説明

歯科インプラントの位置及び配向を指示するための装置

【課題】 歯科修復工程で使用するための位置探知器を提供する。
【解決手段】 この位置探知器は、歯科インプラントのレプリカ中にまたはアバットメントのレプリカ中に挿入される。インプラントレプリカの位置及び配向は、インプラントレプリカ及び位置探知器を持つ模型を走査することにより決定される。これに代えて、位置探知器は、歯科インプラント中に挿入されることができ、走査は患者の口腔内で実行される。位置探知器は、チタンのような光学的に不透明な材料から作られ、例えば陽極酸化を通して付与された多孔性酸化チタンの層を持つ、光学走査器により検出可能な外表面を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に口腔、歯科または顎顔面の修復医療手術の分野、及びそれに関連した製品に関する。より詳細には、本発明は、かかる手術に含まれる外科用インプラントのような要素の位置及び配向の決定を容易とする装置及び方法に関する。さらに、より詳細には、本発明は、位置及び配向決定のために光学走査により検出可能な少なくとも一つの表面を持つ、限定した関係で前記要素に固定可能な位置探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学走査の方法及び装置は例えばUS6590654に開示されており、それは全ての目的のためにその全体を参考までにここに組み込まれる。
【0003】
かかる光学走査装置によって検出するための位置探知装置を提供することに対して要求があり、それらの装置は高精度を持つ検出性の観点から有利である。これらの位置探知装置は以下において位置探知器とも呼ばれる。
【0004】
かかる位置探知器が必要とされる一つの用途は歯科修復手術の分野である。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の実施態様は、好ましくは添付の特許請求の範囲に記載の位置探知装置、システム、方法、及びコンピュータプログラム製品を提供することにより単独でまたはいずれかの組み合わせで、上に述べたような従来技術の一つ以上の欠点、不利または問題を軽減し、緩和しまたは排除することを探求する。
【0006】
本発明の第一態様によれば、位置探知装置が提供される。この位置探知装置は口腔または顎顔面の修復製品を計画及び製造するシステムのために提供される。この装置は、光学的に不透明な材料から作られ、かつ少なくとも一つの外表面を持ち、この外表面はその位置及び配向のうちの少なくとも一つの決定のために光学走査装置により検出可能である。この装置はさらに、前記位置探知器の外表面上に付着された層を持つ。
【0007】
ある実施態様では、外表面は鏡面反射より光学的に拡散反射である。
【0008】
ある実施態様では、外表面は、陽極酸化により位置探知装置の本体上に付着された金属酸化物層である。
【0009】
ある実施態様では、金属酸化物層は均質な層厚さを持つ。
【0010】
ある実施態様では、層は実質的に均一な平均厚さを持つ。
【0011】
ある実施態様では、材料は金属である。
【0012】
ある実施態様では、金属はチタンである。
【0013】
ある実施態様では、外表面は、陽極酸化により位置探知装置の本体上に付着された多孔性酸化チタン層である。
【0014】
本発明の第二態様によれば、少なくとも一つの歯科修復製品と本発明の第一態様による少なくとも一つの位置探知器からなるキットが提供される。
【0015】
ある実施態様では、歯科修復製品はインプラントレプリカまたはアバットメントレプリカである。
【0016】
本発明の別の態様によれば、方法が提供される。この方法は、光学走査法の精度を改善する方法であり、それは前記光学走査法のために本発明の第一態様による位置探知器を与えることを含む。
【0017】
ある実施態様では、光学走査法はコノスコープホログラフィー走査である。
【0018】
本発明のさらなる実施態様は従属請求項で規定されており、そこでは、本発明の第2およびそれ以降の態様に関する特徴は、必要な変更が加えられるが、第1の態様に関する特徴と同様である。
【0019】
本発明のある実施態様は、光学走査による歯科インプラントの位置及び配向の決定の改善された精度を提供する。
【0020】
本発明のある実施態様はまた、歯科修復を仮想的に計画するための改善された精度を持つ入力データを与えることを提供し、従って歯科修復のための製造データは改善された精度で提供可能である。
【0021】
本発明のある実施態様は、歯科修復手術のための希望の許容度内の位置探知器の寸法の改善された精度と組み合わせて位置探知器の光学走査による改善された検出性を提供する。
【0022】
本発明のある実施態様はまた、改善された位置探知器の光学走査により提供されたデータの改善された分解能のおかげで複数のデータ組の改善された整合または結合を提供する。ある実施態様は、患者のデータと歯科修復のためのデータの改善された結合を提供する。
【0023】
