説明

歩行型電動作業機

【課題】バッテリを動力源とする電動機で車軸を駆動せしめるように構成された歩行型電動作業機において、電動機およびバッテリをバランス良く配置して、操作性、作業性の向上を図る。
【解決手段】車軸3の軸芯位置に対して電動機4が前方側に位置しバッテリ5が後方側に位置するよう、電動機4とバッテリ5とを前後に隣接させて耕耘ロータリ2の上方に配設すると共に、電動機4をバッテリ5に対して前下がり状態となる前低後高の傾斜状に配して、電動機4の出力軸4a及びトランスミッション6の出力軸22の軸方向が車軸3の軸芯を指向するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてバッテリが搭載された歩行型電動作業機の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、耕耘ロータリ等の作業アタッチメントが装着される車軸の駆動源として電動機を用いると共に、該電動機の動力源としてバッテリが搭載された歩行型電動作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような歩行型電動作業機では、作業アタッチメントや電動機、バッテリ等を備えた機体本体に、該機体本体から後方に延出する操向ハンドルが設けられており、作業者は該操向ハンドルにより機体本体を操縦しながら耕耘等の作業を行なう構成になっている。
ところで、前述したような歩行型電動作業機においては、車軸に連動連結される電動機と重量の重いバッテリとの配置バランスが、操向ハンドルを操縦する作業者の操作性や作業能率の向上に大きく影響する。そこで、前記特許文献1のものでは、機体フレームに取り付けられた載置台に、電動機とバッテリとを前後に隣接する状態で水平状に配置すると共に、垂直方向を向く電動機の出力軸の軸芯を車軸(ロータリ軸)の軸芯位置よりも前方に位置させる一方、バッテリを車軸の軸芯位置よりも後方に設けて、バッテリ付近に機体重心がくるように構成している。この場合、電動機の出力を車軸に伝動する伝動軸は出力軸から垂直方向に垂下されていて、伝動軸の軸芯と車軸の軸芯とは前後にずれた状態になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−6号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のものでは、機体フレームの後側に配置されたバッテリ付近に機体重心があるため、手元荷重が重くなって、操向ハンドルを操縦する作業者に負担がかかるという問題がある。しかも、電動機の出力軸および伝動軸は垂直方向を向いていると共に、これら電動機の出力軸および伝動軸の軸芯は車軸の軸芯位置に対して前側に位置ズレしているため、電動機の重量が車軸に装着される作業アタッチメントに有効に働かず、このため作業アタッチメントにかかる重量配分が軽くなって、例えば作業アタッチメントが耕耘ロータリである場合に、硬い圃場であると耕耘爪が食い込み難く、作業能率が低下するという問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、作業アタッチメントが装着される車軸と、該車軸を駆動せしめる電動機と、該電動機の出力を減速して車軸に伝動するトランスミッションと、電動機の動力源となるバッテリとを備えて構成される機体本体に、該機体本体から後方に延出する操向ハンドルを設けてなる歩行型電動作業機において、前記電動機とバッテリとを前後に隣接させて作業アタッチメントの上方に配設するにあたり、車軸の軸芯位置に対して電動機が前方側に位置しバッテリが後方側に位置するように配すると共に、電動機をバッテリに対して前下がり状態となる前低後高の傾斜状に配して、該電動機の出力軸及びトランスミッションの出力軸の軸方向が車軸の軸芯を指向するように構成したことを特徴とする歩行型電動作業機である。
請求項2の発明は、請求項1において、トランスミッションは、電動機の出力を入力して減速する入力はすば歯車と、該入力はすば歯車の出力を減速する中間はすば歯車と、該中間はすば歯車の出力を減速して車軸に出力するかさ歯車とを備えることを特徴とする歩行型電動作業機である。
