残留側波帯変調システムの複素相関器
受信器は、復調器及び複素相関器を備える。復調器は受信信号を復調し、復調信号を供給する。複素相関器は、復調信号の同相成分をデータ・パターンと互いに関係付け、復調信号の直交成分をデータ・パターンのヒルバート変換と互いに関係付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に通信システムに関し、特に受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
ATSC−DTV(米国高度テレビジョン方式委員会・ディジタル・テレビジョン)システム(例えば、United States Advanced Television Systems Committee, 「ATSC Digital Television Standard」, Document A/53, September 16, 1995、及び「Guide to the Use of the ATSC Digital Television Standard」, Document A/54, October 4, 1995参照。)のような、現代のディジタル通信システムでは、高度変調、チャネル符号化及び等化が通常、施される。受信器では、復調器は一般にキャリア位相及び/又はシンボル・タイミングの不定性を有する。等化器は一般に、DFE(判定帰還等化器)タイプ又はその特定の変形であり、有限長を有する。激しく歪んだチャネルでは、信号を首尾良く処理し、歪みを補正する最良の機会を等化器に与えるうえでチャネル・インパルス応答の仮想中心が分かることが重要である。一手法は、セグメント同期化(同期)信号に基づいて適応型等化器のチャネルの想中心を算出するセントロイド算出器を用いるものである。別の手法は、フレーム同期信号に基づいて適応型等化器のチャネル仮想中心を算出するセントロイド算出器を用いるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この点で、受信されるVSB同期信号又は訓練信号の検出は通常、実相関器の使用を活用する。実相関器は、受信信号の同相部分を既知の訓練パターン又は同期パターンと比較する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実相関器が受信信号の同相成分のみを用いるため、受信器における実相関器の使用が受信器の特性を制限し得るということが明らかになった。したがって、かつ、本発明の原理によれば、受信器は、復調された信号を供給する復調器と、復調された信号をデータ・パターンに対して互いに関係付ける複素相関器とを備える。
【0005】
本発明の実施例では、ATSC受信器は、復調器及び複素相関器を備える。復調器は、受信されたATSC―DTV信号を復調し、復調された信号を供給する。複素相関器は、復調された信号の同相成分をATSCセグメント同期パターンに対して互いに関係付け、復調された信号の直交成分を、ATSCセグメント同期パターンのヒルバート変換に対して互いに関係付ける。
【0006】
本発明の別の実施例では、ATSC受信器は、復調器及び複素相関器を備える。復調器は、受信されたATSC―DTV信号を復調し、復調された信号を供給する。複素相関器は復調信号の直交成分を、ATSCセグメント同期パターンに対して互いに関係付け、復調信号の同相成分を、ATSCセグメント同期パターンのヒルバート変換に対して互いに関係付ける。
【0007】
本発明の別の実施例では、ATSC受信器は、復調器、及び複素相関器を含むセントロイド算出器を備える。復調器は、受信されたATSC―DTV信号を復調し、復調された信号を供給する。セントロイド算出器は、復調された信号を処理して、例えば、適応型等化器において用いるチャネル仮想中心を判定する。セントロイド算出器において複素相関器を用いることによって、復調された信号におけるシンボル・タイミング位相不定性にセントロイド算出器が影響されないことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の特徴によれば、前述のセントロイド算出器は、内部リミタを備え、それによって特性が改善される。
【実施例】
【0009】
本発明の概念以外には、添付図面に示すエレメントは周知であり、詳細に説明しない。更に、テレビジョン放送及び受信器をよく知っていることを前提とし、本明細書では詳細に説明しない。例えば、本発明の概念以外では、TV標準(NTSC(米国テレビジョン方式委員会)、PAL(位相反転走査線)、SECAM(順次式カラー・メモリ)及びATSC(高度テレビジョン方式委員会)(ATSC)の現在の勧告、及び提案されている勧告をよく知っていることを前提とする。同様に、本発明の概念以外では、送信の概念(8値残留側波帯(8−VSB)、直交振幅変調(QAM)など)と、受信器構成部分(無線周波数(RF)フロントエンドなど)、又は受信器部(低雑音ブロック、チューナ、復調器、相関器、漏れ積分器、及び二乗器など)とを前提とする。同様に、伝送ビット・ストリームを生成するフォーマッティング及び符号化の方法(動画像専門家グループ(MPEG)−2方式標準(ISO/IEC(13818−1))は周知であり、本明細書では説明しない。更に、本発明の概念は、そういうものとして本明細書では説明しない通常のプログラミング手法を用いて実施することができる。最後に、添付図面上の同じ符号は同様なエレメントを表す。
【0010】
前述のATSC−DTV(米国高度テレビジョン方式委員会・ディジタル・テレビジョン)システムのような、現代のディジタル通信システムでは、信号検出に相関器を使用することは慣用的なものである。ATSC−DTVシステムでは、変調システムは、8値レベル(±1、±3、±5、±7)を備えた残留側波帯(VSB)であり、2つのタイプの同期化信号又は訓練信号(セグメント同期信号及びフィールド同期信号)が存在する。これは図1に示す。図1は、ATSC−DTVシステムにおけるVSBディジタル・シンボル系列がデータ・セグメント及びデータ・フィールドにおいて構造化されていることを示す。
【0011】
まずデータ・セグメントについてであるが、これは、最初の4シンボルがセグメント同期信号を構成する832シンボルから成る。セグメント同期信号は、832シンボル毎にデータ・シンボル系列において現れる2値(2進)の4シンボルの、符号化されていないパターンである。2値表現は(1 0 0 1)であり、シンボル表現は(+5 −5 −5 +5)である。
【0012】
比較として、データ・フィールドは、第1のセグメントがフィールド同期信号を構成する313データ・セグメントから成る。フィールド同期信号も、図2に示すようにいくつかの疑似雑音(PN)系列及び予約パターンから成る2値(2進)の、符号化されていないパターンである。当該技術分野において知られているように、フィールド同期信号の訓練部分は、PN系列(PN511及びPN63)から成る。PN511は、多項式X9+X7+X6+X4+X3+X+1及び事前ロード値(010000000)によって定義されたシフトレジスタによって生成される疑似雑音系列である。PN63は、多項式X6+X+1及び事前ロード値(100111)によって規定されたシフトレジスタによって生成された疑似乱数系列である。PN63は、3回繰り返され、中央のPN63は、1つおきのフィールド同期毎に反転されている。
【0013】
セグメント同期データ・パターン及びフィールド同期データ・パターンは分かっているので、ATSC−DTV受信器の同期化エレメント、タイミング回復エレメント及び等化エレメントにおいて用いられる種々のアルゴリズムは、この情報を用いて、セグメント同期パターン及び/又はフィールド同期パターンと、受信されたATSC−DTV信号とを互いに関係付けることによって受信器特性を向上させる。特に、受信されたATSC−DTV信号に実相関を施すことが慣用的である。すなわち、受信されたATSC−DTV信号の同相成分は、個別の同期パターンの存在を検出するためにセグメント同期データ・パターン及び/又はフレーム同期データ・パターンに対して互いに関係付ける。(単に「相関器」としても通常表す)実相関器が用いられるが、それは、ディジタルVSB変調信号が離散値を有する一方、直交成分は、一定範囲の非離散値を有するからである。例えば、ATSC−DTV信号では、VSB同相成分は8値(±1、±3、±5、±7)を有する一方、直交成分は、実際に±7を超えて延びる範囲内で非離散的であり、ヒルバート変換及び入力データの関数である。
【0014】
ATSC−DTVセグメント同期検出器500の意味合いにおける従来技術の相関器の構成図を図3に示す。ATSC−DTVセグメント同期検出器500は、相関器505、832長積分器510(以降、単に積分器510)、ピーク・サーチ・エレメント515及びセグメント同期生成器520を備える。特に、受信されたATSC信号は、復調器(図示せず)によって復調され、復調器は復調信号101を供給する。同相(I)成分101−1が相関器505に入力され、相関器505は、受信ATSC−DTV信号におけるセグメント同期信号の検出のために、既知のATSC−DTVセグメントと信号101−1を互いに関係付ける。前述の通り、ATSC−DTVセグメント同期信号は、832シンボル毎にデータ・シンボル系列に現れる2値(2進)の4シンボルの、符号化されていないパターンである。2値表現は(1 0 0 1)であり、シンボル表現は(+5 −5 −5 +5)である。相関器105は、タップ555−1、555−2、555−3及び555−4によって表される4タップの遅延線555、タップ毎に1つ、乗算器560−1、560−2、560−3及び560−4のそれぞれによって表される相当する乗算器(560)組、及び加算器560−5を備える。単純にするように、適切なクロッキング信号は図3に示すものでない。そういうものとして、相関器505は、同相デ―タ入力信号101−1を遅延線555によって遅延させ、図3から分かり得るように、セグメント同期パターンのスケーリングされたバージョンのパターン(+1 −1 −1 +1)によって適切なタップ出力を(乗算器560を介して)乗算する。
【0015】
図4を手短に参照すれば、表1は、セグメント同期パターン(S)、セグメント同期パターン(Ss)のスケーリングされたバージョン、及びデータ信号101−1内のセグメント同期パターンとSsとを互いに関係付けた場合の図3の相関器505の相関(C)の結果を示す。長さNの実ベクトルA及びBの相関の公式は、
【数1】
によって定義される長さ2*N−1のベクトルである。表1では、Cにおける+20の中心値は、ピーク位置に相当する。表1におけるCの−10、+5及び−5の値は、両方のパターンが時間的に互いにオフセットされた場合の部分的な相関値に相当し、よって、完全に一致しない。しかし、こうした部分値は、ピーク位置における値を超えるものでない。
【0016】
