説明

歯列矯正装具用のラピッドプロトタイプ移動トレー

本発明は、コンピュータ実行型の移動トレー作製方法であって、トレーの歯肉側縁部が歯列矯正装具を受容するための少なくとも1つの容器と交差するように画定される、方法を対象とする。このトレー構成は、該装具が歯に固着される時まで該装具を保持するための、高度な機械的保定も維持しながら、患者の歯群にトレーを定置する時のトレーの移動距離を最小にするように補助する。該トレー及び関連する固着方法の他の態様は、容器の歯肉側部分に延在し、固着後のトレーの取り除きを容易にするために破壊される、脆弱なウェブを対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装具を歯列矯正の患者の歯群に固着するために、歯列矯正治療の専門家によって使用される移動トレーに関する。本発明は、また、このような移動トレーを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯列矯正は、位置異常の歯群の口腔の所望する位置への監視、指導、及び矯正に関する歯科医学の分野及び専門である。歯列矯正治療では、特に歯並びが著しく悪い場合又は上下の歯が互いに整列していない場合、患者の顔の外見を改善することができる。歯科矯正治療はまた、咀嚼中の咬合をより良好にすることにより、歯群の機能を強化することができる。
【0003】
歯科矯正治療の1つの一般的なタイプは、ブラケットとして知られる小さなスロット付き装具を使用することを伴う。ブラケットは、患者の歯群に固定され、弾力的で、概ねU形状のアーチワイヤーが各ブラケットのスロットに定置される。歯並びが悪いと、アーチワイヤーは、各ブラケットのスロットに定置される時に、その原形からゆがんでします。治療中、アーチワイヤーは、その原形に徐々に戻り、その際、歯群を所望の位置へと付勢する。
【0004】
歯科矯正用アーチワイヤーの端部は、バッカルチューブとして知られる小さな装具に接続されることが多く、バッカルチューブは次に、患者の大臼歯に固定される。多くの場合、1組のブラケット、バッカルチューブ及びアーチワイヤーは、患者の上下歯列弓のそれぞれに対して提供される。ブラケット、バッカルチューブ、及びアーチワイヤーの組み合わせは、通常、「固定具」と称される。
【0005】
多くの種類の歯列矯正技法において、最終的な歯の位置を予測するには、歯群上での装具の正確な位置が重要な要因となる。一般的な歯列矯正技法の1つは、1972年にDr.L.F.Andrewsによって導入された、「ストレートワイヤ」法が知られる。「ストレートワイヤ」法において、1組の装具は、アーチワイヤーが治療の完了時に水平面に位置するように構成される。結果的に、アーチワイヤーが直線状となり水平面内に位置する時点で歯が正しく整列するように、装具は、治療を開始する際に正確に配置されなければならない。例えば、ブラケットが、歯の咬合先端部又は外側先端部に過度に接近した部位で歯に取り付けられた場合、ストレートワイヤ技法を用いる歯列矯正医は、おそらくは、最終的な位置にある歯が不適切に干渉されているのを見出すことになろう。一方で、ブラケットが、適切な程度以上に歯肉に近い位置で歯に取り付けられた場合、歯の最終位置は、所望よりも外に押し出される傾向がある。
【0006】
歯列矯正装具を歯に接着するための1つの技法は、インダイレクトボンディング技法として知られている。従来、既知のインダイレクトボンディング技法では、多くの場合、患者の歯列弓の少なくとも一部の外形に合致する形状を有する定置装置又は移動装置が使用されてきた。ある種の移動装置は、「移動トレー」又は「インダイレクトボンディングトレー」と呼ばれ、典型的には、多数の歯を同時に受容するための細長い空洞を有する。ブラケットなどの一組の装具が、特定の予め定められた位置にトレーの内側表面に解放可能に連結される。
【0007】
ボンディングトレーをインダイレクトボンディングに使用する間、接着剤が、典型的には各装具の基部に歯列矯正医又はスタッフの一員によって塗布される。次に、トレーが、患者の歯群の上に定置され、例えば接着剤が固まるまで適所に留まる。次に、トレーが、歯からも、そして装具からも同様に取り外され、その結果、それまでトレーに連結されていた装具のすべてが、この時、目的とする所定の部位で各歯に接着される。
【0008】
歯の大きさ及び向きは患者によって大きく異なることがあるため、インダイレクトボンディングトレーは、通常は各患者ごとに特注される。インダイレクトボンディングトレーを作製する一方法が、患者の歯列弓の各々の印象を取る工程と、次いでレプリカの石膏又は「石」模型を各印象材から作製する工程とを含む。所望により、模型の歯は、ブラケットを理想的な位置に配置するのを支援するために、鉛筆で印を付けることができる。次に、ブラケットが、好適な接着剤を用いて石模型に一時的に固着される。次いで、インダイレクトボンディングトレーが、模型の上方並びに模型上のブラケットの上方にマトリックス材料を配置することによって作製される。例えば、熱成形法において、プラスチックシートマトリックス材料が模型及びブラケット上に定置され、その後、真空下、オーブンで加熱される。プラスチックシート材料が軟化するとき、またオーブン内の空気が排出されるとき、プラスチックシート材料が、石模型のレプリカ歯及び隣接するブラケットの形状に正確に整合する外形を呈する。プラスチック材料は次いで、冷却され硬化されてトレーを形成する。熱成形の別の方法としては、シリコン等の適切な樹脂を模型の歯群の周囲に流し込み、その後、樹脂を硬化してトレーを作製することが可能である。この場合、硬化の前に樹脂を収容するための注型容器が時折使用される。
【0009】
トレーが形成された時点で、付随する装具と共に石レプリカから慎重に取り外される。トレーが取り外される時、各装具を模型に固着するために使用された接着剤は、典型的には各装具の基部上に維持される。この接着剤パッドは、カスタム樹脂基部とも呼ばれ、レプリカ歯の固着表面にぴったり一致する。最後に、移動トレーが洗浄され、口に適切にはめあうようにトリミングされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インダイレクトボンディングトレーに関する現況技術は、近年進歩しているが、このようなボンディングトレーの作製及び使用の容易さを改善するための継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
移動トレーの作製は、残念ながら、治療専門家又は実験技術者にとって困難で時間がかかる場合がある。トレーの熱成形又は注型のいずれかの従来のプロセスは、オペレータの介在を必要とし、特にブラケットを模型に手で位置決めする際に人為的ミスに曝される。更に、レプリカの歯模型の作製工程、装具のレプリカ模型への固着工程、模型からのトレーの取り外し工程、最後には洗浄及び完成トレーのトリミング工程が、それぞれ、更なる時間及び材料コストを招く。
【0012】
本発明は、歯列矯正患者の歯群に歯列矯正装具を固着するためのカスタマイズされた移動トレー作製方法の一態様を対象とする。トレーが、各歯列矯正装具の所望の位置を画定し、歯群上に嵌合する仮想移動トレーを構成することによって仮想世界で構成され、その個々の所望の位置に各装具を正確に配置する複数個の装具容器を備える。方法は、縁部が各容器と交差するように移動トレーの歯肉側縁部を画定する工程を更に含む。実際の移動トレーが、次いで、そこから構成される仮想移動トレーの正確な構成に基づいて、ラピッドプロトタイピング技術を用いて形成される。
【0013】
各容器と交差するように移動トレーの歯肉側縁部を構成することにより、治療専門家は、固着手順中に特定の利点が得られる。最初に、移動トレーが単に部分的に各装具を封入することにより、移動トレーの装具からの係合及び脱離の両方を容易にする。第2に、移動トレーの歯肉側縁部での容器の位置決めも、取り付け中、トレーの移動距離を低減するため、固着中、接着剤の塗布(特に、二成分化学硬化接着剤を使用する時)を最小にする。この移動トレーが、製造者により歯列矯正装具に予め充填されるか、別の方法として、固着前に治療専門家により充填されてもよい。直接デジタルデータに基づきトレー製造を自動化することにより、この方法も、手動にて作製された移動トレーと比較して、改善された製品の一致性を提供する。
