説明

歯肉圧排材料

【課題】 歯肉溝を拡大し、歯肉溝組織液を抑制し、止血機能を有し、歯肉溝の乾燥を保持できる歯肉圧排材料を提供する。
【解決手段】 フィブリル化繊維ペーストを含有するものであって、粘度は31×106から71×106cPである。水と、矯味剤と、顔料と、充填剤と、フィブリル化繊維とを含有する。フィブリル化繊維の外観は、リボン状(ribbon)、フィブリル状(fibrils)または触鬚状(barbs)を呈するか、上述の形状の錯綜混合により形成され、繊維構造の特徴はL/D軸方向比(長さと直径の比)が10以上である。フィブリル化繊維は、含有量が0.1wt%から15wt%である。カオリン充填剤は、含有量が30.0wt%から65.0wt%である。塩化アルミニウム収斂剤は、含有量が7.0wt%から15.0wt%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線形フィブリル化繊維含有の注射式歯肉圧排材料の構成に関するものである。本発明の歯肉圧排材料は、繊維の高効率の増粘という特性を利用して形成されるペーストである。義歯の制作に必要な印象採得の操作により、正確な辺縁形成を行い、模型を複製する場合、歯肉溝を一時的に拡大する必要があり、また、弾性の印象採得用材料の多くが疎水性であることに対し、本発明の材料により、歯肉圧排を行うと同時に止血することで、形が修正された後の歯を乾燥させ、印象採得を正確操作することが可能である。
【0002】
本発明の技術は、歯科の臨床上のclassIIまたはclassIVの窩洞充填、エナメル質接着、歯冠継続架工の印象採得またはメリーランドブリッジ(Maryland Bridge)接着などの前の歯肉圧排操作に広汎的に適用される。本発明の歯肉圧排材料は、操作するのに手間があまりかからず、患者に麻酔を施す必要がないものであるため、従来の歯肉圧排法の不適度な圧入のせいで歯肉が萎縮していくという後遺症を避けることが可能である。
【背景技術】
【0003】
歯科の臨床では、印象採得の操作のために、歯肉圧排プロセスにより、一時的に患者の歯肉溝を水平に拡大する必要がある。よく行われている歯肉圧排法は、患者の病状への対応によって、(1)機械的な方法(Mechanical)と、(2)メカノケミカル方法(Mechanochemical)と、(3)回転掻爬法(rotary curettage)と、(4)電気メス法(Electro-surgery)の四種類に分けられる。
【0004】
従来のよく行われている歯肉圧排法は、歯肉圧排コード(gingival retraction cords)を使用し、器械的な圧迫力によって歯肉圧排コードを歯肉溝に圧入し、歯肉溝を拡大することである(特許文献1参照)。そして、ニット型の歯肉圧排コードが掲示されている(特許文献2または特許文献3参照)。また、ニット型の歯肉圧排コードが掲示されている(特許文献4参照)。しかし、コード材により提供される圧迫力は、血液または液体が歯肉から滲出することを完全抑制することができないため、歯肉圧排コードと異なる収斂剤または止血剤を結合するメカノケミカル方法による歯肉圧排法が相次いで研究開発されている。例えば、収斂剤に浸付した歯肉圧排コード(特許文献5参照)、歯肉圧排コード用止血剤の成分(特許文献6参照)、無機添加物緩和止血剤の成分(特許文献7参照)、歯肉圧排コード用止血剤(特許文献8参照)、歯肉圧排コード用のpropylhexedrine含有の収斂剤(特許文献9参照)、歯肉圧排コード用の収斂剤を含有して釈放性および抑制性を有するマイクロカプセル(特許文献10参照)および歯肉圧排コード用の収斂剤含有の熱可逆性ゲル(特許文献11参照)に関わるものである。
【0005】
歯肉圧排コードを使用する場合、概念は簡略であるが、実際の操作には高度の技術と熟練に頼らないと、歯肉圧排コードを歯肉溝にうまく圧入できない。したがって、歯肉圧排コード操作の改善のための補助器具に関わる特許案は、たくさん提出されている。例えば、歯肉圧排コードの設置を補助する器具(特許文献12参照)、歯肉圧排コードを環状に予め形成する補助器具(特許文献13参照)、歯肉圧排補助器械(特許文献14参照)、蹄鉄形歯肉圧排器械(特許文献15参照)およびテフロン(Teflon)との結合による付着防止の機能を有する歯肉圧排コード(特許文献16参照)に関わるものである。また、歯肉圧排コードの収納箱に関わる特許案もある(特許文献17または特許文献18参照)。
【0006】
