説明

歯科充填剤及び方法

歯科充填剤が開示される。充填剤は、金属酸化物ゾル及び水溶性有機結合剤を混ぜ合わせることと、前記混合されたゾルを、乾燥生成物に乾燥することと、前記乾燥生成物をか焼することにより製造され、前記充填剤は、実質的に非晶質のクラスタである。充填剤は、硬化可能樹脂に混合されて、所望の強度及び美的特質を有する放射線不透過性の歯科材料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、歯科充填剤及び歯科充填剤を作製する方法を目的とする。本発明は、広くは、歯科材料中に使用するための無機酸化物粒子を含有する充填剤に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2006年12月28日に出願された米国特許仮出願第60/877526号に対する優先権を主張し、そのすべてが参考として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
歯科材料は、広範囲の複合材料と比べて、一般に独特の要件を有する。健康上の理由から、歯科材料は、口腔環境において使用するために好適であるべきである。ある場合では、歯科材料の耐久性は、十分な性能を確保するために重要である。例えば、咀嚼力が一般に大きい歯列位置で行われる歯科処置にとって、高い強度及び耐久性が望ましい。他の場合には、美的特質又は品質が、高度に所望される。これは、歯の治療又は修復が相対的に近い距離から見える位置で、歯科処置が行われる場合に多い。
【0004】
歯の修復材が周囲の歯列とよく調和すること、及び歯の修復材が実物のように見えることも、一般に所望される。歯科材料の審美的品質は、典型的には、歯に類似した色/色合いを有する材料を作り出すことによって実現される。多くの充填物は、しかしながら一般に、所望されるより低い機械的強度を有する。
【0005】
歯科材料の放射線不透過性はまた、歯科において有用であり得る。放射線不透過性複合材料は、標準的歯科X線装置を使用して調べることができ、それによって硬化した複合材料に隣接した歯の組織中の僅かな漏れ又は虫歯の長期検出を促進することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、歯科充填剤及び歯科充填剤を作製する方法を目的とする。本発明は、広くは、歯科材料中に使用するための無機酸化物粒子を含有する充填剤、及びこの充填剤を作製するための方法に関する。特に、本発明は、砕けやすい、高度に審美的な歯科充填剤を作り出すための、水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤の使用を目的とする。水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤は、典型的には金属酸化物ゾルと混ぜ合わされ、乾燥されて水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤の少なくとも一部分を含有する生成物を作り出す。乾燥生成物のその後のか焼は、歯科充填剤を作り出す。水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤は、酸化され、蒸発し、又はさもなければ、か焼中に取り除かれ、したがって熱的に変わりやすい有機結合剤として機能する。一般に、本発明の充填剤は、少なくとも2つの非晶質無機酸化物:非重金属酸化物粒子及び重金属酸化物の複数を含むクラスタである。硬化可能樹脂中に混合された充填剤は、高い強度、良好な審美性の特質、及びつやの良好な保持を有する放射線不透過性歯科材料を提供する。
【0007】
一般に、本発明の実施は、歯科材料用の充填剤を作製する方法を包含し、この方法は、金属酸化物ゾル及び水溶性有機結合剤を混ぜ合わせる工程と、前記混合されたゾルを乾燥する工程と、前記乾燥生成物をか焼する工程とを含み、前記充填剤は、金属酸化物を含むクラスタである。ある実施では、本発明は、歯科材料用の充填剤を作製する方法を包含し、この方法は、非重金属酸化物ゾル及び水溶性有機結合剤を混ぜ合わせる工程と、前記混合されたゾルを乾燥する工程と、前記乾燥生成物をか焼する工程とを含み、前記充填剤は、非重金属酸化物を含むクラスタである。ある実施では、本発明は、歯科材料用の充填剤を作製する方法を包含し、この方法は、非重金属酸化物ゾル、重金属含有物質、及び水溶性有機結合剤を混ぜ合わせる工程と、前記混合されたゾルを乾燥する工程と、前記乾燥生成物をか焼する工程とを含み、前記充填剤は、非重金属酸化物及び重金属酸化物を含むクラスタである。
【0008】
ある実施形態では、有機結合剤と重金属酸化物含有物質との比は、少なくとも0.75〜1であり、他の実施では、その比は0.25〜2である。好適な有機結合剤には、二糖類、三糖類のような糖が挙げられる。特に有用な水溶性有機結合剤は、スクロースを含む。別の有用な水溶性有機結合剤は、ポリエチレングリコールを含む。
【0009】
本発明は、強く、高度に審美的な、放射線不透過性材料を提供するために、歯科材料において有用な充填剤を提供する。有利なことに、硬化可能樹脂中の充填剤は、反復的研磨接触後にそれらのつやを保持できる歯科材料を提供する。いくつかの実施形態では、充填剤は、非重金属酸化物粒子及び重金属酸化物のクラスタを含み、この場合、クラスタは約5μm未満の平均直径を有する。より特には、クラスタは、2μm未満の平均直径を有する。他の実施形態では、充填剤は、非重金属酸化物粒子のクラスタを含み、この場合、クラスタは約5μm未満の平均直径を有する。更に、特に、クラスタは、2μm未満の平均直径を有する。
【0010】
本発明は一般に、酢酸ジルコニル及び水溶性有機結合剤、具体的には水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤と混合された酸性シリカゾルを提供することを包含する。水はこの混合物から取り除かれ、次いで混合物は、粒子間焼結を最小にするように設計された条件で、酸素含有雰囲気下で加熱され、熱的に変わりやすい有機結合剤を酸化及び/又は蒸発させながら、歯科充填剤を製造する。本発明のプロセス中、水は蒸発して、後に結合剤及びシリカ/ジルコニアゾルを、例えばセラミックのフォーム、セラミックの粉末の形態で残すことが多い。
【0011】
ある実施形態では、水溶性の熱的に変わりやすい結合剤には、例えば、スクロース、ポリビニルアルコール、又はポリエチレングリコールが挙げられる。ある実施形態では、水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤は、二糖類である。こうした二糖類は、スクロース、ラクトース、及びマルトースからなる群から選択され得る。代替的実施形態では、水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤は、三糖類であり、これは、3つの単糖類から構成されるオリゴ糖である。
【0012】
こうした結合剤は、水の温度未満の温度で揮発せず、したがって一般に約100℃を超える温度で揮発する。具体的には、水溶性の結合剤は、一般に、約100℃未満、より望ましくは約150℃未満の温度で揮発しない。結合剤は、典型的には、高温で、頻繁にはおよそ175〜200℃又はそれより高い温度で酸化することが期待できる。したがって、結合剤の炭化温度に近い温度で、結合剤が非揮発性のままであることが一般に望ましい。クラスタ内の結果として生じるナノ粒子が、できるだけ別個の状態にあり、したがって一緒にゆるやかに保持されることが、一般に望ましい。この手順は、より小さい粒子に容易に壊れる、より砕けやすい材料を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、次の図面に関連してより完全に理解され得る。
【図1】先行歯科材料のTEM(透過電子顕微鏡写真)のデジタル画像。
【図2】本発明により作製された歯科材料のTEM(透過電子顕微鏡写真)のデジタル画像。
【0014】
本発明は様々な変更及び代替形態が可能であるが、その具体例を一例として図面に示すと共に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されないことは理解されるべきである。逆に本発明は、本発明の趣旨及び範囲内にある変更、同等物、及び代替物を網羅するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、放射線不透過性、高い強度、高い美的特質、及びつやの長い保持を有する材料を提供するために、歯科材料中に装填され得る充填剤を製造するための方法を提供する。高い美的品質は、高い透光性及び良好なつやを所有する歯科材料を提供することにより実現される。有利なことに、本発明の歯科材料はまた、練り歯磨きを用いたブラッシングによるなどの反復的磨耗に曝された後でさえも、それらのつやを好ましくは保持できる。
【0016】
本発明の充填剤は、非重金属酸化物粒子及び重金属酸化物のクラスタを含み得る。以下に説明されるように、重金属酸化物(存在するとき)は、個別粒子、非重金属酸化物粒子上のコーティングとして、又は非重金属酸化物粒子中の領域として、クラスタ中に組み込むことができる。重金属酸化物がその中に見出される形態に関わりなく、非重金属酸化物粒子及び重金属酸化物のクラスタは、ときには実質的に非晶質であるが、代替物においては、実質的に結晶性、又は非晶質と結晶性酸化物との混合物であることができる。
【0017】
本発明の充填剤は、例えば、歯科接着剤、人工歯冠、前部又は後部詰め物、鋳込材料、キャビティライナー、セメント、コーティング組成物、ミルブランク、歯列矯正装置、修復材、義歯、及びシーラントのような歯科材料中に使用され得る。好ましい態様では、歯科材料は歯科修復材である。本発明の修復材は、口の中に直接定置され、その場で硬化される(固くなる)こともできるし、あるいは口の外で義歯に組み立てられ、その後、口の中の所定位置に接着することが可能である。
【0018】
放射線不透過性は、歯科複合材料にとって非常に望ましい特性である。放射線不透過性複合材料は、標準的歯科X線装置を使用して調べることができ、それによって、硬化した複合材料に隣接した歯の組織中の僅かな漏れ又は虫歯の長期検出を促進することができる。しかしながら、歯科複合材料はまた、低い視覚的不透明度を有するべきであり、即ちそれは可視光に対して実質的に透明又は半透明であるべきである。硬化した歯科複合材料が実物のような輝きを有するように、低い視覚的不透明度が所望される。こうした歯科複合材料が、可視光誘起光開始を使用して硬化又は重合されることが意図される場合には、必要とされる硬化の深さ(時には2ミリメートル以上と同程度)に達するために、均一の硬度を硬化した複合材料中に達成するために、また口内での硬化反応を実行することにより課せられる物理的制限に応えるために(これは、とりわけ未硬化複合材料が通常ただ1つの角度からの光に露光すること、及び硬化放射線が携帯用器具により提供されることを必要とする)、低い視覚的不透明度が望ましい。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「硬化可能」は、例えば、加熱して溶媒を取り除くことにより、加熱して重合、化学的架橋、放射線誘起重合若しくは架橋を生じさせることにより、又は同様なことにより、硬化又は固化され得る材料を表している。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「非重金属酸化物」は、重金属のもの以外の元素の酸化物を意味する。本発明の1つの態様では、非重金属酸化物粒子は、シリカ粒子である。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「重金属酸化物」は、28を超える原子番号を有する元素の酸化物を意味する。本発明の1つの態様では、重金属酸化物は、酸化ジルコニウムである。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「クラスタ」は、クラスタ中に存在する非重金属酸化物粒子間の会合の性質を指す。典型的には、非重金属酸化物粒子は、歯科材料用の硬化可能樹脂中に分散したときでさえ、非重金属酸化物粒子を凝集させる相対的に弱い分子間力により会合している。重金属酸化物がクラスタ中に粒子として存在する限りにおいて、重金属酸化物粒子は、互いに対して、また非重金属酸化物粒子に対して、類似の会合を提示する。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「実質的に非晶質」は、クラスタには結晶構造が本質的にないことを意味する。結晶化度が存在しないこと(又は非晶質相の存在)は、結晶化度指数を提供する手順によって好ましくは決定される。結晶化度指数は、材料が結晶性又は非晶質である程度を特徴付け、それによって、1.0の値は、完全な結晶構造を示し、及びゼロに近い値は、非晶質相のみの存在を示唆する。本発明の充填剤は、好ましくは、約0.1未満の指数、より好ましくは約0.05未満の指数を有する。
【0024】
本発明の更に別の態様では、充填剤が硬化可能樹脂中に装填されて、放射線不透過性、低い視覚的不透明度、高い機械的強度、及び高い美的特質を有する歯科材料を提供することができる。
【0025】
本発明の充填剤は、接着剤、人工歯冠、前部又は後部詰め物、鋳込材料、キャビティライナー、セメント、コーティング組成物、ミルブランク、歯列矯正装置、修復材、義歯、及びシーラントのような歯科材料中に使用され得る。
【0026】
充填剤を形成する方法