【0014】
移動トレーが、装具の歯肉側の一部にわたり部分的に延在する薄い脆弱なウェブも含んでもよく、これにより、装具は固着前にトレーにしっかり維持される。装具が患者の歯牙構造に固着された時点で、脆弱なウェブは破壊され、咬合方向に移動トレーを付勢することにより、患者の口からトレーを取り外すことができる。脆弱なウェブの存在が、装具のトレーへの簡単な装填及び維持の両方、並びに患者の歯牙構造からのトレーの簡単な取り外しを提供するため、特に有利である。咬合方向へのトレーの取り外しが、頬又は唇に対して外側方向にトレーを引き抜かないため、患者にとって簡便で苦痛がない。咬合トレーの取り外しが、唇側方向(又は舌側装具の場合、舌側方向)に歯の表面から離れて装具を引き抜く必要性が避けられるため、新しく固着した装具の偶発的剥離のリスクを最小にすることも補助する。
【0015】
ラピッドプロトタイピング技術を用いた移動トレーの製作が、歯列矯正装具のトレーの簡単な係合及び脱離に適するように容器ジオメトリーの自由度を提供するため、有利である。注型及び熱成形等の他の既知の製作方法が、マトリックス材料で装具を完全に包囲して容器の形状を形成する。これは装具の維持に効果的だが、この構成が、トレーが口から除去される時に装具の強い機械的保定が歯群からの装具の脱離を生じるため、本質的に不利である。固着破損が重要であることが多いため、治療専門家又は助手は、面倒ではあるが、口からトレーを取り外すことを容易にするために、手動でトレーを数個に区分する。本発明は、固着前の装具の正確な配置のための高度な機械的保定と、固着後一体で口からのトレーの迅速で簡単な脱離の両方を提供する。
【0016】
トレーの他の態様が、複数の材料又は構成要素を移動トレーに組み込むことから導かれる。トレーの各部分が、その特定の機能に基づく、独自の一組の材料の必要性を有するため、2つ以上の構成要素の使用は有益である。例えば、移動トレーが、固着手順中、咬合歯の表面の所定の部分を特定的に係合する1つ以上の止め部材を含んでもよい。トレーの残りの部分より硬い材料から止め部材を形成することにより、トレーと歯群との間に「確実な硬い止め」を形成することが可能なため、それぞれの歯の表面上に各装具を位置決めする正確度が増加する。別の例として、移動トレーが、固着後患者の歯から移動トレーを取り外す時に、トレーから装具の解放を容易にするために、比較的軟質の材料から作製される1つ以上の容器を更に備えてもよい。
【0017】
更なる利点として、ラピッドプロトタイピング技術が、相互に独立する移動トレーの構成要素を構築するために高い自由度を提供する。これらの構成は、従来の熱成形又はキャスティング法を用いて製作することが困難又は不可能である止め部材及び/又は容器の空間的配置を含んでもよい。例えば、熱成形又は注型された移動トレーが、トレー全体にわたり延在する少なくとも1つの単一連続層を示すのが一般的である。これは、例えば、模様付き層を含んでもよいラピッドタイピングにより形成されたトレーの場合、必要はない。
【0018】
別の態様において、本発明は、患者の歯牙構造の仮想模型を得る工程と、模型上に仮想歯列矯正装具について所望する位置を決定する工程と、所望する位置に、装具の少なくとも一部に合致する構成を有する仮想装具容器を定置する工程と、模型の少なくとも一部及び模型から離れた容器の少なくとも一部にわたり延在する仮想トレー本体を誘導する工程であって、ここにおいて仮想トレー本体を誘導する動作が仮想容器と交差するトレー本体の歯肉側縁部を画定する動作を含む、誘導する工程と、ラピッドプロトタイピングによって移動トレーを形成する工程であって、ここにおいて移動トレーが、仮想トレー本体及び仮想容器にそれぞれに対応する、実際のトレー本体及び実際の容器を備える、形成する工程と、を含む、歯列矯正装具を間接的に固着するための移動トレーを作製する方法を対象とする。
【0019】
また別の態様において、本発明は、患者の歯牙構造の仮想模型を得る工程と、模型上に仮想歯列矯正装具について所望する位置を決定する工程と、所望する位置に、装具の少なくとも一部に合致する構成を有する仮想装具容器を定置する工程と、模型の少なくとも一部及び模型から離れた容器の少なくとも一部にわたり延在する仮想トレー本体を誘導する工程であって、ここにおいて仮想トレー本体を誘導する動作が仮想容器と交差するトレー本体の歯肉側縁部を画定する動作を含む、誘導する工程と、を含む、患者の歯牙構造に歯列矯正装具を固着するための方法を対象とする。この方法が、ラピッドプロトタイピングによって移動トレーを形成する工程であって、ここにおいて移動トレーが、仮想トレー本体及び仮想容器にそれぞれ対応する、実際のトレー本体及び実際の容器を備える、形成する工程と、実際の容器に装具を定置する工程と、歯列矯正装具の表面に接着剤を塗布する工程と、患者の歯牙構造上に移動トレーを定置する工程と、接着剤を硬化させる工程と、を更に含む。
【0020】
更に別の態様において、本発明は、容器と、容器に受容される歯列矯正装具とを有する歯列矯正移動トレーを提供する工程と、移動トレーを患者の歯牙構造上に定置する工程と、装具を患者の歯牙構造に接着剤で固着する工程と、その後で概ね咬合方向に、移動トレーを付勢する工程によって、装具から移動トレーを取り外す工程であって、ここにおいて移動トレーを取り外す動作が、容器の歯肉側の少なくとも一部にわたり延在するトレーの一部を破壊する工程を含む、取り外す工程と、を含む患者の歯牙構造に歯列矯正装具を固着する方法を対象とする。
【0021】
用語の定義
本明細書で使用するとき、
「近心側(mesial)」とは、患者の湾曲した歯列弓の中心に向かう方向を意味する。
「遠心側(distal)」とは、患者の湾曲した歯列弓の中心から遠ざかる方向を意味する。
「咬合側(occlusal)」は、患者の歯の外側先端に向かう方向を意味する。
「歯肉側(gingival)」は、患者の歯茎又は歯肉に向かう方向を意味する。
「顔側(顔)」とは、患者の唇又は頬に向かう方向を意味する。
「舌側(舌)」とは、患者の舌に向かう方向を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に従う、実際の移動トレーを作製する方法を図示するブロック図。
【図2】代表的な仮想の歯模型の斜視図。
【図3】図2の模型上に装着される仮想歯列矯正装具を含む複合模型の斜視図。
【図4】図3の複合模型を係合する仮想止め部材を画定するプロセスを示す斜視図。
【図5】加工された構成における図4の止め部材を示す斜視図。
【図6】図5の複合模型及び止め部材に対して仮想外側表面を誘導するプロセスを示す。
【図7】図5の模型及び装具にわたり延在する完成した外側表面を示す斜視図。
【図8】歯肉側及び顔側を図示する図7の完成した外側表面から誘導された仮想物体の外側形状を示す反転斜視図。
【図9】図8の外側形状から図3の模型及び装具を取り去ることにより形成された仮想移動トレー前駆体の斜視図。
【図10】図9のトレー前駆体と図5の止め部材を組み合わせることによって形成された仮想未加工トレーアセンブリの歯肉側の図。
【図11】切断面を画定し、切断面に対して歯肉側に位置する図10の未加工トレーアセンブリの一部を仮想的に取り除くことにより形成された、仮想移動トレーの歯肉側の図。
【図11a】仮想装具が所定の位置にある図11のトレーの舌側の図。
【図12】実際の装具が所定の位置にある図11および11aの仮想移動トレーに対応する、実際の移動トレーの歯肉側の図。
【図13】図12で「13」と示される部分からとった、図12の実際の移動トレーに定置された実際の装具の詳細な図。
