説明

残量検知センサおよびそれを用いたインクジェットプリンタ

【課題】 残量検知センサおよびそれを用いたインクジェットプリンタにおいて、容器の内容物の残量を高精度に検知することができるようにする。
【解決手段】 サブタンク3の外側に配置してインク20の残量を検知する残量検知センサ4であって、サブタンク3に対向して配置する検知電極4aと、検知電極4aの外周を取り囲む状態で、検知電極4aと同一平面に配置されたガード電極4bと、検知電極4aに対して少なくとも検知電極4aを覆う範囲に離間して対向配置され、ガード電極4bと同電位とされたガード電極4dとを備え、ガード電極4b、4dの電位を基準電位として、検知電極4aで計測される静電容量に基づいて、サブタンク3の内容物の残量を検知できるようにした構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の内容物の残量を検知するための残量検知センサおよびそれを用いたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に収容された液体、粉体などの内容物の残量を検知するための残量検知センサが種々知られている。
例えば、インクジェットヘッドからインクを吐出して画像記録などを行うインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクにおけるインク残量をモニタし、残量が少なくなるとインク補給タンクからインクを補給したり、インクタンクが交換式カートリッジの場合にはインクタンクの交換時期が近づいたことを知らせたりするようになっている。そして、静電容量型の残量検知センサをインクタンクの外側に配置してインク残量を検知することが知られている。
例えば、特許文献1には、導電性のインクを貯蔵するインクタンクと、インクタンク内の量、あるいは有無を非接触で検出する電極と、電極間の静電容量を検出する検出回路とを備えたインクジェットプリンタ装置が記載されている。特許文献1の電極は、インクタンクを挟んで互いに対向する配置とされている。
また、特許文献2には、インクカートリッジの外側面に、センサ基板の片面に形成された2つの電極パターンからなる検出用電極を密着し、検出用電極の2つの電極パターンで計測された静電容量に基づいて、インクカートリッジ内のインクの残量に対応した出力電圧を得るようにした残量センサが記載されている。特許文献2の検出用電極は、インクカートリッジの一方の外側面に2個並列に配置した形態と、インクカートリッジを挟んで互いに対向する配置とした形態とが記載されている。
【特許文献1】特開平8−197749号公報
【特許文献2】特開平9−166474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の残量検知センサおよびそれを用いたインクジェットプリンタには、以下のような問題があった。
特許文献1、2に記載の技術では、容器内のインクの残量変化により検出電極間の静電容量が変化することを利用して残量検知を行っているが、容器の外側部に並列された2つの検出電極や、容器を挟む2つの検出電極では、検出電極の周囲に配置された他の導電性構造物や電気回路の影響を受けるため、周囲の環境変化などによって、静電容量が変化して計測誤差や、誤検知が生じてしまうという問題がある。
特に、インクジェットプリンタの場合、検知すべきインク残量の変化によるインクタンクの静電容量の変化は一般に非常に小さいため、これらの外部要因によるノイズが計測精度に与える影響は大きい。
また、インクジェットプリンタのインクタンクは、インクジェットヘッドの吐出制御やインクジェットヘッドの移動機構などを制御する電気回路に近接して配置されたり、記録媒体上で可動に保持されたり、可動部材に近接して配置されたりすることが多いため、これらの外部要因によるノイズの発生量も多くなっている。
さらに、インクジェットプリンタでは、カラー記録のため各色ごとにインクタンクが用意され、それらが並列して配置されているため、異なる色のインクタンクの検出電極同士が近接することになる。このため、隣接する他の残量検知センサの検出電極との間にも、静電容量が形成され、計測誤差を増大させる要因ともなっている。
このような周囲環境の影響を排除するため、残量検知センサとインクタンクとを、静電容量に影響する他の部材、他の残量検知センサなどから隔離して配置することも考えられるが、装置が大型化してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、容器の内容物の残量を高精度に検知することができる残量検知センサおよびそれを用いたインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、容器の外側に配置して前記容器の内容物の残量を検知する残量検知センサであって、前記容器に対向して配置する検知電極と、該検知電極の外周を取り囲む状態で、前記検知電極と同一平面に配置された第1のガード電極と、前記検知電極に対して少なくとも該検知電極を覆う範囲に離間して対向配置され、前記第1のガード電極と同電位とされた第2のガード電極とを備え、前記第1および第2のガード電極の電位を基準電位として、前記検知電極で計測される静電容量に基づいて、前記容器の内容物の残量を検知できるようにした構成とする。
この発明によれば、検知電極が、第1のガード電極に外周を取り囲まれた状態で、容器に対向して配置され、検知電極に対して少なくともこの検知電極を覆う範囲に、第1のガード電極と同電位とされた第2のガード電極が離間して対向配置される。その結果、検知電極の静電容量に対する、検知電極の側方、および第2のガード電極の位置する裏面側の部材配置や外部電界の影響が遮断もしくは低減される。そのため、検知電極の表面近傍に位置する容器および容器内の内容物の静電容量を高精度に検出することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の残量検知センサにおいて、前記検知電極は、互いに離間した位置に複数設けられ、前記第1のガード電極は、前記複数の検知電極のそれぞれの外周を取り囲む状態とされ、前記複数の検知電極でそれぞれ計測される静電容量に基づいて、前記容器の内容物の残量を複数の段階で検知できるようにした構成とする。
この発明によれば、第1のガード電極が、互いに離間した位置に複数設けられた検知電極のそれぞれの外周を取り囲む状態とされるので、各検知電極が互いの計測に影響を及ぼさない状態となる。そして、各検知電極により、それぞれの配置位置における内容物の残量を検知できるので、内容物の残量を複数の段階で高精度に検知することができる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の残量検知センサにおいて、前記第1および第2のガード電極と同電位とされ、前記第1および第2のガード電極の少なくともいずれかに対して、前記容器と反対側に離間して対向配置された第3のガード電極と、前記第1のガード電極または前記第2のガード電極と、前記第3のガード電極との間の対向範囲内に、挟まれて配置された参照電極とを備えた構成とする。
この発明によれば、参照電極は、第1および第2のガード電極の少なくともいずれかと、第3のガード電極との間の対向範囲内に挟まれることで、外部電界から遮蔽された状態とされ、検知電極および第1、第2のガード電極とで構成される検知部の側方または裏面側に一体的に配置される。そのため、参照電極の静電容量を計測することで、検知電極とともに参照電極が受ける環境要因の影響、例えば、残量検知センサ近傍の、温度や湿度などによる静電容量の変動を検出することができる。
