説明

歯科用X線撮像装置、歯の3次元デジタルモデルの作成方法、およびコンピュータ断層撮像における歯科X線画像の取得方法

【課題】歯の印象またはモデルを撮像するための撮像モードを持つ歯科用CT装置を提供する。
【解決手段】歯科用CT装置1は、撮像ステーション16の対向する両側において放射線源14および撮像センサ15を動かすように構成されている制御システム、を含んでいる。この制御システムは、患者の撮像用に指定されている少なくとも第1の撮像モードと、少なくとも1つの第2の撮像モードを選択するための手段と、を含んでおり、第2の撮像モードでは、照射中に、放射線源および撮像センサが4度/秒未満の角速度で駆動される。歯の印象またはモデルを撮像するための少なくとも1つの特定の撮像モードが設けられたCT装置によって、歯の印象またはモデルを撮像することに基づいて、歯の3次元デジタルモデルが生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用X線撮像装置と、1本または複数の歯の3次元デジタルモデルを作成する方法と、コンピュータ断層撮像における歯科X線画像を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用X線撮像は長い歴史を持つ。最も初期の技術は、撮像する対象物を徹照する(transilluminating)ことに基づいていた。徹照法では、照射の方向に重なり合っている可能性のある、撮像される領域の組織構造すべてが、実際に重なって撮像される。この問題を解決するため、その後、層撮像またはいわゆる断層撮像が開発され、この方法では、形成中または形成される画像において、対象物の必要な層以外の層においてぼやけ(blurring)を生じさせることによって、目的の層をよりクリアに撮像することが可能である。ぼやけは、撮像中に(撮像手順に応じて照射中または個々の照射の間に)、撮像手段と対象物の相対位置を変化させることによって達成される。
【0003】
その後、特に、コンピュータおよびデジタル撮像法の進化に伴って、数多くの異なる断層撮像技術および装置が開発された。歯科の技術分野においては、一般的には、口腔内および頭部撮像(intra-oral and cephalometric imaging)(撮像技術に関する限りは単純であり、徹照撮像によって行われる)に加えて、特に、いわゆるパノラマ撮像(一般には、歯列弓全体を含む層が平面上に撮像される)を使用する。その後、コンピュータ(またはコンピュータ化された)断層撮像(CT)が歯科の分野でも応用されるようになり、初期には主として臨床環境で使用された。
【0004】
撮像技術に関して、現在では何種類かのCT技術が知られている。CT撮像では、撮像する領域に複数の異なる方向から照射し、得られたデータから、必要な2次元または3次元の画像を後から再構築する。コンピュータ断層撮像の一般的な原理およびさまざまな用途に関しては、この技術分野の文献、例えば非特許文献1を参照されたい。
【0005】
コンピュータ断層撮像の一形態は、いわゆるコーンビームCT(CBCT)であり、例えばパノラマ撮像で使用されるナロービームとの違いとして、撮像する領域のサイズに実質的に等しい円錐状ビームを使用し、スロットセンサ(slot sensor)の代わりに、円錐のサイズに対応する検出器を使用する。いくつかの従来のCT撮像技術と比較すると、CBCT技術では、大幅に少ない放射線量と短い撮像時間を達成することができる。
【0006】
人などの患者をX線を使用して撮像するとき、一般的には、いわゆるALARA(合理的に達成可能な限り低く)原理が適用される。このことは、診断を行うための最小限の放射線量で(すなわち、診断できる範囲内で、発生する放射線量ができる限り小さい撮像手順によって)、撮像を行うべきことを意味する。この原理は、コンピュータ断層撮像によって実際に提供される可能性を利用する妨げになり得る。
【0007】
しかしながら、患者の撮像に関連して、撮像プロセス中に患者が動くことによる問題が生じうる。このため、患者を撮像するときには、一般には、撮像プロセスによって決まる条件の範囲内で撮像プロセスができる限り短時間で行われる。
【0008】
歯科手術に関連して、例えば矯正治療、義歯治療、および外科治療に関連する手術を計画するとき、歯のギプスや他の物理的モデルがしばしば利用され、これらによって、例えば歯の移植を手作業で実行したり、咬合矯正、クラウン、およびブリッジを設計することが可能である。さらに、これらの歯の物理的モデルや印象を走査してデジタル形式のデータとし、そこから実際のモデルを作成することも知られている。このようなデジタルモデルをプログラムによって合成して患者のX線画像を得ることができ、例えば、患者の歯に関する情報と口腔領域の軟組織に関する情報を、同じ画像に合成することが可能である。これにより、臨床の専門家は、手作業からデジタル作業に移行することができ、したがってより包括的かつ詳細な治療計画を行うことができる。
【0009】
