正極材料および電池
【課題】 サイクル特性などの電池特性を向上させることができる正極材料およびそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】 正極12は、正極活物質として、金属硫化物MIx MII1-x Sy を含む。MIはNi,Co,Fe,Mn,V,Ti,MoおよびWからなる群のうちの少なくと1種、MIIはFe,Cu,Ni,Co,Mn,V,Ti,MgおよびZnからなる群のうちの少なくとも1種であり、MIとMIIとは異なる元素である。xおよびyはそれぞれ0<x<1、0.5<y<2.5である。MIとMIIとを含むことにより構造の安定性が向上する。この金属硫化物は炭素材料と共に複合材料を構成していることが好ましい。
【解決手段】 正極12は、正極活物質として、金属硫化物MIx MII1-x Sy を含む。MIはNi,Co,Fe,Mn,V,Ti,MoおよびWからなる群のうちの少なくと1種、MIIはFe,Cu,Ni,Co,Mn,V,Ti,MgおよびZnからなる群のうちの少なくとも1種であり、MIとMIIとは異なる元素である。xおよびyはそれぞれ0<x<1、0.5<y<2.5である。MIとMIIとを含むことにより構造の安定性が向上する。この金属硫化物は炭素材料と共に複合材料を構成していることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属硫化物を含む正極材料およびそれを用いた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の多機能化・高性能化につれて機器の消費電力は大きくなってきており、その電源となる電池に対してより一層の高容量化が要求されている。中でも、経済性および機器の小型軽量化の観点から、二次電池についてその要求が大きい。また、機器の低電圧化に伴い、電池電圧が1.5V前後の二次電池についても研究開発が行われており、一部実用化されている。
【0003】
従来、1.5V前後の二次電池としては、ニッケル−カドミウム電池あるいはニッケル水素電池が用いられているが、これらの二次電池では更なる高容量化を図ることは難しい。そこで、高出力および高エネルギー密度を得ることができるものとして、リチウム二次電池が検討されている。
【0004】
このリチウム二次電池の正極材料としては、金属酸化物,金属硫化物,金属セレン化物,あるいはポリマーなどが用いられ、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 ),五酸化バナジウム(V2 O5 )などのリチウム(Li)を含まない化合物や、または、LiCoO2 ,LiNiO2 ,あるいはLiMn2 O4 のようなリチウムを含む酸化物が知られている。その中でリチウムに対して1.5V前後の電圧を持つものもいくつかある。
【0005】
例えば、特許文献1には正極に硫化鉄(FeS)を用いたリチウム二次電池が記載されており、非特許文献1には正極に硫化ニッケル(NiS)用いたリチウム二次電池が記載されている。
【特許文献1】特許第3447187号公報
【非特許文献1】ジェイ.アロイズ アンド コンパウンズ(J. Alloys and Compounds )、2003年、351号、p.273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの金属硫化物は、充放電に伴い結晶構造が変化し、容量が低下してしまうという問題があった。また、電解質と反応して不活性の生成物を生じ、充放電効率が低下してしまうという問題もあった。よって、サイクル特性などの電池特性が十分ではなかった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる正極材料およびそれを用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の正極材料は、化1で表される金属硫化物を含むものである。
(化1)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【0009】
本発明による第2の正極材料は、化2で表される金属硫化物と、炭素材料との複合材料を含むものである。
(化2)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル,コバルト,鉄,マンガン,バナジウム,チタン,モリブデンおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅,ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【0010】
本発明による第1の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、正極は、化3で表される金属硫化物を含むものである。
(化3)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル,コバルト,鉄,マンガン,バナジウム,チタン,モリブデンおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅,ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【0011】
本発明による第2の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、正極は、化4で表される金属硫化物と、炭素材料との複合材料を含むものである。
(化4)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル,コバルト,鉄,マンガン,バナジウム,チタン,モリブデンおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅,ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の正極材料によれば、化1で表される金属硫化物を含むようにしたので、例えば電池に用いた場合には、充放電の際に生じる構造変化を抑制することができ、充放電反応の可逆性を向上させることができる。よって、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第2の正極材料によれば、化2で表される金属硫化物と炭素材料との複合材料を含むようにしたので、例えば電池に用いた場合には、充放電の際に生じる構造変化を抑制することができると共に、電解質との副反応を抑制することができる。よって、充放電反応の可逆性をより向上させることができ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る正極材料は、化5で表される金属硫化物を含有している。
(化5)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル,コバルト,鉄,マンガン,バナジウム,チタン,モリブデンおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅,ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【0016】
この金属硫化物は2種以上の金属元素を含んでおり、これにより構造の安定性が向上されている。また、硫黄(S)の組成yは、化5に示したように、0.5〜2.5の範囲内で安定した構造が得られる。
【0017】
このような金属硫化物の具体例としては、例えば、Nix Fe1-x Sy ,Nix Cu1-x Sy ,Nix Co1-x Sy ,Nix (Fe,Cu)1-x Sy ,Cox Fe1-x Sy ,Cox Cu1-x Sy ,Cox Ni1-x Sy およびCox (Fe,Cu)1-x Sy が挙げられる。この金属硫化物は1種のみでもよく、2種以上が混合して含まれていてもよい。