図3を参照すれば、加算器560−5は、出力信号506を介してCを積分器510に供給する。積分器は、相関器505からの出力信号506を832シンボル長積分器、すなわち、VSBデータ・セグメントの大きさによって累算する。シンボル・インデックス102は、元々ゼロにリセットすることができ、0から831までのパターンを繰り返して、新たな入力データ・シンボル毎に1、増やされる。シンボル・インデックス102は、例えば、プロセッサ(図示せず)によって供給される。当該技術において知られているように、受信されたVSBデータはランダムであり、データ・シンボル位置での積分器値は、ゼロに向けて平均化される傾向にあることになる。しかし、4つのセグメント・シンボルは832シンボル毎に繰り返されるので、セグメント同期位置での積分器値は、信号強度に比例して増えることになる。チャネル・インパルス応答がマルチパス又はゴーストをもたらす場合、セグメント同期シンボルは、マルチパス遅延位置でも現れることになる。その結果、マルチパス遅延位置での積分器値も、ゴースト振幅に比例して増えることになる。しかし、ゴーストは、定義上、主経路よりも小さいので、積分器510の832シンボル位置のピーク・サーチは、最大の積分器値での正しいセグメント同期位置をもたらすことになる。この点で、ピーク・サーチ・エレメント515は、積分器510の832シンボル位置のピーク・サーチを前述のピーク位置について行う。ピーク・サーチ・エレメント515からの出力信号は、積分器510に記憶された832の値のうちのピーク値に相当する。セグメント同期生成器520は、ピーク値及び関連したシンボル・インデックス値に(信号102を介して)応じ、セグメント同期フラグ521を生成する。例えば、セグメント同期フラグ521は、セグメント同期信号の4つのシンボル中に「1」の値を有し、その他の場合に「0」の値を有する2値信号である。あるいは、セグメント同期フラグは、セグメント同期信号の第1のシンボル中に「1」の値に設定し、それ以外の場合には、「0」の値に設定することが可能である。(セグメント同期フラグを用いることは、本発明の概念に適切でなく、そういうものとして、本明細書では説明しない。)
上記に鑑みて、何れかの同期信号又は同期パターンを、セグメント同期検出器500の意味合いで前述した原理と同様な原理によって検出することができる。例えば、フィールド同期検出システムは、前述の原理と同じ原理に従い、本明細書では説明しないものとする。なお、セグメント同期検出器との差は以下に示す。(a)相関器は、フィールド同期パターンにおいて存在している既知のPN系列について信号101−1をサーチし、(b)積分器の長さは、フィールドのシンボル長に関連し、(c)(この場合、フィールド同期検出器によって供給される)フィールド同期フラグは、フィールド同期の持続時間を有し得るものであるか、又はフィールド同期の第1のシンボルを示し得る。
【0017】
実相関器が受信信号の同相成分のみを用いるため、受信器における実相関器の使用が受信器特性を制限し得るということが明らかになった。したがって、かつ、本発明の原理によれば、受信器は、復調された信号を供給する復調器と、復調された信号をデータ・パターンに対して互いに関係付ける複素相関器とを備える。
【0018】
特に、VSB変調信号では、同相(I)成分及び直交(Q)成分はヒルバート変換によって互いに関係付けられる、すなわち、QはIのヒルバート変換である。ヒルバート変換は、信号の90°位相回転を行う線形演算である。信号のI成分及びQ成分は互いに関係付けられているが、相加性白色ガウス雑音(AWGN)プロセスのI及びQの雑音成分は、互いに関係付けられていないので、相関器特性、及び、よって、受信器特性は、I成分及びQ成分を処理することによって向上させることが可能である。よって、かつ、本願の概念によれば、受信器は、訓練信号、又は、受信信号のQ成分並びにI成分における訓練パターンをサーチするための複素相関器を含む。
【0019】
本発明の原理による例証的なテレビジョン受像機10の概要レベルの構成図を図5に示す。テレビジョン(TV)受像器10は、受信器15及びディスプレイ20を含む。例証的には、受信器15はATSC互換受信器である。なお、受信器15は、NTSC(米国テレビジョン方式委員会)互換でもあり得る、すなわち、TV受像機10がNTSC放送又はATSC放送からビデオ・コンテンツを表示することができるようにNTSC動作モード及びATSC動作モードを有する。本発明の概念の説明を簡単にするために、本明細書及び特許請求の範囲では、ATSC動作モードのみを説明する。受信器15は、例えば、その上でビデオ・コンテンツを視るためにディスプレイ20に印加するHDTV(高品位TV)ビデオ信号をそこから回復するよう処理するために、放送信号11を(例えば、アンテナ(図示せず)を介して)受信する。本発明の原理によれば、受信器15は、1つ又は複数の複素相関器を含む。例証の目的のみで、本発明の概念は、セグメント同期検出器の意味合いで説明する。しかし、本発明の概念は、そのように限定されるものでない。
【0020】
受信器15の適切な部分の例証的な構成図を図6に示す。復調器275は、IF周波数(FIF)を中心とする信号274を受信し、6MHz(百万ヘルツ)に等しい帯域幅を有する。復調器275は、本発明の原理によって、セグメント同期フラグ521を供給するうえで用いるために復調信号201のI成分及びQ成分に対して複素相関を行う複素相関器(セグメント同期検出器)200を備えるセグメント同期検出器に、復調された受信ATSC−DTV信号201を供給する。特に、図7に示すように、かつ以下に更に説明するように、セグメント同期検出器200の複素相関器は、復調信号201の同相成分201−1をATSCセグメント同期パターンと互いに関係付け、復調信号201の直交成分201−2をATSCセグメント同期パターンのヒルバート変換と互いに関係付ける。(なお、本発明の概念に適切でない受信器15の他の処理ブロック、例えば、信号274等を供給するためのRFフロントエンドは本明細書に示していない。)
次いで図7に移れば、本発明の原理によるセグメント同期検出器200の例証的な構成図を示す。図7から分かり得るように、セグメント同期検出器200は、複素相関器205が復調信号201の同相(I)成分201−1及び直交(Q)成分201−2を処理してセグメント同期パターンをサーチする以外は図3のセグメント同期検出器500と同様である。
【0021】
次に図8を参照すれば、複素相関器205の例証的な構成図を示す。相関器205は、同相処理部、直交処理部、及び合成器245を備える。同相処理部は、タップ255−1、255−2、255−3及び255−4によって表される4タップの遅延線255、タップ毎に1つずつである乗算器260−1、260−2、260−3及び260−4によって表される相当する乗算器組(260)、及び加算器260−5である。単純にするように、適切なクロッキング信号は図8に示していない。そういうものとして、相関器205のこの部分は、遅延線255によって復調信号201の同相成分201−1を遅延させるものであり、図8から分かり得るように、セグメント同期パターンの前述のスケーリングされたバージョンであるパターン(+1 −1 −1 +1)によって、適切なタップ出力を(乗算器260によって)乗算する。最後に、4つの乗算器出力が一緒に(加算器260−5によって)加算される。次に直交処理部に移れば、この部は、タップ265−1、265−2、265−3及び265−4によって表される4タップの遅延線265、タップ毎に1つずつである乗算器270−1、270−2、270−3及び270−4によって表される相当する乗算器組(270)、及び加算器270−5である。やはり、単純にするために、適切なクロッキング信号は図8に示していない。相関器205の直交部分は、復調信号201の直交成分201−2を遅延線265によって遅延させ、図8から分かり得るように、以下に説明するように、セグメント同期パターンのヒルバート変換のスケーリングされたバージョン(これは、セグメント同期パターンの直交成分としても本明細書に表す)であるパターン(+1 +1 −1 −1)によって、適切なタップ出力を(乗算器270によって)乗算する。最後に、4つの乗算器出力が一緒に(加算器270−5によって)加算される。
【0022】
図9を簡単に参照すれば、表2は、本発明の原理によれば、受信信号のQ成分に関する更なるパターンを示す。特に、表2は、セグメント同期パターンのヒルバート変換Sh、相当するスケーリングされたバージョンSsh、及びShとSshとの間の相関(すなわち、式(1)(上記)によるCh)を示す。本発明の原理によれば、(図4に示す)表1のCと表2のChとの間の、結果として生じる類似性は次に、図8の複素相関器205を用いることによって活用される。
【0023】
次に図8に戻れば、複素相関器205の合成器245は、C及びChを合成して、Ccombを作成する。例証的には、Ccomb=C+Chである。この場合、Ccomb=(0−20 0+40 0−20 0)である。本発明の原理によれば、部分相関値の一部は消えるが、ピーク値は2倍になり、増加された相関を示す。出力信号206(Ccomb)が図7の積分器510に施される。図7に示すセグメント同期検出器200のエレメントの残りは、前述のように機能してセグメント同期フラグ521を備える。
【0024】
なお、本発明の原理による他の変形が考えられる。例えば、合成器245は、
Ccomb=│C│+│Ch│の式によって機能することが可能であり、ここで、│x│はxの絶対値又はxの二乗を表す。この場合、絶対値を用いると、Ccomb=(+10+20+10+40+10+20+10)になる。部分相関値は何れも消えず、代わりに大きさが増加し、ピーク値は2倍になり、増加された相関を示す。
【0025】
本発明の原理による別の実施例を図10に示す。複素相関器205’は、I入力信号とQ入力信号とを取り換える以外は図8の複素相関器205と同様である。これは、本明細書では直交複素相関器としても表す。図10から分かり得るように、Q成分201−2が複素相関器205’の同相処理部に入力され、I成分201−1が複素相関器205’の直交処理部に入力される。この点で、同相処理部はSsとShとの間の相関(すなわち、Cq)を供給し、直交処理部はSshとSとの間の相関(すなわち、Cqh)を供給する。
【0026】
手短に図11を参照すれば、表3は、図10に示す実施例に関する更なるパターンCq及びCqhを示す。Cq及びCqhは、お互いの逆数であるため、相関器205’の合成器245が減算(すなわち、Ccomb=Cq−Cqh)を行う。そういうものとして、Ccomb=(+2 0−6 0+6 0−2)となる。
【0027】
本発明の原理による別の実施例では、相関器205’の合成器245は、Ccomb=│Cq│+│Cqh│の式によって機能し、ここで│x│はxの絶対値又はxの二乗を表す。この場合、絶対値を用いれば、Ccomb=(+2 0+6 0+6 0+2)となる。
【0028】
受信器に用いる、本発明の原理による例証的な流れ図を図12に示す。工程310では、受信器は、同相(I)成分及び直交(Q)成分を有する入力信号を受信する。工程315では、受信器は、成分のうちの一方をデータ・パターンと互いに関係付け、成分の他方を、データ・パターンのヒルバート変換と互いに関係付ける。工程315の例は、データ・パターンとしてのATSCセグメント同期信号の意味合いにおいて先行して設けられた。例えば、図8の相関器205に示すように、I成分をセグメント同期信号と互いに関係付けることが可能である一方、Q成分を、セグメント同期信号のヒルバート変換と互いに関係付けることが可能である。逆に、図10の相関器205’に示すように、I成分をセグメント同期信号のヒルバート変換と互いに関係付けることが可能である一方、Q成分を、セグメント同期信号と互いに関係付けることが可能である。最後に、工程320では、合成された相関信号Ccombを出力信号として供給する。
【0029】
本発明の概念は、受信器の他の処理エレメントへの適用を有する。例えば、複素入力信号(すなわち、同相成分及び直交成分を備えた)セントロイド算出器に本願の概念を適用することによって、複素相関器のより好適な特性によってチャネル仮想中心の推定がより好適になる。更に、セントロイド算出器へ本願の概念及び非漏れ積分器を施すことによって、復調信号におけるシンボル・タイミング位相不定性にセントロイド算出器が影響を受けないことになる。
