説明

歯車加工機

【課題】AEフルイッドセンサ等のセンサの取り付け位置を容易に変更することができる構成のAEフルイッドセンサ装置等のセンサ装置を備えた内歯車研削盤などの歯車加工機を提供する。
【解決手段】例えば、AEフルイッドセンサ装置31を、砥石ヘッド16に固定され、砥石回転軸B1を中心とする円弧状又は円形状のガイドレール33と、ガイドレール33の長手方向に移動可能にガイドレール33に取り付けられたスライダー34と、ガイドレール33へのスライダー34の固定と、前記固定の解除とを行うボルト35と、スライダー34に取り付けられてスライダー34とともにガイドレール33の長手方向に移動可能であり、ねじ状砥石17とワークWとの接触によってねじ状砥石17に発生する弾性波を、前記砥石アーバ16aに噴きかけたクーラントCを介して検出するAEフルイッドセンサ32とを有して成る構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具とワークの噛み合せに先立って、前記加工工具と前記ワークとの位相合わせのために前記加工工具の位相を検出するためのセンサ装置を備えた歯車加工機に関し、特に前記センサ装置がAEフルイッドセンサ装置等の接触を検知するセンサ装置を使用した場合に有効なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯車加工を行なう歯車加工機の一種として、例えば歯車研削盤が知られている。歯車研削盤は、熱処理後の歯車を砥石で研削することにより、前記歯車の歯面を効率良く仕上げ加工するものである。歯車研削盤では、砥石の刃と歯車の歯とを噛み合わせた状態で、砥石と歯車とを同期回転させることにより、砥石が歯車を研削加工する。このため、砥石と歯車の噛み合い精度が不十分な場合には、歯車の歯面に研削むらが生じたり、砥石に過大な負荷がかかって砥石の寿命が短くなるなどの問題が生じるおそれがあった。
【0003】
従って、歯車研削盤では、砥石の刃と歯車の歯の噛み合わせを高精度に行うために前記噛み合せに先立って、砥石の刃と歯車の歯が適切な位相関係(回転方向の相対位置関係)となるように砥石と歯車の位相合わせ(歯合わせ)を行なう必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
なお、砥石と歯車の位相合わせ(歯合わせ)について記載されている先行技術文献としては、例えば次のものがある。
【特許文献1】特開平5−138483号公報
【特許文献2】特開2008−110445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯車研削盤において、砥石の刃と歯車の歯の位相合わせを行なうには、砥石の刃と歯車の歯との接触をセンサを用いて検出する方法が用いられ、前記接触を検出するセンサとしてはAEフルイッドセンサ(Acoustic Emission Fluid Sensor)を採用することが特に有効である。AEフルイッドセンサとは、材料中に発生した振動や摩擦等に起因する弾性波を、前記材料に噴射した流体を介して検出することができるものである。加工される歯車が内歯車の場合、砥石の刃と内歯車の歯の位相合わせを行なうには砥石を内歯車の内側に配置するため、砥石と内歯車との位置関係上、このようなセンサを使用することは有効である。
【0006】
図14にはAEフルイッドセンサ装置を砥石ヘッドへ取り付ける場合の参考例を示す。図14に示すように、内歯車研削盤の砥石ヘッド1にはスピンドル(主軸)2が回転可能に支持されている。スピンドル2の先端部には砥石アーバ2aが形成され、砥石アーバ2aの先端部には樽形のねじ状砥石4が着脱可能に装着されている。
【0007】
そして、AEフルイッドセンサ6は、ブラケット5を介して砥石ヘッド1の先端面1aの一箇所に固定されている。図14では、ねじ状砥石4とワーク(内歯車)Wとを噛み合わせるためにねじ状砥石4(砥石アーバ2a)が、ワークWに対して所定の軸交差角Σで左側に傾斜しているため、AEフルイッドセンサ6は、ねじ状砥石4(砥石アーバ2a)の傾斜方向(図示例では左傾斜)とは反対側(図示例の右側)に取り付けられている。
【0008】
位相検出の際には、AEフルイッドセンサ6の噴射孔6aから砥石アーバ2aへ流体8を噴射する一方、ワークWの回転速度を増速又は減速させてねじ状砥石4と内歯車4の同期回転をずらすことにより、ねじ状砥石4の刃面をワークWの歯面に接触させる。その結果、前記接触によってねじ状砥石4に発生する弾性波が、ねじ状砥石4から砥石アーバ2aへと伝播し、更に砥石アーバ2aから流体8へと伝播した後、流体8中を流体8の上流側へと伝播することにより、AEフルイッドセンサ6の検出部6bで検出される。従って、この弾性波の検出信号(AE信号)に基づいて、ねじ状砥石4の刃の位相を検出することができる。そして、このときにAEフルイッドセンサ6はねじ状砥石4(砥石アーバ2a)の傾斜方向とは反対側に位置しているため、砥石アーバ2aに対して確実に流体8を噴きかけることができる。
【0009】
ところが、ワーク(内歯車)Wには右ねじれのものと左ねじれのものがあり、右ねじれのワークWを研削する場合と左ねじれのワークWを研削する場合とでは、図14と図15に示すようにワークWに対するねじ状砥石4(砥石アーバ2a)の傾斜方向を逆にする必要がある。
【0010】
そして、図15のようにねじ状砥石4(砥石アーバ2a)が右傾斜の場合に図15に一点鎖線で示すようにAEフルイッドセンサ6の取り付け位置が、図14の場合と同じ位置のままでは、流体圧や流体流量の調整がある程度可能であっても、砥石アーバ2aに対して確実に流体8を噴きかけることができるようにすることは非常に難しい。このため、図15のようにねじ状砥石4(砥石アーバ2a)が右傾斜の場合には、図15に実線で示すようにAEフルイッドセンサ6を、図14の場合とは逆の位置に付け替える必要があり、この付け替え作業に非常に手間がかかる。
また、AEフルイッドセンサに限らず、その他のセンサを砥石ヘッドに装着する場合にも、例えばセンサとワークとの干渉防止などのためにセンサの取り付け位置を変更する際に、容易に変更できるようにすることが望ましい。
【0011】
従って本発明は上記の事情に鑑み、AEフルイッドセンサ等のセンサの取り付け位置を容易に変更することができる構成のAEフルイッドセンサ装置等のセンサ装置を備えた内歯車研削盤などの歯車加工機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する第1発明の歯車加工機は、工具ヘッドに回転可能に支持された工具軸の先端に加工工具が装着されており、前記加工工具を傾斜させた状態でワークと噛み合わせて前記ワークを加工する歯車加工機において、
前記加工工具と前記ワークとの噛み合わせに先立って、前記加工工具と前記ワークとの位相合わせのために前記加工工具の位相を検出するセンサ装置を備えており、
前記センサ装置は、
前記工具ヘッドに固定され、加工工具回転軸を中心とする円弧状又は円形状のガイドレールと、
前記ガイドレールの長手方向に移動可能に、前記ガイドレールに取り付けられた移動体と、
前記ガイドレールへの前記移動体の固定と、前記固定の解除とを行う固定手段と、
前記移動体に取り付けられて前記移動体とともに前記ガイドレールの長手方向に移動可能であるセンサと、
を有して成ることを特徴とする。
【0013】
また、第2発明の歯車加工機は、第1発明の歯車加工機において、
前記センサ装置はAEフルイッドセンサ装置であり、
このAEフルイッドセンサ装置は、
前記工具ヘッドに固定され、加工工具回転軸を中心とする円弧状又は円形状のガイドレールと、
前記ガイドレールの長手方向に移動可能に、前記ガイドレールに取り付けられた移動体と、
前記ガイドレールへの前記移動体の固定と、前記固定の解除とを行う固定手段と、
前記移動体に取り付けられて前記移動体とともに前記ガイドレールの長手方向に移動可能であり、前記加工工具と前記ワークとの接触によって前記加工工具に発生する弾性波を、前記工具軸に噴きかけた流体を介して検出するAEフルイッドセンサと、
を有して成ることを特徴とする。
【0014】
また、第3発明の歯車加工機は、第1又は第2発明の歯車加工機において、
前記ガイドレールは、幅方向の両側面に凹部を有して、横断面形状がI字状を成しており、
前記移動体は、横断面形状が矩形状で且つ上面に切り欠きを有し、前記切り欠きの両側部分が前記ガイドレールの前記凹部に嵌合した状態で前記ガイドレールに取り付けられて前記ガイドレールの長手方向に摺動可能であり、側面にねじ孔が形成され、前記センサ又は前記AEフルイッドセンサが取り付けられているスライダーであり、