【0018】
なお、この金属硫化物は、炭素材料と共に、複合材料を構成していることが好ましい。例えば、このような複合材料としては、この金属硫化物よりなる粒子の少なくとも一部を炭素材料で覆った構造のものが好ましい。これにより、金属硫化物の不可逆的な反応を抑制することができるからである。炭素材料としては、グラファイトあるいはカーボンブラック類などが挙げられる。
【0019】
この正極材料は例えばメカノケミカル法により製造することができる。例えば、第1金属元素MI,第2金属元素MIIおよび硫黄の原料粉末を目的とする組成に応じて混合したのち、この混合物をボールミルを用いてメカノケミカル反応させ、上述した金属硫化物を合成する。また、この金属硫化物を複合材料とする場合には、例えば、この金属硫化物の粉末と、炭素材料の粉末とを混合し、ボールミルにより混合・粉砕することにより形成する。
【0020】
このような正極材料は、例えば、次のような二次電池に用いられる。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る正極材料を用いた二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆるコイン型といわれるものであり、外装缶11内に収容された円板状の正極12と、外装カップ13内に収容された円板状の負極14とが、セパレータ15を介して積層されたものである。セパレータ15には液状の電解質である電解液が含浸されており、外装缶11および外装カップ13の周縁部はガスケット16を介してかしめられることにより密閉されている。外装缶11および外装カップ13は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウム(Al)などの金属によりそれぞれ構成されている。
【0022】
正極12は、例えば、正極集電体12Aと、正極集電体12Aに設けられた正極活物質層12Bとを有している。正極集電体12Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層12Bは、例えば、正極活物質として本実施の形態に係る正極材料を含有しており、必要に応じて、カーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどのバインダと共に構成されている。また、他の正極活物質を更に含んでいてもよい。
【0023】
負極14は、例えば、負極集電体14Aと、負極集電体14Aに設けられた負極活物質層14Bとを有している。負極集電体14Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0024】
負極活物質層14Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料、リチウム金属、あるいはリチウム合金のうちのいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデンなどのバインダと共に構成されている。リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、例えば、炭素材料,金属化合物,スズ,スズ合金,ケイ素,ケイ素合金あるいは導電性ポリマが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。炭素材料としては、黒鉛,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などが挙げられ、金属化合物としてはスピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物(Li4 Ti5 O12),酸化タングステン(WO2 ),酸化ニオブ(Nb2 O5 )あるいは酸化スズ(SnO)などの酸化物が挙げられ、導電性ポリマとしてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。中でも、炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。
【0025】
セパレータ15は、正極12と負極14とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ15は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていても良い。
【0026】
電解液は、溶媒に電解質塩を溶解させたものであり、電解質塩が電離することによりイオン伝導性を示すようになっている。電解質塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 ),過塩素酸リチウム(LiClO4 ),六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 ),四フッ化ホウ素リチウム(LiBF4 ),トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )あるいはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )などのリチウム塩が挙げられる。電解質塩はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
溶媒としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、γーブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルあるいは炭酸ジプロピルなどの非水溶媒が好ましい。溶媒にはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
この二次電池は、例えば次のようにして製造することができる。
【0029】
まず、例えば、上述した正極材料と、必要に応じて導電剤およびバインダとを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状としたのち、正極集電体12Aに塗布して溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層12Bを形成し、正極12とする。
【0030】
次いで、例えば、負極活物質と、必要に応じてバインダとを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状としたのち、負極集電体14Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層14Bを形成し、負極14とする。また例えば、負極集電体14Aに蒸着あるいはめっきなどにより負極活物質層14Bを形成し、負極14とする。
【0031】
続いて、外装カップ13の中央部に負極14およびセパレータ15をこの順に置き、セパレータ15の上から電解液を注ぎ、正極12を入れた外装缶11を被せてガスケット16を介してかしめる。これにより、図1に示した二次電池が形成される。
【0032】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層12Bからリチウムイオンが離脱し、電解液を介して負極14に吸蔵されるかまたはリチウム金属となって析出する。放電を行うと、例えば、負極14からリチウムイオンが離脱するかまたはリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解液を介して正極活物質層12Bに吸蔵される。その際、正極活物質層12Bには上述した金属硫化物が含まれているので、充放電に伴う構造変化が小さく、容量の劣化が抑制される。また、この金属硫化物が炭素材料との複合材料とされていれば、金属硫化物と電解液との副反応が抑制され、容量の劣化がより抑制される。
