説明

歯ブラシ及びその製造方法

【課題】口腔内での操作性に優れた無平線歯ブラシでありながら、ハンドルを透明に構成して意匠性を高めつつ、しかも成形性、耐久性および耐荷重性を十分に確保できる透明のハンドルを有する歯ブラシ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数本のフィラメントを束ねてなる毛束2の基端部に溶融塊を形成して、この溶融塊をヘッド部11に埋設した状態で毛束2を固定し、曲げ弾性率が1700MPa以上3000MPa以下、密度が1.09g/cm以上1.11g/cm以下、MFRが0.3g/10min以上3.0g/10min以下であるスチレン共重合体からなる樹脂を用いて、歯ブラシを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平線を用いずに毛束をヘッド部に植設した透明なハンドルを有する歯ブラシ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛束をハンドルのヘッド部に植設するために平線を用いない歯ブラシ(以下、「無平線歯ブラシ」という。)は、歯ブラシ金型のヘッド部に対応する位置に複数の毛束を装着し、これらの毛束の基端部を加熱して溶融塊を形成した後に、合成樹脂材料を金型内に射出して歯ブラシハンドルを成形するとともに、複数の毛束の溶融塊をヘッド部に脱落不能に埋設することにより製造される。(例えば、特許文献1、2参照。)この無平線歯ブラシは、平線を打ち込むスペースが不必要であることやヘッド部に物理的なストレスを発生させないなどの理由により、平線を使用している歯ブラシと比較してヘッド部や隣接する首部を小さくすることが可能である。したがって、口腔内での操作性の向上による高い口腔内清掃性の確保や歯ブラシデザインの多様性の確保など優れた機能を有することから着目されている。
【0003】
一方、ハンドルを透明にすることにより意匠性を向上させ消費者の受容性を高めることが試みられている。一般的に透明なハンドルを有する歯ブラシの樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、MS樹脂およびメタクリル樹脂などのスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が使用されている。しかし、これらの透明な樹脂は種々の課題点が存在するため、無平線歯ブラシには使用されていない。例えば、ポリカーボネート系樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂はその融点が歯ブラシにおいて通常用いられているフィラメントに比べて高いため、歯ブラシのハンドルを成形する際に前記毛束の溶融塊を溶かしてしまい、毛束を歯ブラシハンドルに固定できなくなる。また、この溶解を避けるために低温で成形した場合は、成形時の射出圧力をより高くする必要があるため成形時の樹脂圧力により毛束の変形や毛束の倒れが生じる。また、スチレン系樹脂は一般的に耐久性や耐荷重性が低いため、歯ブラシ使用時に歯ブラシハンドルが折れる恐れがあるため、安全性確保の観点で課題があった。
【0004】
前記無平線歯ブラシのハンドルに使用できる樹脂として、特許文献3には引張降伏応力が45MPa以上で、曲げ弾性率が1900MPa以上の熱可塑性樹脂を用いたものが記載されており、熱可塑性樹脂として、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、PCTA樹脂、PCTG樹脂などのポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ホモポリマー、コポリマー)、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂の中から選ばれた樹脂を主成分とする樹脂を採用できる点が開示されているが、これらの知見を以ってしても、未だ前記課題点を解決するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−9947号公報
【特許文献2】特開2003−102552号公報
