説明

歯科用充填修復材

【課題】 修復した歯牙表層面での重合収縮までを高度に抑制し、プラーク付着防止の効果が高く、二次齲蝕の心配が少ないレジン系の歯科用充填修復材を提供すること。
【解決手段】 (A)重合性単量体、
(B)フッ素基を有する樹枝状高分子、好適にはフッ素基を有するハイパーブランチポリマー、
(C)重合開始剤、および
(D)フィラー
を含有してなり、(B)フッ素基を有する樹枝状高分子の好適な配合量が、(A)重合性単量体100質量部に対して8〜40質量部である歯科用充填修復材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用充填修復材に関する。さらに詳しくは、撥水性を有し、修復材の表層の重合収縮が小さいため、二次齲蝕を高度に抑制できる歯科用充填修復材に関する。
【背景技術】
【0002】
齲蝕や破折等により損傷をうけた歯牙の修復においては、一般にコンポジットレジンと呼ばれる光硬化性のレジン系充填修復材が、操作の簡便さや審美性の高さから汎用されている。レジン系充填修復材は、通常、重合性単量体、フィラー、及び重合開始剤を含む重合性組成物からなる。しかしながら、こうしたレジン系充填修復材を使用して歯牙修復を行なった場合において、修復箇所の周辺に、二次齲蝕が比較的早期に生じてしまうことがあった。
【0003】
上記二次齲蝕を抑制するためには、窩洞に詰めた充填修復材の硬化体と周辺歯牙との結合部近辺に、齲蝕の原因になるプラークを付着させないことが重要である。レジン系充填修復材の硬化体へのプラークの付着を抑制する方法としては、該材料に撥水性を付与することが有効である。その方法としては、レジン系充填修復材にフッ素を含む材料を配合することが挙げられる。例としては、重合性単量体の少なくとも一部として、フッ素基を有するものを用いる手法(特許文献1)、フィラーの少なくとも一部としてフッ素化樹脂粉末を用いる手法(特許文献2)、フィラーを、フッ素基を含むシランカップリング剤により表面処理する手法(特許文献3)等が知られている。
【0004】
しかしながら、これらフッ素を含む材料を配合するのみで、二次齲蝕の発生を高度に抑制することは困難であり、さらなる効果の高い防止策の開発が求められている。上記撥水性の付与以外の二次齲蝕の抑制策として、充填修復材の硬化時の重合収縮を低減することも挙げられる。
【0005】
ここで、レジン系充填修復材用の重合性単量体としては、その光重合性の良さから(メタ)アクリレート系のラジカル重合性単量体が汎用されている。しかしながら、ラジカル重合性単量体は付加重合型であり、その硬化機構に由来して重合収縮が本来的に大きいという問題がある。従って、歯牙修復に際して、窩洞に詰めたレジン系充填修復材では、硬化中に、この重合収縮により、周辺歯牙との境界に間隙を生じる。しかして、こうした間隙にはプラークが進入して膠着しやすく、これが二次齲蝕の原因になる。そのため、レジン系充填修復材の重合収縮を小さくすれば、二次齲蝕の発生を効果的に抑制できると考えられている。
【0006】
とりわけ、窩洞に詰めた充填修復材において、歯の表面部分(以下、表層面という)は硬化体と周辺歯牙との境界に間隙が生じやすい状態にある。従って、ここに間隙が空くとプラーク付着の起点になり易く、二次齲蝕は顕著に生じるようになることから、この表層面における重合収縮を如何に抑制するかが、最重要である。
【0007】
レジン系充填修復材の重合収縮を抑制する手段は幾つか知られており、その中の一つとして樹枝状高分子を含有させる手法が知られている(特許文献4〜8)。ここで、樹枝状高分子は、分子鎖が多数の枝分かれを有している高分子であり、球状に近い粒子形状をしている。このため、溶液にポリマーを溶解させた場合、一般的な高分子と比べて、樹枝状高分子の方が粘度の上昇が小さい。それゆえ、歯科用充填修復材の構成材料として樹枝状高分子を用いる場合、フィラーの充填率や材料の操作性を大きく変化させることなく、歯科用充填修復材中に、多量の樹枝状高分子を添加することができる。すなわち、歯科用充填修復材中の構成成分として、樹枝状高分子の配合割合を相対的に大きくし、その代わりに、重合性組成物の配合割合を相対的に小さくすることが容易になる。そうすれば、樹枝状高分子は、基本的に、重合性単量体のように重合に伴う大きな重合収縮は生じないため、歯科用充填修復材が硬化する際の重合収縮率を小さく抑えることができる。
【0008】
しかしながら、係る樹枝状高分子を含有させる手法をもって重合収縮率を低減させても、上記窩洞に詰めた充填修復材の表層面において、硬化体と周辺歯牙との境界に間隙が形成されることを今一歩十分に抑制するまでには至っておらず、二次齲蝕の発生を高度に防げていないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−81731号
【特許文献2】特開2005−35940号
【特許文献3】特開2007−238567号
【特許文献4】特開平8−231864号
【特許文献5】特表2001−509179号
【特許文献6】特許第3971307号
【特許文献7】特開2006−298919号