本発明は、歯科材料を作製する方法を目的とし、その方法では、水溶性有機結合剤が、非重金属ゾル(例えば、酸性シリカゾル)及び任意に重金属含有物質(例えば、酸化ジルコニウム又は別のか焼可能前駆体(pressures)化合物)と混合される。最初に、コロイダルシリカを含有する水性ゾルが、所望のか焼可能前駆体化合物(例えば、酢酸ジルコニウム)及び有機結合剤を含有する急速攪拌されるゾル又は溶液と混合される。いくつかの出発物質にとって、逆の添加順序は、最終的な微小粒子中の非晶質及び結晶性微小領域の不均一な散在をもたらし得る。混合物は、好ましくは、不均一なゲル化が起こるのを防ぐために十分に酸性であるべきである。例えば、pHはシリカ及び酢酸ジルコニウム混合物について、好ましくは約4.5未満である。
【0027】
混合物は次に、例えばpHを上げることにより、脱水により(例えば、「ロータリーエバポレーター(Rotovap)」装置を使用して)、又は混合物をその沸点未満の温度に加熱することによりゲル化され得る。例えば、約75℃未満に加熱することによる脱水は、シリカ:酢酸ジルコニウム混合物について使用され得る。乾燥段階及び次の段階の間、混合物は任意にフォームに形成される。フォームは、総体積を、5、10、15パーセント以上、増加し得る。他の代替物では、混合物はフォームに形成されないが、例えば、噴霧乾燥され得るか、又は泡立ち若しくは噴霧なしに直接加熱され得る。
【0028】
ゲルは、出発物質中に存在する水又は他の溶媒の、並びに乾燥の結果としての空気の、有意な部分を含有してもよい。ゲルは、ゲルの沸騰を生じることなく水又は溶媒を取り除くために十分な温度及び圧力で、例えば75℃及び周囲気圧で20〜24時間加熱され、それによって乾燥された又は実質的に乾燥された固体をもたらす。この固体は、典型的には、ゾルの初期の泡立ちの結果として取り込まれた空間をなお含有する。取り込まれた空間は、粒子の分離を促進し、密度のそれほど高くない粒子の、よりゆるいクラスタを結果として生じる。しかしながら、上述のように、ゲル化、噴霧、又は他の方法は、本発明の実施に対して任意であり、満足の行く充填剤は、こうしたゲル化工程なしに形成され得る。
固体は次に、実質的にすべてのこうした有機化合物を取り除くのに十分な温度及び圧力で酸素含有環境において、例えば、200℃〜850℃、好ましくは300℃〜600℃で大気圧で2〜4時間、空気中で加熱される。有機化合物除去の程度を決定するために、示差熱分析又は重量分析が使用され得る。結果として生じる粉末は、非常に砕けやすく、更に粉砕され得る。
【0029】
粉末は、次に、前駆体を多結晶のセラミック金属酸化物に変換するために十分な温度及び時間で焼成される。焼成時間及び温度は一般に過剰にならないようにするべきであるが、これは、シリコンの酸化物をその非晶質の状態に保持すること、約0.4マイクロメートルを超える直径を有する結晶性微小領域の成長又は形成を防ぐこと、及び空隙の発生を減らすために微小粒子の稠密化を回避することが望ましいためである。焼成周期中、微小粒子は、密度、表面積、気孔体積、及び孔径の有意な変化を経験する。焼成中、表面積及び気孔体積が減少する傾向がある一方で、密度は増加する傾向がある。
【0030】
既に上述の要因に加えて、より高い焼成温度は、微小粒子の硬化を高めまた吸水率を低下する傾向がある。より高い焼成温度は、典型的にはまた、焼成された微小粒子から調製される歯科複合材料についての、より速い重合硬化時間をもたらす。
【0031】
焼成は、例えば、マッフル炉中で、ガラス質のシリカボート中の浅い層(例えば、25mmの深さ)の中に定置されたシリカゾル、か焼可能な前駆体及び有機結合剤を含有する乾燥された混合物を用いて実行され得る。焼成された生成物は次に粉砕再生されて、所望の平均粒径、例えば50マイクロメートル未満を有する微小粒子を提供する。粉砕再生は、従来の機器を使用して実行され得、好ましくは、微小粒子と同じ屈折率を有する粉砕媒体を用いる。
【0032】
微小粒子中のシリコンの酸化物とセラミック金属酸化物との相対モル比は、所望の屈折率及び放射線不透過性度を提供するように調整されるべきである。SiO2:ZrO2微小粒子については、SiO2とZrO2とのモル比は、望ましくは約2:1以上であり、約3:1〜9:1の値が好ましく、及び約5:1〜7.5:1の値が最も好ましい。他のシリカ:セラミック金属酸化物混合物を含有する微小粒子については、シリカとセラミック金属酸化物との比は、微小粒子中の所望の屈折率及び他の所望の物理的特性の実現と一致した所望の放射線不透過性度、並びに微小粒子により調製される歯科複合材料中の所望の視覚的不透明度、耐久性、硬化安定性、及び他の所望の物理的特性の実現を提供するように調整され得る。シリコンの酸化物とセラミック金属酸化物との相対比はまた、それにより調製される歯科複合材料についての重合硬化時間の速度に影響する可能性があり、シリコンの酸化物のより高い含有量は、典型的にはより速い硬化時間をもたらす。
【0033】
可視光の最短波長に対応する寸法である約0.4マイクロメートルを超える直径を有する、微小粒子内の結晶性微小領域又は不均質(例えば、空隙)の形成を回避することは時には望ましい。微小粒子中のこうした結晶性微小領域又は不均質の存在は、望ましくないことに、それにより調製される歯科複合材料の視覚的不透明度を高める可能性がある。したがって、いくつかの実施では、本発明の微小粒子は、こうした結晶性微小領域及び不均質の形成を実質的に阻止する又は防ぐ条件下で配合される。こうした結晶性微小領域及び不均質は、略して、以後、「視覚的に不透明にする介在物」と称されることがある。
【0034】
視覚的に不透明にする介在物の防止は、シリカ出発物質及び/又はセラミック金属酸化物出発物質を、0.4マイクロメートル未満の孔径を有する超微細フィルターを通して濾過することにより実現され得る。好ましい濾過技術では、シリーズ最後のフィルターが、約0.2〜0.25マイクロメートル未満の孔径を有する、次第に細かくなっていく一連の「ボールストン(Ballston)」フィルターを用いる。出発物質の組み合わせにより形成されたゲルは、その後の加工中に汚染物質を含まないように保たれるべきである。
【0035】
ゲルから得られた乾燥及び粉砕された固体の焼成中、視覚的に不透明にする介在物を形成するのに十分な程度にまで結晶性微小領域の成長を促進する場合がある、又は微小粒子内の様々な無機種間の反応及び視覚的に不透明にする介在物を含有する新しい結晶性微小領域の形成を促進する場合がある、焼成温度及び時間を回避するように注意するべきである。一般に、約1100℃を超える焼成温度は、視覚的に不透明にする介在物の形成を促進する傾向があり(通常、大きくなった若しくは新しい結晶性微小領域として、又は空隙若しくは割れ目として)、したがって回避されるべきである。
【0036】
本発明の可視光硬化歯科複合材料中で使用されるとき、微小粒子の屈折率は、好ましくは、複合樹脂の屈折率と適合されるべきであり、例えば約プラス又はマイナス0.05以内、より好ましくは約プラス又はマイナス0.005以内であるべきである。現在使用される樹脂に関して、微小粒子は、好ましくは、1.60未満の屈折率を有する。微小粒子の屈折率を調整するための好ましい方法は、シリコンの酸化物とセラミック金属酸化物との比を変更することによる。微小粒子の屈折率は、出発混合物中のシリカとセラミック金属酸化物(又はか焼可能前駆体化合物が用いられる場合にはセラミック金属酸化物と同等のもの)との相対的体積パーセントの比較に基づく補間により、およそ予測され得る。
【0037】
焼成中の微小粒子の融解及びガラス質介在物の形成を生じる場合がある、溶剤の混和を回避することは望ましい。
【0038】
また出発混合物は、好ましくはクロライドイオンを実質的に含まず、これはクロライドイオンは、焼成された微小粒子を含有する歯科複合材料が、望ましくない変色並びに低減された貯蔵寿命を示す原因となる可能性があるためである。
【0039】
倍率又は光学倍率下でなく見られるとき、本発明の微小粒子は、典型的には、均一の外観を有する超微粒子状の白色又はオフホワイトの粉末である。こうした微小粒子のミクロ構造の識別は、好ましくは、透過電子顕微鏡法(「TEM」)を使用して実行される。走査電子顕微鏡(「SEM」)は、典型的には、ミクロ構造を適切に明らかにしないが、これはSEM下では、微小粒子は均一の灰色の外観を有するためである。しかしながらTEM下では、微小粒子のミクロ構造は非常に独特なものであり、容易に認識され得る。ここで図1を参照すると、先行技術の組成物のTEMが示されている。大きいジルコン酸塩のクラスタが、より小さいシリカの微小粒子によって囲まれているのが観察される。対照的に、本発明により作製された組成物のTEMである図2は、よく分散したジルコン酸塩及びシリカ微小粒子を示している。
【0040】
本発明の歯科材料中に使用される非重金属酸化物粒子は、好ましくは、約100nm未満の平均径を有し、より好ましくは、粒子は平均径において約50nmである。これらの測定値は、好ましくは、TEM(透過電子顕微鏡法)に基づいており、それによって、図1に示されるもののような粒子の集団が、平均粒径を得るために分析される。粒径を測定するために好ましい方法は、試験方法の項において以下に提示される。本発明の歯科材料中に使用される非重金属粒子は、好ましくは実質的に球形であり、かつ、実質的に多孔性ではない。シリカは、好ましくは本質的に純粋であるが、それは少量の安定化イオン、例えばアンモニウム及び硝酸塩を、任意に微量の他のイオン、例えばアルカリ金属酸化物と共に含有することが可能である。
【0041】
実質的に非晶質であり、並びに非重金属酸化物及び重金属酸化物のナノサイズの粒子から構成される充填剤を歯科材料に装填することで、放射線不透過性と所望の程度の強度、透光性、及びつやの組み合わせを付与することが見出されている。本発明の充填剤を、硬化可能な樹脂中に定置することは、長時間のかつ反復的な磨耗、即ち歯のブラッシングを受けた後でさえも、それらのつやを保持する優れた性能を有する歯科材料を提供する。
【0042】
本発明の方法の結果として生じる充填剤は、分離した1次粒子の弱く結合した集合体又はクラスタであり、これは本発明の材料のTEMである図2に見られるように共に集まって一団となっている。
【0043】
歯科材料は、典型的には、有意な強度を明示する。強度は、圧縮強度及び直径引張り強度のような機械的測定値を特徴とし得る。歯科材料中の高い圧縮強度は、歯科治療、置換、及び修復に対して咀嚼により発揮される力に対して有利である。直径引張り強度は、引張応力を材料中に導入する圧縮力に耐える歯科材料の能力を示唆する。本発明の歯科材料は好ましくは、少なくとも約20MPaの圧縮強度を有し、より好ましくは、材料は少なくとも約200MPaの圧縮強度を有し、最も好ましくは、材料は少なくとも約350MPaの圧縮強度を有する。本発明の硬化された歯科材料は、好ましくは、少なくとも約15MPa、より好ましくは、少なくとも約40MPa、最も好ましくは、少なくとも約60MPaの直径引張り強度を有する。
【0044】
歯科材料の美的品質は、多少主観的な特徴であるが、1つの態様では視覚的不透明度測定により、好ましくは定量化され得る。視覚的不透明度は、歯科材料の透光性の程度を示し、低い視覚的不透明度は、硬化した歯科材料が、実物のような輝きを有することになるため望ましい。本発明の歯科材料は、好ましくは、約0.05〜0.5、より好ましくは、約0.05〜0.35、最も好ましくは約0.05〜0.25のマクベス光学密度を有する。
【0045】
歯科材料の滑沢性はまた、材料の美的特質及び品質に寄与する。研磨の際、つやつやした仕上げ及び実物のような輝きを有する歯科材料の性能が極めて望ましい。更により大きい利益は、反復的な磨耗接触、例えば歯のブラッシングの後でさえもその輝きを保持する硬化された材料の性能である。歯科修復の好ましい実施形態において作製されたとき、本発明の材料は、高い滑沢性を有し、並びにつや及び輝きを歯の反復的ブラッシングの後で保持することができる。
【0046】
硬化された、研磨された歯科材料のそのつやを保持する能力を評価するために、表面粗さ測定は、好ましくは、材料に歯ブラシ耐磨耗性試験(Toothbrush Abrasion Resistance Test)を受けさせることにより決定され得る。一般的に表面計とも称される表面粗さ分析器を使用して、歯ブラシ耐磨耗性試験後の材料の粗さ(又は平滑度)が測定され得る。表面粗さを得るために好ましい装置は、試験方法において以下に記載される試験手順を使用するWYKO RST PLUS サーフェス・プロファイリング・システム(WYKO RST PLUS Surface Profiling System)(ワイコ社(WYKO Corporation)、アリゾナ州ツーソン(Tuscon))である。表面粗さ測定は、中心線より上及び下の輪郭の平均高さを測定することにより、表面内の平均の変動を提供する。本発明の歯科材料に歯ブラシによる耐磨耗性試験を受けさせた後、歯科材料は、好ましくは約0.2μm未満;より好ましくは約0.15μm未満の表面粗さを有する。
【0047】
本発明の材料は、好ましくは、良好なレオロジー特性を所有する。これらの特性、並びに強度は、粒子の表面を処理する表面改質剤を使用することにより、強化され得る。表面処理(表面改質)は、粒子の分散性、及びマトリックス中に結合するそれらの能力を強化する。
【0048】
本発明の充填剤は、歯科複合材料を作り出すために、重合可能樹脂と組み合わさることができる。本発明の歯科複合材料中に使用するために好適な重合可能樹脂は、十分な強度、加水分解安定性、及びそれらを口腔環境において使用するのに好適にする非毒性を有する硬化可能有機樹脂である。
【0049】