【特許文献3】特開2006−238928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、十分な長期ブラッシングに伴う耐久性とブラッシング時の歯磨き圧による折れが無い十分な耐荷重性を兼ね備えた透明ハンドルを有する無平線歯ブラシおよびその製造方法を提供するものである。さらに詳しくは、口腔内での操作性を高めるために歯ブラシの首部分を細くしつつ、十分な耐久性と耐荷重性を兼ね備えた透明ハンドルを有する無平線歯ブラシおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、曲げ弾性率が1700MPa以上3000MPa以下、密度が1.09g/cm以上1.11g/cm以下、MFRが0.3g/10min以上3.0g/10min以下であるスチレン共重合体が、無平線歯ブラシの透明ハンドルの樹脂として使用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
さらに、本発明者は、前記樹脂を使用した透明ハンドルを有する無平線歯ブラシの製造条件として、歯ブラシハンドルを成形する際に金型へ樹脂を流入させるゲート径を3mm以上5mm以下とすることで生産性を確保できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は下記の歯ブラシおよび歯ブラシの製造方法を提供するものである。
項1.毛束の基端部に溶融塊を形成し、この溶融塊をヘッド部に埋設した状態にすることにより複数の毛束を植設したヘッド部と、柄部と、ヘッド部と柄部とを連結する首部とからなるハンドルを有する歯ブラシにおいて、歯ブラシのハンドルの材料として曲げ弾性率が1700MPa以上3000MPa以下、密度が1.09g/cm以上1.11g/cm以下、MFRが0.3g/10min以上3.0g/10min以下であるスチレン共重合体を用いたことを特徴とする透明なハンドルを有する歯ブラシ。
項2.前記首部の断面積が15.5mm以上25.0mm以下であることを特徴とする項1記載の透明なハンドルを有する歯ブラシ。項3.毛束の基端部に溶融塊を形成し、この溶融塊をハンドル成形時にヘッド部へ埋設した状態とすることにより複数の毛束を植設したヘッド部と、柄部と、ヘッド部と柄部とを連結する首部とからなるハンドルを有する歯ブラシにおいて、ハンドルの材料として曲げ弾性率が1700MPa以上3000MPa以下、密度が1.09g/cm以上1.11g/cm以下、MFRが0.3g/10min以上3.0g/10min以下であるスチレン共重合体を用い、該共重合体を金型へ流入させるためのゲートの径が3mm以上5mm以下であることを特徴とする透明なハンドルを有する歯ブラシの製造方法。
【0010】
以下に、本発明の歯ブラシの代表的な実施の形態について説明する。
【0011】
図1、図2に示すように、歯ブラシ1は、ヘッド部11、柄部12、ヘッド部11と柄部12とを連結する首部13とからなるハンドル10と、ハンドル10のヘッド部11に植設した複数の毛束2からなるブラシ部3とを有する。歯ブラシ1の製造は、図8(d)に示すように複数本のフィラメントを束ねてなる毛束2の基端部に溶融塊4を形成し、この溶融塊4を金型20、21の成形空間22内に配置させた状態で成形空間22内へ樹脂を射出することによりハンドル10を成形し、複数の毛束2をヘッド部11に脱落不能に一体化させたものである。
【0012】
前記ハンドルの10の成形に用いる透明な樹脂としては、曲げ弾性率が1700MPa以上3000MPa以下、密度が1.09g/cm以上1.11g/cm以下、MFRが0.3g/10min以上3.0g/10min以下のスチレン共重合体を用いる。ここでスチレン共重合体とは、スチレンに対してアクリロニトリルおよびブタジエンを共重合させたABS樹脂やメタクリレート樹脂を共重合させたMS樹脂、メチルメタクリレートおよびブタジエンを共重合させたMBS樹脂であり、その配合比率を変えることで樹脂の物性を様々に調整したものをいう。例えば、ABS樹脂、MS樹脂、MBS樹脂の中から選ばれた樹脂が用いられる。これらのスチレン共重合体を無平線歯ブラシの材料として使用した場合、繰り返し使用に対する耐久性や使用時の耐荷重性を十分に確保できる。
【0013】
本発明の好適な透明な樹脂としては、前記メチルメタクリレートおよびブタジエンを共重合させたMBS樹脂およびアクリロニトリルおよびブタジエンを共重合させたABS樹脂などが挙げられる。例えば、IT2000、IT5200IT5300(以上、新日鐵化学社製)、テクノABS(テクノポリマー社製)などが望ましい。なかでもメチルメタクリレートを構成要素として有するスチレン共重合は、アクリロニトリルやメタクリレートを構成要素として有するスチレン共重合体と比較し、耐久性がより優れているため好ましい。