請求項3の発明は、請求項1または2において、トランスミッションに、電動機から車軸への動力伝動を切断して車軸の自由回転を許容するクラッチ機構を設けたことを特徴とする歩行型電動作業機である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、電動機の重心位置をバッテリに対して低位置にすることができ、その分機体本体の重心が前側になって、作業者の手元荷重が軽くなる。これにより、操向ハンドルを操作する作業者の負担が軽くなって、操作性が向上する。また、歩行型電動作業機を旋回させるような場合には機体後方を持ち上げやすくなって、作業性が向上する。しかも、電動機の重量の軸方向の分力が車軸に直接的に働くことになって、作業効率の向上に貢献できる。
請求項2の発明とすることにより、入力はすば歯車、中間はすば歯車、かさ歯車により電動機の出力トルクが効率良く車軸に伝達されて、作業効率を向上させることができる一方、電動機の消費電力を低減させることができて、連続作業時間を長くすることができる。
請求項3の発明とすることにより、電動機を停止させた状態で歩行型電動耕耘機を容易に手押し走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】歩行型電動作業機の側面図である。
【図2】機体本体の縦断面図である。
【図3】歩行型電動作業機の平面図である。
【図4】歩行型電動作業機の底面図である。
【図5】歩行型電動作業機の背面図である。
【図6】歩行型電動作業機の斜視図である。
【図7】バッテリケースを取外した状態の歩行型電動作業機の平面図である。
【図8】バッテリケースを取外した状態の歩行型電動作業機の斜視図である。
【図9】(A)、(B)、(C)、(D)はバッテリの正面図、側面図、底面図、斜視図である。
【図10】バッテリケースの位置決め構造を示す断面図である。
【図11】トランスミッションを示す図であって、(A)は側面断面図、(B)は背面断面図である。
【図12】(A)は続状態のクラッチ機構を示す断面図、(B)は(A)の背面図である。
【図13】(A)は断状態のクラッチ機構を示す断面図、(B)は(A)の背面図である。
【図14】ハンドル折畳み姿勢を示す図である。
【図15】(A)は第二の実施の形態における続状態のクラッチ機構を示す断面図、(B)は(A)の背面図である。
【図16】(A)は第二の実施の形態における断状態のクラッチ機構を示す断面図、(B)は(A)の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1は本発明の歩行型電動作業機の一例である歩行型電動耕耘機であって、該歩行型電動耕耘機1は、後述する耕耘ロータリ2(本発明の作業アタッチメントに相当する)が装着される車軸3、電動機4、バッテリ5(本実施の形態では、鉛電池)、トランスミッション6等を備えた機体本体7に、該機体本体7から後方に延出される操向ハンドル8(左右一対の操向ハンドル8L、8R)を設けて構成されている。
【0009】
9は前記機体本体7の機体フレームであって、該機体フレーム9は、前側が後側よりも低位になるよう傾斜状に設けられているが、該機体フレーム9の前部には、前記トランスミッション6を内装するトランスミッションケース10の上部が固定支持されている。該トランスミッションケース10は、上部側が下部側よりも前方に位置するよう傾斜状に設けられていると共に、該トランスミッションケース10の下部は、支持ステー11を介して前記機体フレーム9の前後方向中間部に固定支持されている。而して、トランスミッションケース10は、その上部および下部が機体フレーム9に支持される構成になっている。
【0010】
さらに、前記トランスミッションケース10の下部には、左右方向を向く状態で車軸3が回動自在に軸承されている。該車軸3には、作業アタッチメントとして、複数の耕耘爪2aを有する耕耘ロータリ2が着脱自在に装着されている。
【0011】
また、トランスミッションケース10の上部には、前記車軸3を駆動せしめる電動機4の取付座10a(以下、電動機取付座10aと称する)が形成されているが、該電動機取付座10aは前低後高の傾斜状に形成されている。そして、該電動機取付座10aに取り付けられた電動機4は、前記車軸3の軸芯位置よりも前方側に位置すると共に、前低後高の傾斜姿勢になっており、その出力軸4aの軸方向が前記車軸3の軸芯を指向するように構成されている。さらに、トランスミッションケース10に内装されるトランスミッション6の構造については後述するが、該トランスミッション6の出力軸22も車軸3の軸芯を指向するようになっている。
【0012】
