説明

歩行型電動作業機

【課題】作業部が駆動中においても操作が容易な変速レバーを備えた歩行型電動作業機を提供する。
【解決手段】作業部と、作業部を駆動する電動モータと、電動モータに給電するバッテリと、左右の操縦ハンドルと、を備えた歩行型電動作業機において、左右の操縦ハンドル7の一方に、把持すると電動モータの駆動を許容し、離すと電動モータの駆動を阻止する操作レバーを設けるとともに、左右の操縦ハンドル7の他方に、電動モータの駆動を無段階に変速可能な変速レバー60を設け、変速レバー60が、上下方向の軸芯61周りに回動し、作業部を前進駆動させる前進領域Fと、作業部を後進駆動させる後進領域Rと、前進領域Fと後進領域Rとを接続する中立領域Nとの間で移動可能に構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業部を駆動する電動モータと電動モータに給電するバッテリとを備えた歩行型電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータで耕耘ロータ等の作業部を駆動させ、田畑の耕耘等を行う歩行型電動耕耘機が広く知られている。歩行型電動耕耘機には、特許文献1に示すように、電動モータの駆動を入切する操作レバーを左右の操縦ハンドルの一方のグリップに備え、左右の操縦ハンドルの他方のグリップの前方に変速レバーを備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−222026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動耕耘機における変速レバーは、操縦ハンドルのグリップの前方に位置して、上下方向に延設されて横軸芯周りに前後方向に操作するように構成されているので、変速レバーを操作する際には、グリップから片手を離して操作する必要がある。したがって、作業部が駆動中に変速を行う場合には、変速レバーを操作することで、変速レバーが配置されていない他方の操縦ハンドルのグリップを把持して作業部を保持する必要がある。そうなると、電動耕耘機の操行状態が不安定となる。
【0005】
本発明は、作業部が駆動中においても操作が容易な変速レバーを備えた歩行型電動作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行型電動作業機の第1特徴構成は、作業部と、前記作業部を駆動する電動モータと、前記電動モータに給電するバッテリと、左右の操縦ハンドルと、を備えた歩行型電動作業機において、前記左右の操縦ハンドルの一方に、把持すると前記電動モータの駆動を許容し、離すと前記電動モータの駆動を阻止する操作レバーを設けるとともに、前記左右の操縦ハンドルの他方に、前記電動モータの駆動を無段階に変速可能な変速レバーを設け、前記変速レバーが、上下方向の軸芯周りに回動し、前記作業部を前進駆動させる前進領域と、前記作業部を後進駆動させる後進領域と、前記前進領域と前記後進領域とを接続する中立領域との間で移動可能に構成された点にある。
【0007】
〔作用効果〕電動モータの駆動を無段階に変速可能な変速レバーを設けたので、この変速レバーを操作することで、作業部を駆動する速度を無段階に変更することができる。
また、変速レバーが上下方向の軸芯周りに回動し、前記作業部を前進駆動させる前進領域と、前記作業部を後進駆動させる後進領域と、前記前進領域と前記後進領域とを接続する中立領域との間で移動可能に構成されているので、操縦ハンドルを握ったままの状態で例えば親指や人差し指での変速レバーの操作が可能となる。これにより、変速レバーの操作性が向上する。
【0008】
本発明に係る歩行型電動作業機の第2特徴構成は、前記左右の操縦ハンドルの他方における内方側の部分に前記変速レバーを設け、前記変速レバーの前記前進領域を前記左右の操縦ハンドルの他方に近い側に配置してある点にある。
【0009】
〔作用効果〕変速レバーにおける速度調整は、主に前進領域において行われることが多い。このため、左右の操縦ハンドルの他方における内方側の部分に変速レバーを設け、変速レバーの前進領域を左右の操縦ハンドルの他方に近い側に配置してあると、前進領域での増速操作が操縦ハンドルの他方に接近する方向に向けて行うこととなる。そうなると、操縦ハンドルの握り手の親指による変速レバーの増速操作が容易になり、歩行型電動作業機の作業性が向上する。
【0010】
本発明に係る歩行型電動作業機の第3特徴構成は、前記前進領域と前記後進領域とが、前記中立領域を介して上下方向に段差を有するよう構成された点にある。
