説明

歯の脱灰を低減するための組成物および方法

ヒト口腔ケア組成物は、歯の脱灰を低減しかつ再石灰化を促進するペースト、ゲル、リンス、スプレー、粉末、ワニスまたは類似物の形態をとってもよい、安全で有効な量のフッ化物イオンおよび安定化二酸化塩素を含む。本方法は、存在する任意のバイオフィルムを損なう放出二酸化塩素によりフッ化物の虫歯予防効果を高めるために、好ましくは1日に少なくとも1回、(歯、歯肉、および舌を含むがそれらに限定されない)ヒト口腔への本組成物の局所適用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年12月22日に出願され、通し番号61/140,010を割り当てられた、本発明者らによってなされた発明を記載する「Composition For Preventing Demineralization Of Teeth」と題された仮出願に開示された主題を含み、かつ、その優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、口腔ケア製品および方法に、より具体的には虫歯を予防するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
長年、口腔ケア・レジメンは、歯周炎および虫歯などの、ある範囲の口腔疾患または疾病を安全におよび効果的に予防するおよび治療するために消費者および歯科専門家によって用いられてきた。練り歯磨き、オーラルリンス、口腔ゲル、および口腔スプレーは、これらのレジメンに含められるタイプの口腔ケア製品である。ヒト口腔疾病に抗する口腔ケア製品の実用性の十分研究された例は、全ヒト集団での虫歯罹患率の全体的な低下に寄与する点でかなりの効果を示した、虫歯の予防のための歯および口腔へのフッ化物練り歯磨きの適用である(2008 Cury)。フッ化物を含有する口腔ケア製品の証明された虫歯予防有効性の結果として、安全で有効な市販の虫歯予防薬品の公衆へのデリバリーを確実にするために政府および工業基準が確立された。これらの基準のかかる一例は、米国(US)食品医薬品局(FDA)虫歯予防モノグラフ、合衆国法律集(United States Code)(USC)Title 21 Parts 310、355および369に成文化されている。
【0004】
虫歯:病態生理学
虫歯、すなわち歯の衰微は、歯上に形成するう蝕病変によって特徴づけられる複雑なおよび万延した疾病である。虫歯プロセスは、歯バイオフィルムが存在する歯の表面で最初に起こる。歯バイオフィルムは、「後天性エナメル質歯膜[唾液タンパク質歯膜]および歯垢」からなる(2008 Garcia-Godoy)。後天性エナメル質歯膜(AEP)は、微生物が歯に最初に付着するために使用され、その後、好気性および嫌気性微生物がコロニーを作り、共凝集して歯垢を形成する構造として働く。総合すれば、AEPおよび歯垢が発生するにつれて、これらの構造は成長して歯バイオフィルムになる。う蝕原生細菌は、歯バイオフィルムに生息し、(サッカロースなどの)食事性糖質を酸へ発酵させて歯の近くに酸性環境をつくる。この局部的な酸性pH、および酸性のより少ない、休止pHの方への戻りは、それぞれ、歯の脱灰および再石灰化に寄与する。脱灰/再石灰化プロセスが歯での正味の無機質損失をもたらすとき、歯の硬組織は溶解する可能性があり、虫歯病変が発生する可能性がある(2008 Garcia Godoy、2004 Kidd、2000 Lendennman、2007 Islam)。
【0005】
脱灰および再石灰化(Demin/Remin)は、歯の鉱化組織、特に、これらの組織での豊富な鉱化した炭酸化ヒドロキシアパタイト(HAP)のためにそれらの構造的完全性を維持するエナメル質および象牙質で規則的に起こる動的事象である[これらの組織でのヒドロキシアパタイトは「次式:Ca10−x(Na)(PO)6−y(CO(OH)2−u(F)で近似的に表すことができる」](2007 Islam)。通常の、生理的条件下で、唾液およびバイオフィルムは、鉱化歯と比較して過飽和のカルシウムイオンおよびリン酸塩(Pi)を含有し、この過飽和の結果として、これらの口腔流体は、カルシウムおよびPiで歯を鉱化することができる。酸性pHが歯バイオフィルム中のう蝕原生細菌の代謝活動によって生じるとき、バイオフィルム流体は、歯と比較して、カルシウムおよびPiで不飽和になり、それは、歯から歯バイオフィルムへのカルシウムおよびPiの放出につながり−この事象が脱灰である。エナメル質からの、失なわれたカルシウムおよびPiは、ヒドロキシアパタイトの溶解によって生じる。pHが生理的(より少ない酸性の)pHに戻るにつれて、口腔流体の過飽和状態が戻り、バイオフィルムおよび唾液は再び歯をカルシウムおよびPiで鉱化することができ、それは、脱灰中に歯によって失われた無機質を幾らか復元するのに役立つ−この事象が再石灰化である(2008 Garcia-Godoy、2008 Islam、2009 Cury、2008 Cury、2007 Braly、2004 Kidd)。
【0006】
虫歯:進行の要因
健康な歯エナメル質の劣化および虫歯形成に寄与する因子には、「う蝕原生および非う蝕原生細菌、唾液成分(タンパク質、酵素、カルシウム、ホスフェート、フッ化物)、ならびに発酵性炭水化物(サッカロース、グルコース)の食事源」が含まれるが、それらに限定されない。グラム陽性の、嫌気性細菌ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)が、その耐酸性特質、歯バイオフィルムでの存在、および(サッカロースのような)糖類を、脱灰のために必要な酸性環境をつくり出すのに役立つ酸へ容易に発酵させる能力のために主要なう蝕原生細菌であることは当該技術分野でよく知られている。他の公知のう蝕原生細菌には、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)種(spp)、およびアクチノマイセス(Actinomyces)sppが含まれる(2008 Garcia Godoy、2007 Islam)。
【0007】
標準的なヒト唾液は、(カルシウム、Pi、フッ化物、ラクトフェリン、リゾチーム、プロテアーゼ、および糖タンパク質を含む)様々な生物学的および化学的成分を含有する可能性がある。唾液因子および虫歯リスクを評価する虫歯研究の2001 文献レビューは、「慢性的に低い唾液流量(例えば0.8未満、1.0ml/分の刺激全体唾液)」が「虫歯罹患率または発生率の増加リスクの最強の指標」であると述べている(2001 Leone)。この表明は、唾液腺の通常の機能に影響を及ぼす増加した虫歯リスクおよび(Sjoegrenシンドロームのような)病状のある個人における特異な関連性を観察した21の研究に基づいている。虫歯は多くの異なる因子によって引き起こされ、そして唾液の組成は人により変わる可能性があるので、特異な唾液成分の濃度と虫歯リスクとの重要な関係を確立することは困難である(1995 Edgar、2001 Leone、2008 Garcia Godoy)。
【0008】
「虫歯バランス」と題する概念は、虫歯のリスクを評価するための2つのカテゴリーの因子を述べている。1つのカテゴリーは、虫歯の進行に寄与する因子である、病理学的因子として知られている。病理学的因子には、酸発性のう蝕原生細菌の存在、発酵性糖類の規則正しい消費、および唾液流れの減少が含まれる。第2カテゴリーの因子は、役立つ虫歯予防効果を歯に提供する因子である、保護的因子として知られている。保護的因子には、通常の唾液流れの存在および唾液成分、フッ化物および歯の再石灰化を増進する他の無機物、ならびに虫歯の高いリスクで特に対象のう蝕原生細菌を攻撃することができる抗菌剤が含まれる(2006 Featherstone、2008 Garcia Godoy)。
【0009】
虫歯:虫歯予防口腔ケア予防手段および治療剤としてのフッ化物
フッ化物は、広く使用されている非常に有効な試剤である。フッ化物の使用は、(歯バイオフィルムまたはう蝕原生細菌などの)虫歯の病理学的因子を排除しない。むしろ、フッ化物は、「歯表面と口腔流体との界面で起こる脱灰および再石灰化プロセス」の全体にわたってそれが歯に与える保護的な生理学的効果によって発生の部位で虫歯プロセスを妨害する(2008 Cury、2002 Aoba)。ヒドロキシアパタイトが溶解してカルシウムおよびPiを放出する脱灰中に(ここで、pHは4.5超である)、フッ化物は、ヒドロキシアパタイトほど酸に溶けないフルオルアパタイトを形成することによってこのカルシウムおよびPiの幾らかを回収することができる。このようにして、フッ化物は、酸誘発脱灰に抗してエナメル質の鉱化状態を維持するのに役立つことによって脱灰を低減する(2009 Cury、2008 Cury、2008 Islam、2000 Robinson)。局部的な口腔環境でのpHが5.5超に復元されるときに、「エナメル質によって失われたカルシウムおよびPiは、フッ化物がバイオフィルム流体中に依然として存在する場合により効率的に回収することができる」ので、フッ化物はまた再石灰化を増進する(2009 Cury)。こうして、虫歯予防剤としてのフッ化物は、歯の脱灰を低減するおよび再石灰化を増進する、の両方を行うと考えられる。
【0010】
フッ化物は、フッ化ナトリウム、アミンフッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)、およびフッ化第一スズなどの、様々なフッ化物イオン源の使用によって口腔ケア組成物中へ組み入れられてもよい。フッ化物の虫歯予防有効性に影響を及ぼすことができる因子には、フッ化物イオン源、フッ化物イオン源の濃度、「使用の頻度、暴露の継続時間、およびデリバリーの方法」が含まれる(2006 Zero)。フッ化物を含有する口腔ケア組成物が有効であるためには、フッ化物のデリバリーは、1)最初の適用時に歯および歯垢と接触するために有効なまたは高いフッ化物濃度、および2)使用後にフッ化物を保持するために口腔流体を提供することが必要である(2006 Zero)。
【0011】
