説明

歩行型作業機

【課題】操縦ハンドルの伸縮操作をより簡便に実施できるようにすること。
【解決手段】操縦ハンドルが、操作部側の第1パイプ部材P1と、第1パイプ部材P1を長手方向に移動自在に支持するように第1パイプ部材P1を挿通する作業機本体側の第2パイプ部材P2とを備え、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定及び固定解除自在な固定部材23を第2パイプ部材P2の内部に備え、操作部の操作を固定部材23に伝える連係部材26を第1パイプ部材P1の内部に備えて構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が操作する操作部を有し且つ長手方向に伸縮操作可能に作業機本体に連結される操縦ハンドルを備える歩行型作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の歩行型作業機としては、例えば、特許文献1に示すものが知られている。この特許文献に記載される歩行型作業機の操縦ハンドルは、内筒と、内筒を挿入及び引き出し自在に収容する外筒と、内筒の外周面に形成した嵌入溝に設けられる係止体と、係止体を押圧可能に外筒に設けられる固定具とを備える。かかる構成により、固定具の締め込みを緩めることで、内筒の嵌入溝に対する係止体の圧接を解除し、内筒を外筒に対してスライド移動させて操縦ハンドルの長さを調節する。その後固定具を締め込むことで、固定具が係止体を押して内筒の嵌入溝に圧接させて、内筒の位置を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002‐165509号公報(図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記歩行型作業機の操縦ハンドルでは、内筒を外筒に対してスライド移動させて伸縮操作を行う際に、作業者は、操縦ハンドルの中間部に設けてある固定具の操作を行うために、操作部を一旦離れるか、あるいは操作部から前のめりになって手を伸ばすなどして無理な姿勢で操作を行う必要があり、操作上不便な点があった。
【0005】
本発明の目的は、操縦ハンドルの伸縮操作をより簡便に実施できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歩行型作業機の第1特徴構成は、作業者が操作する操作部を有し且つ長手方向に伸縮操作可能に作業機本体に連結される操縦ハンドルを備える歩行型作業機であって、前記操縦ハンドルが、前記操作部側の第1パイプ部材と、前記第1パイプ部材を長手方向に移動自在に支持するように前記第1パイプ部材を挿通する前記作業機本体側の第2パイプ部材とを備え、前記第1パイプ部材を前記第2パイプ部材に固定及び固定解除自在な固定部材を前記第2パイプ部材の内部に備え、前記操作部の操作を前記固定部材に伝える連係部材を前記第1パイプ部材の内部に備えて構成してある点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、操作部の操作を、連係部材を介して固定部材に伝えることによって、操縦ハンドルの伸縮操作を実施することができる。そのため、作業者は、操縦ハンドルの伸縮操作を行うために、操作部を離れたり、あるいは操作部から前のめりになって手を伸ばすなどして無理な姿勢で操作を行う必要がなく、手元で簡単に操作することができ、操作性が良い。特に、作業機本体の姿勢が不安定になり易い斜面(法面)において作業を行う場合でも、容易に操縦ハンドルの伸縮操作を実施することができる。
さらに、固定部材を第2パイプ部材の内部に設け、連係部材を第1パイプ部材の内部に設けてあるため、これらの部材が風雨に曝されることがなく、草やゴミなども付着し難い。従って、メンテナンスの手間もかからない。
【0008】
第2特徴構成は、前記第1パイプ部材が、前記第2パイプ部材に対して挿入及び引き出し自在に支持されており、前記操作部の操作によって、前記固定部材が拡径して前記第2パイプ部材の内面に当接し、前記第2パイプ部材に対する前記連係部材の移動が規制されることにより、前記第2パイプ部材に対する前記第1パイプ部材の移動を規制する点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、固定部材を拡径及び縮径させるという簡易な操作によって、第1パイプ部材を第2パイプ部材に固定及び固定解除自在に構成することができる。
【0010】
第3特徴構成は、前記第1パイプ部材が、前記第2パイプ部材に対して挿入及び引き出し自在に支持されており、前記操作部の操作によって、前記固定部材が前記第1パイプ部材を拡径して前記第2パイプ部材の内面に当接させ、前記第2パイプ部材に対する前記第1パイプ部材の移動を規制する点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、固定部材を拡径及び縮径させるという簡易な操作によって、第1パイプ部材を第2パイプ部材に固定及び固定解除自在に構成することができる。
【0012】
第4特徴構成は、前記第1パイプ部材のうち前記操作部とは反対側の先端部分に周方向で対峙する2つのスリットを設け、前記固定部材が、当該先端部分を拡径させて前記第2パイプ部材の内面に当接させる点にある。
【0013】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、第1パイプ部材の先端部分に周方向で対峙する2つのスリットを設けてあるため、当該先端部分の拡径性が良い。そのため作業者はより少ない力で拡径操作を実施することができ、より操作性が良い。
【0014】
第5特徴構成は、前記操作部の操作による拡径度合いを調節する調節部材を前記操作部に備える点にある。
【0015】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、操作部の調節部材を操作するだけで簡単に、第1パイプ部材と第2パイプ部材との間に適切な固定力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】操縦ハンドルを最も短縮させたときの歩行型草刈機の全体側面図である。
【図2】最も伸長させたときの操縦ハンドルの全体側面図である。
【図3】歩行型草刈機の平面図である。
【図4】伝動構造を模式的に示す図である。
【図5】ハンドル支持部の縦断面図である。
【図6】ハンドル支持部の平面図である。
【図7】保持機構の側面図である。
【図8】操縦ハンドルのグリップ及び第2パイプ部材付近の側面図である。
【図9】操縦ハンドルのグリップ及び第2パイプ部材付近の平面図である。
【図10】保持機構の縦断正面図である。
【図11】第1実施形態において第1パイプ部材と第2パイプ部材とが非固定状態(a)及び固定状態(b)にあるときの固定手段の縦断面図である。