【0011】
〔作用効果〕前進領域から後進領域または後進領域から前進領域に向けて変速レバーを操作する際に、必ず中立領域に一旦位置させた後に変速レバーを上方又は下方に操作して、前進領域又は後進領域に操作することとなる。したがって、作業部が前進から後進、または後進から前進に不用意に切換わることを防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】歩行型電動作業機の全体側面図である。
【図2】歩行型電動作業機の全体平面図である。
【図3】操作レバーが配置された操縦ハンドル部分の機体内方側の側面図であって、(a)は操作レバーが初期位置の状態、(b)は操作レバーが牽制位置の状態、(c)は操作レバーが把持位置の状態を夫々示す。
【図4】操作レバーが配置された操縦ハンドル部分の機体内方側の側面部分断面図であって、(a)は操作レバーが初期位置の状態、(b)は操作レバーが牽制位置の状態、(c)は操作レバーが把持位置の状態を夫々示す。
【図5】操作レバーが配置された操縦ハンドル部分の背面部分断面図である。
【図6】変速レバーが配置された操縦ハンドル部分の平面図である。
【図7】変速レバーが配置された操縦ハンドル部分の機体内方側の側面部分断面図である。
【図8】変速レバーの背面拡大図である。
【図9】変速レバーの構造分解図である。
【図10】変速レバーの位置と電動モータの回転数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態で例示する歩行型電動作業機は、機体フレーム1の下部に左右一対の耕耘ロータ2を装備し、機体フレーム1の上部に、左右の耕耘ロータ2の上方を覆うロータカバー3、左右の耕耘ロータ2を駆動する電動モータ4、この電動モータ4に給電するバッテリ5、及び左右の操縦ハンドル6,7などを備えて構成してある。
【0015】
機体フレーム1は、バッテリ5を支持する主フレーム9と、フレーム部材を兼ねる伝動ケース10と、ハンドルフレーム11と、移動輪29の支持部材12とによって構成されている。主フレーム9が伝動ケース10にボルト連結されている。主フレーム9の後端部に、その後端部から後傾斜姿勢で後上方に向けて延出する状態でハンドルフレーム11が溶接されている。ハンドルフレーム11における下端部の左右中央箇所には、その左右中央箇所から後方に向けて延出する状態で支持部材12が溶接されている。
【0016】
伝動ケース10はウォーム減速機(不図示)を内蔵し、伝動ケース10の下端部から左右に延出する出力軸(不図示)を備え、出力軸によって耕耘ロータ2を一体回転する状態に連結してある。
【0017】
図1及び図2に示すように、ハンドルフレーム11は、U字状に屈曲形成した丸パイプ材からなる第1部材11Aの両端部にわたって丸パイプ材からなる一直線状の第2部材11Bを左右向きに溶接し、第2部材11Bの両端部に、係合用の複数の凹凸をリング状の横外側面に整列形成した菊座金状の係合部材11Cを溶接して構成してある。そして、主フレーム9における後下がり姿勢のバッテリ支持部(不図示)に対して直角になる後傾斜姿勢にハンドルフレーム11を姿勢設定してある。
【0018】
操縦ハンドル6,7は、側面視への字状に屈曲形成した丸パイプ材からなる左右一対のハンドル部材6A,7Aの中間部を、丸パイプ材からなる一直線状の連結部材8で連結し、左右のハンドル部材6A,7Aの一端部に、係合用の複数の凹凸をリング状の横内側面に整列形成した菊座金状の係合部材6B,7Bを溶接し、左右のハンドル部材6A,7Aの他端部にゴム製の持ち手部6C,7Cなどを装備して構成してある。左右の各係合部材6B,7Bをハンドルフレーム11の対応する係合部材11C,11Cに対向させた状態で、操縦ハンドル6,7の揺動支点軸を兼ねるボルト14を各係合部材6B,7B,11C及び第2部材11Bに左方から挿通する。そして、ボルト14の右端部にノブ付きナット15を螺合することにより、操縦ハンドル6,7をハンドルフレーム11の延出端部(後上端部)に前後揺動可能に連結してある。
【0019】
図1に示すように、ロータカバー3は、上下に設定間隔をあけて配置した下側カバー部3Aと上側カバー部3Bとを備える二重構造に構成してある。下側カバー部3Aは、耕耘ロータ2の上方に位置するように主フレーム9にボルト連結して構成してある。上側カバー部3Bは、その左右の両端部が左右の耕耘ロータ2の横外側端よりも横外側に位置する幅広に形成した樹脂製のカバー体で構成してある。