【図14】トレーが歯列弓模型から外されトリミングされた後の、図13に示すトレーの断面図であり、更に、トレーが患者の歯牙構造上に定置される直前に見えるようにトレーを示す。
【図15】本発明の別の実施形態に従う、実際の移動トレーの歯肉側の図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用されるように、「仮想」物体は、可視可能な3D模型の物体又は模型自体を表す、画定する、又はレンダリングするデジタルデータを含む。以下の実施例において、「仮想物体」、「仮想模型」、及び「デジタル画像」の概念は、互換的に使用される。仮想物体は、バックオフィスサーバー、又はワークステーション、例えば、デジタル画像を操作することのできるプロセッサ、ユーザーインターフェース、及びユーザーがデジタル画像を見ることを可能にするディスプレイを有する汎用コンピュータを使用して、保存、処理、及び/又は伝達することができる。コンピュータは、複数組の仮想模型を保存でき、コンピュータで実施するソフトウェアに十分にアクセス可能なメモリを含む。ラピッドプロトタイピング機械及びコンピュータは、典型的には同じ場所に位置するが、この場合、必要ない。デジタル情報は、ワイヤデータ接続又はインターネットで伝達することができ、患者の歯牙構造を表すデータが、治療専門家の医院で取得され、処理されてもよく、移動トレー自体が、オフサイトのラピッドプロトタイピング機械を用いて製造される。
【0024】
図1は、本発明の代表的な実施形態に従う患者の歯群に歯列矯正装具を定置するための移動トレーを作製するために使用されるワークフローを説明する、概略ブロック図である。数字100で表される最初のブロックは、患者の歯牙構造の仮想模型の工程を示す。図2は、コンピュータディスプレイで見られるようにブロック100で導かれた仮想模型10を示す。図示するように、模型10は、患者の反転した上方の弓を示し、複数の歯群12を含む。より詳細には、歯群12は、左及び右の中央歯群11、側面歯14、犬歯15、小臼歯18、及び第1大臼歯19並びに周囲歯肉組織13を含む。この特定の歯列弓において、左側に2つの小臼歯18があるが、右側には小臼歯18が1つしかない。
【0025】
模型10は、Brontes Technologies,Inc.(Lexington,MA)により開発された能動波面サンプリングを用いて、口腔内スキャナー等の手持ち式口腔内スキャナーを使用して提供されるデジタルデータを用いて得ることができる。あるいは、他の口腔内スキャナー又は口腔内接触プローブが使用されてもよい。別の選択肢として、デジタルデータは、患者の歯牙構造の印象又は他のネガティブレプリカをスキャンすることによって得られてもよい。また別の選択肢として、模型10が、歯牙構造のポジティブレプリカをスキャンすることによって、又はポジティブレプリカ上の接触プローブを使用することによって得られてもよい。スキャンに用いられるポジティブレプリカが、注型材料(焼き石膏又はエポキシ樹脂のような)を、患者の歯群の印象材に注ぎ、注型材料を硬化させることにより作製してもよい。スキャンが使用される場合、X線スキャン、レーザスキャン、コンピュータ断層撮影法(CT)、及び磁気共鳴映像法を含むあらゆる好適なスキャン技術が、模型10を得るために使用されてもよい。
【0026】
模型を表示する前に、デジタルデータを更に洗練するために、追加の工程が使用されてもよい。例えば、模型10を表すデジタルデータが、誤ったデータポイントを除去するために更にフィルタをかけるか又は処理されてもよい。例えば、隣接するデータポイントに通常予想される幾何学的関係から著しく外れたデータポイントを含む、歯表面を表すSTL(ステレオリソグラフィ)データファイルが、STL処理ソフトウェアによって修正して、誤ったデータポイントを除去することができる。更に、欠けている歯のデータポイントをSTLファイルを操作するソフトウェアにより追加して、現実的で、滑らかな曲線歯形状を作製することができる。いくつかの実施形態において、データ処理が、データをSTLファイルに変換する前に実行される。
【0027】
ワークフローはブロック102に進み、1つ以上の仮想装具が模型10の歯群12上の所望する位置に定置され、複合模型を形成する。この複合模型が、図3に図示され、模型10の仮想中央歯群11、側面歯14、犬歯15、小臼歯18に連結される仮想歯列装具16を示す。ここでは示さないが、1つ以上の固着可能な大臼歯装具が、任意に、模型10の仮想大臼歯19に連結することができる。本実施形態において、装具16が、唇側ブラケットにより示される。しかしながら、装具16が、舌側ブラケット、大臼歯チューブ、ボタン、クリート、シース、又は歯の表面に固着するのに適切なあらゆる他の歯列矯正装具も含んでもよい。いくつかの実施形態において、装具16が、装具製造者により、STLファイル又は他のデジタル画像の形態で直接提供される。別の方法としては、装具16を表すデジタル画像が、実際の装具又は装具自体をスキャンすることにより提供されてもよい。好ましくは、装具16が、患者の歯群に固着される実際の装具の正確な仮想レプリカである。
【0028】
図示するように、装具16がその所望する箇所に位置決めされる時、各装具16が、同様に、それぞれの歯12に接触する歯に面する表面を有する仮想基部17を含む。各装具16が、標準の「既成」ブラケットに基づくか、又は別の方法として、患者の独特の歯牙構造に従う特注であってもよい。後者の場合、装具がその所望する箇所にある時、各装具16の基部17が、好ましくは、そのそれぞれの歯12のそれに正確に合致する歯に面する表面輪郭を含む。当該分野技術における特注の歯列矯正装具の例としては、米国特許第6,776,614号(Weichmannら)、同第RE35,169号(Lemchenら)、同第5,447,432号(Andreikoら)、同第5,431,562号(Andreikoら)、及び同第5,454,717号(Andreikoら)が挙げられる。
【0029】
模型10上の装具16における所望する箇所は、数多くの手段で決定することができる。一例として、治療専門家が、ローカルコンピュータを用いて直接模型10上に仮想装具16を手動で選択し、定置する。いくつかの実施形態において、モデリングソフトウェアが、各装具16及び各歯12を3D環境内で個別の物体として扱い、対応する装具16の歯12に関連する座標系に対する3D空間内の各装具16の位置を固定する。その後、モデリングソフトウェアが、例えば、装具16を開業医によって選択されたアーチワイヤーに仮想的に連結し、装具16の位置及び選択されたアーチワイヤーに基づいて歯12の最終位置に計算することができる。モデリングソフトウェアは、次いで、治療専門家による見直しのために最終咬合で仮想歯12を表示することができる。
【0030】
治療専門家が、歯の最終的な予測される位置に完全に満足しない場合、治療専門家はモデリングソフトウェアを使用して、歯12に対して1つ以上の仮想装具16を操作してもよい。これらの調整に基づいて、モデリングソフトウェアが、装具16を仮想アーチワイヤーに仮想的に連結して、例えば、歯の新しい最終位置への移動をシュミレートすることができる。その後、対応する装具16の位置により決定された歯12の新しい最終位置が、見直しのために計算され、表示される。これらの工程は、治療専門家がモデリングソフトウェアにより表されるような歯12の最終位置に満足するまで、所望する回数を繰り返すことができる。装具を移動するための別の方法として、治療専門家が、歯12の所望する位置を画定するために、代わりにモデリングソフトウェアを使用し、それらの所望する位置に歯12を移動するために、装具16を定置するための好適な位置をモデリングソフトウェアに決定させてもよい。仮想歯列矯正治療の例としては、発行された米国特許第6,739,869号(Kopelmanら)、同第7,354,268号(Rabyら)、及び米国特許出願公開第2008/0096151号(Cinader,Jr.ら)に開示されている。
【0031】
