説明

歩行型耕耘装置

【課題】エンジンウェイトが掛かる位置を合理化し業機を取り付けると爪軸が浮き上がって牽引力が低下することを防止する。
【解決手段】縦に長い伝動ケース(1)の上部にエンジン(2)を配置し内部には該エンジン(2)によって回転連動する伝動軸(11)を備え、該伝動ケース(1)の下端側に伝動軸(11)に連動し外周に複数の耕耘爪(13,13…)を配置した耕耘軸(12)を設けると共に、上記伝動ケース(1)部に装着する作業機フレーム(15)に畦立て器(18)を装着する一方、機体の後上方に向かうハンドルフレーム(16)を設ける縦軸型耕耘装置において、前記エンジン(2)はそのシリンダ部(2a)が伝動ケース(1)内伝動軸(11)の縦軸芯(イ)に対して前方側に偏位して設けられると共に、前記耕耘軸(12)は該縦軸芯(イ)に対して後方側に偏位して設けられる。
【選択図】図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場において耕耘、畦立て作業等を行う歩行型の耕耘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、小型のエンジンを支持するよう下方に延長する伝動ケースに該エンジンに駆動され縦方向に設ける駆動軸を備えた縦軸型耕耘装置がある(特許文献1)。
エンジンの駆動力は縦軸を経由して下方に支持された車軸を回転し、後方に位置すべく設けた抵抗棒下端側を土中に沈めた状態で、該車軸の外周部に配設した爪で土壌を耕耘でき、移動時には抵抗棒を上げておき車軸の回転によって行なうものである。
【特許文献1】特開2003−225001号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記の構成では、シリンダヘッドが後側に向いているのでエンジンウェイトが後ろ側に掛かるため作業機を取り付けると爪軸が浮き上がるので牽引力が低下することとなり、特に畦立て器を牽引しながら作業するなどには不向きであった。そこでこの発明は、前後バランスの良い管理機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このためこの発明は次の技術的手段を講じた。
即ち、縦に長い伝動ケース(1)の上部にエンジン(2)を配置し内部には該エンジン(2)によって回転連動する伝動軸(11)を備え、該伝動ケース(1)の下端側に伝動軸(11)に連動し外周に複数の耕耘爪(13,13…)を配置した耕耘軸(12)を設けると共に、上記伝動ケース(1)部に装着する作業機フレーム(15)に畦立て器(18)を装着する一方、機体の後上方に向かうハンドルフレーム(16)を設ける縦軸型耕耘装置において、前記エンジン(2)はそのシリンダ部(2a)が伝動ケース(1)内伝動軸(11)の縦軸芯(イ)に対して前方側に偏位して設けられると共に、前記耕耘軸(12)は該縦軸芯(イ)に対して後方側に偏位して設けられることを特徴とする。
【0005】
エンジンを駆動すると、伝動ケース内の伝動軸を介して耕耘軸が回転駆動される。作業者はハンドルフレーム上端側のハンドル部を把持して操作しながら耕耘作業を行う。作業機フレームに畦立て器を装着して耕耘作業と共に畦立て作業を行うが、エンジンをそのシリンダ部(2a)が伝動ケース(1)内伝動軸(11)の縦軸芯(イ)に対して前方側に偏位して設けられると共に、前記耕耘軸(12)は該縦軸芯(イ)に対して後方側に偏位して設けられるから、これら伝動ケース及びエンジンの荷重によって前側への荷重が大となり、後側の畦立て器の荷重と併せ耕耘軸に作用するため牽引力が増大する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、エンジンをそのシリンダ部(2a)が伝動ケース(1)内伝動軸(11)の縦軸芯(イ)に対して前方側に偏位して設けられると共に、前記耕耘軸(12)は該縦軸芯(イ)に対して後方側に偏位して設けられるから、これら伝動ケース及びエンジンの荷重によって前側への荷重が大となり、後側の畦立て器の荷重と併せ耕耘軸に作用するため牽引力が増大する結果、従来技術の欠点を解消し作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいてこの発明を説明する。