【図12】第1実施形態における固定手段の分解斜視図である。
【図13】操作部における連係部材と操作レバー付近の縦断面図である。
【図14】図13の矢視線XIV−XIVにおける横断面図である。
【図15】操作部における連係部材、操作レバー、及び調節部材の分解斜視図である。
【図16】第2実施形態において第1パイプ部材と第2パイプ部材とが非固定状態(a)及び固定状態(b)にあるときの固定手段の縦断面図である。
【図17】第2実施形態における固定手段の分解斜視図である。
【図18】歩行型草刈機の梱包状態を示す側面図である。
【図19】歩行型草刈機の梱包状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態として、本発明の構成を採用した歩行型草刈機を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3に示すように、歩行型草刈機は、走行機体を構成する作業機本体Aと、長手方向に伸縮操作可能に作業機本体Aに連結される操縦ハンドルHとを備える。
【0018】
(作業機本体)
作業機本体Aは、前車輪1、後車輪2、ハウジング3、エンジン4、伝動ケース5、刈取機構C、及び走行伝動機構Dを備えて構成される。
【0019】
前車輪1及び後車輪2のそれぞれは、ハウジング3の前端位置及び後端位置に配置される。尚、本明細書において、前側とは図1の紙面左側を意味し、後側とは図1の紙面右側を意味する。
【0020】
伝動ケース5は、原動部としてのエンジン4を上部に備え、ハウジング3に対して上下に貫通する状態で設けられている。
【0021】
刈取機構Cは、ハウジング3の中に配置され、伝動ケース5の下端の駆動軸6からの駆動力により縦向きの駆動軸心Y周りで回転する複数の刈刃7を備える。また、走行伝動機構Dは、伝動ケース5からの駆動力を前車輪1及び後車輪2に伝えるものである。
【0022】
図4に示すように、伝動ケース5の上部位置には、主クラッチMCを備え、この主クラッチMCからの駆動力を駆動力下端の駆動軸6に伝える刈取用の伝動系に刈取クラッチCCを介装している。
【0023】
また、主クラッチMCからの駆動力を前車輪1及び後車輪2に伝える走行用の伝動系には、駆動速度(単位時間あたりの回転数)を高低2段に切り換える速度切換機構SMと、この速度切換機構SMからの駆動力を前進のための正転駆動力、又は、後進のための逆転駆動力に変換して出力軸8に伝える前後進切換機構FRMとを備えている。
【0024】
刈取クラッチCCは、エンジン4からの駆動力が伝えられる駆動回転体101に対し、駆動軸6にスプライン嵌合するクラッチ部材102を駆動軸心Yに沿ってシフトすることにより伝動状態と動力遮断状態とを現出するドッグクラッチ式に構成されている。
【0025】
速度切換機構SMは、エンジン4からの駆動力がウオームギヤ機構WGによって減速されて伝えられる低速軸103と動力取出軸104とが平行姿勢で配置されると共に、減速軸103に遊転支承した減速側の第1ギヤ105と、これに噛合することで動力取出軸104に動力を伝える第2ギヤ106と、減速軸103に遊転支承した高速側の第3ギヤ107と、これに噛合することで動力取出軸104に動力を伝える第4ギヤ108とを備え、更に、減速軸103にスプライン嵌合し、シフト作動により第1ギヤ105又は第3ギヤ107の何れかに噛合するシフト部材109を備えている。
【0026】
前後進切換機構FRMは、動力取出軸104と一体回転するベベルギヤ110と、このベベルギヤ110に噛合するように出力軸8に遊転支承した一対の切換ギヤ111と、出力軸8にスプライン嵌合し、シフト作動により一対の切換ギヤ111の何れかに噛合する切換部材112とを備えている。
【0027】
前述した出力軸8が、前述したハンドル支持部Bと反対側に突出する形態で配置されている。走行伝動機構Dとして、出力軸8からの駆動力が伝えられる主チェーンケース10と、この主チェーンケース10の前端側からの駆動力を前車輪1に伝える前部チェーンケース11と、主チェーンケース10の後端部からの駆動力を後車輪2に伝える後部チェーンケース12とを備えている。
【0028】
(操縦ハンドル)
図1及び図2に示すように、操縦ハンドルHは、作業者が操作を行う操作部Mと、ハウジング3の横側面に設けられるハンドル支持部Bに支持される基端部Eと、操作部Mと基端部Eとをつなぐパイプ部Pとを備える。
【0029】
〔1〕操作部
図8及び図9に示すように、操作部Mは、第1パイプ部材P1の一端に一体に設けられている。そして、操作部Mは、作業者が作業中に把持するループ状のグリップGと、主クラッチMCを操作する主クラッチレバー13と、前後進切換機構FRMを変速操作する前後進切換レバー14と、第1ロック機構L1の解除操作を行う第1ロック解除レバー15と、第2ロック機構L2の解除操作を行う第2ロック解除レバー16と、エンジン4の回転速度を設定するスロットル操作具17と、速度切換機構SMを操作する変速操作具18と、刈取クラッチCCを操作するクラッチ操作具19とを備える。
【0030】
操作部Mの主クラッチレバー13、前後進切換レバー14、第1ロック解除レバー15、第2ロック解除レバー16、スロットル操作具17、変速操作具18、及びクラッチ操作具19のそれぞれが、作業機本体A側に設けられる被操作部の主クラッチMC、前後進切換機構FRM、第1ロック機構L1、第2ロック機構L2、エンジン4、速度切換機構SM、及び刈取クラッチCCとそれぞれのワイヤWを介して連係されている。そして、図1及び図2に示すように、これらのワイヤWの束が、操縦ハンドルHに沿って、後述する保持機構Kによってループ状に支持されている。
【0031】
図1及び図2に示すように、ワイヤWは、作業機本体A側の各被操作部から第2パイプ部材P2に沿って一端側(操縦ハンドルHの操作部M側)に延出し、保持機構Kの受け部材69とフック部材68により支持されつつ第2パイプ部材P2の他端側(操縦ハンドルHの基端部E側)に湾曲する。そして、保持機構Kの揺動アーム60のプーリ65に支持されて、傾斜姿勢の操縦ハンドルHの上側にループRPを形成しながら第2パイプ部材P2の一端側に湾曲し、再び受け部材69に支持されながら、操作部Mに接続される。尚、各ワイヤWの長さは、操縦ハンドルHを最大に伸長させたときの長さに対応させてある。
【0032】
〔2〕パイプ部
図1、図2、図11〜図15に示すように、パイプ部Pは、操作部M側の第1パイプ部材P1と、作業機本体A側の第2パイプ部材P2と、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定及び固定解除自在な固定手段Fと、操作部Mの操作を湾曲板23(固定部材)に伝える連係部材26と、連係部材26を操作する操作手段Jとを備えて構成されている。
【0033】