【特許文献8】WO03/013379号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上説明したように、従来知られている二次齲蝕の抑制策は、歯科用充填修復材に撥水性を付与する方法も、重合収縮を低減する方法も、今一歩効果が十分ではなかった。特に、窩洞に詰めた際に、その表層面での重合収縮までを高度に抑えることができず、その硬化体と周辺歯牙との境界に間隙が形成し、ここにプラークが付着して二次齲蝕が生じることを満足できるレベルで防げていなかった。そこで本発明は、こうした表層面での重合収縮までを高度に抑制し、プラーク付着防止の効果が高く、二次齲蝕の心配が少ない歯科用充填修復材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ってきた。その結果、フッ素基を有する樹枝状高分子を歯科用充填修復材に配合することによって、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、(A)重合性単量体、(B)フッ素基を有する樹枝状高分子、(C)重合開始剤、および(D)フィラーを含有してなる歯科用充填修復材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の歯科用充填修復材は、硬化時の重合収縮が小さく、特に、窩洞に詰めた際に、その表層面での重合収縮までを高度に抑えることができる。従って、係る表層面において、硬化体と周辺歯牙との境界に間隙が空くことが抑制でき、こうした間隙を起点にプラークが付着することを防止できる。しかも、充填修復材の硬化体自体も、撥水性が高く、材質的に上記プラークが付着し難い状態にある。よって、これら効果が相乗的に作用する結果、本発明の充填修復材を用いて歯牙を修復すると、二次齲蝕の発生を、顕著に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の歯科用充填修復材では、樹枝状高分子としてフッ素基を有するものを配合する。これにより歯科用充填修復材を窩洞に詰めた際に、その表層面での重合収縮までを高度に抑えることができるようになる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者らは次の作用によると推察している。すなわち、樹枝状高分子は、球状に近い等の粒子形状をしているため、もともと、他の成分との相互作用が少なくペースト内を移動しやすい状態にある。これに加えて本発明で使用する樹枝状高分子は、分子内にフッ素基を有しているため、通常の炭化水素系樹枝状高分子よりも、撥油性が高く、表面自由エネルギーも小さいため、このペースト内での移動し易さは、一層に向上している。これにより、該樹枝状高分子は、歯科用充填修復材の硬化時には表層面へ押し出され易く、表層面でのプラーク付着防止効果が顕著に高まり、さらにはこの部位での重合収縮の抑制効果も局部的に高まるのではないかと考えている。
【0015】
以下、本発明の歯科用充填修復材を構成する、(A)重合性単量体、(B)フッ素基を有する樹枝状高分子、(C)重合開始剤、及び(D)フィラーの各成分について、順次に説明する。
【0016】
(A)重合性単量体
本発明の歯科用充填修復材に配合される(A)重合性単量体は、種々の硬化性組成物において使用されている公知のものが特に制限なく使用できる。一般的な歯科用途には、25℃における屈折率が1.4〜1.7の範囲のものが好適に用いられる。こうした重合性単量体としては、(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体を使用するのが好適である。(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体の具体例としては下記(I)〜(IV)に示されるものが挙げられる。
【0017】
(I)単官能性単量体
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、プロピオニルオキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;あるいはアクリル酸、メタクリル酸、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、N−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−N−フェニルグリシン、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、及びその無水物、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10−メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフォネート等の酸性基含有重合性単量体。
【0018】
(II)二官能重合性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0019】
(ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、3Gと略記する)、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル等。
(III)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0020】
(IV)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
【0021】
これらの(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体は単独で用いることもあるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0022】
なお、前記(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体に加えて、重合の容易さ、粘度の調節、あるいはその他の物性の調節のために、上記(メタ)アクリル系重合性単量体以外の他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル類;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレンあるいはα−メチルスチレン誘導体;ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。
【0023】
(B)フッ素基を有する樹枝状高分子
樹枝状高分子は、多数の枝分かれ構造を有する高分子のことである。その質量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法による測定で、2000以上であり、より好ましくは2000〜〜300000の範囲、さらに好ましくは5000〜50000の範囲である。そして、この質量平均分子量で多数の枝分かれ構造を有しているため、樹枝状高分子は、通常の高分子のように紐状ではなく、球状に近い等の粒子形状をしている。その動的光散乱法にて測定したテトラヒドロフラン中での流体力学的平均直径は、通常、1〜40nmであり、硬化時の重合収縮を小さくする効果をより十分に発揮し、且つ充填修復材の操作性も良好に保つ観点からは1〜20nmであるのが好ましく、さらには1〜10nmであるのが特に好ましい。
【0024】
樹枝状高分子の流体力学的平均直径は、前記質量平均分子量を満足する高分子が、多数の枝分かれ構造を備えていることにより満足されるものであり、質量平均分子量が小さすぎたり大きすぎたりすると満足されないことはもちろんのこと、たとえ質量平均分子量は満足されても分岐不足の場合は粒子形状に拡がらず、このような範囲にはならない。
【0025】
樹枝状高分子には、大きく分けてデンドリマーとハイパーブランチポリマーが存在する。デンドリマーは化学構造が正確な対象性を有しており、分岐可能な部位では、実質必ず分岐構造が導入されている。一方のハイパーブランチポリマーは、分岐繰り返し単位に一部欠部や不規則または不連続な箇所があって良く、すべての分岐可能な部位において分岐構造が導入されているわけではない。デンドリマーは正確な対象性と欠陥の無い分岐を有しているため、保護−脱保護を繰り返して合成されるなど通常精密な合成の制御が必要であり、合成に手間がかかるため一般に高価である。一方、ハイパーブランチポリマーは合成が簡便であり、通常一段階での合成が可能である。そのため、ハイパーブランチポリマーは簡便で安価に合成が可能であるため、歯科用充填修復材に用いる樹枝状高分子として優位なものである。
【0026】
本発明では、上記樹枝状高分子としてフッ素基を有するものを用いる。フッ素基は、前記多数の枝分かれ構造の如何なる位置に結合していても良いが、粒子表面に露出して撥油性および撥水性をより良好に発揮させる観点からは、少なくとも各枝分かれ鎖の末端には結合しているのが好ましい。フッ素基の導入量は、樹枝状高分子の撥油性を高め、歯科用充填修復材の硬化時に表層面へ押し出され易くして、表層面での重合収縮を高度に抑制する観点からは、できるだけ多数に含有されているのが良い。しかしながら、フッ素基があまり多く含有されていても、歯科用充填修復材の硬化体において、歯科用接着剤や歯牙との馴染みを悪くし、窩洞への接着力を低下させ脱落し易くする虞もあるため注意を要する。さらに、フッ素基の含有量が多くなりすぎると、樹枝状高分子の屈折率が低下し、歯科用途に広く用いられる重合性単量体およびフィラーと組み合わせて充填修復材を調製した場合に不透明となり、審美性の面にて問題にもなる。
【0027】
これらから樹枝状高分子は、フッ素基が導入されて、CHに対する接触角(23℃)が60°〜130°、より好ましくは70°〜100°であるものが好ましい。一般に、フッ素基が導入されていない通常の炭化水素系樹枝状高分子において、このCHに対する接触角(23℃)は30°〜40°程度にすぎない。なお、本発明で使用する樹枝状高分子は、上記フッ素基が導入されていることにより撥水性も高く、上記撥油性を有するものは、通常、水に対する接触角(23℃)も80°〜130°、より好ましくは90°〜120°と大きい。これにより、前記したように歯牙修復に用いた際に硬化体にプラークが付着し難い効果が発揮される。
