説明

歯科用材料

屈折率nを有する重合性の歯科用樹脂と屈折率nを有するナノ寸法の無機質固形材料粒子と屈折率nを有する歯科用ガラス粒子と歯科用材料の自己重合あるいは光硬化のための補助剤とを含んでいる。この歯科用材料が1.56ないし1.70の範囲にある全体的な屈折率nを有する。この歯科用材料は補綴される歯に対して最適な光学的特性をもたらし、また大きな層厚で塗布することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載の歯科用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の歯科材料、特に充填材料ならびに歯科用塗料は、通常極めて異なった屈折率を有している多様な液体および固形物質から合成される。また既知の歯科用材料は全般的に自然歯のものには相当しない屈折率を有している。そのことによって歯科用材料を歯上あるいは歯内に塗付した場合に不良な光学的特性がもたらされる。天然のエナメル質は層厚が増す程より白色になりまたより輝度が高まりそれによってグレースケールが低下するのに対して、既知の歯科用材料は全くその逆の特性を有し、すなわちそのグレースケールは層厚が増す程増加する(ガラス効果)。従ってその種の既知の材料によって形成された補綴材の光学的特性は天然のエナメル質のものには相応しない。
【0003】
従って、より大きく自然のエナメル質に相当する層厚のものを補綴される歯の上に塗付することができる、特にエナメル質部分の修復用の歯科材料を提供する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はそのための補助となる。従って本発明の目的は、補綴する歯に最適な光学的特性をもたらしまた大きな層厚をもって塗付可能である歯科用材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、前記の課題は請求項1の特徴を有する歯科用材料によって解決される。
【0006】
本発明によって達成される利点は主に以下の点である:
A) 本発明に係る歯科用材料は(特にエナメル質層として使用される場合に)より大きな層厚をもって塗付することができそれによってエナメル質に近似した光学的効果を達成することができ;
B) 本発明に係る歯科用材料は光回折の点に関していずれにしても天然のエナメル質に近似し、特に最適な透明度と立体感を備え;
C) より厚い層を塗付し得る可能性のため本発明に係る材料によればより簡便かつより良好な材料の取り扱いが可能となり;
D) より大きな層厚のため口内環境中における化学的侵食に対してのより良好な材料の耐久性が実現される。
【0007】
本発明の好適な実施形態によれば歯科用材料が1.59超、特に1.60超の屈折率nを有している。この歯科用材料の屈折率nは、1.64未満、特に1.62未満であることが好適である。
【0008】
別の実施形態によれば、ナノ寸法の無機質固形材料粒子が混合された歯科用樹脂自体でも、歯科用ガラス粒子の屈折率nから最大でも5%、特に最大でも2%しか相違していない屈折率n12を有するものとなる。第1のステップにおいて歯科用樹脂内に混合されたナノ寸法の無機質固形材料粒子によって透明、すなわち非濁色、非コロイド状のシステムがもたらされ;略同じ屈折率を有する歯科用ガラスを選択することによってシステム全体の光学特性が殆ど保持され、すなわち液状あるいはペースト状の歯科用材料が全体的に透明性を維持し、そのことが歯科用途において重要な意味を成す。
【0009】
屈折率n12は屈折率nから最大でも1.0%、特に最大でも0.2%相違していて1.56ないし1.65、特に1.59ないし1.62の範囲となることが好適である。
【0010】
歯科用ガラス粒子の屈折率nは1.58ないし1.65、特に1.59ないし1.62の範囲にあることが好適である。歯科用樹脂の屈折率nは1.54より大きいことが好適である。
【0011】
本発明において歯科用樹脂としては、ビスメタクリレート、特にBis−GMAあるいはエトキシ化されたビスフェノールAジメタクリレート、またはその派生物が好適である。歯科用樹脂はメタクリル置換されたポリジフェニル珪素あるいはジフェニルシラン派生物とすることもできる。ポリ(ペンタブロモフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタブロモベンジルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、ポリ(2,4,6−トリブロモフェニルメタクリレート)、ポリ(ビニルフェニルスルフィド)、ポリ(1−ナフチルメタクリレート)、ポリ(2−ビニルチオフェン)、ポリ(2,6−ジクロロスチレン)、ポリ(N−ビニルフタルイミド)、ポリ(2−クロロスチレン)、ポリ(ペンタクロロフェニルメタクリレート)の一群からの歯科用樹脂も同様に適している。
【0012】
ナノ寸法の無機質固形材料粒子は、酸化金属に基づいて、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、あるいは酸化アルミニウム、ならびにそれらの混合物から選択することが好適である。通常、100nm未満、特に20ないし40nmの直径を有する粒子が使用される。
