説明

歯牙観察装置、歯牙観察方法および歯牙観察プログラム

【課題】歯牙を診断に適正な方向から撮像して歯牙の正確な診断を支援する。
【解決手段】歯牙に対向して配置され、隣り合う2つの歯牙を撮像する撮像部と、該撮像部によって撮像された画像内における2つの歯牙の重なり量を検出する重なり量検出部41〜44と、該重なり量検出部41〜44によって検出された重なり量に基づいて、撮像部による歯牙の撮像方向が適正であるか否かを判定する撮像方向判定部45とを備える歯牙観察装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙観察装置、歯牙観察方法および歯牙観察プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、近赤外光によって撮像された歯牙の画像からう蝕を診断する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−296249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯牙の隣接面に形成された早期のう蝕を画像から正確に診断するためには、隣接面が歯列に対して垂直な方向から撮像されていなければならない。すなわち、特許文献1の装置の場合、歯列方向に対して斜めから歯牙が撮像されていても、その画像の撮像方向が不適正であることが観察者に認識されず、観察者がう蝕を正確に診断できない可能性があるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、歯牙を診断に適正な方向から撮像して歯牙の正確な診断を支援することができる歯牙観察装置、歯牙観察方法および歯牙観察プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、歯牙に対向して配置され、隣り合う2つの歯牙を撮像する撮像部と、該撮像部によって撮像された前記歯牙の画像内における前記2つの歯牙の重なり量を検出する重なり量検出部と、該重なり量検出部によって検出された重なり量に基づいて、前記撮像部による前記歯牙の撮像方向が適正であるか否かを判定する撮像方向判定部とを備える歯牙観察装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、撮像部によって撮像された2つの歯牙の画像から、これらの歯牙の隣接面を観察して診断することができる。
この場合に、重なり量検出部によって検出される歯牙の重なり量は、撮像方向が歯列方向に対して垂直なときと斜めのときとで変化する。この歯牙の重なり量に基づいて、撮像方向判定部は歯牙同士の撮像方向が適正であるか否かを判定する。これにより、観察者に対して撮像方向が適正である画像を提示して観察者による歯牙の正確な診断を支援することができる。
【0008】
上記発明においては、前記重なり量検出部が、前記重なり量として、前記2つの歯牙の輪郭線の共通外接線と、前記2つの歯牙の輪郭線の接点との距離の逆数、または、前記2つの歯牙の輪郭線の2つの接点のうち一方と、前記2つの接点間を通り前記2つの歯牙のうち一方の輪郭線の外接線との距離の逆数、または、前記2つの歯牙の輪郭線の2つの接点間の距離を検出することとしてもよい。
このようにすることで、2つの歯牙の重なり量を、歯列方向に対する撮像方向に応じて変化する距離から評価することができる。また、これらの距離は、歯列に対して横方向から歯牙を観察する場合に撮像方向の変化に伴って十分に大きく変化するので、撮像方向が適正であるか否かを高精度に判定することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記撮像方向判定部による判定結果を観察者に対して報知する報知部を備えることとしてもよい。