前記固定手段は、ねじ部を有する軸部と、前記軸部の端に形成された頭部とを有しており、前記軸部の前記ねじ部が前記スライダーの前記ねじ孔に螺合しており、前記ねじ部が前記ねじ孔にねじ込まれたとき、前記軸部の先端が、前記ガイドレールの下部の一方の側面に当接して、前記ガイドレールの下部の他方の側面に当接する前記スライダーの内面とともに前記ガイドレールの下部を締め付けることにより、前記スライダーを前記ガイドレールに固定するボルトであること、
を特徴とする。
【0015】
また、第4発明の歯車加工機は、第1又は第2発明の歯車加工機において、
前記ガイドレールは、横断面形状が矩形状で且つ下面に切欠きを有しており、
前記移動体は、貫通孔が形成され、前記センサ又は前記AEフルイッドセンサが取り付けられているブラケットであり、
前記固定手段は、
前記ガイドレール内に配置され、多角形状のものであって、対向面の幅が前記ガイドレール内の対向面の幅よりも小さくて前記ガイドレールの長手方向に移動可能である一方、対向角の幅が前記ガイドレール内の前記対向面の幅よりも大きくてこの対向面により回転が阻止されるナットと、
ねじ部を有する軸部と、前記軸部の端に形成された頭部とを有しており、前記軸部が前記ブラケットの貫通孔と前記ガイドレールの切欠きとを貫通して、前記軸部の前記ねじ部が前記ナットに螺合しており、前記ねじ部が前記ナットにねじ込まれたとき、前記頭部が前記ナットとともに前記ガイドレールの下面と前記ブラケットを締め付けることにより、前記ブラケットを前記ガイドレールに固定するボルトと、
を有して成るものであることを特徴とする。
【0016】
また、第5発明の歯車加工機は、第3又は第4発明の歯車加工機において、
前記ボルトは、前記頭部にレバーが形成されたレバーボルトであることを特徴とする歯車加工機。
【発明の効果】
【0017】
第1発明の歯車加工機によれば、工具ヘッドに回転可能に支持された工具軸の先端に加工工具が装着されており、前記加工工具を傾斜させた状態でワークと噛み合わせて前記ワークを加工する歯車加工機において、前記加工工具と前記ワークとの噛み合わせに先立って、前記加工工具と前記ワークとの位相合わせのために前記加工工具の位相を検出するセンサ装置を備えており、前記センサ装置は、前記工具ヘッドに固定され、加工工具回転軸を中心とする円弧状又は円形状のガイドレールと、前記ガイドレールの長手方向に移動可能に、前記ガイドレールに取り付けられた移動体と、前記ガイドレールへの前記移動体の固定と、前記固定の解除とを行う固定手段と、前記移動体に取り付けられて前記移動体とともに前記ガイドレールの長手方向に移動可能であるセンサとを有して成ることを特徴としているため、例えば加工工具(工具軸)の傾斜方向が左傾斜から右傾斜に変更された場合、固定手段により、ガイドレールへの移動体の固定を解除して、移動体とともにAEフルイッドセンサを、ガイドレールの長手方向へ、例えば当該加工工具(工具軸)の傾斜方向と反対側の位置まで移動させた後、当該位置で固定手段により移動体をガイドレールに固定するだけで、容易に、センサの取り付け位置を、当該加工工具(工具軸)の傾斜方向とは反対側の位置へ変更することができる。従って、例えばセンサとワークの干渉を防止するためにセンサの取り付け位置を変更する場合などに、当該変更を容易に行うことができる。
【0018】
第2発明の歯車加工機によれば、第1発明の歯車加工機において、前記センサ装置はAEフルイッドセンサ装置であり、このAEフルイッドセンサ装置は、前記工具ヘッドに固定され、加工工具回転軸を中心とする円弧状又は円形状のガイドレールと、前記ガイドレールの長手方向に移動可能に、前記ガイドレールに取り付けられた移動体と、前記ガイドレールへの前記移動体の固定と、前記固定の解除とを行う固定手段と、前記移動体に取り付けられて前記移動体とともに前記ガイドレールの長手方向に移動可能であり、前記加工工具と前記ワークとの接触によって前記加工工具に発生する弾性波を、前記工具軸に噴きかけた流体を介して検出するAEフルイッドセンサとを有して成ることを特徴としているため、加工工具(工具軸)の傾斜方向が例えば左傾斜から右傾斜に変更された場合、固定手段により、ガイドレールへの移動体の固定を解除して、移動体とともにAEフルイッドセンサを、ガイドレールの長手方向へ、当該加工工具(工具軸)の傾斜方向とは反対側の位置まで移動させた後、当該位置で固定手段により移動体をガイドレールに固定するだけで、容易に、AEフルイッドセンサの取り付け位置を、当該加工工具(工具軸)の傾斜方向とは反対側の位置へ変更することができる。従って、AEフルイッドセンサから工具軸へ確実に流体を噴きかけることができるようにするためにAEフルイッドセンサの取り付け位置を変更する際、当該変更を容易に行うことができる。
【0019】
第3発明の歯車加工機によれば、第1又は第2発明の歯車加工機において、前記ガイドレールは、幅方向の両側面に凹部を有して、横断面形状がI字状を成しており、前記移動体は、横断面形状が矩形状で且つ上面に切り欠きを有し、前記切り欠きの両側部分が前記ガイドレールの前記凹部に嵌合した状態で前記ガイドレールに取り付けられて前記ガイドレールの長手方向に摺動可能であり、側面にねじ孔が形成され、前記センサ又は前記AEフルイッドセンサが取り付けられているスライダーであり、前記固定手段は、ねじ部を有する軸部と、前記軸部の端に形成された頭部とを有しており、前記軸部の前記ねじ部が前記スライダーの前記ねじ孔に螺合しており、前記ねじ部が前記ねじ孔にねじ込まれたとき、前記軸部の先端が、前記ガイドレールの下部の一方の側面に当接して、前記ガイドレールの下部の他方の側面に当接する前記スライダーの内面とともに前記ガイドレールの下部を締め付けることにより、前記スライダーを前記ガイドレールに固定するボルトであることを特徴としているため、例えば加工工具(工具軸)の傾斜方向が左傾斜から右傾斜に変更された場合でも、ボルトを緩めることにより、ガイドレールへのスライダーの固定を解除して、スライダー及びボルトとともにセンサ又はAEフルイッドセンサを、ガイドレールの長手方向へ、例えば当該加工工具(工具軸)の傾斜方向とは反対側の位置まで移動させた後、当該位置でボルトを締めることによりスライダーをガイドレールに固定するだけで、容易に、センサ又はAEフルイッドセンサの取り付け位置を、当該加工工具(工具軸)の傾斜方向とは反対側の位置へ変更することができる。従って、例えばセンサとワークの干渉を防止するためにセンサの取り付け位置を変更する場合や、AEフルイッドセンサから工具軸へ確実に流体を噴きかけることができるようにするためにAEフルイッドセンサの取り付け位置を変更する場合などに、当該変更を容易に行うことができる。
【0020】
第4発明の歯車加工機によれば、第1又は第2発明の歯車加工機において、前記ガイドレールは、横断面形状が矩形状で且つ下面に切欠きを有しており、前記移動体は、貫通孔が形成され、前記センサ又は前記AEフルイッドセンサが取り付けられているブラケットであり、前記固定手段は、前記ガイドレール内に配置され、多角形状のものであって、対向面の幅が前記ガイドレール内の対向面の幅よりも小さくて前記ガイドレールの長手方向に移動可能である一方、対向角の幅が前記ガイドレール内の前記対向面の幅よりも大きくてこの対向面により回転が阻止されるナットと、ねじ部を有する軸部と、前記軸部の端に形成された頭部とを有しており、前記軸部が前記ブラケットの貫通孔と前記ガイドレールの切欠きとを貫通して、前記軸部の前記ねじ部が前記ナットに螺合しており、前記ねじ部が前記ナットにねじ込まれたとき、前記頭部が前記ナットとともに前記ガイドレールの下面と前記ブラケットを締め付けることにより、前記ブラケットを前記ガイドレールに固定するボルトとを有して成るものであることを特徴としているため、例えば加工工具(工具軸)の傾斜方向が左傾斜から右傾斜に変更された場合でも、ボルトを緩めることにより、ガイドレールへのブラケットの固定を解除して、ブラケット、ボルト及びナットとともにセンサ又はAEフルイッドセンサを、ガイドレールの長手方向へ、例えば当該加工工具(工具軸)の傾斜方向とは反対側の位置まで移動させた後、当該位置でボルトを締めることによりブラケットをガイドレールに固定するだけで、容易に、センサ又はAEフルイッドセンサの取り付け位置を、当該加工工具(工具軸)の傾斜方向と反対側の位置へ変更することができる。従って、例えばセンサとワークの干渉を防止するためにセンサの取り付け位置を変更する場合や、AEフルイッドセンサから工具軸へ確実に流体を噴きかけることができるようにするためにAEフルイッドセンサの取り付け位置を変更する場合などに、当該変更を容易に行うことができる。