一方、前記機体フレーム9の上部には、前記車軸3の軸芯位置よりも少し後方となる位置に、水平方向を向く矩形状の上面13aを有した支持フレーム13が固設されている。そして、該支持フレーム13の上面13aには、後述するアンダーカバー14の後半部14aおよびフェンダーカバー15の底面部15fを間に介装する状態で、バッテリ5を内装するバッテリケース16が載置支持されるようになっている。この場合、バッテリケース16の下面の高さ位置は、前記前低後高の傾斜状の電動機取付座10aの後端側の高さ位置と略同じになっている。而して、電動機4とバッテリ5とは、車軸3の軸芯位置に対して電動機4が前方側に位置しバッテリ5が後方側に位置する状態で、耕耘ロータリ2の上方に前後に隣接して配設されると共に、電動機4は、バッテリ5に対して前下がり状態となる前低後高の傾斜姿勢で配される構成になっている。
【0013】
前記アンダーカバー14は、前記電動機4およびバッテリ5の下方を覆って機体下方からの土等の侵入を防止するためのものであって、該アンダーカバー14の後半部14aは水平状になっていて前記支持フレーム13の上面13aに載置される一方、前半部14bは、後半部14aの前端から前下がり状に折曲されて前低後高の傾斜状になっていると共に、トランスミッションケース10の上部が貫通する開口14cが開設されている。
【0014】
また、前記フェンダカバー15は、前記耕耘ロータリ2、トランスミッションケース10、電動機4等を上方から覆って保護するためのものであって、該フェンダーカバー15は、カバー本体部15aと、該カバー本体部15aの下部から左右外方に突出するスカート部15bとが樹脂成形により一体形成されている。そして、前記カバー本体部15aには、前半側に電動機4の上方および四周を覆う電動機収納部15cが形成される一方、後半側には、バッテリケース16が着脱自在に収納される凹状のバッテリ収納部15dが形成されている。
【0015】
ここで、前記フェンダーカバー15のスカート部15bの下部は、アンダーカバー14の前側縁部、左右外側縁部との間に間隙を存する状態で、アンダーカバー14の前側縁部、左右外側縁部よりも前方、左右外方に位置しており、これにより上記間隙から電動機収納部15c内に外部の空気を取り入れることができるようになっている。一方、電動機収納部15cの後側上部には、空気の流出口となる複数の排気孔(図示せず)が穿設されている。而して、前記間隙から電動機収納部15c内に流入して排気孔から流出する空気によって、電動機4を効率よく冷却できるようになっている。尚、図中、17は前記フェンダーカバー15よりも前方に突出するバンパーであって、該バンパー17によって前方向への転倒や衝突からフェンダーカバー15やトランスミッションケース10を保護すると共に、歩行型電動耕耘機1を運ぶときの把手としても利用できるようになっている。
【0016】
一方、前記バッテリ収納部15dは、バッテリケース16が載置される底面部15fを備えているが、該底面部15fは、底面部15f側から挿入されてアンダーカバー14の後半部14a及び支持フレーム13の上面13aを貫通する複数(本実施の形態では三本)のボルト18をナット18aを用いて緊締することによって、支持フレーム13に固定されるようになっている。さらに、バッテリケース16の下面部には、複数(本実施の形態では四個)の位置決め用突起16aが下方に向けて突出形成される一方、バッテリ収納部15dの底面部15fおよびアンダーカバー14の後半部14aには、前記位置決め用突起16aが挿入される位置決め用孔15g、14dが穿設されている。そして、バッテリケース16をバッテリ収納部15dに収納するときに、前記位置決め用突起16aを位置決め用孔15g、14dに挿入することによって、バッテリケース16は前後左右の移動が規制された位置決め状態で底面部15fに載置されるようになっている。尚、図中、19は底面部15fの位置決め用孔15gに装着されるグロメットである。
【0017】