歯肉圧排コードを操作するには、難度が高く、時間がかかるだけでなく、局部麻酔を施すことで操作に伴う痛みを緩和する必要がある。一般的に言えば、一本の歯に歯肉圧排コードを設置するには、7分から10分間が必要であり、かつ歯肉圧排を行った後、歯肉の回復の平均時間が6日から10日間であり、また、文献によると、歯肉圧排コードを歯肉溝に15分間以上置くと、歯肉圧排を行われた後の歯肉が平均0.1mm下がる(marginal recession)ことが判明しているため、複数の歯に歯肉圧排を同時に行う場合、問題がひどくなると考えられる。したがって、歯肉圧排コードのない(cordless)歯肉圧排法が提出されている。例えば、歯肉圧排を行うと同時に印象採得用材料を絞り出すという双機能器械の技術を提出するものである(特許文献19参照)。この一次性操作方法は、理論上、簡略である。しかし、印象採得用材料は水分の影響を受けやすく、また、一般の収斂剤の多くは水溶性の塩類であるため、印象採得用材料に添加しがたい。したがって、このような技術による製品は、出血の傾向がある部位の印象採得に適さないと考えられる。
【0007】
また、粘度範囲が13×106から30×106cPで、かつ3.6wt%から6.8wt%の塩化アルミニウム収斂剤含有のペーストを歯肉溝に注入することにより、歯肉圧排の操作に比べて、歯肉圧排コードの操作に伴って患者に与える不快な感覚を大幅に改善し、操作の便利を図ることを可能にするが、この技術を商品化させてみると、結果的には、塩化アルミニウムの収斂剤の含有量を15wt%に高めないと、歯肉圧排の効果がないことが判明している(特許文献20参照)。
【0008】
メカノケミカル方法による歯肉圧排を行う場合、化学薬剤の添加により、組織または血管を一時的に収縮させ、歯肉液の滲出と出血を抑制することを可能にするが、薬物の使用に伴う局部的組織に損傷また影響を与える副作用は免れられない。例えば、epinephrine(8%)収斂剤を使用する場合、血圧が上がる、心拍数が高くなるまたは歯肉が傷むという副作用が生じる。また、他の研究報告により、10wt%以上の塩化アルミニウム収斂剤を使用する場合、組織の損傷がひどく、かつこのような高濃度収斂剤(15wt%)含有の歯肉圧排材料は、患者の歯肉組織の損傷が生じやすくなるだけでなく、特許文献20の請求範囲および特許技術から逸脱すると指摘されている。
【0009】
【特許文献1】U.S. Pat.4,465,462
【特許文献2】U.S. Pat.4,522,593
【特許文献3】U.S. Pat.4,321,038
【特許文献4】U.S. Pat.4,892,482
【特許文献5】U.S. Pat.4,617,950
【特許文献6】U.S. Pat.5,635,162
【特許文献7】U.S. Pat.5,785,955
【特許文献8】U.S. Pat.6,568,398
【特許文献9】U.S. Pat.6,375,461
【特許文献10】U.S. Pat.4,597,960
【特許文献11】U.S. Pat.4,260,597
【特許文献12】U.S. Pat.5,899,694
【特許文献13】U.S. Pat.5,480,303
【特許文献14】U.S. Pat.4,854,867
【特許文献15】U.S. Pat.6,575,749
【特許文献16】U.S. Pat.5,540,588
【特許文献17】U.S. Pat.4,232,688
【特許文献18】U.S. Pat.5,358,403
【特許文献19】U.S. Pat.4,930,920
【特許文献20】U.S. Pat.5,362,495
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術により高濃度収斂剤の使用に伴って患者の歯肉組織に危害を及ぼすという問題に対し、上述の特許案の発明制限を改善するために、本発明は、高軸方向比のフィブリル化繊維により材料粘度を高めることで、歯肉圧排の材料成分の粘度が31×106から71×106cPの間に達し、屈服強度(Yield strength)が歯肉圧排に必要な機械力に応えられるようになるものである。