説明

段付き異形断面銅条材の製造方法および製造装置

【課題】 圧延加工の際に生じる波打ち現象やカブリ等に起因した厚さ不良の発生をリアルタイムで逐一把握することで、そのような厚さ不良の発生を即座に検知して、段付き異形断面銅条材の製造ラインにおける連続的な不良品の発生を回避することができるようにする。
【解決手段】 圧延装置と、その圧延装置よりも製造ラインの下流側に、圧延装置とインラインに配置された厚さ計測装置であるレーザ変位計20とを備えて、段付き異形断面銅条材12を形成した後、その段付き異形断面銅条材12の薄板部9または厚板部10のうち少なくともいずれか一方の厚さを、圧延工程の後に連続的にインラインで計測する。このとき、エアノズル24、28の先端からエア25を所定の強さで噴射させることにより、金属加工油などのオイルミストがレーザ変位計20におけるレーザ光の出射面や入射面に付着することを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体パッケージ用のリードフレームやテープキャリア等に用いられる段付き異形断面銅条材の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の平板状銅条材を加工して幅方向に厚さの異なる異形断面を有すると共に長手方向に直線的に連続した段付き銅条材を製造する製造方法、およびそれに用いられる製造装置では、平板状銅条材に対して段付き形状に加工するプロセス、焼きなましプロセス、仕上げ段付き圧延等が主要プロセスとして行われている。
平板状銅条材を加工して薄板部と厚板部とを有する段付きの異形断面を形成する方法としては、一般に、所定の部分を研削除去する方法、溝ロールと平ロールとで交互に圧延する方法、V字状突起が設けられた平盤状V型ダイスを用いた特殊な圧延による方法があるが、近年、例えば特許第3520770号(特許文献1)や、特許第2756402号(特許文献2)等によって、平盤状V型ダイスを用いた圧延による製造方法や装置が提案され、高い生産性を以て段付き異形断面銅条材を製造することが可能となってきている。
【0003】
図10は、そのような従来の平盤状V型ダイスを示す図である。この平盤状V型ダイス(金型)100は、先端からV字状に末広がりの形状を成すV字状突起200a、200bと、そのほぼ中央部を貫通するように設けられた溝部300とが、基台400上に形成されている。V字状突起200a、200bの両脇には、平坦な基面500a、500bが設けられている。この平盤状V型ダイス100は一般に、金型製作用の金属ブロック材を研削加工する工程等を含んだ製造方法によって作製される。
【0004】
このような平盤状V型ダイス100のV字状突起200が形成された面に対して、加工対象の平板状銅条材(図示省略)を配置し、その平板状銅条材上に往復移動する押圧用ロール(図示省略)等によって押圧力を印加することで、その平板銅条材を金型に押圧プレス加工する。そして、その押圧プレス加工した後に平板銅条材を金型のV字先端から末広がりの後方へと(図6では矢印700で示してある)移動させる引き抜き加工を行う。この動作を所定の長さごとに繰り返して行くことにより、平板状銅条材のうち平盤状V型ダイス100の溝部300を通過した部分を厚板部と成し、平盤状V型ダイス100のV字状突起200を経由して圧延された部分を薄板部と成して、長手方向全長に亘ってほぼ直線的に連続した段付き異形断面形状を有する段付き異形断面銅条材が形成される。この段付き異形断面形状の加工プロセスでは、加工対象の平板状銅条材がV字状突起200に沿って、そのV字の先端から後方へと末広がりに圧延されて行くことで、平板状銅条材のうちV字状突起200を経由した部分(つまり平板状銅条材の左右両脇の部分)は薄板部となる。他方、平盤状V型ダイス100の溝部300では、V字状突起200が設けられておらず、底面が平坦な基面500a、500bと連続した平面となっているのであるから、この溝部300を通った部分の平板状銅条材は、V字状突起200よりも圧延量が少ないままに平盤状V型ダイス100を通過する。従って、この部分が厚板部となる。
このようにして、厚板部と薄板部とを幅方向に混在するように形成してなる段付き異形断面銅条材が、高い生産性を以て製造される。
【0005】
ところで、近年、特に半導体パッケージ用のリードフレームやテープキャリア等に用いられる段付き異形断面銅条材を製造する場合、薄板部の幅をさらに広くして、その厚さをさらに薄く加工することが要請されるようになってきた。これは、半導体パッケージのさらなる多ピン化やリードのさらなる狭ピッチ化に対応するために、リードフレームやテープキャリア等のリード部分等をさらに薄板化しなければならないためであるが、そのよう