本明細書で使用される用語「含む/含んでいる」は、記載した特徴、整数、工程、または要素の存在を明記するものと解釈されるものであって、一つ以上の他の特徴、整数、工程、要素、またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことを強調しておきたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施態様が可能なこれらのおよび他の態様、特徴、および利点は、添付の図面を参照する本発明の実施態様の以下の説明から明らかになるであろう。
【0025】
【図1】図1は、方法のフローチャートである。
【0026】
【図2A−2E】図2A−2Eは、位置探知器の一実施態様の種々の図である。
【0027】
【図3】図3は、患者の顎の模型に固定された複数の位置探知器の透視図である。
【0028】
【図4】図4は、患者の顎の模型に固定された複数の位置探知器の透視図である。
【0029】
【図5A−5D】図5A−5Dは、位置探知器の別の実施態様の種々の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の特定の実施態様は添付の図面を参照しながら説明されるであろう。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施されることができ、本明細書中に記載される実施態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、本開示が充分かつ完全であり、当業者に本発明の範囲を充分に伝達できるように提供される。添付の図面において例示される実施態様の詳細な説明において使用される用語は、本発明を制限することを意図していない。図面において、類似の数字は類似の要素を示す。
【0031】
以下の説明は、歯科修復手術に適用可能な本発明の一実施態様に焦点を合せている。しかし、本発明は、この用途に限定されるものではなく、例えば顎顔面修復外科手術を含む多くの他の外科手術に適用されることができることが認識されるだろう。
【0032】
位置探知器
実施態様において、口腔または顎顔面修復製品を計画及び製造するシステムのための位置探知装置が提供される。位置探知装置は、光学的に不透明な材料から作られ、かつ光学走査装置により検出可能な少なくとも一つの外表面を持ち、それにより前記外表面の位置及び配向を決定する。この方法では、位置探知装置の位置及び配向が決定可能である。
【0033】
位置探知器2の一実施態様が図2A−2Eに示されている。図3及び4では、かかる位置探知器は、最終歯科修復を提供する前に患者の歯科状況の模型40の歯科インプラントレプリカ中に挿入されて示されている。
【0034】
位置探知器は、円筒形部20、円錐形部21、上部22、ねじ付き部23、及び連結界面24を持つ。
【0035】
位置探知器表面の少なくとも一部は、さらに以下に説明されるように、改善された光学的走査及びその位置の測定のために光沢がない。この表面により提供される拡散反射は、光学的に走査されたときに高い精度を提供する。
【0036】
実施態様において、位置探知器本体はチタンから作られる。この表面は材料の酸化された表面である。酸化表面は層厚さを持つ。酸化表面は表面粗さを持つ。位置探知器の幾何学的寸法は、以下に説明されるように、非常に高い精度を備えている。
【0037】
円錐形部及び上部は切頭円錐形部を提供し、その長手方向中心軸は位置探知装置2の長手方向中心軸30と合致する。
【0038】
円錐形部21は長手方向中心軸30の計算のために使用される。切頭円錐形部の上部表面22は、位置探知器2の空間内の位置を決定するために使用される。この態様では、位置探知器2の位置及び配向のためのベクトルが光学的走査により決定可能である。位置探知器2が歯科インプラントのようなかみ合う連結界面を持つ別の構造に取り付けられるとき、それは他の構造に対して正確に規定された幾何学的関係及び位置を持つ。位置探知器2は螺旋ねじ付き部23により別の構造に取り付けられる。位置探知器2を記録することにより、他の構造の位置は、二つの間に規定された関係があるので、決定されることができる。
【0039】
位置探知器は回転的に対称であることができる。回転的に対称は、位置探知器の回転配向が必要とされないかまたは重要でない用途で使用されることができる。これは、例えば歯科インプラントのその長手方向軸周りの回転が無関係である場合である。これは、例えば少なくとも二つのインプラントがそれ自身で回転錠止を提供する連結構造を支持するために使用される場合である。回転的に対称な位置探知器を使用することで十分である。例えば歯科ブリッジは少なくとも二つの歯科インプラントを使用することにより患者の顎に固定される。ここで、インプラントの位置及び長手方向配向は、図3及び4に示されたように、回転的に対称な位置探知器を使用することにより決定される。
【0040】