こうした樹脂の例には、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、及びエポキシ樹脂、例えば米国特許第3,066,112号、同第3,539,533号、同第3,629,187号、同第3,709,866号、同第3,751,399号、同第3,766,132号、同第3,860,556号、同第4,002,669号、同第4,115,346号、同第4,259,117号、同第4,292,029号、同第4,308,190号、同第4,327,014号、同第4,379,695号、同第4,387,240号、及び同第4,404,150号に示されるもの、並びにこれらの混合物及び誘導体が挙げられる。
【0050】
本発明に使用するために好ましい重合可能樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルメタクリレート(頻繁に「BIS−GMA」と称される)と、トリエチレングリコールジメタクリレート(頻繁に「TEGDMA」と称される)との混合物である。
【0051】
施術者は、一般に、時間の節約に多くの場合つながるような良好な操作特性を歯科材料に所望する。例えば、歯科修復作業では、歯科材料が姿勢を崩さないことが望ましいが、これは施術者が材料を口の中に定置し、材料を輪郭削り及び先端削りによって操作した後で、材料が硬化するまで付与した形状がそのまま保持されることを、施術者が一般に望むからである。
【0052】
修復作業のために使用される、十分に高い降伏応力を有する材料は、一般に姿勢を崩さず、即ち、それらは重力による応力下で流動しない。
【0053】
「輪郭削り」は、材料を、それが自然の歯科解剖学に似るように、(歯科器具を使用して)成形するプロセスを指す。容易な輪郭削りのために、材料は、歯科器具を用いた操作後に、それらの形状を維持するのに十分に高い粘度を有するべきであるが、材料を成形するのが困難であるほどその粘度が高くあるべきではない。「先端削り」は、歯科材料を、材料が天然歯列になじむように、薄いフィルムに低減するプロセスを指す。これは、操作される材料と天然歯列の縁のところで歯科器具を用いて行われる。
【0054】
形状又は表面トポグラフィーの更なる変更を最小にするために、歯科材料が、配置用器具に粘着しないことがまた望ましい。
【0055】
本発明の歯科材料が修復用である好ましい実施形態では、歯科材料は、好ましくは、姿勢をほとんど崩さないが、容易に適合し、例えばキャビティ形成には容易に適合され、並びに容易に輪郭削り及び先端削りがなされる。好ましくは、本発明の歯科材料は配置用器具に粘着せず、有利なことに、例えば歯牙構造を修復するなどの歯科手順に使用するのに、全体的に迅速かつ容易である。
【0056】
本発明の充填剤は、典型的には、完全には稠密化されない。本明細書で使用されるとき、用語「完全に稠密化」は、B.E.T窒素技術(標本が接触しているガスからのN2分子の吸着に基づく)のような標準的分析技術により検出可能な、開放気孔率を実質的に有しない、理論密度に近い粒子を表している。こうした測定値は、試料の単位重量あたりの表面積についてのデータをもたらし(例えば、m2/g)、これは、開放気孔率を検出するために、同一サイズの完全微小球の質量についての単位重量あたりの表面積と比較され得る。こうした測定値は、ニューヨーク州ショセット(Syossett)のカンタクローム社(Quantachrome Corporation)により作製されたカンタソーブ(Quantasorb)装置上で得られてもよい。密度測定値は、空気、ヘリウム、又は水の比重瓶を使用して得てもよい。
【0057】
本明細書において「ゾル−ゲル」法と称される、本発明の微小粒子を調製するための好ましい方法は、(1)非晶質シリカの水性又は有機分散体若しくはゾルと、(2)所望の放射線不透明化セラミック金属酸化物、又は所望の放射線不透明化セラミック金属酸化物にか焼可能な前駆体有機若しくは無機化合物の、水性又は有機分散体、ゾル、若しくは溶液と、(3)水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤物質とを混ぜ合わせることを伴う。前述のシリカの分散体又はゾルは、略して、以後、「シリカ出発物質」と称されることがあり、及び前述の放射線不透明化セラミック金属酸化物又は前駆体化合物の分散体、ゾル、若しくは溶液は、以後「セラミック金属酸化物出発物質」と称されることがある。シリカ出発物質とセラミック金属酸化物出発物質との混合物は、固体に乾燥され、粉砕、焼成、及び粉砕再生されて本発明の微小粒子を形成する。微小粒子は次に、適切な樹脂と混ぜ合わされて本発明の複合体を形成し得る。
【0058】
ゾル−ゲル法では、水性又は有機シリカ出発物質のいずれもが用いられ得るが、水性シリカ出発物質が経済上の理由から好ましい。好適な水性シリカ出発物質は、好ましくは、コロイダルシリカを、約1〜50重量パーセント、より好ましくは15〜35重量パーセントの濃度で含有する。好適な有機シリカ出発物質には、エタノール、ノルマル又はイソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、及び様々な「セロソルブ(Cellosolve)」グリコールエーテルのような有機溶媒(好ましくは水混和性極性有機溶媒)中のシリカのコロイド状分散体を含有するオルガノゾルが挙げられる。シリカ出発物質中のコロイダルシリカ粒子のサイズは、例えば、0.001〜0.1マイクロメートル、好ましくは約0.002〜0.05マイクロメートルにおいて異なることができる。
【0059】
本発明に使用され得る好ましいシリカ出発物質には、E.I.デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー(E. I. DuPont de Nemours and Co.)から商標「ルドックス(Ludox)」によりで販売される水性ゾルが挙げられる。他の有用なシリカ出発物質には、商標「Nalco」、「Syton」、及び「Nyacol」により販売される分散体又はアクアゾルが挙げられる。
【0060】
追加の好適な市販のシリカ出発物質は、前記米国特許第3,709,706号及び同第3,793,041号の中の一覧表に示されている。
【0061】
好適な、か焼可能な前駆体化合物は、好ましくは、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、プロピレート、クエン酸塩、若しくはアセチルアセトネート)又は鉱酸の塩(例えば、硝酸塩若しくは炭酸塩)であり、利用可能性及び取り扱いやすさから決定される特定の前駆体化合物の選ばれたものである。前駆体化合物の使用は、沈殿若しくは望ましくない結晶性微小領域をゲル化の前に形成する場合があるか、又は水溶性若しくは酸可溶性化合物、あるいは有色の不純物を微小粒子中に形成する場合があり、好ましくは回避されるべきである。本発明に有用な、代表的な前駆体化合物には、酢酸ジルコニウム、酢酸バリウム、硝酸ランタン、硝酸ストロンチウム、及び硝酸タンタル(tantalum nitrate)が挙げられる。
【0062】
所望であれば、それ自体は十分な放射線不透過性を提供しなくてもよい他の金属酸化物が、本発明の微小粒子中に包含され得る。こうした他の金属酸化物は、例えば、微小粒子の様々な物理的特性(例えば、屈折率、硬度、密度、若しくは気孔率)又はそれらにより調製される歯科複合材料の物理的特性(例えば、硬化前の粘度、又は硬化後の圧縮強度、引張り強度、若しくは視覚的不透明度)を調整するために有用であり得る。こうした他の金属酸化物には、Al23及びCaOが挙げられる。上記の調製のゾル−ゲル法が用いられるとき、こうした他の金属酸化物は、所望の他の金属酸化物を含有する分散体若しくはゾル(又は所望の他の金属酸化物に、か焼可能な前駆体組成物を含有する好適な分散体若しくはゾル)を、シリカ出発物質及びセラミック金属酸化物出発物質と共に混ぜ合わせることにより、最終的な微粒子の中に導入され得る。
【0063】
好ましいナノサイズのシリカはナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)(イリノイ州ネーパービル(Naperville))から製品表記ナルコ・コロイダルシリカズ(NALCO COLLOIDAL SILICAS)により市販されている。例えば、好ましいシリカ粒子は、ナルコ(NALCO)製品1040、1042、1050、1060、2327、及び2329を使用することで得られる。
【0064】
特定の実施では、充填剤の樹脂中への混和は、充填剤を表面処理することにより促進され得る。表面処理は、硬化可能樹脂中での充填剤の安定化を強化し、樹脂中の充填剤の安定な分散を提供する。本明細書で使用されるとき、「安定な」は、例えば、室温(約20〜22℃)、大気圧、及び過剰の電磁力がないという標準的な周囲条件下で、ある時間、例えば約24時間放置された後に、充填剤が沈殿又は疑集しない歯科材料を意味する。好ましくは表面処理は、充填剤が硬化可能樹脂中によく分散され、及び実質的に均質な組成物を結果として生じるように、充填剤を安定化させる。その上、充填剤が、その表面の少なくとも一部分にわたって表面処理剤により改質され、硬化中に安定化された粒子が硬化可能樹脂と共重合できる、ないしは別の方法で反応できることは好ましい。
【0065】
本発明の充填剤は、樹脂適合化表面処理剤により処理されてもよい。好適な表面処理又は表面改質剤には、樹脂と重合できるシラン処理剤が挙げられる。好適なシラン処理剤には、ウイトコ・OSi・スペシャリティーズ(Witco OSi Specialties)(コネティカット州ダンベリー(Danbury))から市販され取引表記A−174により市販されるγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びユナイテッド・ケミカル・テクノロジーズ(United Chemical Technologies)(ペンシルベニア州ブリストル(Bristol))から市販され取引表記G6720により入手可能な製品、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0066】
あるいは、表面改質剤の組み合わせが有用な可能性があり、剤の少なくとも1つは、硬化可能樹脂と共重合可能な官能基を有する。例えば、重合する基は、エチレン系不飽和であるか、又は開環重合を受ける環状機能であり得る。エチレン系不飽和の重合する基は、例えば、アクリレート基若しくはメタクリレート基、又はビニル基であり得る。開環重合を受ける環状機能は一般に、酸素、イオウ、又は、窒素のようなヘテロ原子を含有し、好ましくは、エポキシドのような酸素を含有する3員環である。硬化可能樹脂と一般に反応しない他の表面改質剤が、分散性又はレオロジー特性を強化するために包含され得る。この種類のシランの例には、例えばアリールポリエーテル、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、又はアミノアルキル官能性シランが挙げられる。
【0067】
良好な透光性を実現するために、光が材料を通過するときの光の分散を最小にすることは望ましい。これは、好ましくは、充填剤と樹脂の平均屈折率を適合させることによって達成される。本発明の歯科材料のために有用な樹脂は、好ましくは及び一般に、例えば、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、又はこれらの混合物のように、硬化されてポリマー網状組織を形成できる熱硬化性樹脂である。好ましくは、硬化可能樹脂は、1つ以上のマトリックス形成オリゴマー、モノマー、若しくはポリマー、又はそれらのブレンドから作製される。
【0068】
本発明の歯科材料が歯科複合材料である好ましい実施形態では、使用するために好適な重合可能樹脂には、それらを口内環境での使用に好適にするように、十分な強度、加水分解安定性、及び非毒性を有する硬化可能有機樹脂が挙げられる。こうした樹脂の例には、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、カルバモイルイソシアヌレート(carbamoylsiocyanurate)、及びエポキシ樹脂、例えば米国特許第3,066,112号、同第3,539,533号、同第3,629,187号、同第3,709,866号、同第3,751,399号、同第3,766,132号、同第3,860,556号、同第4,002,669号、同第4,115,346号、同第4,259,117号、同第4,292,029号、同第4,308,190号、同第4,327,014号、同第4,379,695号、同第4,387,240号、及び同第4,404,150号に示されるもの、並びにこれらの混合物及び誘導体が挙げられる。
【0069】
好適な硬化可能樹脂の1つの部類は、フリーラジカル活性官能基を有する物質であり、及び1つ以上のエチレン系不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられる。あるいは、硬化可能樹脂は、カチオン活性官能基を包含する樹脂の部類からの物質であり得る。別の代替物では、カチオン硬化可能樹脂及びフリーラジカル硬化可能樹脂の両方を包含する硬化可能樹脂の混合物が、本発明の歯科材料のために使用されてもよい。
【0070】
フリーラジカル活性官能基を有する硬化可能樹脂の部類では、本発明に使用するために好適な物質は、少なくとも1つのエチレン系不飽和結合を含有し、及び付加重合を経験することができる。こうしたフリーラジカル重合可能物質には、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルメタクリレート(「Bis−GMA」)、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレートのようなモノ−、ジ−又はポリアクリレート及びメタクリレート;分子量200〜500のポリエチレングリコールのビス−アクリレート及びビス−メタクリレート、米国特許第4,652,274号の中のもののようなアクリレート化モノマーの共重合可能混合物、及び米国特許第4,642,126号のもののようなアクリレート化オリゴマー;並びに、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシナート、ジビニルアジパート及びジビニルフタレートのようなビニル化合物が挙げられる。所望であれば、これらのフリーラジカル重合可能物質の2つ以上の混合物が使用され得る。