【0030】
本願の概念を説明する前に、ATSC−DTVシステムに用いる、先行技術のセントロイド算出器100の構成図を図13に示す。セントロイド算出器100は、相関器105、漏れ積分器110、二乗器115、ピーク・サーチ・エレメント120、乗算器125、第1の積分器130、第2の積分器135及び位相検出器140を備える。セントロイド算出器100は、セグメント同期信号、シンボル毎一サンプル、及び同相(実)成分(101−1)のみを備えるデータ入力信号101に基づいている。データ入力信号101は、復調器(図示せず)によって供給される復調された受信ATSC−DTV信号を表す。
【0031】
データ入力信号101−1が、その中のセグメント同期信号(又はパターン)を検出するために相関器105に印加される。前述の通り、セグメント同期信号は、反復パターンを有し、2つの隣接したセグメント同期信号間の距離は幾分大きい(832シンボル)。そういうものとして、セグメント同期信号を用いてチャネル・インパルス応答を推定することが可能であり、チャネル・インパルス応答は同様に、チャネルの仮想中心又はセントロイドを推定するのに用いられる。相関器105はデータ入力信号101の同相成分101−1を、ATSC−DTVセグメント同期の特性、すなわち、2値表現で〔1 0 0 1〕又はVSBシンボル表現で〔+5 −5 −5 +5〕とお互いに関係付ける。相関器105からの出力信号は次いで漏れ積分器110に印加される。漏れ積分器110は832シンボル長を有し、これは、一セグメント内のシンボル数に等しい。VSBデータはランダムであるので、データ・シンボル位置での積分器値はゼロに向けて平均化されることになる。しかし、4セグメント同期シンボルは832シンボル毎に繰り返すので、セグメント同期位置での積分器値は信号強度に対して比例して増えることになる。チャネル・インパルス応答がマルチパス又はゴーストをもたらす場合、セグメント同期シンボルは、それらのマルチパス遅延位置で現れることになる。その結果、マルチパス遅延位置での積分器値も、ゴースト振幅に比例して増えることになる。漏れ積分器は、ピーク・サーチが行われた後、積分器が新たな数を加算する都度一定値を減算するようなものである。これは、ハードウェア・オーバフローを避けるために行われる。832個の漏れ積分器値は、二乗器115によって二乗される。結果として生じる出力信号、すなわち相関器信号116は、ピーク・サーチ・エレメント120及び乗算器125に送られる。(なお、二乗の代わりに、エレメント115はその入力信号の絶対値を供給し得る。)
各漏れ積分器値(相関器信号116)がピーク・サーチ・エレメント120に入力されると、相当するシンボル・インデックス値(シンボル・インデックス119)もピーク・サーチ・エレメント120に入力される。シンボル・インデックス119は、ゼロに元々リセットすることができるものであり、0から831までのパターンを繰り返し、新たな漏れ積分器値毎に1、増やされる。ピーク・サーチ・エレメント120は、832の二乗積分器値(相関器信号116)にわたってピーク・サーチを行い、ピーク信号121を供給する。ピーク信号121は、832の二乗積分器値のうちの最大値に関連したシンボル・インデックスに相当する。ピーク信号121は、チャネルの初期中心として用いられ、第2の積分器135(以下に説明する)に印加される。
【0032】
漏れ積分器値(相関器信号116)は又、現行シンボル・インデックスから初期中心までの相対距離によって重み付けされ、重み付けされた中心位置が次いで帰還ループ又はセントロイド算出ループによって判定される。セントロイド算出ループは、位相検出器140、乗算器125、第1の積分器130及び第2の積分器135を備える。この帰還ループは、ピーク・サーチが行われた後に始まり、第2の積分器135は初期中心値又はピーク値によって初期化される。位相検出器140は、現行シンボル・インデックス(シンボル・インデックス119)と仮想中心値136との間の距離(信号141)を算出する。重み付けされた値126は乗算器125を介して算出され、第1の積分器130に供給され、それは、832シンボル群毎に重み付けされた値を累算する。前述の通り、第2の積分器135はピーク値に当初設定され、次いで、第1の積分器130の出力を累算して仮想中心値又はセントロイド136を作成するよう進む。図13における積分器は全て、暗黙のスケーリング係数を有する。
【0033】
仮想中心値136が判定されると、セグメント同期信号やフレーム同期信号などのVSB参照信号を受信器において局所で再生成(図示せず)させて、仮想中心で整列させる。その結果、等化データ出力を仮想中心で整列させることになるようにチャネルを等化するようタップが等化器において増えることになる。
【0034】
複素データ入力信号(同相成分及び直交成分)、シンボル毎に2つのサンプル、又はフレーム同期ベースの設計への、図13に関して前述したシステムの拡張は、図13から容易に導かれる。
【0035】
例えば、データ入力信号が複素の場合、セントロイド算出器(この場合、「複素セントロイド算出器」としても表す)は、図14に示す入力データ信号の同相(I)成分及び直交(Q)成分を別個に処理する。特に、入力データ信号の同相成分(101−1)は、相関器105−1、漏れ積分器110−1及び二乗器115−1を介して処理される一方、入力データ信号の直交成分(101−2)は、相関器105−2、漏れ積分器110−2及び二乗器115−2を介して処理される。こうしたエレメントのそれぞれは、図13において前述したものと同様に機能する。図示していないが、シンボル・インデックスは、何れかの二乗器エレメントから生成することが可能である。各二乗器(115−1及び115−2)からの出力信号は、相関器信号116を供給するよう加算器180を介して一緒に加算され、処理の残りは、図13に関して前述したものと同じである。
【0036】
シンボル毎2サンプルのセントロイド算出器に関しては、T/2間隔を例証的に用いる(ここで、Tはシンボル間隔に相当する)。例えば、セグメント同期検出器は、T/2の間隔のセグメント同期特性に合致するT/2の間隔の値を有し、漏れ積分器は、2×832長であり、シンボル・インデックスは、0,1,2,…,831の代わりに0,0,1,1,2,2,…,831,831のパターンに従う。
【0037】
最後に、フレーム同期信号に基づいたセントロイド算出器の場合、以下のことに留意すべきである。フレーム/フィールド同期信号は832シンボルから成り、313セグメント毎に到着するので、これは、チャネルにおける実用的なマルチパス分布よりも長く、よって、何れかのマルチパス信号の位置を判定するうえでの問題はない。図13中のセグメント同期検出器ではなく非同期PN511相関器を用いて、(832のフレーム同期シンボルのうちから、PN511のみを用いた場合)チャネル・インパルス応答を測定することができる。(PN511は、疑似乱数系列であり、前述のATSC標準に記述されている。)更なる処理は、処理が少なくとも一フィールド全体の持続時間、行われる以外は図13について前述したものと同様である。相関値をピーク・サーチ関数ブロックに送って一フィールド時間にわたってピーク・サーチを行う。このピーク値のシンボル・インデックスをよって、初期仮想中心点として用いるものとする。初期中心点が判定されると、相関結果は、相関出力が所定の閾値を超えており、初期仮想中心点の前後の特定の範囲内にある場合にのみ解析される。例えば、初期中心位置の周りに+/−500シンボルがあることによって、相関出力が所定値を上回ることが位置付けられる。厳密な範囲は、実環境において生じることが期待される実用的なチャネル・インパルス応答と、利用可能な等化器の長さとによって判定される。処理の残りは、図13について前述したものと同様である。
【0038】
次に図15に移れば、本願の原理によるセントロイド算出器600の例証的な実施例を示す。セントロイド算出器600は図13のセントロイド算出器100と同様である、例えば、セントロイド算出器600は、セグメント同期信号、及びシンボル毎1サンプルに基づいている。しかし、セントロイド算出器100と比較して、セントロイド算出器600は複素相関器205を含む。よって、セントロイド算出器600は、同相(I)成分及び直交(I)成分を備えた複素データ入力を必要とする。前述の通り、複素相関器205は、入力データ信号のQ成分並びにI成分において同期パターンをサーチする。なお、積分器110は832シンボルの漏れ積分器である。漏れ積分器は、ピーク・サーチの後、定数を減算して、ハードウェア・オーバフローを避ける。
【0039】
本発明の原理による別の例証的な実施例を図16に示す。図16は、前述の複素セントロイド算出器と同様に、しかし複素相関器によってセントロイド算出器600が動作することを可能にする、セントロイド算出器600の適切な修正部分を示す。図16に示す配置は、以下の点以外は図14に示す配置と同様である。すなわち、複素相関器205が復調信号201のI成分及びQ成分を処理する一方、別の形態の複素相関器(前述の直交複素相関器205’)も復調信号201のI成分及びQ成分を処理する。さもなければ、図16の配置の動作は、図14の配置の前述の動作と同様である。
【0040】
チャネル仮想中心を判定する前述の手法が、データ入力上の誤ったシンボル・タイミング位相の、セントロイド算出器に対する影響、及び、よってセントロイド推定に対する影響に対処していないことが明らかになった。すなわち、前述の手法は、セントロイド算出における復調器シンボル・タイミング不定性の影響に対処するものでなく、この不定性を補正しようとするものでない。したがって、かつ、本発明の原理によれば、本発明の別の実施例は、複素算出器を含むセントロイド算出器を提案しており、シンボル・タイミング不定性の影響を受けない。
【0041】
次に図17に移れば、本願の原理によるセントロイド算出器650の例証的な実施例を示す。セントロイド算出器650は、図15のセントロイド算出器600と同様である、例えば、セントロイド算出器650は、セグメント同期信号、及びシンボル毎1サンプルに基づいており、複素相関器205を含む。しかし、セントロイド算出器600に対し、積分器は、832シンボルの非漏れ積分器185である。非漏れ積分器は、ハードウェア・オーバフローを避けるようピーク・サーチ後に一定値を減算するものでない。そのかわりに、積分器ワード・サイズは、オーバフローがない算出を可能にするよう念入りに選ばなければならない。
【0042】
非漏れ相関器が後続する複素相関を備えたセグメント同期検出を用いるメリットは、復調信号201におけるシンボル・タイミング不定性に係わらず、セントロイド算出器が、正しい復調器サンプルによって達成されることになるものと同じピーク値を達成することになるという観察から生まれる。その結果、セントロイド算出器650は、シンボル・タイミング不定性の影響を受けない。これは、複素相関器及び漏れ積分器を備えるセントロイド算出器を用いる、図13のセントロイド算出器100並びに図15及び図16のセントロイド算出器600に対する明らかな利点である。セントロイド算出器650を用いる更なる利点は、ゴースト遅延がシンボル周期の倍数で必ずしもないことになるという理由による。よって、一部のゴースト・ピークは、シンボル周期の分数サンプル上にあり得る。複素相関器を用いることによって、セントロイド算出器650がサンプルと無関係になることが可能になるので、セントロイド算出器650は、正確にゴースト・ピークを、こうしたピークが分数サンプルと関連していても認識することにもなる。
