説明

歯科用ハンドピース

【課題】切削工具の往復反転角度を(例えば100°〜135°程度まで)大きくする。
【解決手段】往復反転機構4は、入力側、出力側の回転軸361、362間に軸支され、入力側、出力側のガイド溝401、402を有する略球体状の反転軸40と、回転軸361に設けられ、反転軸40の一方の半球面側に係合される球面状凹部41及びガイド溝401に係合されるガイドピン411と、出力側の回転軸362に設けられ、反転軸40の他方の半球面側に係合される球面状凹部42及びガイド溝402に係合されるガイドピン421とを備えてグリップ3内部に構成され、反転軸40の各ガイド溝401、402を反転軸40の球体全体を使って任意の深さに形成可能とし、切削工具の反転角度に応じて設定される各ガイドピン411、421の角度の設定領域を拡大した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ハンドピースに関し、特に、切削工具に往復反転運動を付与する形式の歯科用ハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯の根管治療では、ファイルやリーマなどの切削工具が使用され、切削工具の刃部を根管に挿入し、押し引き又は回転の操作により、根管をテーパ状に拡大していく。この種の切削工具には、手で直接把持して使用するものと、歯科用ハンドピースに装着して使用するものとがある。このような技術情報は例えば特許文献1により開示されている。
【0003】
図4に従来のこの種の歯科用ハンドピースのうち、切削工具に往復反転運動を付与する形式の歯科用ハンドピースを示している。この歯科用ハンドピースは切削工具が装着されるヘッドに往復反転機構を備えており、現在、市販されているものはこの形式のものが多い。
【0004】
図4に示すように、このハンドピースは、略筒状に形成され、内部に切削工具を回転可能に保持するための回転機構711を有するヘッド71、及びヘッド71から略筒状に延び、内部に一端が回転機構711に動力伝達部材73を介して作動連結される従動側の回転軸721を有するネック部72と、略筒状に形成され、内部に一端が従動側の回転軸721の他端に動力伝達部材を介して作動連結され、他端が回転駆動部に作動連結される駆動側の回転軸を有するグリップ(図示省略)とを備え、ヘッド71内部の回転機構711、動力伝達部材73間に往復反転機構8が構成される。
この場合、ヘッド71の回転機構711はチャック機構712付きの回転体713により構成される。回転体713は略球体からなり、その上下に回転軸714を有し、上下一方の回転軸714から他方の回転軸714へ球体を通して切削工具を挿通するための取付穴715を貫通形成され、また、この上下の各回転軸714の片側一方の半球面に円周方向に沿ってガイド溝716が形成される。この回転体713は上下の各回転軸714がヘッド71内部においてベアリング717を介して支持され、水平方向に回転可能に取り付けられる。このようにして切削工具は回転体713を通してチャック機構712に固定され、ヘッド71に回転可能に取り付けられる。これに対して、動力伝達部材73は、従動側の回転軸721の一端に一体的に設けられ、回転体713の一方の半球面側にその球面に沿って係合可能な球面状凹部730と、当該球面状凹部730の所定の偏芯位置に回転体713の中心に向けて(従動側の回転軸721の軸芯に対して)所定の角度に取り付けられ、回転体713の球面のガイド溝716に係合可能なガイドピン731とからなる。
このようにしてヘッド71内部に組み込まれた回転体713に従動側の回転軸721に設けられた球面状凹部730が係合されるとともに、回転体713のガイド溝716と球面状凹部730のガイドピン731が係合されて、ヘッド71内部に、回転駆動部の回転を受けた回転軸721の回転運動を往復反転運動に変換して回転機構711に伝達する往復反転機構8が構成され、切削工具に(左右方向の)往復反転運動を付与するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−35010公報(段落0002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の歯科用ハンドピースの往復反転機構8では、ヘッド71の、切削工具を回転させるための回転体713を略球体とし、その球面にガイド溝716を穿設するために、ガイド溝716の深さが回転体713の切削工具挿通用の取付穴715によって制限され、回転体713に回転軸714に近接する位置から円周方向にガイド溝716を形成しても、回転軸714付近のガイド溝716にガイドピン731が係合可能な十分な深さが取れない。このため、回転軸714付近のガイド溝716にガイドピン731を係合させることが困難で、この分だけガイドピン731のガイド溝716に対する係合範囲が制限されることから、ガイドピン731の取付角度は制限せざるを得ず、切削工具の往復反転角度は最大でも80°程度で、それ以上に大きく取れない、という問題がある。