【0033】
このように本実施の形態によれば、化5で表される金属硫化物を含むようにしたので、充放電の際に生じる構造変化を抑制することができ、充放電反応の可逆性を向上させることができる。よって、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
【0034】
特に、この金属硫化物を炭素材料との複合材料とするようにすれば、金属硫化物と電解液との副反応を抑制することができる。よって、充放電反応の可逆性をより向上させることができる。
【実施例】
【0035】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0036】
(実施例1−1〜1−4)
まず、原料として、ニッケル粉末,鉄粉末,銅粉末,コバルト粉末,および硫黄粉末を用意し、表1に示した組成となるように混合した。すなわち、実施例1−1ではニッケルと鉄と銅と硫黄とのモル比が1/3:1/3:1/3:1となるようにし、実施例1−2ではニッケルと鉄と硫黄とのモル比が0.9:0.1:1となるようにし、実施例1−3ではニッケルと鉄と銅と硫黄とのモル比が0.8:0.1:0.1:1となるようにし、実施例1−4ではコバルトと鉄と硫黄とのモル比が0.8:0.2:1となるようにした。このうち実施例1−1〜1−3は第1金属元素MIがニッケル、第2金属元素MIIが鉄、または鉄および銅であり、実施例1−4は第1金属元素MIがコバルト、第2金属元素MIIが鉄である。
【0037】
次いで、この混合物を硬質鋼製ボールと共にアルゴン雰囲気中において密封容器に封入し、ボールミル機を用いてメカノケミカル反応させ、金属硫化物を合成した。反応時間は10時間とした。
【0038】
得られた実施例1−1〜1−4の金属硫化物についてX線回折パターンを測定した。X線回折装置にはリガクRINT2500の回転対陰極型を用いた。なお、このX線回折装置は、ゴニオメータとして縦標準型半径185mmのものを備えていると共に、Kβフィルタなどのフィルタは使用せず波高分析器とカウンタモノクロメータとの組み合わせによりX線の単色化を行い、シンチレーションカウンタにより特定X線を検出するタイプのものである。測定は、特定X線としてCuKα(40kV,100mA)を用い、試料面に対する入射角度DSおよび試料面に対する回折線のなす角度RSをそれぞれ1°、入射スリットの幅SSを0.15mmとし、連続スキャン(走査範囲2θ=10°〜80°,走査速度4°/min)で反射法により行った。
【0039】
図2および図3に、実施例1−1および実施例1−2について得られたX線回折パターンを代表して示す。
【0040】
続いて、得られた実施例1−1〜1−4の金属硫化物を用いて、図1に示したようなコイン型の電池を作製し、充放電試験を行い、正極材料の特性評価を行った。
【0041】
その際、正極12は次のようにして作製した。まず、合成した金属硫化物を乾燥させて正極材料として30mg秤取り、導電剤であるグラファイトおよびバインダであるポリフッ化ビニリデンと共に、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンを用いて混合し、ペースト状の正極合剤とした。なお、金属硫化物とグラファイトとの割合は、金属硫化物:グラファイト=98:2の質量比とし、ポリフッ化ビニリデンはこの混合物98質量部に対して2質量部の割合とした。次いで、この正極合剤をアルミニウム箔よりなる正極集電体12Aに塗布し、乾燥アルゴン気流中において100℃で1時間乾燥させ、正極12とした。
【0042】
負極14には円板状に打ち抜いたリチウム金属板を用い、電解液には1,3−ジオキソランとジメトキシエタンとを2:1の体積比で混合した溶媒にリチウム塩としてLiPF6 を1.15mol/lの濃度で溶解させたものを用いた。電池の大きさは、直径20mm、高さ1.6mmとした。
【0043】
また、充放電試験は23℃において次のようにして行った。まず、1.0mA/cm2 の定電流で電池電圧が0.8Vに達するまで定電流放電を行い、次いで、1.0mA/cm2 の定電流で電池電圧が3.0に達するまで定電流充電を行ったのち、3.0Vの定電圧で電流が0.1mA/cm2 以下となるまで定電圧充電を行った。
【0044】
図4に実施例1−1の充放電曲線を、図5に実施例1−2の充放電曲線を代表して示すと共に、表1に実施例1−1〜1−4の1サイクル目における充電容量,放電容量および放充電効率、2サイクル目の充放電効率、並びに30サイクル目の1サイクル目に対する容量維持率をそれぞれ示す。なお、1サイクル目の放充電効率は、(1サイクル目の充電容量/1サイクル目の放電容量)×100により求め、2サイクル目の充放電効率は、(2サイクル目の放電容量/2サイクル目の充電容量)×100により求め、30サイクル目の容量維持率は、(30サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100により求めた。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1−1〜1−4に対する比較例1−1として、ニッケル粉末と硫黄粉末とをモル比が1:1となるように混合したことを除き、実施例1−1〜1−4と同様にして金属硫化物NiSを合成した。比較例1−1は金属元素を1種しか含まないものである。比較例1−1の金属硫化物についても、実施例1−1〜1−4と同様にしてX線回折パターンを測定した。図6にそのX線回折パターンを示す。図6から、得られた比較例1−1の金属硫化物はNiSであることが確認された。
【0047】
また、比較例1−1の金属硫化物を用いて、実施例1−1〜1−4と同様にしてコイン型の電池を作製し、同様にして特性評価を行った。図7にその充放電曲線を示すと共に、表1に1サイクル目の充電容量,放電容量および放充電効率、2サイクル目の充放電効率、並びに30サイクル目の容量維持率をそれぞれ示す。
【0048】
図4,5,7を比較すれば分かるように、比較例1−1では充電末期に短いフラット部が観察されるのに対して、実施例1−1,1−2では緩やかな放充電カーブを示し、充電末期においてもそのようなフラット部は観察されなかった。このフラット部は充電中に相分離反応が起こっていることを示唆しており、本実施例によれば相分離反応が抑制されていると思われる。なお、実施例1−1,1−2についてのみ充放電曲線を示したが、実施例1−3,1−4についても同様の結果が得られた。
【0049】
また、表1からわかるように、実施例1−1〜1−4によれば、比較例1−1よりも、1サイクル目の放充電効率、2サイクル目の充放電効率、および30サイクル目の容量維持率のいずれについても向上させることができた。
【0050】
すなわち、第1金属元素MIと第2金属元素MIIとを含む金属硫化物を用いるようにすれば、充放電の際に生じる構造変化を抑制することができ、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0051】
(実施例2−1〜2−11)
実施例1−1〜1−4と同様にして表2に示した組成の金属硫化物を合成したのち、得られた金属硫化物98質量部と、グラファイト2質量部とを混合し、ボールミルを用いて1時間混合・粉砕を行うことにより、金属硫化物とグラファイトとの複合材料を形成した。
【0052】