【0043】
本発明の原理による別の例証的な実施例を図18に示す。図18は、前述の複素セントロイド算出器と同様に、しかし複素相関器によってセントロイド算出器650が動作することを可能にするセントロイド算出器650の適切な修正部分を示す。図18に示す配置は、非漏れ積分器185−1及び185−2も図18に示すように用いられる以外は図16に示す配置と同様である。さもなければ、図18の配置の動作は、図16の配置の前述の動作と同様である。
【0044】
次に図19に移れば、別の例証的な実施例を示す。この実施例は、乗算器125によって行われる重み付け処理に先行してリミタ265を含んでいる以外は図15及び図17に示すものと同様である。リミタ265の動作は、図20の例証的な流れ図に示す。工程705では、リミタ265は、ピーク・サーチの完了を待つ。ピーク・サーチが完了すると、リミタ265は、工程710で、閾値を設定する。例証的には、閾値は(peak/k)に等しくなるように設定され、ここでKの値は実験的に選ばれる。工程715では、リミタ265は、相関器値(116)が設定閾値よりも大きいかを判定する。相関器値(116)が設定閾値よりも大きい場合、リミタ265は、工程720で相関値(116)をリミティングしない、すなわち、信号266の値は図19における信号116の値に等しい。しかし、相関器値(116)が閾値以下の場合、リミタ265は、工程725で、信号266の値を例証的なリミタ値Lに等しくなるように設定する。この例では、Lはゼロに等しい。その結果、工程725では、信号266はゼロに等しくなるように設定される。
【0045】
リミタ265の背後にある考え方は、相関の概念と、ランダムなデータ及び雑音が積分器においてゼロに累算されるという前提が、非有界系列サイズに達する多数のサンプルを前提としていることによる。しかし、セントロイド算出及び結果として生じる積分は、限定量の時間内に起こる。実際に、セントロイド算出の時間は、受信器がロックするための合計時間に影響を及ぼすので、セントロイド算出器時間を最小にすることに関心がある。したがって、積分器における、データ入力及び実際の入力雑音に関連した残留雑音が存在し、これは、セントロイド算出器処理時間の関数でもある。この残留雑音は、ゼロdBゴースト又はゼロに近いdBのゴーストを備えるチャネル以外では、ピーク・サーチに影響を及ぼす可能性が低い。しかし、重み付けされた値(図19の信号126)は、現行シンボルから中心までの距離と、相関値との積であり、ピーク値から遠く離れた位置における雑音は、最終的な算出にかなり寄与し得る。そういうものとして、前述のリミタを設けることによって、相関器積分器における残留雑音をなくし、加重値推定を向上させることが可能である。このリミタは、閾値が、考えられる復調器のキャリア位相及びシンボル・タイミングの不定性、又は自動利得制御(AGC)の不一致による不一致処理における過剰なリミティングをなくす、ピーク値の関数である場合により効率的である。
【0046】
リミタの使用の欠点は、理論上は、微小レベルがリミタ265によって無視されることになるので、セントロイド算出器は、特定の強度レベルを超えるゴーストを含むことのみに限定されることになることである。しかし、工程710における定数Kの適切な選択は、どの相関値が残留雑音の結果であるかと、どの値が実際のゴーストであるかとのバランスを規定することになる。残留雑音レベルを下回るゴースト強度レベルは、リミタの有無にかかわらずセントロイド算出器によって適切に対処されないことになる。例として、K=26の場合、リミタは、主信号を約18dB下回るゴーストを無視する。
【0047】
セントロイド算出器にリミタを追加することは、本明細書記載の実施例全てに該当する。例えば、図13に示すセントロイド算出器配置である。
【0048】
本発明の原理によって本明細書に記載した例証的な実施例は全て、ATSC−DTVシステムのフィールド同期に対して相関を行うことに拡張することができる、すなわち、相関は、フィールド同期を構成する4成分PN系列、又はその短縮バージョンに対して行われる。相関C及びヒルバート相関Chは、表1及び表2並びに式(1)におけるように、フィールド同期について同様に得ることが可能である。
【0049】
前述に鑑みれば、本発明の原理によって本明細書に記載された例証的な実施例は全て、訓練パターン、又はその短縮バージョンに対して相関を行うことに拡張することができる。相関C、Ch、Cq及びCqhは、表1及び表2並びに式(1)におけるように、何れの訓練パターンについても同様に得ることが可能である。
【0050】
前述は本発明の原理を例証するものに過ぎない。よって、当業者は、本明細書に明示していないが、本発明の原理を実施し、その趣旨及び範囲内にある別の数多くの配置を考え出すことができるものである。例えば、別個の機能エレメントの意味合いで例証しているが、こうした機能エレメントは、1つ又は複数の集積回路(IC)上に実施することができる。同様に、別個のエレメントとして示しているが、そうしたエレメントの何れか又は全てを、関連したソフトウェア(例えば、図示した(例えば、図12の)1つ又は複数の工程に相当する)を実行するストアード・プログラム制御プロセッサ(例えば、ディジタル信号プロセッサ)において実施することができる。更に、TV受像機10内に組み込まれたエレメントとして示しているが、その中のエレメントは、その何れかの組み合わせにおいて別々の装置に分散させることができる。例えば、図5の受信器15は、装置又はボックス(装置から物理的に別個のセットトップ・ボックスなど)若しくはディスプレイ20等を組み入れたボックスの一部であり得る。更に、地上波放送の意味合いで説明しているが、本発明の原理は、他のタイプの通信システム(例えば、衛星、ケーブル等)に適用可能である。よって、数多くの修正を例証的な実施例に行うことができ、特許請求の範囲記載の、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の配置を考え出すことができるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来技術のATSC―DTV残留側波帯(VSB)データ・フレーミング構造を示す図である。
【図2】従来技術のATSC―DTVフィールド同期構造を示す図である。
【図3】従来技術のATSC―DTVセグメント同期検出器を示す図である。
【図4】表1を示す図である。
【図5】本発明の原理を用いる受信器の例証的な概略レベルの構成図を示す図である。
【図6】本発明の原理を用いる受信器の例証的な部分を示す図である。
【図7】本発明の原理を用いる受信器の例証的な部分を示す図である。
【図8】本発明の原理による複素相関器の例証的な実施例を示す図である。
【図9】表2を示す図である。
【図10】本発明の原理による複素相関器の別の例証的な実施例を示す図である。
【図11】表3を示す図である。
【図12】本発明の原理による例証的な流れ図である。
【図13】従来技術のセントロイド算出器を示す構成図である。
【図14】複素セントロイド算出器において用いる複素信号の処理の構成図である。
【図15】本発明の原理によるセントロイド算出器の例証的な実施例を示す図である。
【図16】本発明の原理によるセントロイド算出器の一部分の別の例証的な実施例を示す図である。
【図17】本発明の原理によるセントロイド算出器の別の例証的な実施例を示す図である。
【図18】本発明の原理によるセントロイド算出器の一部分の別の例証的な実施例を示す図である。
【図19】本発明の原理による他の例証的な実施例を示す図である。
【図20】本発明の原理による他の例証的な実施例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に通信システムに関し、特に受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
ATSC−DTV(米国高度テレビジョン方式委員会・ディジタル・テレビジョン)システム(例えば、United States Advanced Television Systems Committee, 「ATSC Digital Television Standard」, Document A/53, September 16, 1995、及び「Guide to the Use of the ATSC Digital Television Standard」, Document A/54, October 4, 1995参照。)のような、現代のディジタル通信システムでは、高度変調、チャネル符号化及び等化が通常、施される。受信器では、復調器は一般にキャリア位相及び/又はシンボル・タイミングの不定性を有する。等化器は一般に、DFE(判定帰還等化器)タイプ又はその特定の変形であり、有限長を有する。激しく歪んだチャネルでは、信号を首尾良く処理し、歪みを補正する最良の機会を等化器に与えるうえでチャネル・インパルス応答の仮想中心が分かることが重要である。一手法は、セグメント同期化(同期)信号に基づいて適応型等化器のチャネルの想中心を算出するセントロイド算出器を用いるものである。別の手法は、フレーム同期信号に基づいて適応型等化器のチャネル仮想中心を算出するセントロイド算出器を用いるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この点で、受信されるVSB同期信号又は訓練信号の検出は通常、実相関器の使用を活用する。実相関器は、受信信号の同相部分を既知の訓練パターン又は同期パターンと比較する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実相関器が受信信号の同相成分のみを用いるため、受信器における実相関器の使用が受信器の特性を制限し得るということが明らかになった。したがって、かつ、本発明の原理によれば、受信器は、復調された信号を供給する復調器と、復調された信号をデータ・パターンに対して互いに関係付ける複素相関器とを備える。
【0005】
本発明の実施例では、ATSC受信器は、復調器及び複素相関器を備える。復調器は、受信されたATSC―DTV信号を復調し、復調された信号を供給する。複素相関器は、復調された信号の同相成分をATSCセグメント同期パターンに対して互いに関係付け、復調された信号の直交成分を、ATSCセグメント同期パターンのヒルバート変換に対して互いに関係付ける。
【0006】
本発明の別の実施例では、ATSC受信器は、復調器及び複素相関器を備える。復調器は、受信されたATSC―DTV信号を復調し、復調された信号を供給する。複素相関器は復調信号の直交成分を、ATSCセグメント同期パターンに対して互いに関係付け、復調信号の同相成分を、ATSCセグメント同期パターンのヒルバート変換に対して互いに関係付ける。
【0007】
本発明の別の実施例では、ATSC受信器は、復調器、及び複素相関器を含むセントロイド算出器を備える。復調器は、受信されたATSC―DTV信号を復調し、復調された信号を供給する。セントロイド算出器は、復調された信号を処理して、例えば、適応型等化器において用いるチャネル仮想中心を判定する。セントロイド算出器において複素相関器を用いることによって、復調された信号におけるシンボル・タイミング位相不定性にセントロイド算出器が影響されないことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の特徴によれば、前述のセントロイド算出器は、内部リミタを備え、それによって特性が改善される。