に薄板化することに加えて、微細なリード等を精確な寸法に作製しなければならないので、その薄板部の厚さの寸法精度のさらなる向上も必要となってきている。
このような技術的傾向に対応するためには、圧延加工によって形成される段付き異形断面銅条材の、特に薄板部の厚さ、および厚板部の厚さを、厚さ計測チェックなどのような品質管理プロセスの導入によって正確にチェックおよびコントロールすることが強く要請される。従って、上記のように圧延加工によって製造される段付き異形断面銅条材における、特に薄板部の厚さや、厚板部の厚さを、正確に計測できなければならない。
【0006】
ここで、一般的な平板の厚さを計測する技術としては、レーザ測距計を用いて平条材の厚さを計測する、という技術が、例えば特開2001−91213号公報(特許文献3)にて提案されている。図9は、そのような従来のレーザ測距計を用いて平条材の厚さを計測する装置構成の主要部を示す図である。
外形がほぼC型(あるいはカタカナの「コ」型)のフレーム800の両先端には、改良されたレーザ測距計801a、801bが配置されている。その個々のレーザ測距計801a、801bは、それぞれレーザ出射部802a、802bおよびレーザ入射部803a、803bを備えており、レーザ出射部802a、802bから出射されたレーザ光(レーザビームとも呼ぶ;以下同様)804a、804bは、計測対象の平条材805の表面で反射してレーザ入射部803a、803bへと入射するように設定されている。そのレーザ光804a、804bの進行経路が計測対象の平条材805の厚さに対応して変化するので、それに基づいて、平条材805の厚さを計測するようにしている。
【0007】
上記のような厚さ計測装置は、いわゆる非接触式の計測方式を採用したものであるが、例えば、図示は省略するが、特許第1968435号(特許文献4)にて開示された発明のように、2個のローラ等の回転体で計測対象の平条材を挟むことで板厚に対応して変化する2個の回転体同士の間隔に基づいて、その平条材の厚さを計測するという、接触式の計測方式を採用したものもある。
あるいはその他にも、装置構成全体が大掛かりなものとなるという欠点があるが、放射線の照射によって厚さを精確に計測するという技術もある(図示省略)。
【0008】
【特許文献1】特許第3520770号
【特許文献2】特許第2756402号
【特許文献3】特開2001−91213号公報
【特許文献4】特許第1968435号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような従来の技術では、前述したような圧延加工によって形成される、特に半導体パッケージ用の段付き異形断面銅条材における、薄板部の厚さや厚板部の厚さを、インラインで正確にチェックおよびコントロールすることについては、実質的に考慮されていなかった。あるいは、上記のような従来の技術を単純に転用することでは、半導体パッケージ用の段付き異形断面銅条材における、薄板部の厚さや厚板部の厚さをインラインで正確にチェックすることは困難であった。
すなわち、特に半導体パッケージ用の段付き異形断面銅条材は、いわゆるロールツーロール方式で製造されることが一般的であるので、圧延加工時に厚さ不良が発生した場合、それを即座にリアルタイムで検知して対処できなければ、甚だしくはそのとき製造中の1ロットの(換言すれば連続した1条の)段付き異形断面銅条材が、それ以降ほぼ全て不良品として無駄(損失)となってしまうという問題がある。そして、このような問題に対処するために、例えば特開2001−91213号公報にて提案されたような従来の非接触式の厚さ計測技術をそのまま転用しようとしても、そのままでは装置および計測対象部位の大きさが大きすぎるので実際上使用できない、というように、特に半導体パッケージ用
の段付き異形断面銅条材のような微小な幅寸法および薄板部の厚さ寸法等に適切に対応可能でかつ圧延工程とインラインでの厚さ計測が可能な技術は、従来提案されていなかった。このことは、同じ非接触式の放射線照射方式の厚さ計測装置についても同様であった。
【0010】