モデルおよび印象のデジタル化が普及することを妨げている1つの要因として、3次元画像情報を生成するためには、専用に設計された装置の使用が要求される。しかしながら、歯科医にとってこのような装置に投資することは、必ずしも妥当な選択ではない。したがって、上述したデジタル化のメリットを利用するためには、走査サービスを外部に委託しなければならないことが多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Computed Tomography: Principles, Design, Artifacts and Recent Advantages, Jian Hsich, SPIE PRESS, 2003, Bellingham, Washington, USA
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、歯科用X線装置に関連する技術と、歯の物理的な印象およびモデルの3次元撮像に関連する技術とを前進させることである。本発明およびその好ましい実施形態によると、例えば歯科医院は、印象およびモデルを走査するための専用装置に投資する必要がなく、これにより、歯科治療の計画時にデジタル形式の組織構造情報を容易に利用できるようになる。本発明による装置によって作成することのできる歯および軟組織のモデルは、モデルのデジタル化によって可能になる上に挙げた用途のみならず、例えば3次元歯科インプラントの設計でも利用することができる。
【0012】
本発明の基本的な特徴は、添付の請求項に記載されている。具体的には、本発明の本質的な発想は、歯科用コンピュータ断層撮像装置を、印象およびモデルの撮像を実施するためのプラットフォームとして使用することである。本発明およびその好ましい実施形態においては、歯科用コンピュータ断層撮像装置は、1つまたは複数の患者診断撮像モードに加えて、印象およびモデルの撮像を特に目的とする少なくとも1つの撮像モードが提供されるように構成されている。このような撮像モードの本質的な特徴は、そのモードの実行時には、上述したALARA原理と、患者の動きに起因して発生しうる問題のいずれも考慮する必要がないことであり、これにより、患者の撮像時に課される条件によって撮像パラメータ(例えば撮像時間)を制限する必要がなく、最良の画質を得ることのみを考慮して最適なパラメータを使用することができる。
【0013】
より具体的には、本発明の一態様によると、少なくともコンピュータ断層撮像を行うことができるように構成されている歯科用X線撮像装置であって、
− 回転軸線を中心に互いに隔てて配置されている放射線源および2次元撮像センサ、を動かすアクチュエータ、を含んでいる構造部と、
− 放射線源に関連して配置されているコリメータ構造であって、放射線源によって生成される放射線を絞って少なくとも1つの2次元形状のコーンビームにする、コリメータ構造と、
− 患者支持装置が選択的に取り付けられる撮像ステーションと、
− 患者の撮像用に指定されている第1の撮像モードに従って、アクチュエータ、放射線源、および撮像センサの動作を制御するように設けられている制御システムであって、第1の撮像モードにおいては、照射中に、放射線源および撮像センサが実質的に撮像ステーションの対向する両側において動く、制御システムと、
を含んでいる、歯科用X線撮像装置、を提案する。
【0014】
さらには、制御システムは、患者以外の対象物の撮像用に指定されている少なくとも第2の撮像モードを選択するように設けられている手段であって、第2の撮像モードにおいては、照射中に、放射線源および撮像センサが回転軸線を中心に4度/秒未満の角速度で、もしくは2度/秒またはそれ以下のオーダーの角速度で回転するように、制御システムがアクチュエータの動作を制御する、手段、を含んでいることができる。
【0015】
本発明の別の態様によると、第2の撮像モードが選択されているとき、照射中に、複数の異なる投影角度において500枚以上の画像が取得されるように、または、複数の異なる投影角度において1000枚のオーダーの画像が取得されるように、制御システムが撮像センサを制御することができる。
【0016】
本発明のさらに別の態様によると、第2の撮像モードが選択されているとき、放射線源および撮像センサが、撮像ステーションを中心に、約200度のオーダーの回転角度を完全に回転するように、制御システムが放射線源および撮像センサの回転を制御することができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様によると、第2の撮像モードが選択されているとき、少なくとも1〜2分のオーダーの持続時間を有する撮像プロセスにおいて、放射線源および撮像センサが撮像ステーションを中心に約200〜360度のオーダーの回転角度を完全に回転するように、制御システムが放射線源および撮像センサの回転を制御することができる。
【0018】
本発明のさらに別の態様によると、第2の撮像モードが選択されているとき、情報を読み出す前または読み出し中に、隣接する画素の情報を加算することなく、撮像センサから個々の画像が読み出されるように、制御システムが撮像センサを制御することができる。
【0019】