Edgarは、「約1μモル/Lのベースライン値から多分2〜5μモル/Lへの唾液フッ化物の持続上昇が虫歯予防における真の治療的要因である」と述べている(1995 Edgar)。Edgarによれば、百万当たり1500部(ppm)のフッ化物を含有するMFP歯磨き剤は、前述のレベルの唾液フッ化物を提供することができる。前述の通り、「市販のヒト使用のための虫歯予防薬物製品(Anticaries Drug Products for Over the Counter Human Use)」という表題の最終モノグラムは、フッ化物口腔ケア組成物が安全で有効な虫歯予防製品と考えられるために合格しなければならない生物学的および分析試験を指定している。実験的虫歯予防フッ化物調合物は、これらの生物学的および分析試験で性能および含有率について関連米国薬局方(United States Pharmacopeia)(USP)標準的フッ化物基準を満たすかまたはそれを超えなければならない。フッ化ナトリウムをゲルまたはペースト形態で含有する歯磨き剤については、歯磨き剤は、650ppm超の利用可能なフッ化物イオン濃度で850〜1150ppmの理論的全フッ素および0.188%〜0.254%重量/容積(w/v)のフッ化ナトリウムを含有しなければならない。実験のフッ化物歯磨き剤はまた、動物虫歯低減試験(Animal Caries Reduction Test)および次の試験:エナメル質溶解性低減試験(Enamel Solubility Reduction Test)またはフッ化物エナメル質取込み試験(Fluoride Enamel Uptake Test)のどちらか1つでUSP標準的基準フッ化物歯磨き剤(Standard Reference Fluoride Dentifrice)の性能を満たすかまたはそれを超えなければならない。水溶液中のフッ化ナトリウムを含有するトリートメントリンスについては、リンスは、1)おおよそpH7で0.02%(w/v)のフッ化ナトリウムまたは2)おおよそpH7で0.05%(w/v)のフッ化ナトリウムを含有してもよい。
【0012】
安定化二酸化塩素
用語二酸化塩素(ClO)は業界で広く用いられている。当業者は、ある種の意図される機能および目的を果たすために利用可能である様々な形態またはそれの変形を十分理解するだろし、十分理解している。米国特許第3,271,242号は、本発明を実施する上で特に有用である、安定化二酸化塩素の形態および製品の製造方法を記載している。1979テキスト二酸化塩素、オキシ塩素化合物の化学および環境影響(Chlorine Dioxide、Chemistry and Environmental Impact of Oxychlorine Compounds)は、(水性)安定化二酸化塩素を次の通り記載している:
「水溶液中の二酸化塩素の安定化は、パーボレートおよびパーカーボネートを使用することで提案された。このように、ClOの安定化溶液は、12%NaCO・3Hを含有する水溶液へガス状ClOを通すことによってpH6〜8で得られるだろう。他の変形が可能である。実際に、これらの方法では、二酸化塩素は実質的に完全に亜塩素酸塩に変換されるようだ。二酸化物は、酸性化すると放出される…」[Masschelein、1979]。
【0013】
用語「ペルオキシ化合物」が「パーカーボネートおよびパーボレート」と置き換わってもよく、pHおよびそれ故に、溶液中のClOの安定性を維持するために好適な任意の緩衝剤を意味する。緩衝剤は、ClOが低いpHで不安定であるので、必要な成分である。溶液が低いpHに達するかまたは低いpHの領域に遭遇するとすぐに、安定化ClOは溶液から放出され、下水処理および酸化のために利用可能である。本発明の組成物は、…などの、しかしMFPを除いた、リン酸塩緩衝手法を用いて安定化された二酸化塩素を必要とする。緩衝化合物のタイプおよび濃度は、組成物のpHの安定性だけでなく全体製品安定性に影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
1950年代におけるその使用の前に、二酸化塩素は殺菌特性を有することが知られていた(Masschelein、1979)。米国特許第2,451,897号でWoodwardは、エビでの不快な味覚を排除するために二酸化塩素の使用を最初に確立した;その後、二酸化塩素は、異なる用途向けに様々な業界でその酸化特性のために使用され始めた。二酸化塩素は、セルロース繊維を漂白して木材パルプの製造を容易にするために適用されてきた。さらに、二酸化塩素は、味覚への最小限の影響で公共消費用の水を消毒するために使用されてきた。二酸化塩素は使用コストがより少なく、生成する毒性がより少なく、かつ、生成する塩素化副生物がより少ないという事実のために、二酸化塩素は、オゾンおよび漂白剤の使用を含む他のプロセスの至る所で有益な代替手段を提供する(Masschelein、1979)。
【0015】
口腔ケア製品において、安定化二酸化塩素の使用が多数の特許:米国特許第4,689,215号;同第4,696,811号;同第4,786,492号;同第4,788,053号;同第4,792,442号;同第4,793,989号;同第4,808,389号;同第4,818,519号;同第4,837,009号;同第4,851,213号;同第4,855,135号;同第4,886,657号;同第4,889,714号;同第4,925,656号;同第4,975,285号;同第5,200,171号;同第5,348,734号;同第5,489,435号;同第5,618,550号によって活性成分として提案されてきた。米国特許第4,689,215号は、揮発性硫黄化合物の酸化によって口臭を低減するための0.005%〜0.2%安定化二酸化塩素溶液の使用を特許請求しており;それはまた、う蝕原生細菌ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)を殺菌することによって作用する抗う蝕原生剤として安定化二酸化塩素を提案する最初のものである。米国特許第4,696,811号は、う蝕原生S.ミュータンス(S.mutans)の99%殺菌および低減をもたらす0.005%〜0.2%の安定化二酸化塩素溶液の口腔への局所適用による歯垢の低減方法を特許請求している。米国特許第4,786,492号は、安定化二酸化塩素がS.ミュータンス(S.mutans)の90%殺菌によって歯垢を低減し、かつ、口腔細菌の生態学的環境を変えるためのさらなる方法を提供することによって米国特許第4,689,215号および米国特許第4,696,811号を補足している。特に米国特許第4,786,492号は、口腔細菌から栄養分を奪う、安定化二酸化塩素が、サッカロース分解を休止し、そしてデキストランおよびレバン形成を防ぐ抗菌特性によって歯垢を低減することを教示している。さらに、米国特許第4,786,492号はまた、口腔で使用されるときに、安定化二酸化塩素溶液が口腔中に見いだされるグルコシルトランスフェラーゼの二重結合を破壊することを特許請求している。総合すれば、米国特許第4,786,492号にリストされる安定化二酸化塩素溶液の特性は歯垢低減をもたらすと列挙されている。米国特許第4,788,053号は、歯垢を低減するためにペーストでの0.005%〜0.2%安定化二酸化塩素の組み入れおよび使用を教示している。米国特許第4,792,442号は、歯肉溝の口腔洗浄によって歯垢を低減するための0.005%〜0.2%安定化二酸化塩素溶液の使用を列挙している。
【0016】
米国特許第4,793,989号は、義歯デバイスを洗浄するおよび浸漬するための安定化二酸化塩素(SCD)の使用を教示している。それは、SCDが(バクテリオイデス・メラニノゲニカス(Bacterioides melaninogenicus)を含む)全口腔細菌の運動性および有糸分裂を低減することによって一つには義歯と関連するタンパク質の分解を低減することを示唆している。
【0017】
米国特許第4,808,389号は、口腔での0.005%〜0.2%SCD溶液の適用による歯肉炎、歯周炎および細菌侵入に対する粘膜下組織の浸透性を低減するための方法に関する。それは、SCDがS.ミュータンス(S.mutans)、バクテロイデス・ジンジバリス(Bacteroides gingivalis)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetumcomitans)、およびグラム陽性菌の90%殺菌および低減によってこれらの疾患を減らすことができると具体的に述べている。
【0018】
米国特許第5,348,734号は、歯磨き剤での安定化二酸化塩素の貯蔵寿命および有効性を増加させるための、0.02%〜3.0%リン酸塩緩衝剤、具体的にはリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびリン酸三ナトリウムの使用をさらに教示している。安定化二酸化塩素は、S.ミュータンス(S.mutans)、S.サングイス(S.sanguis)、カンジダ(Candida)、および口腔病原菌などの、口の中の微生物種の数を減らすことによって、歯肉炎、歯周炎、および虫歯のような、歯の疾病を予防するおよび治療するであろう。S.ミュータンス(S.mutans)およびS.サングイス(S.sanguis)などの、ストレプトコッカス類(Streptococci)は、歯垢への歯膜の転化およびバイオフィルムの形成を促進する
【0019】
上記の先行技術は、象牙質もしくは歯エナメル質へのまたは脱灰もしくは再石灰化のプロセスへのいかなる影響も教示していないし、言及していない。
【0020】
安定化二酸化塩素/亜塩素酸ナトリウム・プラスフッ化物口腔ケア製品
先行技術では、フッ化物イオン源および二酸化塩素源を含有する口腔ケア製品についての多くの記載がある。米国特許第6,375,933号は、二重相歯磨き剤を含む口臭のための組成物および方法を教示している。一相は、フッ化物イオン源が任意選択的にこの第1相に添加される状態で、中性pHで亜鉛を放出する化合物および亜塩素酸塩を放出する化合物の必須成分を含有する。第2相は、リン酸などの酸性物質を含有する、酸性成分である。これらの2つの相は、組成物が分注され、そして歯に適用されるときまで別々に保たれなければならない。
【0021】
米国特許第5,200,171号は、pH6.0〜7.4での0.02〜3.0%安定化二酸化塩素口内洗浄液および歯磨き剤での二酸化塩素の逸出を抑制するためのリン酸塩緩衝剤としての0.005〜0.5%モノフルオロリン酸塩の使用を教示している。安定化二酸化塩素は、S.ミュータンス(S.mutans)を低減する試剤として含められており、モノフルオロリン酸ナトリウムが脱灰もしくは虫歯予防効果を調合物に与えること、またはモノフルオロリン酸ナトリウムが低下した脱灰もしくは虫歯予防効果を安定化二酸化塩素口内洗浄液もしくは歯磨き剤に与えるために安定した濃度にあることは述べられていない。この発明におけるリン酸塩の目的は、細菌の運動性を低減しそして殺菌して歯肉炎、歯周炎および虫歯を予防するおよび治療するための安定化二酸化塩素組成物の増加した安定性および貯蔵寿命をもたらすことである。この発明は特に、pHを安定化させるための緩衝剤としてのモノフルオロリン酸塩の使用を、組成物の全体的安定性へのそれらの厄介な影響のために除外している。
【0022】