なお、実施例2−1の金属硫化物はNi1/3 Fe1/3 Cu1/3 Sであり、第1金属MIがニッケル、第2金属元素MIIが鉄および銅である。実施例2−2の金属硫化物はNi0.9 Fe0.1 S、実施例2−3の金属硫化物はNi0.5 Fe0.5 Sであり、それらの第1金属MIはニッケル、第2金属元素MIIは鉄である。実施例2−4の金属硫化物はNi0.9 Cu0.1 Sであり、第1金属MIがニッケル、第2金属元素MIIが銅である。実施例2−5の金属硫化物はNi0.9 Co0.1 S、実施例2−6の金属硫化物はNi0.5 Co0.5 Sであり、これらの第1金属MIはニッケル、第2金属元素MIIはコバルトである。実施例2−7の金属硫化物はNi0.8 Fe0.1 Cu0.1 Sであり、第1金属MIがニッケル、第2金属元素MIIが鉄および銅である。実施例2−8の金属硫化物はCo0.8 Fe0.2 Sであり、第1金属MIがコバルト、第2金属元素MIIが鉄である。実施例2−9の金属硫化物はCo0.9 Cu0.1 Sであり、第1金属MIがコバルト、第2金属元素MIIが銅である。実施例2−10の金属硫化物はCo0.9 Ni0.1 Sであり、第1金属MIがコバルト、第2金属元素MIIがニッケルである。実施例2−11の金属硫化物はCo0.7 Fe0.2 Cu0.1 Sであり、第1金属MIがコバルト、第2金属元素MIIが鉄および銅である。
【0053】
得られた実施例2−1〜2−11の複合材料について実施例1−1〜1−4と同様にしてX線回折パターンを測定した。図8に実施例2−1の結果を、図9に実施例2−2の結果を、図10に実施例2−7の結果を代表して示す。その結果、実施例2−1〜2−11のいずれについても、2θ=26°付近にグラファイトを示す強い強度の鋭いピークがみられ、また、それぞれの金属硫化物の組成を示すピークも見られた。
【0054】
続いて、得られた実施例2−1〜2−11の複合材料を用いて、実施例1−1〜1−4と同様にして電池を作製し、同様にして充放電試験を行った。なお、正極12を作製する際には、この複合材料98質量部と、ポリフッ化ビニリデン2質量部とを混合してペースト状の正極合剤とした。
【0055】
図11に実施例2−2の放電曲線を代表して示すと共に、表2に実施例2−1〜2−11の1サイクル目における充電容量,放電容量および放充電効率、2サイクル目の充放電効率、並びに30サイクル目の容量維持率をそれぞれ示す。なお、表2には実施例1−1〜1−4の結果も合わせて示した。
【0056】
なお、実施例2−2についてのみ放電曲線を示したが、実施例2−1,2−3〜2−11についても同様の結果が得られた。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例2−1〜2−11に対する比較例2−1,2−2として、比較例2−1では金属硫化物としてNiS粉末を用いたことを除き、また、比較例2−2では金属硫化物としてFeS粉末を用いたことを除き、他は実施例2−1〜2−11と同様にして複合材料を作製した。比較例2−1,2−2についても、実施例2−1〜2−11と同様にして二次電池を作製し、充放電試験を行った。得られた結果を表2に示す。
【0059】
表2からわかるように、実施例2−1〜2−11によれば、比較例2−1,2−2よりも、1サイクル目の放充電効率、2サイクル目の充放電効率、および30サイクル目の容量維持率のいずれについても向上させることができた。また、実施例2−1〜2−11と実施例1−1〜1−4とを比較すれば分かるように、金属硫化物と炭素材料との複合材料とした実施例2−1〜2−11の方が、いずれについても向上させることができた。
【0060】
すなわち、第1金属元素MIと第2金属元素MIIとを含む金属硫化物と、炭素材料との複合材料を用いるようにすれば、充放電反応の可逆性をより向上させることができ、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0061】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子電解質、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質、溶融塩電解質、またはこれらを混合したものが挙げられる。
【0062】
また、上記実施の形態および実施例では、コイン型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は他の構造を有する円筒型や、ボタン型あるいは角型など他の形状を有する二次電池、または巻回構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。更に、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
【0063】
更に、上記実施の形態および実施例では、本発明の正極材料をメカノケミカルにより合成する場合について説明したが、他の製造方法により合成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態に係る正極材料を用いた二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】本発明の実施例1−1に係る金属硫化物Ni1/3 Fe1/3 Cu1/3 SのX線回折パターンを表す特性図である。
【図3】本発明の実施例1−2に係る金属硫化物Ni0.9 Fe0.1 SのX線回折パターンを表す特性図である。
【図4】本発明の実施例1−1に係る充放電曲線を表す特性図である。
【図5】本発明の実施例1−2に係る充放電曲線を表す特性図である。
【図6】比較例1−1に係る金属硫化物NiSのX線回折パターンを表す特性図である。
【図7】比較例1−1に係る充放電曲線を表す特性図である。
【図8】本発明の実施例2−1に係る複合材料Ni1/3 Fe1/3 Cu1/3 S−CのX線回折パターンを表す特性図である。
【図9】本発明の実施例2−2に係る複合材料Ni0.9 Fe0.1 S−CのX線回折パターンを表す特性図である。
【図10】本発明の実施例2−7に係る複合材料Ni0.8 Fe0.1 Cu0.1 S−CのX線回折パターンを表す特性図である。
【図11】本発明の実施例2−2に係る放電曲線を表す特性図である。
【符号の説明】
【0065】
11…外装缶、12…正極、12A…正極集電体、12B…正極活物質層、13…外装カップ、14…負極、14A…負極集電体、14B…負極活物質層、15…セパレータ、16…ガスケット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属硫化物を含む正極材料およびそれを用いた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の多機能化・高性能化につれて機器の消費電力は大きくなってきており、その電源となる電池に対してより一層の高容量化が要求されている。中でも、経済性および機器の小型軽量化の観点から、二次電池についてその要求が大きい。また、機器の低電圧化に伴い、電池電圧が1.5V前後の二次電池についても研究開発が行われており、一部実用化されている。
【0003】
従来、1.5V前後の二次電池としては、ニッケル−カドミウム電池あるいはニッケル水素電池が用いられているが、これらの二次電池では更なる高容量化を図ることは難しい。そこで、高出力および高エネルギー密度を得ることができるものとして、リチウム二次電池が検討されている。
【0004】
このリチウム二次電池の正極材料としては、金属酸化物,金属硫化物,金属セレン化物,あるいはポリマーなどが用いられ、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 ),五酸化バナジウム(V2 O5 )などのリチウム(Li)を含まない化合物や、または、LiCoO2 ,LiNiO2 ,あるいはLiMn2 O4 のようなリチウムを含む酸化物が知られている。その中でリチウムに対して1.5V前後の電圧を持つものもいくつかある。