回転的非対称はある実施態様(図示せず)で提供される。非対称は、非対称上部表面、または例えば円錐形部の側方平面により提供されることができる。
【0041】
位置探知器は異なる直径を持つことができる。
【0042】
位置探知器は、取り外し可能に取り付け可能である要素の連結界面のために異なるかみ合い界面を持つことができる。
【0043】
位置探知器の実施態様はチタンから作られる。チタンは位置探知器の本体のための有利な材料である。なぜなら、以下に述べられるように、特に光学的に有利である酸化チタン層がその上の表面に提供可能であるからである。
【0044】
位置探知器は、例えば原材料から旋削及び/またはフライス削りにより製造される。適用される製造方法は、位置探知器、その連結界面等の造形を含む種々の因子に依存する。回転的に対称な位置探知器は旋削のみによって製造されることができる。回転的に対称な位置探知器は、原材料を回転的に対称な中間製品に旋削することによって部分的に製造されることができる。中間製品は続いて少なくとも一つの非回転的に対称な表面を含むように機械加工される。これは、例えばフライス削りまたは切削によりなされ、それにより材料が中間製品から除去される。それにより位置探知器が取り付けられるときにインプラントの長手方向の回転可能位置に対して規定された関係を持つ表面が形成される。回転的な記録を提供するかかる位置探知器は、インプラントの回転錠止能力が重要である、単一歯のための歯科インプラントのために使用されることができる。
【0045】
金属、特にチタンのフライス削りまたは旋削のような頻繁に使用される機械加工工程により、位置探知器本体の機械加工された表面は非常に滑らかになり、光沢を持つようになる。かかる機械加工された表面は、US6590654に記載されたように光学走査器による検出のためにさほど適していないことが証明された。特に、US6590654はコノスコープホログラフィー走査に関連する。機械加工した表面を持つ走査位置探知器は誤った測定をもたらす。不安定な測定値が得られる。これは、機械加工された表面の光学的性質のためである。機械加工された表面は光沢が多すぎる。走査光源からの入射光は大部分反射され、入射光線と同じ方向を向いている光学検出器に到達しない。入射光線が機械加工された表面上に非垂直的に向けられるとき、それは反射される。この態様では、低過ぎるまたは後方散乱なしの光は検出器に到達し、位置及び配向測定は正しく提供されることができない。例えば、円筒形の部分的に切頭円錐形の位置探知器の位置及び配向は、歯科修復手術で使用される要素を作るために適したデータを提供するのに十分なほどうまく決定されない。測定結果は、数マイクロメーターの範囲内のように低い許容度内になければならない。これは、複数の歯科インプラントが歯科ブリッジのような単一構造を顎に取り付けるために使用される場合に、特に重要である。歯科ブリッジ枠が誤ったデータから作られる場合に、それは患者に埋入されたインプラントに合わないであろう。また単一歯の修復のためには、かかる狭い許容度は、周囲の歯に対して合う歯科修復を提供するために必要とされる。単一歯の修復が誤ったデータから作られる場合、それは、周囲の歯により提供される空間中に合わないであろう。これは、費用がかかりかつ患者のために厄介であり、避けられなければならない。
【0046】
従って、機械加工された表面を光沢の少ないように修正する仕上げ工程が適用される。この表面は、入射光の拡散散乱が優勢になるように光学的につや消しにされる。しかし、位置探知器は希望の作成値からの逸脱が非常に少ない寸法を備えなければならないので、この仕上げ工程は注意深く適用されなければならない。仕上げ工程が位置探知器の物理的寸法にできるだけ影響しないことが望まれる。
【0047】
数マイクロメーターの範囲内のように低い許容度が要求されることを心に留めると、これは負担になる仕事である。多くの仕上げ工程は、この目的のために適していない修正された機械加工表面を提供する。仕上げ工程は、機械加工表面から材料を除去すること、または材料の層を機械加工表面上に付着することに基づくことができる。しかし、殆どの仕上げ工程は、本ケースの場合に容認できない不均質な表面修正を提供する。
【0048】
例えば砂による吹き付け加工は例えばこの目的のために適していない。サンドブラスチングは砂粒のジェット流でなされる。このジェット流は、そこでの砂粒の分布のためにそれ自身不均質である。さらに、処理される表面上のジェット流による通過により重複処理が起こる。さらに、かかるサンドブラスチング研磨は、現在望まれる許容度内で許容されるより多くの材料の除去を導く。この態様では、希望の許容度内の均質な仕上げ表面を提供するように仕上げ工程を制御することは不可能である。
【0049】
光沢の少ない光学的性質を持つ層を作るための多くの技術は、同様な理由のために本目的のために適していない。例えば機械加工表面上への材料の化学蒸着(CVD)は十分に均質な層厚さを提供しない。層厚さの変動は、許容された許容度より大きい。
【0050】