伝動ケース1の上面に、エンジン2を取付ベース部材3を介して着脱自在に設けている。即ち該エンジン2はそのシリンダ2aが前上がりの傾斜姿勢となるよう設けると共に、該エンジン2の後方に燃料タンク4を配置し、左右一側にマフラ5、他側にエアクリーナ6を配置して上記取付ベース部材3に装着され、該ベース部材3を伝動ケース1の上面に形成するフランジ状径大部1Aに接合してボルト止めできる構成としている。7はエンジン2の上部に設けたスタータである。
【0008】
2つ割りの半ケース体1a,1bを左右から接合させた前記伝動ケース1内には縦方向(鉛直方向)の軸芯(ロ)を有した伝動軸11を備える。該伝動軸11は上下に2分割の軸11a,11bとされ、ねじ止めによって一本化されると共に上下部をベアリング8とブッシュ9で支持している。
【0009】
符号10はクラッチドラムで、前記エンジン2のクランク軸2bにベベルギヤ機構12a,12bを介して伝動する遠心クラッチ13が該クラッチドラム10に作用してエンジン2の動力を伝動軸11に連動する構成である。伝動ケース1の下端側には耕耘軸支持部1Bを膨出状に一体形成し、この支持部1Bから左右に耕耘軸14L,14Rを突出させ略水平状態に支架する。前記伝動軸11の回転はウォームホイル15aとギヤ15bとの噛み合いによって上記耕耘軸14L,14Rを減速連動する構成である。
【0010】
しかして、上記のエンジン2のシリンダ2aは、機体の側面視において、伝動軸11の縦軸芯(ロ)に対し前方側に偏位して設けられる関係にあり、一方同じく機体側面視において耕耘軸14L,14Rを通る鉛直線(イ)は、伝動軸11の縦軸芯(ロ)に対し後方側に偏位(ハ)して設けられる関係となっている。
【0011】
16L,16R…は耕耘軸14L,14Rに外側から嵌合させ着脱自在のピンにて該耕耘軸14L,14Rに固定する筒状ボスで左右に夫々2組備え、周面に耕耘爪17,17…を装着する。なお、耕耘爪17,17…は筒状ボス16L,16Rに固定する板体18にボルト,ナットにて着脱自在に固着される。
【0012】
符号20は左右一対に設けられ夫々前側を上下二又に形成してこのうち各前端部を前記伝動ケース1の上端側と耕耘軸支持部1bとに取り付け固定した作業機フレームで、後方に向けて延出する部分のうち前側からハンドルフレーム21、双尾輪22、畦立て器23順に取り付けている。なお、畦立て器23の取り付け筒体24は抵抗棒25装着用ヒッチとして兼用している。
【0013】
ハンドルフレーム21は、断面矩形の基部フレーム部21aと把持部を備える断面円形の上部フレーム部21bとからなり、このうち基部フレーム部21aを作業機フレーム20で左右挟み状にして後方上方に向かうよう傾斜させて取り付けている。また、上部フレーム部21bの下端は基部フレーム部21aの上端開口部に嵌入して固定具21cによって該嵌入量を調整可能に構成するものである。基部フレーム部21aの上端近傍には前記エンジン2の上方に延出する吊下げハンドル26を設けている。
【0014】
前記畦立て器23の前側には双尾輪22がそのアーム部22aを支持する支持軸30回りに回動自在で、機体移動姿勢(ニ)と反転姿勢(ホ)及びその中間の作業姿勢(ヘ)に、係止アーム22bを作業機フレーム20側に設けた係止孔31,31…に併せてピン32で連結固定すべく設けられる。
【0015】
35は伝動ケース1の前記フランジ部1Aに共締するカバー部材で、主として前記耕耘爪17,17…上面を覆う構成である。
畦立て作業を行うときは、図1,図4に示すように、作業機フレーム20において双尾輪22は反転姿勢(ホ)に、畦立て器23は作業姿勢に夫々組み付けしておく。エンジン2を始動すると、クランク軸2bの回転がベベルギヤ機構伝動軸12a,12b、遠心クラッチ13等を介して伝達され下方のウォームホイル15aとギヤ15bとの減速機構を経て耕耘軸14L,14Rが回転し、筒状ボス16L,16Rを介して耕耘爪17,17…がダウンカットで耕耘作業を行いつつ機体を前進させると共に、後方の畦立て器23で畦を形成する。なお畦立て器23によって前進抵抗を付与し、抵抗棒25が関与せずとも不測に前進することなく、良好に耕耘作業を行うことができる。
【0016】
前記のとおり、エンジン2のシリンダ2aは、機体の側面視において、伝動軸11の縦軸芯(ロ)に対し前方側に偏位して設けられる関係にあり、一方機体側面視において耕耘軸14L,14Rを通る鉛直線(ロ)は、伝動軸11の縦軸芯(イ)に対し後方側に偏位(ハ)して設けられる関係となっているから、結局、耕耘軸14L,14Rを通る鉛直線(ロ)に対し伝動ケース1及びエンジン2のシリンダヘッド2aが前側に位置するものとなる。したがって、作業機フレーム20に畦立て器23を装着して作業するときにおいても、これら伝動ケース1及びエンジン2の荷重によって前側への荷重が大となり、後側の畦立て器23の荷重と併せ耕耘軸14L,14Rに作用するため機体牽引力が増大する。