【0005】
例えば、特許文献1には正極に硫化鉄(FeS)を用いたリチウム二次電池が記載されており、非特許文献1には正極に硫化ニッケル(NiS)用いたリチウム二次電池が記載されている。
【特許文献1】特許第3447187号公報
【非特許文献1】ジェイ.アロイズ アンド コンパウンズ(J. Alloys and Compounds )、2003年、351号、p.273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの金属硫化物は、充放電に伴い結晶構造が変化し、容量が低下してしまうという問題があった。また、電解質と反応して不活性の生成物を生じ、充放電効率が低下してしまうという問題もあった。よって、サイクル特性などの電池特性が十分ではなかった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる正極材料およびそれを用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の正極材料は、化1で表される金属硫化物を含むものである。
(化1)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【0009】
本発明による第2の正極材料は、化2で表される金属硫化物と、炭素材料との複合材料を含むものである。
(化2)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル,コバルト,鉄,マンガン,バナジウム,チタン,モリブデンおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅,ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【0010】
本発明による第1の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、正極は、化3で表される金属硫化物を含むものである。
(化3)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル,コバルト,鉄,マンガン,バナジウム,チタン,モリブデンおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅,ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【0011】
本発明による第2の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、正極は、化4で表される金属硫化物と、炭素材料との複合材料を含むものである。
(化4)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル,コバルト,鉄,マンガン,バナジウム,チタン,モリブデンおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅,ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の正極材料によれば、化1で表される金属硫化物を含むようにしたので、例えば電池に用いた場合には、充放電の際に生じる構造変化を抑制することができ、充放電反応の可逆性を向上させることができる。よって、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第2の正極材料によれば、化2で表される金属硫化物と炭素材料との複合材料を含むようにしたので、例えば電池に用いた場合には、充放電の際に生じる構造変化を抑制することができると共に、電解質との副反応を抑制することができる。よって、充放電反応の可逆性をより向上させることができ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る正極材料は、化5で表される金属硫化物を含有している。
(化5)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル,コバルト,鉄,マンガン,バナジウム,チタン,モリブデンおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅,ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【0016】
この金属硫化物は2種以上の金属元素を含んでおり、これにより構造の安定性が向上されている。また、硫黄(S)の組成yは、化5に示したように、0.5〜2.5の範囲内で安定した構造が得られる。
【0017】
このような金属硫化物の具体例としては、例えば、Nix Fe1-x Sy ,Nix Cu1-x Sy ,Nix Co1-x Sy ,Nix (Fe,Cu)1-x Sy ,Cox Fe1-x Sy ,Cox Cu1-x Sy ,Cox Ni1-x Sy およびCox (Fe,Cu)1-x Sy が挙げられる。この金属硫化物は1種のみでもよく、2種以上が混合して含まれていてもよい。
【0018】
なお、この金属硫化物は、炭素材料と共に、複合材料を構成していることが好ましい。例えば、このような複合材料としては、この金属硫化物よりなる粒子の少なくとも一部を炭素材料で覆った構造のものが好ましい。これにより、金属硫化物の不可逆的な反応を抑制することができるからである。炭素材料としては、グラファイトあるいはカーボンブラック類などが挙げられる。
【0019】
この正極材料は例えばメカノケミカル法により製造することができる。例えば、第1金属元素MI,第2金属元素MIIおよび硫黄の原料粉末を目的とする組成に応じて混合したのち、この混合物をボールミルを用いてメカノケミカル反応させ、上述した金属硫化物を合成する。また、この金属硫化物を複合材料とする場合には、例えば、この金属硫化物の粉末と、炭素材料の粉末とを混合し、ボールミルにより混合・粉砕することにより形成する。
【0020】
このような正極材料は、例えば、次のような二次電池に用いられる。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る正極材料を用いた二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆるコイン型といわれるものであり、外装缶11内に収容された円板状の正極12と、外装カップ13内に収容された円板状の負極14とが、セパレータ15を介して積層されたものである。セパレータ15には液状の電解質である電解液が含浸されており、外装缶11および外装カップ13の周縁部はガスケット16を介してかしめられることにより密閉されている。外装缶11および外装カップ13は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウム(Al)などの金属によりそれぞれ構成されている。
【0022】
正極12は、例えば、正極集電体12Aと、正極集電体12Aに設けられた正極活物質層12Bとを有している。正極集電体12Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層12Bは、例えば、正極活物質として本実施の形態に係る正極材料を含有しており、必要に応じて、カーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどのバインダと共に構成されている。また、他の正極活物質を更に含んでいてもよい。
【0023】
負極14は、例えば、負極集電体14Aと、負極集電体14Aに設けられた負極活物質層14Bとを有している。負極集電体14Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0024】