第1パイプ部材P1、及び第2パイプ部材P2は、ともに細長い角筒状のパイプである。また、第1パイプ部材P1の基端部E側(操作部Mとは反対側)の先端が開口しており、第2パイプ部材P2の操作部M側の先端が開口している。
【0034】
ここで、本実施形態における、第1パイプ部材P1、第2パイプ部材P2、第1平板22、第2平板27、湾曲板23(固定部材)、及び拡径補助部材24の「幅方向」及び「高さ方向」とはそれぞれ、図12における矢印T1方向及び矢印T2方向を示すものとする。
【0035】
本実施形態においては、第1パイプ部材P1の外側寸法の幅及び高さのそれぞれが、第2パイプ部材P2の内側寸法の幅及び高さよりもわずかに小さく設定されており、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2の開口を介して中に挿通(嵌入)することができる。このとき、第1パイプ部材P1の軸心と、第2パイプ部材P2の軸心とが一致する。そして、第1パイプ部材P1は、第2パイプ部材P2に対して挿入及び引き出し自在に支持される。
【0036】
尚、これらの第1パイプ部材P1、及び第2パイプ部材P2に適用可能な素材としては、例えば、スチール製、及びアルミ製などが挙げられるが、特にこれらの素材に限定されるものではない。
【0037】
図11及び図12に示すように、固定手段Fは、ダブルナットDN、ワッシャ20、圧縮コイルバネ21、四角形の第1平板22、断面が円弧状に湾曲する四角形の湾曲板23(固定部材)、及び、拡径補助部材24を備える。
【0038】
第1平板22の幅及び高さのそれぞれは、第2パイプ部材P2の内側寸法の幅及び高さよりもわずかに小さく設定されている。
【0039】
湾曲板23の幅は、第2パイプ部材P2の内側寸法の幅よりもわずかに小さく設定されているが、湾曲板23の側面の円弧の長さは、第2パイプ部材P2の内側寸法の高さよりも大きく設定されている。
【0040】
また、第1平板22、及び湾曲板23のそれぞれの中央部分には、厚み方向に貫通する貫通孔22a、及び貫通孔23aが設けられている。
【0041】
拡径補助部材24は、四角柱状の基部24aと、基部24aよりも少し大きめの外側寸法を有する頭部24bとを備える。頭部24bには、山状に盛り上る当接面24cが形成されており、当接面24cの中央部分には、拡径補助部材24の厚み方向に貫通する貫通孔24dが設けられている。
【0042】
拡径補助部材24の基部24aの幅及び高さのそれぞれは、第1パイプ部材P1の内側寸法の幅及び高さと略同じ大きさであり、頭部24bの幅及び高さのそれぞれは、第1パイプ部材P1の内側寸法の幅及び高さよりも少し大きく、且つ第1パイプ部材P1の外側寸法の幅及び高さよりも少し小さく設定されている。そのため、拡径補助部材24は、その基部24aが第1パイプ部材P1の開口に嵌め込まれつつ、頭部24bが第1パイプ部材P1の開口縁に掛止されて固定される。
【0043】
連係部材26は、細長い棒状の部材であり、基端部E側の先端部分が第1パイプ部材P1の開口から突き出た状態で、第1パイプ部材P1の内部に配置される。
【0044】
連係部材26の基端部E側の先端部分には、雄ネジ部26aが形成されている。そして、当該先端部分に対して、拡径補助部材24の貫通孔24d、湾曲板23の貫通孔23a、第1平板22の貫通孔22a、圧縮コイルバネ21、及びワッシャ20にこの順序で挿通させ、最後に雄ネジ部26aにダブルナットDNを螺合してある。
【0045】
図11(a),(b)に示すように、拡径補助部材24は、第1パイプ部材P1の開口に嵌め込み固定されるが、湾曲板23、第1平板22、圧縮コイルバネ21、ワッシャ20、及びダブルナットDNは、連係部材26の先端部分と共に、第1パイプ部材P1の先端から突き出た状態で第2パイプ部材P2の内部に配置される。このとき、湾曲板23は、その円弧の中心が拡径補助部材24側に位置する向きに配置される。尚、湾曲板23、第1平板22、圧縮コイルバネ21、及びワッシャ20は、ダブルナットDNによって連係部材26からの抜け止めがなされている。
【0046】
図13及び図15に示すように、連係部材26の操作部M側の先端部分には、四角形の第2平板27が設けられており、さらに、当該先端部分の先端には、上下方向に貫通し且つ横方向に延びる長孔28aを有する接続板28が溶接されている。尚、第2平板27の中央部分には、厚み方向に貫通する貫通孔27aが設けられており、その貫通孔27aに対して連係部材26の操作部M側の先端部分が挿通されている。
【0047】
第2平板27の幅及び高さのそれぞれは、第1パイプ部材P1の内側寸法の幅及び高さよりもわずかに小さく設定されており、第1パイプ部材P1の内部に配置される。
【0048】
連係部材26は、基端部E側の先端部分に設けられる第1平板22、及び操作部M側の先端部分に設けられる第2平板27に支持されることによって、第1パイプ部材P1の軸心及び第2パイプ部材P2の軸心に略一致する姿勢で保持される。
【0049】
〔3〕連係部材の操作手段
図13〜図15に示すように、連係部材26を操作する操作手段Jは、連係部材26を操作するための操作レバー29と、湾曲板23(固定部材)の拡径具合を調節する調節部材30と、調節部材30を支持する支持部材31とを備えて構成されており、これらは操作部Mに設けられている。
【0050】
図13に示すように、第1パイプ部材P1の操作部M側の先端部分には、上下方向に延びる支軸33が設けられている。支軸33は、変速操作具18とクラッチ操作具19(図9参照)とを支持しており、第1パイプ部材P1の上板P1aと下板P1bとに亘って挿通された状態で固定されている。さらに、第1パイプ部材P1の支軸33よりも基端部E側に位置する下板P1bの下面に、壁板34が垂れ下がるように設けられている。壁板34には、厚み方向に貫通する図示しない2つの貫通孔が横方向に並設して形成されている。
【0051】
第1パイプ部材P1の壁板34と支軸33との間の部分の上板P1aと下板P1bのそれぞれに、第1挿通孔51及び第2挿通孔52が形成されている。第1挿通孔51及び第2挿通孔52は、第1パイプ部材P1の長手方向に延びる長孔であり、第2挿通孔52が第1挿通孔51の真下に形成され、第2挿通孔52は第1挿通孔51よりも大きい。
【0052】
図14及び図15に示すように、調節部材30及び支持部材31は、平面視において野球のホームベース状の形状を有する平板である。調節部材30は、先端ほど先細となる先細部30aと、それ以外の胴部30bとを備える。また、支持部材31は、先端ほど先細となる先細部31aと、それ以外の胴部31bとを備える。ここで、本実施形態における、調節部材30及び支持部材31の「幅方向」及び「長さ方向」とはそれぞれ、図14における矢印T3方向及び矢印T4方向を示すものとする。図14に示すように、調節部材30及び支持部材31の幅は略同じ長さであるが、支持部材31の全体の長さは、調節部材30の全体の長さよりも長い。