本発明のさらに別の態様によると、第2の撮像モードが選択されているとき、撮像される対象物内に存在する位置または要素のビームによって形成される、撮像センサ上の投影が、1枚の画像を取得する間(パルス放射線を使用する場合には1つの照射パルスの間)、撮像センサの移動方向に、最大でも、撮像センサの画素のサイズに実質的に等しい距離を動くように、制御システムが放射線源および撮像センサの回転を制御することができる。
【0020】
本発明のさらに別の態様によると、第2の撮像モードが選択されているとき、放射線源の焦点から0.6mの距離において0.02mの面積を有するビームを考えるとき、ビームの中心軸線を基準とする横断面上に放射線源によって生成される面積線量(DAP)が、約200μGymより大きいように、または、撮像ステーションの位置において放射線源によって実質的に生成される放射線量(グレイ)が、約40mGyまたはそれ以上のオーダーであるように、制御システムが本装置の動作を制御することができる。
【0021】
本発明のさらに別の態様によると、第2の撮像モードが選択されているとき、放射線源によって生成される放射線量が、第1の撮像モードが選択されているときに生成される放射線量よりも高い、特に、少なくとも2倍であるように、制御システムが本装置の動作を制御することができる。
【0022】
本発明のさらに別の態様によると、本装置は、撮像ステーションに選択的に取り付けられるように構成されている台部であって、第2の撮像モードのみに関連して使用されるように設計されており、そのように取り付けられたとき、患者以外の撮像される対象物を撮像ステーションに保持するように構成されている、台部、をさらに備えていることができる。
【0023】
本発明のさらに別の態様によると、台部は、X線を弱吸収する(weakly absorbing)材料からなることができる。
【0024】
本発明のさらに別の態様によると、台部が取り付けられていないときに第2の撮像モードの選択が抑制されるように、制御システムを実施することができる。
【0025】
本発明のさらに別の態様によると、患者支持装置が撮像ステーションに取り付けられているときに第2の撮像モードの選択が抑制されるように、制御システムを実施することができる。
【0026】
本発明のさらに別の態様によると、明示的に有効にされているときにのみ第2の撮像モードを使用することができるように、制御システムを実施することができる。
【0027】
さらには、本発明のさらに別の態様によると、1本または複数の歯の3次元デジタルモデルを作成する方法であって、歯の3次元の物理的陰型印象、または歯の3次元の物理的陽型モデルを撮像することに基づいて、3次元デジタルモデルを生成することができ、コーンビームCT撮像のための手段が設けられた歯科用X線撮像装置に関連して配置されている撮像ステーションに、印象またはモデルを置いて撮像することができ、コーンビームCT撮像のための手段が設けられた歯科用X線撮像装置によって印象またはモデルを撮像するときに検出される画像情報、を処理することによって、3次元デジタルモデルを生成することができる、方法、を提案する。
【0028】
本発明のさらに別の態様によると、コンピュータ断層撮像における歯科X線画像を取得する方法であって、
− 互いに隔てて配置されており撮像ステーションを中心に回転することのできる放射線源および撮像センサ、を含んでいる歯科用X線撮像装置、を提供するステップであって、装置が、患者の撮像用に指定されている第1のモードと、患者以外の対象物の撮像用に指定されている第2のモードと、を含む少なくとも2つのモード、のうちの1つにおいて選択的に動作可能であり、歯科用X線撮像装置に、コーンビームCT撮像のための手段が設けられている、ステップと、
− 撮像される患者の少なくとも一部分を撮像ステーションにおいて支持する患者支持装置、または、患者以外の撮像される対象物の少なくとも一部分を撮像ステーションにおいて支持する台部、の一方を、撮像ステーションに選択的に取り付けるステップと、
− 撮像ステーションに患者支持装置または台部が取り付けられているかを検出するステップと、
− 検出に基づいて、本装置の動作モードの選択を制限するステップと、
を含んでいる、方法、を提案する。
【0029】
本発明のさらに別の態様によると、撮像ステーションに台部が取り付けられていないことが検出された場合、第2のモードにおける本装置の動作を抑制することができる。
【0030】
本発明のさらに別の態様によると、撮像ステーションに患者支持装置が取り付けられていることが検出された場合、第2のモードにおける本装置の動作を抑制することができる。
【0031】
本発明のさらに別の態様によると、患者以外の対象物は、歯の印象または歯のモデルのいずれかとすることができる。
【0032】
以下では、本発明およびそのいくつかの好ましい実施形態について、添付の図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を実施するためのプラットフォームとして使用することのできる撮像装置の全体図を一例として示している。
【図2】図2a、図2b、図2cはそれぞれ、歯の物理的印象を取得するときに使用される印象トレーと、そのようなトレーにおける歯列弓の印象と、そのような印象に基づいて作成された物理的モデルとを示している。