別の選択肢として、ブロック102における工程が、治療専門家の医院から離れた場所にいる技術者によって実施されてもよい。例えば、装具製造者の施設にいる技術者が、モデリングソフトウェアを使用して、例えば、Drs.MacLaughlin,Bennett、及びTrevisi等の歯列矯正治療原理の基準又は指針に基づいて、模型10上に装具16を定置してもよい。装具配置に対するこれらの基準又は指針が、模型10の各歯12に特定的であり、各歯12の臨床歯冠に対してアーチワイヤースロットの位置(例えば、咬合−歯肉側の高さ)を決定する。技術者も、治療専門家により提供される特定に指示に従って装具16を定置してもよい。技術者が装具位置及び得られた歯の完了位置に満足したら、装具16の位置を表すデータと共に模型10を見直しのために治療専門家に伝達する。治療専門家が、次いで、技術者の装具定置位置を承認するか又は必要に応じて装具16を再位置決めすることができる。
【0032】
更に別の選択肢として、ローカルコンピュータが、治療専門家に歯12上の装具16の位置を自動的に提案することができる。また、これらの提示された装具位置は、所望により、歯列矯正治療原理又は他の既知の標準若しくは指針に基づく。歯上に仮想ブラケットを自動的に定置する例としては、発行された米国特許第7,210,929号(Rabyら)、並びに米国特許出願公開第2006/0024637号(Rabyら)及び同第2007/0238064号(Rabyら)に記載されている。前述のように、治療専門家は、装具16のコンピュータが提示した位置を見直す機会を有し、定置位置を承認するか、又は望むように装具16を再位置決めするかのいずれかを行うことができる。
【0033】
ブロック104に示され、更に図4及び5に図示されるように、ローカルコンピュータが、次いで、仮想的に歯12を係合する止め部材32(図5)を誘導する。このプロセスは、図4に図示するように、上部左第1大臼歯19にわたり延在する第1の概ね楕円形の表面20、上部右第1大臼歯19にわたり延在する第2の概ね楕円形の表面22、及び2つの上部中央切歯11にわたり延在する第3の細長い表面24を画定することにより進められる。第1、第2及び第3の表面20、22、24が、あるいは、所望する場合、概ね正方形、円形、又は不規則形状と想定されてもよい。更に、表面20、22、24が、手動プロセス、自動プロセス、又はそれらの組み合わせを用いて画定することができる。手動プロセスにおいて、各表面20、22、24が、例えば、マウス又は他のポインタ装置を用いて、技術者により描かれてもよい。自動プロセスにおいて、表面20、22、24が、任意の歯の物体を分離し、歯の物体を模型10の咬合平面に映し出して2D表面を画定し、次いで、歯の物体の咬合表面の一部又は全体にわたり延在するように表面を所望により拡大するソフトウェアのサブルーチンにより画定されてもよい。
【0034】
表面20、22、24が、次いで、それらの対応する歯12の咬合表面と整合され、各表面20、22、24がそれぞれの歯12の冠に少なくとも部分的にオーバーラップするまで、歯肉側方向に向かって実質上押し出される。図示するように、表面20、22、24が、下にある歯12とある程度オーバーラップするが、装具16のいずれにもオーバーラップせずに停止する。表面20、表面22、及び表面24の押出しが、3D空間で、それぞれ、第1容量部26、第2容量部28、及び第3容量部30を押しのける。第1、第2及び第3容量部26、28、30が画定されると、模型10が、次いで、それぞれから実質上取り去られ、図5に図示するように、それぞれの後部27、29及び前部31を作製する。後部27、29及び前部31が、したがって、それぞれの下にある歯12の咬合表面輪郭に相補的な表面輪郭を有する。所望により、かつ図示するように、相互に後部27、29及び前部31を連結して、不可欠な止め部材32を形成する概ねU形状の可撓性区分34が更に画定される。可撓性区分34を含むことは、3D空間において、相互に対して有利に区分27、29、31の位置を合わせる。可撓性区分34の特定の形状が、後で説明されるが、完成した移動トレーにおいて特別な利点を更に提供する。
【0035】
次に、図6及び7と共に、ブロック106が、模型10及び止め部材32にわたり延在する外側表面の誘導を図示する。この実施形態において、誘導は、弓の少なくとも一部にわたり延在する誘導線40を画定することにより進展し、模型10及び装着された装具16から離れて位置する。示される例において、誘導線40が、概ね装具16の顔側表面に平行である曲線経路に沿って進み、概ね咬合平面に位置する。しかしながら、弓の咬合又は舌面を越える1つ以上の誘導線40も、画定されてもよい。コンピュータで支援された一実施形態において、誘導線40が、咬合方向から見られるように装具16の顔面の最も縁部を連結する線分をたどり、一定の距離で顔面方向に向かって外側方向に線分をオフセットし、その後、線分に円滑な操作を適用することにより画定される。所望する場合、一定の距離は、所望するトレーの厚さを規定するように使用することができる。ブロック106のプロセスは、それぞれが模型10の舌側、咬合側、及び顔側表面にわたり延在し、概ね垂直関係に各誘導線40と交差することにより、各嵌合弓46が模型10、装着された装具16、及び止め部材32と接触せずに越える、一連の嵌合弓46を画定することにより継続する。この例において、各嵌合弓46が、形状が概ね半円形で、歯群12に対して舌側位置で始まり、歯群12に対して顔側位置で終わる。
【0036】
図7は、嵌合弓46からの外側表面50の誘導を示す。外側表面50が、移動トレーの外面を示し、表面を一組の嵌合弓46に嵌合することにより形成されてもよい。いくつかの実施形態において、外側表面50が、模型10、装具16、及び止め部材32を備えるアセンブリの咬合、舌側、及び顔側を完全にカバーする開口端状シェルである。所望により、表面の円滑な操作が、外側表面50上で実質的に実施される。次いで、ブロック108において、仮想トレー本体が外側表面50を用いて誘導される。図8は、外側表面50により形成される空洞にわたり延在する外側表面50及び平坦な表面を含む複合表面を画定することにより形成される固体仮想トレー本体56を示す。実質上模型10と整合される時、トレー本体56が、歯群12及び装着された装具16の両方を包囲する。
【0037】
次に、ブロック110が、図9に示される仮想トレー前駆体60を作製するように、トレー本体56から装着された装具16と共に模型10の仮想差分を示す。トレー前駆体60が、シェル様構成を有し、装具16の陰型仮想刻印により形成される容器62を更に含む。本明細書で使用されるように、「容器」という用語は、解放可能に装具を維持するのに十分である構成を有する表面を指す。いくつかの実施形態において、容器は、装具の外面に少なくとも部分的に相補的である。好ましくは、トレー前駆体60の各容器62が、そのそれぞれの装具16の少なくとも一部に合致する構成を有し、得られた実際の移動トレーと、実際の装具との間の正確かつ制御された固定が可能となる。実際の移動トレーと、実際の装具との間に堅固な固定が所望される場合、容器62が、所望により、1つ以上の寸法において僅かに縮小され、それぞれの装具16と締まりばめを提供してもよい。実際のトレーが、実際の装具を実際の容器の中に適合応するように僅かに圧縮及び/又は拡大できる柔軟な材料を用いて製作することができるため、これは可能であることに留意されたい。
【0038】
所望により、かつ図示されるように、中央線マーカー52がトレー前駆体60に追加されて、模型10の歯群12の左右区間を分割する中央線の位置を確定する。中央線マーカー52が、歯群12の中央線位置に対応する隆起部(図示)、突出、切り込み、溝、又はあらゆる他の視覚的に主な特徴であってもよい。対応する実際のマーカーが、患者の歯牙構造上にトレーを定置する間、完成した実際の移動トレーを整合するための視覚指標を提供することにより、治療専門家を後で補助することができる。
【0039】