【0020】
上部カバー部3Bの前部には、電動モータ4の上部側が挿通する開口部(不図示)を形成してあり、又、この開口部から上方に露出する電動モータ4の上部側を上方から覆う樹脂製のモータカバー20を着脱可能に係合連結してある。上部カバー部3Bの後部にはバッテリ搭載用の凹部17を一体形成してある。
【0021】
図1及び図2に示すように、主フレーム9におけるハンドルフレーム11の直前箇所には、主フレーム9のバッテリ支持部と上部カバー部3Bの凹部17とから構成したバッテリ搭載部23を設けてある。又、ハンドルフレーム11の左側部分には、作業時の振動などによるバッテリ5のバッテリ搭載部23からの浮き上がりを阻止する固定具24を備えてある。ハンドルフレーム11の第1部材11Aは、その左右の中心幅がバッテリ5の左右幅と同じ又はバッテリ5の左右幅よりも狭くなるように形成してある。
【0022】
バッテリ5には、バッテリ5の残量及び温度などを監視して過放電や過充電などを防止する電圧・電流制御を行うマイクロコンピュータ(図示せず)を内蔵したリチウムイオンバッテリを採用してある。バッテリ5の前上部には、バッテリ搭載部23に対するバッテリ5の着脱及びバッテリ5の搬送を容易にする把持部5Bを左右向きの姿勢で備えてある。
【0023】
図1に示すように、機体フレーム1の後部を形成する支持部材12は、前後方向視逆U字状に屈曲形成した板金製で、その後上部に配備した左右向きの支軸27を支点にして左右の耕耘ロータ2の後方で上下揺動する揺動アーム28を装備してある。
【0024】
揺動アーム28の一端部には、揺動アーム28を下向きに揺動変位させた下向き姿勢で接地する移動輪29を装備してある。揺動アーム28には、揺動アーム28を後方揺動姿勢した際に接地する抵抗体としての抵抗棒30を高さ調節可能にピン連結してある。
【0025】
電動モータ4を制御するためのコントローラ(不図示)が、電動モータ4及びバッテリ5の近傍に配置されている。電動モータ4及びバッテリ5はコントローラに接続されており、バッテリ5から供給された電力を変換して電動モータ4に供給する。図2に示すように、電動モータ4の始動及び停止は右側の操縦ハンドル7の持ち手部7C近くの位置に取付けられたメインスイッチ31により行われる。メインスイッチ31が作業者の手元に存在することで、作業者が簡単にメインスイッチ31を操作することができる。なお、メインスイッチ31は非常停止スイッチの機能も兼ね備えており、緊急時にメインスイッチ31を押せば電動モータ4が停止するようになっている。
【0026】
また、図1及び図2に示すように、左側の操縦ハンドル6の持ち手部6Cの近くに電動モータ4の駆動を入り切りする操作レバー40を設け、右側の操縦ハンドル7の持ち手部7Cの近くに変速レバー60を設ける。
【0027】
図3(a)及び図4(a)に示すように、操作レバー40は、左側の操縦ハンドル6の持ち手部6Cに下方に位置し、第1横軸芯41周りに上下に揺動するよう構成されている。操作レバー40は前側に上面が開口し断面が箱形形状の部分42を有し、後側に把持部43が設けられている。操作レバー40が把持位置に位置することを検出する位置センサ44が、操縦ハンドル7の側であって箱形形状の部分42の底面42aに対向する位置に設けられている。位置センサ44の接触子44aに接触離間するセンサ当接部45が箱形形状の部分42の底面42aにおける位置センサ44に対向する位置に設けられている。
【0028】
歩行型電動作業機には、メインスイッチ31が入位置に操作され、且つ、位置センサ44において操作レバー40が把持位置に位置することが検出されると電動モータ4の駆動が許容され、位置センサ44において操作レバー40が把持位置に位置することが検出されないと電動モータ4の駆動を阻止する制御手段(不図示)が例えば電動モータ4の近傍に備えられている。位置センサ44とセンサ当接部45との当接離間により操作レバー40の位置を位置センサ44が検出し電動モータ4の駆動の入切が行われる。把持可能な操作レバー40には、操縦ハンドル6の持ち手部6Cから下方に離間した位置となる初期状態に付勢するスプリング46が備えられている。
【0029】