【図3】図3a、図3bはそれぞれ、歯の物理的印象またはモデル用の、例えば図1による装置に取り付けることのできる撮像台部と、この台部の上に配置された、図2cによるモデルとを示している。
【図4】例えば図1による装置に配置することのできるユーザインタフェースを示しており、歯のモデルもしくは歯の印象またはその両方を撮像する撮像モードを選択するための選択手段が配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の主題の態様を実施するのに適している撮像装置1を示している。装置1は、ハウジング部10と、そこから突き出すように配置されている一連の撮像アームとを含んでおり、一連のアームは3本の撮像アーム部11,12,13を備えている。このうち第3のアーム部13は、第2のアーム部12に対して(例えば軸線xを中心に)回転または旋回するように構成されており、第2のアーム部12は、第1のアーム部11に対して(例えば軸線yを中心に)回転または旋回するように構成されており、第1のアーム部11は、ハウジング部10に対して(例えば軸線zを中心に)回転または旋回するように構成されている。第3のアーム部13は撮像手段を支持しており、撮像手段は、2次元の画素マトリクスを有する撮像センサ15と放射線源14(例えばX線管)とを含んでいる。好適には、放射線源14およびセンサ15は、アーム部13のカバーの中に、互いに距離を隔てて配置することができる。オプションとして、放射線源14によって生成される放射線を絞って、随意に望ましいサイズおよび形状の2次元のコーンビームにするコリメータ構造18と、ビームのスペクトルを所望のスペクトルに調整するフィルタ19とが、アーム部13のカバーの中、放射線源14の近くにさらに配置されている。
【0035】
図1の撮像装置は、図示したように、ハウジング部10から突き出しており患者支持手段22を支持するように構成されているさらなるアーム部21を含んでいる。好適には、さらなるアーム部21は、患者支持手段22が放射線源14とセンサ15との間の領域(撮像ステーション16を構成している)に実質的に位置するように、本装置の一連の撮像アーム11,12,13に対して患者支持手段22を配置する。実際にはさまざまな患者支持手段22を使用することができるが、図1は、患者の額を受け入れるかまたは支持するようにされているバンド17と、患者が噛むことのできるバイトブロック17bとを示している。
【0036】
図1に示したように、患者支持手段22を支持するアーム部21には、制御パネルまたは同様のユーザインタフェース23がさらに配置されており、このインタフェースを介して、撮像装置1のさまざまな機能を制御することができる。さらに実際には、撮像装置1は、アクチュエータおよび制御システムと、ルーチンとを含んでおり、これらは、装置の撮像アーム部11,12,13を望ましい位置に望ましい方法で動かし、さらには、放射線源14および撮像センサ15の機能を制御する。
【0037】
図1は、本発明の主題の態様を実施するのに適している一実施形態を示しているが、(図1に示した装置以外の)別のタイプの撮像装置を同様に採用することもできる。例えば、第1の撮像アーム部11を天井または壁に取り付けることができ、これにより装置は、ハウジング部10を含んでいる必要がない。患者支持手段22は、ハウジング部10以外の何らかの別の構造に取り付けることができる。一連の撮像アーム11,12,13も、1本または2本のアーム部とすることができる。例えば、物理的または仮想的な回転軸線に対して回転または旋回することのできる1本のアーム部13のみを設けることができる。
【0038】
オプションとして、撮像装置1の一連の撮像アーム11,12,13は、垂直方向にも移動することができる。これは、図1に示したように、複数の部分からなるハウジング10によって達成することができる。すなわち、ハウジング10は部分10aおよび10bを含んでいることができ、一連の撮像アーム11,12,13はハウジング部10bに支持されている。ハウジング部10bは、ハウジング部10aに対して垂直方向に可動とすることができ、したがって、一連の撮像アーム11,12,13は、垂直方向に自由に動くことができる。オプションとして、アーム21もハウジング部10bに支持されており、したがって、一連の撮像アーム11,12,13が垂直方向に動くと患者支持手段22も垂直方向に動く。さらに、一連の撮像アーム11,12,13と、患者支持手段22を支持しているアーム部21とが、垂直方向に互いに独立して動くようにすることも可能である。これは例えば、アーム部21を支持しているハウジング部10bに対して、アーム部21が垂直方向に可動であるようにすることによって、達成することができる。
【0039】
図2a、図2b、および図2cは、患者の歯の物理的印象を作成するときに使用される印象トレー31と、そのようなトレー31の上の歯列弓の物理的印象32(すなわち「陰型モデル」)と、そのような印象32に基づいて作成された物理的モデル33とを示している。歯の印象32は、図2aによる印象トレー31に硬化材料を満たし、そのような材料によって満たされたトレー31を患者の上顎または下顎の歯に押し付けることによって作成することができる。次いで、歯列弓の硬化した陰型モデル32に例えば石膏材料を満たすことによって、図2cによる歯のモデル33を成型することができる。