【0053】
支持部材31の略中央部分には、厚み方向に貫通し且つ長さ方向に延びる長孔の第3挿通孔53が形成されている。そして、第3挿通孔53の左右両側と先細部31a側の3箇所に、厚み方向に貫通する図示しない貫通孔が形成されており、それらの貫通孔に相当する位置の上面のそれぞれにナットn1〜3が溶接されている。
【0054】
また、支持部材31の胴部31bにおける先細部31aとは反対側の先端が下方に折り曲げられており、支持部材31の先細部31aの先端には、厚み方向に貫通する丸孔31cが形成されている。
【0055】
さらに、支持部材31の胴部31bにおける先細部31aとは反対側の先端部分に四角形の起立壁32が立設されている。起立壁32には、厚み方向に貫通する2つの貫通孔32aが横方向に並設して形成されており、それらの貫通孔32aに相当する位置の先細部31a側の面のそれぞれにナットnが溶接されている。
【0056】
調節部材30の略中央部分には、厚み方向に貫通し且つ平面視においてL字状の第4挿通孔54が形成されている。第4挿通孔54は、長さ方向に延びる直線部54aと、直線部54aの先細部30a側の端から幅方向に延びる係止部54bとを備える。そして、第4挿通孔54の左右両側と先細部30a側の3箇所のそれぞれに、厚み方向に貫通し且つ長さ方向に延びる3つの同一形状の長孔30cが形成されている。
【0057】
支持部材31を操作部Mに組付ける場合は、支持部材31の丸孔31cに支軸33の下端を挿通させ、固定ピン58を支軸33の下端に装着して抜け止めする。さらに、支持部材31の起立壁32の2つの貫通孔32aのそれぞれと、壁板34の図示しない2つの貫通孔のそれぞれとの位置を合わせて、2つのボルトbのそれぞれを、支持部材31の起立壁32の2つの貫通孔32aのそれぞれと壁板34の2つの貫通孔のそれぞれとに亘るように、壁板34の貫通孔側から挿入して挿通させ、ナットnに螺入して締結することによって、支持部材31が操作部Mに固定される。
【0058】
調節部材30を支持部材31に組付ける場合は、調節部材30の先細部30aと支持部材31の先細部31aとが同じ方向に向くようにして、調節部材30と支持部材31の下側に配置して、支持部材31の図示しない3つの貫通孔のそれぞれと、調節部材30の3つの長孔30cのそれぞれとの位置を合わせる。そして、ボルトb1〜b3のそれぞれを、支持部材31の図示しない3つの貫通孔のそれぞれと、調節部材30の3つの長孔30cのそれぞれとに亘るように、調節部材30の長孔30c側から挿入して挿通させ、ナットn1〜3に螺入して締結する。これにより、調節部材30が、支持部材31の下面に対して、平面視において支持部材31からはみ出ることなく固定される。
【0059】
以上のようにして支持部材31と調節部材30とを組み付けた場合、第1パイプ部材P1の第2挿通孔52の下に、支持部材31の第3挿通孔53が配置されることとなり、第1パイプ部材P1の第1挿通孔51及び第2挿通孔52が、平面視において支持部材31の第3挿通孔53の中に配置される。
【0060】
また、図13に示すように、調節部材30の第4挿通孔54は、支持部材31の第3挿通孔53の下に配置され、図14に示すように、平面視において、調節部材30の第4挿通孔54は、支持部材31の第3挿通孔53の中に配置される。そして、支持部材31の第3挿通孔53の延伸方向、調節部材30の第4挿通孔54の直線部54aの延伸方向、及び調節部材30の3つの長孔30cの延伸方向はいずれも、第1パイプ部材P1の長手方向に一致する。
【0061】
図13及び図15に示すように、操作レバー29は、わずかに「く」の字型に折れ曲がる細長い棒状の本体部29aと、作業者が把持する把持部29bとを備える。
【0062】
操作レバー29の本体部29aが、調節部材30の第4挿通孔54、支持部材31の第3挿通孔53、第1パイプ部材P1の第2挿通孔52、連係部材26の接続板28の長孔28a、及び第1パイプ部材P1の第1挿通孔51の全てにわたって挿通している。
【0063】
そして、本体部29aの把持部29bとは反対側の先端部分が、第1パイプ部材P1の上板P1aの上面に第1挿通孔51を挟んで左右に対峙するように立設された2つの起立片50の間に配置され、それら2つの起立片50及び本体部29aの先端部分に亘るように連結ピン55が挿通される。
【0064】
これにより、操作レバー29は、第1パイプ部材P1から下方に延伸するような姿勢で、接続板28の長孔28aを介して連係部材26に接続されると共に、連結ピン55を支点として、調節部材30の第4挿通孔54にガイドされつつ第1パイプ部材P1の長手方向に揺動可能に枢支連結される。
【0065】
作業者が、操作レバー29を図13の紙面右側(操作部M側)に揺動させると、連係部材26が操作レバー29に引っ張られて右側(操作部M側)に移動する。一方、操作レバー29を図13の紙面左側(基端部E側)に揺動させると、連係部材26が操作レバー29に押されて左側(基端部E側)に移動する。
【0066】
また、上記構成によって、連係部材26と第1パイプ部材P1とが操作レバー29を介して接続されるため、第1パイプ部材P1、連係部材26、及び操作部Mは一体となる。
【0067】
〔4〕操縦ハンドルの伸縮操作
次に、操縦ハンドルHの伸縮操作を実施する場合について説明する。
本実施形態においては、操作部Mにおける操作レバー29の操作が、連係部材26を介して、固定部材である湾曲板23に伝えられるように構成されている。
【0068】
まず、図13に示すように、操作部Mの操作レバー29をONの位置(図13の実線の位置)から、OFFの位置(図13の破線の位置)まで揺動させて、第1パイプ部材P1と第2パイプ部材P2との固定を解除する。
【0069】
操作レバー29がONの位置にあるとき、図14の実線部分に示すように、操作レバー29の本体部29aは、調節部材30の第4挿通孔54の係止部54bに係止した状態にある。そこで、操作レバー29を図14の紙面上側にずらすと、操作レバー29の本体部29aと第4挿通孔54の係止部54bとの係止状態が解除され、圧縮コイルバネ21(図11(a)参照)の弾性復元力によって連係部材26が図13の紙面左側(基端部E側)に移動する。そして、連係部材26が基端部E側に移動することによって、操作レバー29も基端部E側に引っ張られる格好となり、操作レバー29が調節部材30の第4挿通孔54の直線部54aにガイドされて、OFFの位置(図13の破線の位置)まで揺動する。
【0070】
このとき、図11(a)に示すように、連係部材26が基端部E側に移動することによって、圧縮コイルバネ21と第1平板22による湾曲板23に対する押圧力が弱められるため、湾曲板23が高さ方向(T2)に縮径して、湾曲板23の曲率が大きくなる。その結果、湾曲板23の上辺及び下辺のそれぞれが、第2パイプ部材P2の上板P2a及び下板P2bに対して非接触状態となり、連係部材26を、操縦ハンドルHの長手方向に移動させることができるようになる。