この態様では、サンドブラスト表面またはCVD処理表面は、拡散散乱を増大する改善された光学的性質を持ち、従って光学走査検出器にかなり良好な入力信号を提供することができるが、かかる位置探知器の得られた測定は歯科修復要素の製造のためのデータを提供するためには適していないであろう。かかる位置探知器は、許容された許容度の外側にある入力データを提供する。従って、かかる入力データに基づく製造データ及びかかる製造データで製造された製品は、歯科修復工程及び製品のような要求される用途のためには適していない。
【0051】
金属対象物上に酸化物層を作るための表面処理工程は本出願と同じ出願人のWO00/72776に開示されており、それは全目的のためにその全体をここに組み込まれる。表面処理工程は、骨または組織構造のためのインプラントに関してWO00/72776に記載されている。位置探知器を持つこの方法の用途は開示されていない。さらに、WO00/72776に記載された工程の目的は、有利なオッセオインテグレーション特性を持つ多孔性表面層をインプラント上に設けることである。
【0052】
本願の文脈において、WO00/72776に記載された工程は新規な態様で使用される。この工程は、表面の改善された光学的性質を提供するために使用される。この工程は位置探知器上に適用される。より詳細には、この工程は、陽極酸化を含み、光学走査による検出可能性の改善された精度を持つ有利に均質な光沢のない表面を提供するために位置探知器に適用される。
【0053】
陽極酸化工程は、非常に狭い許容度内の酸化物の非常に均質な層を提供する。この工程は、希望の許容度内にある酸化物の薄層を提供するために有利に制御可能であるが、表面の光学走査に関して表面の光学的性質をかなり改善する。この態様では、仕上げ表面を持つ位置探知器の最終寸法は高い精度を持って決定可能である。この位置探知器は、酸化物層厚さを減じた寸法に機械加工される。酸化物層が均質に付加されるとき、最終製品は、歯科修復工程及び関連製品のために要求されるような非常に狭い許容度内の希望の寸法を与えられる。さらに、この表面は光学走査のために有利であり、従って位置探知器及びそれに関連した構造の位置及び配向の検出の非常に高い精度を提供する。
【0054】
出願人によりなされた試験は、かかる修正された表面を持つ位置探知器の光学走査が位置探知器の位置及び配向の非常に良好な記録を提供することを示す。提供された信号は非常に良好であり、かつ機械加工表面を持つ位置探知器に比べてかなり改善されていた。
【0055】
この酸化物層はインプラント上の酸化物層より薄く作られることが好ましい。位置探知器の上に設けられた層厚さは5μm以下のような数μmまでの範囲にある。
【0056】
陽極酸化された表面を提供するために、位置探知器は酸中に配置される。特定の酸の実施態様はWO00/72776に記載されている。陽極酸化工程は、一定電流、及び最大電圧まで変動される電圧で実施される。最大電圧は、酸化物層の層厚さを決定し、この工程は、最大電圧が得られるときに自動的に終わる。従って、陽極酸化工程により得られた層厚さは非常に正確な態様で制御される。この最大電圧は、インプラント上に酸化物層を発生するために選ばれる最大電圧より低く選ばれる。典型的な最大電圧は200〜220ボルトの範囲である。
【0057】
さらに、陽極酸化工程は、位置探知器の表面の制御された幾何学的被覆を可能にする。位置探知器は陽極酸化時に酸中に部分的に沈められるだけであることができる。代替的にまたは追加的に、位置探知器は、選ばれた表面の酸化を可能にするのみのために適当にマスクされることができる。従って、位置探知器は例えば光学的に光沢のない表面でない表面を備えることができる。非処理表面は、図5Aのマーク55で示されるような製品マーク、色コード等を備えることができる。
【0058】
図5A−Dによる別の実施態様では、位置探知器3が提供される。位置探知器3は、ブリッジ枠の模型のような歯科修復の模型に取り付けるためのブリッジ位置探知器である。位置探知器のおかげで、歯科修復の模型の連結界面の位置は決定可能である。連結界面のこの決定された位置は以下に述べられる方法で使用される。位置探知器3は円筒形部50、円錐形部51、上部52、めねじ付き部53、及び歯科修復物とかみ合い係合するための連結界面54を持つ。
【0059】
酸化物層を持つ表面の光学的効果
入射光線が光学的に不透明な表面の表面から反射されるとき、反射率は、表面の粗さのような表面の性質に依存して幾つかの要素を持つ。反射光の三つの要素、すなわち鏡面反射、鏡面ローブ(specular lobe)及び拡散ローブ(diffuse lobe)が通常発生する。
【0060】
金属鏡表面に対して、入射光は反射の法則に従って表面により反射されるであろう。この場合には、鏡面ローブは殆どゼロであり、拡散ローブは無視可能であり、かつ鏡面スパイクは非常に狭く、強度は入射光のそれに実質的に相当する。この場合、後方散乱は起こらず、入射光線の方向に配置された光学検出器は信号を検出しないであろう。従って、研磨された表面のような金属鏡表面は光学走査のためには適さない。