【0040】
図3aは、物理的な歯のモデル33のための台部41を示しており、台部41は、例えば図1による装置1の撮像ステーション16に選択的に配置することができ、図3bに示したように、この台部41の上に、図2cによるモデル33を配置または支持することができる。あるいは、図2bに示した印象32を、印象トレー31と一緒に、または単独で、台部41の上に配置して撮像することができる。図3aおよび図3bによる実施形態においては、台部41は、図1に示した、患者用に設計されているバイトブロック17の代わりに撮像装置1に選択的に取り付け可能であるように実施されている。このようにすることで、撮像ステーション16にバイトブロック17または台部41のいずれかを選択的に取り付けることができる。図3aおよび図3bの実施形態による台部41は、スタンド42を含んでおり、スタンド42および台部41は、X線を弱く吸収するのみである材料からなり、その上に、撮像される印象32またはモデル33を配置することができる。
【0041】
一実施形態によると、台部41は、バイトブロック17の代わりに取り付けられたときに、患者が撮像のために撮像ステーション16に身体を乗せることができず、むしろ意図的に禁止されるように実施されている。オプションとして、撮像装置1は、撮像ステーション16にバイトブロック17または台部41が取り付けられているかを検出、感知、または認識するようにされている。例えば、バイトブロック17または台部41が装置に取り付けられているかを検出するための手段を、例えばバイトブロック17または台部41を撮像装置1に取り付けるための取付けメカニズムに配置することができる。このような手段は、バイトブロック17または台部を選択的に検出するマイクロスイッチ構造、または例えば撮像装置1に配置されているパターン認識システムを含んでいることができる。したがって、バイトブロック17、または患者の支持もしくは位置決めまたはその両方を行う他の何らかの手段が、撮像ステーション16に取り付けられている場合、印象32、モデル33、それ以外の無生物被検体、人以外の被検体のうちの少なくとも1つを撮像するように設計されている撮像モードの選択もしくは使用またはその両方を抑制する防止機能が、オプションとして撮像装置1の制御システムに設けられている。この機能に加えて、またこの機能の代わりに、印象32、モデル33、それ以外の無生物被検体、人以外の被検体のうちの少なくとも1つを特に撮像するように意図されている撮像モードの選択もしくは使用またはその両方は、それら被検体の保持、位置決め、支持の少なくとも1つを行うように構成されている撮像台部41が撮像ステーション16に取り付けられているときのみ、もしくはそのようなモードが何らかの方法で特に有効にされているときにのみ、またはその両方であるときにのみ許可されるように、制御システムを構成することができる。
【0042】
図4は、例えば図1に示した撮像装置1に取り付けられるユーザインタフェース23を示している。好適には、このユーザインタフェース23は、歯の印象32、歯のモデル33、または他の無生物被検体のうちの少なくとも1つを撮像するように特に意図された撮像モードを選択するための選択手段24、を含んでいる。この撮像モードは、できる限り高画質の3次元画像を生成するように実施されていることが好ましい。実際に、このモードでは、撮像装置1のオペレータは、例えば、患者に照射するとき(患者への放射線負荷を考慮する必要がある)とは異なり、一般には撮像パラメータ値の制限につながる放射線負荷に関連する問題について、考慮する必要がない。
【0043】
したがって、本発明の主題の一態様は、オペレータによる撮像モードの選択に応える、撮像装置1の制御システムに関する。例えば、制御システムは、オプションとして、少なくとも1つの撮像モード(すなわち印象32やモデル33など無生物被検体あるいは人以外の被検体のための撮像モード)が選択されることに応えて、患者の撮像に使用される別の撮像モードの選択時に照射されるよりも高い放射線量が、撮像される対象物に照射されるように、構成されている。例えば、この第2の撮像モードにおいては、制御システムは、生物被検体または患者用の撮像モードが選択される場合よりも実質的に高い放射線量が生成され、撮像対象の対象物が撮像されるように、(i)アーム部13を回転させるアクチュエータの動作、(ii)放射線源14の動作、(iii)撮像センサ15の動作、(iv)コリメータ18もしくはフィルタ19またはその両方の動作、のうちの任意の1つまたは複数またはすべてを制御することができる。好適な一実施形態においては、無生物被検体用の少なくとも1つの撮像モードが提供される、もしくは(例えばユーザインタフェース23を介して)選択可能である、またはその両方であり、このモードにおいて、撮像装置1の制御システムは、照射中、放射線源14および撮像センサ15が約4度/秒未満の角速度で動くように、アーム部13を回転させるアクチュエータを駆動するように機能する。