また、特に半導体パッケージ用の段付き異形断面銅条の製造方法では、圧延加工の際に材料の流れ性を良好なものとすることなどを企図していわゆる金属加工油が塗付されているが、そのオイルミストがレーザ変位計のレーザ出射面やレーザ入射面等に付着しやすく、それが致命的な外乱となって、無視できない有意な計測誤差が発生し、正確な厚さの計測が著しく妨げられるという問題があった。例えば、上記のレーザ測距計の場合、計測対象の部位の表面に金属加工油の油膜や油滴等が存在していた場合には、その油膜や油滴の厚さも、そのときの真の計測対象である段付き異形断面銅条の厚さとして計測されてしまうこととなる。
【0011】
また、上記のような半導体パッケージ用の段付き異形断面銅条の製造方法に採用される圧延工程では一般に、既述のように平板状銅条材の間欠的な引き抜き動作が行われるので、そのとき加工されている一条の連続した平板状銅条材の全体が大きく振動する。このため、例えば上記の特許第1968435号にて提案されているようなロールを用いた接触式の計測装置を用いた場合には、そのロールに接触した後の段付き異形断面銅条の表面に、スジ状や打痕状等の疵が残り、その段付き異形断面銅条の製品としての品質を著しく損なってしまうこととなるという問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、第1に、圧延加工の際に生じる波打ち現象やカブリ等に起因した厚さ不良の発生をリアルタイムで逐一把握することができ、延いてはそのような厚さ不良の発生を即座に検知して段付き異形断面銅条材の製造ラインにおける連続的な不良品の発生を回避することを可能とする段付き異形断面銅条材の製造方法および製造装置を提供することにある。
【0013】
また、第2に、レーザ変位計のレーザ光の出射面や入射面に金属加工油のオイルミストが付着することを回避して、レーザ変位計を用いた正確な厚さの計測を実現することを可能とする段付き異形断面銅条材の製造方法および製造装置を提供することにある。
【0014】
また、第3に、圧延加工による段付き異形断面銅条材の厚板部や薄板部の厚さを、常に所望の許容誤差範囲内に収まるように正確に調節しながら、その段付き異形断面銅条材を製造することを可能とする段付き異形断面銅条材の製造方法および製造装置を提供することにある。
【0015】
また、第4に、段付き異形断面銅条の表面にスジ状や打痕状等の疵を残すことなく、2つのロールの踏面同士の間に段付き異形断面銅条を挟んでその厚さを簡易かつ正確に計測することを可能とする段付き異形断面銅条材の製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の段付き異形断面銅条材の製造方法は、平坦な基面上に、先端からV字状に末広がりの形状を成すV字状突起と、前記V字状突起の先端から後方へと当該V字状突起の略中央部を貫通するように設けられた溝部とを有する平盤状V型ダイスを用い、当該平盤状V型ダイスの前記V字状突起が形成された面に対して加工対象の平板状銅条材を押圧する押圧プレス加工を行い、当該押圧プレス加工を行った後、平板銅条材を前記金型のV字先端から末広がりの後方へと移動させる引き抜き加工を行うことにより、前記平板状銅条材のうち前記平盤状V型ダイスの前記溝部を通過した部分を厚板部と成し、前記平盤状V型ダイスの前記V字状突起を経由した部分を薄板部と成して段付き異形断面銅条材を
形成する圧延工程を含んだ、段付き異形断面銅条材の製造方法であって、前記段付き異形断面銅条材を形成した後、当該段付き異形断面銅条材の薄板部または厚板部のうち少なくともいずれか一方の厚さを前記圧延工程の後に連続的にインラインで計測する計測工程を、さらに含むことを特徴としている。
【0017】
本発明の第2の段付き異形断面銅条材の製造方法は、上記第1の段付き異形断面銅条材の製造方法において、前記圧延工程では、当該圧延の加工対象となる前記平板状銅条材の表面に金属加工油を塗付しており、前記計測工程では、レーザ変位計を用い、少なくとも当該レーザ変位計におけるレーザ光の出射面および入射面に対して飛来して来ようとする前記金属加工油のオイルミストを前記出射面および前記入射面に付着しない方向へと排除するようにエア噴射ノズルから気流を噴射すると共に、前記厚さの計測の対象となる段付き異形断面銅条材の表面に残る金属加工油を前記厚さの計測の対象となる部位から排除するようにエア噴射ノズルから気流を噴射しながら、前記厚さの計測を行うことを特徴としている。
【0018】
本発明の第3の段付き異形断面銅条材の製造方法は、上記第1または第2の段付き異形断面銅条材の製造方法において、前記圧延工程における、前記平盤状V型ダイスの前記V字状突起が形成された面に対して前記加工対象の平板状銅条材を押圧させる押圧力を、前記厚さの計測値に対応してフィードバック制御することを特徴としている。