【0013】
好適な実施形態によれば歯科用樹脂とナノ寸法の無機質固形材料粒子との間の重量比は1.0ないし2.5の範囲になる。
【0014】
ナノ寸法の無機質固形材料粒子の表面は、有機酸、特に炭酸派生物あるいはメタクリレート置換されたシランによって被覆することができる。この被覆によって歯科用樹脂内におけるナノ寸法の無機質固形材料粒子の再凝集が防止される。意外なことに、この有用な作用はコロイド状の歯科用樹脂/ナノ粒子システムへの歯科用ガラス粒子の添加後にもなお存在する。特に適したものは:2−[2−(2メトキシエトキシ)−エトキシ]−酢酸、あるいはγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0015】
歯科用ガラス粒子は5μm、特に最大0.7μmの最大平均直径を有することが好適である。
【0016】
歯科用ガラスとしては、特に硼珪酸塩ガラス、バリウムアルミノ珪酸塩ガラス、シリカ、珪酸チタン、珪酸ジルコニウム、バリウムマグネシウムアルミノ珪酸塩ガラス、酸化バリウム、石英、ならびに酸化アルミニウムが適している。歯科用ガラスは、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランによって改質することもできる。
【0017】
歯科用ガラスとしてはさらに、0.005ないし5.0μm、特に0.1ないし1μmの平均粒子大を有するSiO、ZrO、ZnO、La、Al、および/またはTiOに基づいた非晶質で球形状の鉱物、ならびに0.01ないし20μm、特に0.5ないし5μmの平均粒子大を有する石英、ガラスセラミックあるいはガラス粉末、珪酸バリウムガラス、弗化バリウム珪酸塩ガラスおよびLi/Al珪酸塩ガラス、バリウムガラス、アルミニウム、亜鉛、ランタン、ジルコニウム、または珪素の酸化物等のマクロおよびミニ充填材も適している。ミニ充填材としては0.5ないし1.5μmの粒子大を有する充填材が理解され、マクロ充填材としては10ないし20μmの粒子大を有する充填材が理解される。
【0018】
他の好適な歯科用ガラスは、(A)二酸化珪素からなる非晶質で球形状の粒子、ならびに20モル%までの1.50ないし3.00の屈折率と0.1ないし5.0μmの平均粒子大を有する周期表I、II、IV、V、XII、XIIIおよびXIV属の少なくとも1つの元素の酸化物と、(B)1.50ないし2.00の屈折率と0.1ないし5.0μmの平均粒子大を有する石英、ガラスセラミックあるいはガラス粉末、またはそれらの混合物、からなる混合物である。
【0019】
成分AおよびBはそれ自体歯科用ガラス成分として使用することもできる。
【0020】
無機質の充填材(A)は、特にストロンチウム、アルミニウム、亜鉛、チタン、ランタン、および/またはジルコニウム酸化物等の周期表I、II、IV、V、XII、XIIIおよびXIV属の金属の酸化物を含んでいる。平均粒子大は0.15ないし2.0μmの範囲であり、無機質充填材(A)の屈折率は1.57ないし1.64であることが好適である。特に好適な数値は1.60±0.02である。タイプ(A)の充填材は0.5ないし2.0μmの粒子大を有する凝集体の混合物として焼結することもできる。
【0021】
無機質の充填材(B)の平均一次粒子大は0.1ないし5.0μm、特に0.5ないし2.0μmであることが好適であり、屈折率は1.57ないし1.64となることが好適である。充填材混合物を使用することもできる。本発明によれば、0.4ないし2.0μmの範囲の平均粒子大を有するバリウム珪酸塩ガラスならびに0.4ないし2.0μmの平均粒子大を有するLi/Al珪酸塩ガラスを使用することが好適である。
【0022】
歯科用ガラス粒子の表面は、連鎖可能な二重結合を有する定着剤、特にγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含むことができる。
【0023】
歯科用ガラス粒子は、35重量%未満、特に30重量%未満の酸化珪素含有率を有することが好適である。より高い酸化珪素含有率を有するガラスに比べて、屈折率を高めるZrOあるいはZnO等をより多く添加し得るという利点を有する。
【0024】
ナノ寸法の無機質固形材料粒子、特に酸化ジルコニウムは、110ないし250m/gの範囲の比表面積を有することが好適である。
【0025】
歯科用ガラス粒子は、12ないし15m/g(0.7μmの粒子大に対して)、7ないし8m/g(1.0μmの粒子大に対して)および1ないし2m/g(5.0μmの粒子大に対して)の範囲の比表面積を有することが好適である。
【0026】
歯科用ガラス粒子の密度は2.5ないし4.7(特に3.42)g/cmの範囲にあることが好適である。ナノ寸法の無機質固形材料粒子は3.0ないし6.5(特に5.4)g/cmの密度を有することが好適である。
【0027】
硬化した歯科材料の屈折率は1.56ないし1.70、特に1.58ないし1.64の範囲にあることが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明およびその追加構成について複数の実施例を示しながらより詳細に説明する。
【0029】