操作レバー40の上方の操縦ハンドル6の持ち手部6Cの前方に、第1横軸芯41に平行な第2横軸芯51周りに上下に揺動可能な牽制部材50が設けられている。牽制部材50には、操作レバー40の操作を規制する牽制部52と、牽制部材50を初期位置に保持する当接部53と、牽制部材50を回動操作する操作部54とを備えられている。第2横軸芯51には牽制部52が初期位置において下方に向く牽制姿勢となるよう回動付勢するスプリング(付勢部材)55が設けられている。操作部54が操作されない状態では、当接部53が操縦ハンドル6側に設けられたストッパ56に当接することで、牽制部材50の姿勢が牽制姿勢に保持される。
【0030】
操作レバーと牽制部材の耕耘作業時の操作について以下説明する。
図3(a)及び図4(a)は、操作レバー40が何ら操作されていない初期位置aの状態を示し、牽制部材50は牽制部52が下方に向く牽制姿勢である。この状態から、操作レバー40を上方に向けて把持しようとすると、図3(b)及び図4(b)に示すように、牽制部材50の牽制部52が箱状形状の部分42の縦壁42bの上部と当接し、操作レバー40の上方への把持操作を阻止する(牽制位置b)。牽制位置bに位置する操作レバー40では、位置センサ44の接触子44aとセンサ当接部45とが接するに過ぎず、位置センサ44は操作レバー40が把持位置に位置することを検出しない。すなわち、操作レバー40が牽制位置bの状態は電動モータ4の駆動が阻止された状態である。
【0031】
耕耘ロータ(作業部)2を駆動させるには、図3(c)に示すように、牽制部材50の操作部54を例えば親指で下方に押し、牽制部材50を第2横軸芯51周りの矢印方向に回動させて牽制部52を退避位置(操作レバー40の把持位置への操作を許容する位置)に移動させる。この状態で、操作レバー40の把持部43を把持することで操作レバー40は把持位置cまで把持することができる。そうなると、センサ当接部45が位置センサ44の接触子44aを押し上げて位置センサ44は操作レバー40が把持位置に位置することを検出し、制御手段により電動モータ4が駆動され耕耘ロータ2を駆動して耕耘作業が行われる。耕耘作業が始まると、牽制部材50の牽制部52が操作レバー40の縦壁42bに当接し退避位置に保持されることにより、牽制部材50の操作部54の押し操作は不要となり、操作レバー40を把持位置cの状態に把持するだけで耕耘作業を継続することができる。
【0032】
耕耘作業を停止するときは、作業者が把持部43を離すことにより、スプリング46が作用し把持部43が初期位置aまで回動して戻り、位置センサ44は操作レバー40が把持位置に位置することを検出しなくなる。そうなると、電動モータ4の駆動が停止され耕耘ロータ2の駆動を停止する。また、牽制部材50はスプリング55の作用により牽制姿勢に戻る。
【0033】
したがって、作業者がメインスイッチ31を入りにした状態で歩行型電動作業機を持ち運んでいるとき等に、不意に操作レバー40の把持部43に当接して把持部43が揺動したとしても、牽制部材50により電動モータ4の駆動は阻止されたままであり、不用意に耕耘ロータ(作業部)2が駆動されることを防止することができる。
【0034】
また、操作レバー40を第1横軸芯41周りに上下揺動させ、牽制部材50についても第2横軸芯51周りに上下揺動させるように構成したので、操作レバー40と牽制部材50が共に横軸芯周りの上下揺動操作となる。すなわち、操作レバー40及び牽制部材50の揺動方向が同方向となることにより、操作レバー40及び牽制部材50の操作性が向上する。
【0035】
操作レバー40は操縦ハンドル6の持ち手部6Cの下面に接近した把持位置と持ち手部6Cから離間した解除位置(初期位置)に亘って上下揺動し、牽制部材50の操作部54は操作レバー40の把持位置への操作を阻止する上方位置及び操作レバー40の把持位置への操作を許容する下方位置に亘って上下揺動する。
これにより、耕耘ロータ(作業部)2を駆動させる際には、牽制部材50の操作部54を操作が容易な下方に向けて揺動操作することができ、操作レバー40についても操作が容易な操縦ハンドル6の持ち手部6Cの下面に接近した把持位置に向けて揺動操作することができる。したがって、片手での牽制部材50及び操作レバー40の揺動操作が容易となる。
【0036】
さらに、操縦ハンドル6の持ち手部6Cの内方位置に牽制部材50を設け、操縦ハンドル6の側面視において牽制部材50の下方に解除位置(初期位置)の操作レバー40が配置してあるので、耕耘ロータ(作業部)2を駆動させる際には、例えば牽制部材50の操作部54を親指にて操作レバー40の把持位置への操作を許容する下方位置に向けて揺動操作しつつ、操作レバー40を親指以外の指にて操縦ハンドル6の持ち手部6Cの下面に接近した把持位置に操作することができる。したがって、片手での牽制部材50及び操作レバー40の操作がより容易となる。