【0021】
第5発明の歯車加工機によれば、第3又は第4発明の歯車加工機において、前記ボルトは、前記頭部にレバーが形成されたレバーボルトであることを特徴としているため、センサ又はAEフルイッドセンサの取り付け位置を変更する際、ボルト用の工具を要することなく、作業員がレバーボルトのレバーを回すだけで容易にガイドレールへのスライダー又はブラケットの固定や固定の解除を行なうことができるため、センサ又はAEフルイッドセンサの取り付け作業が更に容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る内歯車研削盤の全体構成を示す斜視図である。
【図2】前記内歯車研削盤において内歯車を樽形ねじ状砥石で研削する様子を示す斜視図である。
【図3】樽形ねじ状砥石の縦断面図である。
【図4】前記内歯車研削盤において樽形ねじ状砥石をディスクドレッサでドレッシングする様子を示す斜視図である。
【図5】(a)は樽形ねじ状砥石と内歯車の位相合わせのために、左傾斜の樽形ねじ状砥石に発生する弾性波をAEフルイッドセンサで検出する様子を示す図、(b)は(a)のA−A線矢視図である。
【図6】(a)は図5のB部拡大図、(b)は(a)C方向矢視図である。
【図7】AEフルイッドセンサが弾性波を検出したときの電圧の変化を示す図である。
【図8】(a)は樽形ねじ状砥石と内歯車の位相合わせのために、右傾斜の樽形ねじ状砥石に発生する弾性波をAEフルイッドセンサで検出する様子を示す図、(b)は(a)のD−D線矢視図である。
【図9】樽形ねじ状砥石とディスクドレッサの位相合わせのために、樽形ねじ状砥石に発生する弾性波を検出する様子を示す図である。
【図10】(a)は本発明の実施の形態例2に係る内歯車研削盤の要部構成(AEフルイッドセンサ装置付近の構成)を示す図であって、樽形ねじ状砥石と内歯車の位相合わせのために、左傾斜の樽形ねじ状砥石に発生する弾性波をAEフルイッドセンサで検出する様子を示す図、(b)は(a)のE−E線矢視図である。
【図11】(a)は図10のF部拡大図、(b)は(a)のG方向矢視図、(c)は(b)のH方向矢視図、(d)は(c)のI−I線矢視断面図である。
【図12】(a)は樽形ねじ状砥石と内歯車の位相合わせのために、右傾斜の樽形ねじ状砥石に発生する弾性波をAEフルイッドセンサで検出する様子を示す図、(b)は(a)のJ−J線矢視図である。
【図13】樽形ねじ状砥石とディスクドレッサの位相合わせのために、樽形ねじ状砥石に発生する弾性波を検出する様子を示す図である。
【図14】樽形ねじ状砥石が左傾斜の場合のAEフルイッドセンサ装置の取り付け構造の参考例を示す図である。
【図15】樽形ねじ状砥石が右傾斜の場合のAEフルイッドセンサ装置の取り付け構造の参考例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
<実施の形態例1>
本発明の実施の形態例1を、図1〜図9に基づいて説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施の形態例1に係る内歯車研削盤10のベッド11上にはコラム12が、水平なX軸方向(砥石回転軸B1とワーク回転軸C1との間の距離が調整されるよう砥石回転軸B1が移動する方向)に移動可能に支持されている。コラム12にはサドル13が、X軸と直交する鉛直なZ軸方向に昇降可能に支持されており、サドル13には旋回ヘッド14が、X軸と平行で水平な砥石旋回軸A回りに旋回可能に支持されている。旋回ヘッド14には砥石ヘッド16が、砥石回転軸B1(加工工具回転軸)と直交するY軸方向に移動可能に支持されている。そして、砥石ヘッド16にはスピンドル(主軸)16aが回転可能に支持されており、スピンドル16aの先端部には砥石アーバ16b(工具軸)が取り付けられ、砥石アーバ16bの先端部にはビトCBN砥石などのねじ状砥石17(加工工具)が着脱可能に装着されている。
【0026】
従って、コラム12を移動させることにより、このコラム12及びサドル13、旋回ヘッド14、砥石ヘッド16(砥石アーバ16a)とともにねじ状砥石17が、矢印aの如く、X軸方向に移動する。また、サドル13を移動させることにより、このサドル13及び旋回ヘッド14、砥石ヘッド16(砥石アーバ16a)とともにねじ状砥石17が、矢印bの如く、Z軸方向に移動する。また、旋回ヘッド14を旋回させることにより、この旋回ヘッド14及び砥石ヘッド16(砥石アーバ16a)とともにねじ状砥石17が、矢印cの如く、砥石旋回軸A回りに旋回する。砥石ヘッド16を移動させることにより、この砥石ヘッド16(砥石アーバ16a)とともにねじ状砥石17が、矢印dの如く、Y軸方向に移動する。砥石ヘッド16内のスピンドル16aを回転させることにより、このスピンドル16a(砥石アーバ16b)とともにねじ状砥石17が、矢印eの如く、砥石回転軸B1回りに回転する。
【0027】
また、ベッド11上においてコラム12の正面には、回転テーブル18が鉛直なワーク回転軸C1回りに回転可能に設けられている。回転テーブル18の上面には、円筒状の取付治具19が設けられ、取付治具19の上端内周面には、内歯車であるワークWが着脱可能に取り付けられている。従って、回転テーブル18を駆動すると、この回転テーブル18とともにワークWが、矢印iの如く、ワーク回転軸C1回りに回転する。
【0028】
また、ベッド11上において回転テーブル18の側方には、ドレッシング装置21が設けられている。ドレッシング装置21には、ねじ状砥石17をドレッシングする円盤状のディスクドレッサ22が着脱可能に装着されている。ドレッシング装置21は、ベッド11上に設けられているベース部23と、このベース部23の上部に設けられている旋回部24とを有している。旋回部24は、基端部の鉛直なドレッサ進退軸C2回りに(矢印fの如く)割出旋回可能にベース部23に支持されている。旋回部24の先端部にはドレッサ回転駆動用モータ25が、ディスクドレッサ22の刃先(刃面)間を通る水平なドレッサ旋回軸B2回りに(矢印gの如く)旋回可能に設けられている。ディスクドレッサ22が装着されたドレッサ回転駆動用モータ25の出力軸は、ドレッサ旋回軸B2と直交するドレッサ回転軸C3周りに(矢印hの如く)回転可能となっている。
【0029】
以上のような構成の内歯車研削盤10によってワークWの研削加工を行うには、まず、ワークWを取付治具19に取り付ける。次に、コラム12、サドル13、旋回ヘッド14、砥石ヘッド16を移動及び旋回させることにより、ねじ状砥石17は、砥石旋回軸A回りに旋回されてワークWのねじれ角に応じた軸交差角Σとなるように所定の旋回角度に設置され、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の所定位置に移動されてワークWの内側に配置される。そして更にねじ状砥石17をX軸方向に移動させることにより、ねじ状砥石17の刃をワークWの歯に噛み合わせる。このねじ状砥石17の刃とワークWの歯とを噛み合わせたときの状態が、図2である。詳細は後述するが、このときに前記噛み合わせを高精度に行うために前記噛み合せに先立って、ねじ状砥石17の刃とワークWの歯が適切な位相関係(回転方向の相対位置関係)となるようにねじ状砥石17の刃とワークWの歯の位相合わせ(歯合わせ)を行なう。
【0030】
図3に示すように、ねじ状砥石17は、その軸方向中間部から軸方向両端部に向かうにしたがって、その径が漸次小さくなるような樽形に形成されている。このようにねじ状砥石17を樽形に形成することにより、図2のようにワークWに対してねじ状砥石17を軸交差角Σで傾斜させても、ねじ状砥石17がワークWに干渉することなく、ねじ状砥石17の刃をワークWの歯に噛み合わせることが可能となる。また、ねじ状砥石17には、所定のワーク諸元を有するワークWと適切に噛み合うような所定の砥石諸元が与えられている。軸交差角Σはワーク回転軸C1と砥石回転軸B1との成す角度であり、ワークWのねじれ角とねじ状砥石17のねじれ角とから求められる。
【0031】
図2のようにねじ状砥石17とワークWとを噛み合わせた後、砥石回転軸B1(ねじ状砥石17)とワーク回転軸C1(ワークW)を同期回転させる。また、ねじ状砥石17を、ワークWに切り込む方向(X軸方向)に移動させながら、Z軸方向に揺動(昇降)させることにより、ねじ状砥石17の刃面によってワークWの歯面を研削する。