【0019】
本発明の第4の段付き異形断面銅条材の製造方法は、上記第1ないし第3のうちいずれかの段付き異形断面銅条材の製造方法において、前記計測工程では、20mm以上の直径を有する略タイヤ状のロールであって、当該ロールのタイヤコンタが、タイヤ肩部に曲率半径4mm以上の面取形状を有する、またはそれと共に0mm以上〜2mm以下の略直線状の踏面を有する形状であるロールを、2個用いて、当該2個のロールの前記踏面同士の間に前記厚さの計測の対象である段付き異形断面銅条材を挟むことで変位する前記ロール同士の間隔に基づいて、前記厚さを計測することを特徴としている。
【0020】
本発明の第1の段付き異形断面銅条材の製造装置は、平坦な基面上に、先端からV字状に末広がりの形状を成すV字状突起と、前記V字状突起の先端から後方へと当該V字状突起の略中央部を貫通するように設けられた溝部とを有する平盤状V型ダイスを用い、当該平盤状V型ダイスの前記V字状突起が形成された面に対して加工対象の平板状銅条材を押圧する押圧プレス加工を行い、当該押圧プレス加工を行った後、平板銅条材を前記金型のV字先端から末広がりの後方へと移動させる引き抜き加工を行うことにより、当該平板状銅条材のうち前記平盤状V型ダイスの前記溝部を通過した部分を厚板部と成し前記平盤状V型ダイスの前記V字状突起を経由した部分を薄板部と成して段付き異形断面銅条材を形成する圧延装置を備えた、段付き異形断面銅条材の製造装置であって、前記段付き異形断面銅条材が形成された後、当該段付き異形断面銅条材の薄板部または厚板部のうち少なくともいずれか一方の厚さを前記圧延加工の後に連続的にインラインで計測するように、前記圧延装置のライン下流側に当該圧延装置とインラインに配置された計測装置を、さらに備えたことを特徴としている。
【0021】
本発明の第2の段付き異形断面銅条材の製造装置は、上記第1の段付き異形断面銅条材の製造装置において、前記圧延装置では、当該圧延の対象となる前記平板状銅条材の表面に金属加工油を塗付しており、前記計測装置は、レーザ変位計を用い、少なくとも当該レーザ変位計におけるレーザ光の出射面および入射面に対して飛来して来ようとする前記金属加工油のオイルミストを前記出射面および前記入射面に付着しない方向へと排除するように気流を噴射するエア噴射ノズルと、前記厚さの計測の対象となる段付き異形断面銅条材の表面に残る金属加工油を前記厚さの計測の対象となる部位から排除するように気流を噴射するエア噴射ノズルとを備えて、当該エア噴射ノズルから前記気流を噴射しながら前
記厚さの計測を行うことを特徴としている。
【0022】
本発明の第3の段付き異形断面銅条材の製造装置は、上記第1または第2の段付き異形断面銅条材の製造装置において、前記圧延装置における、前記平盤状V型ダイスの前記V字状突起が形成された面に対して前記加工対象の平板状銅条材を押圧させる押圧力を、前記計測装置によって計測された前記厚さの計測値に対応してフィードバック制御することを特徴としている。
【0023】
本発明の第4の段付き異形断面銅条材の製造装置は、上記第1ないし第3のうちいずれかの段付き異形断面銅条材の製造装置において、前記計測装置は、20mm以上の直径を有する略タイヤ状のロールであって、当該ロールのタイヤコンタが、タイヤ肩部に曲率半径4mm以上の面取形状を有する、またはそれと共に0mm以上〜2mm以下の略直線状の踏面を有する形状であるロールを、少なくとも2個用いて、当該2個のロールの前記踏面同士の間に前記厚さの計測の対象である段付き異形断面銅条材を挟むことで変位する前記ロール同士の間隔に基づいて、前記厚さを計測することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、段付き異形断面銅条材を形成した後、その段付き異形断面銅条材の薄板部または厚板部のうち少なくともいずれか一方の厚さを、圧延の後に連続的にインラインで計測するようにしたので、圧延加工の際に生じる波打ち現象やカブリ等に起因した厚さ不良の発生を、リアルタイムで逐一把握することができる。延いては、厚さ不良の発生を即座に検知して、段付き異形断面銅条材の製造における連続的な(従って大量の)不良品の発生を回避することが可能となる。
【0025】