負極活物質層14Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料、リチウム金属、あるいはリチウム合金のうちのいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデンなどのバインダと共に構成されている。リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、例えば、炭素材料,金属化合物,スズ,スズ合金,ケイ素,ケイ素合金あるいは導電性ポリマが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。炭素材料としては、黒鉛,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などが挙げられ、金属化合物としてはスピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物(Li4 Ti5 O12),酸化タングステン(WO2 ),酸化ニオブ(Nb2 O5 )あるいは酸化スズ(SnO)などの酸化物が挙げられ、導電性ポリマとしてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。中でも、炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。
【0025】
セパレータ15は、正極12と負極14とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ15は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていても良い。
【0026】
電解液は、溶媒に電解質塩を溶解させたものであり、電解質塩が電離することによりイオン伝導性を示すようになっている。電解質塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 ),過塩素酸リチウム(LiClO4 ),六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 ),四フッ化ホウ素リチウム(LiBF4 ),トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )あるいはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )などのリチウム塩が挙げられる。電解質塩はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
溶媒としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、γーブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルあるいは炭酸ジプロピルなどの非水溶媒が好ましい。溶媒にはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
この二次電池は、例えば次のようにして製造することができる。
【0029】
まず、例えば、上述した正極材料と、必要に応じて導電剤およびバインダとを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状としたのち、正極集電体12Aに塗布して溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層12Bを形成し、正極12とする。
【0030】
次いで、例えば、負極活物質と、必要に応じてバインダとを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状としたのち、負極集電体14Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層14Bを形成し、負極14とする。また例えば、負極集電体14Aに蒸着あるいはめっきなどにより負極活物質層14Bを形成し、負極14とする。
【0031】
続いて、外装カップ13の中央部に負極14およびセパレータ15をこの順に置き、セパレータ15の上から電解液を注ぎ、正極12を入れた外装缶11を被せてガスケット16を介してかしめる。これにより、図1に示した二次電池が形成される。
【0032】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層12Bからリチウムイオンが離脱し、電解液を介して負極14に吸蔵されるかまたはリチウム金属となって析出する。放電を行うと、例えば、負極14からリチウムイオンが離脱するかまたはリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解液を介して正極活物質層12Bに吸蔵される。その際、正極活物質層12Bには上述した金属硫化物が含まれているので、充放電に伴う構造変化が小さく、容量の劣化が抑制される。また、この金属硫化物が炭素材料との複合材料とされていれば、金属硫化物と電解液との副反応が抑制され、容量の劣化がより抑制される。
【0033】
このように本実施の形態によれば、化5で表される金属硫化物を含むようにしたので、充放電の際に生じる構造変化を抑制することができ、充放電反応の可逆性を向上させることができる。よって、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
【0034】
特に、この金属硫化物を炭素材料との複合材料とするようにすれば、金属硫化物と電解液との副反応を抑制することができる。よって、充放電反応の可逆性をより向上させることができる。
【実施例】
【0035】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0036】
(実施例1−1〜1−4)
まず、原料として、ニッケル粉末,鉄粉末,銅粉末,コバルト粉末,および硫黄粉末を用意し、表1に示した組成となるように混合した。すなわち、実施例1−1ではニッケルと鉄と銅と硫黄とのモル比が1/3:1/3:1/3:1となるようにし、実施例1−2ではニッケルと鉄と硫黄とのモル比が0.9:0.1:1となるようにし、実施例1−3ではニッケルと鉄と銅と硫黄とのモル比が0.8:0.1:0.1:1となるようにし、実施例1−4ではコバルトと鉄と硫黄とのモル比が0.8:0.2:1となるようにした。このうち実施例1−1〜1−3は第1金属元素MIがニッケル、第2金属元素MIIが鉄、または鉄および銅であり、実施例1−4は第1金属元素MIがコバルト、第2金属元素MIIが鉄である。
【0037】
次いで、この混合物を硬質鋼製ボールと共にアルゴン雰囲気中において密封容器に封入し、ボールミル機を用いてメカノケミカル反応させ、金属硫化物を合成した。反応時間は10時間とした。
【0038】
得られた実施例1−1〜1−4の金属硫化物についてX線回折パターンを測定した。X線回折装置にはリガクRINT2500の回転対陰極型を用いた。なお、このX線回折装置は、ゴニオメータとして縦標準型半径185mmのものを備えていると共に、Kβフィルタなどのフィルタは使用せず波高分析器とカウンタモノクロメータとの組み合わせによりX線の単色化を行い、シンチレーションカウンタにより特定X線を検出するタイプのものである。測定は、特定X線としてCuKα(40kV,100mA)を用い、試料面に対する入射角度DSおよび試料面に対する回折線のなす角度RSをそれぞれ1°、入射スリットの幅SSを0.15mmとし、連続スキャン(走査範囲2θ=10°〜80°,走査速度4°/min)で反射法により行った。
【0039】