【0032】
なお、ねじ状砥石17による研削加工を所定数量のワークWに対して実施すると、ねじ状砥石17の刃面が摩耗して切れ味が低下する。このため、詳細な説明は省略するが、定期的に図4に示すようにドレッシング装置21を用いてねじ状砥石17をドレッシングすることにより、ねじ状砥石17の切れ味を回復させる。
【0033】
そして、本実施の形態例1の内歯車研削盤10では、ねじ状砥石17の刃とワークWの歯を噛み合わせるのに先立って、ねじ状砥石17の刃とワークWの歯の位相合わせ(歯合わせ)を行なうため、図1及び図5(a)に示すように砥石ヘッド16にAEフルイッドセンサ装置31が設けられている。このAEフルイッドセンサ装置31の構成を図5及び図6に基づいて詳述する。
【0034】
これらの図に示すように、AEフルイッドセンサ装置31は、AEフルイッドセンサ32と、ガイドレール33と、スライダー34と、ボルト35と、ブラケット36とを有して成るものである。なお、スライダー34及びブラケット36は移動体に相当し、ボルト35は固定手段に相当する。
【0035】
ガイドレール33は平面視が、砥石回転軸B1を中心とする円弧状を成しており(図5(b)参照)、且つ、幅方向の両側面に凹部33a,33bを有して横断面形状がI字状を成している(図5(a),図6(a)参照)。そして、ガイドレール33は砥石アーバ16bの反コラム側(コラム12が設置されているコラム側と反対の側)において、砥石ヘッド16の先端面16cにボルトや溶接などの固定手段によって固定されており、ガイドレール33の長手方向(円弧に沿う方向)の両端部33h,33iが、砥石アーバ16bの左右両側(Y軸方向両側)に位置している。
【0036】
なお、これに限定するものではなく、ガイドレール33はコラム側に設置してもよい。この場合も、ガイドレール33の両端部33h,33iは、砥石アーバ16bの左右両側(Y軸方向両側)に位置させる。換言すれば、ガイドレール33を円弧状にする場合、ガイドレール33は、AEフルイッドセンサ32を、ガイドレール33の長手方向(円弧)に沿って、少なくとも、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の一方側から他方側まで、180度移動させることができる長さを有する必要がある。また、ガイドレール33は円弧状のものに限らず、砥石回転軸B1を中心とする円形状のものであってもよい。
【0037】
また、ガイドレール33は、図示例の如く砥石ヘッド16の先端面16cに直接固定される場合に限らず、ブラケットなどの支持部材を介して砥石ヘッド16の先端面16cに固定されていてもよく、更には砥石ヘッド16の側面16dに直接又はブラケットなどの支持部材を介して固定されていてもよい。
【0038】
スライダー34は横断面形状が矩形状で且つ上面34aの幅方向中央部に切り欠き34bを有している(図5(a),図6(a)参照)。切欠き34bはスライダー34の全長に亘って形成されている。そして、スライダー34は、ガイドレール33の下部33cを囲むような状態となり、切り欠き34bの両側部分34c,34dがガイドレール33の凹部33a,33bに嵌合した状態でガイドレール33に取り付けられ(係止され)、且つ、図5(b)に矢印jで示す如く、ガイドレール33の長手方向(円弧に沿う方向)に摺動可能となっている。
【0039】
ブラケット36は上面36aと側面36bからなるL字状のものであり(図6(b)参照)、上面36aが、ボルトや溶接などの固定手段により、スライダー34の下面34eに固定されている。
【0040】
ボルト35は、ねじ部35bを有する軸部35cと、軸部35cの端に形成された頭部35dとを有しており、軸部35cのねじ部35bが、スライダー34の側面34fに形成されたねじ孔34gに螺合している。従って、ボルト35を締めると(即ち、頭部35dを一方に回して、軸部35cのねじ部35bをねじ孔34gにねじ込むと)、ボルト35の軸部35cの先端35aが、ガイドレール33の下部33cの一方の側面33dに当接し、且つ、ガイドレール33の下部33cの他方の側面33eが、スライダー34の内面34hに当接する。その結果、ボルト35の軸部35cの先端35aとスライダー34の内面34hとによって、ガイドレール33の下部33cが締め付けられるため、ガイドレール33の当該位置においてスライダー34がガイドレール33に固定される。逆に、この固定状態においてボルト35の頭部35cを他方に回して、ボルト35を緩めると、ガイドレール33へのスライダー34の固定が解除されて、図5(b)に矢印jで示す如く、スライダー34はガイドレール33の長手方向へ移動可能となる。
【0041】
なお、図示は省略するが、ボルト35は、頭部53cにレバーが形成されたレバーボルトであってもよい(即ち、図11(c)のレバーボルト54と同様のレバーボルトであってもよい)。
【0042】
AEフルイッドセンサ32は、ボルト37(その他の固定手段でもよい)によってブラケット36の側面36bに固定されている。なお、図示例では、ブラケット36を介してAEフルイッドセンサ32がスライダー34に取り付けられているが、これに限定するものではなく、スライダー34に直接AEフルイッドセンサ32を取り付けてもよい。
【0043】
AEフルイッドセンサ32は噴射孔32aと検出部32bとを有している。噴射孔32aには、流体供給管38を介してクーラントタンク40が接続され、検出部32bには、電気ケーブル39を介してAEセンサアンプ41が接続されている。また、AEセンサアンプ41は、内歯車研削盤10を制御するNC(数値制御)装置42に接続されている。NC装置42では、入力されたワーク諸元や加工条件に基づいて、前述のようなねじ状砥石17の動作(移動、旋回、回転)や、ワークWの回転や、ディスクドレッサ22の動作(旋回、回転)を制御することにより、ねじ状砥石17によるワークWの研削加工の制御やディスクドレッサ22によるねじ状砥石17のドレッシングの制御を行う。そして更にNC装置42では、研削加工時におけるねじ状砥石17とワークWの噛み合いや、ドレッシング時におけるねじ状砥石17とディスクドレッサ22の噛み合いに先立って、AEフルイッドセンサ32によるねじ状砥石17の弾性波の検出信号に基づき、ねじ状砥石17とワークWの接触判定や、ねじ状砥石17とディスクドレッサ22の接触判定をして、ワークWやディスクドレッサ22に対するねじ状砥石17の位相調整を行う。
【0044】
この位相調整の際、本実施の形態例1の内歯車研削盤10では、クーラントタンク40内のクーラント(例えば研削油)が、AEフルイッドセンサ用の流体としても利用される。クーラントタンク40には内歯車研削盤10で用いるクーラントCが貯留されており、このクーラントCの一部が流体供給管38を介してAEフルイッドセンサ32へも供給される。AEフルイッドセンサ32へ供給されたクーラントCは、噴射孔32aから砥石アーバ16bに向かって噴射されることにより、砥石アーバ16bに噴きかけられる。なお、このクーラントCの圧力や流量はAEフルイッドセンサ42と砥石アーバ16bの測定位置の距離に応じて調整可能となっている。
【0045】
そして、このときに確実にクーラントCが砥石アーバ16bに噴きかかるようにするため、AEフルイッドセンサ装置31では、ワーク(内歯車)Wのねじれ角に応じて、即ち、ワークWに対してねじ状砥石17(砥石アーバ16b)が、内歯車研削盤10の正面側から見て(反コラム側からコラム側を見て)、図5(a)のように左側に傾斜(左傾斜)しているのか、図8(a)のように右側に傾斜(右傾斜)しているのかに応じて、AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を変更する。
【0046】
即ち、図5(a)のようにねじ状砥石17(砥石アーバ16b)が左傾斜の場合には、図5(a)及び図5(b)に示すようにAEフルイッドセンサ32を、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向と反対の右側に取り付ける。一方、図8(a)のようにねじ状砥石17(砥石アーバ16b)が右傾斜の場合には、図8(a)及び図8(b)に示すようにAEフルイッドセンサ32を、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向と反対の左側に取り付ける。
【0047】
AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を、図5に示す取り付け位置から図8に示す取り付け位置に変更するには、ボルト35を緩めてスライダー34を移動可能とし、このスライダー34及びボルト35,ブラケット36とともにAEフルイッドセンサ32を、円弧状のガイドレール33の長手方向に沿って、ガイドレール33の一端側(図5(b)参照)から他端側(図8(b)参照)へ移動させた後、当該位置でボルト35を締めてスライダー34とともにAEフルイッドセンサ32をガイドレール33に固定する。勿論、AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を、図8に示す取り付け位置から図5に示す取り付け位置へ変更する場合も、上記と同様の手順で行なえばよい。かくして、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向(左傾斜か右傾斜か)に応じた適切な位置にAEフルイッドセンサ32が取り付けられるため、AEフルイッドセンサ32から砥石アーバ16bへ確実にクーラントCを噴きかけることができるようになる。
【0048】
その後、位相検出と位相合わせ(歯合わせ)を実施するが、その手順の概要は次のとおりである。即ち、AEフルイッドセンサ32の噴射孔32aから砥石アーバ16aにクーラントCを噴きかけ、この状態でねじ状砥石17に弾性波が発生すると、この弾性波はねじ状砥石17から砥石アーバ16bへと伝播し、更に砥石アーバ16bからクーラントCへと伝播した後、クーラントC中をその上流側へと伝播するため、AEフルイッドセンサ32の検出部32bで検出される。検出部32bでは前記弾性波の検出信号であるAE信号を、AEセンサアンプ41へ出力する。AEセンサアンプ41では、検出部32bから入力したAE信号を電圧Vに変換して、この電圧VをNC装置42へ出力し、且つ、図7に示すような電圧Vの経時変化を表示する。NC装置42では、図7に示すようにAEセンサアンプ41から入力した電圧Vと閾値Voとを比較することにより、ねじ状砥石17の刃とワークWの歯の接触判定や、ねじ状砥石17の刃とディスクドレッサ22の刃の接触判定を行なってねじ状砥石17の位相を検出し、この結果に基づいてねじ状砥石17の位相合わせを行なう。なお、この位相検出と位相合わせの手順の詳細については、後述する。
【0049】
以上のように、本実施の形態例1によれば、砥石ヘッド16(工具ヘッド)に回転可能に支持された砥石アーバ16b(工具軸)の先端にねじ状砥石17(加工工具)が装着されており、ねじ状砥石17を傾斜させた状態でワークWと噛み合わせてワークWを加工する内歯車研削盤10において、ねじ状砥石17とワークWとの噛み合わせに先立って、ねじ状砥石17とワークWとの位相合わせのためにねじ状砥石17の位相を検出するAEフルイッドセンサ装置31を備えており、このAEフルイッドセンサ装置31は、砥石ヘッド16に固定され、砥石回転軸B1を中心とする円弧状(又は円形状)を成し、幅方向の両側面に凹部33a,33bを有して横断面形状がI字状を成しているガイドレール33と、横断面形状が矩形状で且つ上面34aに切り欠き34bを有し、切り欠き34bの両側部分34c,34dがガイドレール33の凹部33a,33bに嵌合した状態でガイドレール33に取り付けられてガイドレール33の長手方向に摺動可能であり、側面34fにねじ孔34gが形成されたスライダー34(移動体)と、ねじ部35bを有する軸部35cと軸部35cの端に形成された頭部35dとを有しており、軸部35cのねじ部35bがスライダー34のねじ孔34gに螺合しており、ねじ部35bがねじ孔34gにねじ込まれたとき、軸部35cの先端35aが、ガイドレール33の下部33cの一方の側面33dに当接して、ガイドレール33の下部33cの他方の側面33eに当接するスライダー34の内面34hとともにガイドレール33の下部33cを締め付けることにより、スライダー34をガイドレール33に固定し、且つ、前記固定の解除を行うボルト35(固定手段)と、スライダー34に(ブラケット36を介して)取り付けられてスライダー34とともにガイドレール33の長手方向に移動可能であり、ねじ状砥石17とワークWとの接触によってねじ状砥石17に発生する弾性波を、砥石アーバ16bに噴きかけたクーラントC(流体)を介して検出するAEフルイッドセンサ32とを有してなることを特徴としているため、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向が例えば左傾斜から右傾斜に変更された場合でも、ボルト35を緩めることにより、ガイドレール33へのスライダー34の固定を解除して、スライダー34及びボルト35とともにAEフルイッドセンサ32を、ガイドレール33の長手方向へ、当該ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向と反対側の位置まで移動させた後、当該位置でボルト35を締めることによりスライダー34をガイドレール33に固定するだけで、容易に、AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を、当該ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向と反対側の位置へ変更することができる。従って、AEフルイッドセンサ32から砥石アーバ16bへ確実にクーラントCを噴きかけることができるようにするためにAEフルイッドセンサ32の取り付け位置を変更する際、当該変更を容易に行うことができる。
【0050】
また、ボルト35を、頭部にレバーが形成されたレバーボルトとした場合には、AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を変更する際、ボルト用の工具を要することなく、作業員がレバーボルトのレバーを回すだけで容易にガイドレール33へのスライダー34の固定や固定の解除を行なうことができるため、AEフルイッドセンサ32の取り付け作業が更に容易になる。
【0051】
なお、ここで、位相検出と位相合わせの手順について詳述する。以下の手順はNC装置42の制御などによって実施される。勿論、以下の手順が実施される前に、上記の如く、ワークWに対してねじ状砥石17(砥石アーバ16b)が左傾斜か右傾斜かに応じて、AEフルイッドセンサ32を適切な位置に取り付ける。
【0052】
ねじ状砥石17でワークWを研削する場合には、まず、図5(a)又は図8(a)に示すようにねじ状砥石17を、回転テーブル18に取り付けられているワークWの内側に移動させて傾斜させる。次に、ねじ状砥石17の刃とワークWの歯を噛み合わせる前に、ねじ状砥石17の刃先をワークWの歯先と歯先の間に位置させる。このとき、ねじ状砥石17の刃先とワークWの歯先とが干渉しないように、これらの位相合わせを大まかに行うこと(即ち粗位相合わせを行なうこと)が望ましい。そして、粗位相合わせにより、ねじ状砥石17の刃先をワークWの歯先と歯先の間に位置させた状態で、ねじ状砥石17とワークWとを同期回転させるととともに、AEフルイッドセンサ32の噴射孔32aから砥石アーバ16bに向けてクーラントCを噴射して、AEフルイッドセンサ32の検出部32bによるねじ状砥石17の弾性波の検出を開始する。
【0053】
AEフルイッドセンサ32による弾性波の検出が開始されると、図7に示すようにAEセンサアンプ41ではAEフルイッドセンサ32の検出部32bからの入力信号(AE信号)を電圧Vに変換して、この電圧VをNC装置42へ出力し、且つ、電圧Vの経時変化を表示する。なお、AEフルイッドセンサ32による弾性波の検出が開始されると同時にねじ状砥石17の非接触時における最大電圧Vfが測定され、この非接触時の最大電圧Vfよりも大きな値の閾値Voが自動設定されるようになっている。
【0054】
次に、ワークWの回転速度だけを上げることにより、ねじ状砥石17とワークWとの同期回転をずらして、ワークWの一方の歯面をねじ状砥石17の一方の刃面に接触させる。この接触によってねじ状砥石17に発生する弾性波は、ねじ状砥石17から砥石アーバ16bへと伝播し、更に砥石アーバ16bからクーラントCへと伝播した後、クーラントC中をその上流側へと伝播して、AEフルイッドセンサ32の検出部32bで検出される。その結果、図7に示すようにAEセンサアンプ41では、AEフルイッドセンサ32から入力されたAE信号に応じて電圧Vの波形が変化することになり、NC装置42では、この電圧Vが予め設定された閾値Voを超えると、ワークWの一方の歯面がねじ状砥石17の一方の刃面に接触したと判定し、この接触判定時のねじ状砥石17の位相を記憶する。
