説明

歩行訓練装置

【課題】複数の歩行者が相反する方向へ同時に歩行する場合であっても両者の歩行訓練が同時に行える歩行訓練装置の提供を目的とする。
【解決手段】任意の回転速度で回転可能な回転駆動源の一例であるモータ4と、このモータ4の出力軸4aに接続された駆動プーリ5と、この駆動プーリ5の対向する位置に配され自在に回転可能な従動プーリ7と、この従動プーリ7および前記駆動プーリ5に巻回した無端循環移動部材の一例である樹脂製のベルト2とから成る歩行訓練装置1において、前記モータ4の作動により循環送りされる前記ベルト2に複数の印2aを付したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の速度で歩行者が歩行できるように訓練する歩行訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場における生産効率向上の一環として、適正な歩行速度を保って作業場所等への移動が行えるように作業者の歩行を訓練する試みがある。このような歩行訓練には特許文献1に示す歩行訓練装置が用いられており以下に説明する。
【0003】
従来の歩行訓練装置は、歩行領域の一端に配した歩行開始信号を発するセンサと、前記歩行領域内でかつ等間隔に配置された複数のランプと、これら複数のランプを順次点灯可能な制御手段とを備え、この制御手段を理想の歩行時間に合わせて前記ランプの点灯間隔を求める手段と、前記センサが歩行開始信号を出力したことにより前記点灯間隔にしたがって前記センサ側のランプから順に所定のランプを点灯させる指令を出力する手段とから構成される。次に、従来の歩行訓練装置の作用について説明する。まず、前記センサは、前記歩行領域を歩行する歩行者を検知して歩行開始信号を出力し、この歩行開始信号が前記制御手段に入力される。その後、前記制御手段は、所定の時間間隔で前記センサ側のランプから順に隣接するランプを点灯させる。したがって、前記歩行者は、順次点灯するランプを確認することで、自身の歩行速度が理想の歩行速度であるか判断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−348836号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の歩行訓練装置は、前記センサ側から前記ランプを順次点灯させるため、複数の歩行者が同時に相反する方向へ歩行する歩行訓練が行えない問題があった。また、この問題の解決には、各歩行方向毎にセンサおよび複数のランプを設置することが考えられるが、これは歩行方向の数だけセンサおよびランプの数が増え、製作に係るコストが増大する他、各歩行方向のランプを順次点灯する制御が複雑となる問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、複数の作業者が同時に相反する方向へ歩行する場合であっても両者の歩行訓練が同時に行える歩行訓練装置の提供を目的とする。この目的を達成するために、本発明は、任意の速度で回転可能な回転駆動源と、この回転駆動源の出力軸に連結された回転可能な駆動プーリと、この駆動プーリの対向する位置に配され自在に回転可能な従動プーリと、この従動プーリと前記駆動プーリに回巻された無端循環移動部材とから成る歩行訓練装置において、前記回転駆動源の作動により循環送りされる無端循環移動部材に複数の印を付したことを特徴とする。
【0007】
なお、歩行者の検出可能な位置に配したセンサと、このセンサから出力された検出信号に基づき回転駆動源の駆動を可能にしてもよい。また、回転駆動源の出力軸および駆動プーリにかさ歯車をそれぞれ配し、これらかさ歯車の係合によって前記出力軸の回転を駆動プーリに伝達可能にしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歩行訓練装置によると、無端循環移動部材を所定の速度で順送りしているため、複数の歩行者が相反する方向へ同時に歩行する場合であっても両者の歩行訓練が同時に行える利点がある。また、前記無端循環移動部材に印を付すため、従来のランプおよびこのランプを順次点灯させる制御が不要となる他、従来に比べて装置の構成が比較的に簡単であるため、製作に係るコストを大幅に低減できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係わる一実施例の歩行訓練装置の概略説明図である。