【0014】
また、前記スチレン共重合体をそのまま用いるだけでなく、歯ブラシの意匠性をより高めるために透明の着色剤やラメ剤などを添加した樹脂を用いることも可能である。
【0015】
本発明でいう透明とは、「可視光の透過を認めることができる」ことを意味する。すなわち、「透明なハンドル」とは「可視光の透過を認めることができるハンドル」を意味する。したがって、可視光を透過しない物質(ラメ、含量など)を少量混合した樹脂を使用したり、造形品を埋包して成形したりして得られた歯ブラシハンドルや、歯ブラシの柄(12や14)の一部をエラストマーなどの不透明な樹脂で成形したいわゆる2色成形の歯ブラシハンドルであっても、歯ブラシのハンドル部分に可視光が透過する部分が存在する限り「透明なハンドル」に含まれる。特に、JIS K 7105の試験方法により測定した透過率の値が80%以上であるスチレン共重合体を使用して得られた無平線歯ブラシが好ましい。
【0016】
ブラシ部3を構成する、ヘッド部11に植設される毛束2の材料としては特に限定されるものではなく、例えば、ナイロン、アラミド樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート若しくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、その他、従来公知の熱可塑性樹脂フィラメントを用いることができ、さらに、0.18mm以下の直径を有するフィラメントや、異形フィラメント、軟質フィラメント、複合材質フィラメント等も用いることができる。
【0017】
弧状の傾斜面c(図3)は、その曲率半径Rがヘッド部11の厚さtよりやや大きいか、ヘッド部11の厚さtと略同一であることが好ましく、1.5mm以上4mm以下が好ましく、更に好ましくは1.5mm以上3mm以下である。
【0018】
首部13の断面積は、口腔内におけるブラシの操作性および歯ブラシの耐久性・耐荷重性の観点から5.5mm以上25.0mm以下とするのが好ましく、15.5mm以上21.0mm以下がより好ましい。歯ブラシ1における首部13の断面積は、約19.6mmである。また、首部13の横断面形状は特に限定されるものではないが、ハンドル10の軸方向に直交する断面の形状は略円形であることが、口腔内における操作性の観点から好ましく、特に、ヘッド部11に連なる部分の断面形状が円形の場合には、ヘッド部11と首部13との連結部の機械的強度や耐久性、ひいては歯ブラシ1の機械的強度や耐久性の点からも好ましい。
【0019】
本発明の無平線歯ブラシは、公知の方法を用いて製造することができる。(特開2003−9947号公報、特開2003−102552号公報など)その場合、歯ブラシの金型に樹脂を流入させる入口であるゲート径は3mm以上5mm以下が生産効率の観点から好ましい。ここでゲート径とはゲート口の内径を指す。例えば、ゲート口の形状が円形の場合は、ゲート口内径の直径値を意味し、非円形の場合は、ゲート口内径の最小値から最大値の範囲を意味する。このゲート径の範囲であれば、無平線歯ブラシの首部の断面積を15.5mm以上25.0mm以下と小さくしても、本発明で規定する特定のスチレン共重合体を使用する場合であれば、歯ブラシハンドルの成形時において溶融塊に不要な圧力が加わることがないため、溶融槐の位置がズレることによる成型不良(毛束の倒れ)が発生しない。ゲート径が3mmに満たない場合は、樹脂がゲート付近で樹脂が硬化したり、金型への樹脂の充填が遅いため必要量の樹脂を金型内に注入できない、充填時の樹脂注入圧力が高くなるために毛束の変形などを生じるなどの理由から成形不良を生じやすくなる恐れがある。一方、ゲート径が5mmを超えるとゲート部分の余分な部分の樹脂を切除する処理に困難を生じたり、ゲート部分でハンドルが折れやすくなる恐れがあるため好ましくない。ゲート口の形状は特に限定されないが、略円形または略楕円形が好ましい。歯ブラシにおけるゲートの位置としては、口腔内に接触する部分に設定した場合は歯ブラシ使用時に破損することで口腔内を傷つけるなど安全性の点で懸念されることから、歯ブラシ1の柄部底面部分や柄部側面部分に設定することが好ましい。