【0061】
前述の機械加工された金属表面のような光沢のあるまたは滑らかな表面に対しても、状況は同様である。入射光線は反射の法則に従って表面により反射されるであろう。この場合、鏡面ローブは鏡表面の場合より大きいが、主として反射方向に向けられ、拡散ローブはより大きいが、入射光の方向では無視可能であり、主として反射方向に向けられ、鏡面スパイクは前の鏡表面の場合より少し幅広く、前述の二つのローブに対して幾らか強度を失っている。さらに、非常に小さな光が後方散乱される。従って、旋削またはフライス削りされた表面のような機械加工された金属表面は光学走査のためにあまり適していない。
【0062】
光沢のない表面に対しては、前述の陽極酸化された表面のように、状況は異なる。ここでは、鏡面ローブは光沢のあるまたは滑らかな表面の場合より大きく、かつかなり幅広で、反射方向からそれており、拡散ローブは最も大きくかつ最も強く、そして入射光強度のかなりの部分が入射光の方向に散乱して戻され、鏡面スパイクは殆ど存在しないか、または全く存在しない。従って、表面は、鏡面反射より光学的に拡散反射であり、後方散乱光の一部を提供し、それは光沢のない表面を高精度での光学走査による検出のために極めて適しているものとする。
【0063】
実施態様の位置探知器は、後者のカテゴリーの表面を少なくとも備えている。照射されるときにかかる表面から検出可能な光の部分は、全体の反射光に対する拡散ローブの部分が有勢であるのでかなり改善される。これは、特にUS6590654に記載されたような光学走査法に対して有利である。
【0064】
位置探知器の使用例
図1は、光学走査時に位置探知器を使用して、データを作成しかつ歯科修復物を作るための方法のフローチャートである。
【0065】
この方法1の開始点100では、インプラントが患者の骨組織内に埋入されて与えられている。ヒーリング及びオッセオインテグレーション期間後に、単独歯、ブリッジ、または他の枠のような歯科修復物の要素が作られ、インプラントにその連結界面で取り付けられなければならない。この目的のために、インプラントの正確な位置及び配向が決定されなければならない。
【0066】
この目的のため、歯科状況の印象が工程120で採取される。
【0067】
インプラントまたは模型中のアバットメント、または印象の印象用コーピングの位置及び配向が光学走査法により高精度で決定されなければならない。
【0068】
印象は患者の口腔の少なくとも一部分の雌型である。印象は、既に埋入された歯科インプラントを含む顎の部分から作られる。インプラントは、先に顎骨内に埋入されており、固体固定のために顎骨組織とのヒーリング及びオッセオインテグレーションのために所定場所に任意選択的に残されている。従って、歯科インプラントは、顎骨への歯科修復物の固定のための規定された連結界面を持つ固定台座を提供する。歯科修復物は歯科ブリッジ、単独歯修復物等を含む。歯科修復物は歯科インプラントに直接固定されることができ、またはアバットメントのような中間要素が使用されることができる。
【0069】
印象から、歯科インプラントの位置及び配向のためのデータが導き出されるであろう。複数の歯科インプラントを存在させることができる。インプラントは顎骨組織内に固定されるので、口腔中に突出する連結界面またはアバットメントの上部のみが印象内に存在するであろう。歯科インプラントの長手方向軸のための改善された配向データを提供するために、印象コーピング及び位置探知器はそれぞれ、印象採取時、及び続いての印象または印象から調製された模型の走査時に使用される。これは以下により詳細に説明される。
【0070】
印象は、工程110で歯科インプラントに取り付けられる印象コーピングにより患者から採取される。これは、ねじ込み挿入、スナップ嵌め、摩擦嵌め等によりなされることができる。このようにして印象コーピングは印象内に陰印象を残し、または印象材料が凝固したときに印象内に残される。印象は次いで工程130で患者から除去される。印象コーピングは歯科インプラントに固定されるので、これらは、それらが凝固された印象材料から容易に離れるように滑らかな表面を備えている。印象コーピングは、工程140で歯科インプラントから除去される。印象及び印象コーピングは、次いで歯科修復物の製造に向けてのさらなる加工工程のために利用可能である。
【0071】
インプラントレプリカまたはアバットメントレプリカは、工程150で印象コーピングに取り付けられる。この組み立て品は、印象内で工程160で印象内の対応する凹所中に再配置される。この態様では、インプラントレプリカまたはアバットメントレプリカは、的確な位置で及び印象が取られた患者の記録された解剖学的状況に対する正確な配向で印象から突出する。
【0072】
位置探知器はまた、口腔内走査のために使用されることができ、そこでは位置探知器は患者の口腔内のインプラントに直接取り付けられる。特に、口腔内走査は光学走査である。光学走査は口腔内光学走査器により実施される。
【0073】