米国特許第6,077,502号(Witt、口腔ドロップ)、米国特許第6,132,702号(Witt、練り歯磨き)、米国特許第6,235,269号(Witt、二重相練り歯磨きおよび非研磨ゲル)、米国特許第6,251,372号(Witt、単相オーラルリンス)、米国特許第6,264,924号(Witt、チューインガム)は、50ppm未満の二酸化塩素のレベルで塩基性pH(7超のpH)で亜塩素酸イオンを含有する口腔ケア組成物の使用を教示している。これらのWitt特許では、二酸化塩素ではなく、亜塩素酸イオンが、虫歯を含む、口腔の疾患を予防するおよび治療するための必須の成分である。事実、これらの特許は、これらの組成物の理想的な条件が最小量の二酸化塩素を含有することであると教示している。これらの特許の全てが、(虫歯を含む)口腔疾病を治療するおよび予防するための組成物および方法の使用について述べているが、これらの特許のそれぞれの具体的な範囲は、歯周病、歯垢、歯肉炎、口臭、または歯のホワイトニングに限定されている。これらの組成物または方法が虫歯を治療するおよび予防するための歯の再石灰化の有効性を高めるという言及は、これらの特許のいずれにも全くない。これらの特許のどれも、提案される実施形態および調合物が有効量の二酸化塩素、亜塩素酸イオンおよびフッ化物イオンを、これらの2つの活性成分が組み合わせられるときにデリバーすることを示すデータを提示していない。全てのこれらの組成物は50ppm未満の二酸化塩素のレベルを要求するが、これらの調合物が、フッ化物についての工業基準組成物より有意に大きい抗菌効果だけでなく工業基準に等しいかもしくはそれより有意に大きい積極的な虫歯予防効果をもたらすか、またはフッ化物の虫歯予防効果を高めることを示す公知の研究は全くない。
【0023】
米国特許第6,132,702号は、口臭、歯肉炎および(虫歯を含む)口腔の疾患の治療および予防のための練り歯磨きを教示しており−この練り歯磨きは、50ppm未満の二酸化塩素と共に7超のpHで少なくとも0.2%の亜塩素酸イオンを含有すると列挙されている。米国特許第6,132,702号は、特許請求される練り歯磨きへの0.05%〜約0.3%のフッ化物イオンの添加をさらに教示している。
【0024】
米国特許第6,235,269号は、本発明が使える状態になるまで、活性な亜塩素酸イオンが第2の口腔キャリヤから切り離して保たれ、その後この2相が50ppm未満の二酸化塩素と7.5超の最終pHへ混ぜ合わせられる二重相練り歯磨き組成物を詳述している。0.05%〜0.3%フッ化物イオン入りの米国特許第6,235,269号での二重相組成物への機能は、呼気悪臭を治療するおよび予防することである。米国特許第6,251,372号は、7.5超のpHおよび50ppm未満の二酸化塩素または二酸化塩素を含まないで少なくとも0.04%の亜塩素酸イオンを含有する単相オーラルリンスに関する。このオーラルリンス組成物の目的は、呼気悪臭を治療するおよび予防することである。米国特許第6,251,372号は、7.5超のpHで二酸化塩素を含まないかまたは5ppm未満の二酸化塩素を含有するオーラルリンス組成物への0.05%〜0.3%フッ化物イオンの添加をさらに教示している。この特許は、その発明が虫歯を含む口腔の疾患を予防するおよび治療するために使用されてもよいと述べている。米国特許第6,264,924号は、50ppm未満の二酸化塩素が存在して7超のpHで亜塩素酸イオン(1mg〜6mg)を有するチューインガム用の組成物を記載している。この組成物の目的は、歯周病、歯垢、歯肉炎、および呼気悪臭を治療するおよび予防することである。米国特許第6,264,924号はまた、7超のpHおよび50ppm未満の二酸化塩素で、チューインガム組成物への0.05%〜0.3%のフッ化物イオンの包含を列挙しているが、適応症はこの組成物について全く示されていない。この特許は、その発明が虫歯を含む口腔の疾患を予防するおよび治療するために使用されてもよいと述べている。
【0025】
米国特許第6,350,438号は、虫歯を含む、口腔疾病の治療および予防向けのヒトおよび動物対象による使用のための亜塩素酸イオンを含有する安定した口腔ケア組成物を含めるために前のWitt特許について拡大している。米国特許第6,350,438号は、これらの口腔ケア組成物が、組成物中に二酸化塩素を実質的に全く含まずに(2ppm未満)に、0.02%〜6.0%の亜塩素酸イオンを含有し、かつ、7超の最終pHを有するべきであることを明記している。この特許に従って、フッ化物イオンは、これらの組成物に0.05%〜0.3%添加されてもよい。米国特許第6,350,438号は、亜塩素酸イオンを含有する口腔ケア組成物への(H2拮抗薬、メタロポロテイナーゼ阻害剤、サイトカイン受容体拮抗薬などの)治療剤の添加をさらに教示している。米国特許第6,350,438号は特に、(抗菌効果および歯周組織の治癒および再生に役立つ効果を含む)様々な治療要素と組み合わせた亜塩素酸イオンにより付与される治療効果によって歯周病を治療するためのこれらの組成物の使用に言及している。米国特許第6,350,438号の本文は、亜塩素酸イオンが歯周病と関係があるグラム陰性の嫌気性生物に対して選択的で、これらの組成物が有効な殺菌剤および静菌性配合物であることを示している。(米国特許第6,350,438号−Witt、二酸化塩素を実質的に全く含まない亜塩素酸イオンを使用する口腔疾病の治療に関する一般特許−オーラルリンスおよび練り歯磨きが述べられている)。この特許は、虫歯予防薬としてのフッ化物イオンの添加を明記しているが、歯肉炎、悪臭、および虫歯を含む、口腔の広範囲の疾患を予防するおよび治療するためのこの発明の使用を教示している。それは、フッ化物の虫歯予防を高めるための二酸化塩素源の使用を教示していない。
【0026】
米国特許第6,696,047号は、本質的に二酸化塩素を含まない(2ppm未満の二酸化塩素)、アルカリ性pHで0.02%〜6.0%の亜塩素酸イオンを含有する口腔ケア組成物を列挙しており、−これらの組成物の新規性は、規定の調合物が25℃で1年間または40℃で3ヶ月間亜塩素酸イオンの安定した量を維持すると述べられていることである。この特許によれば、下記が25℃で1年間および/または40℃で3ヶ月間観察される場合に安定性が組成物で示される:亜塩素酸イオンが効果のある量で口腔にデリバーされ、組成物が二酸化塩素を形成するために分解せず、(香味剤の変化が分解の主な指標である状態で)組成物が賦形剤を分解させない。時間ゼロからの許容される亜塩素酸イオン分解の定量可能な百分率は、任意の実施形態についてこの特許に明確に定義されていない。(「安定性試験の結果(Results of Stability Testing)」と名付けられた表に提示される)様々な実施形態の安定性を示すために提示されるサンプル調合物は全て、アルカリ性pH10で調製される。亜塩素酸イオン濃度、pHおよびフレーバー濃度が、調合物の安定性を明らかにするために測定される。しかしながら、この特許は、フッ化物イオンが、言及される歯磨き剤調合物(実施例3A〜3G歯磨き剤)中にまたは他の実施形態で亜塩素酸イオンと組み合わせて含められるとき、フッ化物イオンの安定性を示す安定性データを提示していない。米国特許第6,696,047号での組成物は、ヒトおよび動物対象のために設計されており、本文は、これらの組成物が、虫歯を含む、口腔の疾病を治療するおよび予防するために使用されてもよいことを示している。しかしながら、この組成物の虫歯予防効果が業界基準を超えるという、またはこの組成物がフッ化物の虫歯予防効果を高めることができるという主張は全く行われていない。
【0027】
米国特許第7,387,774号は、虫歯予防保護を高め、かつ、歯の脱灰への耐性を増加させるための、2つの必須成分、1)遊離のフッ化物イオンを提供するための可溶性フッ化物源および2)ホスホネート高分子無機物界面活性剤の使用を教示している。この特許によれば、組み合わせて、これらの2つの必須成分は、「歯石防止の恩恵を同時に提供しながら歯の増加した再石灰化、歯での増加したフッ化物沈着および酸脱灰への歯の増加した抵抗性によって特徴づけられる、虫歯に抗する歯の向上した保護」を与える。向上したフッ化物取込みは、この組成物の使用によって生じるように思われる作用の重要なモードである。他の成分は、ある種の利益を追加するために組成物に添加されてもよい追加の試剤としてリストされており、亜塩素酸ナトリウムは、ホワイトニングを高めるための増白剤として特に挙げられている。これらの追加の試剤は、必須の成分によってもたらされる主張される虫歯予防利益を与えることを必要とされない。商標Oxyfreshで販売されるフッ化物練り歯磨きは、酢酸亜鉛を含有する安定化二酸化塩素およびフッ化ナトリウム(0.235%)を含有する。調合物への亜鉛の包含は、揮発性の硫黄化合物を排除し、そして口臭を低減するために安定化二酸化塩素と組み合わせて重要な成分と言及されている。この調合物は、二酸化塩素の逸出を抑制するのに役立つためのリン酸塩緩衝剤の使用を含まない。Oxyfresh調合物が虫歯予防有効性を確実にするための安定で有効な量のフッ化物イオンをデリバーするという公表された科学的証拠は全くない。
【0028】
(フッ化物への言及があるまたはない)亜塩素酸ナトリウム口腔ケア組成物に関する先行技術特許の要約:
米国特許第6,077,502号「Oral Care Compositions Comprising Chlorite and Methods」
米国特許第6,132,702号「Oral Care Compositions Comprising Chlorite and Methods」
米国特許第6,235,269号「Oral Care Compositions Comprising Chlorite and Methods」
米国特許第6,251,372号「Oral Care Compositions Comprising Chlorite and Methods」
米国特許第6,264,924号「Oral Care Compositions Comprising Chlorite and Methods」
米国特許第6,350,438号「Oral Care Compositions Comprising Chlorite and Methods」
米国特許第6,696,047号「Stable Oral Care Compositions Comprising Chlorite」;
国際出願PCT/US2002/028324号「Stable Oral Care Compositions Comprising Chlorite」
米国特許第7,387,774号「Method of Enhancing Fluoridation and Mineralization of Teeth」