【0017】
双尾輪22は反転姿勢として機体に装着のまま耕耘作業あるいは畦立て作業ができるので、耕耘軸14L,14Rに一層の荷重が加わり牽引力を向上する。
符号(ニ)位置の双尾輪22は、機体移動時の状態を示す。双尾輪22を移動姿勢に固定し、エンジン2を始動すると、耕耘軸14L,14Rが回転し外周の耕耘爪17,17…の回転作用によって機体は前進するが機体の後部に双尾輪22が接地して荷重を負担するものである。またこの例では、抵抗棒25による抵抗作用をもって耕耘作業を行うものであるが、双尾輪22を略水平姿勢に保持可能に設けてなり(ヘ)、このように構成すると、機体の必要以上の後傾斜を防止でき過剰な抵抗棒25による抵抗作用を防止でき、適正な耕耘作業を行い得る。
【0018】
図6は横転させた状態の機体の状況を示す。機体は、ハンドルフレーム16の後端部における左右幅W1とカバー部材27の幅W2とを略同幅、好ましくはW2がやや狭幅となす、に構成されている。また双尾輪22と耕耘軸14L,14Rはハンドルフレーム21の最外点とカバー部材35の同じく最外点とを結ぶ線分以内(機体中心側寄り)にあるようになしている。
【0019】
このように構成することによって、機体を横倒し姿勢とするとハンドル16とカバー部材27とで支持でき車両に積載して運搬する際に設置面積を小さくできて便利である。
なお、図7は別実施例を示し、エンジン39のクランク軸39bが鉛直方向に設けてなり、シリンダ39aが従来技術に対して前後反転して配置される構成であり、このように構成することによっても、シリンダ39a部が伝動軸11の軸芯に対して前方に偏位する構成となって、前記実施例と同様に、エンジン39のシリンダ39aは、機体の側面視において、伝動軸11の縦軸芯(イ)に対し前方側に偏位して設けられる関係にあり、一方機体側面視において耕耘軸14L,14Rを通る鉛直線(ロ)は、伝動軸11の縦軸芯(イ)に対し後方側に偏位(ハ)して設けられる関係となって同様の効果を奏するものである。
【0020】
図8は作業機フレームの別例を示すものである。作業機フレーム40は、機体側取付部40aとこの機体側取付部40aに対して上下に回動可能に設ける反転部40bとからなり、反転部40bはロックピン41で後方に延長する作業姿勢に固定できる。一方ロックピン41を抜き、上方に反転回動させたときは、ハンドルフレーム16の下半部に沿う状態となり、前記作業機装着用の取り付け筒体24上部に突出する作業機支持棒23aを受け入れるホルダ42に嵌合させて上記ロックピン41をもって支持棒23aを固定するものである。このように構成すると、畦立て機23をいちいち取り外す手間をなくして、機体移動でき、取り扱いが簡単となる。43は反転を補助する引張ばねである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
1
【図1】一部断面した全体側面図
【図2】全体平面図
【図3】耕耘装置の背断面図
【図4】一部拡大側面図
【図5】伝動軸の拡大断面図
【図6】全体平面図
【図7】別実施例を示す全体側面図
【図8】作業機反転構成を示す側面図
【符号の説明】
【0022】
1 伝動ケース
2 エンジン
11 伝動軸
14 耕耘軸
20 作業機フレーム
21 ハンドルフレーム
22 双尾輪
23 畦立て器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦に長い伝動ケース(1)の上部にエンジン(2)を配置し内部には該エンジン(2)によって回転連動する伝動軸(11)を備え、該伝動ケース(1)の下端側に伝動軸(11)に連動し外周に複数の耕耘爪(13,13…)を配置した耕耘軸(12)を設けると共に、上記伝動ケース(1)部に装着する作業機フレーム(15)に畦立て器(18)を装着する一方、機体の後上方に向かうハンドルフレーム(16)を設ける縦軸型耕耘装置において、前記エンジン(2)はそのシリンダ部(2a)が伝動ケース(1)内伝動軸(11)の縦軸芯(イ)に対して前方側に偏位して設けられると共に、前記耕耘軸(12)は該縦軸芯(イ)に対して後方側に偏位して設けられることを特徴とする歩行型耕耘装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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