説明

残量計測装置

【課題】正確な液体の残量を確認することの可能な残量計測装置を提供する。
【解決手段】ほぼ鉛直方向に延在する導電性の振動棒31の上端が容器の上部と絶縁性の部材(図示せず)を介して固定されている。振動棒31の上端またはその近傍には、一対の圧電素子32が振動棒31を両側から挟み込むように配置されている。振動棒31および一対の圧電素子32には、各圧電素子32ほぼ同位相に変位させる電圧を各圧電素子32に印加すると共に所定の周波数帯を掃引する交流信号源33がワイヤ37を介して接続されている。計測部34が交流信号源33と並列に接続されており、入力アドミタンスを計測すると共に、計測した入力アドミタンスに基づいて共振周波数を検出し、検出した共振周波数に基づいて容器内の液体ガスLの残量を導出し、残量についての信号を表示部35および報知部36に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に残留する液体の液量を計測する残量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液化酸素、液化窒素、液化アルゴンなどの液化ガスを収容するものとして、超低温液化ガス容器というものが一般に利用されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−74200号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この超低温液化ガス容器は、医療現場などに欠かすことのできないものである。そのため、医療現場などでは、多くの超低温液化ガス容器が在庫として保管されている。しかし、使用中の超低温液化ガス容器内の液体の残量の確認は容器に取り付けられているフロート式の液面計の表示目盛りを読むことにより行われているのが一般的であり、大雑把な残量確認しか行われていなかった。そのため、従来は、表示目盛りが、容器が空になりそうになっていることを示した場合には、実際には容器内に液体が十分に残留しているときであっても、その容器を直ちに別の新しい容器に交換せざるを得なかった。その結果、交換された容器内には多くの液体が残ってしまい、容器内の液体の利用効率が悪かった。
【0004】
また、このような問題は、超低温液化ガス容器に限らず、外部から容器内を視認することの困難な容器においても同様に生じるものである。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、正確な液体の残量を確認することの可能な残量計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の残量計測装置は、以下の(A1)〜(A4)の各構成要素を備えたものである。
(A1)一の方向に延在すると共に一部が容器内の液体に浸される振動棒
(A2)振動棒の一端またはその近傍に連結された振動発生素子
(A3)振動発生素子に対して所定の周波数帯の電圧を印加する交流信号源
(A4)振動棒の放射インピーダンスを計測すると共に計測した放射インピーダンスに基づいて共振周波数を検出し、かつ検出した共振周波数に基づいて液体の残量を導出し、出力する計測部
【0007】
本発明の残量計測装置では、一の方向に延在する振動棒の一端またはその近傍に振動発生素子が連結されているので、この振動発生素子に対して所定の周波数帯の電圧が交流信号源から印加されると、振動発生素子の変位(振動)に応じて振動棒が振動する。このとき、ある周波数において振動棒が共振し、それに応じて振動棒の放射インピーダンスが変化する。その放射インピーダンスは計測部によって計測されるので、計測部で計測された放射インピーダンスの変化に基づいて共振周波数が検出される。ここで、振動棒の共振周波数は、容器内の液体の液面が振動棒に接する位置に応じて変化するので、検出された共振周波数に基づいて液体の残量が導出され、出力される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の残量計測装置によれば、容器内の液体の液面が振動棒に接する位置に応じて変化する共振周波数を放射インピーダンスの変化に基づいて検出し、検出した共振周波数に基づいて液体の残量を導出し、出力するようにしたので、正確な液体の残量を確認することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る残量計測部30を備えた超低温液化ガス容器1の概略構成を表すものである。この超低温液化ガス容器1は、容器本体部10と、容器本体部10の上部に取り付けられた充填取出部20および残量計測部30とを備えたものである。
【0011】