米国特許第4,689,215号「Method and Composition for Prevention and Treatment of Oral Disease」
米国特許第4,696,811号「Method and Composition for Prevention and Treatment of Oral Disease」
米国特許第4,786,492号「Method and Composition for Prevention and Treatment of Oral Disease」
米国特許第4,788,053号「Method and Composition for Prevention and Treatment of Oral Disease」
米国特許第4,792,442号「Method and Composition for Prevention and Treatment of Oral Disease」
米国特許第4,793,989号「Method and Composition for Prevention and Treatment of Oral Disease」
米国特許第4,808,389号「Method and Composition for Prevention and Treatment of Oral Disease」
米国特許第4,818,519号「Method and Composition for Prevention of Plaque Formation and Plaque Dependent Diseases」
米国特許第4,837,009号「Method and Composition for Prevention of Plaque Formation and Plaque Dependent Diseases」
米国特許第5,200,171号「Oral Health Preparation and Method」
米国特許第5,348,734号「Oral Health Preparation and Method」
米国特許第6,375,933号「Dual Component Dentifrice for Reducing Mouth Odors」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0029】
歯に付着したバイオフィルムを減らすためのペースト、ゲル、リンス、スプレー、粉末、ワニスまたは類似物の形態での口腔ケア組成物は、歯の脱灰を低減し、かつ、再石灰化を促進するフッ化物イオンのプロセスを増進する。本組成物は、バイオフィルムに対する殺菌効果を生じさせるために二酸化塩素を放出するための二酸化塩素源と、歯の脱灰を低減し、かつ、再石灰化を促進するために二酸化塩素によって強化されるフッ化物イオン源と、組成物をその最も有効なpH範囲に維持するための緩衝剤源とを含む。
【0030】
それ故、虫歯予防特性を有する組成物を提供することが本発明の第一の目的である。
【0031】
本発明の別の目的は、歯の脱灰を低減し、かつ、再石灰化を促進するための組成物を提供することである。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、歯の脱灰を低減し、かつ、再石灰化を促進するためのフッ化物イオンの効果を高めるための組成物を提供することである。
【0033】
本発明のなおも別の目的は、歯の脱灰を低減し、かつ、再石灰化を促進するための単相組成物を提供することである。
【0034】
本発明のさらなる目的は、歯の脱灰を低減し、かつ、再石灰化を促進するための規定の基準を超える組成物を提供することである。
【0035】
本発明のよりさらなる目的は、歯の脱灰を低減し、かつ、再石灰化を促進するための顕著な貯蔵寿命を有する組成物を提供することである。
【0036】
本発明のなおさらなる目的は、歯の脱灰の低減および再石灰化の促進の増強方法を提供することである。
【0037】
本発明のこれらのおよび他の目的は、それについての説明が進むにつれて当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、1)安定化二酸化塩素からなる群から選択される二酸化塩素源、2)フッ化ナトリウムおよびモノフルオロリン酸ナトリウムからなる群から選択されるフッ化物イオン源、ならびに3)最終組成物の特有のpHを達成するための緩衝系、の形態で、ペースト、ゲル、リンス、スプレー、粉末、ワニスまたは類似物を含む、口腔ケア組成物を教示し、緩衝剤が、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩緩衝剤、および当業者に公知の他の緩衝剤を含んでもよい。本発明の口腔ケア組成物は、次の基本的な成分:
a)最終組成物の0.005重量%〜0.800重量%の濃度の安定化二酸化塩素;
b)最終組成物の45重量ppm〜5000重量ppmのフッ化物イオン濃度を提供する濃度のフッ化物イオン源、フッ化ナトリウムまたはモノフルオロリン酸ナトリウム;
c)6.0〜7.4の濃度の範囲で最終組成物のpHを達成する(下記の明細書で記載される)緩衝系
を含む。
【0039】
本発明は、1日に少なくとも1回、ヒト口腔への本組成物の局所適用によって本組成物を(歯、舌、歯肉、および唾液を含むがそれらに限定されない)ヒト口腔にデリバーするための方法を教示する。
【0040】
本発明の組成物および方法は、安定化二酸化塩素がエナメル質によるフッ化物の通常の取込みを妨げないと考えられ、そしてまた、安定化二酸化塩素が歯の歯バイオフィルムを破壊して虫歯進行および虫歯発生のために必要な酸性環境をう蝕原生細菌がつくり出すことを排除することができると考えられるので、フッ化物の虫歯予防効果を高めると考えられる。
【0041】
本組成物は、二重相組成物であることを意図されず、また米国特許第4,084,747号、同第4,330,531号、および同第5,738,840号に記載されているように、最終使用者が二酸化塩素を生成するために使用の直前に原料を混合することに頼らない。
【0042】
本発明の組成物および方法には、基本的な成分、随意の成分、デリバリーおよび治療レジメンの様々な方法、ならびに以下により詳細に記載される作用の特異なメカニズムが含まれる。
【0043】
本発明の口腔ケア組成物の基本的な一成分は二酸化塩素源である。用語二酸化塩素源は、1)二酸化塩素を含有する水溶性の二酸化塩素源および/または2)水溶液中の安定化二酸化塩素源、を記載するために用いられ、二酸化塩素源が(歯、歯肉、舌および唾液を含むが、それらに限定されない)ヒト口腔にデリバーされるときに二酸化塩素を形成することができる。二酸化塩素源は、安定化二酸化塩素からなる群から選択される。本発明のために、口腔ケア組成物中の二酸化塩素源の教示されるレベルは、0.005%〜0.800%重量/重量(w/w)または重量/容積(w/v)の安定化二酸化塩素である。
【0044】
二酸化塩素源の目的は、虫歯発生および進行に寄与する歯バイオフィルムを破壊し、それによってう蝕原生細菌が虫歯発生および進行のために必要な酸性環境をつくり出すことを排除するためにヒト口腔に二酸化塩素をデリバーすることである。それ故、二酸化塩素源はフッ化物の虫歯予防効果を高める。本発明での安定化二酸化塩素の濃度についてのこの範囲の選択は、(ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、およびストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)などの)公知のう蝕原生細菌に対して、かつバイオフィルムに対して様々な濃度で安定化二酸化塩素の特性を研究した先行研究に基づく。米国特許第4,689,215号は、それぞれ、10および20秒間の処理後にう蝕原生細菌S.ミュータンス(S.mutans)の98.1〜99.5%インビトロ殺菌を達成する(pH6での)0.020%(w/v)または200ppmの安定化二酸化塩素オーラルリンス溶液の能力を記載している。2001年に、Grootveldらは、ヒト唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ラクトバチルス類(lactobacilli)、およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のレベルを下げるための0.100%(w/v)安定化二酸化塩素オーラルリンスの効果を報告する研究を公表した。33対象の実験群は、60秒間毎日3回20mlの0.100%(w/v)安定化二酸化塩素オーラルリンスでリンスし、このレジメンを14日間続けた。10対象の独立した陰性対照群は、60秒間20mlのミネラルウォーターでリンスし、このレジメンを14日間続けた。唾液がベースラインで両群から集められ、14日フォローアップした。安定化二酸化塩素オーラルリンスは、唾液中のS.ミュータンス(S.mutans)およびラクトバチルス類(lactobacilli)の細菌カウントをかなり低下させることが示されたが、C.アルビカンス(C.albicans)の低下が有意であることは見いだされなかった(Grootveldら、2001)。安定化二酸化塩素の濃度が低下するにつれて殺菌のレベルおよび速度が低下する状態で、類似の細菌効果が0.020%(w/v)安定化二酸化塩素を含有する本発明の組成物で観察されるであろうと予測される。
【0045】
PCT/US2008/055154号は、0.005%〜0.800%(w/v)の範囲で安定化二酸化塩素を含有する口腔ケア組成物の使用の静菌および殺菌特性を記載している。この公表文献は、混合微生物群中に存在する公知の嫌気性、好気性、通性グラム陰性およびグラム陽性口腔細菌のインビトロ殺菌で観察される殺菌特性を記載している。試験されたおよび提示された細菌には、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、アクチノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontolyticus)およびA.ビスコーズス(A.viscosus)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、フゾバクテリウム・ヌクレアーツム(Fusobacterium nucleatum)、ミクロモナス・ミクロス(Micromonas micros)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)およびS.オラリス(S.oralis)が含まれる。この研究での重要な観察は、二酸化塩素への細菌の感受性が0.1%SCD〜0.4%SCDの範囲の安定化二酸化塩素リンスで増加する二酸化塩素濃度に一次の抗菌効果を示さないことであった。0.4%SCD以上で、複数菌懸濁液での殺菌のかなりの増加が観察された。この観察に加えて、安定化二酸化塩素溶液が歯科装置水ライン(DUWL)で発生したバイオフィルムを除去できることを示す先行研究もまた存在した。Wirthlinは、非開示濃度の緩衝剤安定化二酸化塩素溶液が、新たに混合された二酸化塩素処理液と似ているおよび幾つかの場合にはそれより良好である結果でDUWLバイオフィルムを除去できることを示した(Wirthlin 2003)。この研究に加えて、バイオフィルム中に見いだされる公知の口腔細菌への安定化二酸化塩素の影響の観察がある。Villhauerら(2009)は、複数菌バイオフィルムに対する安定化二酸化塩素の殺菌活性の証拠を提示した。この実験に含められた細菌は、アクチノマイセス・ビスコーズス(Actinomyces viscosus)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)、フゾバクテリウム・ヌクレアーツム(Fusobacterium