ブロック112に続き、図10に更に図示するように、止め部材32を表すデータのサブセットが、その後、トレー前駆体60を表すデータセットから取り去られ、2つの得られたサブセットが最後に一緒に併合して仮想トレーアセンブリ70を形成する。この工程の完了は、部分的に埋め込まれた止め部材32を有するトレーアセンブリ70をもたらす。止め部材32の一部の咬合表面領域は、咬合方向からトレーアセンブリ70を見た時に露出され、これらは本図、及び続く図11、11a、12及び15において横線領域として表されることに本図から注目される。トレーアセンブリ70が実質上模型10に係合される時、止め部材32の露出された部分が、図5〜6に示す方法で大臼歯19及び中央歯11の咬合表面と正確に合わさる。
【0040】
ブロック114において、完成した仮想移動トレー80が、1つ以上の容器62と交差する歯肉側縁部79を作製するように、トレーアセンブリ70をトリミングして作製される。これは、1つ以上の容器62と交差する仮想切断面を画定し、切断面から歯肉側方向に位置するトレー本体56の一部を実質上除去することにより達成されてもよい。仮想切断面及び得られた歯肉側縁部79が、概ね咬合平面に延在するが、各容器の咬合−歯肉側位置に応じて上下する。図11は、上記切断操作完了後の移動トレー80の歯肉側像を示す。図示するように、歯肉側縁部79は、トレー本体56の各容器62と交差する。
【0041】
図11aは、仮想装具16が所定の位置にある移動トレー80の顔面側像を示す。この像から、移動トレー80は、歯肉側縁部79が歯列弓に沿う装具16の咬合−歯肉側位置に基づいて概ね上下する構成を有することが確認される。いくつかの実施形態において、歯肉側縁部79が、歯列弓に沿う3つ以上の装具16の咬合−歯肉側位置に基づいて概ね上下する。所望により、かつ図示するように、各容器62が、そのそれぞれの容器16の顔面配向面の少なくとも一部にわたり延在する構成を有する。トレー80が実質上模型10に係合する時、トレー本体56は、したがって、模型10の少なくとも一部及び模型10から離れた各容器62の少なくとも一部にわたり延在する。
【0042】
トレー80のこの構成が、得られた実際の移動トレーで実現される数多くの利点を提供する。第1に、トレー係合中、患者の歯群上に得られた実際の移動トレーの移動距離を最小にする。この移動距離を最小にすることは、同様に、固着中に歯群に塗布される接着剤を可塑化する、さもなければそれと干渉する可能性を最小にすることを補助する。この状況は、例えば、一方の接着剤構成要素が装具に塗布され、他の構成要素が歯群に塗布される、二成分(又はA/Bタイプ)化学硬化接着剤を用いた時に生じる場合がある。装具16から歯肉側方向に位置するトレー80の表面積を縮小することにより、得られた実際の移動トレーを咬合方向から患者の歯群上に摺動させる時、接着剤可塑化が歯群側で生じる可能性を減少できる。可塑化が、固着部位での接着剤の量を消費し、これにより固着接着剤の確実度が低下するため、可塑化の程度を低減することは概して望ましい。
【0043】
第2に、上述の方法でトレー80をトリミングすることは、得られた実際の移動トレーと患者の歯肉との間の過度の接触を最小にすることを補助する。実際の移動トレーと歯肉との間の接触は、必要性がなく、適切なトレー配置を妨げる歯肉組織とトレーとの間の不整合のリスクをもたらすため、好ましくは避けられる。更に、歯肉が、患者の口腔での潜在的な水分源となる。水分がこれらの表面に存在する場合、歯肉と実際の移動トレーとの間の接触が、固着部位中への唾液の浸透をもたらし、これもまた、固着の確実度の低下をもたらす。
【0044】
上記ブロック102、104、106、108、110、112、114の工程は、単に、完成した仮想移動トレーを作製するために使用された可能な一工程手順を示すことに留意されたい。上記工程の更なる工程又は置換が、同等の結果を得るために使用されてもよい。更に、記載される工程は、上に示す正確な順序で実行される必要はない。例えば、ブロック104で止め部材32を誘導する工程が、そのように所望される場合、ブロック106の外側表面50を誘導する工程の前又は後のいずれかに実施されてもよい。
【0045】
ブロック116及び図12は、ラピッドプロトタイピング技術を用いて、仮想移動トレー80から実際の移動トレー80’を製作する工程を示す。本明細書で使用されるように、「ラピッドプロトタイピング」とは、コンピュータ支援設計(CAD)又は他のモデリングソフトウェアから仮想設計をとり、それらを一連の薄い仮想的水平断面図に変換し、次いで模型が完成するまで次から次へと物理的空間で各断面図を再構築するプロセスである。例えば、ラピッドプロトタイピング機械は、CAD図面からデータで読み取り、物理的模型を組み立てるために、液体、粉末、又はシート材料の連続層を構築してもよい。一連の断面を自動的に整合し、融合することにより、仮想模型及び実際の模型を、ほぼ同一に一致させることができる。有利に、ラピッドプロトタイピングの層ごとの態様は、ほぼあらゆる形状又は幾何学特性の作製を可能にする。追加の利益として、ラピッドプロトタイピングが、実質的に異なる材料特性を有する2つ以上の相互貫入構成要素を含む物品を製作するための柔軟性も提供する。
【0046】
「ラピッドプロトタイピング」技術の特定の例としては、3次元(3D)印刷法、選択領域レーザ積層法又は粉末焼結造形(SLS)法、電気泳動積層法、ロボキャスティング法、溶融積層造形(FMD)法、紙積層(LOM)法、ステレオリソグラフィ(SLA)法、及びフォトステレオリソグラフィ法などが挙げられるが、これらに限定されない。発行済みの米国特許第5,340,656号、同第5,490,882号、同第5,204,055号、同第5,518,680号、同第5,490,962号、同第5,387,380号、同第5,700,289号、同第5,518,680号、同第4,672,032号に好適なラピッドプロトタイピング技術の例が述べられている。特に好適なラピッドプロトタイピング装置としては、3D Systems(Rock Hill,SC)より販売されるVIPER(商標)SLAシステム、及びObjet Geometries Ltd.(Rehovot,ISRAEL)より販売されるEDEN(商標)500Vプリンターがある。
【0047】
製作されると、得られた実際の移動トレー80’が、1つ以上の装具16’で装着される準備ができる。各装具16’が、図12〜14に示されるアセンブリを作製するように、手動で又は自動的にトレー80’のそのそれぞれの容器62’に定置される。正確に製作されると、トレー80’が、仮想トレー80の正確な実際のレプリカである。図示するように、トレー80’は、実際の止め部材32’(実際の可撓性部34’に沿う)と、実際のトレー本体56’と、実際の中央線マーカー52’とを含む。好ましくは、止め部材32’及びトレー本体56’が、患者の歯群に対して実際の移動トレー80’の正確かつ再現可能な設置を容易にする材料からなる。患者の歯牙構造に対して完全に設置される時、トレー80’と共に止め部材32’が、歯牙構造に対して個別の位置及び向きを取る。このような制御が、所望する位置に実際の装具16’を正確に位置決めするのに非常に有利である。トレー80’が歯肉側方向に付勢され、患者の歯牙構成に対して設置されると、止め部材32’は、トレー80’が止め部材32’の比較的硬い性質により完全に設置されたことを示唆する明確な触感を更に提供する。
【0048】
追加の利益として、止め部材32’が、完成した移動トレー80’の剛性及び弾性を調整するためにも使用されてもよい。所望により、かつ図5及び6に図示するように、可撓性部分34’の横断面が、その舌側−顔側寸法を超える咬合−歯肉側寸法を有するその長手方向軸に対して垂直である平面で考慮した時、形状が方形である。可撓性部分34’のアスペクト比は、トレー80’が特定の方向に沿って優先的に剛性化されるため、有利である。この実施例において、可撓性部分34’(又は咬合−歯肉側方向)の長い断面寸法に沿う移動トレー80’の剛性が、歯群に係合される時の重力によるトレー80’の弛みを最小にするように、著しく増大される。一方、剛性が、可撓性部分34’(又は舌側−顔側方向)の短い断面寸法に沿って非常に低い程度に増大し、これによってトレーの横断のたわみを容易にする。横断方向における容易なたわみが、口の移動トレー80’の係合及び脱離の両方を容易にする利点を提供する。