【0071】
そのため、連係部材26と一体に構成される第1パイプ部材P1が、第2パイプ部材P2に対して、挿入及び引き出し自在に移動できるようになり、作業者は、第1パイプ部材P1と一体である操作部MのグリップGを持ちながら第1パイプ部材P1を操縦ハンドルHの長手方向に押し引きすることによって、操縦ハンドルHを伸縮させることができる。
【0072】
一方、操縦ハンドルHを所望する長さに調節したら、今度は、図13に示すように、操作部Mの操作レバー29をOFFの位置(図13の破線の位置)から、ONの位置(図13の実線の位置)まで揺動させて、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定する。
【0073】
操作レバー29がOFFの位置にあるとき、図14の破線部分に示すように、操作レバー29の本体部29aは、調節部材30の第4挿通孔54の直線部54aの端に位置する。そこで、操作レバー29を直線部54aに沿って図14の紙面右側に引っ張るようにして揺動させ、第4挿通孔54の係止部54bの位置まできたら、操作レバー29を図14の紙面下側にずらして係止させる。
【0074】
このとき、図11(b)に示すように、連係部材26が操作部M側に移動することによって、圧縮コイルバネ21と第1平板22が、湾曲板23を拡径補助部材24側に押す。そして、圧縮コイルバネ21と第1平板22の押圧力を受けた湾曲板23が拡径補助部材24側に移動して、湾曲板23の上辺及び下辺のそれぞれが拡径補助部材24の当接面24cの上端及び下端に接触する。
【0075】
次いで、連係部材26の操作部M側へのさらなる移動によって圧縮コイルバネ21が圧縮され、さらなる押圧力が湾曲板23に加えられると、湾曲板23が拡径補助部材24の当接面24cに沿う形状に変形しつつ、湾曲板23の上辺及び下辺のそれぞれが上方及び下方に移動する。
【0076】
その結果、湾曲板23が高さ方向(T2)に拡径して、その曲率が小さくなると共に、湾曲板23の上辺及び下辺のそれぞれが、第2パイプ部材P2の上板P2a及び下板P2bに対して、湾曲板23の拡径度合いに応じた圧力で当接するため、湾曲板23の第2パイプ部材P2における位置が固定される。
【0077】
このとき、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に挿入しようとしても、湾曲板23に第1パイプ部材P1の拡径補助部材24が当たるため、挿入することができない。一方、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2から引き出そうとしても、連係部材26の第1平板22が湾曲板23に当たり連係部材26を操作部M側に移動させることができないため、連係部材26と一体である第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2から引き出すことができない。結果、第1パイプ部材P1が第2パイプ部材P2に固定される。
【0078】
また、本実施形態においては、支持部材31における調節部材30の固定位置を変更することによって、湾曲板23の拡径度合いを調節することができる。
例えば、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定する際、湾曲板23の拡径度合いをより増加させて強固に固定しようとする場合には、図14において、ボルトb1〜b3とナットn1〜n3との締結を緩めて、調節部材30を図14の紙面右側にスライド移動させる。
【0079】
これにより、調節部材30の第4挿通孔54が、支持部材31の第3挿通孔53において、図14の紙面右側に移動することとなり、操作レバー29を、図13の紙面右側(操作部M側)へより大きく揺動させることができる。その結果、連係部材26の図13の紙面右側への移動距離が伸びるため、湾曲板23に対する圧縮コイルバネ21と第1平板22の押圧力が増加し、湾曲板23をより拡径させることができる。
【0080】
尚、本実施形態においては、調節部材30を、ボルトb1〜b3の軸部のそれぞれが長孔30cの一端から他端に位置するまでの範囲でスライド移動させることができる。また、調節部材30を、支持部材31の先細部31a側及び胴部31b側のいずれの方向に最大限にスライド移動させた場合でも、その第4挿通孔54が平面視において常に支持部材31の第3挿通孔53の中に配置されるように構成されている。
【0081】
〔5〕保持機構
図1及び図2に示すように、第2パイプ部材P2の上方に形成されたループRPを保持する保持機構Kが、操縦ハンドルHの第2パイプ部材P2に設けられている。
【0082】
保持機構Kは、第2パイプ部材P2の基端部E側に設けられる揺動アーム60と、第2パイプ部材P2の長手方向に沿って配置されるコイルバネ67と、第2パイプ部材P2の操作部M側に設けられるフック部材68と、第2パイプ部材P2の横側面に設けられる受け部材69とを備える。尚、これらの構成部材のうち、フック部材68と受け部材69は、ワイヤWの中間部に形成されたループRPをより安定に保持するためのものであるため、これらの部材については必要に応じて設ける構成としても良い。
【0083】
図7及び図10に示すように、揺動アーム60は、L字型の棒状のアーム部材61と、アーム部材61の端部に溶接される基端部62と、アーム部材61の先端の折り曲げ部分61aに設けられるプーリ65とを備える。
【0084】
図10に示すように、断面が「コ」の字型の第1ステー70が、第2パイプ部材P2の基端側の上面に溶接固定されている。揺動アーム60の基端部62の側面に筒体63が溶接されており、この筒体63が第1ステー70の対峙する2つの側壁の間に配置され、ピン71が筒体63と第1ステー70の2つの側壁にわたって挿通される。即ち、揺動アーム60の基端部62が、第2パイプ部材P2の第1ステー70において、ピン71の軸心R1周りに回動可能に枢支連結されており、これにより、揺動アーム60が第2パイプ部材P2の長手方向に揺動可能に第2パイプ部材P2に支持される。
【0085】
また、揺動アーム60の基端部62の下端が、横側方に折り曲げられることによって、ストッパー部62aが形成されている。即ち、揺動アーム60が第2パイプ部材P2の基端側に揺動するとき、揺動アーム60が第2パイプ部材P2の長手方向に対して略垂直に配置される位置まで揺動すると揺動アーム60のストッパー部62aが第1ステー70の側壁に当接し、それ以上揺動することができないように構成されている。
【0086】