さらに別の実施形態においては、上記の角速度は、約2度/秒またはそれ以下とすることができる。オプションとして、別の適切な実施形態によると、患者を撮像するように意図されたいくつかの撮像モードが提供されるように撮像装置1が構成されている場合、患者を撮像するためのそれらの撮像モードに関連付けられる最大の放射線量よりも実質的に高い放射線量が対象物に照射される無生物被検体用の撮像モードを、追加的に提供することができる。例えば、無生物被検体または人以外の被検体用の撮像モードにおいては、患者を撮像する目的で提供される装置の撮像モードにおいて生成される最高放射線量の少なくとも2倍のオーダーの放射線量を、対象物に照射することができる。さらに別の実施形態においては、放射線源14の焦点から0.6mの距離において0.02mの面積を有するビームを考えるとき、無生物被検体用の撮像モードでは、放射線源14から、ビームの中心軸線を基準とする横断面上に、約200μGymよりも大きい面積線量(DAP)が生成される。オプションとして、上記のDAPは、約250μGymまたはそれ以上のオーダーである。さらに別の実施形態においては、無生物被検体用の撮像モードのとき、撮像ステーション16の位置において放射線源14によって実質的に生成される放射線量(グレイ)は、約40mGyまたはそれ以上のオーダーである。
【0044】
一実施形態においては、印象32、モデル33、その他の無生物被検体のうちの少なくとも1つのみを撮像するように意図された撮像モードでは、間欠的または周期的な放射線パルスが発生するように放射線源14が制御される。一方で、この撮像モードでは、オプションとして、照射中、それぞれが異なる投影角度における約500枚以上の画像が取得されるように、撮像センサ15が制御される。例えば、1000のオーダーの異なる投影角度で画像を取得することができる。好適には、この場合、放射線源14および撮像センサ15が、約200度の角度を回転する間に、約200度の中の異なる投影角度から約1000枚の対象物の画像が取得される。無生物被検体用の撮像モードにおいては、撮像する対象物内に存在する位置または要素のビームによって形成される投影が、1枚の画像を取得する間に(すなわち1つの放射線パルスの間に)、撮像センサ上で、撮像センサの移動方向に、撮像センサ15の画素のサイズよりも小さい距離を動くように、放射線源14および撮像センサ15をゆっくりと動かすことによって、対象物の投影画像が取得されるように、制御システムもしくは撮像アーム13の動きまたはその両方を実施することができる。
【0045】
別の実施形態においては、撮像手段の移動は、少なくとも約1〜2分のオーダーの持続時間を有する撮像プロセス中に、放射線源14および撮像センサ15が約200〜360度のオーダーの回転角度を動くようにされている。
【0046】
歯科用のコンピュータパノラマ断層撮像では、一般に、これらの撮像用途において実際に要求されるよりも小さい画素サイズを有する撮像センサが採用される。したがって、これらの撮像技術においては、過度に大量のデータを処理する必要がないように、撮像センサから情報を読み出す前または読み出し中に、隣接画素の情報を加算する処理が極めて一般的に行われる。本明細書に記載した無生物被検体用の撮像モードを使用する場合、無生物の対象物が撮像中に動いてしまう恐れはほとんどない。したがって、撮像中に個々の画素すべての画像情報を読み出すことができるように撮像時間を十分に長くすることができる。したがって、一実施形態においては、情報を読み出す前または読み出し中に、隣接する画素の情報が加算されない。オプションとして、無生物被検体用の撮像モードでは、撮像する対象物内に存在する位置または要素のビームによって撮像センサ15上に形成される投影が、1枚の画像を取得する間(パルス放射線を使用する場合には1つの照射パルスの間)、撮像センサ14の移動方向に、最大でも、撮像センサ15の画素のサイズに等しい距離を動くように、放射線源14および撮像センサ15を動かすことによって、投影画像を取得するようにされている。
【0047】
なお、本明細書に提示した特定の例示的な実施形態において、特定の構造上の特徴もしくは機能上の特徴またはその両方は、定義されている要素もしくは構成要素またはその両方に組み込まれているものとして記載されている。しかしながら、これらの特徴は、同じかまたは類似する利点を目的として、適切な場合には別の要素もしくは構成要素またはその両方に同様に組み込むことが考えられる。さらに、所望の用途に適する別の代替実施形態を達成するため、例示的な実施形態の複数の異なる態様を、必要に応じて選択的に採用することができ、この場合、それら別の代替実施形態において、組み込まれた態様のそれぞれの利点が達成されることを理解されたい。
【0048】