【0049】
いくつかの実施形態において、トレー本体56’が、特定の剛性の第1ラピッドプロトタイピング材料から形成される。同様に、剛性が、ショアA硬度、ショアD硬度、20伸び率での引張応力、及び50%伸び率での引張応力を含む、複数の方法を用いて特徴化されてもよい。好ましくは、トレー本体56’が、20%伸び率(ASTM D 412に従って)で、約0.4×10〜約6.5×10パスカルの範囲、より好ましくは約0.8×10〜約3.3×10パスカルの範囲で、最も好ましくは約1.1×10〜1.4×10パスカルの範囲の引張応力を有し、50%伸び率で、約0.8×10〜約12.5×10パスカルの範囲で、より好ましくは約1.6×10〜約6.2×10パスカルの範囲で、最も好ましくは約2.8×10〜約3.4×10パスカルの範囲の引張応力を有する。トレー本体56’の好適な材料の例が、20%伸び率で、約1.3×10パスカルの引張応力、50%伸び率で約3.1×10パスカルの引張応力を有する。
【0050】
所望により、止め部材32’が、上記トレー本体56’材料の特定の剛性を超える剛性を有する第2のラピッドプロトタイピング材料から形成される。好ましくは、止め部材32’が、約72を超えるショアA硬度、より好ましくは約90を超えるショアA硬度、更により好ましくは約60を超えるショアD硬度、最も好ましくは約75を超えるショアD硬度を有する。止め部材32’の好適な材料が、例えば、72ショアA硬度の硬度を有してもよい。
【0051】
所望により、止め部材32’及びトレー本体56’を作製するために使用される材料が、トレー80’が固着中、患者の歯群に係合される時に、装具16’が見ることができる可視光を透過する。光を透過する材料の使用は、トレーが完全に設置されたかの判断を補助するだけでなく、光硬化接着剤(使用される場合)が、化学線放射を向けることによりトレー本体56’を通して硬化されることを可能にする。
【0052】
図14は、インダイレクトボンディング手順における装具装着移動トレー80’の代表的な使用法を図示する。明確にするために、本明細書で説明される工程は、それぞれの歯12’に単一装具16’を固着することを対象とする。しかしながら、この方法は、複数の歯12’に全組の装具16’を固着するように容易に拡大されてもよい。第1に、装具16’を受容する患者の歯12’が、必要に応じ、頬牽引子、舌保護具、巻き綿、ドライアングル(dry angle)及び/又は他の物品を用いて分離される。代表的な歯12’が、その後、エアシリンジからの加圧空気を用いて完全に乾燥される。次に、エッチング液(3M Unitek Corporation製のTRANSBOND XT(商標)のエッチングゲル等)を、エッチング液が隣接歯間の接点に流入したり、皮膚若しくは周囲歯肉13’に係合しないように注意しながら、装具16’に覆われるべき通常領域にある歯群12’上に軽く塗布する。
【0053】
エッチング液が選択された歯表面上に約15〜30秒間留まった後、溶液が、15秒間水流によって歯12’から洗い流される。次に、患者の歯を、エアシリンジからの加圧空気を適用することによって乾燥させ(例えば、30秒間)、余分な水を吸引によって除去する。また、唾液がエッチングされたエナメル質表面と確実に接触しないように注意すべきである。巻き綿又は他の吸収装置を必要に応じて交換し、やはり、確実に唾液がエッチングされたエナメル質に接触しないようにする。次に、歯群12’の完全な乾燥を確実にするためにエアシリンジからの空気を、歯群12’に再び吹きつけてもよい。所望により、歯群12’が、例えば、3M Unitek Corporation(Monrovia,CA)製のTRANSBOND(商標)Moisture Insensitive Primerを使用して下塗りされてもよい。
【0054】
次に、固着接着剤が装具16’の固着パッド及び/又は選択された患者の歯12’の領域に塗布される。所望により、かつ図示するように、固着接着剤が、二成分接着剤である。二成分接着剤としては、例えば、両方とも3M Unitek Corporation製のSONDHI RAPID SET(商標)樹脂A等の第1構成成分200及びSONDHI RAPID SET(商標)樹脂B等の第2構成成分202が挙げられる。第1構成成分200が、装具16’の基部17’の歯に面する表面に塗布され、第2構成成分202が、対応する装具16’を受容するべき患者の歯12’の領域に塗布される。
【0055】
第1構成成分200が固着パッドに塗布され、第2構成成分202が対応する患者の歯12’の領域に塗布された後、トレー80’の配置準備が整う。最初に、中央線マーカー52’が、2つの中央歯12’間(患者の中央線)の共有境界線と視覚的に位置合わせされるようにトレー80’の向きが決められる。次に、トレー80’が、歯12’と噛合係合するように歯肉側方向に付勢される。トレー本体56’の内側表面及び咬合止め部材32’が下にある歯12’の形状に共に合致するため、装具16’が、仮想模型10上の仮想装具16の前の位置に対応する正確な位置で歯12’上に同時に設置される。
【0056】
トレー80’を上述のような好ましい材料を用いて構築するとき、トレー80’の歯の内側表面が患者の歯列弓の歯12’に係合すると、トレー80’が所定の位置に「はめ込まれる」ことが確認される。トレー80’は、接着剤が外圧の印加なしに硬化するように、歯12’に対して装具16’を押しつけるのに十分に硬くてもよい。しかしながら、1つの選択肢として、トレー80’の咬合側及び顔面側表面に対して、固着接着剤が十分に固化するまで、外圧を印加してもよい。例えば、装具16’を患者の歯群12’の顔面側表面にしっかり押し付けるため、指圧を使用してもよい。
【0057】
他の好適な二成分化学硬化接着剤の例としては、共に3M Unitek Corporation製のUNITE(商標)接着剤及びCONCISE(商標)接着剤が挙げられる。代替として、樹脂改質ガラスアイオノマーセメントを使用してもよい。更に別の選択肢として、全て3M Unitek Corporation製のTRANSBOND XT(商標)接着剤又はTRANSBOND LR(商標)接着剤等の光硬化性接着剤が使用されてもよい。他の好適な光硬化性接着剤材料の例が、米国特許第7,137,812号(Clearyら)、同第7,449,499号(Craigら)、及び同第7,452,924号(Aasenら)、並びに係属米国特許出願第2005/0175966号(Falsafiら)に記載されている。移動トレー80’はまた、米国特許第7,137,812号(Clearyら)に記載のように、製造業者により接着剤で予めコーティングされた装具とともにパッケージ化されてもよい。下塗り剤を患者の歯12’に塗布するための代替法が、米国特許第7,168,950号(Cinader,Jr.ら)に記載されている。一旦固着接着剤が固化すれば、固着トレー80’を患者の歯列弓から注意深く取り外す。
【0058】
いくつかの実施形態において、容器62’が、装具16’から移動トレー80’の咬合の取り外しを容易にするように、略歯肉側方向に開口端状である。容器が歯肉側方向に完全に開口端状である構成を適用することにより、トレーが咬合方向に付勢される時、トレー本体56’と装具16’との間の干渉は最小である。しかしながら、図12〜14に示す実施形態において、仮想容器62’が、部分的に開口端状である。部分的に開口端状の容器16’が、トレー80’に装具16’をしっかり維持する更なる利点を用いて、歯肉側縁部79’を通して装具16’の歯肉側部分の突出を可能にする。より具体的には、トレー本体56’が、歯肉側縁部79’に沿って延在する薄い脆弱なウェブ81’を含み、容器62’から歯肉側方向に位置する。脆弱なウェブ81’が、歯肉側方向にある程度の外側方向に伸長させるのに十分に柔軟であり、これにより、装具16’を舌側方向から容器62’に装着することを可能にする。好ましくは、脆弱ウェブ81’が、トレー80’に対して正確な位置に装具16’を維持するために十分な強度と十分な剛性の両方を有する。