プーリ65は、ワイヤWによって形成されるループRPを支持する部材である。プーリ65は、アーム部材61の折り曲げ部分61aの軸心R2周りに遊転可能に設けられており、折り曲げ部分61aの先端に螺着したナットN2により抜け止めがなされている。また、プーリ65の外周部には、ワイヤWを入り込ませる湾曲凹溝が形成され、プーリ65には、ワイヤWの束の外れを防止する「コ」の字型の外れ止め66が設けられている。この外れ止め66は、プーリ65の外周部に配置されて、アーム部材61の折り曲げ部分61aの軸心R2周りに遊転可能に設けられており、プーリ65と同様に折り曲げ部分61aの先端に螺着したナットN2により抜け止めがなされている。
【0087】
図7に示すように、断面が「コ」の字型の第2ステー72が、第2パイプ部材P2の操作部M側の上面に溶接固定されている。8の字状のフック部材68が、第2ステー72に対して第2パイプ部材P2の長手方向に揺動可能に設けられている。
【0088】
図10に示すように、受け部材69は、細長いフレームで構成されたラック状の部材であって、第2パイプ部材P2の下面に溶接固定されている。図7に示すように、受け部材69は、第2パイプ部材P2における第1ステー70と第2ステー72との間の中間部に配置され、図10に示すように第2パイプ部材P2の横側方に突き出た状態で設けられている。
【0089】
図7に示すように、コイルバネ67は、その一端が第2ステー72に掛止されており、その他端が、揺動アーム60の起立片64に掛止されている。図10に示すように、起立片64は、揺動アーム60の基端部62の筒体63の外面に溶接固定されている。
【0090】
揺動アーム60の起立片64は、コイルバネ67の弾性復元力によって、常に第1ステー70側に引っ張られる状態となっている。そのため、揺動アーム60のプーリ65は、常に第2パイプ部材P2の基端部E側(図7の紙面左側)に揺動するように付勢される。
【0091】
〔6〕操縦ハンドルHの伸縮操作時のワイヤの保持
操縦ハンドルHの短縮操作を実施すると、操縦ハンドルHが短くなるにつれて、ワイヤWの中間部に形成されるループRPが大きくなる。
【0092】
これは、揺動アーム60のプーリ65がコイルバネ67の働きによって常に第2パイプ部材P2の基端部E側の方向に揺動するように付勢されるため、操縦ハンドルHの短縮によってワイヤWに弛みが生じようとすると、揺動アーム60が基端部62のピン71を回動支点として図2に示す倒伏した姿勢から徐々に第2パイプ部材P2の基端部E側に揺動して起立していく。これにより、ループRPが揺動アーム60によって広げられることになるため、ループRPが大きくなる。つまり、揺動アーム60は、コイルバネ67によってワイヤWのループRPを大きくする方向に付勢されている。
【0093】
また、操縦ハンドルHの伸長操作を実施すると、操縦ハンドルHが長くなるにつれてワイヤWが操作部M側に引っ張られていく。これにより、揺動アーム60が、基端部62のピン71を回動支点として図1に示す起立した姿勢から徐々に第2パイプ部材P2の操作部M側に揺動して倒伏していくため、ワイヤWの中間部に形成されたループRPが小さくなる。
【0094】
尚、本実施形態では、図1に示す状態が操縦ハンドルHを最も短縮させたときの状態であり、このときループRPの大きさが最大となる。一方、図2に示す状態が操縦ハンドルHを最大に伸長させたときの状態であり、このときループRPの大きさが最小となる。
【0095】
(ハンドル支持部)
図3に示すように、操縦ハンドルHは、ハウジング3の横側面に設けられているハンドル支持部Bにおいて支持されている。
【0096】
図5及び図6に示すように、ハンドル支持部Bは、切換軸心Xと同軸心で配置される縦向き姿勢の筒状体35と、この筒状体35の上端部に備えた水平姿勢の支持プレート36と、筒状体35に対して回転自在に挿入された回転軸37と、支持プレート36の上面に摺接して移動可能となるように回転軸37に連結固定された回転プレート38と、横軸心Qを中心とする円弧面を有し回転プレート38に支持されたロックフレーム40とを備えている。操縦ハンドルHにおける第2パイプ部材P2に連結された断面が「コ」の字型の基端部E(基端ブラケット)を、回転軸37の上端に溶接されているボス部材の両端に亘るように配置して、ボルトを操縦ハンドルHの基端部Eとボス部材とに亘るように挿通してナットを締結させることによって、操縦ハンドルHが横軸心Qを中心として揺動自在に接続される。
【0097】
第1ロック機構L1は、支持プレート36に対して切換軸心Xを中心として円弧状に穿設された多数の係合孔36Aと、これらの係合孔36Aに係入する方向にバネ付勢され回転プレート38に支持された第1ロックピン41と、第1ロック解除レバー15(図9参照)の操作力で第1ロックピン41を係合孔36Aから引き出す方向に操作する第1操作ワイヤ45(W)とを備えている。
【0098】
この構成から第1ロック解除レバー15を作業者が握り操作することにより、第1操作ワイヤ45(W)のインナーが引き操作されて、第1ロックピン41が係合孔36Aから上へ抜けるため、切換軸心Xを中心とした操縦ハンドルHの回動姿勢を任意に設定することが可能となる。そして、第1ロック解除レバー15の握り操作を解除することで、第1ロックピン41が係合孔36Aに係入し、切換軸心Xを中心とした操縦ハンドルHの姿勢が維持される。
【0099】
第2ロック機構L2は、ロックフレーム40に穿設された多数の係合孔40Aと、これらの係合孔40Aに係入する方向にバネ付勢され基端部Eに支持された第2ロックピン42と、第2ロック解除レバー16(図9参照)の操作力で第2ロックピン42に対して係合孔40Aから引き出す方向に作用させる第2操作ワイヤ46(W)とを備えている。
【0100】
この構成から第2ロック解除レバー16を作業者が握り操作することにより、第2操作ワイヤ46(W)のインナーが引き操作されて、第2ロックピン42が係合孔40Aから抜けるため、横軸心Qを中心とした操縦ハンドルHの揺動姿勢を任意に設定することが可能となる。そして、第2ロック解除レバー16の握り操作を解除することで、第2ロックピン42が係合孔40Aに係入し、横軸心Qを中心とした操縦ハンドルHの姿勢が維持される。
【0101】
以上の構成により、操縦ハンドルHは、ハンドル支持部Bに対し縦向き姿勢の切換軸心Xを中心として回動自在に支持されると共に、横向きの横軸心Qを中心として姿勢変更自在に支持される。
【0102】
〔第2実施形態〕
以下に本発明の第2実施形態について説明するが、ここでは、上記第1実施形態と異なる操縦ハンドルHのパイプ部Pの構成及び伸縮操作についてのみ説明し、それ以外の構成、作用、及び効果については、説明を省略する。
【0103】
〔1〕パイプ部
図16及び図17に示すように、パイプ部Pは、操作部M側の第1パイプ部材P1と、作業機本体A側の第2パイプ部材P2と、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定及び固定解除自在な固定手段Fと、操作部Mの操作を楔部材25(固定部材)に伝える連係部材26と、連係部材26を操作する操作手段J(図13及び図15参照)とを備えて構成されている。