【0020】
次に、前記歯ブラシ1の構成を部分的に変更した他の実施の形態について説明する。尚、前記実施の形態と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0021】
図6に示す歯ブラシのように、前記ヘッド部11に代えて、ハンドル10Aに一体成形されるヘッド本体部30と、ハンドル10Aとは別部材からなり、ヘッド本体部30の植毛面側に積層状に設けたカバー部材31とからなるヘッド部11Aを備えさせることもできる。この歯ブラシ1Aを成形する際には、図10(e)に示すように、ヘッド部11Aを成形する成形空間22A内にカバー部材31を配置させるとともに、カバー部材31の植毛孔32を挿通するように、複数のフィラメントを束ねてなる毛束2を配置させ、毛束2の基端部に溶融塊4を形成し、この溶融塊4を成形空間22A内に配置させた状態で、成形空間22A内へ合成樹脂材料を射出してハンドル10Aを成形するとともに、複数の毛束2をヘッド部11Aに脱落不能に一体的に埋設することになる。
【0022】
この歯ブラシ1Aにおいて、ハンドル10Aやフィラメントを構成する合成樹脂材料は、前記実施の形態と同様のものを採用できる。また、カバー部材31の材料としては、合成樹脂や熱可塑性エラストマーを採用することができ、透明、不透明の別を問わない。特にハンドル10Aの材料と相溶性を有する合成樹脂や熱可塑性エラストマーを好適に採用できる。カバー部材31の厚さは、薄すぎるとフィラメント間の隙間を通って溶融樹脂がカバー部材31外へ流出して、成形不良が発生し、厚すぎると口腔内におけるブラシ部3の操作性が低下するので、0.5以上3.5mm以下に設定することが好ましい。この歯ブラシ1Aでは、ハンドル10Aに一体成形するヘッド本体部30の厚さを、1.5mm以上4mm以下に設定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ヘッド部に平線を用いずに毛束を植設してなる透明なハンドル有する歯ブラシを提供できる。さらに詳しくは、口腔内での操作性に優れたネック部を有し、且つ意匠性に優れた透明ハンドルを有する無平線歯ブラシを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】歯ブラシの正面図
【図2】歯ブラシの平面図
【図3】歯ブラシのヘッド部から首部にかけての要部の拡大正面図
【図4】歯ブラシのヘッド部から首部にかけての要部の拡大平面図
【図5】図4のV−V線断面図
【図6】他の構成の歯ブラシの斜視図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
ハンドル10の樹脂材料として、表1に示すスチレン共重合体(MBS,ABS,MS)8種類を用いた。これらの樹脂材料の物性は、表2に示す通りであった。また、毛束2として、直径が0.19mmのナイロン製のフィラメントを50本束ねてなる毛束2を用いた。そして、毛束2の基端部に直径が1.7mm〜2mmで厚さが0.2mm〜1mmの溶融塊4を形成し、この溶融塊4を成形空間22内に配置させた状態で、表2および表3に示す成形温度で、成形空間22内へ合成樹脂材料を射出してハンドル10を成形するとともに、複数の毛束2をヘッド部11に脱落不能に一体的に植設して、図1〜図5に示すような形状で、各部の寸法が図1、図3〜図5に括弧書きで示した寸法の8種類の歯ブラシ1を作製した。尚、成形温度は、ヘッド部11の先端部においても合成樹脂材料の充填不良が発生せず、しかもできるだけ低い成形温度となるように、予め異なる複数の成形温度で成形を行って設定した。
【0026】
【表1】

【0027】
次に、前記8種類の樹脂で成形した歯ブラシ1Aにおいて耐久性の評価を実施し、さらに耐久性試験の結果が◎もしくは○の評価の樹脂について耐荷重性(ハンドル曲げ試験)の評価行い、それらの評価結果から総合評価を行った。さらに、本発明の実施品における歯ブラシハンドルの成形可否評価を行った。各々の試験方法と判断基準を以下に、各々の評価結果を表2および表3に示す。 なお、表における樹脂特性の試験方法は以下に従った。
*1 曲げ弾性率 JIS K 7171
*2 透過率 JIS K 7105
*3 密度 JIS K 7112
*4 MFR JIS K 7210
【0028】