また、特に、上記の圧延加工では、その圧延の加工対象となる平板状銅条材の表面に金属加工油を塗付し、かつ計測工程ではレーザ変位計を用い、少なくともそのレーザ変位計におけるレーザ光の出射面および入射面に対して段付き異形断面銅条材の表面から飛来して来ようとする金属加工油のオイルミストを出射面および入射面に付着しない方向へと排除するように、エア噴射ノズルから気流を噴射すると共に、厚さの計測の対象となる段付き異形断面銅条材の表面に残る金属加工油を厚さの計測の対象となる部位から排除するように、エア噴射ノズルから気流を噴射しながら、その厚さの計測を行うようにしたので、レーザ変位計のレーザ光の出射面や入射面に金属加工油のオイルミストが付着することを回避して、正確な厚さの計測を、圧延加工とインラインでリアルタイムに実現することが可能となる。また、噴射方向や噴射量等の設定によっては、レーザ変位計の発熱を空冷することができるといった利点を得ることも可能である。
【0026】
また、特に、上記の圧延加工における、平盤状V型ダイスのV字状突起が形成された面に対して加工対象の平板状銅条材を押圧させる押圧力を、厚さの計測値に対応してフィードバック制御するようにしたので、上記の圧延加工による段付き異形断面銅条材の厚板部や薄板部の厚さを、常に所望の許容誤差範囲内に収まるように正確に調節しながら、その段付き異形断面銅条材を製造することが可能となる。
【0027】
また、特に、上記の厚さの計測では、20mm以上の直径を有する、外形がほぼタイヤ状のロールであって、そのロールのタイヤコンタが、タイヤ肩部に曲率半径4mm以上の面取形状を有する、またはそれと共に0mm以上〜2mm以下のほぼ直線状の踏面を有する形状であるロールを、2個用いて、それら2個のロールの踏面同士の間に計測対象である段付き異形断面銅条材を挟むことで、その挟まれた部位の段付き異形断面銅条材の厚さに対応して変位するロール同士の間隔に基づいて、その挟まれた計測対象の部位の厚さを計測するようにしたので、計測対象の段付き異形断面銅条材の表面にスジ状疵等を残すことなく、簡易かつ正確に計測対象の部位の厚さを計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造方法および製造装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置における、特に計測装置の部分を抜き出して示す図であり、図2は、特に圧延装置の部分を抜き出して示す図、図3は、本発明の第2の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置における、特に計測装置の部分を抜き出して示す図であり、図4は、それに用いられるタイヤ状のローラを示す図、図5は、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造方法に用いられる平盤状V型ダイスを示す図であり、図6および図7はそれぞれ、図5に示した平盤状V型ダイスを用いて行われる圧延工程を模式的に示す側面図および平面図である。
【0029】
<第1の実施の形態>
この第1の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置に用いられる計測装置は、図1(a)および図1(b)に示したように、レーザ変位計20と、ケース21と、エアチャンバ22、26と、エア供給ダクト23、27と、エアノズル24、28とを、その主要部として備えている。この計測装置は、図2に示したような圧延装置よりも後工程の、厚さ計測工程を行うための装置として、その圧延装置とインラインに設置されている。
ここで、図1(a)は、段付き異形断面銅条材12のライン進行方向(矢印7で示してある;以下同様)に対して直交する方向から見た側面図であり、図1(b)は、その進行方向と対面する方向から見た正面図である。また、この計測装置は、段付き異形断面銅条材12を対称面としてその表裏(上下)両面に面対称で設けられているので、その上面側の各部位には20a、21a、22a...というように、全て符号の数字にaを付して示してあり、また下面側の各部位には、20b、21b、22b...というように、全て符号の数字にbを付して示してある。
【0030】
レーザ変位計20は、ケース21の中に収容されている。このレーザ変位計20は、例えば半導体パッケージ用リードフレームやキャリアテープのような条幅の狭い段付き異形断面銅条材12における薄板部や厚板部などの所定の部位の厚さを正確に計測することができるものであり、その計測動作それ自体については一般的なレーザ光を用いて非接触で厚さを計測するレーザ変位計と同様のもので構わない。
【0031】
ケース21は、例えば透明アクリル部材からなる密封容器状のもので、その中にレーザ変位計20が密封収容される。