【0028】
本発明において、樹枝状高分子のCHまたは水に対する接触角は、樹枝状高分子の5%トルエン溶液をSiウェハー上にスピンコーティングした後、150℃のホットプレート上にて溶媒の乾燥を行い作製した試料に対して、CHまたは水を1μl滴下し、滴下約5秒後に測定した接触角の値である。
【0029】
また、樹枝状高分子は、25℃における屈折率が1.4〜1.7の範囲にあるものが好ましい。一般に、歯科用充填修復材に主要に使用されている重合性単量体およびフィラーの屈折率は1.4〜1.7の範囲内である。したがって、樹枝状高分子の屈折率もこの範囲のものであると、得られる歯科用充填修復材において透明性に優れたものになり好ましい。
【0030】
このように本発明で使用する樹枝状高分子がフッ素基を含有することは、例えばイオンクロマトグラフ法により確認できる。イオンクロマトグラフ法により測定した樹枝状高分子中のフッ素含有量は、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。
【0031】
このような、フッ素基を有する樹枝状高分子は、既存の樹枝状高分子の末端や残鎖を、フッ素基自身(F)や、該フッ素基を有する官能基にて修飾する手法や、フッ素基を有する重合性単量体を用いて樹枝状高分子を合成することによって得られる。フッ素基を有する官能基の例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基などのフルオロアルキル基が挙げられる。
【0032】
このようなフッ素基を有する樹枝状高分子としては、例えば原口将幸らにより、「フッ素系表面改質材「HYPERTECH FA−200」」として「コンバーテック」2010年9月号、98ページに報告されている。市販品として入手可能なものとしては、例えばHYPERTECH(登録商標)/FA−200(日産化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
歯科用充填修復材において、係るフッ素基を有する樹枝状高分子の配合量は、重合収縮を抑え、撥水性を付与し、さらには、ペーストの操作性等を勘案して、適宜決定すればよい。歯科用充填修復材の硬化に際して、窩洞に詰めた表層面も含めて重合収縮を十分に低減させることからは、重合性単量体100質量部に対して5質量部以上配合するのが好ましい。また、フッ素基を有する樹枝状高分子をあまりに多量に添加すると、ペーストの操作性やフィラー充填率への悪影響を生じるため、重合性単量体100質量部に対して100質量部以下配合するのが好ましい。本発明において、フッ素基を有する樹枝状高分子の特に好ましい配合量は、重合性単量体100質量部に対して8〜40質量部である。
【0034】
(C)重合開始剤
本発明の歯科用充填修復材において(C)重合開始剤は、公知のものが制限無く使用可能である。充填修復材の重合方法には、紫外線、可視光線等の光エネルギーによる反応(以下、光重合という)、過酸化物と促進剤との化学反応によるもの、加熱によるもの等があり、採用する重合方法に応じて下記に示す各種重合開始剤を適宜選択して使用すればよい。
【0035】
光重合に用いる重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα-ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類等を使用することができる。
【0036】
なお、光重合開始剤には、しばしば還元剤が添加されるが、その例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物などを挙げることができる。
【0037】
また、熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(p−フロルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸トリエタノールアミン塩等のホウ素化合物、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類等が挙げられる。
【0038】
これらの重合開始剤の中でも、使用時の操作の簡便さの観点からは光重合開始剤の使用
が好ましく、特に好適なものは、カンファーキノン、ビス(2,4,6−トリメチルベン
ゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニ
ルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)―2,4,4−トリメ
チルフェニルホスフィンオキサイドなどである。
【0039】