図2および図3に、実施例1−1および実施例1−2について得られたX線回折パターンを代表して示す。
【0040】
続いて、得られた実施例1−1〜1−4の金属硫化物を用いて、図1に示したようなコイン型の電池を作製し、充放電試験を行い、正極材料の特性評価を行った。
【0041】
その際、正極12は次のようにして作製した。まず、合成した金属硫化物を乾燥させて正極材料として30mg秤取り、導電剤であるグラファイトおよびバインダであるポリフッ化ビニリデンと共に、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンを用いて混合し、ペースト状の正極合剤とした。なお、金属硫化物とグラファイトとの割合は、金属硫化物:グラファイト=98:2の質量比とし、ポリフッ化ビニリデンはこの混合物98質量部に対して2質量部の割合とした。次いで、この正極合剤をアルミニウム箔よりなる正極集電体12Aに塗布し、乾燥アルゴン気流中において100℃で1時間乾燥させ、正極12とした。
【0042】
負極14には円板状に打ち抜いたリチウム金属板を用い、電解液には1,3−ジオキソランとジメトキシエタンとを2:1の体積比で混合した溶媒にリチウム塩としてLiPF6 を1.15mol/lの濃度で溶解させたものを用いた。電池の大きさは、直径20mm、高さ1.6mmとした。
【0043】
また、充放電試験は23℃において次のようにして行った。まず、1.0mA/cm2 の定電流で電池電圧が0.8Vに達するまで定電流放電を行い、次いで、1.0mA/cm2 の定電流で電池電圧が3.0に達するまで定電流充電を行ったのち、3.0Vの定電圧で電流が0.1mA/cm2 以下となるまで定電圧充電を行った。
【0044】
図4に実施例1−1の充放電曲線を、図5に実施例1−2の充放電曲線を代表して示すと共に、表1に実施例1−1〜1−4の1サイクル目における充電容量,放電容量および放充電効率、2サイクル目の充放電効率、並びに30サイクル目の1サイクル目に対する容量維持率をそれぞれ示す。なお、1サイクル目の放充電効率は、(1サイクル目の充電容量/1サイクル目の放電容量)×100により求め、2サイクル目の充放電効率は、(2サイクル目の放電容量/2サイクル目の充電容量)×100により求め、30サイクル目の容量維持率は、(30サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100により求めた。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1−1〜1−4に対する比較例1−1として、ニッケル粉末と硫黄粉末とをモル比が1:1となるように混合したことを除き、実施例1−1〜1−4と同様にして金属硫化物NiSを合成した。比較例1−1は金属元素を1種しか含まないものである。比較例1−1の金属硫化物についても、実施例1−1〜1−4と同様にしてX線回折パターンを測定した。図6にそのX線回折パターンを示す。図6から、得られた比較例1−1の金属硫化物はNiSであることが確認された。
【0047】
また、比較例1−1の金属硫化物を用いて、実施例1−1〜1−4と同様にしてコイン型の電池を作製し、同様にして特性評価を行った。図7にその充放電曲線を示すと共に、表1に1サイクル目の充電容量,放電容量および放充電効率、2サイクル目の充放電効率、並びに30サイクル目の容量維持率をそれぞれ示す。
【0048】
図4,5,7を比較すれば分かるように、比較例1−1では充電末期に短いフラット部が観察されるのに対して、実施例1−1,1−2では緩やかな放充電カーブを示し、充電末期においてもそのようなフラット部は観察されなかった。このフラット部は充電中に相分離反応が起こっていることを示唆しており、本実施例によれば相分離反応が抑制されていると思われる。なお、実施例1−1,1−2についてのみ充放電曲線を示したが、実施例1−3,1−4についても同様の結果が得られた。
【0049】
また、表1からわかるように、実施例1−1〜1−4によれば、比較例1−1よりも、1サイクル目の放充電効率、2サイクル目の充放電効率、および30サイクル目の容量維持率のいずれについても向上させることができた。
【0050】
すなわち、第1金属元素MIと第2金属元素MIIとを含む金属硫化物を用いるようにすれば、充放電の際に生じる構造変化を抑制することができ、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0051】
(実施例2−1〜2−11)
実施例1−1〜1−4と同様にして表2に示した組成の金属硫化物を合成したのち、得られた金属硫化物98質量部と、グラファイト2質量部とを混合し、ボールミルを用いて1時間混合・粉砕を行うことにより、金属硫化物とグラファイトとの複合材料を形成した。
【0052】
なお、実施例2−1の金属硫化物はNi1/3 Fe1/3 Cu1/3 Sであり、第1金属MIがニッケル、第2金属元素MIIが鉄および銅である。実施例2−2の金属硫化物はNi0.9 Fe0.1 S、実施例2−3の金属硫化物はNi0.5 Fe0.5 Sであり、それらの第1金属MIはニッケル、第2金属元素MIIは鉄である。実施例2−4の金属硫化物はNi0.9 Cu0.1 Sであり、第1金属MIがニッケル、第2金属元素MIIが銅である。実施例2−5の金属硫化物はNi0.9 Co0.1 S、実施例2−6の金属硫化物はNi0.5 Co0.5 Sであり、これらの第1金属MIはニッケル、第2金属元素MIIはコバルトである。実施例2−7の金属硫化物はNi0.8 Fe0.1 Cu0.1 Sであり、第1金属MIがニッケル、第2金属元素MIIが鉄および銅である。実施例2−8の金属硫化物はCo0.8 Fe0.2 Sであり、第1金属MIがコバルト、第2金属元素MIIが鉄である。実施例2−9の金属硫化物はCo0.9 Cu0.1 Sであり、第1金属MIがコバルト、第2金属元素MIIが銅である。実施例2−10の金属硫化物はCo0.9 Ni0.1 Sであり、第1金属MIがコバルト、第2金属元素MIIがニッケルである。実施例2−11の金属硫化物はCo0.7 Fe0.2 Cu0.1 Sであり、第1金属MIがコバルト、第2金属元素MIIが鉄および銅である。
【0053】
得られた実施例2−1〜2−11の複合材料について実施例1−1〜1−4と同様にしてX線回折パターンを測定した。図8に実施例2−1の結果を、図9に実施例2−2の結果を、図10に実施例2−7の結果を代表して示す。その結果、実施例2−1〜2−11のいずれについても、2θ=26°付近にグラファイトを示す強い強度の鋭いピークがみられ、また、それぞれの金属硫化物の組成を示すピークも見られた。
【0054】
続いて、得られた実施例2−1〜2−11の複合材料を用いて、実施例1−1〜1−4と同様にして電池を作製し、同様にして充放電試験を行った。なお、正極12を作製する際には、この複合材料98質量部と、ポリフッ化ビニリデン2質量部とを混合してペースト状の正極合剤とした。
【0055】
図11に実施例2−2の放電曲線を代表して示すと共に、表2に実施例2−1〜2−11の1サイクル目における充電容量,放電容量および放充電効率、2サイクル目の充放電効率、並びに30サイクル目の容量維持率をそれぞれ示す。なお、表2には実施例1−1〜1−4の結果も合わせて示した。
【0056】
なお、実施例2−2についてのみ放電曲線を示したが、実施例2−1,2−3〜2−11についても同様の結果が得られた。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例2−1〜2−11に対する比較例2−1,2−2として、比較例2−1では金属硫化物としてNiS粉末を用いたことを除き、また、比較例2−2では金属硫化物としてFeS粉末を用いたことを除き、他は実施例2−1〜2−11と同様にして複合材料を作製した。比較例2−1,2−2についても、実施例2−1〜2−11と同様にして二次電池を作製し、充放電試験を行った。得られた結果を表2に示す。