このため、例えば、参照電極で検出された静電容量の変動を検知電極における静電容量の変動に換算して差分をとるなどして、環境要因によるノイズ成分を除去することが可能となる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の残量検知センサにおいて、前記参照電極は、前記第1のガード電極と前記第3のガード電極との間の対向範囲内に挟まれて配置され、前記第2のガード電極と同一平面に配置された構成とする。
この発明によれば、参照電極が、第2のガード電極と同一平面に配置されるので、参照電極を第2のガード電極と第3のガード電極との間に配置する場合に比べて、より薄型の残量検知センサを構成することができる。
また、参照電極が、第2のガード電極と同一平面に配置される場合は、参照電極および第2のガード電極を多層プリント基板における同一層の導電パターンとして形成することができるので、層数の少ない多層プリント基板を用いることが可能となる。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の残量検知センサにおいて、前記第2のガード電極は、前記検知電極および前記第1のガード電極を覆う範囲に設けられ、前記第3のガード電極は、前記第2のガード電極を覆う範囲に設けられ、前記参照電極は、前記第2のガード電極と前記第3のガード電極との間の対向範囲内に挟まれて配置された構成とする。
この発明によれば、参照電極は、第2および第3のガード電極で挟まれることで、外部電界から遮蔽された状態とされ、検知電極および第1、第2のガード電極とで構成される検知部の裏面に一体的に配置される。そのため、参照電極の静電容量を計測することで、検知電極とともに参照電極が受ける環境要因の影響、例えば、残量検知センサ近傍の、温度や湿度などによる静電容量の変動を検出することができる。
このため、例えば、参照電極で検出された静電容量の変動を検知電極における静電容量の変動に換算して差分をとるなどして、環境要因によるノイズ成分を除去することが可能となる。
その際、第2のガード電極は、検知電極および第1のガード電極を覆う範囲に設けられており、かつ第3のガード電極は、第2のガード電極を覆う範囲に設けられているので、検知電極および参照電極に対する環境要因の影響をより確実に低減することができる。
【0010】
請求項6に記載の発明では、請求項1または2に記載の残量検知センサにおいて、前記検知電極、前記第1のガード電極、および前記第2のガード電極は、多層プリント基板の導電パターンとして形成され、前記多層プリント基板上に、前記検知電極の静電容量を計測して残量検知出力を発生する残量検知回路を一体に設けた構成とする。
この発明によれば、多層プリント基板上に、検知電極と第1および第2のガード電極からなるセンサ部と、残量検知回路とを一体に設けるので、検知電極からの配線が短縮され、ノイズに強い残量検出センサを構成することができる。
【0011】
請求項7に記載の発明では、請求項3〜5のいずれかに記載の残量検知センサにおいて、前記検知電極、前記第1のガード電極、前記第2のガード電極、前記第3のガード電極、および前記参照電極は、多層プリント基板の導電パターンとして形成され、前記多層プリント基板上に、前記検知電極の静電容量を計測して残量検知出力を発生する残量検知回路を一体に設けた構成とする。
この発明によれば、多層プリント基板上の導電パターンとして検知電極、第1のガード電極、第2のガード電極、第3のガード電極、および参照電極を形成するので、検知電極と第1および第2のガード電極からなるセンサ部と、第1ガード電極または第2のガード電極と、第3のガード電極との間に挟まれた参照電極による参照コンデンサとが、一体に形成され、残量検知回路とを一体に設けられるので、検知電極からの配線が短縮され、ノイズに強い残量検出センサを構成することができる。
その際、残量検知回路をΔC−V変換回路で構成する場合に、参照電極によりノイズ、環境変動に強い参照コンデンサを形成することができるため、より高精度かつコンパクトな残量検知センサとすることができる。
【0012】
請求項8に記載の発明では、インクジェットプリンタにおいて、インクを吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクと、該インクタンクの外側に配置された請求項1〜7のいずれかに記載の残量検知センサとを備える構成とする。
この発明によれば、請求項1〜7のいずれかに記載の残量検知センサを備えるので、請求項1〜7のいずれかに記載の発明と同様の作用効果を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の残量検知センサおよびそれを用いたインクジェットプリンタによれば、検知電極の静電容量に対する側方および裏面側からの影響を遮断もしくは低減することができるので、検知電極が面する容器の内容物の残量を高精度に検知することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、特に断らない限り、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサについて、それを用いたインクジェットプリンタとともに説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサを用いたインクジェットプリンタの概略構成を示す模式的な構成説明図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサの配置状態を示す斜視図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサの構成を示す斜視図である。図4は、図2のA−A断面図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサから出力電圧を取り出す残量検知回路の一例を示す回路図である。
【0016】
本実施形態のインクジェットプリンタ100は、図1に示すように、記録媒体(不図示)の表面に対して相対移動可能に保持されたキャリッジ10に収容された、インクジェットヘッド1、サブタンク3(インクタンク)、センサホルダ5、および残量検知センサ4と、サブタンク3にインク20を供給する主タンク9とを備え、記録媒体に向けてインク滴を吐出して画像記録などを行うものである。
【0017】
インクジェットヘッド1は、複数のインクノズルが配列されたヘッド面1aから記録媒体に向けてインク滴を吐出するもので、内部には、特に図示しないが、インク室や、圧電素子を用いたインク吐出機構などの周知の構成を備えている。
そして、インクチューブ2によって、サブタンク3と接続され、サブタンク3からインク20の供給を受けることができるようになっている。
インクジェットヘッド1は、キャリッジ10の高さ方向の基準面である底面10aから高さhHの位置に固定されている。
【0018】
サブタンク3は、インクジェットヘッド1に対して、近接した位置からインク20を供給するため、一定量のインク20を内容物として貯留しておく容器である。例えば、厚さ1mmのポリエチレン樹脂などにより外形が直方体状に形成されたものなどを採用することができる。