さらに、前記バッテリ収納部15dの左右側面部15hおよび後面部15iは、バッテリケース16の着脱を容易に行なえるようにバッテリケース16の下半部16bが収納される深さに設定されていて、バッテリケース16の上半部16cの左右および後側はバッテリ収納部15dから上方に露出する状態でバッテリ収納部15dに収納されるようになっているが、この場合に、バッテリケース16の上半部16cと下半部16bとの境部分は、バッテリケース16の前面側を除いて、上半部16cが下半部16bよりもバッテリ収納部15dの左右側面部15hおよび後面部15iの厚み分だけ段差状に突出しており、該上半部16cと下半部16bとの段差部16dがバッテリ収納部15dの左右側面部15hおよび後面部15iの上面に載置されるようになっている。つまり、バッテリケース16は、その下面部がバッテリ収納部15dの底面部15fに載置支持されるだけでなく、上半部16cと下半部16bとの間の段差部16dがバッテリ収納部15dの左右側面部15hおよび後面部15iに載置支持されることになり、これにより、機体の傾斜時でも安定した状態でバッテリケース16をバッテリ収納部15dに収納支持できるように構成されている。尚、バッテリ収納部15dに収納された状態で、バッテリケース16の上面は電動機収納部15cの後部上面と略同一高さとなるように設計されている。
【0018】
また、バッテリケース16の上面には、把手16eが起倒自在に支持されていると共に、該把手16eを倒したときに収納できる凹部16fが形成されている。この把手16eは、バッテリケース16をバッテリ収納部15dに着脱するときやバッテリケース16を運ぶときに作業者が把持するものであるが、把手16eを使用しないときには、把手16eを倒して凹部16f内に収納することによって、把手16eがバッテリケース16の上面から突出しないように構成されている。
【0019】
次いで、前記トランスミッション6に構造について説明すると、該トランスミッション6は、前記電動機4の出力を減速して車軸3に伝動するものであって、後述する入力軸20、中間軸21、出力軸22、第一駆動側はすば歯車23aと第一従動側はすば歯車23bとからなる第一はすば歯車(本発明の入力はすば歯車に相当する)23、第二駆動側はすば歯車24aと第二従動側はすば歯車24bとからなる第二はすば歯車(本発明の中間はすば歯車に相当する)24、駆動側かさ歯車25aと従動側かさ歯車25bとからなるかさ歯車25等を用いて構成されている。
【0020】
前記入力軸20は、電動機4の出力軸4aの外周側に嵌合される円筒状のものであって、その軸方向は電動機4の出力軸4aの軸方向と同軸であると共に、キー嵌合により電動機4の出力軸4aと一体回動するように設けられている。そして、該入力軸20の下部には、第一駆動側はすば歯車23aが固定されている。
【0021】
前記中間軸21は、軸方向が入力軸20の軸方向と平行になるように設けられていると共に、該中間軸21の上部には、前記第一駆動側はすば歯車23aに噛合し、且つ第一駆動側はすば歯車23aよりも大径の第一従動側はすば歯車23bが固定され、また、中間軸21の下部には、第二駆動側はすば歯車24aが固定されている。
【0022】
前記出力軸22は、該出力軸22の上端と入力軸20の下端との間に僅かな間隙を存する状態で、軸方向が電動機4の出力軸4aの軸方向と同軸上となるように設けられている。これにより、前述したように、電動機4の出力軸4aの軸方向は車軸3の軸芯を指向しているが、該電動機4の出力軸4aと同軸上のトランスミッション6の出力軸22の軸方向も車軸3の軸芯を指向するようになっている。そして、該出力軸22の上部には、前記第二駆動側はすば歯車24aに噛合し、且つ第二駆動側はすば歯車24aよりも大径の第二従動側はすば歯車24bが固定され、また、出力軸22の下部には駆動側かさ歯車25aが固定されている。
【0023】
一方、前記車軸3には、前記駆動側かさ歯車25aに噛合し、且つ駆動側かさ歯車25aよりも大径の従動側かさ歯車25bが嵌合されている。該従動側かさ歯車25bは、後述するクラッチ機構26の続状態では車軸3と一体回動するように設けられている。而して、クラッチ機構26の続状態において、電動機4の出力は、第一はすば歯車23、第二はすば歯車24、かさ歯車25に順次入力されて減速され、車軸3に伝動される構成になっている。
【0024】