容器本体部10は、液化酸素、液化窒素、液化アルゴンなどの液化ガスLを収容するたて型の容器であり、内槽11および外槽12からなる二重殻構造となっている。内槽11は、例えば超低温においても脆性を起こさない十分な強度および靭性を有するオーステナイト系ステンレス鋼板からなり、外槽12は、例えば一般的な圧延鋼板からなる。内槽11と外槽12との間の空隙13には、外槽12を支持する支持部材14が設けられている。この支持部材14は、例えば熱伝導度の小さい断熱材からなり、内槽11への熱の侵入を最小限に抑えるようになっている。また、空隙13は、真空となっており、支持部材14と同様、内槽11への熱の侵入を最小限に抑えるようになっている。
【0012】
内槽11内には、液化ガスLが加圧状態下で貯留されている。なお、以下において、単に「容器」と称した場合には、その容器は内槽11を指しているものとする。
【0013】
充填取出部20は、液化ガスLを内槽11内に流し込んだり、内槽11内から取り出したりするための機構である。この充填取出部20は、例えば、充填取出用配管31と、充填取出用配管31の中途に挿入接続された充填取出弁32とを有している。
【0014】
ここで、充填取出用配管31は、一端が外部に配置されると共に他端が内槽11内の底部に配置されたものであり、液化ガスLを容器内に流し込んだり、容器内から取り出すことが可能である。また、充填取出弁32は、超低温液化ガス容器1を使用する際に開閉する弁である。
【0015】
残量計測部30は、液化ガスLの液面Sの位置(液化ガスLの残量)を計測するためのものである。この残量計測部30は、例えば、振動棒31、一対の圧電素子32、交流信号源33、計測部34、表示部35および報知部36を有している。
【0016】
振動棒31は、一の方向(図1ではほぼ鉛直方向)に延在する固体材料により構成されている。ここで、固体材料としては、耐腐食性を有する材料、例えば、金属、樹脂、ガラス材などがある。この振動棒31の断面積は、圧電素子32からの応力に応じて変位することの可能な範囲内の大きさとなっている。なお、この振動棒31の断面形状は、特に限定されるものではないが、方形状、楕円形状、円形状など種々の形状とすることが可能である。
【0017】
また、この振動棒31の一端(図1では上端)は、容器の上部と絶縁性の部材(図示せず)を介して固定されており、振動棒31が駆動されている最中や輸送中などにぐらついたり、容器の内壁と接触することのないようになっている。また、この振動棒31の他端(図1では下端)は、自由端となっており、駆動されている最中に振動する(揺動する)ことが可能となっている。なお、この振動棒31の下端は、容器内の液体ガスLが空駆動されている最中に容器の底面に接触しない程度に近づけて配置されていることが好ましい。
【0018】
一対の圧電素子32は、振動棒31の一端(図1では上端)またはその近傍に連結されており、振動棒31を両側から挟み込むように配置されている。各圧電素子32は、振動棒31の延在方向に延在する圧電体32Aと、圧電体32Aを挟み込む一対の電極32B,32Cとを有しており、電極32Cが振動棒31と接すると共に電気的に接続されている。つまり、各圧電素子32の双方の電極32Cが振動棒31を介してほぼ共通電位となっている。
【0019】
ここで、各圧電体32Aは、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などからなる。各圧電体32Aは、電極32B側の電圧を基準として双方の圧電素子32の電極32B,32C間に同一の電圧を印加したときにほぼ同位相で変位するように配置されている。また、各圧電体32Aの厚さDおよび延在方向の長さLは、後述するように所定の大きさに設定されている。
【0020】
また、電極32B,32Cは、例えば、金属、樹脂、ガラス材、木材などからなる。
【0021】
交流信号源33は、ワイヤ37を介して、各圧電素子32をほぼ同位相に変位させる電圧を各圧電素子32に印加すると共に、後述するように所定の周波数帯を掃引するようになっている。なお、ワイヤ37は、図2に示したように、例えば2本のワイヤ37A,37Bからなり、ワイヤ37Aが各圧電素子の電極32Bに接続されており、ワイヤ37Bが振動棒31の一端(図2では上端)に接続されている。
【0022】
計測部34は、例えばブリッジ回路などを用いて、振動棒31の放射インピーダンス(入力インピーダンス)を計測するものである。計測部34は、例えばブリッジ回路を振動棒31および圧電素子32に接続するポートを2つ有しており、一方のポートがワイヤ37Aを介して各圧電素子の電極32Bに接続されており、他方のポートがワイヤ37Bを介して振動棒31に接続されている。
【0023】