サブタンク3の上部側には、インク20を主タンク9から導入するインクチューブ7が接続され、下部側には、貯留されたインク20をインクジェットヘッド1に供給するインクチューブ2が接続されている。
そして、サブタンク3は、キャリッジ10内の一定位置に固定されたセンサホルダ5に着脱可能に保持され、装着時にはセンサホルダ5に対して位置決め状態に固定される。
なお、簡単のため、以下の説明および図示ではサブタンク3は1個としているが、カラープリントを行う場合には、インク20の色数に応じて同様の構成の複数個のものが並列して配置される。
【0019】
センサホルダ5は、サブタンク3を着脱可能に固定し、キャリッジ10内の位置決めを行うための保持部材であり、内部には、押圧バネ6に付勢されて装着時のサブタンク3の側面に対して密接される残量検知センサ4が設けられている。
センサホルダ5の装着時の高さは、ヘッド面1aのインクノズルにおいて所定のメニスカス形状が形成されるように、サブタンク3内のインク液面20aがヘッド面1aより低くなるように設定されている。すなわち、キャリッジ10の底面10aから測った底面10aの高さhiは、hi<hHとされている。
【0020】
残量検知センサ4は、図2に示すように、サブタンク3の側面の外側に配置され、サブタンク3側の静電容量を計測することにより、インク液面20aの高さを検出し、サブタンク3内のインク20の残量を検知するものである。
残量検知センサ4の構成は、図2〜4に示すように、検知電極4aとガード電極4b(第1のガード電極)とからなる電極パターンと、ガード電極4d(第2のガード電極)とが、厚さdの誘電体層4cを挟んで対向配置されてなり、外形は、サブタンク3の側面の範囲内に収まるW1×H1の矩形状とされている。
本実施形態の残量検知センサ4は、両面プリント基板を用いて構成されている。すなわち、一方の基板面に導電パターンを、検知電極4aとガード電極4bとからなる電極パターンとして形成し、他方の基板面にガード電極4dをベタパターンで形成し、プリント基板の基材が、誘電体層4cとなるような構成としている。両面プリント基板の材質としては、例えば、ガラスコンポジット基板やガラスエポキシ基板などを採用することができる。
【0021】
検知電極4aは、長辺H2、短辺W2(ただし、H2<H1、W2<W1)の矩形状の導電層が残量検知センサ4に密接される表面の略中央部に設けられたものであり、不図示の配線により電位検出が可能とされている。そして、検知電極4aの長辺は、サブタンク3の高さ方向、すなわち、インク液面20aが上下する鉛直方向に沿って配置されている。
【0022】
ガード電極4bは、検知電極4aの外周を取り囲む状態で、検知電極4aと同一平面上に配置され、残量検知センサ4の外縁、すなわちW1×H1の矩形外形まで延ばされた導電層であり、不図示の配線により接地されている。
ガード電極4dは、検知電極4aおよびガード電極4bに対向されて、それぞれを覆って残量検知センサ4の外縁まで延ばされた導電層であり、不図示の配線により接地されている。
このため、図4に示すように、検知電極4aとガード電極4bとの間、および検知電極4aとガード電極4dとの間に、合成静電容量がCSとなるコンデンサが形成されている。
【0023】
検知電極4aに接続された配線、およびガード電極4b、4dに接続された接地線は、図1に示すように、検知電極4aの静電容量を検出して、サブタンク3内の残量を検知する残量検知回路部11(残量検知回路)に電気的に接続されている。
残量検知回路部11の回路構成は、検知電極4aの電位を必要な精度で検出できれば、どのような構成でもよいが、本実施形態では、一例として、図5に示すようなΔC−V変換回路を採用している。
【0024】
本実施形態の残量検知回路部11は、検知電極4aの静電容量とCSと、既知の静電容量Crefを有する参照コンデンサ31の静電容量の差分ΔCを電圧に変換した電圧VOUTを出力するものであり、その構成は、正弦波信号を残量検知センサ4、参照コンデンサ31に加える発振器30と、それぞれの信号の差分を検出する差動増幅器32と、差動増幅器32の出力を整流する整流器33と、整流器33で整流された信号を増幅する増幅器34とからなる。差動増幅器32は、CsとCrefの両端に発生する電圧振幅差および電圧位相差を比較演算し、差分を出力する一般的な演算増幅器(オペレーショナルアンプ)を採用することができる。
残量検知回路部11によれば、電圧VOUTが、検知電極4aと参照コンデンサ31との間の静電容量の差ΔCに応じて発生する位相差量に対応するため、CS=Crefのとき、VOUT=0となっており、VOUTの値を用いてΔCを算出し、CS=Cref+ΔCとして、検知電極4aの静電容量を計測することができる。
本実施形態では、参照コンデンサ31の静電容量Crefは、サブタンク3においてインク液面20aのヘッド面1aに対する高さ方向の位置が、インクジェットヘッド1のインクノズルに所定のメニスカス形状が形成される最適位置L2に一致する場合の、検知電極4aの静電容量CS2に等しい値に設定されている。
【0025】
残量検知回路部11は、インクチューブ7に接続された汲み上げポンプ8の汲み上げ動作を制御するポンプ駆動制御部12と電気的に接続されており、出力電圧VOUTは、ポンプ駆動制御部12に送出されるようになっている。
ポンプ駆動制御部12は、残量検知回路部11の出力電圧VOUTから検知されるインク液面20aの位置に応じて、汲み上げポンプ8の駆動、停止、及び汲み上げ量を制御できる。
例えば、本実施形態におけるポンプ駆動制御部12は、VOUTが負の値を示すとき、すなわちインク液面20aが最適位置L2を下回っている場合には、汲み上げポンプ8を駆動し、VOUTが0以上を示すとき、すなわちインク液面20aが最適位置L2に達した場合には、汲み上げポンプ8を停止させるよう制御する。従って、インクジェットヘッド1がインク20を消費してインク液面20aが低下した場合に、自動的にインク20の補充が行われ、インク液面20aは常に最適位置L2に維持される。
【0026】
主タンク9は、インクジェットヘッド1から吐出されて消費されるインク20をサブタンク3に補充するためのインク20を、キャリッジ10から離れた位置に貯留する容器である。
主タンク9内のインク20は、汲み上げポンプ8によって汲み上げられ、インクチューブ7を介して、サブタンク3に供給される。
【0027】
次に、インクジェットプリンタ100の動作について、残量検知センサ4の残量検知動作を中心に説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサにおける容器内の液面位置と、検知電極の静電容量との関係を示す模式的なグラフである。横軸は液面位置、縦軸は検出される静電容量を示す。図7(a)は、本発明の実施形態に係る残量検知センサが感知する静電容量の範囲を説明するための概念図である。図7(b)は、従来技術に係る残量検知センサが感知する静電容量の範囲を説明するための概念図である。
【0028】
残量検知センサ4では、検知電極4aの周囲に、接地されたガード電極4bが配置され、検知電極4a、ガード電極4bにそれぞれ対向して、ガード電極4bを覆う範囲に、接地されたガード電極4dが配置されている。
このため、検知電極4aのガード電極4d側の静電容量は一定であり、ガード電極4dの外方の電界はシールドされている。
したがって、検知電極4aの静電容量は、例えば、キャリッジ10の移動や他の可動部材などによってガード電極4dの外方の部材に対する位置関係が変化しても、影響を受けることがない。また、ガード電極4dの外方側に近接して電気回路が設けられていても、その電気回路で発生する電界の影響は遮断もしくは低減される。