【0055】
次に、ワークWの回転速度だけを下げることにより、ねじ状砥石17とワークWとの同期回転をずらして、ワークWの他方の歯面をねじ状砥石17の他方の刃面に接触させる。この接触によってねじ状砥石17に発生する弾性波は、ねじ状砥石17から砥石アーバ16bへと伝播し、更に砥石アーバ16bからクーラントCへと伝播した後、クーラントC中をその上流側へと伝播して、AEフルイッドセンサ32の検出部32bで検出される。その結果、図7に示すようにAEセンサアンプ41では、AEフルイッドセンサ32から入力されたAE信号に応じて電圧Vの波形が変化することになり、NC装置42では、この電圧Vが予め設定された閾値Voを超えると、ワークWの他方の歯面がねじ状砥石17の他方の刃面に接触したと判定し、この接触判定時のねじ状砥石17の位相を記憶する。
【0056】
次に、NC装置42では、記憶した2つのねじ状砥石17の位相から、その中間の位相(中間位相)を求め、ねじ状砥石17の位相を、この中間位相に位置決めすることによって、精密な位相合わせを行う。このような精密位相合わせを行なった状態でねじ状砥石17の刃とワークWの歯を噛み合わせた後、これらのねじ状砥石17とワークWを同期回転させることにより、ねじ状砥石17の刃面でワークWの歯面を研削加工する。
【0057】
このようにねじ状砥石17で所定数量のワークWを研削すると、ねじ状砥石17の刃面が摩耗して切れ味が低下するため、定期的にディスクドレッサ22でねじ状砥石17のドレッシングを行う。なお、ドレッシング時には、図4に示すようにねじ状砥石17(砥石アーバ16bが鉛直方向に向けた状態のままであるため、AEフルイッドセンサ32はガイドレール33のどの位置に取り付けてもよく、研削加工時と同じ取り付け位置でもよい。
【0058】
ディスクドレッサ22でねじ状砥石17をドレッシングする場合には、まず、図9に示すようにディスクドレッサ22をねじ状砥石17側に移動させて傾斜させる。次に、ディスクドレッサ22とねじ状砥石17を噛み合わせる前に、ディスクドレッサ22の刃先をねじ状砥石17の刃先と刃先の間に位置させる。このとき、ねじ状砥石17の刃先とディスクドレッサ32の刃先とが干渉しないように、これらの位相合わせを大まかに行うこと(粗位相合わせを行なうこと)が望ましい。そして、粗位相合わせにより、ディスクドレッサ22の刃先をねじ状砥石17の刃先と刃先の間に位置させた状態で、ねじ状砥石17は回転を停止させたまま、ディスクドレッサ32だけを回転させるとともに、AEフルイッドセンサ32の噴射孔32aから砥石アーバ16bに向けてクーラントCを噴射して、AEフルイッドセンサ32の検出部32bによるねじ状砥石17の弾性波の検出を開始する。
【0059】
AEフルイッドセンサ32による弾性波の検出が開始されると、図7に示すようにAEセンサアンプ41ではAEフルイッドセンサ32の検出部32bからの入力信号(AE信号)を電圧Vに変換して、この電圧VをNC装置42へ出力し、且つ、電圧Vの経時変化を表示する。なお、AEフルイッドセンサ32による弾性波の検出が開始されると同時にねじ状砥石17の非接触時における最大電圧Vfが測定され、この非接触時の最大電圧Vfよりも大きな値の閾値Voが自動設定されるようになっている。
【0060】
次に、ねじ状砥石17を正転させて、ねじ状砥石17の一方の刃面をディスクドレッサ22の一方の刃面に接触させる。この接触によってねじ状砥石17に発生した弾性波は、ねじ状砥石17から砥石アーバ16bへと伝播し、更に砥石アーバ16bからクーラントCへと伝播した後、クーラントC中をその上流側へと伝播して、AEフルイッドセンサ32の検出部32bで検出される。その結果、図7に示すようにAEセンサアンプ41では、AEフルイッドセンサ32から入力されたAE信号に応じて電圧Vの波形が変化することになり、NC装置42では、この電圧Vが予め設定された閾値Voを超えると、ねじ状砥石17の一方の刃面がディスクドレッサ22の一方の歯面に接触したと判定し、この接触判定時のねじ状砥石17の位相を記憶する。
【0061】
次に、ねじ状砥石17を逆転させて、ねじ状砥石17の他方の刃面をディスクドレッサ22の他方の刃面に接触させる。この接触によってねじ状砥石17に発生した弾性波は、ねじ状砥石17から砥石アーバ16bへと伝播し、更に砥石アーバ16bからクーラントCへと伝播した後、クーラントC中をその上流側へと伝播して、AEフルイッドセンサ32の検出部32bで検出される。その結果、図7に示すようにAEセンサアンプ41では、AEフルイッドセンサ32から入力されたAE信号に応じて電圧Vの波形が変化することになり、NC装置42では、この電圧Vが予め設定された閾値Voを超えると、ねじ状砥石17の他方の刃面がディスクドレッサ22の他方の歯面に接触したと判定し、この接触判定時のねじ状砥石17の位相を記憶する。
【0062】
次に、NC装置42では、記憶した2つのねじ状砥石17の位相から、その中間の位相(中間位相)を求め、ねじ状砥石17の位相をこの中間位相に位置決めすることによって、精密な位相合わせを行う。このような精密位相合わせを行なった状態で、ねじ状砥石17の刃とディスクドレッサ22の刃を噛み合わせた後、ディスクドレッサ22を回転させることにより、ディスクドレッサ22の刃面でねじ状砥石17の刃面をドレッシングする。
【0063】
<実施の形態例2>
本発明の実施の形態例2を、図10〜図13に基づいて説明する。なお、本実施の形態例2の内歯車研削盤の全体的な構成については、上記実施の形態例1と同様であるため(図1〜図4参照)、ここでの詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施の形態例2の内歯車研削盤(全体的な構成については図1〜図4を参照)では、ねじ状砥石17の刃とワークWの歯を噛み合わせるのに先立って、ねじ状砥石17の刃とワークWの歯の位相合わせ(歯合わせ)を行なうため、図10(a)に示すように砥石ヘッド16にAEフルイッドセンサ装置51が設けられている。このAEフルイッドセンサ装置51の構成を図10及び図11に基づいて詳述する。
【0065】
これらの図に示すように、AEフルイッドセンサ装置51は、AEフルイッドセンサ32と、ガイドレール53と、レバーボルト54と、ナット55と、ブラケット56とを有して成るものである。なお、レバーボルト54及びナット55は固定手段に相当し、ブラケット56は移動体に相当する。
【0066】
ガイドレール53は平面視が、砥石回転軸B1を中心とする円弧状を成しており(図10(b)参照)、横断面形状が矩形状で且つ下面53aの幅方向中央部に切欠き53bを有している(図10(a),図11(a)参照)。切欠き53bはガイドレール53の長手方向(円弧に沿う方向)に延びており、ガイドレール53の全長に亘って形成されている(図10(b)参照)。そして、ガイドレール53は砥石アーバ16bの反コラム側(コラム12が設置されているコラム側と反対の側)において、砥石ヘッド16の先端面16cにボルトや溶接などの固定手段によって固定されており、ガイドレール53の長手方向(円弧に沿う方向)の両端部53c,53dが、砥石アーバ16bの左右両側(Y軸方向両側)に位置している。
【0067】
なお、これに限定するものではなく、ガイドレール53はコラム側に設置してもよい。この場合も、ガイドレール53の両端部53c,53dは、砥石アーバ16bの左右両側(Y軸方向両側)に位置させる。換言すれば、ガイドレール53を円弧状にする場合、ガイドレール53は、AEフルイッドセンサ32を、ガイドレール53に長手方向(円弧)に沿って、少なくとも、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の一方側から他方側まで、180度移動させることができる長さを有する必要がある。まや、ガイドレール53は円弧状のものに限らず、砥石回転軸B1を中心とする円形状のものであってもよい。
【0068】
また、ガイドレール53は、図示例の如く砥石ヘッド16の先端面16cに直接固定される場合に限らず、ブラケットなどの支持部材を介して砥石ヘッド16の先端面16cに固定されていてもよく、更には砥石ヘッド16の側面16dに直接又はブラケットなどの支持部材を介して固定されていてもよい。
【0069】