【実施例】
【0009】
本発明の概念以外には、添付図面に示すエレメントは周知であり、詳細に説明しない。更に、テレビジョン放送及び受信器をよく知っていることを前提とし、本明細書では詳細に説明しない。例えば、本発明の概念以外では、TV標準(NTSC(米国テレビジョン方式委員会)、PAL(位相反転走査線)、SECAM(順次式カラー・メモリ)及びATSC(高度テレビジョン方式委員会)(ATSC)の現在の勧告、及び提案されている勧告をよく知っていることを前提とする。同様に、本発明の概念以外では、送信の概念(8値残留側波帯(8−VSB)、直交振幅変調(QAM)など)と、受信器構成部分(無線周波数(RF)フロントエンドなど)、又は受信器部(低雑音ブロック、チューナ、復調器、相関器、漏れ積分器、及び二乗器など)とを前提とする。同様に、伝送ビット・ストリームを生成するフォーマッティング及び符号化の方法(動画像専門家グループ(MPEG)−2方式標準(ISO/IEC(13818−1))は周知であり、本明細書では説明しない。更に、本発明の概念は、そういうものとして本明細書では説明しない通常のプログラミング手法を用いて実施することができる。最後に、添付図面上の同じ符号は同様なエレメントを表す。
【0010】
前述のATSC−DTV(米国高度テレビジョン方式委員会・ディジタル・テレビジョン)システムのような、現代のディジタル通信システムでは、信号検出に相関器を使用することは慣用的なものである。ATSC−DTVシステムでは、変調システムは、8値レベル(±1、±3、±5、±7)を備えた残留側波帯(VSB)であり、2つのタイプの同期化信号又は訓練信号(セグメント同期信号及びフィールド同期信号)が存在する。これは図1に示す。図1は、ATSC−DTVシステムにおけるVSBディジタル・シンボル系列がデータ・セグメント及びデータ・フィールドにおいて構造化されていることを示す。
【0011】
まずデータ・セグメントについてであるが、これは、最初の4シンボルがセグメント同期信号を構成する832シンボルから成る。セグメント同期信号は、832シンボル毎にデータ・シンボル系列において現れる2値(2進)の4シンボルの、符号化されていないパターンである。2値表現は(1 0 0 1)であり、シンボル表現は(+5 −5 −5 +5)である。
【0012】
比較として、データ・フィールドは、第1のセグメントがフィールド同期信号を構成する313データ・セグメントから成る。フィールド同期信号も、図2に示すようにいくつかの疑似雑音(PN)系列及び予約パターンから成る2値(2進)の、符号化されていないパターンである。当該技術分野において知られているように、フィールド同期信号の訓練部分は、PN系列(PN511及びPN63)から成る。PN511は、多項式X9+X7+X6+X4+X3+X+1及び事前ロード値(010000000)によって定義されたシフトレジスタによって生成される疑似雑音系列である。PN63は、多項式X6+X+1及び事前ロード値(100111)によって規定されたシフトレジスタによって生成された疑似乱数系列である。PN63は、3回繰り返され、中央のPN63は、1つおきのフィールド同期毎に反転されている。
【0013】
セグメント同期データ・パターン及びフィールド同期データ・パターンは分かっているので、ATSC−DTV受信器の同期化エレメント、タイミング回復エレメント及び等化エレメントにおいて用いられる種々のアルゴリズムは、この情報を用いて、セグメント同期パターン及び/又はフィールド同期パターンと、受信されたATSC−DTV信号とを互いに関係付けることによって受信器特性を向上させる。特に、受信されたATSC−DTV信号に実相関を施すことが慣用的である。すなわち、受信されたATSC−DTV信号の同相成分は、個別の同期パターンの存在を検出するためにセグメント同期データ・パターン及び/又はフレーム同期データ・パターンに対して互いに関係付ける。(単に「相関器」としても通常表す)実相関器が用いられるが、それは、ディジタルVSB変調信号が離散値を有する一方、直交成分は、一定範囲の非離散値を有するからである。例えば、ATSC−DTV信号では、VSB同相成分は8値(±1、±3、±5、±7)を有する一方、直交成分は、実際に±7を超えて延びる範囲内で非離散的であり、ヒルバート変換及び入力データの関数である。
【0014】
ATSC−DTVセグメント同期検出器500の意味合いにおける従来技術の相関器の構成図を図3に示す。ATSC−DTVセグメント同期検出器500は、相関器505、832長積分器510(以降、単に積分器510)、ピーク・サーチ・エレメント515及びセグメント同期生成器520を備える。特に、受信されたATSC信号は、復調器(図示せず)によって復調され、復調器は復調信号101を供給する。同相(I)成分101−1が相関器505に入力され、相関器505は、受信ATSC−DTV信号におけるセグメント同期信号の検出のために、既知のATSC−DTVセグメントと信号101−1を互いに関係付ける。前述の通り、ATSC−DTVセグメント同期信号は、832シンボル毎にデータ・シンボル系列に現れる2値(2進)の4シンボルの、符号化されていないパターンである。2値表現は(1 0 0 1)であり、シンボル表現は(+5 −5 −5 +5)である。相関器105は、タップ555−1、555−2、555−3及び555−4によって表される4タップの遅延線555、タップ毎に1つ、乗算器560−1、560−2、560−3及び560−4のそれぞれによって表される相当する乗算器(560)組、及び加算器560−5を備える。単純にするように、適切なクロッキング信号は図3に示すものでない。そういうものとして、相関器505は、同相デ―タ入力信号101−1を遅延線555によって遅延させ、図3から分かり得るように、セグメント同期パターンのスケーリングされたバージョンのパターン(+1 −1 −1 +1)によって適切なタップ出力を(乗算器560を介して)乗算する。
【0015】
図4を手短に参照すれば、表1は、セグメント同期パターン(S)、セグメント同期パターン(Ss)のスケーリングされたバージョン、及びデータ信号101−1内のセグメント同期パターンとSsとを互いに関係付けた場合の図3の相関器505の相関(C)の結果を示す。長さNの実ベクトルA及びBの相関の公式は、
【数1】
によって定義される長さ2*N−1のベクトルである。表1では、Cにおける+20の中心値は、ピーク位置に相当する。表1におけるCの−10、+5及び−5の値は、両方のパターンが時間的に互いにオフセットされた場合の部分的な相関値に相当し、よって、完全に一致しない。しかし、こうした部分値は、ピーク位置における値を超えるものでない。
【0016】
図3を参照すれば、加算器560−5は、出力信号506を介してCを積分器510に供給する。積分器は、相関器505からの出力信号506を832シンボル長積分器、すなわち、VSBデータ・セグメントの大きさによって累算する。シンボル・インデックス102は、元々ゼロにリセットすることができ、0から831までのパターンを繰り返して、新たな入力データ・シンボル毎に1、増やされる。シンボル・インデックス102は、例えば、プロセッサ(図示せず)によって供給される。当該技術において知られているように、受信されたVSBデータはランダムであり、データ・シンボル位置での積分器値は、ゼロに向けて平均化される傾向にあることになる。しかし、4つのセグメント・シンボルは832シンボル毎に繰り返されるので、セグメント同期位置での積分器値は、信号強度に比例して増えることになる。チャネル・インパルス応答がマルチパス又はゴーストをもたらす場合、セグメント同期シンボルは、マルチパス遅延位置でも現れることになる。その結果、マルチパス遅延位置での積分器値も、ゴースト振幅に比例して増えることになる。しかし、ゴーストは、定義上、主経路よりも小さいので、積分器510の832シンボル位置のピーク・サーチは、最大の積分器値での正しいセグメント同期位置をもたらすことになる。この点で、ピーク・サーチ・エレメント515は、積分器510の832シンボル位置のピーク・サーチを前述のピーク位置について行う。ピーク・サーチ・エレメント515からの出力信号は、積分器510に記憶された832の値のうちのピーク値に相当する。セグメント同期生成器520は、ピーク値及び関連したシンボル・インデックス値に(信号102を介して)応じ、セグメント同期フラグ521を生成する。例えば、セグメント同期フラグ521は、セグメント同期信号の4つのシンボル中に「1」の値を有し、その他の場合に「0」の値を有する2値信号である。あるいは、セグメント同期フラグは、セグメント同期信号の第1のシンボル中に「1」の値に設定し、それ以外の場合には、「0」の値に設定することが可能である。(セグメント同期フラグを用いることは、本発明の概念に適切でなく、そういうものとして、本明細書では説明しない。)
上記に鑑みて、何れかの同期信号又は同期パターンを、セグメント同期検出器500の意味合いで前述した原理と同様な原理によって検出することができる。例えば、フィールド同期検出システムは、前述の原理と同じ原理に従い、本明細書では説明しないものとする。なお、セグメント同期検出器との差は以下に示す。(a)相関器は、フィールド同期パターンにおいて存在している既知のPN系列について信号101−1をサーチし、(b)積分器の長さは、フィールドのシンボル長に関連し、(c)(この場合、フィールド同期検出器によって供給される)フィールド同期フラグは、フィールド同期の持続時間を有し得るものであるか、又はフィールド同期の第1のシンボルを示し得る。
【0017】
実相関器が受信信号の同相成分のみを用いるため、受信器における実相関器の使用が受信器特性を制限し得るということが明らかになった。したがって、かつ、本発明の原理によれば、受信器は、復調された信号を供給する復調器と、復調された信号をデータ・パターンに対して互いに関係付ける複素相関器とを備える。
【0018】
特に、VSB変調信号では、同相(I)成分及び直交(Q)成分はヒルバート変換によって互いに関係付けられる、すなわち、QはIのヒルバート変換である。ヒルバート変換は、信号の90°位相回転を行う線形演算である。信号のI成分及びQ成分は互いに関係付けられているが、相加性白色ガウス雑音(AWGN)プロセスのI及びQの雑音成分は、互いに関係付けられていないので、相関器特性、及び、よって、受信器特性は、I成分及びQ成分を処理することによって向上させることが可能である。よって、かつ、本願の概念によれば、受信器は、訓練信号、又は、受信信号のQ成分並びにI成分における訓練パターンをサーチするための複素相関器を含む。
【0019】
本発明の原理による例証的なテレビジョン受像機10の概要レベルの構成図を図5に示す。テレビジョン(TV)受像器10は、受信器15及びディスプレイ20を含む。例証的には、受信器15はATSC互換受信器である。なお、受信器15は、NTSC(米国テレビジョン方式委員会)互換でもあり得る、すなわち、TV受像機10がNTSC放送又はATSC放送からビデオ・コンテンツを表示することができるようにNTSC動作モード及びATSC動作モードを有する。本発明の概念の説明を簡単にするために、本明細書及び特許請求の範囲では、ATSC動作モードのみを説明する。受信器15は、例えば、その上でビデオ・コンテンツを視るためにディスプレイ20に印加するHDTV(高品位TV)ビデオ信号をそこから回復するよう処理するために、放送信号11を(例えば、アンテナ(図示せず)を介して)受信する。本発明の原理によれば、受信器15は、1つ又は複数の複素相関器を含む。例証の目的のみで、本発明の概念は、セグメント同期検出器の意味合いで説明する。しかし、本発明の概念は、そのように限定されるものでない。