次いで、前記クラッチ機構26について説明すると、前記従動側かさ歯車25bのボス部25cは、トランスミッションケース10内において、軸方向の移動は規制されるが軸回り方向には回動自在な状態で、車軸3に外嵌されている。さらにトランスミッションケース10内において、車軸3には、前記従動側かさ歯車25bのボス部25cと対向する部位に、軸回り方向の回動は規制されるが軸方向には移動自在な状態で、リング状のシフタ27が外嵌されている。該シフタ27は、後述するように作動アーム30の揺動操作に基づいて、従動側かさ歯車25bに近接するクラッチ続位置と、従動側かさ歯車25bから離間するクラッチ断位置とに移動する構成になっていると共に、従動側かさ歯車25bのボス部25cおよびシフタ27の対向面部には、互いに係脱自在な係合爪部25d、27aが形成されている。そして、シフタ27がクラッチ続位置に位置している状態では、前記係合爪部25d、27a同士が係合することによって従動側かさ歯車25bとシフタ27とは一体的に回転し、これにより、従動側かさ歯車25bの回転がシフタ27を介して車軸3に伝達されるようになっている(クラッチ続状態)。一方、シフタ27がクラッチ断位置に位置している状態では、係合爪部25d、27a同士の係合が外れてシフタ27は従動側かさ歯車25bとは一体回転せず、これにより、車軸3は従動側かさ歯車25bから自由になるように構成されている(クラッチ断状態)。そして、このクラッチ断状態では、電動機4の停止時における車軸3の自由回転が許容されることになって、歩行型電動耕耘機1を容易に手押し走行させることができるようになっている。
【0025】
次いで、前記シフタ27のクラッチ続位置と断位置との移動について説明すると、シフタ27は、外周面部に環状の凹溝27bが形成されており、該凹溝27bには、二股状のシフタフォーク28の先端部に設けられた係合ピン28aが係合している。このシフタフォーク28の基端部には円筒体28bが形成されており、該円筒体28bは、車軸3と直交する方向、つまり前後方向を向く状態でトランスミッションケース10に軸回り方向回動自在に支持される回動軸29に、該回動軸29と一体回動する状態で外嵌されている。さらに、該回動軸29の先端側はトランスミッションケース10の外部に突出しており、該突出先端部には作動アーム30が止着されている。そして、この作動アーム30を作業者が揺動させることで回動軸29が軸回り方向に回動し、該回動軸29の回動と一体的に円筒体28bが回動することで、シフタフォーク28の先端部が左右方向に揺動し、これにより、シフタ27を左右方向、つまり、車軸3の軸方向に移動させて、前述したクラッチ続位置と断位置とに位置せしめることができるようになっている。
【0026】
一方、前記機体フレーム9は、前述したようにトランスミッションケース10および支持フレーム13が固定支持されるものであるが、該機体フレーム9の後側は上方に向けて湾曲されていると共に、その上部には、左右方向を向くハンドル支持軸31が回動自在に軸承されている。
【0027】
前記ハンドル支持軸31には、左右の操向ハンドル8L、8Rの基端部が固定支持されていると共に、該ハンドル支持軸31の一端側には、ハンドル支持軸31を回転させるための操作ダイヤル32が止着されている。そして、該操作ダイヤル32を操作してハンドル支持軸31を回転させることによって、左右の操向ハンドル8L、8Rの先端側の高さを複数段に調整できるようになっている。さらに、歩行型電動耕耘機1の運搬時等においては、図14に示すように、左右の操向ハンドル8L、8Rを機体前方にくるまで回転させたハンドル折畳み姿勢にすることができるようになつている。尚、図中、33は左右の操向ハンドル8L、8Rの先端部に設けられるグリップである。また、34は左右何れか一方(本実施の形態では右側)の操向ハンドル8L、8Rのグリップ33近傍に設けられる操作レバーであって、後述するように該操作レバー34の操作に基づいて、前記電動機4の駆動、停止を行なえるようになっている。
【0028】
さらに、35は電動機4の制御を行なうためのコントローラ(図示せず)が内装されるコントロールボックス35であって、該コントロールボックス35は、左右の操向ハンドル8L、8Rの基端部間に位置する状態で機体フレーム9の後側上部に取付けられている。このコントロールボックス35の上面には表示パネル部35aが設けられており、該表示パネル部35aには、電源スイッチ35bが配置されていると共に、バッテリ残量や温度異常等が表示されるようになっている。
【0029】
前記コントロールボックス35に内装されるコントローラには、前記電動機4、バッテリ5、操作レバー34の操作を検知する操作検知スイッチ(図示せず)、表示パネル部35a等が電気的に接続されている。この場合、前述したようにバッテリ5が内装されるバッテリケース16は機体本体7に対して着脱自在であるため、バッテリ5とコントローラとはカプラ(図示せず)を介して取外し自在に接続されるが、該カプラとしては防水機能を有したものが用いられている。
【0030】