【図2】本発明に係わる別の実施例の要部概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本願発明の歩行訓練装置について図1に基づき以下に説明する。本願発明の歩行訓練装置1は、回転駆動源の一例であるモータ4と、このモータ4の出力軸4aと一体に回転可能に配置された円板状の駆動プーリ5と、この駆動プーリ5と同寸法からなる回動自在に配された従動プーリ7と、この従動プーリ7および前記駆動プーリ5に回巻された無端循環移動部材の一例であるベルト2とを備えている。
【0011】
前記モータ4は、断面「L」字形の取付板6に固定されており、この取付板6は鉄部材からなる架台11aの上面に固定されている。この架台11aは、断面「く」字形の鉄部材を複数使用し溶接により組み上げた脚と、鉄製の板材から成るベース板とから構成されており、前記脚の上端に前記ベース板を溶接し、このベース板の上面が床面に対してほぼ水平となっている。つまり、前記モータ4は、前記出力軸4aの一部を前記取付板6から突出させるようにかつ、前記出力軸4aの軸線が床面に対してほぼ水平となるように配されている。
【0012】
前記駆動プーリ5および前記従動プーリ7は、鉄製の円板からそれぞれ構成されており、これら円板の外周に渡って断面「U」字形の溝5a,7aが形成されている。また、こらら駆動プーリ5および従動プーリ7の中心にはそれぞれ穴加工が施されており、これらの穴は、駆動プーリ5であれば前記出力軸4aに、従動プーリ7であれば後述する軸14に、それぞれ挿通可能な寸法で形成されている。さらに、これらの穴の内径には、それぞれの外周から内径に渡ってねじ穴が形成されているため、駆動プーリ5と出力軸4aあるいは従動プーリ7と前記軸14は、それぞれねじ固定され一体に回転できる。また、軸14は、従動プーリ7の両側面から突出しており、これら突出部を支持する支持台8,8により従動プーリ7が回転自在に支持されている。前記支持台8,8は、前記架台11aと同様の構造からなる架台11bの上面に固定されており、前記従動プーリ7の軸線は、床面に対してほぼ水平となっている。
【0013】
前記ベルト2は、両端面の断面が丸で形成され、若干の伸縮性を有する1本の樹脂材からなり、所定の大きさおよび間隔に複数の印2aが付されており、前記両端面を熱処理等により結合して無端部材に形成されている。このベルト2は、前記駆動プーリ5および前記従動プーリ7の溝5a,7aに回巻されており、前記駆動プーリ5および前記従動プーリ7の軸間は、前記ベルト2に常時張力が生じる距離に設定されている。つまり、駆動プーリ5および従動プーリ7の軸間には、前記ベルト2によって上下に並行する2本の直線部が出現する。
【0014】
一方、架台11a,11bの上面には、鉄製のカバー9,9がそれぞれ固定されており、これらカバー9,9は、駆動プーリ5および従動プーリ7に回巻されたベルト2と干渉しない位置に切欠きがそれぞれ設けられている。また、これらカバー9,9には、前述のベルト2の2本の直線部を覆うように透明カバー3が固定されているため、前記ベルト2に付された印2aを後述する歩行者(図示せず)が確認できる。
【0015】
また、架台11a,11bの側面には、前記ベルト2の延びる方向に対して直交方向に延びる光軸31a,31bを発光可能なセンサ30a,30bが固定されているため、前記ベルト2の延びる方向に対してほぼ平行な通路12を歩行する歩行者によって前記光軸31a,31bが遮られると前記センサ30a,30bから検出信号が出力される。
【0016】
一方、架台11aの側面でかつ前記センサ30aに対向する面に制御装置20が固定されており、この制御装置20の正面には、前記出力軸4aの回転速度を可変可能なボリューム21と、前記モータ4に停止指令を出力可能な非常停止スイッチ22とが設けられている。前記ボリューム21は、前記出力軸4aの回転速度を調整できる一方、前記非常停止スイッチ22は、押されることで前記出力軸4aの回転を停止可能である。
【0017】