例1(光硬化性の歯科用樹脂混合物の製造)
次の成分:
30.0gのウレタンジメタクリレート
55.0gのBis−GMA
15.0gのヘキサンジオールジメタクリレート
0.20gのカンフェルチノン(Campherchinon)
0.20gのエチル−p−ジメチルアミノベンゾエート
から従来の遊星型ミキサ内で歯科用樹脂混合物を製造した。得られた均質の混合物はn20=1.5140の屈折率を有していた。
【0030】
例2(酸化ジルコニウムを含んだ歯科用樹脂混合物の製造)
例1において得られた歯科用樹脂材料混合物50.0gに酸化ジルコニウムを含んだエタノール中の塩液(40%)を160.0g混合した。酸化ジルコニウム粒子の大きさは4ないし20nmであった。そのため歯科用樹脂混合物は塩液中に電磁撹拌機による攪拌あるいは振盪によって完全に溶解された。得られた酸化ジルコニウムを含有する歯科用樹脂混合物は、回転蒸発機を使用して暗室条件下で揮発性成分を排除して30分間室温中で減圧乾燥した。そのようにして得られた混合物の屈折率はn20=1.5880であった。
【0031】
例3(酸化ジルコニウムを含んだ歯科用樹脂混合物の製造)
50.0gの例1で得られた歯科用樹脂混合物に、例2と同様に酸化ジルコニウムを含んだエタノール塩液(40%)を180g混合した。得られた酸化ジルコニウムを含有する歯科用樹脂混合物は、回転蒸発機を使用して暗室条件下で揮発性成分を排除して30分間室温中で減圧乾燥した。そのようにして得られた混合物の屈折率はn20=1.6050であった。
【0032】
例4(歯科用複合材料の製造)
85.0gの例3で得られた混合物に130.0gのシラン化したガラス粉末を混合した。ガラス粉末は以下の特性を有していた:
平均粒子大:0.7μm
屈折率n20:1.6000
密度(ρ):3.42
組成:30%のSiO/25%のSrO/10%のZnO/10%のZrO/その他:B/Al/La/CaO/Na
【0033】
この混合物が従来の遊星型ミキサ中で均質なペーストに加工され、それがn20=1.6060の屈折率を有していた。
【0034】
ペーストの試験片を従来の光重合装置(スペクトラ2000;シュッツデンタル社)によって9分間硬化させた。得られた硬化複合材料は以下の特性を備えていた:
屈折率n20:1.6060
ビッカース硬度、表面:44.5
ビッカース硬度、2mm内部:16.9
【0035】
例5(歯科用複合材料の製造)
85.0gの例3で得られた混合物に130.0gのシラン化したガラス粉末を混合した。ガラス粉末は以下の特性を有していた:
平均粒子大:1.0μm
屈折率n20:1.6000
密度(ρ):3.42
組成:30%のSiO/25%のSrO/10%のZnO/10%のZrO/その他:B/Al/La/CaO/Na
【0036】
この混合物が従来の遊星型ミキサ中で均質なペーストに加工され、それがn20=1.6050の屈折率を有していた。ペーストの試験片を従来の光重合装置(スペクトラ2000;シュッツデンタル社)によって9分間硬化させた。得られた硬化複合材料は以下の特性を備えていた:
屈折率n20:1.6050
ビッカース硬度、表面:49.9
ビッカース硬度、2mm内部:34.1
【0037】
例6(歯科用樹脂混合物の製造)
次の成分:
40gのBis−GMA
88gのウレタンジメタクリレート
32gのヘキサンジオールジメタクリレート
0.32gのカンフェルチノン(Campherchinon)
0.32gのエチル−p−ジメチルアミノベンゾエート
から従来の遊星型ミキサ内で歯科用樹脂混合物を製造した。得られた均質の混合物はn20=1.4960の屈折率を有していた。
【0038】
例7ないし16(酸化ジルコニウムを含有する歯科用樹脂混合物の製造)
次の表には、例6の歯科用樹脂と酸化ジルコニウムを含有する塩液からなる混合物の屈折率が酸化ジルコニウム含有率に従って示されている。
【0039】
【表1】

【0040】
例17(歯科用複合材料の製造)
85.0gの例13で得られた混合物に130.0gのシラン化したガラス粉末を混合した。ガラス粉末は以下の特性を有していた:
粒子大:1.0μm
屈折率n20:1.6000
密度(ρ):3.42
組成:30%のSiO/25%のSrO/10%のZnO/5%のLa/5%のAl/その他:B/CaO/NaO/ZrO
【0041】
この混合物が従来の遊星ミキサ中で均質なペーストに加工された。ペーストの試験片を従来の光重合装置(スペクトラ2000;シュッツデンタル社)によって9分間硬化させた。得られた硬化複合材料は以下の特性を備えていた:
屈折率n20:1.5955
ビッカース硬度、表面:52.7
ビッカース硬度、2mm内部:40.1
【0042】
例18(歯科用複合材料の製造)
85.0gの例13で得られた混合物に130.0gのシラン化したガラス粉末を混合した。ガラス粉末は以下の特性を有していた:
平均粒子大:0.7μm
屈折率n20:1.6000
密度(ρ):3.42
組成:30%のSiO/25%のSrO/10%のZnO/10%のZrO/その他:B/Al/La/CaO/Na
【0043】
この混合物が従来の遊星型ミキサ中で均質なペーストに加工された。ペーストの試験片を従来の光重合装置(スペクトラ2000;シュッツデンタル社)によって9分間硬化させた。得られた硬化複合材料は以下の特性を備えていた:
屈折率n20:1.5945
ビッカース硬度、表面:50.5
ビッカース硬度、2mm内部:35.5
【0044】
例19(酸化ジルコニウムを含有した歯科用樹脂混合物の製造)
次の成分:
50.0gのBis−GMA(n20=1.5503の屈折率を有する)
酸化ジルコニウムを含有した100.0gの40%エタノール塩液
0.05gのカンフェルチノン(Campherchinon)
0.05gのエチル−p−ジメチルアミノベンゾエート
から従来の遊星型ミキサ内で歯科用樹脂混合物を製造した(例2と同様)。得られた均質の混合物はn20=1.5920の屈折率を有していた。
【0045】
例20(歯科用複合材料の製造)
100gの例19で得られた混合物に130gのシラン化したガラス粉末を混合した。ガラス粉末は以下の特性を有していた:
平均粒子大:0.7μm
屈折率n20:1.6000
密度(ρ):3.42
組成:30%のSiO/25%のSrO/10%のZnO/10%のZrO/その他:B/Al/La/CaO/Na
【0046】
この混合物が従来の遊星型ミキサ中で均質なペーストに加工された。ペーストの試験片を従来の光重合装置(スペクトラ2000;シュッツデンタル社)によって9分間硬化させた。得られた硬化複合材料は以下の特性を備えていた:
屈折率n20:1.6010
ビッカース硬度、表面:35.8
ビッカース硬度、2mm内部:19.5
【0047】
例21(歯科用複合材料の製造)
100gの例19で得られた混合物に130gのシラン化したガラス粉末を混合した。ガラス粉末は以下の特性を有していた:
粒子大:5.0μm
屈折率n20:1.6000
密度(ρ):3.42
組成:30%のSiO/25%のSrO/10%のZnO/5%のLa/5%のAl/その他:B/CaO/NaO/ZrO
【0048】
この混合物が従来の遊星型ミキサ中で均質なペーストに加工された。ペーストの試験片を従来の光重合装置(スペクトラ2000;シュッツデンタル社)によって9分間硬化させた。得られた硬化複合材料は以下の特性を備えていた:
屈折率n20:1.6060
ビッカース硬度、表面:27.4
ビッカース硬度、2mm内部:18.2
【0049】
例22(自己重合性の2成分歯科用樹脂混合物の製造)
基本樹脂混合物:
30.0gのウレタンジメタクリレート
55.0gのBis−GMA
15.0gのヘキサンジオールジメタクリレート
【0050】
酸化ジルコニウムを含有した歯科用樹脂混合物:
50.0gの上記の基本樹脂混合物
酸化ジルコニウムを含有した(40%)エタノール塩液180.0g
【0051】
成分A:
85.0gの上記の酸化ジルコニウムを含有した歯科用樹脂混合物
0.27gのN,N−Bis−(2)−ヒドロキシエチル−p−トルイジン
130.0gのガラス粉末(平均粒子大0.7μm)
【0052】
成分B:
85.0gの上記の酸化ジルコニウムを含有した歯科用樹脂混合物
12.5gの過酸化ジベンゾイル(50%の粉末フタル酸エステル)
130.0gのガラス粉末(0.7μm)
【0053】
同じ分量の成分AおよびBをヘラによって30秒間混合し、その材料をエナメル質損傷の補綴に使用した。歯上で硬化した材料は高い透明性を備え、天然のエナメル質に極めて近似した外観を有していた。
【0054】
本発明に係る歯科用材料は流動性あるいは混練可能な形態で製造することができる。全ての硬化した歯科用複合材料が1mmの層厚において極めて好適な透明性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率nを有する重合性の歯科用樹脂と屈折率nを有するナノ寸法の無機質固形材料粒子と屈折率nを有する歯科用ガラス粒子と歯科用材料の自己重合あるいは光硬化のための補助剤とを含んだ歯科用材料であり、
前記歯科用材料が1.56ないし1.70の範囲にある全体的な屈折率nを有することを特徴とする歯科用材料。
【請求項2】
屈折率nが1.59超、特に1.60超であることを特徴とする請求項1記載の歯科用材料。
【請求項3】
屈折率nは1.64未満、特に1.62未満であることを特徴とする請求項1または2記載の歯科用材料。
【請求項4】
ナノ寸法の無機質固形材料粒子が混合された歯科用樹脂自体が歯科用ガラス粒子の屈折率nから最大でも5%、特に最大でも2%しか相違していない屈折率n12を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項5】
屈折率n12は屈折率nから最大で1.0%、特に最大で0.2%相違していることを特徴とする請求項4記載の歯科用材料。
【請求項6】
屈折率n12は1.56ないし1.65、特に1.59ないし1.62の範囲となることを特徴とする請求項4または5記載の歯科用材料。
【請求項7】
屈折率nは1.58ないし1.65、特に1.59ないし1.62の範囲にあることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項8】
歯科用樹脂の屈折率nが1.54より大きいことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項9】