これら(C)重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。(C)重合開始剤の配合量は、有効量であれば特に制限は無いが、(A)重合性単量体100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部であるのがより好ましい。
【0040】
(D)フィラー
本発明の歯科用充填修復材に含まれるフィラーは、硬化体の強度を向上させ、且つ重合収縮を抑える機能を発揮する。このようなフィラーとしては、無機フィラー、有機フィラー、および無機―有機複合フィラーから選択される1種以上を適宜用いることができる。
【0041】
無機フィラーとしては、例えば、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属およびそれらの酸化物、フッ化物、炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、水酸化物、塩化物、亜硫酸塩、燐酸塩、およびこれらの混合物、複合塩等が挙げられる。より具体的には、非晶質シリカ、石英、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化イッテルビウム等の無機酸化物、シリカ―ジルコニア、シリカ―チタニア、シリカ―チタニア―酸化バリウム、シリカ―チタニア―ジルコニア、ホウ珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の複合酸化物、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化イットリウム、フッ化ランタン、フッ化イッテルビウム等の無機フッ化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の無機炭酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等の無機硫酸塩等が挙げられる。
【0042】
有機フィラーとしては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体あるいはメチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体等の非架橋性ポリマー若しくは、メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体あるいは(メタ)アクリル酸メチルとブタジエン系単量体との共重合体等の(メタ)アクリレート重合体等が使用できる。
【0043】
さらに、有機―無機複合フィラーも好適に使用できる。例えば重合性単量体及び無機フィラーを含む重合硬化性組成物を硬化させて得た硬化体を粉砕することによって製造することが出来る。
【0044】
有機―無機複合フィラーの原料フィラー(以下、「複合フィラー原料フィラー」と略する)としては、歯科用複合修復材として使用可能な公知のフィラーがなんら制限なく使用可能である。好適に使用できる複合フィラー原料フィラーの例としては、(D)フィラーの項の無機フィラーとして例示したものが挙げられる。これら重合性単量体は、単独で使用しても、異なる種類のものを混合して用いてもよい。
【0045】
また、有機―無機複合フィラーの原料重合性組成物(以下、「複合フィラー原料モノマー」と略する)についても歯科用複合修復材として使用可能な公知の重合性単量体がなんら制限なく使用可能である。好適に使用できる複合フィラー原料モノマーの例としては(A)重合性単量体の項で例示したものが挙げられる。これら重合性単量体は、単独で使用しても、異なる種類のものを混合して用いてもよい。
【0046】
複合フィラーは、重合開始剤を用いてその成分である前記複合フィラー原料モノマーを重合させることにより硬化されるが、重合開始剤としては、公知の重合開始剤が特に制限なく用いられる。一般に、重合開始剤は重合性単量体の重合手段によって異なる種類のものが使用される。重合手段には、紫外線、可視光線等の光エネルギーによるもの、過酸化物と促進剤との化学反応によるもの、加熱によるもの等があり、採用する重合手段に応じて下記に示す各種重合開始剤の中から適した重合開始剤を適宜選定すればよいが、より黄色度の低い硬化体を得ることができるという観点から、熱重合開始剤を用いるのが好適である。重合開始剤の例としては(C)重合開始剤の項で例示したものが挙げられる。これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の添加量は目的に応じて選択すればよいが、有機無機フィラー原料モノマー100重量部に対して通常0.01〜10重量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。
【0047】
また、複合フィラーの重合に際しては、本発明の効果を阻害しない範囲で、重合前に公知の添加剤を配合することもできる。かかる添加剤としては、顔料、紫外線吸収剤、蛍光顔料等が挙げられる。また、硬化体の更なる強度向上を図る目的で、表面滑沢性や耐摩耗性が低下しない範囲で、更に平均粒子径が1μmより大きい無機フィラー及び/又は平均粒径が0.1μmより小さい無機フィラーを加えてもよい。