ケース21の外面には、エアチャンバ22、26が付設されている。エアチャンバ22、26にはそれぞれ、エア供給ダクト23、27と、エアノズル24、28とが取り付けられている。
図示しないエア供給元から所定の圧力で送られて来たエア(気流)25は、エア供給ダクト23を介して、一旦、エアチャンバ22に溜められる。そしてさらに、そのエアチャンバ22から押し出され、エアノズル24を通ってその先端から外へと噴射される。同様に、エア(気流)25は、エア供給ダクト27を介して、一旦、エアチャンバ26に溜められる。そしてさらに、そのエアチャンバ26から押し出され、エアノズル28を通ってその先端から外へと噴射される。
【0032】
エアノズル24から噴射されるエア25は、厚さの計測の対象となる段付き異形断面銅条材12の表面に残る金属加工油を、その厚さの計測の対象となる部位から排除することができるような適切な流速および方向に設定された気流として噴射される。その方向は、本実施の形態では、段付き異形断面銅条材12のライン進行方向に対して所定の角度で逆
行するような方向に噴射されるように設定されている。
但し、このエアノズル24から噴射させるエア25を余りにも強い(あるいは大流量もしくは高速の)気流にすると、段付き異形断面銅条材12の表面に残る金属加工油が微小飛沫となって吹き飛ばされたり、オイルミストとなって計測環境中に立ち込めるなどして、むしろレーザ光による厚さ計測の外乱要因となってしまい、逆効果となる虞がある。従って、このエアノズル24から噴射させるエア25は、段付き異形断面銅条材12の表面に残る金属加工油を、計測のためのレーザ光が照射される位置からその周囲へと排除することができる程度の勢力を確保できる範囲内で、可能な限り弱い気流に設定することが望ましい。
【0033】
エアノズル28から噴射されるエア25は、レーザ変位計20におけるレーザ光の出射面および入射面に対して段付き異形断面銅条材12の表面から立ち昇って飛来して来ようとする金属加工油のオイルミストを、レーザ変位計20におけるレーザ光の出射面および入射面に付着させないように、段付き異形断面銅条材12のライン進行方向と平行な方向(換言すればレーザ変位計20におけるレーザ光の出射面および入射面とは平行な方向)へ吹き飛ばして排除することができるような適切な流速および方向に設定された気流として噴射される。
【0034】
本実施の形態では、さらに、ケース21の外面に付設されているエアチャンバ22、26が、外部から継続して送られて来るエア25によって、ケース21全体を介してその内部のレーザ変位計20を空冷するという機能も具備している。
【0035】
このように、本実施の形態に係る計測装置では、エアノズル24から噴射されるエア25によって、厚さの計測の対象となる段付き異形断面銅条材12の表面に残る金属加工油を、その厚さの計測の対象となる部位から排除することができる。また、エアノズル28から噴射されるエア25によって、段付き異形断面銅条材12の表面から立ち昇って飛来して来ようとする金属加工油のオイルミストを、レーザ変位計20におけるレーザ光の出射面および入射面に付着させないように吹き飛ばして排除することができる。その結果、レーザ変位計20におけるレーザ光の出射面および入射面におけるオイルミストの付着や計測環境中に立ち込めるオイルミストの存在などに起因した厚さ計測の誤差の発生を解消して、段付き異形断面銅条材12における薄板部9や厚板部10の厚さについての正確な計測を実現することが可能となる。
また、一般に製造ライン中で連続使用されることから発熱や蓄熱に起因した誤動作や故障等が発生する虞のあったレーザ変位計20を、エア25の供給に伴って空冷することができるので、延いてはそのレーザ変位計20の長期耐久性(あるいはいわゆる寿命)をさらに良好なものとすることや、レーザ変位計20の熱起因の誤動作の発生を解消することが可能となる。
【0036】
ここで、本実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置における、圧延装置で行われる圧延加工について説明する。
図5に示したように、平盤状V型ダイス1は、先端からV字状に末広がりの形状を成すV字状突起2a、2bと、そのほぼ中央部を貫通するように設けられた溝部3とを、基台4の平坦な上面に設けてなるものである。
V字状突起2a、2bの平面的な形状は、図5に示したように、尖った先端から末広がりにV字状となっており、その中央部を貫通するように溝部3が設けられている。このV字状突起2a、2bのV字状の外形を構成している斜面11a、11bには、加工対象の平板状銅条材に対して円滑な圧延を行うことができるように、適度な傾斜角度が与えられている。