さらに、補助用化学収斂剤を添加することを必要としても、本発明の技術は、固体の含有量が比較的低いため、歯肉圧排に必要な粘度に達し、間接的に塩化アルミニウムイオンの平均拡散距離を短縮し、高質分布速度率を高めることで、濃度の比較的低い塩化アルミニウムで組織液と血液の滲出を抑制するという要求に応え、歯周組織の損傷を減少させた上で、歯肉圧排効果を達成することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による線形フィブリル化繊維含有の注射式歯肉圧排材料は、フィブリル化繊維の増粘という特性を利用し、矯味剤と、顔料と、充填剤と、付形剤とを結合することにより、粘度が31×106から71×106cPの範囲に達し、かつ歯肉圧排材料の粘度を維持した上で、全体成分の固定の含有量を減らすことにより、収斂剤の分布速度率を高め、塩化アルミニウムを歯肉表面に速やかに拡散し、また、患者の歯肉に歯肉圧排を行う場合、一般の歯肉圧排材料の滞留時間が0.5分から2分間であって、歯肉の厚さと健康状態によって滞留時間を調整し、そして、材料の粘度により適当な屈服強度を提供して患者の歯肉溝を適当に拡大し、そののち歯肉圧排材料を水に浸すと屈服強度が下がるという特性により、水で清浄すれば、歯肉溝組織液の抑制および止血の機能を果たし、歯肉溝の乾燥を保持し、後続の印象採得の操作をスムーズに進行させることが可能である。このようなフィブリル化繊維含有の歯肉圧排材料は、良好な歯肉圧排効果を有するだけでなく、比較的速い収斂剤の拡散速度率を提供し、塩化アルミニウムの添加濃度を下げ、化学収斂剤による組織の損傷を減少させる目的を達成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の成分と組成ステップと請求範囲を以下の実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
フィブリル化繊維の形成方法は、細さが2デニール(繊維9000メートルあたりのグラム数)のセルロース繊維を1,000,000デニールで、長さが1メートルの束状に巻き取り、高速繊維分離機で裁断して、6ミリメートルの繊維を形成し、そして、皿式研磨機の機械的フィブリル化処理により、繊維を多層分岐状の分裂構造に形成し、外観がリボン状(ribbon)、フィブリル状(fibrils)または触鬚状(barbs)を呈するか、上述の形状の錯綜混合により形成され、かつL/D軸方向比(長さと直径の比)を10以上にすることが繊維構造の特徴である。典型的なフィブリル化繊維の形態は、図1に示す通りである。TAPPI T−227の試験基準によってフィブリル化繊維の細さにカナダ標準ろ水試験(Canadian Standard Freeness,CSF)を実施した結果、フィブリル化繊維のCSF値が102mlとなる。
【0013】
サンプルを調製する場合、0.2グラムの塩化アルミニウム収斂剤を4グラムの水に混合して水溶液を形成し、2グラムのフィブリル化繊維を加え、10分間均質に攪拌することで、溶液を散布する時、フィブリル化繊維のフィブリル構造を緩めることを可能にし、続いて3.8グラムの炭酸ナトリウム矯味剤と10グラムのカオリン充填剤を加え、AlgimaxTMにおいて20秒間攪拌すると、散布が均質化した歯肉圧排材料が完成する。
【0014】
粘度測定試験を行う場合、調製した歯肉圧排材料を4グラム取って、Brookfield HBDVII+レオメーターの粘度測定用クリップ式サンプル容器の中に注入し、キャップで所定の高さまでしっかり押さえ、熱制御型循環水槽でサンプル容器の温度を20℃の恒温状態に維持するように水浴し、そして、T−F typeを使用し、螺旋上昇および降下方法で粘度を測定し、粘度計の回転数を0.7rpmと0.8rpmに設定し、測定して得た数値を平均し、粘度値を記録した結果、歯肉圧排材料の粘度は表1に示すようになる。
表1は、歯肉圧排材料の成分の重量百分率と粘度の関係である。
【0015】
【表1】

【0016】
(実施例2から実施例10)
歯肉圧排材料は、実施例1のステップおよび方法により調製され、その成分中の塩化アルミニウム収斂剤、フィブリル化繊維、炭酸ナトリウム矯味剤、カオリン充填剤および水の重量百分比は、表1に示すように変化する。歯肉圧排の粘度測定法は、実施例1の方法と同じである。表1に示すように、粘度値は成分組成の重量百分比によって異なる。
【0017】
早期の機械的な方法は、薬剤を含有しない歯肉圧排コードを直接操作することであった。そして、最近、U.S. Pat.5,362,495案によるメカノケミカル方法は、粘度範囲が13×106から30×106cP、かつ3.6wt%から6.8wt%の塩化アルミニウム収斂剤ペーストを含有するコードレス歯肉圧排技術を提出するものである。化学薬剤の添加により歯肉圧排効果は高まるが、歯肉組織に危害を及ぼす疑いを完全排除することはできない。それに対し、以下の実施例は、粘度が異なり、かつ塩化アルミニウムを含有しない歯肉圧排材料を調製し、動物に歯肉圧排効果を測定する実験である。