ここで、前記コントローラの行なう制御について簡単に説明すると、該コントローラは、電源スイッチ35bが押し操作された場合に主電源をONするが、この場合に、電源スイッチ35bが予め設定される設定時間(例えば、2〜3秒)以上長押し操作されないと、主電源をONにしない安全回路が組み込まれている。さらに、コントローラは、主電源がONの状態で、操作レバー34が操作されたことの検知信号が操作検知スイッチから入力された場合には電動機4を駆動させる一方、検知信号が入力されない場合には電動機4を停止させる。また、操作レバー34が操作されたことの検知信号が予め設定される設定時間(例えば、20〜30秒)以上入力されない場合には、主電源を自動的にOFFする回路が組み込まれており、これにより、バッテリ5の電力の無駄な消費を抑制できるようになっている。
【0031】
また、前記機体フレーム9は、前述したように後側が上方に向けて湾曲されており、その上部には前述したハンドル支持軸31やコントロールボックス35が設けられているが、機体フレーム9の後側下部には、抵抗棒36や培土器(図示せず)等のアタッチメントを着脱自在に取付けるためのアタッチメント取付部37や、尾輪38(前述したクラッチ断状態にして歩行型電動耕耘機1を手押し走行させる場合に、抵抗棒36の下端部に装着する車輪、図2に一点鎖線で示す)を保持しておくための尾輪保持部39が設けられている。
【0032】
叙述の如く構成された本形態において、歩行型電動耕耘機1は、耕耘ロータリ2が装着される車軸3と、該車軸3を駆動せしめる電動機4と、該電動機4の出力を減速して車軸3に伝動するトランスミッション6と、電動機4の動力源となるバッテリ5とを備えて構成される機体本体7に、該機体本体7から後方に延出する操向ハンドル8(左右の操向ハンドル8L、8R)を設けて構成されているが、前記電動機4とバッテリ5とは、耕耘ロータリ2の上方において、車軸3の軸芯位置に対して電動機4が前方側に位置しバッテリ5が後方側に位置するよう前後に隣接して配設されると共に、電動機4は、バッテリ5に対して前下がり状態となる前低後高の傾斜状に配されており、さらに、該電動機4の出力軸4a及びトランスミッション6の出力軸22の軸方向は車軸3の軸芯を指向していることになる。
【0033】
この結果、電動機4の重心位置をバッテリ5に対して低位置にすることができ、その分機体本体7の重心が前側になって、作業者の手元荷重が軽くなる。而して、重量の重いバッテリ5が電動機4の後側に配されていても、操向ハンドル8を操作する作業者の負担が軽くなって、操作性が向上する。また、歩行型電動耕耘機1を旋回させるような場合には、操向ハンドル8により機体後方を持ち上げて抵抗棒36を圃場から抜いて行なうことになるが、この様な場合に機体後方を持ち上げやすくなって、作業性が向上する。しかも、電動機4は、前低後高の傾斜状に配されていると共に、該電動機4の出力軸4a及びトランスミッション6の出力軸22の軸方向は車軸3の軸芯を指向しているため、電動機4の重量の軸方向の分力が車軸3に装着される耕耘ロータリ2に直接的に働くことになり、而して、硬い圃場であっても耕耘爪2aが食い込み易く、作業効率の向上に貢献できる。
【0034】
しかもこのものにおいて、前記トランスミッション6は、電動機4の出力を入力して減速する第一はすば歯車23と、該第一はすば歯車23の出力を減速する第二はすば歯車24と、該第二はすば歯車24の出力を減速して車軸3に出力するかさ歯車25とを備えて構成されているが、上記第一、第二はすば歯車23、24による減速機構は、例えばウォーム・ホイール方式による減速機構に比して高効率で電動機4の出力トルクを車軸3に伝達することができる。而して、電動機4の出力トルクが効率良く車軸3に伝達されて作業効率を向上させることができる一方、電動機4の消費電力を低減させることができて、連続作業時間を長くすることができる。
【0035】
さらに、前記トランスミッション6には、電動機4から車軸3への動力伝動を切断して車軸3の自由回転を許容するクラッチ機構26が設けられている。而して、該クラッチ機構26を断状態することによって、電動機4を停止させた状態で歩行型電動耕耘機1を容易に手押し走行させることができる。
【0036】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、電動機4から車軸3への動力伝動を断続するクラッチ機構を設けない構成にすることもできる。この場合であっても、クラッチ機構を設けた場合と比して操作力は重くなるが、電動機4の停止時に歩行型電動耕耘機1を手押し走行させることはできる。