nucleatum)、ペプトストレプトコッカス・ミクロス(Peptostreptococcus micros)、およびポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)などのう蝕原生であることが知られている幾つかの病原菌と共に歯周病原菌に特有なものであった。培養されたバイオフィルムが、0.500%(w/v)安定化二酸化塩素オーラルリンスの1分レジメンに曝された。この研究の結果は、オーラルリンスへの多数回暴露が、1)S.サングイス(S.sanguis)の細胞カウントを2〜3 logsだけ低下させる、2)P.ジンジバリス(P.gingivalis)、P.ミクロス(P.micros)、およびF.ヌクレアーツム(F.nucleatum)のほとんど全てのカウントを排除する、ならびに3)A.ビスコーズス(A.viscosus)のカウントにほとんどから全く影響しないことを示した。オーラルリンスへの単一暴露は、有意な細菌カウントを全くもたらさなかった。これらの先行観察に基づいて、安定化二酸化塩素の0.800%(w/wまたはw/v)の上限は、安定化二酸化塩素の殺菌および破壊バイオフィルム特性を達成するために理にかなっているように思われる。本発明によって指定される範囲外の、安定化二酸化塩素を含有する口腔ケア組成物がバイオフィルムの殺菌または破壊に対して大幅に改善された効果を有するかどうかは不明であり、それ故、安定化二酸化塩素のこれらの特性の現在の理解に基づいて、二酸化塩素源の濃度について特定の限界が本発明について教示される。
【0046】
安定化二酸化塩素(SCD)が本発明によって教示される濃度で最終組成物中に存在するときに安定化二酸化塩素源が二酸化塩素を発生させ得ることを明らかにする先行技術に基づいて安定化二酸化塩素(SCD)が本発明での二酸化塩素源として教示される。0.100%(w/v)の安定化二酸化塩素オーラルリンスは、6.5のpHで非常に低い濃度の二酸化塩素を含有することが示された(1997 Lynch)。安定化二酸化塩素からの二酸化塩素の発生についてのメカニズムは、二酸化塩素の発生をもたらす、安定化二酸化塩素による特有のアミノ酸の分解のためであると考えられる。それ故、二酸化塩素の類似の発生は、本発明によって教示される二酸化塩素源のレベルおよびpH範囲によって形成されるであろうと予期される。
【0047】
本発明の口腔ケア組成物の第2の基本的な成分はフッ化物イオン源である。用語フッ化物イオン源は、(歯、歯肉、舌、および唾液を含むが、それらに限定されない)ヒト口腔に利用可能な、遊離のフッ化物イオンを提供することができる水溶性のフッ化物イオン源を記載するために用いられる。当該技術分野で公知のフッ化物イオン源の例には、フッ化ナトリウム(NaF)、モノフルオロリン酸ナトリウム(SMFP)、およびフッ化第一スズ(SnF)が挙げられる。
【0048】
本発明におけるフッ化物イオン源の目的は、特に歯について脱灰を低減するための、かつ、歯の再石灰化を増進するための、フッ化物の公知の虫歯予防効果を与えるであろうフッ化物イオンをヒト口腔に利用可能にすることである(2008 Garcia-Godoy、2009 Cury)。本発明のフッ化物イオン源には、フッ化ナトリウム(NaF)およびモノフルオロリン酸ナトリウム(SMFP)が含まれる。フッ化第一スズ(SnF)は、本発明のフッ化物イオン源としては除外される。フッ化第一スズの除外は、二酸化塩素の公知の酸化特性および二酸化塩素の安定性を多分悪化させるフッ化第一スズのためである。二酸化塩素は強力な酸化剤であり、フッ化第一スズ(Sn2+)は、溶液のpHがより酸性であるにつれて酸化の速度が増加して、水溶液中で酸素によって第二スズ状態(Sn4+)へ酸化されることが知られている(1997 Lynch、1994 Denes)。二酸化塩素が、わずかに酸性である、本発明で安定化二酸化塩素から遊離した形態で存在するとき、二酸化塩素は第一スズ(Sn2+)を第二スズ酸化状態(Sn4+)へ酸化すると考えられる。この酸化反応は、本発明の基本的な成分、二酸化塩素を不安定なものにするとさらに考えられる。この考えは、フッ化第一スズを含む様々なフッ化物イオン源と組み合わせられたときの安定化二酸化塩素の安定性を例示する、下の表1に提示される安定性結果によって立証される。
【0049】
【表1】

【0050】
表1は、中間および促進貯蔵条件下に置かれた3種の歯磨き剤調合物の3ヶ月安定性試験からのデータを示す。安定性試験の目的は、異なる歯磨き剤調合物の安定性を評価し、異なるフッ化物イオン源が安定化二酸化塩素の安定性に及ぼす影響を測定することであった。時間ゼロで、調合物の全てが、0.12%(w/w)の初期安定化二酸化塩素濃度を有した。中間条件下で、フッ化第一スズを含有する調合物(サンプルC)は、安定化二酸化塩素の初期濃度の約16.7%を失ったにすぎないフッ化ナトリウムおよびモノフルオロリン酸ナトリウムを含有する調合物と比較して、安定化二酸化塩素の初期濃度の約75%を失った「月1」で最大の二酸化塩素分解を示した。本研究は、月1後にフッ化第一スズ調合物(サンプルC)については打ち切られたが、フッ化ナトリウムおよびモノフルオロリン酸ナトリウム調合物の両方(サンプルAおよびサンプルB)は、3ヶ月を通して安定性試験を継続され、中間および促進条件の両方の下で安定化二酸化塩素濃度についてほぼ同じ安定性結果を示した。表1での上記の結果を前提として、フッ化第一スズがフッ化ナトリウムまたはモノフルオロリン酸ナトリウムより速く安定化二酸化塩素を分解するように見えるので、それは、フッ化第一スズが本発明でのフッ化物イオン源として含められるべきではないとの考えを立証する。
【0051】
本発明によって教示されるフッ化物イオン源の濃度は、最終組成物中で45〜5000ppmのフッ化物イオンの利用可能なフッ化物イオン濃度を提供するはずである。本発明におけるフッ化物イオン源の教示される範囲の根拠は、最終組成物の異なる実施形態の安全性および虫歯予防有効性を提供することが当業者に知られるフッ化物イオンの許容レベルに主として基づいている。前述の通り、市販の薬物製品についての米国(US)FDA虫歯予防モノグラフ、USC Title 21 Parts 310、355、および369は、安全で、かつ、虫歯に対して有効であると考えられる口腔ケア組成物のフッ化物イオン含有率についての規格を述べている。このFDAモノグラフの規格に基づき、虫歯予防有効性のために必要なフッ化物イオンの量を提供するために本発明でフッ化物イオンの45ppmを下限とすることは理にかなっているように思われる。フッ化ナトリウムを含有するオーラルリンスが安全で有効な虫歯予防製品と認められるために、FDAモノグラフは、おおよそ90ppmのフッ化物イオンを提供するであろう(pH7で)0.02%のフッ化ナトリウムの最低濃度を指定している(1995 食品医薬品局(Food and Drug Administration)。同様に、フッ化ナトリウムを含有するオーラルリンスが安全で有効な虫歯予防製品と考えられるために、FDAモノグラフは、おおよそ226ppmのフッ化物イオンを提供するであろう(pH7で)0.05%のフッ化ナトリウムの最大値を指定している。フッ化物製品が化粧品として規制される、欧州では、オーラルリンスを含む、全タイプの口腔衛生製品において、おおよそ675ppmのフッ化物イオンを提供するであろう、1500ppmのフッ化ナトリウムの最大限度が存在する。それ故、本発明のオーラルリンス実施形態については、フッ化物イオンの好ましい濃度は45〜800ppmのフッ化物イオンであり、フッ化物イオンの最も好ましい濃度は90ppm〜675ppmである(1995 FDA、1999 欧州委員会)。
【0052】
本発明によって指定される、フッ化物イオンの1500ppm超および5000ppm以下の値は、専門歯科医による、そして市販薬として公衆によるのではない口腔組成物の使用に対して厳しく指導される。5000ppmより上のレベルでは、口腔ケア組成物は毒性に傾き、1500ppmより上のレベルのフッ化物イオンの口腔ケア組成物を受け取る個人は、歯医者また医療専門家によってこの組成物を投与され、監視されるべきである。このように、本発明によって指定されるフッ化物イオンのレベルは、フッ化物を含有する口腔ケア組成物に対する公知の基準に基づき、安全で有効な虫歯予防組成物を提供するために理にかなっているように思われる。
【0053】