一方、検知電極4aは、サブタンク3側の空間では、サブタンク3およびサブタンク3内のインク20とを介してガード電極4bに隣接している。
そのため、残量検知センサ4では、検知電極4aの静電容量は、図7(a)において二点鎖線で示す領域Pのような、検知電極4aの表面近傍のサブタンク3側の空間の誘電体の変化のみに影響される。
したがって、種々のノイズの影響が低減され、検知電極4aの近傍の静電容量を高精度に測定することができる。
【0029】
例えば、図7(b)に示す従来技術の比較例のように、サブタンク3の側面に、接地された基準電極50bと、検知電極50aとを高さ方向に配置して、検知電極50aの静電容量CSを計測するような場合、検知電極50aの静電容量は、周囲の略すべての方向の誘電体の影響を受ける。そのため、領域Qの範囲に示すように、サブタンク3およびその内部の誘電体と同程度に、サブタンク3の外部側の誘電体の影響も受けてしまう。
その結果、本実施形態の場合と異なり、例えば、キャリッジ10の移動や他の可動部材などによって検知電極50aの外方の部材に対する位置関係が変化すると、検知電極50aの静電容量が変化してしまう。また、検知電極50aは、外方の電界がシールドされていないので、近傍に配置された電気回路の電界などの影響も受けてしまう。
【0030】
そこで、図4に示すように、サブタンク3内で、検知電極4aの長辺の高さ範囲に略相当する高さL1から高さL3(L3>L1)まで変化すると、インク液面20aの上昇に応じて静電容量が増大する。例えば、図6に示す曲線200のように、インク液面20aが、L1〜L2〜L3まで変化する間に、静電容量が、CS1〜CS2〜CS3のように、略直線的に単調に増加する。
具体的な数値例を挙げると、例えば、誘電体層4cがd=1mmの樹脂含浸ガラス繊維からなり、検知電極4a、ガード電極4b、4dがそれぞれ厚さ35μmの銅箔で形成され、外形がW1×H1=50mm×50mmで、その中央位置(すなわち、図3でa=16mm、b=5mm)に、W2×H2=16mm×38mmの検知電極4aを設けてなる残量検知センサ4であって、サブタンク3が肉厚1mmのポリエチレン製の肉厚1mmで、内容物が水性インクであるような場合、残量検知センサ4が検出する静電容量の範囲は、例えば、CS1=48pF〜CS3=55pFのような範囲となる。
【0031】
本実施形態の残量検知センサ4では、このようなインク液面20aの高さに対応する検知電極4aの静電容量の変化を残量検知回路部11の出力電圧VOUTとして検知することができ、ポンプ駆動制御部12によって、出力電圧VOUTが一定となるように、汲み上げポンプ8を駆動し、サブタンク3内のインク液面20aの高さが最適位置L2となるように制御することができる。
このとき、インクジェットヘッド1から吐出されるインク20の量はきわめて微量であり、インク液面20bの変動による静電容量の変化もまたきわめて小さいが、本実施形態では、計測ノイズを低減することができるので、正確な液面制御を行うことができる。
このため、インクジェットヘッド1によってインク20が消費されても、サブタンク3のインク液面20aの高さをL2に安定させることができる。その結果、良好なインクジェットヘッド1のインクノズルに安定したメニスカスを形成することができ、良好な画像記録を行うことができる。
【0032】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る残量検知センサについて説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る残量検知センサの構成を示す斜視図である。図9は、本発明の第2の実施形態に係る残量検知センサの配置状態を示す側面視の断面図である。図10(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る残量検知センサにおける容器内の液面位置と、検知電極の静電容量との関係を示す模式的なグラフである。横軸は液面位置、縦軸は検出される静電容量を示す。
【0033】
本実施形態の残量検知センサ4Aは、図8、9に示すように、上記第1の実施形態の残量検知センサ4の検知電極4aに代えて、検知電極40a、40bを、ガード電極4bに代えて、ガード電極40c(第2のガード電極)を備える。
残量検知センサ4Aは、図1に示すように、例えば、上記第1の実施形態のインクジェットプリンタ100において、主タンク9の側面の外側に配置され、主タンク9側の静電容量を計測することにより、インク液面20bの高さが所定範囲内にあるかどうかを検知することにより、主タンク9内のインク20の残量を検知するものである。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0034】
検知電極40a、40bは、それぞれ長辺W3、短辺H3の矩形状の導電層が距離H4を空けて(ただし、2・H3+H4<H1、W3<W1)並列された状態で残量検知センサ4に密接される表面に設けられたものであり、不図示の配線により電位検出が可能とされている。そして、検知電極40a、40bの短辺は、例えば主タンク9などの残量検知対象の高さ方向、すなわち、インク液面20bが上下する鉛直方向に沿って配置されている(図9参照)。
【0035】
ガード電極40cは、検知電極40a、40bのそれぞれの外周を取り囲む状態で、検知電極40a、40bと同一平面上に配置され、残量検知センサ4Aの外縁、すなわちW1×H1の矩形外形まで延ばされた導電層であり、不図示の配線により接地されている。
このため、図9に示すように、検知電極40a、40bと、ガード電極40cおよびガード電極4dとの間には、それぞれ合成静電容量がCa、Cbとなるコンデンサが形成されている。
それぞれの静電容量Ca、Cbは、上記第1の実施形態の残量検知回路部11と同様の電気回路によって計測することができる。
【0036】
このような構成の残量検知センサ4Aは、上記第1の実施形態の残量検知センサ4を上下方向に並列して一体化したのと同様な構成となっている。
したがって、上記第1の実施形態の検知電極4aと同様に、検知電極40a(40b)の静電容量は、図9において二点鎖線で示す領域Pa(Pb)のような、検知電極40a(40b)の表面近傍のサブタンク3側の空間の誘電体の変化のみに影響される。
そのため、インク液面20bが、検知電極40aの下端および上端位置近傍の高さをL1、L2とし、検知電極40bの下端および上端位置近傍の高さをL3、L4としたとき、検知電極40a、40bの静電容量の変化は、図10(a)、(b)の曲線201,202にそれぞれ示すような変化を示す。
すなわち、検知電極40bの静電容量は、インク液面20bが高さL3より小さい場合は、インク20が領域Pbに入らないため相対的に小さな値Cb1が計測され、インク液面20bが高さL3〜L4の間では、インク液面20bの高さに応じてCb1からCb2まで略直線的に増大する。そして、インク液面20bが高さL4以上では、検知電極40bの検知範囲すべてにインク20が満たされるため、一定値Cb2が計測される。
同様に、検知電極40aの静電容量は、インク液面20bの高さがL1からL2の間で、Ca1からCa2まで略直線的に増大し、高さL2以上で一定値Ca2が計測される。
【0037】