【0071】
フリーラジカル重合(硬化)については、反応開始システムは、放射線、熱、又は酸化還元/自動硬化化学反応を介して、重合を開始するシステムから選択され得る。フリーラジカル活性官能基の重合を開始できる反応開始剤の部類には、任意に光増感剤又は促進剤と組み合わせられる、フリーラジカル生成光開始剤が挙げられる。こうした反応開始剤は、典型的に、波長200〜800nmを有する光エネルギーへの曝露に際し、付加重合するためのフリーラジカルを生成できるものであり得る。
【0072】
多様な可視又は近赤外光開始剤システムが、本発明に有用なフリーラジカル重合可能物質の光重合のために使用されてもよい。例えば、フリーラジカル重合(硬化)では、光開始システムは、本明細書に参考として組み込まれる米国特許第4,071,424号に記載されるように、アミンとα−ジケトンの2構成成分システムを介して重合を開始するシステムから選択され得る。あるいは、樹脂は、本明細書に参考として組み込まれる米国特許第5,545,676号に記載されるように、3構成成分又は3元の光開始剤システムと組み合わされ得る。
【0073】
3元の光開始剤(photoinitator)システムでは、第1構成成分は、ヨードニウム塩、即ちジアリールヨードニウム塩である。ヨードニウム塩は、増感剤及び供与体の存在下でモノマー中に溶解されるとき、好ましくはモノマー中に可溶性であり及び貯蔵安定性である(即ち、自発的に重合を促進しない)。それ故に、特定のヨードニウム塩の選択は、選択された特定のモノマー、ポリマー又はオリゴマー、増感剤及び供与体にある程度依存してもよい。好適なヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、同第3,741,769号、同第3,808,006号、同第4,250,053号、及び同第4,394,403号に記載されており、これらのヨードニウム塩の開示は本明細書に参考として組み込まれる。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl-、Br-、I-、又はC45SO3-のようなアニオンを含有する)、又は金属錯塩(例えば、SbF5OH-、又はAsF6-を含有する)であり得る。所望であれば、ヨードニウム塩の混合物が使用され得る。好ましいヨードニウム塩には、ジフェニルヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0074】
3元の光開始剤システムの第2構成成分は、増感剤である。増感剤は望ましくは、モノマー中に可溶性であり、及び400より大きく1200ナノメートルまで、より好ましくは400より大きく700ナノメートルまで、及び最も好ましくは400より大きく約600ナノメートルまでの波長範囲内のどこかで光吸収ができる。増感剤はまた、本明細書に参考として組み込まれる、米国特許第3,729,313号に記載される試験手順を使用して、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの増感ができてもよい。好ましくは、この試験に合格することに加えて、増感剤はまた、貯蔵安定性をある程度考慮して選択される。それ故に、特定の増感剤の選択は、選択された特定のモノマー、オリゴマー、又はポリマー、ヨードニウム塩及び供与体にある程度依存してもよい。
【0075】
好適な増感剤には、次の範疇の化合物:ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリルメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、及びピリジニウム染料を挙げることができる。ケトン(例えば、モノケトン又はα−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、及びp−置換アミノスチリルケトン化合物が、好ましい増感剤である。高い感度が必要な用途については、ジュロリジニル部分を含有する増感剤を用いるのが好ましい。高度の硬化(例えば、高度充填複合体の硬化)が必要な用途の場合、光重合に望ましい照射波長で、約1,000未満、より好ましくは約100未満の減衰係数を有する増感剤を用いるのが好ましい。あるいは、照射の際の励起波長において光吸収の低減を示す染料が使用され得る。
【0076】
例えば、ケトン増感剤の好ましい部類は、次の式を有する。
ACO(X)b
式中、XはCO又はCR56であり、ここでR5及びR6は同一であることも又は異なることもでき、及び水素、アルキル、アルカリール又はアラルキルであることができ、bは0又は1であり、A及びBは同一であることも又は異なることもでき、並びに置換(1つ以上の非干渉置換基を有する)若しくは非置換アリール、アルキル、アルカリール、若しくはアラルキル基であることができるか、又はA及びBは、置換若しくは非置換脂環式環、芳香環、芳香族複素環若しくは縮合芳香環であり得る環状構造を共に形成し得る。
【0077】
上記式の好適なケトンには、2,2−、4,4−又は2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ−2−ピリジルケトン、ジ−2−フラニルケトン、ジ−2−チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2−フルオロ−9−フルオレノン、2−クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1−又は2−アセトナフトン、9−アセチルアントラセン、2−、3−又は9−アセチルフェナアントレン、4−アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、バレロフェノン、2−、3−又は4−アセチルピリジン、3−アセチルクマリンなどのようなモノケトン(b=0)が挙げられる。好適なジケトンには、アントラキノン、フェナントレンキノン、o−、m−及びp−ジアセチルベンゼン、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−及び1,8−ジアセチルナフタレン、1,5−、1,8−及び9,10−ジアセチルアントラセンなどのようなアラルキルジケトンが挙げられる。好適なα−ジケトン(b=1及びX=CO)には、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、ベンジル、2,2’−3,3’−及び4,4’−ジヒドロキシルベンジル、フリル、ジ−3,3’−インドリルエタンジオン、2,3−ボルナンジオン(カンファーキノン)、ビアセチル、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ナフタキノン、アセナフタキノンなどが挙げられる。
【0078】
3元の反応開始剤システムの第3構成成分は、供与体である。好ましい供与体には、例えば、アミン(アミノアルデヒド及びアミノシランを包含する)、アミド(ホスホルアミドを包含する)、エーテル(チオエーテルを包含する)、尿素(チオ尿素を包含する)、フェロセン、スルフィン酸及びそれらの塩、フェロシアニドの塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミン酸及びその塩、キサントゲン酸塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、及びテトラフェニルボロン酸の塩が挙げられる。供与体は、非置換であることも、又は1つ以上の非干渉置換基により置換されることもできる。特に好ましい供与体は、窒素、酸素、リン、又はイオウ原子のような電子供与体原子、及び電子供与体原子に対してα位置にある炭素原子又はシリコン原子に結合された引き抜き可能水素原子を含有する。多種多様な供与体が米国特許第5,545,676号に開示されており、これは本明細書に参考として組み込まれる。
【0079】
あるいは、本発明に有用なフリーラジカル反応開始剤には、欧州特許出願第173567号、米国特許第4,737,593号、及び英国特許第2,310,855号(United Kingdom Pat No. GB 2,310,855)に記載されるような、アシルホスフィンオキシドの部類が挙げられる。こうしたアシルホスフィンオキシドは、次の一般式のものである
(R92−P(=O)−C(=O)−R10
式中、各R9は個々に、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキルのようなヒドロカルビル基であり得、そのいずれもがハロ−、アルキル−、若しくはアルコキシ基で置換され得るか、又は2つのR9基は結合してリン原子と共に環を形成することができ、並びに式中、R10は、ヒドロカルビル基、S−、O−、若しくはN−含有5若しくは6員複素環基、又は−Z−C(=O)−P(=O)−(R92基であり、式中Zは2〜6個の炭素原子を有するアルキレン又はフェニレンのような二価のヒドロカルビル基を表している。
【0080】
本発明に有用な好ましいアシルホスフィンオキシドは、R9及びR10基が、フェニル、又は低級アルキル−若しくは低級アルコキシ−置換フェニルであるものである。「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」とは、1〜4個の炭素原子を有するこうした基を意味する。最も好ましくは、アシルホスフィンオキシドは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)(商標)819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown))である。
【0081】
三級アミン還元剤が、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用されてもよい。本発明で有用な三級アミンの一例としては、エチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。反応開始剤は、存在するエチレン系不飽和化合物の重量に基づいて約0.1〜約5重量%のアシルホスフィンオキシドに加えることの、存在するエチレン系不飽和化合物の重量に基づいて約0.1〜約5重量%の三級アミンのような触媒的有効量で用いられ得る。
【0082】
400nmより大きく1200nmまでの波長で照射されたときにフリーラジカルの開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤には、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの25:75重量混合物(イルガキュア(IRGACURE)(商標)1700、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、2−ベンジル−2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(イルガキュア(IRGACURE)(商標)369、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタン(イルガキュア(IRGACURE)(商標)784DC、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの1:1重量混合物(ダロキュア(DAROCUR)(商標)4265、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、及びエチル−2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(ルシリン(LUCIRIN)(商標)LR8893X、BASF社(BASF Corp.)、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte))が挙げられる。
【0083】
本発明の歯科材料において、代わりに使用できる別のフリーラジカル反応開始剤システムには、ボレートアニオン及び相補的なカチオン染料を含むイオン性染料−対イオン錯体反応開始剤の部類が挙げられる。ボレート塩光開始剤は、例えば、米国特許第4,772,530号、同第4,954,414号、同第4,874,450号、同第5,055,372号、及び同第5,057,393号に記載されており、それらの開示は本明細書に参考として組み込まれる。これらの光開始剤(photointiators)に有用なボレートアニオンは、一般に次の式のものであり得る
1234-
式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、アルキル、アリール、アルカリル、アリル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、脂環式、及び飽和又は不飽和複素環基であり得る。好ましくは、R2、R3、及びR4はアリール基であり、並びにより好ましくはフェニル基であり、並びにR1は、アルキル基であり、より好ましくは二級アルキル基である。
【0084】