【0059】
図13は、移動トレー80’の代表的な装具16’を維持する脆弱ウェブ81’の拡大図を示す。装具16’が、トレー80’の歯肉側縁部79’を通して部分的に突出する2つの歯肉側タイウイング82’と、基部17’とを含む。この拡大図において、脆弱ウェブ81’が、突出した歯肉側タイウイング82’と基部17’との間に延在するトレー本体56’の一部により形成される。ウェブ81’が、所望により、点線で示される弱い線83’を含み、各タイウイング82’と基部17’との間、及び2つの突出したタイウイング82’の間に延在する。弱い線83’は、装具16’が十分な大きさの力で歯肉側方向に向かって付勢される時に、ウェブ81’が破壊される可能性がある位置を示す。所望により、弱い線83’が、これらの領域に応力を集中させ、ウェブ81’の破壊を容易にするように作用するノッチ、穿孔、くぼみ、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0060】
一旦移動トレー80’が患者の口内に定置され、装具16’が患者の歯牙構造に固着されると、略咬合方向にトレー80’を付勢させ、容器62’の歯肉側の少なくとも一部にわたり延在するトレー80’の一部を破壊することにより、トレー80’が歯12’から取り外すことができる。好ましくは、この破壊が、ウェブ81’上の1つ以上の弱い線83’に沿って生じる。ウェブ81’の破壊が、概ね咬合方向にトレー80’を摺動することにより、現在固着されている装具16’から後のトレー80’取り外しを更に容易にする。弱い線83’が例示を示し、ウェブ81’がこれらの線に沿って破壊される必要がないことに留意されたい。好ましくは、ウェブ81’の破壊された部分は、トレー80’の部片が患者の口腔に落下するのを防ぐためにトレー本体56’にまだ連結されたままである。
【0061】
歯肉側縁部79’に沿う部分的又は完全な開口端状の容器62’を使用することには、特別な利点がある。部分的又は完全な開口端状の容器62’が、トレー80’の咬合取り外しを可能にし、これは治療専門家にとって簡便であるだけでなく、取り外し中、張力(すなわち、唇側方向への力)を接着剤へ向けることを避けるのを補助する。これは、歯列矯正接着剤の引張り強度が、硬化直後多少弱いため利点であり、したがって、張力が装具16’を歯12’から偶発的に剥離させることができる。比較すると、歯列矯正接着剤の剪断力が、比較的強い。トレー80’の咬合取り外しが、従来の移動トレーの顔面側取り外しと比較して、患者にとってはより快適である。
【0062】
図15は、代替的な移動トレーの実施形態を図示する。移動トレー90が、歯模型10の歯群12と合致するトレー本体91と、止め部材93とを含むしかしながら、トレー90が、複数の装具16”のそれぞれを包囲する領域95内に閉じ込められる第3のラピッドプロトタイピング材料を更に含む。領域95の第3の材料が、止め部材32又はトレー本体56のいずれかの剛性未満の剛性を有する。好ましくは、領域95の材料が、20%伸び率(ASTM D 412に従って)で、約31,000〜約496,000パスカルの範囲、より好ましくは約62,000〜約248,000パスカルの範囲、最も好ましくは約112,000〜約136,000パスカルの範囲である引張応力を有し、50%伸び率で、約91,000〜約1,460,000パスカルの範囲、より好ましくは約183,000〜約730,000パスカルの範囲、最も好ましくは約329,000〜約402,000パスカルの範囲である引張応力を有する。領域95における好適な材料の例が、20%伸び率で、約124,000パスカルの引張応力を有し、50%伸び率で約365,000パスカルの引張応力を有する。
【0063】
この構成が、領域95の軟質材料が固着後、移動トレー90から実際の装具94を更に容易に取り外せるため、有利である。領域95の材料の可撓性は、移動トレー90が固着後、患者の歯牙構成から脱離される時に患者の歯群から装具94を不注意に剥離する機会を軽減する。仮想世界でトレー90を表示かつ構成し、実際のトレー90を作製し、利点を関連させる方法が、トレー80’で既に記載されるものと類似するため、ここで繰り返さないものとする。
【0064】
最後に、上記の詳細な説明において、唇側装具を歯の前側に固着するためにトレー80’、90が向けられる。明示的に示されないが、トレー80’、90、及びそれらの作製方法が、舌側装具のインダイレクトボンディングに容易に適用できることを理解されたい。
【実施例】
【0065】
代表的な移動トレーが、患者のスキャンされた3D仮想模型並びにSTL形式で提供される上部5×5セットのVICTORY SERIES(商標)歯列矯正ブラケット(3M Unitek,Monrovia,CA)の3D固体模型を用いて作製された。患者の弓の仮想模型が、患者の上部歯列弓の歯列矯正石膏印象のデジタルスキャンを用いて得られた。次に、移動トレーの仮想模型を構築するためにTHREE−MATICソフトウェア(Materialise Group in Leuven,Belgium)を使用された。5×5セットの上部歯列矯正ブラケットを模型に実質上固着された。3節一体式止め部材が、左第1大臼歯、右第1大臼歯及び左右中央歯の咬合輪郭を噛合に係合するように誘導された。単一誘導線が、オペレータにより仮想ブラケットの顔面側表面に沿って手動でトレースされ、この誘導線が、後に、模型歯及び装具から唇側方向に3.5ミリメートルオフセットされた滑らかな外側表面を誘導するように使用された。押出成形法を用いて仮想外側表面が充填されトレー本体が形成され、ブーレン削除を実施することにより装具を備えた模型とトレー本体との間でトレー前駆体を形成された。一体式止め部材が、次いで、トレー前駆体と合併され、切断面がブラケット容器と交差するトレーの歯肉側縁部を画定するために使用された。
【0066】
実際の移動トレーが、その後、EDEN 500V(商標)3次元プリントシステム(Objet Geometries,Ltd.,Rehovot,ISRAEL)を用いて仮想移動トレー模型から形成された。トレー本体には軟質の柔軟な「Tango Plus」FULLCURE(商標)プリント樹脂が使用されたが、比較的硬い「Fullcure720」樹脂(これもObjet Geometries,Ltd.製)が咬合止め部材に使用された。製作後、水で移動トレーを洗浄して支持材料を溶解した後、実際の歯列矯正ブラケットを装着した。完成した移動トレーが問題なく石膏レプリカ模型上に相補的に係合することを確認した。
【0067】
上述の特許及び特許出願の全ては、本明細書において本開示に明示的に援用される。上記の発明は、明瞭さ及び理解を目的として図及び実施例によってある程度詳細に述べたものである。しかしながら、様々な代替例、改変例、及び均等物の使用が可能であり、上記の説明は発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。また、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列矯正装具を固着するための移動トレーを作製する方法であって、
患者の歯牙構造の仮想模型を得る工程と、
前記模型上に仮想歯列矯正装具について所望する位置を決定する工程と、
前記所望する位置に、前記装具の少なくとも一部に合致する構成を有する仮想容器を提供する工程と、
前記模型の少なくとも一部及び前記模型から離れた前記容器の少なくとも一部にわたって延在する仮想トレー本体を誘導する工程であって、ここにおいて前記仮想トレー本体の誘導動作が、前記仮想容器と交差する前記トレー本体の歯肉側縁部を画定する動作を含む、誘導する工程と、