<耐久性の評価> ハンドル10の柄部12を固定保持して、ハンドル10を略水平な片持ち状に支持した状態で、ヘッド部11の中心に1kgの応力を1秒間に4回の周期で加えて、最終的に首部13が破断するまでに加えた応力の回数を測定する。
判断基準
◎ 60000回以上
○ 30000回以上60000回未満
× 30000回未満
【0029】
<耐荷重性(ハンドル曲げ試験)の評価> ハンドル10の柄部12を固定保持して、ハンドル10を略水平な片持ち状に支持した状態で、ヘッド部11の中心に応力をハンドルが変形もしくは破断するまで加え続けることで行った。判断基準を以下に示す。
判断基準
○ 破断しない
× 破断する
【0030】
<総合判断>
◎ 耐久性評価結果が◎ かつ耐荷重性評価結果が○のもの
○ 耐久性評価結果と耐荷重性評価結果が何れも○のもの
× 上記以外のもの
【0031】
<歯ブラシハンドルの成形可否の評価>
○ 毛束2の倒れが全くなく、溶融魂4が溶融して変形していないもの
かつ 成形後の形状変化が殆どないもの
△ 毛束2の倒れが1−4束で、溶融魂4が溶融して変形していないもの
かつ 成形後の形状変化が殆どないもの
× 上記以外のもの
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
表2および表3に示したとおり、同じスチレン共重合体であっても、曲げ弾性率が1700MPa以上3000MPa以下、密度が1.09g/cm以上1.11g/cm以下、MFRが0.3g/10min以上3.0g/10min以下の条件を満足しない樹脂は、耐久性、耐荷重性が不足することが明らかである。また、製造条件においてゲート径は3mm〜5mmの範囲であれば良好であることが明らかである。なお、ゲート径を6mmとしたものはゲート部分の切除処理に困難を生じたり、ゲート部分でハンドルが折れやすかったため好ましくないと判断した。
【0035】
更に、メチルメタクリレートを構成成分として含むMBS樹脂からなるスチレン共重合体は、アクリロニトリルを構成成分として含むABS樹脂からなるスチレンコポリマー(D)と比較して、耐久性に優れているので、最も好ましい実施の形態であると判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、十分な長期ブラッシングに伴う耐久性とブラッシング時の歯磨き圧による折れが無い十分な耐荷重性を兼ね備え、意匠性に優れた透明ハンドルを有する無平線歯ブラシが提供できる。
【符号の説明】
【0037】
1、1A 歯ブラシ
2 毛束
3 ブラシ部
4 溶融魂
10、10A ハンドル
11、11A ヘッド部
12 柄部
13 首部
30 ヘッド本体部
31 カバー部材
a 植毛面
b 裏面側
c 傾斜面
d 連接部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛束の基端部に溶融塊を形成し、この溶融塊をヘッド部に埋設した状態にすることにより複数の毛束を植設したヘッド部と、柄部と、ヘッド部と柄部とを連結する首部とからなるハンドルを有する歯ブラシにおいて、歯ブラシのハンドルの材料として曲げ弾性率が1700MPa以上3000MPa以下、密度が1.09g/cm以上1.11g/cm以下、MFRが0.3g/10min以上3.0g/10min以下であるスチレン共重合体を用いたことを特徴とする透明なハンドルを有する歯ブラシ。
【請求項2】
前記首部の断面積が15.5mm以上25.0mm以下であることを特徴とする請求項1記載の透明なハンドルを有する歯ブラシ。
【請求項3】
毛束の基端部に溶融塊を形成し、この溶融塊をハンドル成形時にヘッド部へ埋設した状態とすることにより複数の毛束を植設したヘッド部と、柄部と、ヘッド部と柄部とを連結する首部とからなるハンドルを有する歯ブラシにおいて、ハンドルの材料として曲げ弾性率が1700MPa以上3000MPa以下、密度が1.09g/cm以上1.11g/cm以下、MFRが0.3g/10min以上3.0g/10min以下であるスチレン共重合体を用い、該共重合体を金型へ流入させるためのゲートの径が3mm以上5mm以下であることを特徴とする透明なハンドルを有する歯ブラシの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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