カチオン対イオンは、カチオン染料、四級アンモニウム基、遷移金属配位錯体などであり得る。対イオンとして有用なカチオン染料は、カチオン性のメチン、ポリメチン、トリアリールメチン、インドリン、チアジン、キサンテン、オキサジン、又はアクリジン染料であり得る。より具体的には、染料は、カチオン性のシアニン、カルボシアニン、ヘミシアニン、ローダミン、及びアゾメチン染料であってもよい。有用なカチオン染料の具体例には、メチレンブルー(Methylene Blue)、サフラニン(Safranine)O、及びマラカイトグリーン(Malachite Green)が挙げられる。対イオンとして有用な四級アンモニウム基は、トリメチルセチルアンモニウム、セチルピリジニウム、及びテトラメチルアンモニウムであり得る。他の有機親和性カチオンには、ピリジニウム、ホスホニウム、及びスルホニウムを挙げることができる。使用されてもよい感光性遷移金属配位錯体には、ピリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチルフェナントロリン、2,4,6−トリ(2−ピリジル−s−トリアジン)及び関連した配位子などの配位子を有するコバルト、ルテニウム、オスミウム、亜鉛、鉄、及びイリジウムの錯体、が挙げられる。
【0085】
フリーラジカル活性官能基の重合を開始できる反応開始剤の更に別の代替的部類には、従来の化学的反応開始剤システム、例えば過酸化物とアミンとの組み合わせが挙げられる。これらの反応開始剤は、これは熱的酸化還元反応に依存するが、多くの場合「自動硬化触媒(auto-cure catalysts)」と称される。それらは、典型的には、二部システムとして供給され、その中で反応物質は、互いに離れて貯蔵され、その後使用直前に混ぜ合わされる。
【0086】
本発明の歯科材料のために有用である、フリーラジカル活性官能基の重合を開始できる反応開始剤の更に別の代替的部類は、フリーラジカル生成熱反応開始剤を包含するものである。例には、過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウリル、並びにアゾ系化合物、例えば2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。
【0087】
本発明の歯科材料に有用な硬化可能樹脂の代替的部類は、カチオン活性官能基を包含してもよい。カチオン活性官能基を有する物質には、カチオン重合可能エポキシ樹脂、ビニルエーテル、オキセタン、スピロ−オルトカーボネート、スピロ−オルトエステルなどが挙げられる。
【0088】
カチオン活性官能基を有する好ましい物質は、エポキシ樹脂である。これらの物質は、モノマーのエポキシ化合物及びポリマー型のエポキシドを包含し、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であり得る。これらの物質は一般に、平均で、1分子あたり少なくとも1つの重合可能なエポキシ基を有し、好ましくは1分子あたり少なくとも約1.5、及びより好ましくは少なくとも約2つの重合可能なエポキシ基を有する。ポリマーのエポキシドには、末端エポキシ基を有する直鎖ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が挙げられる。エポキシドは純粋化合物であってもよいし、又は1分子あたり1つ、2つ、若しくはそれ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物であってもよい。1分子あたりのエポキシ基の「平均」数は、エポキシ含有物質中のエポキシ基の総数を、存在するエポキシ含有分子の総数で除することにより決定される。
【0089】
これらのエポキシ含有物質は、低分子量のモノマー性物質から高分子量のポリマーまで変化してもよく、それらの骨格鎖及び置換基の性質において大いに変化してもよい。許容し得る置換基の実例としては、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、ホスフェート基などが挙げられる。エポキシ含有物質の分子量は、約58〜約100,000又はそれ以上にわたって変化してもよい。
【0090】
有用なエポキシ含有物質には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパートに代表されるエポキシシクロヘキサンカルボキシレートのようなシクロヘキサンオキシド基を含有するものが挙げられる。この種類の有用なエポキシドのより詳細な一覧については、米国特許第3,117,099号が参照され、これは本明細書に参考として組み込まれる。
【0091】
なお他のエポキシ樹脂は、アクリル酸エステル又はグリシドール、例えばグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートと、1つ以上の共重合可能なビニル化合物とのコポリマーを含有する。こうしたコポリマーの例は、1:1スチレン−グリシジルメタクリレート、1:1メチルメタクリレート−グリシジルアクリレート、及び62.5:24:13.5メチルメタクリレート−エチルアクリレート−グリシジルメタクリレートである。他の有用なエポキシ樹脂は、周知であり、及びエピクロロヒドリン、アルキレンオキシド、例えば、プロピレンオキシド、スチレンオキシド;アルケニルオキシド、例えば、ブタジエンオキシド;グリシジルエステル、例えば、エチルグリシデートのようなエポキシドを含有する。
【0092】
様々なエポキシ含有物質のブレンドもまた企図される。こうしたブレンドの例は、低分子量(200未満)、中分子量(約200〜10,000)及びより高分子量(約10,000超)のような、エポキシ含有化合物の2つ以上の重量平均分子量分布を包含する。あるいは又は更に、エポキシ樹脂は、脂肪族及び芳香族ような異なる化学的性質、又は極性及び非極性のような異なる官能基を有する、エポキシ含有物質のブレンドを含有してもよい。
【0093】
本発明に使用され得る多数の市販のエポキシ樹脂が存在する。特に、容易に入手可能なエポキシドには、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)から取引表記「Epon 828」、「Epon 825」、「Epon 1004」、及び「Epon 1010」、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)から「DER−331」、「DER−332」、及び「DER−334」として入手可能なもの)、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−4206」)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−4221」又は「シラキュア(CYRACURE)UVR 6110」又は「UVR 6105」)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキセンカルボキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−4201」)、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパート(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−4289」)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−0400」)、ポリプロピレングリコールから変性された脂肪族エポキシ(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−4050」及び「ERL−4052」)、ジペンテンジオキシド(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−4269」)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、FMC社(FMC Corp.)からの「オキシロン(Oxiron)2001」)、エポキシ官能基含有シリコン樹脂、難燃剤エポキシ樹脂(例えば、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)からの臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、「DER−580」)、フェノールホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)からの「DEN−431」及び「DEN−438」)、並びにレゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、コッパーズ社(Koppers Company, Inc.)からの「コポキサイト(Kopoxite)」)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジパート(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−4299」又は「UVR−6128」)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5、5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「ERL−4234」)、ビニルシクロヘキセンモノオキシド1,2−エポキシヘキサデカン(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)からの「UVR−6216」)、アルキルC8〜C10グリシジルエーテルのようなアルキルグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)7」)、アルキルC12〜C14グリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)8」)、ブチルグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)61」)、クレシルグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)62」)、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)65」)、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテルのような多官能性グリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)67」)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)68」)、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)107」)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)44」)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)48」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)84」)、ポリグリコールジエポキシド(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「ヘロキシ・モディファイアー(HELOXY Modifier)32」)、ビスフェノールFエポキシド(例えば、チバ−ガイギー社(Ciba-Geigy Corp.)からの「EPN−1138」又は「GY−281」)、9,9−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]フルオレノン(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からの「Epon 1079」)が挙げられる。
【0094】
共にブレンドされた1つ以上のエポキシ樹脂を使用することはまた、本発明の範囲内である。樹脂の異なる種類が、いずれかの比率において存在し得る。任意に、モノヒドロキシ−及びポリヒドロキシアルコールが、エポキシ樹脂のための鎖延長剤として、本発明の硬化可能組成物に加えられてもよい。本発明に使用されるヒドロキシル含有物質は、少なくとも1つ、及び好ましくは少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有するいずれかの有機物質であり得る。
【0095】
好ましくは、ヒドロキシル含有物質は、2つ以上の一級又は二級脂肪族ヒドロキシル基(即ち、ヒドロキシル基が非芳香族炭素原子に直接結合している)を含有する。ヒドロキシル基は末端に位置し得るか、又はそれらは、ポリマー若しくはコポリマーのペンダントであり得る。ヒドロキシル含有有機物質の分子量は、極低(例えば、32)〜極高(例えば、100万以上)で変動できる。好適なヒドロキシル含有物質は、低分子量、即ち、約32〜200、中分子量、即ち、約200〜10,000、又は高分子量、即ち、約10,000超を有することができる。本明細書で使用するとき、すべての分子量は重量平均分子量である。
【0096】
ヒドロキシル含有物質は、室温でカチオン硬化を実質的に妨げない他の官能基を任意に含有し得る。したがって、ヒドロキシル含有物質は事実上非芳香族でもあり得るし、又は芳香族官能基を含有し得る。ヒドロキシル含有物質は、最終的なヒドロキシル含有物質が室温でカチオン硬化を実質的に妨げない限り、任意に分子の主鎖に、窒素、酸素、イオウなどのへテロ原子を含有することができる。ヒドロキシル含有物質は、例えば、天然由来又は合成調製されたセルロース系物質から選択され得る。もちろん、ヒドロキシル含有物質はまた、熱不安定性又は光分解不安定性の場合がある基を実質的に含まず、即ち、物質は、約100℃未満の温度において、又は光共重合可能組成物の所望の硬化状態の間に遭遇する場合がある化学光の存在下で揮発性構成成分を分解又は遊離しない。有用なヒドロキシル含有物質は、例えば、米国特許第5,856,373号に記載されており、これは本明細書に参考として組み込まれる。