したがって、残量検知センサ4Aによれば、検知電極40b、40aの静電容量の大きさを解析することで、インク液面20bが、検知電極40b、40aの高さ方向の配置位置に対応した4つの高さL1、L2、L3、L4に対する位置関係を検知することができる。例えば、それぞれの静電容量がCb1、Ca2である場合には、インク液面20bが高さL2〜L3の間にあることを検知することができる。
また、特に、高さL1〜L2の範囲、および高さL3〜L4の範囲では、それぞれ検知電極40b、40aの静電容量によって、インク液面20bの高さを計測することができる。
その際、上記第1の実施形態と同様に、種々のノイズの影響が低減されるので検知電極40a、40bの近傍の静電容量を高精度に測定することができる。
【0038】
残量検知センサ4Aは、単体で、複数の検知電極を備えるので、例えば、主タンク9インク液面20bを検知して、主タンク9内のインク20の残量が一定量の範囲にあるかどうかを単体で確実に検知することができる。そして、インク液面20bの液面が、L2より低下したときに、低下量を正確に検知することができるので、その検知出力を用いて、インク残量を表示したり、インク補給を促す警告表示を行ったりすることができる。
また、インク20を主タンク9に補給する場合に、インク液面20bの高さを検知して、補給量の限度が近づいたことを警告することができる。
【0039】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る残量検知センサについて説明する。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。図12は、本発明の第3の実施形態に係る残量検知センサの構成を示す側面視の断面図である。
【0040】
本実施形態の残量検知センサ4Bは、図11、12に示すように、上記第1の実施形態の残量検知センサ4と同様に構成された検知部41Aに加えて、ガード電極41e(第3のガード電極)、参照電極41a、および誘電体層41bを追加したものである。
ガード電極41eは、ガード電極4dと同形状、同材質の導電層であり、ガード電極4dに対して検知電極4aと反対側に対向配置され、不図示の配線により接地されている。
ガード電極4dとガード電極41eとの間には、誘電体層4cと同材質の誘電体層41bが配置されている。
参照電極41aは、ガード電極4d、41eよりも小さな面積を有する導電層からなり、誘電体層41b中に、ガード電極4d、41eの離間方向の中間位置、かつそれらの面方向の略中央部に配置され、不図示の配線により電位検出が可能となっている。
参照電極41aの面積、ガード電極4d、41eの離間距離などは、参照電極41aの静電容量が一定値Crefとなるように設定される。
【0041】
このように、残量検知センサ4Bは、周囲の誘電体に応じて静電容量CSを示すコンデンサである検知部41Aと、一定の静電容量Crefを有するコンデンサである参照部41Bとが、層状に一体に形成されたものである。
したがって、本実施形態の残量検知センサ4Bは、検知電極4a、ガード電極4b、ガード電極4d、41eをそれぞれ電極パターンとする多層プリント基板によって構成することができる。この場合、誘電体層41bは、多層プリント基板の基材によって形成される。
【0042】
このような構成の残量検知センサ4Bによれば、参照部41Bは、検知部41Aと一体化されるとともに、検知部41Aと同様な材質で形成されたコンデンサとなる。そのため、静電容量Crefは、参照電極41aの面積や、誘電体層41bの厚さなどをアナログ的に少し変えるだけで、検知部41Aの静電容量CSと同オーダーに形成することができる。
【0043】
そのため、例えば、検知電極4aをサブタンク3の検知位置に配置してインク液面20aが最適の高さとなるときの静電容量を実験などで求め、その実測値と正確に一致する値に設定することもきわめて容易である。
このように設定された参照部41Bは、上記第1の実施形態の残量検知回路部11の参照コンデンサ31の代わりに用いることができる。
この場合、参照部41Bは、検知部41Aと一体化され、同材質から構成されているから、環境条件の変化、例えば温度や湿度などの変化があって静電容量が変化する場合に検知部41Aと同様に変化することになる。その結果、環境条件が変化しても、それらの差分であるΔCは、環境条件の影響がキャンセルされた状態で取得され、高精度な計測を行うことができる。
これに対して、第1の実施形態のように、残量検知センサ4と離れた位置に配置され、残量検知センサ4と異なる構成を有する参照コンデンサ31を用いる場合、仮に、Crefの値を最適状態のCSの値に正確に一致して競ってできたとしても、環境条件が変わると、それぞれ材質や構成が異なる残量検知センサ4と参照コンデンサ31とでは、静電容量がそれぞれ独立に変化してしまう。その結果、ΔCの検出誤差は、本実施形態の残量検知センサ4Bを用いる場合に比べて大きくなるものである。
【0044】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図13は、本発明の第3の実施形態の変形例の残量検知センサの概略構成を示す模式的な斜視図である。
【0045】
本変形例の残量検知センサ4Cは、多層プリント基板上の一部に上記第3の実施形態の残量検知センサ4Bと同様の構成のセンサ部42を設け、センサ部42に隣接する側方の基板上に、残量検知回路部43(残量検知回路)を設けたものである。
残量検知回路部43は、上記第1の実施形態の残量検知回路部11において、参照コンデンサ31として、参照部41Bを用いた構成を採用することができる。
このような本変形例の残量検知センサ4Cによれば、残量検知回路部43が、センサ部42と近接して一体化されるので、検知電極4a、参照電極41aから残量検知回路部43までの配線を短縮し、かつ多層基板の配線パターンを利用して容易にシールドすることができる、配線を通した信号劣化、ノイズ混入を低減することができる。
そのため、上記第1、第3の実施形態に述べた作用効果と相俟って、より高精度かつコンパクトな残量検知センサとすることができる。
【0046】
ここで、残量検知回路部43の配置位置は、検知電極4a、および参照電極41aの静電容量に影響しない位置であれば、いずれの位置に配置してもよいが、本変形例では、センサ部42の側方において、ガード電極4dに対して検知電極4aと反対側の基板層に形成するようにしている。
この場合、ガード電極4dにより、検知電極4aに対する残量検知回路部43の電界の影響を遮断することができる。
【0047】
上記第3の実施形態の残量検知センサ4Cは、検知電極4aおよびガード電極4bの背後(容器と反対側)にガード電極4dを配置し、その背後にさらに、参照電極41aおよびガード電極41eを配置した、4層構造の残量検知センサの例になっている。
すなわち、第1および第2のガード電極と同電位とされ、第2のガード電極に対して、容器と反対側に離間して対向配置された第3のガード電極と、第2のガード電極と、第3のガード電極との間の対向範囲内に、挟まれて配置された参照電極とを備えた残量検知センサの例になっている。そして、参照電極が検知電極および第1、第2のガード電極とで構成される検知部の裏面側に一体的に配置されることで、参照電極が検知電極とほぼ同じ環境条件となるように一体化されているものである。
なお、多層プリント基板の場合、一般に誘電層41bは参照電極41bに沿う薄層の接合層を介して接合されるが、図12は模式図のため、接合層の図示を省略している(以下の断面図も同様)。