ナット55は、ガイドレール53内に配置されている。ナット55は多角形状(図示例では六角形状)のものであり、ナット55の対向面55a,55bの幅はガイドレール53内の対向面(内面)53e,53fの幅よりも小さい一方、ナット55の対向角55c,55dの幅はガイドレール53内の対向面53e,53fの幅よりも大きくなっている。従って、ガイドレール53内において、ガイドレール53の長手方向(円弧に沿う方向)へのナット55の移動は可能である一方、ナット55の回転はガイドレール53の対向面53e,53fによって阻止される。
【0070】
レバーボルト54はねじ部54aを有する軸部54bと、この軸部54bの端に設けらた頭部54cとを有している。頭部54cは軸部54bよりも大径に(幅が広く)なっている。また、頭部54cにはレバー54dが形成されている。
【0071】
ブラケット56は上面56aと側面56bとからなるL字状のものであり(図11(b)参照)、上面56aに貫通孔56cが形成されている。そして、レバーボルト54の軸部54aは、上向きになっており、ブラケット56の上面56aの貫通孔56cを貫通し、更にガイドレール53の下面53aの切欠き53bを貫通してガイドレール53内に挿入され、ねじ部54aがナット54に螺合している。
【0072】
従って、レバーボルト54を締めると(即ち、頭部54cのレバー54dを一方に回して、軸部54bのねじ部54aをナット54にねじ込むと)、ガイドレール53の下面53aとブラケット56の上面56aが、レバーボルト54の頭部54cとナット55によって締め付けられるため、ガイドレール53の当該位置においてブラケット56がガイドレール53に固定される。逆に、レバーボルト54の頭部54cのレバー54dを他方に回して、レバーボルト54を緩めると、図10(b)に矢印kで示す如く、レバーボルト54(軸部54b)は、ガイドレール53の切欠き53bに沿ってガイドレール53の長手方向に移動可能となる。
【0073】
AEフルイッドセンサ32は、ボルト57(その他の固定手段でもよい)によってブラケット56の側面56bに固定されている。なお、AEフルイッドセンサ32、流体供給管38、電気ケーブル39、クーラントタンク40、AEセンサアンプ41及びNC装置42については、上記実施の形態例1と同様のものであるため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0074】
位相調整の際、クーラントタンク40からAEフルイッドセンサ32へ供給されたクーラントCは、AEフルイッドセンサ32の噴射孔32aから砥石アーバ16bに向かって噴射されることにより、砥石アーバ16bに噴きかけられる。
【0075】
そして、このときに確実にクーラントCが砥石アーバ16bに噴きかかるようにするため、AEフルイッドセンサ装置51では、ワーク(内歯車)Wのねじれ角に応じて、即ち、ワークWに対してねじ状砥石17(砥石アーバ16b)が、内歯車研削盤の正面側から見て(反コラム側からコラム側を見て)、図10(a)のように左側に傾斜(左傾斜)しているのか、図12(a)のように右側に傾斜(右傾斜)しているのかに応じて、AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を変更する。
【0076】
即ち、図10(a)のようにねじ状砥石17(砥石アーバ16b)が左傾斜の場合には、図10(a)及び図10(b)に示すようにAEフルイッドセンサ32を、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向と反対の右側に取り付ける。一方、図12(a)のようにねじ状砥石17(砥石アーバ16b)が右傾斜の場合には、図12(a)及び図12(b)に示すようにAEフルイッドセンサ32を、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向と反対の左側に取り付ける。
【0077】
AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を、図10に示す取り付け位置から図12に示す取り付け位置に変更するには、レバーボルト54を緩めてブラケット56を移動可能とし、このブラケット56及びレバーボルト54,ナット55とともにAEフルイッドセンサ32を、円弧状のガイドレール53の長手方向に沿って、ガイドレール53の一端側(図10(b)参照)から他端側(図12(b)参照)へ移動させた後、当該位置でレバーボルト54を締めてブラケット56とともにAEフルイッドセンサ32をガイドレール53に固定する。勿論、AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を、図12に示す取り付け位置から図10に示す取り付け位置へ変更する場合も、上記と同様の手順で行なえばよい。かくして、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向(左傾斜か右傾斜か)に応じた適切な位置にAEフルイッドセンサ32が取り付けられるため、AEフルイッドセンサ32から砥石アーバ16bへ確実にクーラントCを噴きかけることができるようになる。
【0078】
その後、位相検出と位相合わせ(歯合わせ)を実施するが、その手順については上記実施の形態例1の場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0079】
以上のように、本実施の形態例2によれば、砥石ヘッド16(工具ヘッド)に回転可能に支持された砥石アーバ16b(工具軸)の先端にねじ状砥石17(加工工具)が装着されており、ねじ状砥石17を傾斜させた状態でワークWと噛み合わせてワークWを加工する内歯車研削盤において、ねじ状砥石17とワークWとの噛み合わせに先立って、ねじ状砥石17とワークWとの位相合わせのためにねじ状砥石17の位相を検出するAEフルイッドセンサ装置51を備えており、このAEフルイッドセンサ装置51は、砥石ヘッド16に固定され、砥石回転軸B1を中心とする円弧状(又は円形状)を成し、横断面形状が矩形状で且つ下面53aに切欠き53bを有するガイドレール53と、ガイドレール53の長手方向に移動可能であり、貫通孔56cが形成されたブラケット56(移動体)と、ガイドレール53内に配置され、多角形状(六角形状)のものであって対向面55a,55bの幅がガイドレール53内の対向面53e,53fの幅よりも小さくてガイドレール53の長手方向に移動可能である一方、対向角55c,55dの幅がガイドレール53内の対向面53e,53fの幅よりも大きくてこの対向面53e,53fにより回転が阻止されるナット55(固定手段)と、ねじ部54aを有する軸部54bと軸部54bの端に形成された頭部54cとを有しており、軸部54bがブラケット56の貫通孔56cとガイドレール53の切欠き53bとを貫通して、軸部54bのねじ部54aがナット55に螺合しており、ねじ部54aがナット55にねじ込まれたとき、頭部54cがナット55とともにガイドレール53の下面53aとブラケット56(上面56a)を締め付けることにより、ブラケット56をガイドレール53に固定し、且つ、前記固定の解除を行うボルト54(固定手段)と、ブラケット56(側面56b)に取り付けられてブラケット56とともにガイドレール53の長手方向に移動可能であり、ねじ状砥石17とワークWとの接触によってねじ状砥石17に発生する弾性波を、砥石アーバ16bに噴きかけたクーラントC(流体)を介して検出するAEフルイッドセンサ32とを有してなることを特徴としているため、ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向が例えば左傾斜から右傾斜に変更された場合でも、ボルト54を緩めることにより、ガイドレール53へのブラケット56の固定を解除して、ブラケット56、ボルト54及びナット55とともにAEフルイッドセンサ32を、ガイドレール53の長手方向へ、当該ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向と反対側の位置まで移動させた後、当該位置でボルト54を締めることによりブラケット56をガイドレール53に固定するだけで、容易に、AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を、当該ねじ状砥石17(砥石アーバ16b)の傾斜方向と反対側の位置へ変更することができる。。従って、AEフルイッドセンサ32から砥石アーバ16bへ確実にクーラントCを噴きかけることができるようにするためにAEフルイッドセンサ32の取り付け位置を変更する場合、当該変更を容易に行うことができる。