このようにすることで、観察者は、報知部による報知によって画像の撮像方向が適正であるか否かを認識することができる。また、観察者自身が、報知部によって報知される判定結果に基づいて、撮像部による撮像方向を適正に調節することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記撮像部を、前記2つの歯牙の歯列方向と撮像方向とのなす角度を変更する方向に移動させる駆動部と、前記撮像方向判定部による判定結果に基づいて前記駆動部を駆動させる制御部とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、撮像部の撮像方向が不適正のときは、制御部が駆動部を駆動させて撮像部の撮像方向を調節することにより、撮像方向が適正に調節されるので、観察者による撮像方向の調節を不要とすることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記制御部が、前記重なり量検出部によって検出された重なり量に比例する移動量で前記撮像部を移動させるように前記駆動部を制御することとしてもよい。
このようにすることで、撮像部の撮像方向を迅速にかつより正確に調節することができる。
【0012】
また、本発明は、隣接する2つの歯牙の画像から該2つの歯牙の重なり量を検出するステップと、検出された重なり量に基づいて、前記画像の撮像方向が適正であるか否かを判定するステップとを含む歯牙観察方法を提供する。
また、本発明は、隣接する2つの歯牙の画像から該2つの歯牙の重なり量を検出する処理と、検出された重なり量に基づいて、前記画像の撮像方向が適正であるか否かを判定する処理とをコンピュータに実行させるための歯牙観察プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、歯牙を診断に適正な方向から撮像して歯牙の正確な診断を支援することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る歯牙観察装置の全体構成図である。
【図2】図1の歯牙観察装置が備える画像処理部の機能を示すブロック図である。
【図3】歯列方向に対して(a)略垂直な方向および(b)斜め方向からそれぞれ撮像された歯牙の画像に対する、図2の画像処理部による処理を説明する図である。
【図4】歯列方向に対して(a)略垂直な方向および(b)斜め方向から歯牙が撮像されたときの表示部の表示を示す図である。
【図5】図1の歯牙観察装置による歯牙観察方法を示すフローチャートである。
【図6】図1の歯牙観察装置の変形例における画像処理部の機能を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る歯牙観察装置の全体構成図である。
【図8】図7の歯牙観察装置が備える画像処理部の機能を示すブロック図である。
【図9】図7の歯牙観察装置による歯牙観察方法を示すフローチャートである。
【図10】図7の歯牙観察装置による歯牙観察方法の変形例を示すフローチャートである。
【図11】第1および第2の実施形態に係る歯牙観察装置が備える画像処理部による処理の変形例を説明する図である。
【図12】第1および第2の実施形態に係る歯牙観察装置が備える画像処理部による処理の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第1の実施形態に係る歯牙観察装置1および歯牙観察方法について図1〜図6を参照して説明する。
本実施形態に係る歯牙観察装置1は、図1に示されるように、歯牙Aに対して照明光Lを照射する光源2と、歯牙Aを撮像する撮像部3と、該撮像部3によって撮像された歯牙Aの画像を処理する画像処理部4および表示する表示部5とを備えている。
【0016】
光源2は、照明光Lである近赤外光を、歯牙Aに対して該歯牙Aの裏側から照射する。歯牙Aのエナメル層は、近赤外光を高い透過率で透過させる。
符号6aは、光源2からの照明光Lを拡散するレンズ、符号6bは、照明光Lを撮像部3の撮像面3aに結像するレンズである。
【0017】
撮像部3は、光源2に対向し、該光源2との間に歯牙Aを挟む空間をあけて設けられている。撮像部3は、歯牙Aを透過してきた照明光Lを検出して撮像し、撮像した歯牙Aの画像Gを画像処理部4に出力する。撮像部3および光源2は、図示しない筐体内に収容されており、観察者が筐体を操作することにより、撮像部3による視野および撮像方向が移動させられる。ここで、撮像部3は、隣接する2つの歯牙Aを、これらの歯牙Aの隣接面を中心に撮像するように、観察者によって操作される。
【0018】
図2は、画像処理部4の機能を展開したブロック図である。