切削工具の往復反転角度が小さいと、例えば、歯科の根管治療の場合、根管を拡大する作業効率が低下し、作業に要する時間が増大するため、切削工具の往復反転角度は切削工具の性能に合わせて可及的に大きくすることが望ましい。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、この種の往復反転機構を備える形式の歯科用ハンドピースにおいて、切削工具の往復反転角度を可及的に(例えば100°〜135°程度にまで)大きくして、各種の歯科治療において切削工具による作業効率を高め、作業に要する時間の短縮を図ること、また、切削工具の往復反転角度を切削工具の形状に合わせた切削効率のよい角度に調整し、切削工具の有する切削性能を可及的に引き出すこと、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、略筒状に形成され、内部に切削工具を回転可能に保持するための回転機構を有するヘッド、及び前記ヘッドから略筒状に延び、内部に一端が前記回転機構に動力伝達部材を介して作動連結される従動側の回転軸を有するネック部と、略筒状に形成され、内部に一端が前記従動側の回転軸の他端に動力伝達部材を介して作動連結され、他端が回転駆動部に作動連結される駆動側の回転軸を有するグリップとを備え、前記回転駆動部からの回転運動を往復反転運動に変換して前記回転機構に伝達する往復反転機構を有し、前記切削工具に往復反転運動を付与する歯科用ハンドピースにおいて、前記往復反転機構は、前記駆動側の回転軸が前記回転駆動部側に作動連結される入力側の回転軸と前記従動側の回転軸に前記動力伝達部材を介して作動連結される出力側の回転軸に分割されて、前記入力側及び出力側の各回転軸間に水平方向に回転可能に軸支され、当該軸支点の両側にそれぞれ円周方向に入力側及び出力側のガイド溝を有する球体状の反転軸と、前記入力側の回転軸の前記反転軸に対向する端部に一体的に設けられ、前記反転軸の一方の半球面側にその球面に沿って係合される入力側の球面状凹部、及び当該球面状凹部の偏芯位置に前記反転軸の中心に向けて所定の角度に突設され、前記反転軸の入力側のガイド溝に係合される入力側のガイドピンと、前記出力側の回転軸の前記反転軸に対向する端部に一体的に設けられ、前記反転軸の他方の半球面側にその球面に沿って係合される出力側の球面状凹部、及び当該球面状凹部の偏芯位置に前記反転軸の中心に向けて所定の角度に突設され、前記反転軸の出力側のガイド溝に係合される出力側のガイドピンとを備えて、前記グリップ内部に構成され、前記反転軸の各ガイド溝を前記反転軸の球体全体を使って任意の深さに形成可能とし、前記切削工具の反転角度に応じて設定される前記各球面状凹部の前記各ガイドピンの角度の設定領域を拡大した、ことを要旨とする。
この場合、出力側のガイドピンの角度は入力側のガイドピンの角度と略同じか又は入力側ガイドピンの角度よりも小さく設定されることが好ましい。
また、駆動側の回転軸と従動側の回転軸との間に介在される動力伝達部材は、出力側の回転軸の往復反転運動の反転角度を大きく又は小さく調整する接触式又は非接触式の動力伝達部材からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯科用ハンドピースによれば、上記の構成により、切削工具の往復反転角度を可及的に(例えば100°〜135°程度にまで)大きくして、各種の歯科治療において切削工具による作業効率を高め、作業に要する時間の短縮を図ることができ、また、切削工具の往復反転角度を切削工具の形状に合わせた切削効率のよい角度に調整し、切削工具の有する切削性能を可及的に引き出すことができる、という本発明固有の格別な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態における歯科用ハンドピースの構成を示す側面断面図