ラピッドプロトタイピングによって前記移動トレーを形成する工程であって、ここにおいて前記移動トレーが、前記仮想トレー本体及び仮想容器にそれぞれ対応する、実際のトレー本体及び実際の容器を備える、形成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記トレー本体の咬合縁を画定する動作が、前記容器と交差する切断面を作製する工程と、前記切断面から前記歯肉側方向に位置する前記トレー本体の一部を実質上取り除く工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トレー本体に連結し、前記仮想模型の少なくとも一部に合致する仮想止め部材を供給する工程を更に含み、ここにおいて前記移動トレーが、前記仮想止め部材に対応する実際の止め部材を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記仮想止め部材が、大臼歯の一部に合致する後部と、前歯の一部に合致する前部とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記仮想止め部材が、前記後部と前部とを相互に連結する可撓部を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記可撓部が、その長手方向軸に対して垂直である平面内に概ね方形の横断面を有し、かつ前記横断面が、その顔−舌側寸法を超える咬合−歯肉側寸法を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記実際のトレー本体が、第1のショア硬度を有し、前記実際の止め部材が、前記第1のショア硬度を超える第2のショア硬度を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記実際の容器が、前記第1のショア硬度未満の第3のショア硬度を有する材料の領域に隣接する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記実際の容器に前記歯列矯正装具を定置する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記仮想模型が、前記患者の歯牙構造を直接スキャンする工程によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記仮想模型が、前記患者の歯牙構造の陽型又は陰型のいずれかの複製をスキャンする工程によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記仮想容器が、前記歯列矯正装具からの前記移動トレーの咬合の取り外しを容易にするように、概ね歯肉側方向に開口端状である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記仮想トレー本体が、前記仮想容器の前記歯肉側の少なくとも一部にわたって延在する仮想脆弱ウェブを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記脆弱ウェブが、脆弱線を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記歯肉側縁部が、歯列弓に沿う3つ以上の装具の咬合−歯肉側位置に基づき概して上下する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記歯列矯正装具が、カスタム基部を含み、前記カスタム基部が、前記装具が所望の位置にある時に、前記仮想模型に合致する構成を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記仮想容器が前記仮想装具に対して締まりばめを生じる構成を有するように、少なくとも1つの寸法で前記仮想容器のサイズを縮小する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
歯列矯正装具を患者の歯牙構造に固着する方法であって、
患者の歯牙構造の仮想模型を得る工程と、
前記模型上に仮想歯列矯正装具について所望する位置を決定する工程と、
前記所望する位置に仮想容器を提供する工程であって、ここにおいて前記仮想容器が、前記装具の少なくとも一部に合致する構成を有する、提供する工程と、
前記模型の少なくとも一部及び前記模型から離れた前記容器の少なくとも一部にわたって延在する仮想トレー本体を誘導する工程であって、ここにおいて前記仮想トレー本体の誘導動作が、前記仮想容器と交差する前記トレー本体の歯肉側縁部を画定する動作を含む、誘導する工程と、
ラピッドプロトタイピングによって前記移動トレーを形成する工程であって、ここにおいて前記移動トレーが、前記仮想トレー本体及び仮想容器にそれぞれ対応する、実際のトレー本体及び実際の容器を備える、形成する工程と、
前記装具を前記実際の容器に定置する工程と、
接着剤を前記歯列矯正装具の表面に塗布する工程と、
前記移動トレーを前記患者の歯牙構造上に定置する工程と、
前記接着剤を硬化する工程と、を含む、方法。
【請求項19】
略咬合方向に、前記移動トレーを付勢する工程によって、前記装具から前記移動トレーを取り外す工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記実際のトレー本体が、前記仮想容器の歯肉側の少なくとも一部にわたって延在する脆弱ウェブを含み、更に、前記装具から前記移動トレーを取り外す動作が、前記脆弱ウェブを破壊する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
歯列矯正装具の固着に使用するための移動トレーであって、
歯の表面に固着するための基部を有する歯列矯正装具と、
前記基部から外方に向く前記装具の一部に合致する構成を有する、前記歯列矯正装具用の容器と、
前記模型の少なくとも一部及び前記模型から離れた前記容器の少なくとも一部にわたって延在するトレー本体であって、ここにおいて前記トレー本体の前記歯肉側縁部が、前記容器と交差し、更にここにおいて、前記トレー本体がラピッドプロトタイピング材料を含む、トレー本体と、を含む、移動トレー。
【請求項22】
歯列矯正装具を患者の歯牙構造に固着する方法であって、
容器と、前記容器に受容される歯列矯正装具とを有する歯列矯正移動トレーを提供する工程と、
前記移動トレーを前記患者の歯牙構造に定置する工程と、
前記容器を接着剤で前記患者の歯牙構造に固着する工程と、
概ね咬合方向に、前記移動トレーを付勢する工程によって、前記装具から前記移動トレーを取り外す工程であって、前記移動トレーを取り外す動作が、前記容器の歯肉側の少なくとも一部にわたって延在する前記トレーの一部を破壊する工程を含む、取り外す工程と、を含む、方法。
【請求項23】
前記移動トレーが、脆弱線に沿って破壊される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記容器の少なくとも一部が、前記移動トレーを前記患者の歯牙構造に定置する工程の時に、前記移動トレーの前記歯肉側縁部を通って突出する、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図11a】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−525848(P2011−525848A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516441(P2011−516441)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/047430
【国際公開番号】WO2009/158231
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】