【0020】
受信器15の適切な部分の例証的な構成図を図6に示す。復調器275は、IF周波数(FIF)を中心とする信号274を受信し、6MHz(百万ヘルツ)に等しい帯域幅を有する。復調器275は、本発明の原理によって、セグメント同期フラグ521を供給するうえで用いるために復調信号201のI成分及びQ成分に対して複素相関を行う複素相関器(セグメント同期検出器)200を備えるセグメント同期検出器に、復調された受信ATSC−DTV信号201を供給する。特に、図7に示すように、かつ以下に更に説明するように、セグメント同期検出器200の複素相関器は、復調信号201の同相成分201−1をATSCセグメント同期パターンと互いに関係付け、復調信号201の直交成分201−2をATSCセグメント同期パターンのヒルバート変換と互いに関係付ける。(なお、本発明の概念に適切でない受信器15の他の処理ブロック、例えば、信号274等を供給するためのRFフロントエンドは本明細書に示していない。)
次いで図7に移れば、本発明の原理によるセグメント同期検出器200の例証的な構成図を示す。図7から分かり得るように、セグメント同期検出器200は、複素相関器205が復調信号201の同相(I)成分201−1及び直交(Q)成分201−2を処理してセグメント同期パターンをサーチする以外は図3のセグメント同期検出器500と同様である。
【0021】
次に図8を参照すれば、複素相関器205の例証的な構成図を示す。相関器205は、同相処理部、直交処理部、及び合成器245を備える。同相処理部は、タップ255−1、255−2、255−3及び255−4によって表される4タップの遅延線255、タップ毎に1つずつである乗算器260−1、260−2、260−3及び260−4によって表される相当する乗算器組(260)、及び加算器260−5である。単純にするように、適切なクロッキング信号は図8に示していない。そういうものとして、相関器205のこの部分は、遅延線255によって復調信号201の同相成分201−1を遅延させるものであり、図8から分かり得るように、セグメント同期パターンの前述のスケーリングされたバージョンであるパターン(+1 −1 −1 +1)によって、適切なタップ出力を(乗算器260によって)乗算する。最後に、4つの乗算器出力が一緒に(加算器260−5によって)加算される。次に直交処理部に移れば、この部は、タップ265−1、265−2、265−3及び265−4によって表される4タップの遅延線265、タップ毎に1つずつである乗算器270−1、270−2、270−3及び270−4によって表される相当する乗算器組(270)、及び加算器270−5である。やはり、単純にするために、適切なクロッキング信号は図8に示していない。相関器205の直交部分は、復調信号201の直交成分201−2を遅延線265によって遅延させ、図8から分かり得るように、以下に説明するように、セグメント同期パターンのヒルバート変換のスケーリングされたバージョン(これは、セグメント同期パターンの直交成分としても本明細書に表す)であるパターン(+1 +1 −1 −1)によって、適切なタップ出力を(乗算器270によって)乗算する。最後に、4つの乗算器出力が一緒に(加算器270−5によって)加算される。
【0022】
図9を簡単に参照すれば、表2は、本発明の原理によれば、受信信号のQ成分に関する更なるパターンを示す。特に、表2は、セグメント同期パターンのヒルバート変換Sh、相当するスケーリングされたバージョンSsh、及びShとSshとの間の相関(すなわち、式(1)(上記)によるCh)を示す。本発明の原理によれば、(図4に示す)表1のCと表2のChとの間の、結果として生じる類似性は次に、図8の複素相関器205を用いることによって活用される。
【0023】
次に図8に戻れば、複素相関器205の合成器245は、C及びChを合成して、Ccombを作成する。例証的には、Ccomb=C+Chである。この場合、Ccomb=(0−20 0+40 0−20 0)である。本発明の原理によれば、部分相関値の一部は消えるが、ピーク値は2倍になり、増加された相関を示す。出力信号206(Ccomb)が図7の積分器510に施される。図7に示すセグメント同期検出器200のエレメントの残りは、前述のように機能してセグメント同期フラグ521を備える。
【0024】
なお、本発明の原理による他の変形が考えられる。例えば、合成器245は、
Ccomb=│C│+│Ch│の式によって機能することが可能であり、ここで、│x│はxの絶対値又はxの二乗を表す。この場合、絶対値を用いると、Ccomb=(+10+20+10+40+10+20+10)になる。部分相関値は何れも消えず、代わりに大きさが増加し、ピーク値は2倍になり、増加された相関を示す。
【0025】
本発明の原理による別の実施例を図10に示す。複素相関器205’は、I入力信号とQ入力信号とを取り換える以外は図8の複素相関器205と同様である。これは、本明細書では直交複素相関器としても表す。図10から分かり得るように、Q成分201−2が複素相関器205’の同相処理部に入力され、I成分201−1が複素相関器205’の直交処理部に入力される。この点で、同相処理部はSsとShとの間の相関(すなわち、Cq)を供給し、直交処理部はSshとSとの間の相関(すなわち、Cqh)を供給する。
【0026】
手短に図11を参照すれば、表3は、図10に示す実施例に関する更なるパターンCq及びCqhを示す。Cq及びCqhは、お互いの逆数であるため、相関器205’の合成器245が減算(すなわち、Ccomb=Cq−Cqh)を行う。そういうものとして、Ccomb=(+2 0−6 0+6 0−2)となる。
【0027】
本発明の原理による別の実施例では、相関器205’の合成器245は、Ccomb=│Cq│+│Cqh│の式によって機能し、ここで│x│はxの絶対値又はxの二乗を表す。この場合、絶対値を用いれば、Ccomb=(+2 0+6 0+6 0+2)となる。
【0028】
受信器に用いる、本発明の原理による例証的な流れ図を図12に示す。工程310では、受信器は、同相(I)成分及び直交(Q)成分を有する入力信号を受信する。工程315では、受信器は、成分のうちの一方をデータ・パターンと互いに関係付け、成分の他方を、データ・パターンのヒルバート変換と互いに関係付ける。工程315の例は、データ・パターンとしてのATSCセグメント同期信号の意味合いにおいて先行して設けられた。例えば、図8の相関器205に示すように、I成分をセグメント同期信号と互いに関係付けることが可能である一方、Q成分を、セグメント同期信号のヒルバート変換と互いに関係付けることが可能である。逆に、図10の相関器205’に示すように、I成分をセグメント同期信号のヒルバート変換と互いに関係付けることが可能である一方、Q成分を、セグメント同期信号と互いに関係付けることが可能である。最後に、工程320では、合成された相関信号Ccombを出力信号として供給する。
【0029】
本発明の概念は、受信器の他の処理エレメントへの適用を有する。例えば、複素入力信号(すなわち、同相成分及び直交成分を備えた)セントロイド算出器に本願の概念を適用することによって、複素相関器のより好適な特性によってチャネル仮想中心の推定がより好適になる。更に、セントロイド算出器へ本願の概念及び非漏れ積分器を施すことによって、復調信号におけるシンボル・タイミング位相不定性にセントロイド算出器が影響を受けないことになる。
【0030】
本願の概念を説明する前に、ATSC−DTVシステムに用いる、先行技術のセントロイド算出器100の構成図を図13に示す。セントロイド算出器100は、相関器105、漏れ積分器110、二乗器115、ピーク・サーチ・エレメント120、乗算器125、第1の積分器130、第2の積分器135及び位相検出器140を備える。セントロイド算出器100は、セグメント同期信号、シンボル毎一サンプル、及び同相(実)成分(101−1)のみを備えるデータ入力信号101に基づいている。データ入力信号101は、復調器(図示せず)によって供給される復調された受信ATSC−DTV信号を表す。
【0031】
データ入力信号101−1が、その中のセグメント同期信号(又はパターン)を検出するために相関器105に印加される。前述の通り、セグメント同期信号は、反復パターンを有し、2つの隣接したセグメント同期信号間の距離は幾分大きい(832シンボル)。そういうものとして、セグメント同期信号を用いてチャネル・インパルス応答を推定することが可能であり、チャネル・インパルス応答は同様に、チャネルの仮想中心又はセントロイドを推定するのに用いられる。相関器105はデータ入力信号101の同相成分101−1を、ATSC−DTVセグメント同期の特性、すなわち、2値表現で〔1 0 0 1〕又はVSBシンボル表現で〔+5 −5 −5 +5〕とお互いに関係付ける。相関器105からの出力信号は次いで漏れ積分器110に印加される。漏れ積分器110は832シンボル長を有し、これは、一セグメント内のシンボル数に等しい。VSBデータはランダムであるので、データ・シンボル位置での積分器値はゼロに向けて平均化されることになる。しかし、4セグメント同期シンボルは832シンボル毎に繰り返すので、セグメント同期位置での積分器値は信号強度に対して比例して増えることになる。チャネル・インパルス応答がマルチパス又はゴーストをもたらす場合、セグメント同期シンボルは、それらのマルチパス遅延位置で現れることになる。その結果、マルチパス遅延位置での積分器値も、ゴースト振幅に比例して増えることになる。漏れ積分器は、ピーク・サーチが行われた後、積分器が新たな数を加算する都度一定値を減算するようなものである。これは、ハードウェア・オーバフローを避けるために行われる。832個の漏れ積分器値は、二乗器115によって二乗される。結果として生じる出力信号、すなわち相関器信号116は、ピーク・サーチ・エレメント120及び乗算器125に送られる。(なお、二乗の代わりに、エレメント115はその入力信号の絶対値を供給し得る。)
各漏れ積分器値(相関器信号116)がピーク・サーチ・エレメント120に入力されると、相当するシンボル・インデックス値(シンボル・インデックス119)もピーク・サーチ・エレメント120に入力される。シンボル・インデックス119は、ゼロに元々リセットすることができるものであり、0から831までのパターンを繰り返し、新たな漏れ積分器値毎に1、増やされる。ピーク・サーチ・エレメント120は、832の二乗積分器値(相関器信号116)にわたってピーク・サーチを行い、ピーク信号121を供給する。ピーク信号121は、832の二乗積分器値のうちの最大値に関連したシンボル・インデックスに相当する。ピーク信号121は、チャネルの初期中心として用いられ、第2の積分器135(以下に説明する)に印加される。
【0032】
漏れ積分器値(相関器信号116)は又、現行シンボル・インデックスから初期中心までの相対距離によって重み付けされ、重み付けされた中心位置が次いで帰還ループ又はセントロイド算出ループによって判定される。セントロイド算出ループは、位相検出器140、乗算器125、第1の積分器130及び第2の積分器135を備える。この帰還ループは、ピーク・サーチが行われた後に始まり、第2の積分器135は初期中心値又はピーク値によって初期化される。位相検出器140は、現行シンボル・インデックス(シンボル・インデックス119)と仮想中心値136との間の距離(信号141)を算出する。重み付けされた値126は乗算器125を介して算出され、第1の積分器130に供給され、それは、832シンボル群毎に重み付けされた値を累算する。前述の通り、第2の積分器135はピーク値に当初設定され、次いで、第1の積分器130の出力を累算して仮想中心値又はセントロイド136を作成するよう進む。図13における積分器は全て、暗黙のスケーリング係数を有する。