【図2】同ハンドピースの特に往復反転機構の構成を示す分解斜視図
【図3】同ハンドピースの特にグリップ内部における往復反転機構の要部を拡大して示す部分拡大断面図
【図4】従来の歯科用ハンドピースの一例を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施の形態について図を用いて説明する。図1に歯科用ハンドピースの全体構成を示し、図2、図3にこのハンドピースの要部の構成を示している。
【0012】
図1に示すように、歯科用ハンドピースHはコントラアングル型のハンドピースで、略筒状に形成され、内部に切削工具(図示省略)を回転可能に保持するための回転機構11を有するヘッド1、及びヘッド1から略筒状に延び、内部に一端が回転機構11に動力伝達部材5を介して作動連結される従動側の回転軸21を有するネック部2と、略筒状に形成され、内部に一端が従動側の回転軸21の他端に動力伝達部材6を介して作動連結され、他端が回転駆動部(図示省略)に作動連結される駆動側の回転軸31を有するグリップ3とを備え、グリップ3内部に回転駆動部からの回転運動を往復反転運動に変換して回転機構11に伝達する往復反転機構4を有し、切削工具に往復反転運動を付与するようになっている。
【0013】
ヘッド1は、中空筒状のヘッドハウジング10と、ヘッドハウジング10内部に装着される回転機構11とにより構成される。この場合、回転機構11は、チャック機構付きのロータ12からなり、ロータ12の外周面に動力伝達部材5として歯車51が一体的に設けられる。このロータ12はヘッドハウジング10内に同芯的にベアリング13を介して回転可能に取り付けられる。ネック部2は、ヘッド1に一体的に形成され、ヘッドハウジング10の外周面から延びる中空筒状のネックハウジング20と、ネックハウジング20内部に軸架される従動側の回転軸21とにより構成される。この場合、回転軸21の一端に動力伝達部材5としてヘッド1内部のロータ12の歯車51に噛合可能な歯車52を有し、他端に動力伝達部材6として後述するグリップ3内部の駆動側の回転軸31に設けられる歯車62に噛合可能な歯車61を有し、ネックハウジング20内に同芯的にベアリング22を介して回転可能に取り付けられて、一端の歯車52がロータ12外周面の歯車51に噛合される。
【0014】
グリップ3は、中空筒状のグリップハウジング30と、グリップハウジング30の内部に軸架される駆動側の回転軸31とからなり、往復反転機構4は駆動側の回転軸31上に組み入れられる。この場合、駆動側の回転軸31は、カップリング軸32及びカップリング軸32の後方に連接される爪カップリング33と、動力伝達軸36とからなる。カップリング軸32はグリップハウジング30内の後部側に同芯的にベアリング34を介して回転可能に取り付けられ、前側の端部がグリップハウジング30内の中間に固定される減速装置35に作動連結される。動力伝達軸36はこの軸36上に往復反転機構4を組み込むために2分割され、回転駆動部側に作動連結される入力側の回転軸361と、ネック部2側の従動側の回転軸21に作動連結される出力側の回転軸362とを有する。これら入力側、出力側の回転軸361、362はそれぞれ、グリップハウジング30内の前部側に同芯的にベアリング371、372を介して回転可能に取り付けられ、入力側の回転軸361は(出力側の回転軸362に対向されない)一方の端部が減速装置35に作動連結され、出力側の回転軸362は(入力側の回転軸361に対向されない)一方の端部に動力伝達部材6として歯車62が設けられる。そして、これらの回転軸361、362の相互に対向する端部間は後述する往復反転機構4を介在して連結される。このようにしてグリップ3とヘッド1のネック部2(の他端)が接続され、出力側の回転軸362の一方の端部とネック部2内の従動側の回転軸21が歯車62、61を介して作動連結される。なお、この場合、ヘッド1のネック部2とグリップ3はヘッド接続用リング23により固定される。そして、このグリップ3の後部には図示されない駆動ユニットが接続され、グリップ3内部の爪カップリング33と駆動ユニット内部の回転駆動部(モータ)が作動連結される。
【0015】