V字状突起2a、2bの両脇には平坦な基面5a、5bが露出している。この基面5a、5bと、溝部3の底面とは同一の平面として連続している。換言すれば、基面5a、5
bと溝部3の底面とは同じ高さとなっている。
この平盤状V型ダイス1は、例えば金型製作用の金属ブロック材を研削加工して作製される。
【0037】
図6に示したように、平盤状V型ダイス1のV字状突起2が形成された面に対して、加工対象の平板状銅条材6を、押圧用ロール8によって押圧させることで、所定のプレス圧力を印加して、V字状突起2によるいわゆる押圧プレス加工を行う。このとき、押圧用ロール8は平板状銅条材6の長手方向に沿って往復運動しながらその平板状銅条材6を平盤状V型ダイス1へと押し付けてプレスする押圧力を印加している。続いて、押圧用ロール8の動きに連動して、平板状銅条材6を、その長手方向に沿って、V字状突起2のV字先端から末広がりの後方へと(図1、図2、図3では矢印7で示してある方向へと)移動させる。
そうすると、平板状銅条材6のうち平盤状V型ダイス1のV字状突起2を経由することでそのV字状突起2の末広がりの形状に沿って平板状銅条材6の幅方向および平板状銅条材6の長手方向に延展されることで(圧延されて)薄板化された部分が、薄板部9a、9bとなる。他方、平板状銅条材6のうち平盤状V型ダイス1の溝部3を通った部分は、V字状突起2よりも圧延量が極めて少ないままに平盤状V型ダイス1を通過するので、この部分が厚板部10となる。
このようにして、薄板部9a、9bと厚板部10とを幅方向に混在するように形成してなる段付き異形断面銅条材が製造される。
【0038】
この段付き異形断面形状の加工プロセスでは、図7に示したように、加工対象の平板状銅条材6が、V字状突起2に沿ってそのV字の先端から斜面11を通りさらにその後方へと末広がりに圧延されて行くことで、平板状銅条材6のうちV字状突起2を経由した部分は薄板部9a、9bとなる。
このような圧延工程においては、いわゆる押し込み量の大小によって、出来上がりの段付き異形断面銅条材12の薄板部9や厚板部10の厚さが変化する。換言すれば、押し込み量を操作量として厚さのフィードバック制御を行うことにより、出来上がる段付き異形断面銅条材12の厚さの変動(誤差)を許容範囲内に抑えて、常に正確な厚さの段付き異形断面銅条材12を製造することが可能である。
すなわち、上記のようにして計測装置によって段付き異形断面銅条材12の薄板部9や厚板部10の厚さを計測し、その計測値に基づいて、平盤状V型ダイス1の押し込み量をフィードバック制御することにより、厚さの誤差(変動)を常に所定の許容誤差の範囲内に収めた正確な圧延加工を実現する。
【0039】
図2に示したように、平盤状V型ダイス1が金型取付台31の上面に取り付けられるように設定されている。金型取付台31の四隅には、その金型取付台31の上下方向の平行移動をスムースなものとするためのスライド案内アングル部材32、33が設けられている。スライド案内アングル部材32、33は、基盤34に固定されている。金型取付台31は、その下面に上下動アクチュエータ35が連結されている。上下動アクチュエータ35が上下に動くことによって金型取付台31が上下方向に所定の位置まで平行移動するように設定されている。この上下動アクチュエータ35を、上記の計測装置によって計測された厚さの値に基づいて上下動させて平盤状V型ダイス1の上下方向での位置を適切な位置に調節する、というフィードバック制御を行う。さらに具体的なそのフィードバック制御の定性的な制御ルールとしては、計測された厚さが所定の目標値よりも小さい(薄い)場合には、それに対応して上下動アクチュエータ35を下方に適切な距離に亘って移動させることで、平盤状V型ダイス1とロール8との距離をもっと大きく取るようにする。逆に、計測された厚さが所定の目標値よりも大きい(厚い)場合には、それに対応して上下動アクチュエータ35を上方に適切な距離に亘って移動させることで、平盤状V型ダイス1とロール8との距離をもっと小さく取るようにする。ここで、このフィードバック制御
系における数量的な各種設定については、一般的なフィードバッククループ系の設定に準拠することが可能であることは勿論である。
【0040】