画像処理部4は、図2に示されるよう、撮像部3から入力された画像G内から隣接する2つの歯牙Aの輪郭線Oを抽出する輪郭抽出部(重なり量検出部)41と、抽出した2つの輪郭線Oの共通外接線を基準線Qとして画像G上に設定する基準線設定部(重なり量検出部)42と、2つの輪郭線Oが接する接点を基準点Pとして抽出する基準点設定部(重なり量検出部)43と、基準線Qと基準点Pとの距離dを算出する距離算出部(重なり量検出部)44と、算出された距離dと基準値とを比較することにより撮像方向が適正であるか否かを判定する撮像方向判定部45と、該撮像方向判定部45による判定結果を示す判定結果表示H(H1,H2)を表示部5に出力する表示出力部46とを備えている。
【0019】
輪郭抽出部41は、例えば、画像G内の隣接する画素との輝度値の差分が所定値以上である画素群を、歯牙Aの輪郭線Oとして抽出する。
【0020】
基準線設定部42は、図3(a),(b)に示されるように、歯牙Aの切縁側において2つの輪郭線Oに共通して外接する共通外接線を基準線Qとする。画像G内に歯牙Aが高さ方向にわたって全体が表示されている場合は、共通外接線が2つ存在する。このような場合は、観察対象である歯牙Aが上顎と下顎のいずれの歯牙であるかが予め設定されることにより、2つの共通外接線のうち、画像G内の座標に基づいて一方が基準線Qとして設定される。
【0021】
基準点設定部43は、輪郭抽出部41によって抽出された2つの輪郭線Oのうち一方の輪郭線O上を当該輪郭線Oの両端から中央に向かって走査し、他方の輪郭線Oと接する点を接点として抽出する。このときに、図3(a)に示されるように、2つの歯牙Aの隣接面が、歯列方向に対して略垂直な方向から撮像されている場合は、接点が1つ存在する。このとき、基準点設定部43は、抽出された接点を基準点Pとして画像G上に設定する。一方、図3(b)に示されるように、2つの歯牙Aの隣接面が、歯列方向に対して斜め方向から撮像されている場合は、画像G内において2つの歯牙A同士が重なり、接点Pが2つ存在する。このとき、基準点設定部43は、2つの接点のうち基準線Qに近い方を基準点Pとして画像G上に設定する。
【0022】
距離算出部44は、画像G上において、基準線設定部42によって設定された基準線Qと、基準点設定部43によって設定された基準点Pとの距離dを算出する。ここで、図3(b)に示される2つの歯牙Aが重なっている状態においては、図3(a)に示される2つの歯牙Aが重なっていない状態に比べて、距離dが小さくなる。すなわち、距離算出部44によって算出される距離dは、画像G内における2つの歯牙Aの重なり量と反比例する値であり、距離dの逆数として2つの歯牙Aの重なり量が検出されることとなる。
【0023】
撮像方向判定部45は、距離算出部44によって算出された距離dを、基準値と比較する。そして、撮像方向判定部45は、距離dが基準値以上の場合、撮像部3による撮像方向が適正であると判定し、距離dが基準値より小さい場合は、撮像部3による撮像方向が不適正であると判定する。撮像方向判定部45は、判定結果を示す信号を表示出力部46に出力する。
【0024】
ここで、基準値は、観察対象である歯牙Aの高さ寸法または幅寸法の所定の割合、例えば、3割として定義される値である。基準値は、診断用の歯牙Aの画像Gの取得に先立って、歯牙A全体を撮像することにより算出されることとしてもよい。
【0025】
表示出力部46は、撮像部3から入力された画像Gを表示部5に出力する。また、表示出力部46は、撮像方向判定部45から入力された信号に基づいて、撮像方向判定部45による判定結果を示す判定結果表示H1,H2のうち一方を表示部5に出力し、該表示部5の表示画面の一部に表示させる。
【0026】
具体的には、表示出力部46は、判定結果が適正のときは、図4(a)に示されるように、緑色の背景に「OK」の文字列が表示された判定結果表示H1を出力する。一方、表示出力部46は、判定結果が不適正の場合は、図4(b)に示されるように、赤色の背景に「NG」の文字列が表示された判定結果表示H2を出力する。
【0027】
次に、このように構成された歯牙観察装置1による歯牙観察方法について図5を参照して説明する。
本実施形態に係る歯牙観察装置1は、光源2から照明光Lを歯牙Aに照射して歯牙Aの画像Gを取得し(ステップS1)、取得した画像Gから2つの歯牙Aの重なり量を検出する。すなわち、画像G内から2つの歯牙の輪郭線Oを抽出し(ステップS2)、抽出した2つの輪郭線に基づいて基準線Qと基準点Pとを画像G上に設定し(ステップS3,S4)、基準点Pと基準線Qとの距離dを算出する(ステップS5)。