【0018】
(対照例1と対照例2)
U.S. Pat.5,362,495案による歯肉圧排材料は、粘度範囲が13×106から30×106cPで、実施例1のステップおよび方法と同じく、表2に示すように、その成分中のフィブリル化繊維、炭酸ナトリウム矯味剤、カオリン充填剤および水の重量百分比に基づいて調製されるものである。歯肉圧排材料の粘度測定法も、実施例1の方法と同じである。表2は、異なる成分の重量百分比による粘度値と、歯肉圧排材料の歯肉圧排効果と、動物に歯肉萎縮測定を行った実験結果とをまとめたものである。
【0019】
【表2】

【0020】
歯肉圧排材料の効果を測定するための動物実験のステップは、下記の通りである。
1、実験犬として体重が9キロから15キロの成年Beagle dogを5頭選んで、実験規定に基づき、実験犬の口腔衛生および歯肉状況を管理し、定期検査を行う。
【0021】
2、実験犬に歯肉圧排を実行する前に、頬側の中心点と辺縁歯肉(marginal gingival)の境にドリルで定位参考ポイントを開け、続いて、印象採得用材料(polyvinyl siloxane)で右上と左上と左下と右下などの四つの歯列弓模型を採得し、そして、20倍率の投影検査機(Mitutoyo PJ−2500 Profile Projector)および測量器(解析度0.001mm)で歯肉圧排前の定位参考ポイントと辺縁歯肉との距離を測量し、記録する。
【0022】
3、実験犬に実験コードをつけ、すべての実験犬の口腔を四つの象限に分け、それぞれの象限から四本の歯(第一大臼歯、第二大臼歯、第四小臼歯および犬歯)を選び、そののち、成分が異なる歯肉圧排材料(実験犬ごとに16個のサンプルがある)を使用し、注射器の速度を2mm/secにして、頬側の歯肉溝内に注射し、二分間過ぎたら、小臼歯の歯肉圧排材料の残留がなくなるまで水で洗浄し、そののち、風で乾かし、続いて、polyvinyl siloxaneで歯列弓模型を採得し、採得した石膏模型を全ての小臼歯の遠近中心点から歯の長軸に沿って頬舌の切開をし、そして、20倍率の投影検査機および測量器を使用し、contour Profileで歯肉溝の幅を測量する。測量する時、歯表面の垂直と辺縁歯肉の上端のライン距離を基準にし、辺縁歯肉の歯肉圧排された距離を測量および記録し、歯肉圧排前と歯肉圧排後の距離変化により、異なる歯肉圧排材料の歯肉圧排効果を判定する。
【0023】
4、歯肉圧排を実施してから二週間経過した後、それぞれの象限に対し、polyvinyl siloxaneで歯列弓模型を採得し、20倍率の投影検査機および測量器を使用し、surface Profile機能で辺縁歯肉から標記下方までの垂直距離を測量し、歯肉圧排後と二週間経過後の距離変化を記録し、統計のpaired t-testで異なる歯肉圧排材料が歯肉に与える影響が如何なのかを判定する。
【0024】
5、1990年、Alber指摘のAlrer Harry F. Impression.A Text For Selection of Materials and Techniques. Santa Rosa,Calif.Alto Books,1990:21により、弾性ゴムの印象採得用材料で印象を採得する場合、歯肉溝の幅を少なくとも0.5mm以上にする必要があることが判明している。したがって、本発明は、歯肉溝の幅を0.5mm以上平均拡大する原型調製法のみ有効だと設定する。paired t-testで歯肉圧排の前と後の歯肉溝の幅および辺縁歯肉から標記下縁までの距離を分析し、実施前後の統計上の差異(P<0.05)で統計上の有意差を定義する。
【0025】
(実施例11から実施例12)
歯肉圧排材料は、実施例1のステップおよび方法で、表2に示すように、その成分中のフィブリル化繊維、炭酸ナトリウム矯味剤、カオリン充填剤および水の重量百分比に基づいて調製される。歯肉圧排の粘度測定法も、実施例1の方法と同じである。歯肉圧排材料の効果の判定について、対照例1の動物実験のステップを参照する。異なる成分の重量百分比による粘度値と、歯肉圧排材料の歯肉圧排効果と、動物に歯肉萎縮測定を行った実験結果は、表2にまとめる。
【0026】
結果的には、実施例11と実施例12の実施前後の歯肉溝の幅が0.5mm以上であることから、高粘度の歯肉圧排材料(31.0×106および54.0×106cP)は対照例1と対照例2の技術に比べて、さらに有効な歯肉圧排効果を提供することを可能にし、かつ歯肉圧排前後の辺縁歯肉の高さには統計上の有意差がないため、歯肉萎縮という現象が明らかにしないことが判明する。