【0033】
仮想中心値136が判定されると、セグメント同期信号やフレーム同期信号などのVSB参照信号を受信器において局所で再生成(図示せず)させて、仮想中心で整列させる。その結果、等化データ出力を仮想中心で整列させることになるようにチャネルを等化するようタップが等化器において増えることになる。
【0034】
複素データ入力信号(同相成分及び直交成分)、シンボル毎に2つのサンプル、又はフレーム同期ベースの設計への、図13に関して前述したシステムの拡張は、図13から容易に導かれる。
【0035】
例えば、データ入力信号が複素の場合、セントロイド算出器(この場合、「複素セントロイド算出器」としても表す)は、図14に示す入力データ信号の同相(I)成分及び直交(Q)成分を別個に処理する。特に、入力データ信号の同相成分(101−1)は、相関器105−1、漏れ積分器110−1及び二乗器115−1を介して処理される一方、入力データ信号の直交成分(101−2)は、相関器105−2、漏れ積分器110−2及び二乗器115−2を介して処理される。こうしたエレメントのそれぞれは、図13において前述したものと同様に機能する。図示していないが、シンボル・インデックスは、何れかの二乗器エレメントから生成することが可能である。各二乗器(115−1及び115−2)からの出力信号は、相関器信号116を供給するよう加算器180を介して一緒に加算され、処理の残りは、図13に関して前述したものと同じである。
【0036】
シンボル毎2サンプルのセントロイド算出器に関しては、T/2間隔を例証的に用いる(ここで、Tはシンボル間隔に相当する)。例えば、セグメント同期検出器は、T/2の間隔のセグメント同期特性に合致するT/2の間隔の値を有し、漏れ積分器は、2×832長であり、シンボル・インデックスは、0,1,2,…,831の代わりに0,0,1,1,2,2,…,831,831のパターンに従う。
【0037】
最後に、フレーム同期信号に基づいたセントロイド算出器の場合、以下のことに留意すべきである。フレーム/フィールド同期信号は832シンボルから成り、313セグメント毎に到着するので、これは、チャネルにおける実用的なマルチパス分布よりも長く、よって、何れかのマルチパス信号の位置を判定するうえでの問題はない。図13中のセグメント同期検出器ではなく非同期PN511相関器を用いて、(832のフレーム同期シンボルのうちから、PN511のみを用いた場合)チャネル・インパルス応答を測定することができる。(PN511は、疑似乱数系列であり、前述のATSC標準に記述されている。)更なる処理は、処理が少なくとも一フィールド全体の持続時間、行われる以外は図13について前述したものと同様である。相関値をピーク・サーチ関数ブロックに送って一フィールド時間にわたってピーク・サーチを行う。このピーク値のシンボル・インデックスをよって、初期仮想中心点として用いるものとする。初期中心点が判定されると、相関結果は、相関出力が所定の閾値を超えており、初期仮想中心点の前後の特定の範囲内にある場合にのみ解析される。例えば、初期中心位置の周りに+/−500シンボルがあることによって、相関出力が所定値を上回ることが位置付けられる。厳密な範囲は、実環境において生じることが期待される実用的なチャネル・インパルス応答と、利用可能な等化器の長さとによって判定される。処理の残りは、図13について前述したものと同様である。
【0038】
次に図15に移れば、本願の原理によるセントロイド算出器600の例証的な実施例を示す。セントロイド算出器600は図13のセントロイド算出器100と同様である、例えば、セントロイド算出器600は、セグメント同期信号、及びシンボル毎1サンプルに基づいている。しかし、セントロイド算出器100と比較して、セントロイド算出器600は複素相関器205を含む。よって、セントロイド算出器600は、同相(I)成分及び直交(I)成分を備えた複素データ入力を必要とする。前述の通り、複素相関器205は、入力データ信号のQ成分並びにI成分において同期パターンをサーチする。なお、積分器110は832シンボルの漏れ積分器である。漏れ積分器は、ピーク・サーチの後、定数を減算して、ハードウェア・オーバフローを避ける。
【0039】
本発明の原理による別の例証的な実施例を図16に示す。図16は、前述の複素セントロイド算出器と同様に、しかし複素相関器によってセントロイド算出器600が動作することを可能にする、セントロイド算出器600の適切な修正部分を示す。図16に示す配置は、以下の点以外は図14に示す配置と同様である。すなわち、複素相関器205が復調信号201のI成分及びQ成分を処理する一方、別の形態の複素相関器(前述の直交複素相関器205’)も復調信号201のI成分及びQ成分を処理する。さもなければ、図16の配置の動作は、図14の配置の前述の動作と同様である。
【0040】
チャネル仮想中心を判定する前述の手法が、データ入力上の誤ったシンボル・タイミング位相の、セントロイド算出器に対する影響、及び、よってセントロイド推定に対する影響に対処していないことが明らかになった。すなわち、前述の手法は、セントロイド算出における復調器シンボル・タイミング不定性の影響に対処するものでなく、この不定性を補正しようとするものでない。したがって、かつ、本発明の原理によれば、本発明の別の実施例は、複素算出器を含むセントロイド算出器を提案しており、シンボル・タイミング不定性の影響を受けない。
【0041】
次に図17に移れば、本願の原理によるセントロイド算出器650の例証的な実施例を示す。セントロイド算出器650は、図15のセントロイド算出器600と同様である、例えば、セントロイド算出器650は、セグメント同期信号、及びシンボル毎1サンプルに基づいており、複素相関器205を含む。しかし、セントロイド算出器600に対し、積分器は、832シンボルの非漏れ積分器185である。非漏れ積分器は、ハードウェア・オーバフローを避けるようピーク・サーチ後に一定値を減算するものでない。そのかわりに、積分器ワード・サイズは、オーバフローがない算出を可能にするよう念入りに選ばなければならない。
【0042】
非漏れ相関器が後続する複素相関を備えたセグメント同期検出を用いるメリットは、復調信号201におけるシンボル・タイミング不定性に係わらず、セントロイド算出器が、正しい復調器サンプルによって達成されることになるものと同じピーク値を達成することになるという観察から生まれる。その結果、セントロイド算出器650は、シンボル・タイミング不定性の影響を受けない。これは、複素相関器及び漏れ積分器を備えるセントロイド算出器を用いる、図13のセントロイド算出器100並びに図15及び図16のセントロイド算出器600に対する明らかな利点である。セントロイド算出器650を用いる更なる利点は、ゴースト遅延がシンボル周期の倍数で必ずしもないことになるという理由による。よって、一部のゴースト・ピークは、シンボル周期の分数サンプル上にあり得る。複素相関器を用いることによって、セントロイド算出器650がサンプルと無関係になることが可能になるので、セントロイド算出器650は、正確にゴースト・ピークを、こうしたピークが分数サンプルと関連していても認識することにもなる。
【0043】
本発明の原理による別の例証的な実施例を図18に示す。図18は、前述の複素セントロイド算出器と同様に、しかし複素相関器によってセントロイド算出器650が動作することを可能にするセントロイド算出器650の適切な修正部分を示す。図18に示す配置は、非漏れ積分器185−1及び185−2も図18に示すように用いられる以外は図16に示す配置と同様である。さもなければ、図18の配置の動作は、図16の配置の前述の動作と同様である。
【0044】
次に図19に移れば、別の例証的な実施例を示す。この実施例は、乗算器125によって行われる重み付け処理に先行してリミタ265を含んでいる以外は図15及び図17に示すものと同様である。リミタ265の動作は、図20の例証的な流れ図に示す。工程705では、リミタ265は、ピーク・サーチの完了を待つ。ピーク・サーチが完了すると、リミタ265は、工程710で、閾値を設定する。例証的には、閾値は(peak/k)に等しくなるように設定され、ここでKの値は実験的に選ばれる。工程715では、リミタ265は、相関器値(116)が設定閾値よりも大きいかを判定する。相関器値(116)が設定閾値よりも大きい場合、リミタ265は、工程720で相関値(116)をリミティングしない、すなわち、信号266の値は図19における信号116の値に等しい。しかし、相関器値(116)が閾値以下の場合、リミタ265は、工程725で、信号266の値を例証的なリミタ値Lに等しくなるように設定する。この例では、Lはゼロに等しい。その結果、工程725では、信号266はゼロに等しくなるように設定される。
【0045】
リミタ265の背後にある考え方は、相関の概念と、ランダムなデータ及び雑音が積分器においてゼロに累算されるという前提が、非有界系列サイズに達する多数のサンプルを前提としていることによる。しかし、セントロイド算出及び結果として生じる積分は、限定量の時間内に起こる。実際に、セントロイド算出の時間は、受信器がロックするための合計時間に影響を及ぼすので、セントロイド算出器時間を最小にすることに関心がある。したがって、積分器における、データ入力及び実際の入力雑音に関連した残留雑音が存在し、これは、セントロイド算出器処理時間の関数でもある。この残留雑音は、ゼロdBゴースト又はゼロに近いdBのゴーストを備えるチャネル以外では、ピーク・サーチに影響を及ぼす可能性が低い。しかし、重み付けされた値(図19の信号126)は、現行シンボルから中心までの距離と、相関値との積であり、ピーク値から遠く離れた位置における雑音は、最終的な算出にかなり寄与し得る。そういうものとして、前述のリミタを設けることによって、相関器積分器における残留雑音をなくし、加重値推定を向上させることが可能である。このリミタは、閾値が、考えられる復調器のキャリア位相及びシンボル・タイミングの不定性、又は自動利得制御(AGC)の不一致による不一致処理における過剰なリミティングをなくす、ピーク値の関数である場合により効率的である。
【0046】
リミタの使用の欠点は、理論上は、微小レベルがリミタ265によって無視されることになるので、セントロイド算出器は、特定の強度レベルを超えるゴーストを含むことのみに限定されることになることである。しかし、工程710における定数Kの適切な選択は、どの相関値が残留雑音の結果であるかと、どの値が実際のゴーストであるかとのバランスを規定することになる。残留雑音レベルを下回るゴースト強度レベルは、リミタの有無にかかわらずセントロイド算出器によって適切に対処されないことになる。例として、K=26の場合、リミタは、主信号を約18dB下回るゴーストを無視する。
【0047】
セントロイド算出器にリミタを追加することは、本明細書記載の実施例全てに該当する。例えば、図13に示すセントロイド算出器配置である。
【0048】
本発明の原理によって本明細書に記載した例証的な実施例は全て、ATSC−DTVシステムのフィールド同期に対して相関を行うことに拡張することができる、すなわち、相関は、フィールド同期を構成する4成分PN系列、又はその短縮バージョンに対して行われる。相関C及びヒルバート相関Chは、表1及び表2並びに式(1)におけるように、フィールド同期について同様に得ることが可能である。
