドーパントが有機酸化剤を含み、平坦化剤が有機ポリマーであり、ポリマーまたはコポリマーがレジオレギュラーポリチオフェンを含み、固有導電性ポリマーまたはコポリマーおよび平坦化剤の量がそれぞれ約0.5wt%〜約25wt%および約0.5wt%〜約70wt%である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
ドーパントが有機酸化剤を含み、平坦化剤が有機ポリマーであり、固有導電性ポリマーまたはコポリマーおよび平坦化剤の量がそれぞれ約0.5wt%〜約25wt%および約0.5wt%〜約80wt%である、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
アノードと、カソードと、正孔注入層または正孔輸送層とを含み、正孔注入層または正孔輸送層が請求項1記載の混合組成物を含む、エレクトロルミネセント(EL)デバイス。
【請求項19】
請求項1記載の組成物をインクジェット印刷する工程を含む方法であって、組成物が有機溶媒を更に含む、方法。
【請求項20】
以下の構成要素、
(i)非水溶媒に溶けることができる少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマーと、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパントと、
(iii)非水溶媒に溶けることができる合成ポリマーである少なくとも1つの平坦化剤とを含み、
約200nm厚未満である正孔注入層または正孔輸送層を含む、エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項21】
ポリマーまたはコポリマーがポリチオフェンを含む、請求項20記載のデバイス。
【請求項22】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーが非水溶媒に溶けることができるレジオレギュラー3-置換ポリチオフェンである、請求項20記載のデバイス。
【請求項23】
導電性ポリマーまたはコポリマーがホモポリマーである、請求項20記載のデバイス。
【請求項24】
導電性ポリマーまたはコポリマーがコポリマーである、請求項20記載のデバイス。
【請求項25】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーである、請求項20記載のデバイス。
【請求項26】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーは、ポリチオフェンブロックおよび非ポリチオフェンブロックを含む、レジオレギュラーアルキル/アルコキシ-、エーテル、ポリ(エーテル)、またはアリール-置換ポリチオフェンブロックコポリマーであり、非ポリチオフェンブロックが平坦化剤と実質的に類似している、請求項20記載のデバイス。
【請求項27】
正孔注入層または正孔輸送層が約2nm〜約100nmの厚さである、請求項20記載のデバイス。
【請求項28】
固有導電性ポリマーまたはコポリマーおよび平坦化剤の量がそれぞれ約0.5wt%〜約25wt%および約0.5wt%〜約80wt%である、請求項20記載のデバイス。
【請求項29】
平坦化剤が有機ポリマーである、請求項20記載のデバイス。
【請求項30】
ドーパントが有機酸化剤を含む、請求項20記載のデバイス。
【請求項31】
ドーパントが酸性ドーパントである、請求項20記載のデバイス。
【請求項32】
ドーパントが有機酸化剤を含み、平坦化剤が有機ポリマーであり、ポリマーまたはコポリマーがレジオレギュラーポリチオフェンを含み、固有導電性ポリマーまたはコポリマーおよび平坦化剤の量がそれぞれ約0.5wt%〜約25wt%および約0.5wt%〜約70wt%である、請求項20記載のデバイス。
【請求項33】
ドーパントが有機酸化剤を含み、平坦化剤が有機ポリマーであり、固有導電性ポリマーまたはコポリマーおよび平坦化剤の量がそれぞれ約0.5wt%〜約25wt%および約0.5wt%〜約80wt%である、請求項20記載のデバイス。
【請求項34】
以下の構成要素、
(i)非水溶媒に溶けることができるレジオレギュラー3-置換ポリチオフェンである少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマーと、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパントと、
(iii)非水溶媒に溶けることができる少なくとも1つの合成ポリマーとを含み、約200nm厚未満である正孔注入層または正孔輸送層を含む、エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項35】
以下の構成要素、
(i)非水溶媒に溶けることができるポリチオフェンである少なくとも1つの固有導電性ポリマーまたはコポリマーと、
(ii)導電性のポリマーまたはコポリマーのための少なくとも1つのドーパントと、
(iii)非水溶媒に溶けることができる少なくとも1つの合成ポリマーとを含み、
約200nm厚未満である正孔注入層または正孔輸送層を含むエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項36】
ドーパントが有機ドーパントである、請求項35記載のデバイス。
【請求項37】
有機溶媒に溶けることができる約0.5wt.%〜約25wt.%の可溶性レジオレギュラーポリチオフェンと、
有機溶媒に溶けることができる約0.5wt.%〜約70wt.%の有機ポリマーと、
有機酸化剤と、
有機溶媒とを含む、
正孔注入層または正孔輸送層用途のためのインク配合物。
【請求項38】
有機溶媒に溶けることができる約0.5wt.%〜約25wt.%の可溶性レジオレギュラーポリチオフェンと、
有機溶媒に溶けることができる約0.5wt.%〜約80wt.%の有機ポリマーと、
有機酸化剤と、
有機溶媒とを含む、
正孔注入層または正孔輸送層用途のためのインク配合物。
【請求項39】
有機溶媒に溶けることができる約0.5wt.%〜約25wt.%の可溶性ポリチオフェンと、
有機溶媒に溶けることができる約0.5wt.%〜約70wt.%の有機ポリマーと、
有機酸化剤と、
有機溶媒とを含む、
正孔注入層または正孔輸送層用途のためのインク配合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−533701(P2008−533701A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555192(P2007−555192)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/004446
【国際公開番号】WO2006/086480
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507094393)プレックストロニクス インコーポレーティッド (24)
【Fターム(参考)】