表2は、歯肉圧排材料の粘度により、歯肉圧排効果と歯肉萎縮を判定するものである。
【0027】
(対照例3から対照例5)
U.S. Pat. 5,362,495案による歯肉圧排材料は、粘度範囲が13×106から30×106cP、であって、かつ3.6wt%から6.8wt%の塩化アルミニウム収斂剤を含有し、実施例1のステップおよび方法で、表3に示すように、その成分中のフィブリル化繊維、炭酸ナトリウム矯味剤、カオリン充填剤および水の重量百分比に基づいて調製されるものである。歯肉圧排材料の粘度測定法も、実施例1の方法と同じである。異なる成分の重量百分比による粘度値と、歯肉圧排材料の歯肉圧排効果と、動物に歯肉萎縮測定を行った実験結果は、表3にまとめる。
【0028】
【表3】

【0029】
(実施例13)
歯肉圧排材料は、実施例1のステップおよび方法により調製され、その成分中の塩化アルミニウム収斂剤、フィブリル化繊維、炭酸ナトリウム矯味剤、カオリン充填剤および水の重量百分比が表3に示すように変化する。歯肉圧排の粘度測定法は、実施例1の方法と同じである。歯肉圧排材料の効果の判定について、対照例1の動物実験のステップを参照する。異なる成分の重量百分比による粘度値は、表3にまとめる。
【0030】
paired t-testで、歯肉圧排の前と後の歯肉溝の幅および辺縁歯肉から標記下縁までの距離を分析する。結果的には、実施例15は、歯肉圧排材料の粘度が23.0×106である場合、15wt%の塩化アルミニウム収斂剤を添加すれば、歯肉圧排後の歯肉溝の幅を0.5mm以上にすることを可能にし、また、対照例3から対照例5の技術(0wt%、5wt%または10wt%の塩化アルミニウム収斂剤)に比べて、さらに有効な歯肉圧排効果を提供することを可能にし、かつ歯肉圧排前後の辺縁歯肉の高さには統計上の有意差がないため、歯肉萎縮という現象が明らかにしないことが判明する。
表3は、歯肉圧排材料の粘度により歯肉圧排効果と歯肉萎縮を判定するものである。
【0031】
(対照例6)
Kerr Corporation社の歯肉圧排用(Expa-syl「登録商標」)商品は、主に塩化アルミニウム歯肉圧排剤を含有するものである。使用する場合、図2に示すような平面状のカオリンkaolinを増粘剤にし、15wt%の塩化アルミニウム含有の歯肉圧排剤を調製し、そして、材料の本来の粘度を結合し、0.1N/mm2の圧迫力を提供し、メカノケミカル方法により歯肉圧排の操作を達成する。
【0032】
操作のステップは、次の通りである。実験中の歯肉圧排材料にイオンが放出される時に同じ接触面積を有するように制御するために、一定のサンプル量として10グラムの歯肉圧排材料を取って、容量が1ミリリットルのTuberculin「登録商標」注射器の中に移し、そして、細い棒状に絞り出し、袋状の濾過紙に保存することで、実験中のサンプル構造の統一性を保持し、続いて、濾過紙袋を200ミリリットルの純水のビーカー中に入れ、磁石で攪拌し、そして、Suntex−SC120手提げ式導電度計の探測棒を水に入れ、導電度の時間に伴う変化を測量および記録した結果、図3に示すようになる。
【0033】
(実施例14から実施例17)
Kerr Corporation社の歯肉圧排用(Expa-syl「登録商標」)商品の成分により、部分のカオリンの代わりにフィブリル化繊維を使用し、そして、塩化アルミニウムの濃度を0%、5%、10%または15%などに設定する。詳しい成分の重量百分比は、表4に示す通りである。実施例1のステップと方法により調製し、そして、対照例6の操作ステップに従い、塩化アルミニウム歯肉圧排剤の拡散速度率を判定し、導電度の時間に伴う変化を記録した結果、図3に示すようになる。
表4は、歯肉圧排剤の拡散速度率を判定する時の各成分の重量百分率である。
【0034】
【表4】

【0035】
実施例14(0%の塩化アルミニウム収斂剤)では、導電度の時間に伴う変化から、歯肉圧排材料中のほかの成分が存在しても、導電度の測量に影響を与えることはないことが判明する。塩化アルミニウム収斂剤の含有量の増加に伴い、導電度の上昇速度および平衡導電値が高くなる。それに対して、対照例6の15wt%の塩化アルミニウム含有の歯肉圧排剤の(Expa-syl?)商品は、導電度の上昇速度および平衡導電値の曲線が、図3に示すように、実施例15と実施例16(5%から10%塩化アルミニウム収斂剤)の間にあることから、部分のカオリンの代わりにフィブリル化繊維を使用することで、増粘を進行させ、塩化アルミニウム収斂剤の拡散速度率を高め、濃度の比較的低い収斂剤により対照例6の拡散量に達することを可能にするとともに、収斂剤の添加濃度を低減させ、歯肉組織に損傷を与えることを減少させることを可能にすることが判明する。