【0048】
また、該複合フィラーは、無機フィラーや重合性単量体などと混合するに先立ち、洗浄、脱色、及び表面処理を行ってもよい。脱色は一般的には、適切な溶媒に有機無機複合フィラーを分散させ、過酸化物を溶解撹拌、場合によっては加熱することで行われ、過酸化物としては公知の過酸化物が好適に使用できる。
【0049】
フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することにより、重合性単量体との親和性、重合性単量体への分散性、硬化体の機械的強度及び耐水性を向上できる。シランカップリング材の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0050】
上述したフィラーの屈折率は、特に限定されない。一般的な歯科用途には、25℃における屈折率が1.4〜1.7の範囲のものが好適に用いられる。また、形状あるいは粒子径についても、特に制限はない。形状あるいは粒子径を適宜選択して使用されるが、平均粒子径は通常0.001〜100μmであり、特に0.001〜10μmであることが好ましい。また、上述した充填材の中でも、特に、球状の充填材を用いると、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた修復材料となり得るので好ましい。
【0051】
これらのフィラーの割合は、歯科用充填修復材に求められる、硬化体の強度や重合収縮の小ささの他、重合性単量体と混合した時の粘度(操作性)や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよいが、一般的には、重合性単量体100質量部に対して50〜1500質量部であり、好ましくは60〜1000質量部である。フィラーの含有量が少なめの場合、重合収縮が小さくなり、硬化体と周辺歯牙との境界に間隙が生じ易くなり、これを防止する本発明の効果が、より顕著に発揮されるようになるため、フィラーの含有量は、70〜600質量部の範囲であるのが特に好ましい。
【0052】
本発明の歯科用充填修復材には、歯牙の色調に合わせるために、顔料、蛍光顔料、染料、紫外線に対する変色防止のために紫外線吸収剤を添加しても良いし、その他、充填修復材の成分として公知の添加剤を、本発明の効果に影響のない範囲で配合しても良い。
【0053】
充填修復材において、以上説明した各成分の混合方法は公知の充填修復材の製造方法に従えば良く、一般的には、赤色光下に、配合される全成分を秤取り、均一になるまでよく混合すればよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によって何等制
限されるものではない。
【0055】
尚、実施例および比較例で使用した化合物とその略称、並びに調製された充填修復材の評価方法を以下に示す。
【0056】
[ラジカル重合性単量体]
Bis−GMA;2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
D−2.6E;2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン
3G;トリエチレングリコールジメタクリレート
UDMA;1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン

[フッ素基含有ラジカル重合性単量体]
5F:2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジメタクリレート

[重合開始剤]
(α−ジケトン)
CQ;カンファーキノン
(アミン化合物)
DMBE;p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル

[フィラー]
0.3Si−Ti;球状シリカ−チタニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメト
キシシラン表面処理物(平均粒径:0.3μm)
0.45Si−Zr;球状シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物(平均粒径:0.45μm)

[フッ素基を有する樹枝状高分子]
FA−200;ハイパーブランチポリマー粒子,日産化学社製,質量平均分子量18000。流体力学的平均直径7.0nm。CHに対する接触角(23℃)77°,水に対する接触角(23℃)105°,屈折率(25℃)1.451

[フッ素基を有さない樹枝状高分子]
HA−DMA−200:ハイパーブランチポリマー粒子,日産化学社,質量平均分子量22000、流体力学的平均直径5.2nm,CHに対する接触角(23℃)31°,水に対する接触角(23℃)70°,屈折率(25℃)1.510

次に、各実施例及び比較例において、歯科用充填修復材の物性評価は、以下の方法に従って実施した。
【0057】
(1)修復歯牙表層面における歯と充填修復材との間隙の評価