さらに、本明細書に記載されている特定の要素または構成要素(例えば制御システムなど)の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組合せによって適切に実施できることを理解されたい。例えば、適切なソフトウェアとして、コンピュータ可読媒体に含まれている例えばコードまたは他の命令が挙げられ、これらがマイクロプロセッサまたは類似する要素によって実行されたとき、上述した機能、動作、制御のうちの少なくとも1つを達成する。さらには、本明細書において、一緒に組み込まれて記載されている特定の複数の要素は、適切な状況では、単独の要素とする、または分割することができることを理解されたい。同様に、1つの特定の要素によって実行されるものとして記載されている特定の複数の機能は、個々の機能を実行するように独立して動作・作用する複数の個別の要素によって実行することができ、あるいは、特定の個々の機能を分割して、協働して動作・作用する複数の個別の要素によって実行することができる。あるいは、本明細書において互いに個別なものとして記載または図示されている要素または構成要素を、適切な場合には物理的または機能的に組み合わせることができる。
【0049】
いずれの場合も、本発明の主題の1つまたは複数の態様を、上述した実施形態による以外の方法でも実施できることが、当業者には明らかであろう。実際に、本明細書は、特定の実施形態を参照しながら記載されている。当然ながら、本明細書を読み進めて理解した時点で、修正形態および代替形態が創案されるであろう。そのような修正形態および代替形態は、請求項または同等の記載事項の範囲内である限り、すべてが本発明に含まれるものと解釈される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコンピュータ断層撮像を行うことができるように構成されている歯科用X線撮像装置であって、
− 回転軸線を中心に互いに隔てて配置されている放射線源および2次元撮像センサ、を動かすアクチュエータ、を含んでいる構造部と、
− 前記放射線源に関連して配置されているコリメータ構造であって、前記放射線源によって生成される放射線を絞って少なくとも1つの2次元形状のコーンビームにする、コリメータ構造と、
− 患者支持装置が選択的に取り付けられる撮像ステーションと、
− 患者の撮像用に指定されている第1の撮像モードに従って、前記アクチュエータ、前記放射線源、および前記撮像センサの動作を制御する制御システムであって、前記第1の撮像モードにおいては、照射中に、前記放射線源および前記撮像センサが実質的に前記撮像ステーションの対向する両側において動く、制御システムと、
を含んでおり、
患者以外の対象物の撮像用に指定されている少なくとも第2の撮像モードを選択することができ、前記第2の撮像モードにおいては、照射中に、前記放射線源および前記撮像センサが回転軸線を中心に約4度/秒未満の角速度で回転するように、前記制御システムが前記アクチュエータの動作を制御する、
装置。
【請求項2】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、照射中に、前記放射線源および前記撮像センサが2度/秒またはそれ以下のオーダーの角速度で動くように、前記制御システムが前記放射線源および前記撮像センサの回転を制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、照射中に、複数の異なる投影角度において約500枚以上の画像が取得されるように、前記制御システムが前記撮像センサを制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、照射中に、複数の異なる投影角度において約1000枚のオーダーの画像が取得されるように、前記制御システムが前記撮像センサを制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、前記放射線源および前記撮像センサが、前記撮像ステーションを中心に、約200度のオーダーの回転角度を完全に回転するように、前記制御システムが前記放射線源および前記撮像センサの回転を制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、少なくとも1〜2分のオーダーの持続時間を有する撮像プロセスにおいて、前記放射線源および前記撮像センサが前記撮像ステーションを中心に約200〜360度のオーダーの回転角度を完全に回転するように、前記制御システムが前記放射線源および前記撮像センサの回転を制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、情報を読み出す前または読み出し中に、隣接する画素の情報を加算することなく、前記撮像センサから個々の画像が読み出されるように、前記制御システムが前記撮像センサを制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、撮像される対象物内に存在する位置または要素のビームによって形成される、前記撮像センサ上の投影が、1枚の画像を取得する間、あるいはパルス放射線を使用する場合には1つの照射パルスの間、前記撮像センサの移動方向に、最大でも、前記撮像センサの画素のサイズに実質的に等しい距離を動くように、前記制御システムが前記放射線源および前記撮像センサの回転を制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