【0028】
次に、歯牙観察装置1は、算出した距離dを基準値と比較することにより画像Gの撮像方向が適正であるか否かを判定し(ステップS6)、判定結果表示H1,H2のいずれかを撮像部3によって撮像した生の画像Gとともに表示部5に出力する(ステップS7,S8)。歯牙観察装置1は、以上のステップS1〜S8の処理を繰り返し、撮像方向判定部45による判定が適正と不適正との間で切り替わる度に、表示部5に出力する判定結果表示H1,H2を切り替える。
【0029】
このように、本実施形態によれば、隣接面が、該隣接面の診断に適正な方向である、歯列方向に対して略垂直な方向から撮像されているか否かが判定され、その判断結果が判定結果表示H1,H2によって観察者に伝達される。これにより、観察者は、現在表示部5に表示されている画像Gが診断に適正なものであるか否かを認識することができ、観察者による画像Gを用いた歯牙Aの正確な診断を支援することができるという利点がある。
【0030】
また、画像G内の観察対象である歯牙Aの輪郭線Oを利用して撮像方向を判定するので、口腔内には撮像方向を測定するための構成を別途配置する必要がない。したがって、歯列のどの位置の隣接面であっても、また、複数の隣接面であっても、簡便に観察して診断することができるという利点がある。さらに、基準点Pと基準線Qとの距離dは、歯列方向と撮像方向とがなす角度が変化したときの変化量が十分に大きい。したがって、距離dから適正な撮像方向を高精度に判定することができるという利点がある。
【0031】
なお、本実施形態においては、報知部として、判定結果表示H1,H2を表示する表示部5を採用したが、報知部の構成はこれに限定されるものではない。例えば、報知部として筐体に発光素子を備え、該発光素子の点灯・消灯によって判定結果を報知してもよい。
【0032】
また、本実施形態においては、撮像方向判定部45が、基準値として、観察対象である歯牙Aの寸法に基づいて決定される値を用いることとした。これに代えて、図6に示されるように、基準値のデータベースが記憶された記憶部47と、歯牙情報および患者情報を入力する入力部7とを備え、撮像方向判定部45が、入力部7によって入力された情報に基づいて記憶部47に記憶されたデータベースから基準値を読み出すこととしてもよい。
【0033】
データベースは、患者情報および歯牙情報と基準値とが対応付けられている。患者情報は、例えば、部族、性別、年齢、身長、体重などの患者の身体的特徴を示す情報である。歯牙情報は、歯牙の種類である前歯、犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯および第三大臼歯、ならびに、上顎および下顎を示す情報である。
【0034】
入力部7は、マウスまたはキーボード等の任意の入力装置である。観察者は、被検者である患者が該当する患者情報と、観察対象である歯牙Aが該当する歯牙情報とを、入力部7によって入力する。入力部7は、観察者による操作によって入力された患者情報および歯牙情報を、撮像方向判定部45に出力する。撮像方向判定部45は、入力された患者情報および歯牙情報と対応付けてデータベースに記憶されている基準値を記憶部47から読み出して撮像方向の判定に用いる。
【0035】
また、入力部7を備える代わりに、各種類の歯牙の画像を参照画像として記憶する参照画像記憶部(図示略)を備え、撮像方向判定部45が、撮像部3によって撮像された画像Gを参照画像と照合することにより観察対象である歯牙Aの種類を識別し、識別された歯牙Aの種類と対応付けられている基準値をデータベースから読み出すこととしてもよい。
また、記憶部47に代えて、データベースが記憶された、画像処理部4とは別体の記憶装置を備えることとしてもよい。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態に係る歯牙観察装置1について、図7〜図10を参照して説明する。
なお、本実施形態においては、上述した第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成について主に説明する。
