説明

歩数計

【課題】3軸の加速度センサのみで簡易に正確な歩数を検出し、併せて運動状態(歩行、走行、階段上り及び階段下り)を判定して、正確な総消費カロリーの算出を可能とする歩数計を提供するものである。
【解決手段】3軸加速度センサ20と運動状態判定手段33とを備える。3軸加速度センサ20は、被測定者の歩行に伴って生じる加速度を、互いに直交する3軸方向についてそれぞれ測定する。運動状態判定手段33は、一歩の前記歩行がされる間に前記3軸加速度センサ20によって測定した、上下方向における加速度Azの最大値Azmaxを2歩分平均し、該2歩に要した時間Δtで除した値である運動状態判断値及び、進行方向における前記加速度の前記2歩分の平均値である加速度平均値Ayaveに基づいて、前記被測定者の運動状態が歩行、走行、階段上り及び階段下りのいずれであるかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサを用いて運動状態を判定できる歩数計、走行速度計及び消費カロリー計を有する歩数計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、加速度センサを用いて歩数を計測し、消費カロリーを計算する歩数計が開発されている。
例えば、特許文献1には、X、Y、Zの加速度検出方向それぞれの加速度センサ出力信号の周波数成分に応じた歩数検出閾値を設けることにより、走るなどの早い速度で歩いた場合、遅い速度で歩いた場合でも歩数を確実に検出できる技術が開示されている。
【0003】
しかし、周波数成分に応じた複数の歩数検出閾値を設けることが必要なために複雑な回路構成となるとともに上記技術においては一定の道路状態における歩く速度にかかわらず歩数が正確に計測できるのみで、消費カロリーの計算における運動状態に応じた負荷を一定としているため正確な消費カロリーが計算できないという問題がある。
【0004】
また、特許文献2には、加速度センサに加えて気圧センサを用い、加速度センサと気圧センサの信号を解析して運動状態(歩行状態、走行状態、減速・加速状態、昇降状態の組み合わせ)を判定し、運動状態に応じた消費カロリを演算する技術が開示されている。
【0005】
しかし、上記技術においては、加速度センサに加えて気圧センサ及び気圧センサ回路を必要とするために構造が複雑となり、また歩数は歩数センサから検出するとしており、その歩数の正確さは開示していないため、正確な総消費カロリーが算出できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−143048号公報
【特許文献2】特開平11−347021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、3軸の加速度センサのみで簡易に正確な歩数を検出し、併せて運動状態(歩行、走行、階段上り及び階段下り)を判定し、よって走行スピードの算出と正確な総消費カロリーの算出を可能とする歩数計を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1にかかる歩数計は、被測定者の歩行に伴って生じる加速度を、互いに直交する3軸方向についてそれぞれ測定する3軸加速度センサと、
一歩の前記歩行がされる間に前記3軸加速度センサによって測定した、上下方向における前記加速度の最大値を2歩分平均し、該2歩に要した時間で除した値である運動状態判断値及び、進行方向における前記加速度の前記2歩分の平均値である加速度平均値に基づいて、前記被測定者の運動状態が歩行、走行、階段上り及び階段下りのいずれであるかを判定する運動状態判定手段とを備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の歩数計における構成要素の概略を示すブロック図である。
【図2】歩行による加速度の波形を示す図である。
【図3】本発明の歩数計における歩数計測を示すフロー図である。
【図4】本発明における運動状態判定を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
また、請求項2にかかる歩数計は、予め記憶した前記被測定者の歩幅情報と、一定走行歩数に要した時間とにより、前記被測定者の走行速度を演算する走行速度演算手段を有していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3にかかる歩数計は、被測定者の生体条件と前記歩数計により検出された前記運動状態と前記歩数とから消費カロリーを演算する消費カロリー演算手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
従って、本発明によれば、3軸の加速度センサのみで簡易に正確な歩数を検出することが可能となり、また、3軸加速度センサから出力される上下方向と進行方向の加速度から容易に運動状態(歩行、走行、階段上り及び階段下り)の判定ができる。よって、走行状態時における歩数から走行スピードの算出が可能となる。さらに、各運動状態に応じた消費カロリーを算出できることから実際の運動状態における総消費カロリーの算出を可能とするものである。
【実施例】
【0013】
(実施例1)
本発明の実施の形態について図1〜図4を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態における歩数計10の構成要素の概略を示すブロック図である。この歩数計10は、3軸加速度センサ20、演算部30及び表示部40から構成され、演算部30には加速度変化量算出部31、歩数計測部32、運動状態判定部33、走行速度算出部34、消費カロリー算出部35及び外部メモリ36から構成される。