模型は次いで工程170で印象から成形される。模型が凝固されると、それは工程180で印象コーピングと一緒に印象から除去される。この模型は高精度を持って患者の解剖学的状況に対応する。模型内のインプラントレプリカは模型内に正しい位置でかつ正しい配向で正確に配置される。印象コーピングは、次いで工程190で固定されたインプラントレプリカまたはアバットメントレプリカからねじ的に除去される。印象コーピングは滑らかな表面を持つので、これらは光学走査に適さない。
【0074】
工程200において美的、幾何学的、及び機械的条件を考慮して、模型からブリッジ枠模型のような歯科修復物模型が手動的に作られる。ブリッジ枠模型は、例えば非係合暫間アバットメントまたは円筒を使用することにより調製されたアクリル系枠であることができる。アクリル系枠は、次いで手動的に希望の形状に縮小されることができる。
【0075】
続いて、工程210及び220のそれぞれにおいて模型及び歯科修復物模型は光学走査器により走査されて患者データ及び歯科修復物のためのデータを提供する。患者データ及び歯科修復物のためのデータは続いて工程230で仮想コンピュータベース環境で一致されかつ提供され、工程240で最終修復物を計画するために一致されかつ提供される。患者データ及び歯科修復物のためのデータの併合は、高い精度及び解像力を持つデータを提供する改善された位置探知器の使用のおかげで容易化される。仮想計画が終了すると、工程250で患者に埋入されるブリッジ枠のような歯科修復物の製造のための製造データが提供される。製造は工程260として例示されている。
【0076】
走査の前に、位置探知器はインプラントレプリカまたはアバットメントレプリカにねじ的に取り付けられる。位置探知器は、今や患者の解剖学的状況に対応して、インプラントレプリカまたはアバットメントレプリカに対して正確な関係で配置される。光学走査データから位置探知器の位置及び配向を検出することにより、インプラントレプリカまたはアバットメントレプリカの的確な位置が決定可能である。これは、高い精度の製造データ及びこの製造データに基づく最終歯科修復物を提供することができるために非常に重要である。
【0077】
走査の前に、位置探知器はまた、歯科修復物模型にねじ的に取り付けられる。これらの位置探知器は、光学走査器で走査されるとき、レプリカインプラントまたはレプリカアバットメントの連結界面とかみ合う連結界面の位置のための的確なデータを提供する。
【0078】
複数の歯科インプラントまたはアバットメントを存在させることができる。この場合、一つの位置探知器が歯科インプラント毎に使用されるであろう。
【0079】
光学走査から、模型及び歯科修復物模型が対応するデータを提供するためにデジタル化される。計算がインプラントまたはコーピングが設けられるところでなされる。位置探知器が光学走査から高精度データを提供するので、これは位置探知器により容易化される。例えば、切頭円錐部の円錐部は位置探知器の長手方向中心軸の計算のために使用される。位置探知器の切頭円錐形部の上表面は、位置探知器の空間内の位置を決定するために使用される。この態様では、位置探知器の位置及び配向のベクトルが決定される。位置探知器及び歯科インプラントまたはアバットメントの長手方向軸は一致するかまたは規定された関係を持つので、歯科インプラントまたはアバットメントの配向は高精度で決定可能である。上部は高精度を備えており、連結界面に対して規定された関係を持つので、歯科インプラントまたはアバットメントの的確な位置も決定可能である。
【0080】
また、位置探知器を取り付けられた歯科修復物模型は、歯科インプラントまたはアバットメントの連結界面とかみ合う連結界面の配置のためのデータを高精度で提供する。例えば図5A−Dに示されている歯科修復物模型のための位置探知器は、例えば図2A−Eに示されているインプラントまたはアバットメントのための位置探知器とは連結界面に関して異なる。歯科修復物模型及びインプラントまたはアバットメントの連結界面は雄型/雌型の連結界面とかみ合う。従って、連結界面はかみ合うように配置された雌型/雄型連結界面である。
【0081】
連結界面それら自身は、使用される特定のインプラントシステムに依存して異なる。
【0082】
患者データ及び歯科修復物のためのデータは、続いて最終修復物を計画するために仮想コンピュータベースの環境で一致されかつ提供される。
【0083】
仮想計画が終了すると、患者に埋入されるブリッジ枠のような歯科修復物の製造のための製造データが提供される。製造された製品のさらなる適合、例えば化粧が、歯科修復物の患者への最終埋入前に手動的に実施されることができる。埋入は工程270で円滑に実施される。なぜならば歯科修復物は、患者に既に埋入された歯科インプラントに完全に適合するからである。
【0084】