【0104】
第1パイプ部材P1、及び第2パイプ部材P2は、ともに細長い角筒状のパイプである。また、第1パイプ部材P1の基端部E側の先端が開口しており、第2パイプ部材P2の操作部M側の先端が開口している。
【0105】
第1パイプ部材P1の基端部E側の先端部分における右板P1c及び左板P1dのそれぞれに、第1パイプ部材P1の長手方向に延びるスリット56を設けてある。また、第1パイプ部材P1の基端部E側の先端部分における上板部分P1eの右端及び左端のそれぞれに、右板P1cの一部及び左板P1dの一部が連設されることで、第1パイプ部材P1の基端部E側の先端部分における上板部分P1eが溝状に構成される。さらに、第1パイプ部材P1の基端部E側の先端部分における下板部分P1fも同様に溝状に構成される。
【0106】
ここで、本実施形態における、第1パイプ部材P1、第2パイプ部材P2、及び楔部材25の「幅方向」及び「高さ方向」とはそれぞれ、図17における矢印T1方向及び矢印T2方向を示すものとする。
【0107】
本実施形態においては、第1パイプ部材P1の外側寸法の幅及び高さのそれぞれが、第2パイプ部材P2の内側寸法の幅及び高さよりもわずかに小さく設定されており、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2の開口を介して中に挿通(嵌入)することができる。このとき、第1パイプ部材P1の軸心と、第2パイプ部材P2の軸心とが一致する。そして、第1パイプ部材P1は、第2パイプ部材P2に対して挿入及び引き出し自在に支持される。
【0108】
図16及び図17に示すように、固定手段Fは、第1ダブルナットDN1、ワッシャ20、圧縮コイルバネ21、断面が略「コ」の字型の楔部材25(固定部材)、及び、第2ダブルナットDN2を備える。
【0109】
楔部材25は、四角形の天板25aと、天板25aの上端及び下端のそれぞれから延設される上側壁25b及び下側壁25cとを備える。上側壁25bと下側壁25cとの間の距離は、天板25aから離れるほど幅広となっている。天板25aの中央部分には、厚み方向に貫通する貫通孔25dが設けられている。
【0110】
楔部材25の天板25aの幅は、第1パイプ部材P1の内側寸法の幅よりわずかに小さく設定されており、楔部材25の天板25aの高さは、第1パイプ部材P1の内側寸法の高さより小さく設定されている。また、何の圧力もかけられていない状態での楔部材25の上側壁25bの先端と下側壁25cの先端との間の距離は、第1パイプ部材P1の内側寸法の高さよりも大きく、且つ第2パイプ部材P2の内側寸法の高さよりも小さく設定されている。
【0111】
連係部材26は、細長い棒状の部材であり、基端部E側の先端部分が第1パイプ部材P1の開口から突き出た状態で、第1パイプ部材P1の内部に配置される。また連係部材26は、基端部E側の先端部分に設けられる楔部材25、及び操作部M側の先端部分に設けられる第2平板27(図13及び図15参照)に支持されることによって、第1パイプ部材P1の軸心及び第2パイプ部材P2の軸心に略一致する姿勢で保持される。
【0112】
連係部材26の基端部E側の先端部分には、雄ネジ部26aが形成されている。そして、当該雄ネジ部26aに対して第1ダブルナットDN1を螺合させ、楔部材25の貫通孔25d、圧縮コイルバネ21、及びワッシャ20にこの順序で挿通させ、最後に第2ダブルナットDN2を螺合してある。
【0113】
楔部材25は、その天板25aが第1ダブルナットDN1側に向くように設けられる。そして、その上側壁25b及び下側壁25cのそれぞれの少なくとも一部分が、第1パイプ部材P1の溝状の上板部分P1e及び下板部分P1fに嵌め込まれる。これにより、楔部材25が、連係部材26の軸心回りに回転することが防止される。尚、楔部材25、圧縮コイルバネ21、及びワッシャ20は、第2ダブルナットDN2によって連係部材26からの抜け止めがなされている。
【0114】
〔2〕操縦ハンドルの伸縮操作
次に、操縦ハンドルHの伸縮操作を実施する場合について説明する。
本実施形態においては、操作部Mにおける操作レバー29の操作が、連係部材26を介して、固定部材である楔部材25に伝えられるように構成されている。
【0115】
まず、図13に示すように、操作部Mの操作レバー29をONの位置(図13の実線の位置)から、OFFの位置(図13の破線の位置)まで揺動させて、第1パイプ部材P1と第2パイプ部材P2との固定を解除する。
【0116】
操作レバー29がONの位置にあるとき、図14の実線部分に示すように、操作レバー29の本体部29aは、調節部材30の第4挿通孔54の係止部54bに係止した状態にある。そこで、操作レバー29を図14の紙面上側にずらすと、操作レバー29の本体部29aと第4挿通孔54の係止部54bとの係止状態が解除され、圧縮コイルバネ21(図16(a)参照)の弾性復元力によって連係部材26が図13の紙面左側(基端部E側)に移動する。そして、連係部材26が基端部E側に移動することによって、操作レバー29も基端部E側に引っ張られる格好となり、操作レバー29が調節部材30の第4挿通孔54の直線部54aにガイドされて、OFFの位置(図13の破線の位置)まで揺動する。
【0117】
このとき、図16(a)に示すように、連係部材26が基端部E側に移動することによって、楔部材25による第1パイプ部材P1の溝状の上板部分P1e及び下板部分P1fに対する押圧力が弱められるため、第1パイプ部材P1の溝状の上板部分P1e及び下板部分P1fが高さ方向(T2)に縮径する。その結果、第1パイプ部材P1の溝状の上板部分P1e及び下板部分P1fのそれぞれが、第2パイプ部材P2の上板P2a及び下板P2bのそれぞれの内面に対して非接触状態となり、連係部材26が、操縦ハンドルHの長手方向に移動することができるようになる。
【0118】
そのため、連係部材26と一体に構成される第1パイプ部材P1が、第2パイプ部材P2に対して、挿入及び引き出し自在に移動できるようになり、作業者は、第1パイプ部材P1と一体である操作部MのグリップGを持ちながら第1パイプ部材P1を操縦ハンドルHの長手方向に押し引きすることによって、操縦ハンドルHを伸縮させることができる。
【0119】
一方、操縦ハンドルHを所望する長さに調節したら、今度は、図13に示すように、操作部Mの操作レバー29をOFFの位置(図13の破線の位置)から、ONの位置(図13の実線の位置)まで揺動させて、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定する。
【0120】