【0014】
3軸加速度センサ20は、x方向、y方向、z方向のすべての方向の加速度を検出し、3軸加速度センサ20から出力される3軸加速度値算出のそれぞれの成分をAx、Ay、Azとする。
歩数計が被測定者の腰に装着されている場合には、上下方向の加速度とz方向の加速度は一致し、出力される3軸加速度値算出の成分の値はAzとなる。また、進行方向の加速度とy方向の加速度は一致し、出力される3軸加速度値算出の成分の値であるAyとする。なお、3軸加速度センサ20を構成している直交する3軸の方向と被測定者の装着方向(上下方向及び進行方向)が一致しないときは、加速度値のベクトル成分からAx、Ay、Azとする。
【0015】
加速度変化量算出部31では、3軸加速度センサから出力された3軸加速度の成分であるAx、Ay、Azの値をそれぞれ二乗しその和の平方根(算出加速度という。)を求め、前回の算出加速度の値との差を変化量として算出するものである。
【0016】
歩数計測部32では、上記の変化量に応じた歩数検出しきい値を満たす場合には歩数の計測が可能となり、次いで歩数検出時間しきい値を満たしたときに歩数計測を開始するものである。歩数の計測が開始されると、その累積した歩数が表示部40にて表示される。
【0017】
図2に歩行による加速度の波形を示し、歩数計測部について詳細に説明する。
加速度の波形の中に示すサンプリングのデータは、一定のサンプリングレートでサンプリングを行ったときのサンプリング時(t)における算出加速度の変化量(ΔA)を示し、歩数計測の第1条件として歩数検出しきい値を0.045gとする。なお、gは重力加速度である。サンプリングレートを遅くすると歩数の計測に誤差が大きくなり、他方サンプリングレートを速くすると消費電力が増加するために、サンプリングレートを100msecとしたときに歩数計測誤差を3%以下とすることができるようにしきい値として0.045gとする。
すなわち、しきい値0.045gの加速度値(図2の横軸)と交差するサンプリングした2点を用いて見かけ上のサンプリングレートを上げることにより、サンプリングレート100msecにおいても歩数計測精度3%以下を実現できる。
【0018】
次に、一般に人の歩行速度は1secで2歩程度であり、1歩あたり0.4sec〜0.5sec程度の波形で歩いたとして判定する必要がある。そこで、上記のようにサンプリングレートを0.1secとすることにより5回の計測程度でも1歩と判定できるように精度を確保できるようにした。しかし、サンプリングレートは100msec(0.1sec)としているためにサンプリング値のばらつきがある。そこで、しきい値0.045gを挟んだ前回の計測から今回の計測までの時間として歩数時間検出しきい値を0.2secとする。
【0019】
運動状態判定部33は、3軸加速度センサから出力された上下方向の加速度Azと進行方向の加速度Ayの値を演算して、被測定者が歩いているか、走っているか、階段を上っているかあるいは階段を下っているのかを判定する。
上記の4つの運動状態に応じて上下方向の加速度Azと進行方向の加速度Ayの値が異なってくる。すなわち、上下方向の加速度Azは運動状態における着地時の衝撃状態に応じた値が検出され、「走行」が着地時の衝撃が大きいため最も大きく、次いで「階段下り」は重力による自由落下分が加えられるため大きく、「歩行」はニュートラルの状態とし、「階段上り」は重力方向と反発するため小さくなるという順で小さくなる。進行方向の加速度Ayは運動状態における前進方向の推進力と考えられ、「歩行」をニュートラルの状態とすると、「階段下り」は被測定者が後傾(後加重)になるために小さく、「階段上り」は被測定者が前傾(前加重)になるために大きくなる。
【0020】
上下方向の加速度Azは、上記の判定のため次のように演算される。
歩数の計測を行ない、2歩分の歩数計測時間Δtを求めた後、歩数計測時間の前後0.2sec以内の上下方向の加速度最大値Azmaxを求める。次いで、運動状態判断値として、2歩分のAzmaxの平均値×1/Δtを算出し、加速度最大平均しきい値550を超える場合には「走行」状態にあると判定する。550より小さい場合には、「階段下り」状態、「歩行」状態又は「階段上り」状態にあると判定する。
なお、必要な場合には上下方向の加速度のオフセットを求めて、静止時の値をオフセットとする。完全に上下方向が垂直であれば加速度は1gである。
【0021】
また、進行方向の加速度Ayは、上記の判定のため次のように演算される。
歩数の計測を行ない、2歩分の歩数計測時間Δtを求めた後、進行方向の加速度の2歩分を積分し、時間で除して進行方向の加速度平均値Amaxを求める。
なお、必要な場合には、静止時の値をオフセットする。完全な水平であれば、加速度は0gである。
進行方向の加速度平均しきい値として3つを設定し、−50より小さい場合には「階段下り」と判定し、+50より大きい場合には「階段上り」と判定する。そして、−50〜+50の場合には「歩行」と判定する。
【0022】
走行速度算出部34は、運動状態判定部で走行状態と判定されたとき、歩数計測部にて算出された歩数を時間で除することにより走行周期を求め、これに被測定者の走行幅(あらかじめ記憶されている情報)を乗して算出する。
【0023】
消費カロリー算出部35は、運動状態に見合った消費カロリーを算出する。
一歩あたりの消費カロリー(cal)は、0.106×|Az×1/Δt|×状態係数×被測定者のパラメータ、で求められ、状態係数は「歩行」及び「走行」は1.0、「階段上り」は3.3、「階段下り」は0.8とする。また、被測定者の体重、身長、年齢、性別などの生体条件が異なることから、パラメータを外部メモリから出力する。