本発明を特定の実施態様に関連して上述した。しかし、上記以外の実施態様も本発明の範囲内で同等に可能である。上記とは異なる方法工程をハードウェアまたはソフトウェアによって実行することは、本発明の範囲内で提供されることができる。本発明の異なる特徴および工程は、記載したもの以外の組合せで組み合わせることができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔または顎顔面の修復製品を計画及び製造するシステムのための位置探知装置(2,3)において、
前記位置探知装置が、光学的に不透明な材料のものであり、かつ光学走査装置により検出可能な少なくとも一つの外表面を持ち、それにより前記外表面の位置及び配向のうちの少なくとも一つを決定し、かつ
前記位置探知装置の前記外表面上に付着された層を持つことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記外表面が、陽極酸化により前記位置探知装置の本体上に付着された金属酸化物層であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記金属酸化物層が実質的に均質な層厚さを持つことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記材料が金属であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記金属がチタンであることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記外表面が、陽極酸化により前記位置探知装置の本体上に付着された多孔性酸化チタン層であることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記外表面が鏡面反射より光学的に拡散反射であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記位置探知装置の位置及び配向が、コノスコープホログラフィー走査を含む前記光学走査による前記拡散反射から得られたデータから決定可能であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、少なくとも部分的に回転的に対称である本体を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、前記装置が取り付け可能であるインプラントの長手方向の規定された回転位置に対して回転的に非対称部を持つ本体を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、円筒形部(20)、円錐形部(21)、上部(22)、ねじ付き部(23)、及び連結界面(24)を持つ本体を含み、前記円錐形部(21)と前記上部(22)が、前記装置の長手方向中心軸と一致する長手方向中心軸を持つ切頭円錐形部を形成することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記外表面が前記円錐形部(21)及び前記上部(22)の外表面であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記連結界面(24)が、前記装置がその位置及び配向を決定するために取り付け可能であるインプラントの連結界面とかみ合う連結界面であることを特徴とする請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも一つの歯科修復製品と請求項1〜13のいずれかに記載の少なくとも一つの位置探知装置からなるキット。
【請求項15】
前記歯科修復製品がインプラントレプリカまたはアバットメントレプリカであることを特徴とする請求項14に記載のキット。
【請求項16】
光学走査法の精度を改善する方法において、前記光学走査法のために請求項1〜13のいずれかに記載の位置探知装置を与えることを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記光学走査法がコノスコープホログラフィー走査であることを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2A−2E】
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【図5A−5D】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−518502(P2012−518502A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551438(P2011−551438)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001153
【国際公開番号】WO2010/097214
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(506260386)ノベル バイオケア サーヴィシィズ アーゲー (42)
【Fターム(参考)】