【0097】
本発明の組成物中に使用されるヒドロキシル含有有機物質の量は、ヒドロキシル含有物質とエポキシドとの適合性、ヒドロキシル含有物質の当量及び官能基、最終硬化組成物における所望の物理的特性、所望の光硬化速度などのような要因に依存して、広い範囲にわたって変化してもよい。
【0098】
様々なヒドロキシル含有物質のブレンドが、本発明の歯科材料に有用である場合がある。こうしたブレンドの例は、低分子量(200未満)、中分子量(約200〜10,000)及びより高分子量(約10,000超)のような、ヒドロキシル含有化合物の2つ以上の分子量分布を包含する。あるいは又は更に、ヒドロキシル含有物質は、脂肪族及び芳香族のような異なる化学的性質、又は極性及び非極性のような異なる官能基を有する、ヒドロキシル含有物質のブレンドを含有し得る。更なる例として、2つ以上の多官能性ヒドロキシ物質の混合物、又は多官能性ヒドロキシ物質との1つ以上の単官能性ヒドロキシ物質の混合物を使用してもよい。
【0099】
カチオン活性官能基を含む樹脂を硬化するために、開始システムは、放射線、熱、又は酸化還元/自動硬化化学反応を介して、重合を開始するシステムから選択され得る。例えば、エポキシ重合は、無水物又はアミンのような熱硬化剤の使用により達成してもよい。無水物硬化剤の特に有用な例は、シス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物である。
【0100】
あるいはまた好ましくは、カチオン活性官能基を含む樹脂のための開始システムは、光活性化されるものである。触媒及び光開始剤業界で認められたカチオン光活性基の広い部類は、本発明の実施において使用されてもよい。光活性カチオン性原子核(cationic nuclei)、光活性カチオン性部分、及び光活性カチオン性有機化合物は、米国特許第4,250,311号;同第3,708,296号;同第4,069,055号;同第4,216,288号;同第5,084,586号;同第5,124,417号;同第4,985,340号;同第5,089,536号、及び同第5,856,373号に例示されるような物質の技術的に認識された部類であり、これらの特許の各々が本明細書に参考として組み込まれる。
【0101】
カチオン硬化可能物質は、上記のような3つの構成成分又は3元の光開始剤システムと、組み合わされ得る。3構成成分反応開始剤システムはまた、米国特許出願第08/838,835号及び同第08/840,093号に記載されており、それらの両方がここで認められるが、それらの各々は本明細書に参考として組み込まれる。
【0102】
カチオン硬化可能樹脂を硬化するために、有用な芳香族ヨードニウム錯塩(即ち、3元の光開始剤システムの第1構成成分)の例には、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−4−メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(3−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジ(4−フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−2−チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,5−ジメチルピラゾリル−4−フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、2,2’−ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(2,4−ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(2−ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムヘキサフルオアンチモナート(DPISbF6)が挙げられる。
【0103】
本発明の組成物中に使用するために好適な芳香族ヨードニウム錯塩の中で、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモナートは、好ましい塩である。これらの塩は、一般にそれらが、錯体イオンの他の芳香族ヨードニウム塩より速い反応を促進し、及び不活性有機溶媒中でより可溶性であるために好ましい。
【0104】
上述のように、3元の光開始剤システムの第2及び第3の構成成分は、それぞれ増感剤及び電子供与体である。本発明の歯科材料のカチオン重合において有用な増感剤は、フリーラジカル硬化物質について上記のものである。同様に、本発明の物質のカチオン重合のために有用な電子供与体には、フリーラジカル硬化物質について上記のものが挙げられる。しかしながら、カチオン硬化物質の場合には、電子供与体は、米国特許出願第08/838,835号、及び同第08/840,093号に説明される要件に好ましくは適合し、並びに重合可能組成物中に可溶性であり、それらの特許の両方がここで認められるが、その各々が本明細書に参考として組み込まれる。供与体はまた、他の要因、例えば、貯蔵安定性、並びに選択された重合可能物質、ヨードニウム塩、及び増感剤の性質を考慮して選択され得る。本発明のシステムに有用な場合がある供与体化合物の部類は、米国特許第5,545,676号に記載される供与体のいくつかから選択されてもよい。
【0105】
供与体は、典型的には、アリール基が1つ以上の電子求引性基により置換されている、アルキル芳香族ポリエーテル又はN−アルキルアリールアミノ化合物である。好適な電子求引性基の例には、カルボン酸、カルボン酸エステル、ケトン、アルデヒド、スルホン酸、スルホネート、及びニトリル基が挙げられる。
【0106】
N−アルキルアリールアミノ供与体化合物の好ましい基は、次の構造式によって表される:
【化1】

式中、R1は、独立して、H、C118アルキルであって、これは1つ以上のハロゲン、−CN、−OH、−SH、C118アルコキシ、C118アルキルチオ、C318シクロアルキル、アリール、COOH、COOC118アルキル、(C118アルキル)01−CO−C118アルキル、SO32、CN、又は1つ以上の電子求引性基によって任意に置換されるアリール基によって任意に置換されるか、又はR1基は結合して環を形成してもよく;及びArは、1つ以上の電子求引性基によって置換されるアリール基である。好適な電子求引性基には、−COOH、−COOR2、−SO32、−CN、−CO−C118アルキル、及び−C(O)H基が挙げられ、式中R2は、C118直鎖、分枝鎖、又は環状アルキル基であり得る。
【0107】
アリールアルキルポリエーテルの好ましい基は、次の構造式を有する:
【化2】

式中、n=1〜3であり、各R3は、独立してH、又はC118アルキルであって、これは1つ以上のハロゲン、−CN、−OH、−SH、C118アルコキシ、C118アルキルチオ、C318シクロアルキル、アリール、置換アリール、−COOH、−COOC118アルキル、−(C118アルキル)01−COH、−(C118アルキル)01−CO−C118アルキル、−CO−C118アルキル、−C(O)H、又は−C218アルケニル基により任意に置換され、及び各R4は、C118アルキルであり得、これは1つ以上のハロゲン、−CN、−OH、−SH、C118アルコキシ、C118アルキルチオ、C318シクロアルキル、アリール、置換アリール、−COOH、−COOC118アルキル、−(C118アルキル)01−COH、−(C118アルキル)01−CO−C118アルキル、−CO−C118アルキル、−C(O)H、又は−C218アルケニル基により任意に置換される。
【0108】
上式の各々において、アルキル基は、直鎖又は分枝鎖であり得、シクロアルキル基は、好ましくは3〜6個の環炭素原子を有するが、炭素原子の指定された数までの追加のアルキル置換を有してもよい。アリール基は、炭素環式又は複素環式アリールであってもよいが、好ましくは炭素環式であり、及びより好ましくはフェニル環である。
【0109】
好ましい供与体化合物には、4−ジメチルアミノ安息香酸、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、3−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾイン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、及び1,2,4−トリメトキシベンゼンが挙げられる。
【0110】
カチオン重合のための代替的光開始剤システムは、米国特許第4,985,340号に記載されるものから選択される金属水素化物又は金属アルキル官能基を本質的に含まない有機金属錯体カチオンの使用を包含し、及び次の式を有し、並びにこうした記載は本明細書に参考として組み込まれる:
[(L1)(L2)M]+q (1)
式中、
Mは、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Pd、Pt、及びNi、好ましくはCr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Pd、及びNi、並びに最も好ましくはMn及びFeからなる群から選択される金属を表す。
【0111】
1は、置換及び非置換シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、及びシクロヘプタトリエニル、シクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、置換又は非置換アレーン化合物及び2〜4の縮合環を有する化合物から選択される複素環式化合物及び芳香族化合物、並びにポリマーの単位、例えばポリスチレン、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(スチレン−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(a−メチルスチレン)などのフェニル基;ポリ(ビニルシクロペンタジエン)のシクロペンタジエン基;ポリ(ビニルピリジン)のピリジン基などからなる群から選択される、同一又は異なる配位子であり得る、1又は2の環状多価不飽和配位子を表し、各々がMの原子価殻に3〜8の電子を与えることができ;
2は、存在しないか、又は一酸化炭素、ケトン、オレフィン、エーテル、ニトロソニウム、ホスフィン、亜リン酸塩、並びに、ヒ素及びアンチモンの関連誘導体、有機ニトリル、アミン、アルキン、イソニトリル、二窒素の群から選択される同一又は異なる配位子であり得る、偶数の電子を与える1〜3個の非アニオン配位子を表し、ただし、Mに与える総電子電荷が、錯体に総残留正電荷qをもたらすことを条件とし;
qは1又は2の値を有する整数であり、錯体カチオンの残留電荷である。
【0112】
有機金属塩は、当該技術分野において既知であり、並びに例えば、EPO 094914、及び米国特許第5,089,536号、同第4,868,288号、及び同第5,073,476号に記載されるように調製され得、こうした記載は本明細書に参考として組み込まれる。
【0113】
好ましいカチオンの例には:
ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ジドデシルフェニルヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、及びビス(メトキシフェニル)ヨードニウム;トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、及び1,4−フェニレン−ビス(ジフェニルスルホニウム);ビス(η5−シクロペンタジエニル)鉄(1+)、ビス(η5−メチルシクロペンタジエニル)鉄(1+)、(η5−シクロペンタジエニル)(η5−メチルシクロペンタジエニル)鉄(1+)、及びビス(η5−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)鉄(1+);ビス(η6−キシレン)鉄(2+)、ビス(η6−メシチレン)鉄(2+)、ビス(η6−ジュレン)鉄(2+)、ビス(η6−ペンタメチルベンゼン)鉄(2+)、及びビス(η6−ドデシルベンゼン)鉄(2+);(CpFeXy(1+)と一般的に略される、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−キシレン)鉄(1+)、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)鉄(1+)、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−メシチレン)鉄(1+)、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−ピレン)鉄(1+)、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−ナフタレン)鉄(1+)、及び(η5−シクロペンタジエニル)(η6−ドデシルフェニル)鉄(1+)が挙げられる。
【0114】