【0080】
また、本実施の形態例2によれば、ボルト54は、頭部54cにレバー54dが形成されたレバーボルトであることを特徴としているため、AEフルイッドセンサ32の取り付け位置を変更する際、ボルト用の工具を要することなく、作業員がレバーボルト54のレバー54dを回すだけで容易にガイドレール53へのブラケット56の固定や固定の解除を行なうことができるため、AEフルイッドセンサ32の取り付け作業が更に容易になる。
【0081】
なお、上記実施の形態例1,2ではねじ状砥石を用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明は外歯車形状の砥石などを用いる場合にも適用することができる。
また、上記実施の形態例1,2では歯車加工機が、内歯車を研削加工する内歯車研削盤である場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、本発明は外歯車を研削加工する外歯車研削盤などにも適用することができる。
また、上記実施の形態例1,2ではねじ状砥石のドレッシングにディスクドレッサを用いているが、ドレスギヤを用いる場合もあり、この場合も本発明を適用することができる。ドレスギヤはワークW(内歯車)と同形状の内刃のドレッサである。従って、ねじ状砥石のドレッシングにドレスギヤを用いる場合には、単にワークWをドレスギヤに置き換えるだけである。このため、ねじ状砥石とドレスギヤの位相合わせ(歯合わせ)をする場合、ワークWに対してねじ状砥石(砥石アーバ)が左傾斜か右傾斜かに応じてAEフルイッドセンサを適切な位置に取り付けることや、その後の位相検出及び位相合わせの手順などについては、ねじ状砥石とワークW(内歯車)の位相合わせ(歯合わせ)をする場合と同様である。
また、本発明は特にAEフルイッドセンサ装置に対して有効なものあるが、これに限定するものではなく、その他のセンサ装置を砥石ヘッドに備えてねじ状砥石の位相を検出する場合にも適用することができる。この場合、例えばセンサ装置のセンサとワークの干渉を防止するために当該センサの取り付け位置を変更する場合などに、当該変更を容易に行うことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は加工工具とワークの噛み合せに先立って、前記加工工具と前記ワークとの位相合わせのために前記加工工具の位相を検出するためのAEフルイッドセンサ装置などのセンサ装置を備えた歯車加工機に関するものであり、内歯車研削盤や外歯車研削盤などに適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0083】
10 内歯車研削盤
11 ベッド
12 コラム
13 サドル
14 旋回ヘッド
16 砥石ヘッド
16a スピンドル
16b 砥石アーバ
16c 先端面
16d 側面
17 樽形ねじ状砥石
18 回転テーブル
19 取付治具
21 ドレッシング装置
22 ディスクドレッサ
23 ベース部
24 旋回部
25 ドレッサ回転駆動用モータ
31 AEフルイッドセンサ装置
32 AEフルイッドセンサ
32a 噴射孔
32b 検出部
33 ガイドレール
33a,33b 凹部
33c 下部
33d,33e 側面
33h,33i 端部
34 スライダー
34a 上面
34b 切欠き
34c,34d 切欠きの両側部分
34e 下面
34f 側面
34g ねじ孔
34h 内面
35 ボルト
35a 先端
35b ねじ部
35c 軸部
35d 頭部
36 ブラケット
36a 上面
36b 側面
37 ボルト
38 流体供給管
39 電気ケーブル
40 クーラントタンク
41 AEセンサアンプ
42 NC装置
51 AEフルイッドセンサ装置
53 ガイドレール
53a 下面
53b 切欠き
53c,53d 端部
53e,53f 対向面(内面)
54 レバーボルト
54a ねじ部
54b 軸部
54c 頭部
54d レバー
55 ナット
55a,55b 対向面
55c,55d 対向角
56 ブラケット
56a 上面
56b 側面
56c 貫通孔
57 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具ヘッドに回転可能に支持された工具軸の先端に加工工具が装着されており、前記加工工具を傾斜させた状態でワークと噛み合わせて前記ワークを加工する歯車加工機において、
前記加工工具と前記ワークとの噛み合わせに先立って、前記加工工具と前記ワークとの位相合わせのために前記加工工具の位相を検出するセンサ装置を備えており、
前記センサ装置は、
前記工具ヘッドに固定され、加工工具回転軸を中心とする円弧状又は円形状のガイドレールと、
前記ガイドレールの長手方向に移動可能に、前記ガイドレールに取り付けられた移動体と、
前記ガイドレールへの前記移動体の固定と、前記固定の解除とを行う固定手段と、
前記移動体に取り付けられて前記移動体とともに前記ガイドレールの長手方向に移動可能であるセンサと、
を有して成ることを特徴とする歯車加工機。
【請求項2】
請求項1に記載の歯車加工機において、
前記センサ装置はAEフルイッドセンサ装置であり、
このAEフルイッドセンサ装置は、
前記工具ヘッドに固定され、加工工具回転軸を中心とする円弧状又は円形状のガイドレールと、
前記ガイドレールの長手方向に移動可能に、前記ガイドレールに取り付けられた移動体と、
前記ガイドレールへの前記移動体の固定と、前記固定の解除とを行う固定手段と、
前記移動体に取り付けられて前記移動体とともに前記ガイドレールの長手方向に移動可能であり、前記加工工具と前記ワークとの接触によって前記加工工具に発生する弾性波を、前記工具軸に噴きかけた流体を介して検出するAEフルイッドセンサと、
を有して成ることを特徴とする歯車加工機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯車加工機において、
前記ガイドレールは、幅方向の両側面に凹部を有して、横断面形状がI字状を成しており、
前記移動体は、横断面形状が矩形状で且つ上面に切り欠きを有し、前記切り欠きの両側部分が前記ガイドレールの前記凹部に嵌合した状態で前記ガイドレールに取り付けられて前記ガイドレールの長手方向に摺動可能であり、側面にねじ孔が形成され、前記センサ又は前記AEフルイッドセンサが取り付けられているスライダーであり、
前記固定手段は、ねじ部を有する軸部と、前記軸部の端に形成された頭部とを有しており、前記軸部の前記ねじ部が前記スライダーの前記ねじ孔に螺合しており、前記ねじ部が前記ねじ孔にねじ込まれたとき、前記軸部の先端が、前記ガイドレールの下部の一方の側面に当接して、前記ガイドレールの下部の他方の側面に当接する前記スライダーの内面とともに前記ガイドレールの下部を締め付けることにより、前記スライダーを前記ガイドレールに固定するボルトであること、
を特徴とする歯車加工機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の歯車加工機において、
前記ガイドレールは、横断面形状が矩形状で且つ下面に切欠きを有しており、
前記移動体は、貫通孔が形成され、前記センサ又は前記AEフルイッドセンサが取り付けられているブラケットであり、
前記固定手段は、
前記ガイドレール内に配置され、多角形状のものであって、対向面の幅が前記ガイドレール内の対向面の幅よりも小さくて前記ガイドレールの長手方向に移動可能である一方、対向角の幅が前記ガイドレール内の前記対向面の幅よりも大きくてこの対向面により回転が阻止されるナットと、
ねじ部を有する軸部と、前記軸部の端に形成された頭部とを有しており、前記軸部が前記ブラケットの貫通孔と前記ガイドレールの切欠きとを貫通して、前記軸部の前記ねじ部が前記ナットに螺合しており、前記ねじ部が前記ナットにねじ込まれたとき、前記頭部が前記ナットとともに前記ガイドレールの下面と前記ブラケットを締め付けることにより、前記ブラケットを前記ガイドレールに固定するボルトと、
を有して成るものであることを特徴とする歯車加工機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の歯車加工機において、
前記ボルトは、前記頭部にレバーが形成されたレバーボルトであることを特徴とする歯車加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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