本実施形態に係る歯牙観察装置1は、図7に示されるように、撮像部3を所定の軌道に沿って移動させる駆動部8と、撮像方向判定部45の判定結果に基づいて駆動部8を制御する制御部9とを備えている点において、第1の実施形態に係る歯牙観察装置1と主に異なっている。図8は、本実施形態に係る画像処理部4の機能を展開したブロック図である。
【0037】
駆動部8は、撮像部3を、該撮像部3の視野の中心を中心とする略円弧状の軌跡に沿って視野の左右方向に移動させる。これにより、撮像部3は、撮像している視野を移動させることなく、視野の撮像方向が歯列方向に対して移動させられることとなる。
制御部9は、撮像方向判定部45から入力された判定結果が適正である場合には、駆動部8を停止状態とする。一方、制御部9は、撮像方向判定部45から入力された判定結果が不適正である場合には、撮像部3の移動を指令する信号を駆動部8に出力する。このときに、制御部9は、距離算出部44によって順次算出される距離dの情報を受け取り、距離dが大きくなる方向に撮像部3を移動させる。
【0038】
次に、このように構成された歯牙観察装置1による歯牙観察方法について図9を参照して説明する。
本実施形態に係る歯牙観察装置1は、第1の実施形態に係る歯牙観察装置1と同様に、ステップS1〜S6を行う。次に、歯牙観察装置1は、画像Gの撮像方向が適正であると判定した場合には(ステップS6)そのまま画像の取得を続ける(ステップS1)。一方、歯牙観察装置1は、画像Gの撮像方向が不適正であると判定した場合には(ステップS6)撮像部3を移動させる(ステップS9)。
【0039】
このように、本実施形態によれば、画像Gの撮像方向が不適正である場合には、撮像部3が移動させられることにより撮像方向が適正に調節される。これにより、表示部5には、診断に適正な方向から撮像された画像Gが観察者に対して提示されることとなり、観察者による画像Gを用いた歯牙のAの正確な診断を支援することができるという利点がある。また、画像G内の観察対象である歯牙Aの輪郭線Oを利用して撮像方向を判定するので、観察対象である歯牙Aを位置や数によらずに簡便に観察して診断することができるという利点がある。また、観察者自身が撮像方向を調節する必要がないので、観察者の負担を軽減することができるという利点がある。
【0040】
なお、本実施形態においては、制御部9が、駆動部8による撮像部3の移動量を距離dに基づいて制御することとしてもよい。
距離dと撮像方向の適正な方向からのずれ量とは反比例の関係にある。したがって、例えば、図10に示されるように、距離dが基準値より大きい場合に(ステップS6)、距離が基準値の2倍以上であれば(ステップS91)粗動させ(ステップS92)、距離が基準値の2倍より小さければ(ステップS91)、粗動のときよりも小さい移動量で微動させる(ステップS93)。このようにすることで、撮像方向を適正な方向に迅速にかつ正確に調節することができる。
【0041】
また、上述した第1および第2の実施形態における基準線Qおよび基準点Pの設定方法は一例であり、この設定方法に限定されるものではない。図11および図12は、基準線Qおよび基準点Pの他の設定方法を示した図である。
【0042】
図11では、基準線Qが、輪郭線Oの縦方向の接線として、基準点Pが、輪郭線O同士の接点として設定されている。輪郭線O同士の接点が2つ存在する場合は、いずれの接点を基準点Pとして採用してもよい。この場合には、撮像方向判定部45は、基準線Qと基準点Pとの距離dが基準値よりも大きい場合に、撮像方向が適正でないと判定する。
【0043】
図12は、歯牙Aを咬合面側から撮像した例であり、基準線Qが、輪郭線O同士の2つの接点間における輪郭線Oの接線として設定され、基準点Pが、2つの接点のうち一方として設定されている。この場合には、撮像方向判定部45は、距離dが基準値よりも大きい場合に、撮像方向が適正でないと判定する。
【0044】
また、基準線Qを使用せず、輪郭線O同士の2つの接点を基準点Pとして設定し、基準点P間の距離から歯牙A同士の重なり量を評価することもできる。この場合には、撮像方向判定部45は、基準点P間の距離が基準値以上の場合に、観察方向が適正でないと判定する。
【0045】
また、第1および第2の実施形態においては、歯牙観察方法をハードウェアによって実行する場合のみならず、コンピュータにより実行可能な歯牙観察プログラムによって実現することにしてもよい。