【0036】
(表1) 歯肉圧排材料の成分の重量百分率と粘度の関係である。
(表2) 異なる成分の重量百分比による粘度値と、歯肉圧排材料の歯肉圧排効果と、動物に歯肉萎縮測定を行った実験結果である。
(表3) 異なる成分の重量百分比による粘度値と、歯肉圧排材料の歯肉圧排効果と、動物に歯肉萎縮測定を行った実験結果である。
(表4) 歯肉圧排剤の拡散速度率を判定する時の各成分の重量百分率である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例におけるフィブリル化繊維の形態を示す図である。
【図2】平面状のカオリンkaolinの形態を示す図である。
【図3】塩化アルミニウム収斂剤の含有量が異なる歯肉圧排材料の拡散速度率の比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリル化繊維ペーストを含有し、注射方法で患者の歯肉溝に注入し、材料の粘度により物理的作用力を提供し、患者の歯肉溝を適当に拡大し、歯肉溝組織液を抑制し、止血機能を有し、歯肉溝の乾燥を保持することにより、後続の印象採得の操作をスムーズに進行させることを可能にする歯肉圧排材料。
【請求項2】
粘度の範囲は、31×106から71×106cPであることを特徴とする請求項1に記載の歯肉圧排材料。
【請求項3】
水と、矯味剤と、顔料と、充填剤と、フィブリル化繊維とを含有することを特徴とする請求項1に記載の歯肉圧排材料。
【請求項4】
フィブリル化繊維の外観は、リボン状(ribbon)、フィブリル状(fibrils)または触鬚状(barbs)を呈するか、上述の形状の錯綜混合により形成され、繊維構造の特徴はL/D軸方向比(長さと直径の比)が10以上であることを特徴とする請求項3に記載の歯肉圧排材料。
【請求項5】
フィブリル化繊維は、セルロース繊維(cellulose)、パラ芳香族ポリアミド繊維polypara-pheneylene isophthalamide(PPT−A)またはポリアクリロニトリル繊維polyacrylonitrile(PAN)のフィブリル化繊維の材質のいずれか一つを選択し、フィブリル化の方法により形成されることを特徴とする請求項3に記載の歯肉圧排材料。
【請求項6】
フィブリル化繊維は、含有量が0.1wt%から15wt%であり、好ましい含有範囲が2.0wt%から10.0wt%であることを特徴とする請求項3に記載の歯肉圧排材料。
【請求項7】
充填剤は、平面状構造の粘土鉱物質、トルク(talc)、雲母(mica)、カオリン(kaolin)またはモハモリロナイト(montmorillonite)の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の歯肉圧排材料。
【請求項8】
カオリン充填剤は、含有量が30.0wt%から65.0wt%であり、好ましい含有範囲が30.0wt%から50.0wt%であることを特徴とする請求項3に記載の歯肉圧排材料。
【請求項9】
収斂剤は、酢酸アルミニウム(aluminum acetate)、塩化アルミニウム(aluminum chloride)、硫酸アルミニウム(aluminum sulfate)、硫酸第一鉄(ferrous sulfate)、塩化亜鉛(zinc chloride)またはエピレナミン(epinephrine)の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の歯肉圧排材料。
【請求項10】
塩化アルミニウム収斂剤は、含有量が7.0wt%から15.0wt%であり、好ましい含有範囲が7.0wt%から10.0wt%であることを特徴とする請求項3に記載の歯肉圧排材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−56833(P2006−56833A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240881(P2004−240881)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(502317954)維綱生物科技股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】