【0048】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る残量検知センサについて説明する。
図14は、本発明の第4の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。図15は、本発明の第4の実施形態に係る残量検知センサの図14のB−B線に沿う断面図である。
【0049】
本実施形態の残量検知センサ4Dは、図14、15に示すように、上記第3の実施形態の残量検知センサ4Cのガード電極4b、4d、参照電極41aに代えて、それぞれ、ガード電極44b(第1のガード電極)、ガード電極44d(第2のガード電極)、参照電極44eを備えたものである。以下、上記各実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0050】
ガード電極44bは、上記第3の実施形態のガード電極4bの開口部を検知電極4aの短辺方向にずらしたもので、外形はガード電極4bと同一の大きさである。そして、ガード電極44bは、検知電極4aと同一平面で、検知電極4aの外周を取り囲むように設けられている。
検知電極4aの背後およびガード電極44bの背後(容器と反対側)には、それぞれ誘電体層4cを挟んで、ガード電極44dおよび参照電極44eが配置されている。
ここで、検知電極4aは、ガード電極44bの中心から外れた位置に配置されており、ガード電極44dは、検知電極4aの背後にあって少なくとも検知電極4aを覆う範囲に配置されている。
【0051】
また、参照電極44eは、ガード電極4bと同方向に延びる長方形に形成されており、ガード電極44bで覆われる大きさに設けられている。そして、ガード電極44dの側方に平行に配置されている。
【0052】
また、参照電極44eの背後の少なくとも参照電極44eを覆う範囲に、誘電体層41bを挟んで、参照電極44eと平行に対向するようにガード電極41eが配置されている。このため、本実施形態では、ガード電極41eは、ガード電極44dをも完全に覆っている。
したがって、残量検知センサ4Dの外形は、サブタンク3の側面の範囲内に収まるW1×H1の矩形状とされている。
【0053】
本実施形態の残量検知センサ4Dは、3層の多層プリント基板を用いて構成されている。すなわち、第1層の導電パターンにより、検知電極4aとガード電極44bとが構成され、第2層の導電パターンにより、ガード電極44dと参照電極44eとが構成され、第3層の導電パターン(ベタパターン)によりガード電極41eが構成されている。
また、誘電体層4cは、第1層の導電パターンと第2層の導電パターン間の絶縁層により構成され、誘電体層41bは、第2層の導電パターンと第3層の導電パターン間の絶縁層により構成されている。
【0054】
なお、残量検知センサ4Dの構成は、1つの多層プリント基板による構成には限定されない。例えば、片面プリント基板と両面プリント基板を接着剤で貼り合わせることにより、3つの導電パターン層を有する積層構造を形成して、残量検知センサ4Dを構成してもよい。
【0055】
ガード電極44b、44d、41eは、不図示の配線によりそれぞれ接地され、同電位とされている。そして、図15に示すように、検知電極4aとガード電極44bとの間、および検知電極4aとガード電極44dとの間に、合成静電容量がCSとなるコンデンサが形成されている。また、参照電極44eとガード電極44bとの間、および、参照電極44eとガード電極41eとの間に、合成静電容量がCrefとなる参照コンデンサが形成されている。
【0056】
検知電極4aに接続された配線、参照電極44eに接続された配線、およびガード電極44b、44d、41eに接続された接地線は、検知電極4aの静電容量を検出して、サブタンク3内の残量を検知する残量検知回路(不図示)に電気的に接続されている。
【0057】
なお、参照電極44eの面積、ガード電極44d、41eの離間距離などは、参照電極44eの静電容量が一定値Crefとなるように設定される。
【0058】
このように、残量検知センサ4Dは、周囲の誘電体に応じて静電容量CSを示すコンデンサである検知部44Aと、一定の静電容量Crefを有するコンデンサである参照部44Bとが一体に形成されたものである。すなわち、検知部44Aと一体になった参照部44Bは、検知部44Aと同様な材質で形成されたコンデンサとなる。そのため、静電容量Crefは、参照電極44eの面積や、誘電体層4c、41bの厚さなどをアナログ的に少し変えるだけで、検知部44Aの静電容量CSと同オーダーに形成することができる。
【0059】
したがって、例えば、検知電極44aをサブタンク3の検知位置に配置してインク液面20aが最適の高さとなるときの静電容量を実験などで求め、その実測値と正確に一致する値に設定することもきわめて容易である。
このように設定された参照部44Bは、上記第1の実施形態の残量検知回路部11の参照コンデンサ31の代わりに用いることができ、第3の実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、ガード電極44dと参照電極44eとを同一平面内に設けていることから、検知電極4a、ガード電極44b、44d、41e、および参照電極44eを多層プリント基板の導電パターンで構成する場合に、ガード電極44dと参照電極44eを、同一層の導電パターンで構成することができ、従って、多層プリント基板の層数の減少を図ることができる。
【0060】
残量検知センサ4Dの残量検知精度の環境条件による影響を低減するには、検知部44Aと参照部44Bとが、略同一の環境条件に置かれることが好ましい。
そのためには、参照電極44eの幅W1方向の位置は、検知電極4aとガード電極44dとで構成されるコンデンサの影響を受けない程度に、検知電極4aに近接された位置とすることが好ましい。また、参照電極4eの長辺方向の長さは、ガード電極4bと同程度の長さであることが好ましい。
【0061】
上記第4の実施形態の残量検知センサ4Dは、検知電極4aの背後にガード電極44dを配置し、ガード電極44bに対向し、ガード電極44dの側方の同一平面位置に参照電極44eを配置した、3層構造の残量検知センサの例になっている。
すなわち、第1および第2のガード電極と同電位とされ、第1のガード電極に対して、容器と反対側に離間して対向配置された第3のガード電極と、第1のガード電極と、第3のガード電極との間の対向範囲内に、挟まれて配置された参照電極とを備えた残量検知センサの例になっている。そして、参照電極が検知電極および第1、第2のガード電極とで構成される検知部の側方に一体的に配置されることで、参照電極が検知電極とほぼ同じ環境条件となるように一体化されているものである。
【0062】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る残量検知センサについて説明する。
図16は、本発明の第5の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。図17は、本発明の第5の実施形態に係る残量検知センサの図16のC−C線に沿う断面図である。
【0063】
本実施形態の残量検知センサ4Eは、図16、17に示すように、一般に広く普及している4層プリント基板で、上記第4の実施形態と同様の構成のセンサ部45Aと、残量検知回路部45Bとを一体に構成したものである。ここで、センサ部45Aの構成は、第4の実施形態の残量検知センサ4Dと全く同様であるので説明を省略する。
【0064】