【0046】
例えば、歯牙観察装置1は、撮像した画像Gを図示しないコンピュータに送信する。コンピュータは、歯牙観察装置1から受信した画像Gを表示部5に出力するとともに、コンピュータに内蔵される記憶装置に記憶された歯牙観察プログラムをCPU(中央演算処理装置)によって読み出して実行させる。そして、コンピュータは、第1の実施形態においては表示部5に判定結果表示H1,H2を出力し、第2の実施形態においては、駆動部8に対して撮像部3の移動を指令する信号を出力する。
【0047】
このようにすることで、第1の実施形態の構成の場合には、従来の歯牙観察装置によって取得された歯牙の画像に対しても撮像方向が適正であるか否かを判定して観察者に報知することができる。
【0048】
また、第1および第2の実施形態においては、歯牙A同士の重なり量として基準線Qと基準点Pとの距離dの逆数を検出することとしたが、重なり量の検出方法はこれに限定されるものではなく、画像Gから検出できる方法であれば他の方法を用いてもよい。
例えば、輪郭線O同士の2つの接点を結ぶ直線と輪郭線Oとによって囲まれる面積を重なり量として検出してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 歯牙観察装置
2 光源
3 撮像部
3a 撮像面
4 画像処理部
41 輪郭抽出部(重なり量検出部)
42 基準線設定部(重なり量検出部)
43 基準点設定部(重なり量検出部)
44 距離算出部(重なり量検出部)
45 撮像方向判定部
46 表示出力部
5 表示部(報知部)
6a,6b レンズ
7 入力部
8 駆動部
9 制御部
A 歯牙
B 歯肉
G 画像
H 判定結果表示
O 輪郭線
P 基準点
Q 基準線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙に対向して配置され、隣り合う2つの前記歯牙を撮像する撮像部と、
該撮像部によって撮像された画像内における前記2つの歯牙の重なり量を検出する重なり量検出部と、
該重なり量検出部によって検出された重なり量に基づいて、前記撮像部による前記歯牙の撮像方向が適正であるか否かを判定する撮像方向判定部とを備える歯牙観察装置。
【請求項2】
前記重なり量検出部が、前記重なり量として、前記2つの歯牙の輪郭線の共通外接線と、前記2つの歯牙の輪郭線同士の接点との距離の逆数を検出する請求項1に記載の歯牙観察装置。
【請求項3】
前記重なり量検出部が、前記重なり量として、前記2つの歯牙の輪郭線同士の2つの接点のうち一方と、前記2つの接点間を通る一方の前記輪郭線の接線との距離の逆数を検出する請求項1に記載の歯牙観察装置。
【請求項4】
前記重なり量検出部が、前記重なり量として、前記2つの歯牙の輪郭線同士の2つの接点間の距離を検出する請求項1に記載の歯牙観察装置。
【請求項5】
前記撮像方向判定部による判定結果を観察者に対して報知する報知部を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の歯牙観察装置。
【請求項6】
前記撮像部を、前記2つの歯牙の歯列方向と撮像方向とのなす角度を変更する方向に移動させる駆動部と、
前記撮像方向判定部による判定結果に基づいて前記駆動部を駆動させる制御部とを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の歯牙観察装置。
【請求項7】
前記制御部が、前記重なり量検出部によって検出された重なり量に比例する移動量で前記撮像部を移動させるように前記駆動部を制御する請求項6に記載の歯牙観察装置。
【請求項8】
隣接する2つの歯牙の画像から前記2つの歯牙の重なり量を検出するステップと、
検出された重なり量に基づいて、前記画像の撮像方向が適正であるか否かを判定するステップとを含む歯牙観察方法。
【請求項9】
隣接する2つの歯牙の画像から前記2つの歯牙の重なり量を検出する処理と、
検出された重なり量に基づいて、前記画像の撮像方向が適正であるか否かを判定する処理とをコンピュータに実行させるための歯牙観察プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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