【0037】
図5に示すように、操作レバー40の箱形形状の部分42は、左右両側の縦壁42b,42bから中央に向けての縦断面視において下方に傾斜する底面42a,42aを有し、中央に溝部42cが形成されている。箱形形状の部分42の底面42a,42aから上方に離間した位置に操作レバー40が把持位置cに位置することを検出する位置センサ(リミットスイッチ)44を備え、位置センサ44を箱形形状の部分42の底面42a,42aにおける右側の縦壁42b寄りに配置させてある。
【0038】
操作レバー40の箱形形状の部分42の底面42a,42aは左右両側から左右中央側にかけて下方に傾斜する形状であるので、仮に、この箱形形状の部分42に小石等が侵入した場合には、侵入物は箱形形状の部分42の底面42a,42aの傾斜により中央の溝部42cに移動する。こうした侵入物に対し、位置センサ44は、箱形形状の部分42の底面42a,42aから上方に離間した位置であって、箱形形状の部分42の底面42a,42aにおける右側の縦壁42b寄りに配置してある。
すなわち、侵入物は箱形形状の部分42の底面42a,42aの中央の溝部42cに移動するのに対し、位置センサ44は箱形形状の部分42の底面42aの中央部分を避ける位置に配置されているので、操作レバー40を把持位置に向けて操作する際に、侵入物が位置センサ44に当接し難い。その結果、侵入物の存在による位置センサ44の誤検出を防止することができ、操作レバー40による電動モータ4の入切操作は安定的に行うことができる。
【0039】
また、位置センサ44は箱形形状の部分42の底面42a,42aにおける右側の縦壁42b寄りに配置されているので、位置センサ44に当接する箱形形状の部分42の底面42aの部分は左右中央側に向けて下方に傾斜している可能性が高い。位置センサ44に当接する箱形形状の部分42の底面42aの部分が左右中央側に向けて下方に傾斜していると、位置センサ44との当該底面42aの部分との当接が不十分となり、位置センサ44の検出精度が低くなるおそれがある。
そこで、本構成では、箱形形状の部分42の底面42a,42aにおいて位置センサ44に対向する位置にセンサ当接部として頂部が上向きの凸部45を設けてある。凸部センサ(当接部)45は頂部が丸みを帯びた円錐状に形成されている。その結果、位置センサ44は上向きの凸部(センサ当接部)45に確実に当接することとなり、位置センサ44の検出精度が向上する。
【0040】
図2、図6〜図8に示すように、右側の操縦ハンドル7の持ち手部7Cの内方側の前方に、電動モータ4の駆動を無段階に変速可能な変速レバー60が斜め後方上向きに配置されている。変速レバー60は前進・中立・後進の三つの切り替えが可能である。変速レバー60は、上下方向の軸芯61周りに左右揺動自在に構成されており、操縦ハンドル7の持ち手部7Cの内方から外方にかけて、後進領域R、中立領域N、前進領域Fの並びとなっている。したがって、中立領域Nにある変速レバー60を右方に操作すれば耕耘ロータ2が前進駆動し、左に操作すれば耕耘ロータ2が後進駆動する。変速レバー60の下方には変速レバー60の位置を検出するためのポテンショメータ62を備え、検出したポテンショメータ62の信号がコントローラに送信される。
【0041】
このように、電動モータ4の駆動を無段階に変速可能な変速レバー60を設けたので、この変速レバー60を操作することで、耕耘ロータ2の駆動速度を無段階に変更することができる。また、変速レバー60が上下方向の軸芯61周りに回動し、耕耘ロータ2を前進駆動させる前進領域Fと、耕耘ロータ2を後進駆動させる後進領域Rと、前進領域Fと後進領域Rとを接続する中立領域Nとの間で移動可能に構成されているので、操縦ハンドル7の持ち手部7Cを握ったままの状態で例えば親指や人差し指での変速レバー60の操作が可能となる。これにより、変速レバー60の操作性が向上する。
【0042】
変速レバー60における速度調整は、主に前進領域Fにおいて行われることが多い。本実施形態では、左の操縦ハンドル7の内方側の部分に変速レバー60を設け、変速レバー60の前進領域Fを左の操縦ハンドル7の持ち手部7Cに近い側に配置してあるので、前進領域Fでの増速操作は操縦ハンドル7に接近する方向に向けて行うこととなる。そうなると、操縦ハンドル7の持ち手部7Cの握り手の親指による変速レバー60の増速操作が容易になり、歩行型電動作業機の作業性が向上する。
【0043】