操作レバー29がOFFの位置にあるとき、図14の破線部分に示すように、操作レバー29の本体部29aは、調節部材30の第4挿通孔54の直線部54aの端に位置する。そこで、操作レバー29を直線部54aに沿って図14の紙面右側に引っ張るようにして揺動させ、第4挿通孔54の係止部54bの位置まできたら、操作レバー29を図14の紙面下側にずらして係止させる。
【0121】
このとき、図16(b)に示すように、連係部材26が操作部M側に移動することによって、楔部材25が、第2ダブルナットDN2側に移動して圧縮コイルバネ21を圧縮させつつ、第1パイプ部材P1の中に入り込んでいく。
【0122】
その結果、第1パイプ部材P1の溝状の上板部分P1e及び下板部分P1fのそれぞれが、楔部材25の上側壁25b及び下側壁25cのテーパー面に沿って高さ方向(T2)に拡径し、第2パイプ部材P2の上板P2a及び下板P2bに対してその拡径度合いに応じた圧力で当接する。これにより、第1パイプ部材P1が第2パイプ部材P2に固定される。
【0123】
また、本実施形態においても上述の第1実施形態と同様に、支持部材31における調節部材30(図13〜図15参照)の固定位置を変更することによって連係部材26の移動距離を調節し、これにより第1パイプ部材P1の中に入り込ませる楔部材25の移動距離を調節して、第1パイプ部材P1の上板部分P1e及び下板部分P1fの拡径度合いを調節することができる。
【0124】
〔収納方法〕
上記第1及び第2実施形態の歩行型草刈機の梱包方法の一例を示す。ここでは、2台の歩行型草刈機を一つの梱包用箱57に収納する方法を例示する。
【0125】
先ず、操縦ハンドルHを最も伸長させて、ループRPを最小の大きさにする。そして、操縦ハンドルHの旋回姿勢を図1に示す向きにセットし、さらに、操縦ハンドルHを、横軸心Qを中心として最下方に揺動させる。
【0126】
次いで、図18及び図19に示すように、上述の2台の歩行型草刈機を、梱包用箱57において互いに反対向きになるように対向配置する。このとき、図19に示すように、平面視において操縦ハンドルHが互いに干渉することなく平行に配置されると共に、一方の歩行型草刈機の操作部Mが、他方の歩行型草刈機の作業機本体Aの上方に配置される格好となる。
【0127】
このような収納方法を採用することによって、より小さなスペースに歩行型草刈機を収納することができ、移送性や搬送性が良い。
【0128】
〔その他の実施形態〕
1.上述の実施形態における第1パイプ部材P1の内径を、第2パイプ部材P2の内径よりも大きく設定して、第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に外嵌させ、第1パイプ部材が、第2パイプ部材P2を覆ったり露出させたりするように長手方向に移動自在に支持されるように構成しても良い。尚この場合は、連係手段を伸縮自在な構成にする必要がある。
2.上述の第1実施形態においては、連係部材26を、その長手方向に移動させることによって、湾曲板23を拡径及び縮径させて第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定及び固定解除する構成としているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、連係部材26を軸心回りに回転操作することによって、湾曲板23を拡径及び縮径させて第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定及び固定解除する構成としても良い。また、上述の第2実施形態においても同様に、連係部材26を軸心回りに回転操作することによって、第1パイプ部材P1の溝状の上板部分P1e及び下板部分P1fを拡径及び縮径させて第1パイプ部材P1を第2パイプ部材P2に固定及び固定解除する構成としても良い。
3.上述の実施形態における連係部材26をワイヤとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、歩行型草刈機や、歩行型管理機などの歩行型作業機に利用することができる。
【符号の説明】
【0130】
A 作業機本体
H 操縦ハンドル
M 操作部
P1 第1パイプ部材
P2 第2パイプ部材
23 湾曲板(固定部材)
25 楔部材(固定部材)
26 連係部材
30 調節部材
56 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が操作する操作部を有し且つ長手方向に伸縮操作可能に作業機本体に連結される操縦ハンドルを備える歩行型作業機であって、
前記操縦ハンドルが、前記操作部側の第1パイプ部材と、前記第1パイプ部材を長手方向に移動自在に支持するように前記第1パイプ部材を挿通する前記作業機本体側の第2パイプ部材とを備え、
前記第1パイプ部材を前記第2パイプ部材に固定及び固定解除自在な固定部材を前記第2パイプ部材の内部に備え、前記操作部の操作を前記固定部材に伝える連係部材を前記第1パイプ部材の内部に備えて構成してある歩行型作業機。
【請求項2】
前記第1パイプ部材が、前記第2パイプ部材に対して挿入及び引き出し自在に支持されており、前記操作部の操作によって、前記固定部材が拡径して前記第2パイプ部材の内面に当接し、前記第2パイプ部材に対する前記連係部材の移動が規制されることにより、前記第2パイプ部材に対する前記第1パイプ部材の移動を規制する請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項3】
前記第1パイプ部材が、前記第2パイプ部材に対して挿入及び引き出し自在に支持されており、前記操作部の操作によって、前記固定部材が前記第1パイプ部材を拡径して前記第2パイプ部材の内面に当接させ、前記第2パイプ部材に対する前記第1パイプ部材の移動を規制する請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項4】
前記第1パイプ部材のうち前記操作部とは反対側の先端部分に周方向で対峙する2つのスリットを設け、前記固定部材が、当該先端部分を拡径させて前記第2パイプ部材の内面に当接させる請求項3に記載の歩行型作業機。
【請求項5】
前記操作部の操作による拡径度合いを調節する調節部材を前記操作部に備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の歩行型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−1251(P2013−1251A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134471(P2011−134471)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(599118768)株式会社斎藤農機製作所 (47)
【Fターム(参考)】