歯科用樹脂がビスメタクリレート、特にBis−GMAあるいはエトキシ化されたビスフェノールAジメタクリレートまたはその派生物であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項10】
歯科用樹脂がメタクリル置換されたポリジフェニル珪素あるいはジフェニルシラン派生物であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項11】
歯科用樹脂が:ポリ(ペンタブロモフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタブロモベンジルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、ポリ(2,4,6−トリブロモフェニルメタクリレート)、ポリ(ビニルフェニルスルフィド)、ポリ(1−ナフチルメタクリレート)、ポリ(2−ビニルチオフェン)、ポリ(2,6−ジクロロスチレン)、ポリ(N−ビニルフタルイミド)、ポリ(2−クロロスチレン)、ポリ(ペンタクロロフェニルメタクリレート)の一群から選択されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項12】
ナノ寸法の無機質固形材料粒子は酸化金属に基づいて、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、あるいは酸化アルミニウム、ならびにそれらの混合物から選択することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項13】
歯科用樹脂とナノ寸法の無機質固形材料粒子との間の重量比は1.0ないし2.5の範囲になることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項14】
ナノ寸法の無機質固形材料粒子の表面は有機酸、特に炭酸派生物あるいはメタクリレート置換されたシランによって被覆されることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項15】
歯科用ガラス粒子は最大5μm、特に最大0.7μmの平均直径を有することを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項16】
歯科用ガラス粒子の表面は連鎖可能な二重結合を有する定着剤、特にγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを有することを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項17】
歯科用ガラス粒子は35重量%未満、特に30重量%未満の酸化珪素含有率を有することを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項18】
ナノ寸法の無機質固形材料粒子、特に酸化ジルコニウムが110ないし250m/gの範囲の比表面積を有することを特徴とする請求項12ないし16のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項19】
歯科用ガラス粒子が12ないし15m/g(0.7μmの粒子大に対して)、7ないし8m/g(1.0μmの粒子大に対して)および1ないし2m/g(5.0μmの粒子大に対して)の範囲の比表面積を有することを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項20】
歯科用ガラス粒子が2.5ないし4.7g/cmの密度を有することを特徴とする請求項1ないし19のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項21】
ナノ寸法の無機質固形材料粒子が3.0ないし6.5g/cmの密度を有することを特徴とする請求項1ないし20のいずれかに記載の歯科用材料。
【請求項22】
硬化した歯科材料の屈折率が1.56ないし1.70、特に1.58ないし1.64の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし21のいずれかに記載の歯科用材料。

【公表番号】特表2009−508930(P2009−508930A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531802(P2008−531802)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002816
【国際公開番号】WO2007/034258
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508088845)ゲーデーエフ ゲゼルシャフト フュール デンターレ フォルシュング ウント イノベーショネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【出願人】(508088720)ミセリウム ソシエタ ペル アチオーニ (1)
【出願人】(508088731)
【Fターム(参考)】