往復反転機構4は、グリップハウジング30内において入力側及び出力側の各回転軸361、362間に水平方向に回転可能に上下を軸支され、当該上下の軸支点の両側にそれぞれ円周方向に延びる入力側、出力側のガイド溝401、402を有する略球体状の反転軸40と、入力側の回転軸361の反転軸40に対向する端部に一体的に設けられ、反転軸40の一方の半球面側にその球面に沿って係合される入力側の球面状凹部41、及び当該球面状凹部41の所定の偏芯位置に反転軸40の中心に向けて所定の角度に突設され、反転軸40の入力側のガイド溝401に係合される入力側のガイドピン411と、出力側の回転軸362の反転軸40に対向する端部に一体的に設けられ、反転軸40の他方の半球面側にその球面に沿って係合される出力側の球面状凹部42、及び当該球面状凹部42の所定の偏芯位置に反転軸40の中心に向けて所定の角度に突設され、反転軸40の出力側のガイド溝402に係合される出力側のガイドピン421とを備える。
【0016】
この往復反転機構4の各部の具体的な構成を図2に示している。
図2に示すように、反転軸40は略球体からなり、上下の中心に回転軸403、404を有し、これら上下の回転軸403、404の両側対称位置に入力側、出力側の各ガイド溝401、402が上下の回転軸403、404に近接して垂直方向に向けて形成される。このようにして反転軸40は、上下の回転軸403、404をグリップハウジング30内の上下所定の位置に固定されたベアリング303、304に支持されて、グリップハウジング30内の入力側及び出力側の各回転軸361、362間に水平方向に回転可能に軸支される。
また、入力側の球面状凹部41は、入力側の回転軸361の先端部にこの回転軸361よりも大径の円筒形状部410が形成されて、その円筒形状部410の先端面に形成され、当該球面状凹部41内の外周部付近の所定の位置に入力側のガイドピン411が反転軸40の中心に向けて所定の角度に取り付けられる。同様に、出力側の球面状凹部42は、出力側の回転軸362の後端部にこの回転軸362よりも大径の円筒形状部420が形成されて、その円筒形状部420の後端面に形成され、当該球面状凹部42内の外周部付近の所定の位置に出力側のガイドピン421が反転軸40の中心に向けて所定の角度に取り付けられる。
【0017】
このようにして往復反転機構4はグリップ3内部に構成され、回転駆動部がカップリング軸32に連結されて駆動側の回転軸31が回転されることにより、減速装置35を介して入力側の回転軸361が回転され、この入力側の回転軸361の回転運動が往復反転機構4により往復反転運動に変換されて、この往復反転運動が出力側の回転軸362から、歯車62、61を介して、従動側の回転軸21へ、この回転軸21から歯車52、51を介してロータ12に伝達され、切削工具に往復反転運動を付与するようになっている。
【0018】
このように往復反転機構4がグリップ3内部に構成されたことで、反転軸40の各ガイド溝401、402は反転軸40の球体全体を使って任意の深さに形成可能であり、この場合、既述のとおり、入力側、出力側の各ガイド溝401、402が上下の回転軸403、404の両側対称位置に上下の回転軸403、404に近接して垂直方向に向けて形成される。これにより、切削工具の反転角度に応じて設定される各球面状凹部41、42の各ガイドピン411、421の(入力側及び出力側の各回転軸361、362の軸芯に対する)角度の設定領域が拡大され、各ガイドピン411、421の角度が、切削工具に求められる最適な反転角度に応じて、適宜設定される。
この場合、出力側のガイドピン421の角度は入力側のガイドピン411の角度と略同じか又は入力側ガイドピン411の角度よりも小さく設定されることがこの往復反転機構4の動作上好ましい。
すなわち、図3に示すように、入力側ガイドピン411の(入力側の回転軸361の軸芯に対する)角度をθ1とし、出力側のガイドピンの421(出力側の回転軸362の軸芯に対する)角度をθ2とすると、
θ1≒θ2又はθ1>θ2
となることが好ましい。
ここでは、使用される切削工具の最適な反転角度が120°〜135°の範囲にあるものとし、入力側のガイドピン411の角度θ1を60°、出力側のガイドピン421の角度θ2を55°としてある。したがって、入力側の回転軸361が正転方向に回転されると、入力側のガイドピン411が入力側の回転軸361の軸芯を回動中心として周回移動し、このガイドピン411と反転軸40の入力側のガイド溝401との係合案内により、反転軸40は左右いずれか一方向に60°回転して60°戻る動きと他方向に60°回転して60°戻る動きを繰り返す。すなわち、入力側の回転軸361の回転運動が反転軸40により反転運動に変換され、反転軸40が120°の範囲で反転運動される。一方、この反転軸40の反転運動に対して、出力側のガイドピン421は反転軸40の出力側のガイド溝402に係合案内されて、左右いずれか一方向に55°回転して55°戻る動きと他方向に55°回転して55°戻る動きを繰り返し、この出力側のガイドピン421と一体の出力側の回転軸362が正回転、逆回転いずれか一方向に55°回転して55°戻る動きと他方向に55°回転して55°戻る動きを繰り返す。すなわち、反転軸40の反転運動が出力側の回転軸362に伝達され、出力側の回転軸362が110°の範囲で反転運動される。