、前記放射線源の焦点から0.6mの距離において0.02mの面積を有するビームを考えるとき、ビームの中心軸線を基準とする横断面上に放射線源によって生成される面積線量(DAP)が、約200μGymより大きいように、前記制御システムが前記装置の動作を制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、前記撮像ステーションの位置において前記放射線源によって実質的に生成される放射線量(グレイ)が、約40mGyまたはそれ以上のオーダーであるように、前記制御システムが前記装置の動作を制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第2の撮像モードが選択されているとき、前記放射線源によって生成される放射線量が、前記第1の撮像モードが選択されているときに生成される放射線量の2倍またはそれよりも高いオーダーであるように、前記制御システムが前記装置の動作を制御する、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記撮像ステーションに選択的に取り付けられるように構成されている台部であって、前記第2の撮像モードのみに関連して使用されるように設計されており、そのように取り付けられたとき、患者以外の撮像される対象物を前記撮像ステーションに保持するように構成されている、台部、
をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記台部が、X線を弱吸収する材料からなる、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記台部が取り付けられていないときに前記第2の撮像モードの選択が抑制されるように、前記制御システムが実施されている、
請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記患者支持装置が前記撮像ステーションに取り付けられているときに前記第2の撮像モードの選択が抑制されるように、前記制御システムが実施されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項16】
明示的に有効にされているときにのみ前記第2の撮像モードを使用することができるように、前記制御システムが実施されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項17】
1本または複数の歯の3次元デジタルモデルを作成する方法であって、
前記歯の3次元の物理的陰型印象、または前記歯の3次元の物理的陽型モデル、を撮像することに基づいて、前記3次元デジタルモデルが生成され、コーンビームCT撮像のための手段が設けられた歯科用X線撮像装置に関連して配置されている撮像ステーションに、前記印象または前記モデルが置かれて撮像され、コーンビームCT撮像のための前記手段が設けられた前記歯科用X線撮像装置によって前記印象または前記モデルを撮像するときに検出される画像情報、を処理することによって、前記3次元デジタルモデルが生成される、方法。
【請求項18】
コンピュータ断層撮像における歯科X線画像を取得する方法であって、
− 互いに隔てて配置されており撮像ステーションを中心に回転することのできる放射線源および撮像センサ、を含んでいる歯科用X線撮像装置、を提供するステップであって、前記装置が、患者の撮像用に指定されている第1のモードと、患者以外の対象物の撮像用に指定されている第2のモードと、を含む少なくとも2つのモード、のうちの1つにおいて選択的に動作可能であり、前記歯科用X線撮像装置に、コーンビームCT撮像のための手段が設けられている、ステップと、
− 撮像される患者の少なくとも一部分を前記撮像ステーションにおいて支持する患者支持装置、または、患者以外の撮像される対象物の少なくとも一部分を前記撮像ステーションにおいて支持する台部、の一方を、前記撮像ステーションに選択的に取り付けるステップと、
− 前記撮像ステーションに前記患者支持装置または前記台部が取り付けられているかを検出するステップと、
− 前記検出に基づいて、前記装置の前記動作モードの選択を制限するステップと、
を含んでいる、方法。
【請求項19】
前記撮像ステーションに前記台部が取り付けられていないことが検出された場合、前記第2のモードにおける前記装置の動作が抑制される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記撮像ステーションに前記患者支持装置が取り付けられていることが検出された場合、前記第2のモードにおける前記装置の動作が抑制される、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
患者以外の前記対象物が、歯の印象または歯のモデルの一方である、
請求項18に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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