本発明の口腔ケア組成物の第3の基本的な成分は緩衝系である。緩衝系は、酢酸塩、クエン酸塩、(リン酸三ナトリウム、リン酸ナトリウム一塩基性、およびリン酸ナトリウム二塩基性を含む)リン酸塩緩衝剤、ならびに当業者に公知の他の緩衝剤を含む群から選択される。乳酸、ピルビン酸、ならびに虫歯発生および進行で主要な酸性成分として当業者公知の、う蝕原生細菌によって形成される他の酸は、しかしながら、本発明での使用について除外される。本発明への緩衝系の包含は、約pH6.0〜7.4の最終組成物のpHを生成するためである。緩衝系の目的は、消費者による本発明の使用の前に、二酸化塩素の逸出、二酸化塩素ガスへの安定化二酸化塩素の転化を防ぐまたは抑制することである。緩衝系はまた、最終組成物について特定のpH範囲を達成するためにも存在する。本発明のpH範囲は、先行技術から行われた観察および安定化二酸化塩素の公知の特性のため、6.0〜7.4であると教示される。先行技術は、おおよそ7.5以上(そして幾つかの場合にはpH7以上)のpHが亜塩素酸イオン、安定化二酸化塩素の公知の成分のためのより安定な口腔ケア組成物を生成することを教示している(米国特許第6,077,502号、同第6,132,702号、同第6,235,269号、同第6,251,372号、同第6,350,438号、同第6,696,047号)。亜塩素酸イオンを含有する口腔ケア組成物は、pH7.5以上で、これらの組成物が二酸化塩素を本質的に含まない(50ppm未満である)と特許請求されるほど安定であると記載される。安定化二酸化塩素の殺菌特性を研究した先行研究は、pHがpH3.5から8.6に増加するにつれて安定化二酸化塩素の殺菌活性が低下することが示されたので、この仮定を裏付ける。pH8.6で、殺菌効果が低下したとき、支配的な化学種は二酸化塩素よりもむしろ亜塩素酸塩であったし、この観察から「遊離の二酸化塩素」が「活性な消毒化学種」であると仮定された(1988 Harakeh)。従って、pH7.4より上の、よりアルカリ性のpHでは、本組成物が亜塩素酸イオンにとってより安定であり、その後本組成物がより少ない二酸化塩素を放出し、それ故本発明によって教示される向上した虫歯予防効果を悪化させるであろうから、本組成物は二酸化塩素源ではないであろうと考えられる。
【0054】
逆に、安定化二酸化塩素組成物のpHが酸性になるとき、安定化二酸化塩素は不安定になり、(ガス形態での)二酸化塩素への安定化二酸化塩素の増加した転化をもたらすことは当業者に公知である。従って、より酸性のpHでは、安定化二酸化塩素を含有する口腔ケア組成物の有効性の持続期間は、本組成物の適用前に、二酸化塩素がガスとして失われるので減少すると考えられる。それ故、本発明のpHについての理にかなった下限は約pH6.0であると考えられ、先行技術は、安定化二酸化塩素を含有する組成物がpH6.0でその殺菌特性を保持することを米国特許第4,689,215号が教示しているので、この考えを立証する。安定化二酸化塩素を含有する口腔ケア組成物が6.0より下のpH値でその殺菌特性またはバイオフィルムを破壊する能力を維持することができるかどうかは不明である。
【0055】
緩衝系に関する議論に加えて、先行技術は、本発明のために指定されるpH6.0〜7.4のpH範囲に関する上述の論拠を立証する。米国特許第5,348,734号は、リン酸三ナトリウム、リン酸ナトリウム一塩基性、およびリン酸ナトリウム二塩基性を含む様々なリン酸塩緩衝剤溶液での安定化二酸化塩素についての安定性データを提供している。米国特許第5,348,734号は、pH6.8〜7.5で、安定化二酸化塩素が28日にわたってこれらの様々な緩衝液中で安定であることを示している。
【0056】
賦形剤
口腔キャリヤまたは口腔賦形剤(随意の成分)が本発明の基本的な成分に添加されてもよいと述べられてきた。これらの口腔キャリヤまたは口腔賦形剤の添加の意図は、(風味などの)化粧用特質を提供すること、(重厚な感触などの)物理的特質を付与すること、基本的な成分の安定した組み合わせもしくは結び付きを可能にすること、またはそれらの混合である。これらの口腔キャリヤまたは口腔賦形剤の添加は、基本的な成分のみでは可能でない化粧用または物理的特質を提供する。これらの口腔キャリヤには、次のクラスの材料:甘味剤(スクラロース、サッカリンナトリウム、もしくは類似物)、研磨剤(Sident 9、Sident 10、もしくは類似物)、増粘剤もしくはゲル化剤(カラギーナン(Carrageenan)ゲル、Carbomer 940、CMC 7H3SF、水和シリカ、もしくは類似物)、着色剤(二酸化チタンもしくは類似物)、香味剤(ペパーミント油、スペアミント油もしくは類似物)または保湿剤(グリセロール、マニトール、ソルビトール、もしくは類似物)が含まれてもよいが、それらに限定されない。
【0057】
作用のメカニズム
本発明は、それぞれの化学的および物理的特性が前に議論された、フッ化物イオン源および二酸化塩素源を含有する。本発明によって教示される安定化二酸化塩素のレベルは歯エナメル質によるフッ化物の取込みを妨げないと考えられる。この考えは、下の表2に示されるエナメル質フッ化物取込み試験の結果によって明らかにされる。
【0058】
【表2】

【0059】
エナメル質フッ化物取込み試験の目的は、歯磨き剤が初期エナメル質虫歯様病変へのフッ化物の取込みに及ぼす影響を評価することである。エナメル質フッ化物取込み試験の結果は、フッ化ナトリウム歯磨き剤USP標準的基準(サンプルL)について計算された「フッ化物取込み」と実験的フッ化ナトリウムおよび安定化二酸化塩素練り歯磨き(本発明の実施形態であるサンプルM)との間に有意な差(p>0.05%)が全くないことを示す。それ故、表2に提示される結果は、本発明で教示される安定化二酸化塩素のレベルが歯エナメル質によるフッ化物の通常の取込みを妨げないという考えを立証していると考えられ、本発明の異なる実施形態での安定化二酸化塩素の包含が歯エナメル質によるフッ化物の通常の取込みを妨げないであろうとさらに予期される。
【0060】
バイオフィルム中の公知のう蝕原生細菌の殺菌およびインビトロでの公知のう蝕原生細菌の殺菌への安定化二酸化塩素の影響を実証する、前に引用された研究に基づき、本発明での指示レベルの安定化二酸化塩素はヒト歯の歯バイオフィルムを破壊し、それは歯バイオフィルム中の(S.ミュータンス(S.mutans)、S.サングイス(S.sanguis)、およびアクチノマイセス・ビスコーズス(Actinomyces viscosus)などの)う蝕原生細菌の除外をもたらすと考えられる(米国特許第4,689,215号、2001 Grootveld、PCT/US2008/055154号、2001 Wirthlin、2009 Villhauer)。歯バイオフィルムのこの破壊はそれによって、これらのう蝕原生細菌に、虫歯発生および虫歯進行にとって必要な酸性環境をつくり出すことができにくいようにするとさらに考えられる。前述の通り、安定化二酸化塩素は歯のエナメル質によるフッ化物の通常の取込みを許容するとまた考えられる(表2に示されるデータによって明らかにされる)。本発明の口腔ケア組成物中の安定化二酸化塩素の存在のために生じると考えられるこれらの作用の結果として、本発明はフッ化物の虫歯予防効果を高めると考えられる。フッ化物の虫歯予防効果の増強におけるこの考えは、本発明の実施形態で行われるラット虫歯試験(Rat Caries Test)で観察される結果によって立証される。ラット虫歯試験の結果は、下(表3aおよび表3b)でより詳細に議論される。
【0061】
【表3】

【0062】
ラット虫歯試験の目的は、歯磨き剤がラットでの虫歯の形成に及ぼす影響を測定することであった。フッ化ナトリウムおよび安定化二酸化塩素(NaF/ClO)歯磨き剤(本発明の実施形態)が「総虫歯−エナメル質介入の%減少(Total Caries-% Reduction of Enamel Involvement)」においてNaF歯磨き剤USP標準的基準より性能が優れていたという観察である、表3aに示されるラット虫歯試験スコアでの予想外のおよび意外な結果があった。NaF/ClOは、USP標準的基準についての12.4%の%減少スコアと比較して35.9%の「総虫歯−エナメル質介入の%減少」スコアを有した。それは、NaF/ClO歯磨き剤によるほぼ3倍大きいエナメル質介入の%減少である。さらに、35.9%のNaF/ClO歯磨き剤についての「総虫歯−エナメル質介入の%減少」スコアは、Warrickらで試験された歯磨き剤によって観察された「総虫歯−エナメル質介入の%減少」(それぞれ、26.0%、35.5%、37.6%、42.5%、40.5%)に匹敵したし、Warrick研究で試験された歯磨き剤は全て、NaF/ClO歯磨き剤(1100ppm)より高いレベルのフッ化物(1400ppm)を有したことが指摘されるべきである。それ故、この証拠に基づき、本発明はフッ化物の虫歯予防効果を高めると考えられる。
【0063】
「エナメル質介入の%減少」についての表3aのデータは、「エナメル質」スコアを見ているにすぎず、「僅かな象牙質介入(Slight Dentinal Involvement)」および「中位の象牙質介入(Moderate Dential Involvement)」についての値を提示すること以外にエナメル質を越えての虫歯介入を評価していない(WarrickらおよびNaF/ClO試験について)。虫歯進行への(表3aからの)歯磨き剤の効果をさらに明らかにするために、下の表3bは、虫歯進行へのそれぞれの歯磨き剤の影響を評価するために、エナメル質介入と比べて象牙質介入の量を考慮に入れている。
【0064】
【表4】

【0065】
表3bに提示される予想外の一結果は、安定化二酸化塩素(ClO)入り歯磨き剤、すなわちPlacebo ClO歯磨き剤およびNaF/ClO歯磨き剤の両方が、歯の内部組織への虫歯進行をはるかにうまく防ぐ働きをするように思われることである。ClOペーストは、「僅かな象牙質介入」に分類される5.6および7.5%進行を有するが、ClOなしの歯磨き剤は、21.7、31.8、24.5、39.2、25.2、20.1および15.7%を有する。さらに、ClO歯磨き剤は、「中位の象牙質介入」に分類される0.5および0.6%進行を有するが、ClOなしの歯磨き剤は、1.5、1.6、1.7、1.1、1.5および3.7%を有する。
【0066】
様々な理由で、FDAは、ラット虫歯試験を、新しいフッ化物歯磨き剤がヒトで抗う蝕性であると規定するのに十分である標準的な生物学的試験の一つと定めた。性能基準は、公知のUSPフッ化物標準的基準歯磨き剤に対して測定される(USC Title 21 Parts 310、355、369)。Stookeyはまた、表3aおよび表3bで上に提示された当該Indianaラット虫歯データを含む、これらのプレ臨床の動物モデルがヒトでのフッ化物歯磨き剤の臨床虫歯予防有効性を予測できるかどうかを決定するために4つの冠状虫歯モデルを評価した。多数の観察がこのIndianaラット虫歯モデルについて行われた:1)ヒトに感染して虫歯を形成する公知のう蝕原生細菌によるラットの感染にそれが依存する、2)モデルに誘導される虫歯状態がフッ化物の添加に応答する、および3)典型的には「フッ化物用量反応」が「フッ化物歯磨き剤でのヒト臨床試験で観察された」ものに似ている(1995 Stookey)。総合すれば、これらのラット虫歯モデルは、フッ化物歯磨き剤がヒトで発揮する虫歯予防効果の良好な指標であると考えられる。
【0067】
上に提示される全ての支持証拠で、本発明はフッ化物の虫歯予防効果を高めると考えられる。
【0068】
作用のメカニズムの新規性