あるいは、本発明に有用な硬化可能樹脂は、単一分子中に含有されるカチオン活性官能基及びフリーラジカル活性官能基の両方を有してもよい。こうした分子は、例えば、ジ−又はポリエポキシドと1当量以上のエチレン系不飽和カルボン酸とを反応させることにより得られてもよい。こうした物質の例は、UVR−6105(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)から入手可能)と1当量のメタクリル酸との反応生成物である。エポキシ及びフリーラジカル活性官能基を有する市販物質には、日本のダイセル化学(Daicel Chemical)から入手可能なサイクロマー(Cyclomer)M−100、M−101、又はA−200のような「サイクロマー(Cyclomer)」シリーズ、及びラドキュア・スペシャルティーズ(Radcure Specialties)から入手可能なエベクリル(Ebecryl)−3605が挙げられる。
【0115】
光開始剤化合物は、樹脂システムの硬化(cure又はhardening)を開始する又はその速度を増大するために有効な量で、本発明の歯科材料に好ましくは提供される。本発明に有用な光重合可能組成物は、「安全光」条件下において、上記の構成成分を単に混ぜ合わせることにより調製される。この混合物をもたらすとき、所望であれば、好適な不活性溶媒を用いてもよい。本発明の組成物の構成成分と感知できるほど反応しない、いずれかの溶媒が使用されてもよい。好適な溶媒の例には、アセトン、ジクロロメタン、及びアセトニトリルが挙げられる。重合される予定の液体物質は、別の重合される予定の液体又は固体物質のための溶媒として使用されてもよい。無溶媒の組成物は、芳香族ヨードニウム錯塩及び増感剤をエポキシ樹脂−ポリオール混合物中に、溶解を促進するために温和な加熱を使用して又は使用しないで、単に溶解することにより調製され得る。
【0116】
本発明の歯科材料は、硬化された樹脂の総重量に基づいて、好ましくは約35重量%〜約95重量%の本発明の充填剤を含有する。より好ましくは、充填剤は歯科材料の中に、約50重量%〜約85重量%の濃度で存在する。
【0117】
本発明の硬化可能樹脂及び充填剤を含む本発明の歯科材料を使用する好ましい方法では、材料は歯表面の近く又は上に定置され、その後材料のトポグラフィーを変えるために施術者又は研究室による操作が行われ、次に樹脂を硬化する。これらの工程は、順次に又は異なる順序で起こり得る。例えば、歯科材料がミルブランク又は義歯である好ましい実施形態では、硬化工程は、材料のトポグラフィーを変える前に、一般に完了している。材料のトポグラフィーを変えることは、手持ち式の器具を使用する手作業、又は機械若しくはコンピュータ支援装置、例えば義歯及びミルブランクの場合にはCAD/CAMフライス盤によることが挙げられる様々なやり方で達成され得る。任意に、仕上げ工程が行われて、歯科材料を磨く、仕上げる、又はその上にコーティングを適用することができる。
【0118】
以下の実施例は例示のために与えられるが、本発明の範囲を限定するものではない。すべての部及び百分率は、特に指定がない限り、重量によるものである。
【実施例】
【0119】
特に指定がない限り、すべての試薬及び溶媒は、ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Corp.)から入手された、又は入手可能なものである。スクロースは、カリフォルニア州クロケット(Crockett)のC&Hシュガー社(C&H Sugar Co., Inc.)により流通される、グラニュー糖として入手された。
【0120】
本明細書で使用するとき、
「ナルコ(NALCO)1060」は、イリノイ州ネーパービル(Naperville)のナルコ社(Nalco Co.)から取引表記ナルコ(NALCO)1060により入手可能なシリカゾルを指し;
「10/20ジルコニアゾル(10/20 ZIRCONIA SOL)」は、マサチューセッツ州アシュランド(Ashland)のナイアコール・ナノテクノロジーズ社(Nyacol Nano Technologies, Inc.)から取引表記「ナイアコール(NYACOL)ZR10/20」により入手可能な酸化ジルコニウムゾルを指し;
「GF−31」は、ドイツ、ミュンヘン(Munich)のワッカー・ケミー社(Wacker Chemie AG)から取引表記ゲニオジル(GENIOSIL)GF 31により入手可能な、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを指し;
「PEG−6000」は、カルビオケム(Calbiochem)から入手可能な、およそ6000の重量平均分子量を有する、ポリ(エチレングリコール)を指し;
「PVA」は、アルファ・エイサー(Alfa Aesar)から入手可能な低重量平均分子量を有する、およそ86〜89%加水分解されたポリ(ビニルアルコール)を指し;
「SiC」は、シリコンカーバイドを指す。
【0121】
歯ブラシ耐磨耗性試験
各実施例の矩形20×15×3mm厚さのペーストが、歯科用硬化光(ビジラックス(VISILUX)2;3M ESPEデンタル・プロダクツ(3M ESPE Dental Products))により80秒間硬化され、その後、ライトボックス(デンタカラー XS(DENTACOLOR XS);ニューヨーク州アーモンク(Armonk)の・ヘレウスクルツァー社(Heraeus Kulzer, Inc.))中で90秒間更に硬化された。試料は、ホルダーに両面接着テープにより設置された。設置された実施例は、次の手順により磨かれたが、その中で一連の工程は、研磨ヘッド(イリノイ州レークブラフ(Lake Bluff)のビューラー社(Buehler Ltd.,)から取引表記オートメット(AUTOMET)2により入手可能)を有する可変速度グラインダー/研磨機(イリノイ州レークブラフ(Lake Bluff)のビューラー社(Buehler Ltd.,)から取引表記エコメット(ECOMET)4により入手可能)を使用して、表1に示されるように順次行われた。


【表1】

【0122】
歯ブラシを用いた研磨及びブラッシング後、マイクロ−トリ−グロス器具(マイクロ−トリ−グロス(MICRO-TRI-GLOSS);メリーランド州コロンビア(Columbia)のBYK−ガードナー(BYK-Gardner))が使用されて、60°の角度で各試料の表面から反射された光の光電測定値を収集した。手順は一般に、ASTM D 523−89(1999年再承認)鏡面光沢度の標準試験方法(Standard Test Method for Specular Gloss)に記載されている。各試料は、歯ブラシ及び練り歯磨き(オーラルB 40(ORAL B 40)中位の直線状歯ブラシ;クレスト(CREST)標準フレーバー;オハイオ州シンシナティ(Cincinnati)のプロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter and Gamble Co.))を用いて合計2000周期の間、ブラッシングされた。各試料は、同じ歯ブラシを使用し、標準的な歯のブラッシング力とおよそ等しい力を使用して単一の作業者によりブラッシングされた。歯のブラッシングの1周期は、前方及び後方ストロークであった。2000の歯ブラシ周期後の各試料の光沢が、器具によって示唆されるように、光沢単位で測定されまた報告された。光沢単位のより高い値は、試料がより高い光沢を有したことを意味する。
【0123】
調製実施例1
硬化可能歯科樹脂組成物の調製
硬化可能歯科樹脂組成物が、本質的に米国特許第6,030,606号に記載されるように、調製された。
【0124】
調製実施例2
イオン交換されたシリカゾルの調製
シリカゾル(ナルコ(NALCO)1060、400g)が、酸性イオン交換樹脂(9.1g、取引表記アンバーライト(AMBERLITE)IR−120 Hにより入手可能、ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia)ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Co.))と共に2時間攪拌された。混合物は75μのナイロンメッシュを用いてろ過され、イオン交換されたシリカゾルを与えた。
【0125】
(実施例1)
スクロースを使用するシリカ−ジルコニア充填剤の調製
丸底フラスコが、調製実施例2の生成物(50.73g)及び70重量%の水性硝酸(1.49g)により満たされた。フラスコは、2つの内容物を混合するために回転された。10/20ジルコニアゾル(46.9g)が次にフラスコに加えられたが、これは構成成分を混合するために再び回転された。スクロース(70.3g)が次にフラスコに加えられて混合物中に溶解された。揮発性構成成分のいくらかが、ロータリーエバポレーターを使用して取り除かれ、フラスコ中に混合物の130gが残留した。この残留混合物が、プラスチックビーカー中に分割され、これらは次に、強制空気オーブン中に定置され、混合物をおよそ105℃で乾燥した。各ビーカー中の物質が乾燥されるとき、それは、各ビーカー中の混合物の体積の少なくともおよそ10倍の体積を有するフォームに膨張した。得られた乾燥混合物は、加熱炉の中でおよそ600℃の温度で8時間、オーブン中を通る100 SCFM空気流により、か焼されて揮発性反応生成物を取り除いた。得られた白色粉末生成物は、すり鉢とすりこぎを使用してすりつぶされ、30マイクロメートルのメッシュ開口部を有するポリアミド製ふるいを使用して一晩ふるいにかけられた。このふるいにかけられた白色粉末生成物の10.09gの部分は、プラスチック製広口瓶の中で、酢酸エチル(19.0g)、GF−31(1.08g)、脱イオン水(0.17g)、30重量%水性水酸化アンモニウム(5滴)、及び2.5重量%水性フッ化アンモニウム(5滴)と混ぜ合わされた。広口瓶は、ローラーミル上で一晩室温で回転され、次いで混合物は、ドラフト中のトレイの中に注がれ、室温で乾燥されて生成物を与えた。
【0126】
(実施例2)
シリカ−ジルコニア充填剤を包含する歯科組成物の調製
調製実施例1の硬化可能歯科樹脂、及び実施例1のシリカ−ジルコニア充填剤が、周期の間に3〜4分を置く8回の30秒混合周期中、3500rpmで、モデルDAC 150 FVZ スピードミキサー(Model DAC 150 FVZ SpeedMixer)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)のフラックテク社(FlackTek, Inc.)により製造)を使用して混ぜ合わされて、72重量%シリカ−ジルコニア充填剤である歯科組成物を調製した。組成物は上記のように硬化され、並びに研磨及びブラッシング後に測定された光沢が、上記のように測定された。光沢度は、86光沢単位であると決定された。
【0127】
(実施例3〜4)
スクロースを使用するシリカ−ジルコニア充填剤の調製
調製実施例2の生成物(1458.5g)、70重量%水性硝酸(40.6g)、酢酸ジルコニウム溶液(1183.9g、ニュージャージー州フレミントン(Flemington)のマグネシウム・エレクトロン社(Magnesium Elektron Inc.)から得られた)、及びスクロース(2002.6g)の混合物が、混合物が均質に見えるまで攪拌された。混合物は次に2つの部分に分割された。
【0128】
第1部分(実施例3)は、約0.9ミリメートル(0.035インチ)の分散コーティング厚さ及びおよそ1.6分の滞留時間(加熱プラテン温度143℃及び凝縮プラテン温度21℃)と共に、本質的に米国特許第5,980,697号及び同第5,694,701号に記載されるような間隙乾燥法を使用して乾燥され、淡褐色の粉末を設けた。この部分は、加熱炉の中でおよそ625℃の温度で16時間、オーブン中を通る180 SCFM空気流により、か焼されて揮発性反応生成物を取り除いた。得られた白色粉末生成物は、すり鉢とすりこぎを使用してすりつぶされ、30マイクロメートルのメッシュ開口部を有するポリアミド製ふるいを使用して一晩ふるいにかけられ、白色粉末を設けた。第2部分(実施例4)は、加熱炉の中に直接注がれ、か焼され、本質的に実施例3の物質について記載されたようにふるいにかけられて、白色粉末を設けた。
【0129】
実施例3及び4のか焼された粉末の各々(各々25g)が、プラスチック製広口瓶の中で、酢酸エチル(30g)、GF−31(2.5g)、脱イオン水(0.5g)、及び30重量%水性水酸化アンモニウム(0.5g)と混ぜ合わされた。各広口瓶は、ローラーミル上で一晩室温で回転され、次いで混合物は、ドラフト中のトレイの中に注がれ、室温で乾燥されて実施例3及び4の生成物を設けた。
【0130】
(実施例5〜6)
シリカ−ジルコニア充填剤を各々が包含する歯科組成物の調製
調製実施例1の硬化可能歯科樹脂、並びに実施例3及び4の各々のシリカ−ジルコニア充填剤が、周期の間に3〜4分を置く8回の30秒混合周期中、3500rpmで、モデルDAC 150 FVZ スピードミキサー(Model DAC 150 FVZ SpeedMixer)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)のフラックテク社(FlackTek, Inc.)により製造)を使用して混ぜ合わされて、それらの各々が72重量%シリカ−ジルコニア充填剤である、それぞれ、実施例5及び6の歯科組成物を調製した。各組成物は上記のように硬化され、並びに各試料の研磨及びブラッシング後に測定された光沢が、上記のように測定された。光沢度は、87光沢単位(実施例5)及び82光沢単位(実施例6)であると決定された。
【0131】
(実施例7〜10)
スクロースの異なる相対量を使用するシリカ−ジルコニア充填剤の調製
実施例7〜10のシリカ−ジルコニア充填剤は、表2に与えられる物質の量を使用して、本質的に実施例4に記載されるように調製された。乾燥粉末の各々が次に、本質的に実施例4に記載されるように、GF−31により処理されて生成物を与えた。
【表2】

【0132】
(実施例11〜14)
シリカ−ジルコニア充填剤を各々が包含する歯科組成物の調製