【0037】
また、クラッチ機構を設ける場合に、上記実施の形態のクラッチ機構26は、かさ歯車25から車軸3への動力伝動を断続する構成であったが、これに限らず、例えば、図15、図16に示す第二の実施の形態のクラッチ機構40の如く、第一はすば歯車23から中間軸21への動力伝動を断続する構成にすることもできる。つまり、第二の実施の形態のものにおいて、第一従動側はすば歯車23bは、軸方向の移動は規制されるが軸回り方向には回動自在な状態で中間軸21に外嵌されていると共に、該第一従動側はすば歯車23bと対向する部位には、シフタ41が軸回り方向の回動は規制されるが軸方向には移動自在な状態で中間軸21に外嵌されている。該シフタ41は、作動アーム42の揺動操作に伴うシフタフォーク43の作動に基づいて、第一従動側はすば歯車23bに近接するクラッチ続位置と、第一従動側はすば歯車23bから離間するクラッチ断位置とに移動自在に構成されていると共に、第一従動側はすば歯車23bおよびシフタ41の対向面部には、互いに係脱自在な係合爪部23c、41aが形成されている。そして、シフタ41がクラッチ続位置に位置している状態では、前記係合爪部23c、41a同士が係合することによって第一従動側はすば歯車23bとシフタ41とは一体的に回転し、これにより、第一従動側はすば歯車23bの回転がシフタ41を介して中間軸21に伝達されるようになっている(クラッチ続状態)。一方、シフタ41がクラッチ断位置に位置している状態では、係合爪部23c、41a同士の係合が外れてシフタ41は第一従動側はすば歯車23bとは一体回転せず、これにより、中間軸21は第一従動側はすば歯車23bから自由になるように構成されている(クラッチ断状態)。そして、このクラッチ断状態では、電動機4の停止時における車軸3の自由回転が許容されて、歩行型電動耕耘機1を容易に手押し走行させることができる。尚、前記作動アーム42およびシフタフォーク43は、前述した実施の形態の作動アーム30およびシフタフォーク28と同様のものであるため、説明を省略する。また、第二の実施の形態において、前記実施の形態と同一のものについては、同一の符号を附すと共に説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、バッテリを動力源とする電動機で車軸を駆動せしめるように構成された各種歩行型電動作業機に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 歩行型電動耕耘機
2 耕耘ロータリ
3 車軸
4 電動機
4a 電動機の出力軸
5 バッテリ
6 トランスミッション
7 機体本体
8 操向ハンドル
22 トランスミッションの出力軸
23 第一はすば歯車
24 第二はすば歯車
25 かさ歯車
26 クラッチ機構
40 クラッチ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業アタッチメントが装着される車軸と、該車軸を駆動せしめる電動機と、該電動機の出力を減速して車軸に伝動するトランスミッションと、電動機の動力源となるバッテリとを備えて構成される機体本体に、該機体本体から後方に延出する操向ハンドルを設けてなる歩行型電動作業機において、前記電動機とバッテリとを前後に隣接させて作業アタッチメントの上方に配設するにあたり、車軸の軸芯位置に対して電動機が前方側に位置しバッテリが後方側に位置するように配すると共に、電動機をバッテリに対して前下がり状態となる前低後高の傾斜状に配して、該電動機の出力軸及びトランスミッションの出力軸の軸方向が車軸の軸芯を指向するように構成したことを特徴とする歩行型電動作業機。
【請求項2】
請求項1において、トランスミッションは、電動機の出力を入力して減速する入力はすば歯車と、該入力はすば歯車の出力を減速する中間はすば歯車と、該中間はすば歯車の出力を減速して車軸に出力するかさ歯車とを備えることを特徴とする歩行型電動作業機。
【請求項3】
請求項1または2において、トランスミッションに、電動機から車軸への動力伝動を切断して車軸の自由回転を許容するクラッチ機構を設けたことを特徴とする歩行型電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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