したがって、実際の運動状態における総消費カロリーは、それぞれの運動状態に応じた累積歩数と上記の一歩あたりの消費カロリーを乗して、加算することにより求められる。
【0024】
次に、図3のフロー図を用いて本発明の実施の形態における歩数計を説明する。
ステップ101において、3軸加速度センサより出力された3軸加速度値を算出し、それぞれの成分をAx、Ay、Azとする。
次のステップ102において、式(1)により各成分の二乗の和を算出し、その平方根による算出加速度Aを求める。
【0025】
=√(Ax+Ay+Az) ・・・ (1)
【0026】
ステップ103において、今回の算出加速度Aと前回の算出加速度A−1とから前回からの加速度変化量ΔAを、式(2)により求める。
【0027】
ΔA=A−Ai−1 ・・・ (2)
【0028】
ステップ104において、前回求めた加速度変化量A−1がしきい値0.045gより小さく、かつ、今回求めた加速度変化量Aがしきい値0.045gより大きいときは、歩数計測の可能性がありとして次のステップ105に移行する。いずれか一方若しくはいずれも満たさないときは、ステップ107にて歩数を計測しないと判断し、終了する。
【0029】
ステップ105において、前回歩数計測から歩数検出時間が0.2sec以上の場合には歩数を計測するとし、この歩数計測処理を終了する。
前回歩数計測から0.2sec以下の場合には、ステップ107にて歩数を計測しないと判断し、終了する。
なお、上記の歩数検出時間は式(3)により求める。
【0030】
t=(0.045−ΔAi−1)×(t−ti−1)/(ΔA−ΔAi−1)+ti−1
・・・ (3)
【0031】
次に、図4のフロー図を用いて本発明の実施の形態における運動状態判定を説明する。
ステップ201において、2歩分の歩数を計測するために要した時間Δtを求め、次のステップ202において、歩数計測時間の前後0.2sec以内における上下方向の加速度の最大値Azmaxを求める。
【0032】
ステップ203において、2歩分のAzmaxの平均値×1/Δtを算出し、算出された運動状態判断値がしきい値550より大きい場合には、ステップ209において走行と判定し、終了する。一方、しきい値550より小さい場合には次のステップ204に移行する。ここで、2歩分のAzmaxの平均値×1/Δtの算出は、式(4)により行う。
【0033】
運動状態判断値=((Azmax1+Azmax2)/2×1/Δt)・・・(4)
【0034】
ステップ204において、2歩分の時間Δtにおける進行方向の加速度平均値Amaxを求める。この加速度平均値Amaxが、ステップ205において−50より少ない場合にはステップ206に移行して階段下りと判定し、−50〜+50の間にある場合にはステップ207に移行して歩行と判定し、+50より大きい場合にはステップ208に移行して階段上りと判定し、終了する。
【0035】
本発明によれば、3軸加速度センサのみ、検出した加速度に基づいて簡易かつ正確に歩数を検出することができる。また、検出した上下方向の加速度と進行方向の加速度を求めて一定のしきい値と比較することにより、歩行、走行、階段上り及び階段下りの運動状態を判定することができるため、走行速度を求めることができる。そして、運動状態に応じた消費カロリーを算出することができるので、実際の運動状態における総消費カロリーを求めることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 歩数計
20 3軸加速度センサ
30 演算部
31 加速度変化量算出部
32 歩数計測部
33 運動状態判定部
34 歩行速度算出部
35 消費カロリー算出部
36 外部メモリ
40 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の歩行に伴って生じる加速度を、互いに直交する3軸方向についてそれぞれ測定する3軸加速度センサと、
一歩の前記歩行がされる間に前記3軸加速度センサによって測定した、上下方向における前記加速度の最大値を2歩分平均し、該2歩に要した時間で除した値である運動状態判断値及び、進行方向における前記加速度の前記2歩分の平均値である加速度平均値に基づいて、前記被測定者の運動状態が歩行、走行、階段上り及び階段下りのいずれであるかを判定する運動状態判定手段とを備えていることを特徴とする歩数計。
【請求項2】
請求項1に記載の歩数計において、予め記憶した前記被測定者の歩幅情報と、一定走行歩数に要した時間とにより、前記被測定者の走行速度を演算する走行速度演算手段を有していることを特徴とする歩数計。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歩数計において、被測定者の生体条件と前記歩数計により検出された前記運動状態と前記歩数とから消費カロリーを演算する消費カロリー演算手段を備えていることを特徴とする歩数計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−178164(P2012−178164A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88205(P2012−88205)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2007−127378(P2007−127378)の分割
【原出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(501034106)アイチ・マイクロ・インテリジェント株式会社 (42)
【Fターム(参考)】