図6〜図9に示すように、変速レバー60は、右側の操縦ハンドル7の持ち手部7Cの前方内側に位置するカバー体63の後側に配設されている。カバー体63の右側は操縦ハンドル7に固着されており、カバー体63の前部にはメインスイッチ31が配設されている。カバー体63の後部63bの後縁は平面視において操縦ハンドル7の側が前方になる斜めに形成され、斜め上向きの後面に変速レバー60用のガイド溝70が形成されている。ガイド溝70は水平方向に形成されてあり、中立領域Nを中間位置にして下方の前進領域Fと上方の後進領域Rとを有する。前進の速度幅を後進の速度幅よりも大きくするために、ガイド溝70において前進領域Fが後進領域Rよりも左右方向に長く形成されている。変速レバー60は付勢バネ69によってガイド溝70において下方側に位置する前進領域Fに向けて付勢されている。
【0044】
こうしたガイド溝70の形状により、前進領域Fの変速レバー60を後進に変速操作するには、前進領域Fに連続する中立領域Nにて変速レバー60を一旦停止させ、そこから反付勢方向の上方に変速レバー60を持ち上げて後進領域Rに移動させる。一方、後進領域Rの変速レバー60を前進側に変速操作する際には、後進領域Rに連続する中立領域Nに移動させた変速レバー60は付勢力にて前進領域F側の中立位置に移動し、そこから変速レバー60を前進領域Fに移動させることとなる。
【0045】
このように、変速レバー60による前進領域F又は後進領域Rへの変速操作の際には、必ず中立領域Nに一旦位置させた後に変速レバー60を上方又は下方に操作して、前進領域F又は後進領域Rに操作することになる。したがって、耕耘ロータ(作業部)2が前進から後進、または後進から前進に不用意に切換わることを防止することできる。
【0046】
図9に示すように、変速レバー60は平板状であり、一端側の基部64は円形であり長手方向に矩形状の長孔64aが形成されている。変速レバー60の他端側は操作部65であり、側方に山状凸部65aが形成されるとともに、上面中央部には長手方向に棒状凸部65bが形成されている。山状凸部65a及び棒状凸部65bは操作部65の操作性を補助するために形成されている。
【0047】
カバー体63の下部には取付け板66を介してポテンショメータ62が固設されている。取付け板66の上方にはリング状のガイド部材67が取付けられており、ガイド部材67の内方においてポテンショメータ62の操作軸62aが回動自在に上方に突出している。操作軸62aに円柱状の変速レバーボス68の下面の凹部68aが嵌合するよう構成されている。変速レバーボス68の上部には直方体状のレバー基端部(軸芯)61が突設されており、レバー基端部61を変速レバー60の基部64の長孔64aに挿入し、変速レバー60を軸支する。変速レバー60の基部64はカバー体63に配設された付勢バネ69によって下方に付勢される。付勢バネ69はカバー体63の折り返し部63cに受け止め支持されている。変速レバー60の操作により変速レバーボス68とポテンショメータ62が一体で回転する。レバー基端部61に基部64の長孔64aが沿って変速レバー60が上下揺動し、付勢バネ69で下方付勢されている。この付勢バネ69により、変速レバー60が揺動位置に摩擦保持されている。
【0048】
変速レバー60、ポテンショメータ62等を含む変速レバー本体はボルト71をカバー体63の長孔部63aに装着することで固定される。長孔部63aは変速レバー本体の水平方向における取付け角度を調整するために形成されている。変速レバー60を中立領域Nにした状態でセンサ出力を確認し、長孔部63aによって変速レバー60の中立領域Nが所望の位置となるよう変速レバー本体の取付け角度を調整する。
【0049】
運転開始時のフローについて、以下説明する。
まず、メインスイッチ31を押すと、変速レバー60の位置(前進領域F・中立領域N・後進領域R)を変速レバー60に備えたポテンショメータ62により検出し、中立領域Nにない場合には、中立領域Nでないため運転できない旨又は、運転するための中立領域Nに戻す必要がある旨の警報表示をする。このように変速レバー60が中立領域Nにないと電動モータ4が作動しないように規制することにより、急発進を防止することができ、操作性を向上させることができる。
【0050】