【0049】
前述に鑑みれば、本発明の原理によって本明細書に記載された例証的な実施例は全て、訓練パターン、又はその短縮バージョンに対して相関を行うことに拡張することができる。相関C、Ch、Cq及びCqhは、表1及び表2並びに式(1)におけるように、何れの訓練パターンについても同様に得ることが可能である。
【0050】
前述は本発明の原理を例証するものに過ぎない。よって、当業者は、本明細書に明示していないが、本発明の原理を実施し、その趣旨及び範囲内にある別の数多くの配置を考え出すことができるものである。例えば、別個の機能エレメントの意味合いで例証しているが、こうした機能エレメントは、1つ又は複数の集積回路(IC)上に実施することができる。同様に、別個のエレメントとして示しているが、そうしたエレメントの何れか又は全てを、関連したソフトウェア(例えば、図示した(例えば、図12の)1つ又は複数の工程に相当する)を実行するストアード・プログラム制御プロセッサ(例えば、ディジタル信号プロセッサ)において実施することができる。更に、TV受像機10内に組み込まれたエレメントとして示しているが、その中のエレメントは、その何れかの組み合わせにおいて別々の装置に分散させることができる。例えば、図5の受信器15は、装置又はボックス(装置から物理的に別個のセットトップ・ボックスなど)若しくはディスプレイ20等を組み入れたボックスの一部であり得る。更に、地上波放送の意味合いで説明しているが、本発明の原理は、他のタイプの通信システム(例えば、衛星、ケーブル等)に適用可能である。よって、数多くの修正を例証的な実施例に行うことができ、特許請求の範囲記載の、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の配置を考え出すことができるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来技術のATSC―DTV残留側波帯(VSB)データ・フレーミング構造を示す図である。
【図2】従来技術のATSC―DTVフィールド同期構造を示す図である。
【図3】従来技術のATSC―DTVセグメント同期検出器を示す図である。
【図4】表1を示す図である。
【図5】本発明の原理を用いる受信器の例証的な概略レベルの構成図を示す図である。
【図6】本発明の原理を用いる受信器の例証的な部分を示す図である。
【図7】本発明の原理を用いる受信器の例証的な部分を示す図である。
【図8】本発明の原理による複素相関器の例証的な実施例を示す図である。
【図9】表2を示す図である。
【図10】本発明の原理による複素相関器の別の例証的な実施例を示す図である。
【図11】表3を示す図である。
【図12】本発明の原理による例証的な流れ図である。
【図13】従来技術のセントロイド算出器を示す構成図である。
【図14】複素セントロイド算出器において用いる複素信号の処理の構成図である。
【図15】本発明の原理によるセントロイド算出器の例証的な実施例を示す図である。
【図16】本発明の原理によるセントロイド算出器の一部分の別の例証的な実施例を示す図である。
【図17】本発明の原理によるセントロイド算出器の別の例証的な実施例を示す図である。
【図18】本発明の原理によるセントロイド算出器の一部分の別の例証的な実施例を示す図である。
【図19】本発明の原理による他の例証的な実施例を示す図である。
【図20】本発明の原理による他の例証的な実施例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信器であって、
復調信号を供給する復調器と、
前記復調信号を、ATSC−DTV(高度テレビジョン方式委員会−ディジタル・テレビジョン)同期信号と、その検出のために互いに関係付ける複素相関器を含む同期検出器とを備えることを特徴とする受信器。
【請求項2】
請求項1記載の受信器であって、前記同期信号がATSC−DTVセグメント同期信号であることを特徴とする受信器。
【請求項3】
請求項1記載の受信器であって、前記同期信号がATSC−DTVフレーム同期信号であることを特徴とする受信器。
【請求項4】
請求項1記載の受信器であって、前記復調信号は、同相成分及び直交成分を備え、前記複素相関器は、
前記復調信号の前記成分の一方を前記同期信号と互いに関係付ける同相相関器と、
前記復調信号の前記成分の他方を前記同期信号のヒルバート変換と互いに関係付ける直交相関器と、
前記同相相関器及び前記直交相関器から合成相関結果を供給する合成器とを備えることを特徴とする受信器。
【請求項5】
請求項4記載の受信器であって、前記同相相関器は、前記復調信号の前記同相成分を前記同期信号と互いに関係付けることを特徴とする受信器。
【請求項6】
請求項4記載の受信器であって、前記直交相関器は、前記復調信号の前記直交成分を前記同期信号の前記ヒルバート変換と互いに関係付けることを特徴とする受信器。
【請求項7】
請求項4記載の受信器であって、前記同相相関器は、前記復調信号の前記直交成分を前記同期信号と互いに関係付けることを特徴とする受信器。
【請求項8】
請求項4記載の受信器であって、前記直交相関器は、前記復調信号の前記同相成分を前記同期信号の前記ヒルバート変換と互いに関係付けることを特徴とする受信器。
【請求項9】
受信器において用いる方法であって、
信号を供給する工程と、
(a)前記信号の成分のうちの一方を、ATSC−DTV(高度テレビジョン方式委員会−ディジタル・テレビジョン)同期信号と互いに関係付ける工程と、
(b)前記信号の前記成分のうちの他方を前記同期信号のヒルバート変換と互いに関係付ける工程と、
工程(a)及び(b)からの合成相関結果を供給する工程とを備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、前記同期信号がATSC−DTVセグメント同期信号であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法であって、前記同期信号がATSC−DTVフレーム同期信号であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9記載の方法であって、工程(a)は、前記信号の同相成分を前記同期信号と互いに関係付けることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9記載の方法であって、工程(b)は、前記信号の直交成分を前記同期信号の前記ヒルバート変換と互いに関係付けることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9記載の方法であって、工程(a)は、前記信号の直交成分を前記同期信号と互いに関係付けることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項9記載の方法であって、工程(b)は、前記信号の同相成分を前記同期信号の前記ヒルバート変換と互いに関係付けることを特徴とする方法。
【請求項1】
受信器であって、
復調信号を供給する復調器と、
前記復調信号を、ATSC−DTV(高度テレビジョン方式委員会−ディジタル・テレビジョン)同期信号と、その検出のために互いに関係付ける複素相関器を含む同期検出器とを備えることを特徴とする受信器。
【請求項2】
請求項1記載の受信器であって、前記同期信号がATSC−DTVセグメント同期信号であることを特徴とする受信器。
【請求項3】
請求項1記載の受信器であって、前記同期信号がATSC−DTVフレーム同期信号であることを特徴とする受信器。
【請求項4】
請求項1記載の受信器であって、前記復調信号は、同相成分及び直交成分を備え、前記複素相関器は、
前記復調信号の前記成分の一方を前記同期信号と互いに関係付ける同相相関器と、
前記復調信号の前記成分の他方を前記同期信号のヒルバート変換と互いに関係付ける直交相関器と、
前記同相相関器及び前記直交相関器から合成相関結果を供給する合成器とを備えることを特徴とする受信器。
【請求項5】
請求項4記載の受信器であって、前記同相相関器は、前記復調信号の前記同相成分を前記同期信号と互いに関係付けることを特徴とする受信器。
【請求項6】
請求項4記載の受信器であって、前記直交相関器は、前記復調信号の前記直交成分を前記同期信号の前記ヒルバート変換と互いに関係付けることを特徴とする受信器。
【請求項7】
請求項4記載の受信器であって、前記同相相関器は、前記復調信号の前記直交成分を前記同期信号と互いに関係付けることを特徴とする受信器。
【請求項8】
請求項4記載の受信器であって、前記直交相関器は、前記復調信号の前記同相成分を前記同期信号の前記ヒルバート変換と互いに関係付けることを特徴とする受信器。
【請求項9】
受信器において用いる方法であって、
信号を供給する工程と、
(a)前記信号の成分のうちの一方を、ATSC−DTV(高度テレビジョン方式委員会−ディジタル・テレビジョン)同期信号と互いに関係付ける工程と、
(b)前記信号の前記成分のうちの他方を前記同期信号のヒルバート変換と互いに関係付ける工程と、
工程(a)及び(b)からの合成相関結果を供給する工程とを備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、前記同期信号がATSC−DTVセグメント同期信号であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法であって、前記同期信号がATSC−DTVフレーム同期信号であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9記載の方法であって、工程(a)は、前記信号の同相成分を前記同期信号と互いに関係付けることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9記載の方法であって、工程(b)は、前記信号の直交成分を前記同期信号の前記ヒルバート変換と互いに関係付けることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9記載の方法であって、工程(a)は、前記信号の直交成分を前記同期信号と互いに関係付けることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項9記載の方法であって、工程(b)は、前記信号の同相成分を前記同期信号の前記ヒルバート変換と互いに関係付けることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2007−537660(P2007−537660A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513136(P2007−513136)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010503
【国際公開番号】WO2005/114937
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010503
【国際公開番号】WO2005/114937
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】
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