この出力側の回転軸362の反転運動は動力伝達部材6(歯車61、62)に伝達され、これが従動側の回転軸21、動力伝達部材5(歯車51、52)を介してヘッド1内部のロータ12に伝達される。
【0019】
また、この場合、駆動側の回転軸31と従動側の回転軸21との間に介在される動力伝達部材6は、出力側の回転軸362の往復反転運動の反転角度を大きく又は小さく調整する接触式又は非接触式の動力伝達部材からなる。
ここでは、動力伝達部材6に、既述のとおり、2つの歯車61、62が採用され、使用する切削工具に好適な反転角度を設定するために、各歯車61、62の歯数の比を9:11に変えて、出力側の回転軸362の往復反転運動の反転角度が大きく調整される。
この動力伝達部材6の調整により、出力側の回転軸362の往復反転運動の反転角度は約134°(110°×11/9)まで拡大される。
【0020】
このようにこの歯科用ハンドピースHでは、グリップ3内部に設けた往復反転機構4により、出力側の回転軸362の往復反転運動の反転角度が、この場合、110°と、従来に比べて大幅に大きくなり、そして、この反転角度はさらに動力伝達部材6の調整により拡大されて、この場合、約134°にまで拡大される。
【0021】
以上説明したように、この歯科用ハンドピースHによれば、グリップ3内部の駆動側の回転軸31上に、略球体の反転軸40及び入力側、出力側の各ガイド溝401、402と、入力側の球面状凹部41及び入力側ガイドピン411と、出力側の球面状凹部42及び出力側ガイドピン421からなる往復反転機構4を組み込み、反転軸40の各ガイド溝401、402を反転軸40の球体全体を使って任意の深さに形成し、切削工具の反転角度に応じて設定される各球面状凹部41、42の各ガイドピン411、421の(入力側及び出力側の各回転軸361、362の軸芯に対する)角度の設定領域を拡大して、各ガイドピン411、421の角度を、切削工具に求められる最適な反転角度に応じて、適宜設定するようにしたので、切削工具の往復反転角度を可及的に(例えば100°〜110°程度まで)大きくして、各種の歯科治療において切削工具による作業効率を高め、作業に要する時間を短縮することができ、また、切削工具の往復反転角度を切削工具の形状に合わせた切削効率のよい角度に調整し、切削工具の有する切削性能を可及的に引き出すことができる。
【0022】
また、このハンドピースHによれば、出力側のガイドピン421の角度は入力側のガイドピン411の角度と略同じか又は入力側ガイドピン411の角度よりも小さく設定するので、入力側及び出力側の各ガイドピン411、421とガイド溝401、402との係合案内を円滑にし、入力側の回転軸361の回転を反転軸40の反転運動に変換し、この反転運動を出力側の回転軸362に伝達する一連の動作を確実に行うことができる。なお、この場合、特に、出力側のガイドピン421をばね手段などを用いて常に戻り方向に付勢することで、ガイドピン421とガイド溝402との係合案内をより良好にすることができる。
【0023】
さらに、このハンドピースHによれば、駆動側の回転軸31と従動側の回転軸21との間に介在する動力伝達部材6を、出力側の回転軸362の往復反転運動の反転角度を大きく又は小さく調整する接触式又は非接触式の動力伝達部材により構成するので、出力側の回転軸362の反転角度を例えば120°〜135°程度までさまざまな角度に大きく、又は小さく調整することができ、往復反転機構4に併せて用いることにより、各種の歯科治療において切削工具による作業効率をさらに高めて、作業に要する時間の大幅な短縮を図ることができ、また、切削工具の往復反転角度を切削工具の形状に合わせた最適な角度に調整し、切削工具の有する切削性能を最大限に引き出すことができる。
【0024】