【0059】
表2からわかるように、実施例2−1〜2−11によれば、比較例2−1,2−2よりも、1サイクル目の放充電効率、2サイクル目の充放電効率、および30サイクル目の容量維持率のいずれについても向上させることができた。また、実施例2−1〜2−11と実施例1−1〜1−4とを比較すれば分かるように、金属硫化物と炭素材料との複合材料とした実施例2−1〜2−11の方が、いずれについても向上させることができた。
【0060】
すなわち、第1金属元素MIと第2金属元素MIIとを含む金属硫化物と、炭素材料との複合材料を用いるようにすれば、充放電反応の可逆性をより向上させることができ、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0061】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子電解質、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質、溶融塩電解質、またはこれらを混合したものが挙げられる。
【0062】
また、上記実施の形態および実施例では、コイン型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は他の構造を有する円筒型や、ボタン型あるいは角型など他の形状を有する二次電池、または巻回構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。更に、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
【0063】
更に、上記実施の形態および実施例では、本発明の正極材料をメカノケミカルにより合成する場合について説明したが、他の製造方法により合成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態に係る正極材料を用いた二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】本発明の実施例1−1に係る金属硫化物Ni1/3 Fe1/3 Cu1/3 SのX線回折パターンを表す特性図である。
【図3】本発明の実施例1−2に係る金属硫化物Ni0.9 Fe0.1 SのX線回折パターンを表す特性図である。
【図4】本発明の実施例1−1に係る充放電曲線を表す特性図である。
【図5】本発明の実施例1−2に係る充放電曲線を表す特性図である。
【図6】比較例1−1に係る金属硫化物NiSのX線回折パターンを表す特性図である。
【図7】比較例1−1に係る充放電曲線を表す特性図である。
【図8】本発明の実施例2−1に係る複合材料Ni1/3 Fe1/3 Cu1/3 S−CのX線回折パターンを表す特性図である。
【図9】本発明の実施例2−2に係る複合材料Ni0.9 Fe0.1 S−CのX線回折パターンを表す特性図である。
【図10】本発明の実施例2−7に係る複合材料Ni0.8 Fe0.1 Cu0.1 S−CのX線回折パターンを表す特性図である。
【図11】本発明の実施例2−2に係る放電曲線を表す特性図である。
【符号の説明】
【0065】
11…外装缶、12…正極、12A…正極集電体、12B…正極活物質層、13…外装カップ、14…負極、14A…負極集電体、14B…負極活物質層、15…セパレータ、16…ガスケット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1で表される金属硫化物を含むことを特徴とする正極材料。
(化1)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【請求項2】
化2で表される金属硫化物と、炭素材料との複合材料を含むことを特徴とする正極材料。
(化2)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【請求項3】
前記複合材料は、前記金属硫化物よりなる粒子の少なくとも一部が炭素材料により覆われたものであることを特徴とする請求項2記載の正極材料。
【請求項4】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記正極は、化3で表される金属硫化物を含むことを特徴とする電池。
(化3)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【請求項5】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記正極は、化4で表される金属硫化物と、炭素材料との複合材料を含むことを特徴とする電池。
(化4)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【請求項6】
前記複合材料は、前記金属硫化物よりなる粒子の少なくとも一部が炭素材料により覆われたものであることを特徴とする請求項5記載の電池。
【請求項1】
化1で表される金属硫化物を含むことを特徴とする正極材料。
(化1)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【請求項2】
化2で表される金属硫化物と、炭素材料との複合材料を含むことを特徴とする正極材料。
(化2)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【請求項3】
前記複合材料は、前記金属硫化物よりなる粒子の少なくとも一部が炭素材料により覆われたものであることを特徴とする請求項2記載の正極材料。
【請求項4】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記正極は、化3で表される金属硫化物を含むことを特徴とする電池。
(化3)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【請求項5】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記正極は、化4で表される金属硫化物と、炭素材料との複合材料を含むことを特徴とする電池。
(化4)
MIx MII1-x Sy
(式中、MIは第1金属元素を表し、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe),マンガン(Mn),バナジウム(V),チタン(Ti),モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種である。MIIは第2金属元素を表し、鉄,銅(Cu),ニッケル,コバルト,マンガン,バナジウム,チタン,マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種であり、第1金属元素とは異なる元素である。xおよびyは、それぞれ0<x<1、0.5<y<2.5の範囲内の値である。)
【請求項6】
前記複合材料は、前記金属硫化物よりなる粒子の少なくとも一部が炭素材料により覆われたものであることを特徴とする請求項5記載の電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−24415(P2006−24415A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200344(P2004−200344)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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