予防歯科は、フッ化物の使用、ならびに歯脱灰に抗する、および歯再石灰化を増進するその保護的特性が依然として最も広く勧められる虫歯予防作用因子であるので、虫歯に対処するためにう蝕原生細菌を減らすという虫歯予防効果を典型的には活用してこなかった。これの2つの理由には下記が含まれる:1)歯バイオフィルム中に存在するう蝕原生細菌に対して真に有効である抗菌剤が欠如している、および2)抗菌剤が歯バイオフィルム中に存在するう蝕原生細菌に対して有効であるために必要とされる治療量をデリバーすることができる薬物システムが欠如している。この議論に加えて、一つには、抗菌剤およびフッ化物イオン源の臨床関連濃度間で起こる可能性がある化学的不適合性、およびまた抗菌剤の臨床関連濃度がう蝕原生細菌の殺菌に完全に有効ではない可能性がある事実のために、フッ化物を含有する口腔ケア組成物への抗菌剤の添加がフッ化物の虫歯予防効果を高めることが付随するわけではない。Featherstoneによれば、「う蝕原生細菌課題の低減および新たな持続的デリバリーシステムの使用によるフッ化物の効果の増強は虫歯を疾病として取り扱うことに大きな影響を及ぼすであろう」(2006 Featherstone)。本発明は、かかる虫歯予防剤の欠如に基づき新規であり、かつまた、フッ化物の効果を高める虫歯予防剤のこの必要性を満たすと考えられる。新規性のこの考えは、本発明を、治療レベルの抗菌剤、クロルヘキシジンをフッ化物と組み合わせるという以前の努力と比較するときに立証される。
【0069】
クロルヘキシジン(CHX)は、強力な抗菌性を持った化合物であり、歯垢および歯肉炎に対して非常に有効であるとして当業者によく知られている。歯垢防止および抗歯肉炎剤の目的は、歯周病の発生を妨げるために歯肉組織の炎症を低減することである。0.12%(w/v)CHXマウスリンスは、臨床試験で歯垢および歯肉炎に対して統計的に有意な効果を有することが臨床的に示され、この濃度のCHXが本発明全体にわたって使用される(2006 Gunsolley、2006 Featherstone)。CHXは、歯垢および歯肉炎に対して使用されるかかる信頼性のある抗菌剤であるので、治療レベルのCHXおよびフッ化物イオン源を虫歯に抗する使用のための口腔ケア組成物中へ組み合わせる試みがまた行われてきた。かかる先行試みの一例は、臨床的に有効な濃度のクロルヘキサジンとモノフルオロリン酸ナトリウムとを組み合わせようとする努力であった。これらの試みによって、CHXおよびモノフルオロリン酸ナトリウムは「インビトロで臨床的に意義のある濃度」で互いに相性がよくないと断定された(2006 Kolahi)。CHXおよびモノフルオロリン酸ナトリウムは互いに相互作用して「水への溶解度が低いクロルヘキサジン−モノフルオロホスフェート塩」を形成すると考えられる(1988 Barkvoll)。
【0070】
1970年代以降、虫歯防止用途向けに臨床的に意義のある濃度のCHXとフッ化ナトリウムとを組み合わせることの実現可能性および有効性に関する研究がまた行われてきた。CHX−フッ化物口腔ケア組成物についての初期の研究は、虫歯および歯肉炎の両方に対する総合有効性を達成するために2つの化合物間の相乗効果を研究するものであった(1978 Luoma、1976 Emilson、2003 Freitas)。それ以来、CHXとフッ化物との組み合わせは「局所的フッ化物の抗う蝕性効果を増加させ」得ることが明らかにされた(1994 Ogaard)が、CHX−F組み合わせがCHXの濃度を下げると考えられるのでフッ化物−クロルヘキサジン対合が有益であるかどうかについては当該技術分野で依然として議論の余地がある(1994 Ogaard、2003 Freitas)。しかしながら、CHXの(0.12%などの)公知の治療レベルがこれらのフッ化ナトリウム/クロルヘキサジン口腔ケア組成物の使用で本当に下げられるかどうかのさらなる研究がある。2003年からの一研究は、0.12%(w/v)CHXおよび0.05%(w/v)フッ化ナトリウム(CHX−NaF)オーラルリンスのCHXのインビトロ持続性を測定した。CHXの持続性は、そのポジティブ特性の一つであり、「口腔表面によって保持され、そして数時間にわたって口腔流体中へ徐々に放出されるその固有の能力」と言われる(2003 Freitas)。この研究は、0.12%(w/v)クロルヘキサジングルコネートだけを含有する溶液と比較してCHX−NaF溶液中のCHXの持続性にかなりの低下があることを見いだした。この観察に加えて、クロルヘキサジングルコネート溶液と比較してCHX−NaF溶液が適用されたとき、エナメル質から初期に放出されるCHXは少なかった。これらの観察について2つの可能な説明があり、一つは、フッ化物およびクロルヘキサジンが競ってエナメル質表面に吸着することである。別の説明は、正に帯電したCHXがフッ化物と反応し、それがCHXの濃度を低下させ、その後CHX−NaFの抗細菌特性を阻害することである。この研究の最終観察は、インビトロで観察された「クロルヘキサジンの持続性のかなりの低下」が研究者らに、「フッ化ナトリウムとのその相互作用についての新たな懸念」および「これら2つの薬物の対合の利益」についての疑問を持たせたことであった(2003 Freitas)。向上されたおよび顕著な虫歯予防効果があるかどうかについての現在の相反する結果がフッ化物だけの製品を使用することよりも組み合わせ製品でクロルヘキサジン/フッ化物を使用することから得られることになる臨床研究がある。結果は、投与される組成物の具体的な実施形態(リンス、ワニス、ゲル)と一緒に適用されるCHXおよびフッ化物の濃度を含む多くの因子に基づいて変わる(2001 Whelton)。
【0071】
CHXをフッ化物イオン源と組み合わせる試みおよび結果に関する上記の例は、フッ化物の虫歯予防効果を高めるために抗菌剤を任意のフッ化物イオン源または全体組成物と組み合わせることが当然ではないことを明らかにするために示される。これらの抗菌剤がフッ化物と組み合わせられるときに虫歯予防有効性をもたらす可能性があるまたはもたらさない可能性がある作用の独特のメカニズムを与える、抗菌剤の間に存在する、異なる生理化学的特性がある。本発明のためには、安定化二酸化塩素は抗菌剤であり、CHXおよび安定化二酸化塩素の異なる特性が、フッ化物の虫歯予防効果を高める上で各試剤がどれほど有効であるかによって一つには決定されるかもしれないこともあり得る。例えば、CHXは、幾つかの正電荷を持ったカチオンであるが、安定化二酸化塩素はそもそもアニオン性である。これらの電気化学的差は、これらの試剤の抗菌活性作用の異なるメカニズムに寄与する。CHXは「負に帯電した細菌細胞壁に容易に結合し、それによって膜完全性を破壊することができる」(2003 Freitas)。さらに、CHXは、グラム陰性菌よりもグラム陽性菌に対してより大きい有効性を有することが示された(2003 Freitas)。安定化二酸化塩素は、一方で、バイオ分子および揮発性硫黄化合物を酸化し、「細菌タンパク質分解酵素を中和することができる」(1994 Chapek)。また、CHXとは違って、安定化二酸化塩素は、グラム陽性菌よりもグラム陰性菌に対してより有効であることが知られている。う蝕原生細菌の殺菌の観点から、CHXは、歯垢バイオフィルム中に存在するう蝕原生ミュータンス・ストレプトコッカス類(mutans streptococci)を効果的に殺菌することが分かったし、安定化二酸化塩素は、「う蝕原生細菌S.ミュータンス(S.mutans)の唾液レベルを抑える」ことが示された(2006 Featherstone、2001 Grootveld)。CHXはまた、「ヒト口中のラクトバチルス類(lactobacilli)を減らす上ではるかに効果が少ない」ことが示されたが、安定化二酸化塩素は、ヒト唾液中のかなりの量のラクトバチルス類(lactobacilli)を減らすことが示された(2006 Featherstone、2001 Grootveld)。安定化二酸化塩素はバイオフィルムを破壊し、これら2つのタイプのう蝕原生細菌を殺菌することができるので、多分それは、フッ化物と組み合わせられたCHXとは異なる方法で本発明の抗菌剤にフッ化物の虫歯予防効果を高めさせる安定化二酸化塩素によるラクトバチルス類(lactobacilli)殺菌のこの特徴である。これは、本発明がUSP標準的基準フッ化物歯磨き剤より性能が優れていたラット虫歯試験で見られる結果を説明するかもしれない(表3aおよび表3b)。Featherstoneは、「MS[ミュータンス・ストレプトコッカス類(mutans streptococci)]およびLB[ラクトバチルス類(lactobacilli)]の両方に対して有効であり、そして一日投与量メカニズムを有する、改善された抗菌剤が虫歯治療への抗菌性アプローチにとって最適であろう」と述べており、公知の抗菌剤(CHX)が増強しない方法でフッ化物を増強するためのかかる特性を本発明が具体化することは可能である(2006 Featherstone)。
【0072】
本発明の安定性
本発明の目的は、最終組成物が
1)1年、好ましくは2年、しかし最も好ましくは3年の貯蔵期間中おおよそ25度摂氏(℃)および60%相対湿度の通常の貯蔵条件
2)3ヶ月、しかし好ましくは6ヶ月の貯蔵期間中おおよそ40度Cおよび75%相対湿度の促進条件
下に置かれるときに、本発明によって指定されるレベルおよび範囲内の、レベルのフッ化物イオン源、二酸化塩素源、および維持することができる最終組成物のpH範囲を含有する組成物を教示することである。
【0073】
安定性は、本発明の目的のためには、最終組成物が(上記の)通常の貯蔵条件および促進条件下に置かれるときに、フッ化物イオン源、二酸化塩素源、およびpHのレベルを本発明によって指定されるレベル内に維持する能力と定義される。フッ化物イオン源、二酸化塩素源およびpHについての規格は本発明の安全で有効な虫歯予防特性を提供するであろう範囲にあると考えられるので、安定性はこのように定義される。本発明についての安定性のこの予想は、本発明の具体的な実施形態について行われた安定性研究に基づいて達成可能であると考えられる。この安定性研究の結果は、下の表5に詳細に示される。
【0074】
【表5】

【0075】
0.24%(w/w)フッ化ナトリウムおよび0.125%(w/w)安定化二酸化塩素を含有する単相歯磨き剤の2つの二重反復試験7オンスサンプル(サンプルWおよびサンプルX)ならびにフッ化物なしで0.125%(w/w)安定化二酸化塩素を含有する単相歯磨き剤の2つの二重反復試験7オンスサンプル(サンプルYおよびサンプルZ)が促進条件に90日間置かれた。各サンプルは、指定の特質(pH、ClO濃度およびフッ化物イオン濃度)について2回試験された。実験NaF/ClO歯磨き剤(サンプルWおよびサンプルX)は、3ヶ月の終わりに残っている検出可能な安定化二酸化塩素を全く持たないフッ化ナトリウムなしの安定化二酸化塩素歯磨き剤(サンプルYおよびサンプルZ)と比較して、(本発明で特許請求される安定化二酸化塩素の十分にレベル内の)0.04〜0.05%または400〜500ppm間の安定化二酸化塩素を保持した。さらに、NaF/ClO実験歯磨き剤は、本発明によって教示される十分にフッ化物イオンレベル内である、3ヶ月の終わりに初期のフッ化物イオンの90%超、または1021〜1047ppmのフッ化物イオンを保持した。本発明の他の実施形態がこれらの観察に基づき類似の安定性を維持することができるだろうと予期される。