次に、本発明に係る歩行訓練装置1の作用について説明する。前記通路12を歩行する歩行者が前記モータ側から従動プーリ側に歩行する場合であるとき、前記光軸31aが前記歩行者によって遮られるため、前記センサ30aは検出信号を前記制御装置20に出力する。これを受けて制御装置20は、前記ボリューム21で設定された速度に基づき前記モータ4へ回転指令を与える。この回転指令により、前記駆動プーリ5は時計方向に所定速度で回転するため、前記ベルト2が前記溝5aとの接触抵抗によって循環送りされるとともに、前記従動プーリ7も回転する。つまり、前記ベルト2は、前述の下方の直線部であれば駆動プーリ側から従動プーリ側に送られるため、印4aが送り方向10aへ移動する一方、上方の直線部であれば従動プーリ側から駆動プーリ側に送られるため、印4aが送り方向10bへ移動する。その後、前記光軸31bは、前記歩行者によって遮られるため、前記センサ30bは検出信号を前記制御装置20に出力する。これにより、前記制御装置20は、前記モータ4に回転停止指令を与えて前記ベルト2の循環送りを停止させる。
【0018】
以上説明したように、本発明の歩行訓練装置1によれば、前記歩行者は、自身の歩行方向と同一方向に移動する印2aを目視できるため、自身の歩行速度が適正な速度であるか確認しながら歩行できる。また、前記前記印2aの送り方向10a,10bが一動作で2方向を得ることができるため、相反する方向への歩行訓練を同時に行える利点がある。さらに、前記ベルト2に印2aを付しているため、従来必要であったランプおよびこのランプの点灯制御が不要となる他、従来に比べて装置構成も比較的に簡単となり、製作に係るコストが大幅に低減できる利点もある。
【0019】
なお、実施例では、モータ4の出力軸4aに駆動プーリ5を直接取付けたが、図2に示すように出力軸4aおよび駆動プーリ5にかさ歯車15,15をそれぞれ固定して出力軸4aおよび駆動プーリ5の軸線が直交するように配置することが好ましい。これは、モータ4の突出方向を水平から垂直方向に変更できるため、歩行訓練装置1の小型化を実現できる利点もある。さらに、前記かさ歯車15,15の歯車比は、回転駆動源の最大出力トルクあるいは最大出力回転数に合わせて変更してもよい。また、駆動プーリ5および従動プーリ7の大きさを同寸法としたが、それぞれの大小関係を必要に応じて変更してもよいことは言うまでもない。一方、モータ4の動作制御を2つのセンサ30a,30bの検出信号に基づき行ったが、1つのセンサの検出信号により前記モータ4の動作開始を行い、この動作開始から所定時間経過後に動作停止するようにタイマー制御としてもよい。さらに、溝5a,7aの断面形状を「U」字形としたがベルト2および溝5a,7aの接触抵抗に合わせ回転伝達効率のよい形状に変更してもよい。一方、無端循環移動部材をベルト2としたが、例えば歯付ベルトや伝動用ローラチェーン等にしてもよく、この場合であれば、前記駆動プーリ5および前記従動プーリ7を前記無端循環移動部材と確実に係合可能な歯付プーリやスプロケット等に変更してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0020】
1 歩行訓練装置
2 ベルト
2a 印
3 透明カバー
4 モータ
5 駆動プーリ
7 従動プーリ
12 通路
20 制御装置
30a センサ
30b センサ
31a 光軸
31b 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の速度で回転可能な回転駆動源と、この回転駆動源の出力軸に連結された回転可能な駆動プーリと、この駆動プーリの対向する位置に配され自在に回転可能な従動プーリと、この従動プーリと前記駆動プーリに回巻された無端循環移動部材とから成る歩行訓練装置において、前記回転駆動源の作動により循環送りされる無端循環移動部材に複数の印を付したことを特徴とする歩行訓練装置。
【請求項2】
歩行者の検出可能な位置に配したセンサと、このセンサから出力された検出信号に基づき回転駆動源の駆動を可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の歩行訓練装置。
【請求項3】
回転駆動源の出力軸および駆動プーリにかさ歯車をそれぞれ配し、これらかさ歯車の係合によって前記出力軸の回転を駆動プーリに伝達可能にしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歩行訓練装置。

【図1】
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【図2】
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