本実施形態では、運転状態に応じて電動モータ4の回転速度は変更される。例えば、作業機において、前進は高速で、後進は低速で作業する場合が多い。こうしたことを考慮して電動モータ4の回転速度の変更を行うために、図10に示すように、前進側の電動モータ4への目標回転数を高めに設定し、後進側の電動モータ4への目標回転数を低めに設定している。また、変速レバー60に備えたポテンショメータ62の検出結果に基づき電動モータ4への回転数も変更される。前進領域及び後進領域の回転数は中立からの変速レバーの操作に応じて上限値まで増加し、その後一定となる。また、中立領域は変速レバーの遊びを考慮して多少の幅を持たせてある。
【0051】
電動モータ4の停止時の作動フローを示す。変速レバー60の位置(前進領域F・中立領域N・後進領域R)を変速レバー60に備えたポテンショメータ62により検出し、前進領域Fまたは後進領域Rにあるか否かを判別する。変速レバー60が前進領域Fまたは後進領域Rにある場合には、操作レバー40が切り操作されているかどうかを位置センサ44により検出し、操作レバー40が切り操作されている場合には電動モータ4は停止する。一方、変速レバー60が中立領域Nにある場合には、操作レバー40が切り操作されているか否かに関わらず、電動モータ4は停止する。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態では、歩行型電動作業機の作業部として耕耘ロータ2を採用した例を示したが、作業部は耕耘ロータ2に限定されることはなく、例えば走行用の車輪や草刈部であってもよい。
【0053】
(2)上記の実施形態では、左側の操縦ハンドル6に操作レバー40及び牽制部材50を配置し、右側の操縦ハンドル7に変速レバー60を配置した例を示したが、右側の操縦ハンドル7に操作レバー40及び牽制部材50を配置し、左側の操縦ハンドル6に変速レバー60を配置してもよい。
【0054】
(3)上記の実施形態では、操作レバー40が下方から上方に向けて把持位置cに操作される例を示したが、操作レバー40は操縦ハンドル6の持ち手部6Cに向けて把持位置cに操作されるのであれば、上方から把持位置cに操作される構成であってもよい。
【0055】
(4)上記の実施形態では、前進領域Fを操縦ハンドル7の側に配置する例を示したが、後進領域Rを操縦ハンドル7の側に配置してもよい。
【0056】
(5)上記の実施形態では、変速レバー60のガイド溝70における前進領域Fと後進領域Rに上下の段差を設ける構成を示したが、前進領域Fと後進領域Rに段差がない構成であってよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、耕耘ロータ等の作業部を駆動する電動モータと、電動モータに給電するバッテリとを備える歩行型電動作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 機体フレーム
2 耕耘ロータ(作業部)
3 ロータカバー
4 電動モータ
5 バッテリ
6,7 操縦ハンドル
6C,7C 持ち手部
40 操作レバー
44 位置センサ
60 変速レバー
61 軸芯
F 前進領域
N 中立領域
R 後進領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部と、前記作業部を駆動する電動モータと、前記電動モータに給電するバッテリと、左右の操縦ハンドルと、を備えた歩行型電動作業機において、
前記左右の操縦ハンドルの一方に、把持すると前記電動モータの駆動を許容し、離すと前記電動モータの駆動を阻止する操作レバーを設けるとともに、
前記左右の操縦ハンドルの他方に、前記電動モータの駆動を無段階に変速可能な変速レバーを設け、
前記変速レバーが、上下方向の軸芯周りに回動し、前記作業部を前進駆動させる前進領域と、前記作業部を後進駆動させる後進領域と、前記前進領域と前記後進領域とを接続する中立領域との間で移動可能に構成された歩行型電動作業機。
【請求項2】
前記左右の操縦ハンドルの他方における内方側の部分に前記変速レバーを設け、前記変速レバーの前記前進領域を前記左右の操縦ハンドルの他方に近い側に配置してある請求項1記載の歩行型電動作業機。
【請求項3】
前記前進領域と前記後進領域とが、前記中立領域を介して上下方向に段差を有するよう構成された請求項1又は2記載の歩行型電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−63025(P2013−63025A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202304(P2011−202304)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】