【0076】
組成物の適用および様々な使用
虫歯予防有効性を高める方法のために、本発明の組成物は、歯肉、歯、および/または舌を含むが、それらに限定されない、口腔に適用されてもよい。本組成物は、様々なルートの局所性投与によって口腔にデリバーされてもよい。一実施形態では、口腔組成物のフッ化物イオン源および二酸化塩素源は、口腔に歯磨き剤としてデリバーされてもよく、ここで、消費者は歯ブラシを使用して口腔中の歯、歯肉、舌、唾液および他の関連組織にブラシをかけるおよび歯磨き剤を適用する。少量の、エンドウ豆サイズ量の歯磨き剤を、朝におよび夜寝る前に、1日に2回2分間、歯ブラシで口腔に適用することができよう。
【実施例】
【0077】
開示される実施例は、本発明の可能な実施形態に関する追加の指示を提供するにすぎない。導き出されてもよい様々な他の実施形態が存在することが理解されるので、下記の実施例は、本発明の範囲を制限するまたは限定することを意図されない。
【0078】
実施例1
単相歯磨き剤
調合物
単相歯磨き剤用の調合物を下に開示する。単相歯磨き剤は、次の成分:フッ化ナトリウム、安定化二酸化塩素、リン酸ナトリウム一塩基性、リン酸ナトリウム二塩基性、二酸化チタン、セルロース・ガム、水和シリカ、ソルビトール、甘味剤、香味剤、および精製USPグレード脱イオン水から選択される原料を含む。
【0079】
原料重量/重量%
フッ化ナトリウム 0.240%
二酸化塩素(安定化5%溶液) 2.500%
リン酸ナトリウム一塩基性およびリン酸ナトリウム二塩基性 6.7〜7.0の最終pHを達成するための%
【0080】
残りの賦形剤原料(例えばセルロース・ガム、水和シリカ、二酸化チタン、ソルビトール、甘味剤、香味剤、および脱イオン水)が選択され、当業者に公知である、歯磨き剤にとって適切な濃度で添加されるべきである。
【0081】
最終歯磨き剤組成物(実施例1)のpHは、pH6.7〜7.0の範囲にある。
【0082】
歯磨き剤調製手順
水溶性の固体成分(緩衝剤および甘味剤)を水に溶解させ、それをセルロース・ガムに加える。水不溶性の成分(例えば二酸化チタン、水和シリカ)の混合物を調製し、液体ポリオール(例えばソルビトール)でトリチュレーションする。得られたペーストを、ホモジナイザーを使用して可溶性賦形剤を含有する水溶液および二酸化塩素溶液と組み合わせる。
【0083】
歯磨き剤の適用および使用方法
ある量(エンドウ豆のおおよそのサイズ)の歯磨き剤組成物を歯ブラシ上に置くことが指示される。歯は、歯磨き剤で最低でも1分間、1日に2回の頻度で、好ましくは朝におよび夜寝る前にブラシをかけるべきである。この方法は、6歳を超える個人に対して指示される。
【0084】
実施例2
単相オーラルリンス
単相オーラルリンス用の調合物を下に開示する。単相オーラルリンスは、次の成分:フッ化ナトリウム、二酸化塩素、クエン酸、リン酸三ナトリウム、および精製USPグレード脱イオン水から選択される原料を含む。
【0085】
原料重量/重量%
フッ化ナトリウム 0.050%
二酸化塩素(安定化5%溶液) 2.500%
クエン酸 6.7〜7.0の最終pHを達成するための%
【0086】
残りの原料、例えばリン酸三ナトリウムおよび脱イオン水を、当業者に公知である、二酸化塩素の逸出を防ぎ、全体調合物をバランスさせるために適切な量で添加する。
【0087】
上記のオーラルリンス調合物の最終pHは、pH6.7〜7.0の範囲にある。
【0088】
保湿剤、甘味剤、および香味剤を、当業者に公知の濃度で上記のオーラルリンス実施形態に添加してもよい。
【0089】
原料源は次の通りである:フッ化ナトリウム(Sigma-Aldrichによって販売される、プリス(puriss)USP、Ph.Eur.グレード粉末)、二酸化塩素(Bio-Cide Internationalによって販売される、安定化5%溶液)、リン酸三ナトリウム(ICL Performance Products)、およびクエン酸(Jungbunzlauerによって販売される、USP Anhydrous溶液)。
【0090】
オーラルリンス調製手順
リン酸三ナトリウムおよび本発明の水溶性の活性成分(例えばフッ化ナトリウムおよび二酸化塩素)を脱イオン水に溶解させる。クエン酸を別の調製で脱イオン水に溶解させる。次にクエン酸調製物を、6.7〜7.0のpHを達成するために(フッ化ナトリウムおよび二酸化塩素を含有する)水性調製物に加え、それに混ぜ込む。
【0091】
歯磨き剤の適用および使用方法
本発明の別の可能な実施形態では、口腔ケア組成物のフッ化物イオン源および二酸化塩素源をオーラルリンス液として口腔にデリバーしてもよい。消費者は、15mLのオーラルリンスで30秒〜1分間うがいし、終了したらすぐに液体を吐くことを指示される。投与の好ましい頻度は1日に2回(朝におよび夜寝る前に)であろう。この方法は、6歳を超える個人に対して指示される。
【0092】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯表面上にバイオフィルム群集を形成する微生物の個体群を破壊して歯の脱灰を低減し、かつ、歯の再石灰化を促進するための組成物であって、
a)前記組織的バイオフィルム群集に浸透し、それを破壊して前記歯の表面へのアクセスをもたらすための安定化二酸化塩素源と;
b)ヒドロキシアパタイト(歯無機物)の結晶マトリックス中のヒドロキシルイオン(OH)と置き換わり、酸溶解に抵抗するフルオアパタイトを形成するための、およびう蝕原生細菌への弱い抗菌効果を提供するためのフッ化物イオン源と;
c)緩衝剤と
を組み合わせて含む組成物。
【請求項2】
前記フッ化物イオンがフッ化ナトリウムである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記緩衝剤が、酢酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩緩衝剤からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記緩衝剤が、酢酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩緩衝剤からなる群から選択される請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物がペーストの形態にあり、そして二酸化塩素の濃度が約0.005%〜約0.800%(w/w)の範囲にある請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記フッ化物イオンの濃度が約45ppm〜約5000ppmの範囲にある請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤が約6.0〜約7.5の範囲のpHを提供する請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記フッ化物イオンの濃度が約45ppm〜約5000ppmの範囲にある請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
単相組成物である請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
単相組成物である請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
歯の脱灰の低減方法であって、
a)バイオフィルムに対するその殺菌特性の恩恵を得るように二酸化塩素を生成するために、酸性エレメント/バイオフィルムと反応するための安定二酸化塩素を含む組成物を適用する工程と;
b)存在する任意のバイオフィルムに対する前記二酸化塩素の殺菌効果から得られる歯の表面の暴露の結果として前記歯の脱灰を低減しかつ再石灰化を促進するために、前記組成物の一部としてフッ化物イオンを適用する工程と;
c)前記組成物の有効なpH範囲を緩衝剤で確立する工程と
を含む方法。
【請求項12】
適用する前記工程が約0.005%〜約0.800%(前記組成物が液体でない場合はw/wであり、前記組成物が固体でない場合はw/vである)の濃度範囲の二酸化塩素によって実施される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
適用する前記工程が約45ppm〜約5000ppmの範囲の前記フッ化物イオンによって実施される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
確立する前記工程が前記組成物のpH範囲を約6.0〜約7.5の範囲に設定する前記緩衝剤によって実施される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
適用する前記工程が約45ppm〜約5000ppmの範囲の前記フッ化物イオンによって実施される請求項12に記載の方法。
【請求項16】
確立する前記工程が前記組成物のpH範囲を約6.0〜約7.5の範囲に設定する前記緩衝剤によって実施される請求項12に記載の方法。
【請求項17】
確立する前記工程が前記組成物のpH範囲を約6.0〜約7.5の範囲に設定する前記緩衝剤によって実施される請求項13に記載の方法。
【請求項18】
確立する前記工程が前記組成物のpH範囲を約6.0〜約7.5の範囲に設定する前記緩衝剤によって実施される請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2012−513476(P2012−513476A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543650(P2011−543650)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/069253
【国際公開番号】WO2010/075419
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(510008754)マイクロピュア・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】