調製実施例1の硬化可能歯科樹脂、並びに実施例7〜10の各々のシリカ−ジルコニア充填剤が、周期の間に3〜4分を置く8回の30秒混合周期中、3500rpmで、モデルDAC 150 FVZ スピードミキサー(Model DAC 150 FVZ SpeedMixer)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)のフラックテク社(FlackTek, Inc.)により製造)を使用して混ぜ合わされて、それらの各々が72重量%シリカ−ジルコニア充填剤である、それぞれ、実施例11〜14の歯科組成物を調製した。各組成物は上記のように硬化され、並びに各試料の研磨及びブラッシング後に測定された光沢が、上記のように測定された。光沢度は、64光沢単位(実施例11)、81光沢単位(実施例12)、79光沢単位(実施例13)、及び84光沢単位(実施例14)であると決定された。
【0133】
(実施例15)
噴霧乾燥を使用するシリカ−ジルコニア充填剤の調製
調製実施例2の生成物(510.6g)、70重量%水性硝酸(13.7g)、酢酸ジルコニウム溶液(414.8g、ニュージャージー州フレミントン(Flemington)のマグネシウム・エレクトロン社(Magnesium Elektron Inc.)から得られた)、脱イオン水(923.2g)、及びスクロース(350.2g)の混合物が、混合物が均質に見えるまで攪拌された。混合物は次に、0.9m(3−フット)ニロ・スプレイドライヤー(Niro Spray Drier)(ニロ(Niro)0.9m(3−フット)モービル・マイナー(Mobile Minor)(商標)スプレイドライヤー(Spray Drier)、メリーランド州コロンビア(Columbia))を入口温度240℃及び出口温度80〜85℃、およそ50,000rpmで使用して噴霧乾燥されて粉末を与えた。粉末は次に、本質的に実施例3及び4に記載されるように、か焼され、ふるいにかけられ、次いでGF−31により処理されて生成物を設けた。
【0134】
比較例1
スクロースなしに調製された、噴霧乾燥されたシリカ−ジルコニア充填剤
調製実施例2の生成物(307.5g)、70重量%水性硝酸(8.9g)、酢酸ジルコニウム溶液(249.6g、ニュージャージー州フレミントン(Flemington)のマグネシウム・エレクトロン社(Magnesium Elektron Inc.)から得られた)、及び脱イオン水(557.4g)の混合物が、混合物が均質に見えるまで攪拌された。混合物は次に噴霧乾燥され、及び、生成物は本質的に実施例15に記載されるように、か焼され、ふるいにかけられ、次いでGF−31により処理されて生成物を設けた。
【0135】
(実施例16)
噴霧乾燥されたシリカ−ジルコニア充填剤を包含する歯科組成物
調製実施例1の硬化可能歯科樹脂、並びに実施例15のシリカ−ジルコニア充填剤(噴霧乾燥された:スクロースを使用して作製)が、周期の間に3〜4分を置く8回の30秒混合周期中、3500rpmで、モデルDAC 150 FVZ スピードミキサー(Model DAC 150 FVZ SpeedMixer)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)のフラックテク社(FlackTek, Inc.)により製造)を使用して混ぜ合わされて、71重量%シリカ−ジルコニア充填剤である歯科組成物を調製した。組成物は上記のように硬化され、並びに研磨及びブラッシング後に測定された光沢が、上記のように測定された。光沢度は、72光沢単位であると決定された。
【0136】
比較例2
噴霧乾燥されたシリカ−ジルコニア充填剤を包含する歯科組成物
調製実施例1の硬化可能歯科樹脂、並びに比較例1のシリカ−ジルコニア充填剤(噴霧乾燥された;スクロースなしに作製)が、周期の間に3〜4分を置く8回の30秒混合周期中、3500rpmで、モデルDAC 150 FVZ スピードミキサー(Model DAC 150 FVZ SpeedMixer)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)のフラックテク社(FlackTek, Inc.)により製造)を使用して混ぜ合わされて、62重量%シリカ−ジルコニア充填剤である歯科組成物を調製した。組成物は上記のように硬化され、並びに研磨及びブラッシング後に測定された光沢が、上記のように測定された。光沢度は、53光沢単位であると決定された。
【0137】
(実施例17)
PEG−6000を使用するシリカ−ジルコニア充填剤の調製
丸底フラスコが、調製実施例2の生成物(145.9g)及び70重量%の水性硝酸(4.15g)により満たされた。フラスコは、2つの内容物を混合するために回転された。酢酸ジルコニウム溶液(118.5g、ニュージャージー州フレミントン(Flemington)のマグネシウム・エレクトロン社(Magnesium Elektron Inc.)から得られた)が次にフラスコに加えられ、これは再び回転されて構成成分を混合した。PEG−6000(150g)が次にフラスコに加えられ、混合物中に溶解された。得られた混合物は、加熱炉の中でおよそ625℃の温度でおよそ16時間、オーブン中を通る150〜200 SCFM空気流により、か焼されて揮発性反応生成物を取り除いた。得られた生成物は、すり鉢とすりこぎを使用してすりつぶされ、30マイクロメートルのメッシュ開口部を有するポリアミド製ふるいを使用して一晩ふるいにかけられた。このふるいにかけられた白色粉末の25gの部分が、プラスチック製広口瓶の中で、酢酸エチル(30g)、GF−31(2.5g)、脱イオン水(0.5g)、及び30重量%水性水酸化アンモニウム(0.5g)と混ぜ合わされた。広口瓶は、ローラーミル上で一晩室温で回転され、次いで混合物は、ドラフト中のトレイの中に注がれ、室温で乾燥されて生成物を設けた。
【0138】
(実施例18)
PVAを使用するシリカ−ジルコニア充填剤の調製
PEG−6000の代わりにPVA(150g)が使用されたことを除いて、シリカ−ジルコニア充填剤が、本質的に実施例17に記載されるように調製された。
【0139】
(実施例19〜20)
シリカ−ジルコニア充填剤を各々が包含する歯科組成物の調製
調製実施例1の硬化可能歯科樹脂、並びに実施例17及び18の各々のシリカ−ジルコニア充填剤が、周期の間に3〜4分を置く8回の30秒混合周期中、3500rpmで、モデルDAC 150 FVZ スピードミキサー(Model DAC 150 FVZ SpeedMixer)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)のフラックテク社(FlackTek, Inc.)により製造)を使用して混ぜ合わされて、それらの各々が72重量%シリカ−ジルコニア充填剤である、それぞれ、実施例19及び20の歯科組成物を調製した。各組成物は上記のように硬化され、並びに各試料の研磨及びブラッシング後に測定された光沢が、上記のように測定された。光沢度は、85光沢単位(実施例19)及び66光沢単位(実施例20)であると決定された。
【0140】
本発明はいくつかの特定の実施に関して記載されてきたが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの変更を行ってもよいことを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科材料用充填剤を作製する方法であって、
a)非重金属酸化物ゾル及び水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤を混ぜ合わせる工程と、
b)前記混合されたゾルを、前記熱的に変わりやすい有機結合剤の少なくとも一部分を含有する乾燥生成物に乾燥する工程と、
c)前記乾燥生成物をか焼する工程と、
を含み、前記充填剤が、金属酸化物粒子の実質的に非晶質のクラスタを含む、歯科材料用充填剤の作製方法。
【請求項2】
有機結合剤の金属酸化物含有物質に対する比が、0.25以上である、請求項1に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項3】
前記水溶性有機結合剤が糖を含む、請求項1に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項4】
前記水溶性有機結合剤が二糖類を含む、請求項1に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項5】
金属酸化物含有物質が、前記非重金属ゾル及び水溶性の熱的に変わりやすい有機結合剤と混ぜ合わされる、請求項1に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項6】
歯科材料用充填剤を作製する方法であって、
a)非重金属酸化物ゾル、重金属酸化物含有物質、及び熱的に変わりやすい水溶性有機結合剤を混ぜ合わせる工程と、
b)前記混合されたゾルを、乾燥生成物に乾燥する工程と、
c)前記乾燥生成物をか焼する工程と、
を含み、前記充填剤が、非重金属酸化物粒子及び重金属酸化物の実質的に非晶質のクラスタを含む、歯科材料用充填剤の作製方法。
【請求項7】
有機結合剤の重金属酸化物含有物質に対する比が、0.25〜2である、請求項6に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項8】
有機結合剤の重金属酸化物含有物質も対する比が、0.75〜1である、請求項6に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項9】
前記水溶性有機結合剤が糖を含む、請求項6に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項10】
前記水溶性有機結合剤が二糖類を含む、請求項6に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項11】
前記水溶性有機結合剤が三糖類を含む、請求項6に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項12】
前記水溶性有機結合剤がスクロースを含む、請求項6に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項13】
前記水溶性有機結合剤がポリエチレングリコールを含む、請求項6に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項14】
前記水溶性有機結合剤がポリ(ビニルアルコール)を含む、請求項6に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項15】
前記フォームが、少なくとも10パーセント膨張する、請求項13に記載の充填剤を作製する方法。
【請求項16】
前記乾燥生成物を表面改質する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記乾燥生成物を硬化可能樹脂と混ぜ合わせる工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載のプロセスにより作製された充填剤。
【請求項19】
前記クラスタが、約5μm未満の平均直径を有する、請求項18に記載の充填剤。
【請求項20】
前記非重金属酸化物粒子が、約100nm未満の平均直径を有する、請求項18に記載の充填剤。
【請求項21】
前記クラスタが、約5μm未満の平均直径を有する、請求項18に記載の充填剤。
【請求項22】
前記クラスタが、約2μm未満の平均直径を有する、請求項18に記載の充填剤。
【請求項23】
前記シリカ粒子が、約100nm未満の平均直径を有する、請求項18に記載の充填剤。
【請求項24】
前記シリカ粒子が、約50nm未満の平均直径を有する、請求項18に記載の充填剤。
【請求項25】
前記重金属酸化物が、約100nm未満の平均直径を有する粒子である、請求項18に記載の充填剤。
【請求項26】
前記重金属酸化物が、約50nm未満の平均直径を有する粒子である、請求項18に記載の充填剤。
【請求項27】
前記重金属酸化物が、約10nm未満の平均直径を有する粒子である、請求項18に記載の充填剤。
【請求項28】
請求項1に記載の充填剤と、硬化可能樹脂と、を含む歯科材料。
【請求項29】
前記材料が、硬化及び歯ブラシ耐磨耗性試験を受けた後、約0.2μm未満の表面粗さを有する、請求項28に記載の歯科材料。
【請求項30】
前記材料が、硬化後、約35MPaを超える圧縮強度を有する、請求項28に記載の歯科材料。
【請求項31】
前記材料が、硬化後、約15MPaを超える直径引張り強度を有する、請求項28に記載の歯科材料。
【請求項32】
前記材料が、硬化後、約60Mpaを超える直径引張強度を有する、請求項28に記載の歯科材料。
【請求項33】
前記材料が、硬化後、約0.05〜0.5の視覚的不透明度を有する、請求項28に記載の歯科材料。
【請求項34】
前記材料が、硬化後、約0.05〜約0.25のマクベス光学密度を有する、請求項28に記載の歯科材料。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−514800(P2010−514800A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544287(P2009−544287)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/089045
【国際公開番号】WO2008/083275
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】