また、計測部34は、計測した放射インピーダンスの最大ピークの位置に基づいて共振周波数を検出し、検出した共振周波数と、内蔵された記憶部34Aに記憶しておいた情報(具体的には、後述するように図3に示したような共振周波数と液面Sの位置との対応関係)とに基づいて容器内の液体ガスLの残量を導出し、残量を表示する信号を表示部35に出力すると共に、残量に対応した信号(例えば残量の変化から推定される容器の交換時期を示す信号)を報知部36に出力するようになっている。
【0024】
なお、計測部34から表示部35や報知部36への信号の伝送は、有線や無線で行うことが可能である。従って、計測部34から表示部35や報知部36への信号の伝送を無線で行う場合には、表示部35や報知部36を超低温液化ガス容器1とは別個の場所に容易に配置することが可能である。
【0025】
表示部35は、計測部34からの信号に応じた出力を行うようになっている。例えば、計測部34で得られた残量についての情報を表示する信号を受信すると、残量を表示し、必要に応じて交換時期を表示するようになっている。
【0026】
報知部36は、計測部34からの信号に応じた出力を行うようになっている。例えば、残量についての情報を表示する信号を受信すると、例えば、残量に応じたランプを点滅させたり、警報音を鳴らすようになっている。また、例えば、交換時期が近づいたことを意味する信号を受信すると、例えば、交換時期を知らせるランプを点滅させたり、警報音を鳴らすようになっている。
【0027】
次に、図3を参照して、本実施の形態の残量計測部30における残量計測について詳細に説明する。なお、図3は、容器内に残留している液体ガスLの残量を満タン(F)から空(0)まで変化させた場合に、交流信号源33から各圧電素子32をほぼ同位相に変位させる電圧を各圧電素子32に印加すると共に幅広い周波数帯(f〜f)を掃引したときに計測部34で計測された放射インピーダンスの最大ピークの位置から得られる複数の共振周波数をプロットしたものである。
【0028】
本実施の形態の残量計測部30では、各圧電素子32をほぼ同位相に変位させる電圧が交流信号源33から各圧電素子32に印加される。すると、各圧電素子32の変位(振動)に応じて振動棒31が振動する。このとき、交流信号源33からは所定の周波数帯を掃引する信号が一対の圧電素子32に印加されるので、掃引周波数帯における1または複数の周波数において、振動棒31および一対の圧電素子32が共振し、それに応じて振動棒31の放射インピーダンスが変化する。
【0029】
ここで、交流信号源33から出力される交流信号の掃引周波数帯は、振動棒31の互いに隣り合う共振周波数同士の間隔Δf(=f−f)よりも狭くなっており、かつ液体ガスLの残量が空から満タンになるまでの間の共振周波数の変位幅Δf(=f−f)よりも広くなっていることが好ましい。そのようにした場合には、掃引周波数帯において共振する周波数を1つとすることができる。
【0030】
もっとも、掃引周波数帯において共振周波数が1つだけ検出されるようにするためには、振動棒31および圧電素子32の互いに隣り合う共振周波数同士の間隔が、容器内の液化ガスLの残量がゼロから満タンになるまでの間の共振周波数の変位幅よりも大きくなるように、各圧電体32Aの厚さDおよび延在方向の長さLをあらかじめ設定しておくことが必要である。
【0031】
次に、計測部34のブリッジ回路において、振動棒31の放射インピーダンスが計測され、計測された放射インピーダンスの最大ピークの位置から共振周波数が検出される。ここで、振動棒31の共振周波数は、図3に示したように、容器内の液体ガスLの液面Sが振動棒31に接する位置に応じて変化するので、検出した共振周波数と、記憶部34Aに記憶されている共振周波数と液面Sの位置との対応関係とに基づいて、液体ガスLの残量が導出される。
【0032】
次に、計測部34において、導出した残量についての情報を表示する信号および必要に応じて交換時期を表示する信号が表示部35に出力されると共に、残量がわずかである場合には、残量がわずかであることを示す信号が報知部36に出力される。これにより、表示部35において、計測部34からの信号に応じて、残量や交換時期が表示され、報知部36において、例えば、残量や交換時期に応じたランプが点滅したり、警報音が鳴る。また、例えば、交換時期が近づいたことを意味する信号を受信した場合には、例えば、交換時期を知らせるランプが点滅したり、警報音が鳴る。
【0033】
このように、本実施の形態の残量計測部30およびそれを備えた残量計測装置1では、容器内の液体ガスLの液面Sが振動棒31に接する位置に応じて変化する共振周波数を放射インピーダンスの変化に基づいて検出し、検出した共振周波数に基づいて液体ガスLの残量を導出し、出力するようにしたので、容器の形状や、容器内に存在する構造物(例えば充填取出用配管11など)の影響を受けることなく、正確な液体の残量を確認することが可能である。
【0034】