すなわち、図17に示すように、本実施形態の残量検知センサ4Eは、4層プリント基板の導体パターンの第1層〜第3層目によって、センサ部45Aの検知電極4a、ガード電極44b、44d、44e、41eを形成し、第4層目の導電パターン45hを、検知回路部45Bを構成するためのプリント配線に用いる。そして、導電パターン45hに回路部品45iを実装して、例えば、スルーホール45jなどによってセンサ部45A側と検知回路部45B側を結線することにより、センサ部45Aと検知回路部45Bとを、略同一の面積範囲において積層して一体化したものである。このように構成することにより、図13に示すようにプリント基板を延長して残量検知回路部43を構成する必要がなくなるので、プリント基板の投影面積が低減され、コンパクトで安価な構造とすることができる。
【0065】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る残量検知センサについて説明する。
図18は、本発明の第6の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。図19は、本発明の第6の実施形態に係る残量検知センサの図18のD―D線に沿う断面図である。
【0066】
本実施形態の残量検知センサ4Fは、図18、19に示すように、上記第4の実施形態の残量検知センサ4Dにおいて、ガード電極44bに代えて、ガード電極4b(第1のガード電極)を備え、参照電極44eに代えて、一対の参照電極46eを備えるようにしたものである。以下では、上記の各実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
残量検知センサ4Fでは、検知電極4aは、第1の実施形態と同様に、ガード電極4bの幅方向の中心部に配置されている。また、検知電極4aの背後(容器と反対側)には、上記第4の実施形態と同様に、誘電体層4cを挟んでガード電極44dを配置している。
そして、検知電極4aをガード電極4bの中央に配置することで、ガード電極44dの両側方に形成されているスペースにおいて、ガード電極4bの背後でガード電極4bに覆われる範囲に、誘電体層4cを挟んで2つの参照電極46eが配置されている。また、各参照電極46eおよびガード電極44dの背後には、誘電体層41bを挟んでガード電極41eが配置されている。
【0068】
参照電極46eは、第4実施形態の参照電極44eを、幅方向に2分割した寸法のものであり、不図示の配線により、互いに同電位に設けられている。
また、ガード電極4b、44d、41eは、不図示の配線によりそれぞれ接地され、同電位とされている。そして、図19に示すように、検知電極4aとガード電極4bとの間、および検知電極4aとガード電極44dとの間に、合成静電容量がCSとなるコンデンサが形成されている。また、各参照電極46eとガード電極4bとの間、および、各参照電極46eとガード電極41eとの間に、合成静電容量がCrefとなる参照コンデンサが形成されている。
【0069】
このような残量検知センサ4Fによれば、第4の実施形態の検知部44Aと同様な静電容量を有する検知部46Aが形成され、第4の実施形態の参照部44Bと同様な静電容量を有する参照コンデンサである参照部46Bが、検知部46Aの両側方に形成される。
このため、第4の実施形態と同様にして残量検知の計測を行うことができる。
その際、参照部46Bが検知部46Aの両側方に設けられていることにより、検知電極4aの短手方向の両側方における環境条件の影響が、それぞれの参照部46Bにも略同様に及ぶことから、検知部46Aの両側方側で、環境条件が異なることがあっても、残量検知の検知精度への影響を低減することが可能となる。そのため、高精度の残量検知を行うことができる。
【0070】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係る残量検知センサについて説明する。
図20は、本発明の第7の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。図21は、本発明の第7の実施形態に係る残量検知センサの図20のE−E線に沿う断面図である。
【0071】
本実施形態の残量検知センサ4Gは、図20、21に示すように、上記第6の実施形態の残量検知センサ4Fの一対の参照電極46eに代えて、ガード電極44dの外周を囲む矩形ループ状の参照電極47eを備えるものである。以下、上記第6の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0072】
参照電極47eは、対向位置のガード電極4b、41eとの間に形成される合成静電容量が、第6実施形態の一対の参照電極46eと同じ静電容量Crefとなるように形成され、これにより、検知部46Aと同様な検知部47Aを外周側で取り囲むような参照部47Bが形成されている。
このため、第6の実施形態と同様にして残量検知の計測を行うことができる。
その際、参照部47Bは検知部47Aの外周側を囲んでいるので、検知電極4aの外周部に環境条件の影響が、参照部46Bにも略同様に及ぶことから、検知部47Aの外周部で、環境条件が異なることがあっても、残量検知の検知精度への影響を低減することが可能となる。そのため、高精度の残量検知を行うことができる。
【0073】
なお、上記の各実施形態、変形例に記載された構成要素は、技術的に可能であれば、本発明の技術的思想の範囲内で適宜組み合わせて実施することができる。
例えば、第1の実施形態の残量検知センサ4を、主タンク9のインク残量を検知するために用いてもよい。
また、残量検知センサ4を多層プリント基板で構成したり、さらに、同一基板上に残量検知回路部11を設けたりしてもよい。この参照コンデンサ31は、残量検知センサ4の構成と異なるため環境変動の影響は異なるが、配線が短くなるためノイズに残量検知センサとなる。
また、上記第1の実施形態のインクジェットプリンタ100の残量検知センサ4に代えて、上記第4〜第7の実施形態の残量検知センサ4D、4E、4F、4Gを用いることができる。またこれらの各電極配置の構成は、上記第2の実施形態の残量検知センサ4Aに対しても適用することができる。
【0074】
また、上記の第3〜第7の実施形態の説明では、導電パターンの層数を最小にするために、3層の多層プリント基板を用いて、残量検知センサ4D、4E、4F、4Gを構成した場合の例で説明したが、より多層に導電パターンを設けることができる場合には、第2のガード電極と参照電極とは、必ずしも同一平面内に配列しなくともよい。
この場合、第2のガード電極の位置や、誘電層の誘電率の違いなどに応じて、参照部のそれぞれの静電容量は変化する可能性があるが、その場合には、第2のガード電極の面積などを適宜設定することにより、合成静電容量を、上記各実施形態と同様なCrefにすることは容易である。
【0075】
また、上記の説明では、残量検知センサは、インクジェットプリンタに用いた場合の例で説明したが、これは一例であって、容器の内容物の残量が、静電容量の変化によって検出可能であれば、どのような目的の装置の容器の内容物の残量検出に用いてもよい。
【0076】