なお、この実施の形態では、動力伝達部材6に歯車61、62を採用したが、この動力伝達部材6には歯車の他に、ローラなどの接触式の動力伝達部材を採用することができ、ローラの場合、外径の比を変えることにより、出力側の回転軸の往復反転運動の反転角度を大きく又は小さく調整することができる。また、この動力伝達部材6には磁気式歯車など非接触式の動力伝達部材が採用されてもよく、この場合は、N極、S極の極数の比を変えることにより、出力側の回転軸の往復反転運動の反転角度を大きく又は小さく調整すればよい。
【符号の説明】
【0025】
H 歯科用ハンドピース
1 ヘッド
10 ヘッドハウジング
11 回転機構
12 チャック付きのロータ
13 ベアリング
2 ネック部
20 ネックハウジング
21 従動側の回転軸
22 ベアリング
23 ヘッド接続用リング
3 グリップ
30 グリップハウジング
303 ベアリング
304 ベアリング
31 駆動側の回転軸
32 カップリング軸
33 爪カップリング
34 ベアリング
35 減速装置
36 動力伝達軸
361 入力側の回転軸
362 出力側の回転軸
371 ベアリング
372 ベアリング
4 往復反転機構
40 反転軸
401 入力側のガイド溝
402 出力側のガイド溝
403 回転軸
404 回転軸
41 入力側の球状凹部
410 円筒形状部
411 入力側のガイドピン
42 出力側の球状凹部
420 円筒形状部
421 出力側のガイドピン
5 動力伝達部材
51 歯車
52 歯車
6 動力伝達部材
61 歯車
62 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒状に形成され、内部に切削工具を回転可能に保持するための回転機構を有するヘッド、及び前記ヘッドから略筒状に延び、内部に一端が前記回転機構に動力伝達部材を介して作動連結される従動側の回転軸を有するネック部と、略筒状に形成され、内部に一端が前記従動側の回転軸の他端に動力伝達部材を介して作動連結され、他端が回転駆動部に作動連結される駆動側の回転軸を有するグリップとを備え、前記回転駆動部からの回転運動を往復反転運動に変換して前記回転機構に伝達する往復反転機構を有し、前記切削工具に往復反転運動を付与する歯科用ハンドピースにおいて、
前記往復反転機構は、
前記駆動側の回転軸が前記回転駆動部側に作動連結される入力側の回転軸と前記従動側の回転軸に前記動力伝達部材を介して作動連結される出力側の回転軸に分割されて、前記入力側及び出力側の各回転軸間に水平方向に回転可能に軸支され、当該軸支点の両側にそれぞれ円周方向に入力側及び出力側のガイド溝を有する球体状の反転軸と、
前記入力側の回転軸の前記反転軸に対向する端部に一体的に設けられ、前記反転軸の一方の半球面側にその球面に沿って係合される入力側の球面状凹部、及び当該球面状凹部の偏芯位置に前記反転軸の中心に向けて所定の角度に突設され、前記反転軸の入力側のガイド溝に係合される入力側のガイドピンと、
前記出力側の回転軸の前記反転軸に対向する端部に一体的に設けられ、前記反転軸の他方の半球面側にその球面に沿って係合される出力側の球面状凹部、及び当該球面状凹部の偏芯位置に前記反転軸の中心に向けて所定の角度に突設され、前記反転軸の出力側のガイド溝に係合される出力側のガイドピンと、
を備えて、前記グリップ内部に構成され、
前記反転軸の各ガイド溝を前記反転軸の球体全体を使って任意の深さに形成可能とし、前記切削工具の反転角度に応じて設定される前記各球面状凹部の前記各ガイドピンの角度の設定領域を拡大した、
ことを特徴とする歯科用ハンドピース。
【請求項2】
出力側のガイドピンの角度は入力側のガイドピンの角度と略同じか又は入力側ガイドピンの角度よりも小さく設定される請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項3】
駆動側の回転軸と従動側の回転軸との間に介在される動力伝達部材は、出力側の回転軸の往復反転運動の反転角度を大きく又は小さく調整する接触式又は非接触式の動力伝達部材からなる請求項1に記載の歯科用ハンドピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−106871(P2013−106871A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255827(P2011−255827)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000150327)株式会社ナカニシ (43)
【Fターム(参考)】