図4は、振動棒31の材料をSUS、振動棒31の断面形状を正方形状、振動棒31の断面の一辺の長さを6mm、振動棒31の長さを500mmとしたときに検出された共振周波数特性を表したものである。また、図5は、振動棒31の材料をSUS、振動棒31の断面形状を円形状、振動棒31の直径を6mm、振動棒31の長さを1000mmとしたときに検出された共振周波数特性を表したものである。
【0035】
図4、図5から、振動棒31の断面積を小さくしたり、振動棒31の表面を滑らかな形状とした方が、計測可能な液面位置を大きくすることができ、深い容器に好適に用いることができると言える。
【0036】
以上、上記実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、振動棒31を振動させる素子として圧電素子を用いたが、その他の振動発生素子、例えば磁歪素子なども用いることが可能である。
【0038】
また、上記実施の形態では、本発明を超低温液化ガス容器1に適用した場合について説明したが、上記したように、本発明の計測方法は容器の形状や、容器内に存在する構造物(例えば充填取出用配管11など)の影響を受けることがないことから、本発明をどのようなタイプの容器に対しても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態に係る超低温液化ガス容器の概略構成図である。
【図2】図1の残量計測部の概略構成図である。
【図3】図1の残量計測部の計測方法について説明するための特性図である。
【図4】一実施例における液面位置と共振周波数との関係を表した特性図である。
【図5】他の実施例における液面位置と共振周波数との関係を表した特性図である。
【符号の説明】
【0040】
1…超低温液化ガス容器、10…容器本体部、11…内槽、12…外槽、13…空隙、14…支持部材、20…充填取出部、21…充填取出用配管、22…充填取出弁、30…残量計測部、31…振動棒、32…圧電素子、33…交流信号源、34…計測部、35…表示部、36…報知部、37,37A,37B…ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向に延在すると共に一部が容器内の液体に浸される振動棒と、
前記振動棒の一端またはその近傍に連結された振動発生素子と、
前記振動発生素子に対して所定の周波数帯の電圧を印加する交流信号源と、
前記振動棒の放射インピーダンスを計測すると共に計測した放射インピーダンスに基づいて共振周波数を検出し、かつ検出した共振周波数に基づいて液体の残量を導出し、出力する計測部と
を備えたことを特徴とする残量計測装置。
【請求項2】
前記振動発生素子は、圧電素子または磁歪素子である
ことを特徴とする請求項1に記載の残量計測装置。
【請求項3】
前記振動発生素子は、前記振動棒の一端またはその近傍を挟み込むように配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の残量計測装置。
【請求項4】
前記振動棒は、前記振動棒の互いに隣り合う共振周波数同士の間隔が、前記液体の残量がゼロから満タンになるまでの間の共振周波数の変位幅よりも大きくなるような厚さおよび延在方向の長さを有している
ことを特徴とする請求項1に記載の残量計測装置。
【請求項5】
前記交流信号源は、前記振動棒の互いに隣り合う共振周波数同士の間隔よりも狭く、かつ前記液体の残量が空から満タンになるまでの間の共振周波数の変位幅よりも広い帯域の周波数帯を掃引する
ことを特徴とする請求項1に記載の残量計測装置。
【請求項6】
前記計測部は、ブリッジ回路を用いて放射インピーダンスを計測する
ことを特徴とする請求項1に記載の残量計測装置。
【請求項7】
前記制御部は、放射インピーダンスの最大ピークの位置から共振周波数を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の残量計測装置。
【請求項8】
前記振動棒は、前記容器内においてほぼ鉛直方向と平行に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の残量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−68921(P2009−68921A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235907(P2007−235907)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(500030127)日本アプライドフロー株式会社 (3)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】