ウシの前歯の唇側面に、歯科用ダイヤモンドポイントを用いて、直径約8mm、深さ約1mmの円形の窩洞を形成した。ここに、歯科用接着剤(ボンドフォース、トクヤマデンタル社製)を用いて、歯科用充填修復材を充填し、歯科用照射器(トクソーパワーライト、トクヤマデンタル社製;光出力密度700mW/cm)にて30秒間光照射を行い、歯科用充填修復材を硬化させた。作製したサンプルを歯面に垂直に切断し、歯面と充填材の境界部における両表層端2箇所を、レーザー顕微鏡を用いて50倍の倍率にて観察を行った。観察は4サンプルで行ない、計8箇所の上記表層端を観察した。歯と充填修復材の間に間隙(くぼみ)が、6箇所以上観察されたものを×、4〜5箇所観察されたものを△、2〜3箇所観察されたものを○、間隙が観察されなかった、もしくは1箇所のみ観察されたものを◎とした。
【0058】
(2)歯科用充填修復材の撥水性評価
直径8mmの貫通孔を開けた厚さ0.5mmのポリアセタール製型に歯科用修復材料を填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接して、歯科用光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマデンタル社製;光出力密度700mW/cm)にて30秒間光照射を行い、試験片を作製した。23℃恒温室中にて、得られた硬化体の表面に水滴を1μL垂らし、接触角を測定した。
【0059】
(3)重合収縮率の測定
直径3mmの貫通孔が形成された、厚み7mmのステンレス鋼(SUS)製割型に、直径3mm弱、高さ4mmのSUS製プランジャーを若干の遊嵌状態で填入して、貫通孔の一方の開口を閉塞し、孔の深さを3mmに調整した。次に、この孔内に歯科用充填修復材を充填した後、孔の上端をポリプロピレンフィルムで圧接した。次に、ガラス製台のガラス天板の中央下方に、歯科用照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマデンタル製;光出力密度700mW/cm)を備え付けた。このガラス製台のガラス天板の中央上面に、上記SUS製割型を、そのポリプロピレンフィルムが貼り付けられた面を下に向けた状態で載せた。そして、更にSUS製プランジャーの上面に微小な針の動きを計測できる短針を接触させた。この状態で、歯科用照射器によって歯科用充填修復材を重合硬化させ、照射開始より3分後の収縮率[%]を、短針の上下方向の移動距雛から算出した。
【0060】
実施例1〜9,比較例1〜7
重合性組成物を混合して、下記A〜Cからなるマトリックス組成物を調整した。
<マトリックス組成物A>
・D−2.6E:70質量部
・3G:20質量部
・UDMA:10質量部

<マトリックス組成物B>
・bis−GMA:60質量部
・3G:40質量部

<マトリックス組成物C>
・5F:50質量部
・D−2.6E:40質量部
・UDMA:10質量部

また、フィラー組成物Aとして、0.3Si−Tiの70質量部と0.3Si−Tiの30質量部の混合物を調整した。
【0061】
上記マトリックス組成物A〜C、フィラー組成物A、および重合開始剤としてCQとDMBEとを、表1および表2に示した配合量で混合し、各歯科用充填修復材を製造した。これらの歯科用充填修復材について、「修復歯牙表層面における歯と充填修復材との間隙の評価」、「歯科用充填修復材の撥水性評価」、および「重合収縮率の測定」を実施し、結果を表3に併せて示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
以上のように、フッ素基を有する樹枝状高分子を含有する各実施例の充填修復材は、各比較例の、樹枝状高分子を含有しない充填修復材や、フッ素基を有さない樹枝状高分子を含有する充填修復材と比較して、修復歯牙表層面における歯と充填修復材との間隙が形成され難く、且つ対水接触角が高く、プラークの付着し難い撥水性に優れる結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性単量体、(B)フッ素基を有する樹枝状高分子、(C)重合開始剤、および(D)フィラーを含有してなる歯科用充填修復材。
【請求項2】
(B)フッ素基を有する樹枝状高分子が、CHに対する接触角(23℃)が60°〜130°のものである請求項1に記載の歯科用充填修復材。
【請求項3】
(B)フッ素基を有する樹枝状高分子が、屈折率(25℃)が1.4〜1.7のものである請求項1または請求項2に記載の歯科用充填修復材。
【請求項4】
(B)フッ素基を有する樹枝状高分子の配合量が、(A)重合性単量体100質量部に対して8〜40質量部である請求項1〜3の何れか1項に記載の歯科用充填修復材。
【請求項5】
(D)フィラーの配合量が、(A)重合性単量体100質量部に対して70〜600質量部である請求項1〜4の何れか1項に記載の歯科用充填修復材。

【公開番号】特開2013−18712(P2013−18712A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150990(P2011−150990)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】