また、上記の説明では、容器の内容物が液体の場合の例で説明したが、液体に限定されるものではなく、例えば粉体などの残量検知に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサを用いたインクジェットプリンタの概略構成を示す模式的な構成説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサの配置状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサの構成を示す斜視図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサから出力電圧を取り出す残量検知回路の一例を示す回路図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る残量検知センサにおける容器内の液面位置と、検知電極の静電容量との関係を示す模式的なグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る残量検知センサおよび従来技術に係る残量検知センサが感知する静電容量の範囲を説明するための概念図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る残量検知センサの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る残量検知センサの配置状態を示す側面視の断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る残量検知センサにおける容器内の液面位置と、検知電極の静電容量との関係を示す模式的なグラフである。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る残量検知センサの構成を示す側面視の断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の変形例の残量検知センサの概略構成を示す模式的な斜視図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る残量検知センサの図14のB−B線に沿う断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。
【図17】本発明の第5の実施形態に係る残量検知センサの図16のC−C線に沿う断面図である。
【図18】本発明の第6の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。
【図19】本発明の第6の実施形態に係る残量検知センサの図18のD―D線に沿う断面図である。
【図20】本発明の第7の実施形態に係る残量検知センサの電極配置を示す斜視分解図である。
【図21】本発明の第7の実施形態に係る残量検知センサの図20のE−E線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 インクジェットヘッド
3 サブタンク(インクタンク、容器)
4、4A、4B、4C 残量検知センサ
4a、40a、40b 検知電極
4b、40c、44b ガード電極(第1のガード電極)
4c、41b 誘電体層
4d、44d ガード電極(第2のガード電極)
5 センサホルダ
6 押圧バネ
8 汲み上げポンプ
9 主タンク(インクタンク、容器)
10 キャリッジ
11、43、45B 残量検知回路部(残量検知回路)
12 ポンプ駆動制御部
20 インク(容器の内容物)
20a、20b インク液面
31 参照コンデンサ
41a、44e、46e、47e 参照電極
41e ガード電極(第3のガード電極)
41A、44A、46A、47A 検知部
41B、44B、46B、47B 参照部
42 センサ部
100 インクジェットプリンタ
OUT 出力電圧(残量検知出力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の外側に配置して前記容器の内容物の残量を検知する残量検知センサであって、
前記容器に対向して配置する検知電極と、
該検知電極の外周を取り囲む状態で、前記検知電極と同一平面に配置された第1のガード電極と、
前記検知電極に対して少なくとも該検知電極を覆う範囲に離間して対向配置され、前記第1のガード電極と同電位とされた第2のガード電極とを備え、
前記第1および第2のガード電極の電位を基準電位として、前記検知電極で計測される静電容量に基づいて、前記容器の内容物の残量を検知できるようにしたことを特徴とする残量検知センサ。
【請求項2】
前記検知電極は、互いに離間した位置に複数設けられ、
前記第1のガード電極は、前記複数の検知電極のそれぞれの外周を取り囲む状態とされ、
前記複数の検知電極でそれぞれ計測される静電容量に基づいて、前記容器の内容物の残量を複数の段階で検知できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の残量検知センサ。
【請求項3】
前記第1および第2のガード電極と同電位とされ、前記第1および第2のガード電極の少なくともいずれかに対して、前記容器と反対側に離間して対向配置された第3のガード電極と、
前記第1のガード電極または前記第2のガード電極と、前記第3のガード電極との間の対向範囲内に、挟まれて配置された参照電極とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の残量検知センサ。
【請求項4】
前記参照電極は、
前記第1のガード電極と前記第3のガード電極との間の対向範囲内に挟まれて配置され、前記第2のガード電極と同一平面に配置されたことを特徴とする請求項3に記載の残量検知センサ。
【請求項5】
前記第2のガード電極は、
前記検知電極および前記第1のガード電極を覆う範囲に設けられ、
前記第3のガード電極は、
前記第2のガード電極を覆う範囲に設けられ、
前記参照電極は、
前記第2のガード電極と前記第3のガード電極との間の対向範囲内に挟まれて配置されたことを特徴とする請求項3に記載の残量検知センサ。
【請求項6】
前記検知電極、前記第1のガード電極、および前記第2のガード電極は、多層プリント基板の導電パターンとして形成され、
前記多層プリント基板上に、前記検知電極の静電容量を計測して残量検知出力を発生する残量検知回路を一体に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の残量検知センサ。
【請求項7】
前記検知電極、前記第1のガード電極、前記第2のガード電極、前記第3のガード電極、および前記参照電極は、多層プリント基板の導電パターンとして形成され、
前記多層プリント基板上に、前記検知電極の静電容量を計測して残量検知出力を発生する残量検知回路を一体に設けたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の残量検知センサ。
【請求項8】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
該インクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクと、
該インクタンクの外側に配置された請求項1〜7のいずれかに記載の残量検知センサとを備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2008−230227(P2008−230227A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313514(P2007−313514)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】