このように、圧延工程における平盤状V型ダイス1のV字状突起2が形成された面に対して加工対象の平板状銅条材6を押圧させる押圧力を、厚さの計測値に対応してフィードバック制御することにより、圧延加工によって形成される段付き異形断面銅条材12の薄板部9や厚板部10の厚さの誤差を常に所定の許容誤差の範囲内に収めて、恒常的に正確な厚さの薄板部9や厚板部10を有する段付き異形断面銅条材12の製造を実現することが可能となる。
【0041】
<第2の実施の形態>
この第2の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置に用いられる計測装置は、図3に示したように、2個で一対のロール40a、40bと、アーム41a、41bと、ばね42と、支持部材43と、反射板44と、レーザ変位計45とを、その主要部として備えている。
【0042】
レーザ変位計45は、アーム41aに固定的に取り付けられている。アーム41aは、支持部材43に軸支されている。アーム41aの先端には、外形がほぼタイヤ状の金属からなる硬質なロール40aが回動可能に軸支されている。アーム41bも同様に、支持部材43に軸支されている。アーム41bの先端には、外形がほぼタイヤ状の金属からなる硬質なロール40bが回動可能に軸支されている。アーム41bには、反射板44が固定的に取り付けられている。アーム41aとアーム41bとが互いに引き合うことで、両者の先端のロール40aとロール40bとが所定の押圧力で互いに押し付け合わされるように、アーム41aとアーム41bとの間には、ばね42が懸架されている。
【0043】
アーム41aの先端とアーム41bの先端とにそれぞれ軸支されているロール40aとロール40bとの間に、計測対象の段付き異形断面銅条材12を挟むことで、その挟まれた部位の段付き異形断面銅条材12の厚さに対応して、ロール40aとロール40bとの間の距離が変化する。その変化に連れて、アーム41aに固定されているレーザ変位計45とアーム41bに固定されている反射板44との総体的な姿勢が変化するので、レーザ変位計45から出射され反射板44で反射されて再びレーザ変位計45へと戻ってくるレーザ光46の経路が変化する。その変化に対応して、そのときの計測対象としてロール40aとロール40bとの間に挟まれている部位の段付き異形断面銅条材12の厚さが計測される。
【0044】
ロール40は、さらに詳細には、20mm以上の直径49を有するほぼタイヤ状の金属製のもので、図4に示したようなタイヤコンタ(タイヤ状の断面形状)を有している。すなわち、そのタイヤコンタの肩部は、曲率半径48が4mm以上の円弧状の面取形状となっている。そしてその両肩の円弧の間には、0mm以上〜2mm以下の長さに亘るほぼ直線状の(平坦な)踏面47が設けられている。
【0045】
このロール40a、40bの外形が小さいと、ロール40a、40bの軸間距離が小さくなって、段付き異形断面銅条材12のエッジなどがアーム41aやアーム41bの先端付近と接触するといった障害が発生し易くなる虞がある。また、段付き異形断面銅条材12は、圧延工程で間欠的に引き抜き動作等が行われるので、常に何らかの振動がその連続する一条の段付き異形断面銅条材12の先端から後端まで常に伝わっている場合が多い。従って、ロール40a、40bの取り付け部(軸支部)の機械的な剛性が弱いと、圧延工程に伴う振動を主な要因とする撓みなどにより計測誤差が大きくなる虞がある。そのような計測誤差の発生を回避するためには、ロール40a、40bの直径を20mm以上とすることが望ましいのである。
【0046】
また、このロール40a、40bが接触する段付き異形断面銅条材12の表面に疵を付けないようにするためには、ロール40a、40bのタイヤ状の断面形状における肩部の面取形状の曲率半径48の大きさを4mm以上とすることが望ましいのである。逆に、この肩部に曲率半径48を有する面取形状を設けないで鋭角的にしたり、曲率半径48を4mm未満にすると、顕著に段付き異形断面銅条材12の表面に疵がつきやすくなるからである。
【0047】
また、両肩の間に長さの直線状の断面形状の踏面47を設けることで、その踏面47が段付き異形断面銅条材12の表面と接する面積が増えるので、ロール40a、40bを押し当てたときの面圧が分散されることとなり、段付き異形断面銅条材12の表面に疵がつくことをさらに確実に回避することが可能となるのである。従って、理論的には、踏面47の長さは大きければ大きいほど望ましい。
但し、この長さが2mm超に大きくなると、その長さに亘る範囲内の厚さの誤差を拾い易くなって、計測値への誤差の混入が増大する虞が顕著に高くなることが実験により確認されたので、このことから、直線部の長さは、2mm以下とすることが望ましいのである。ここで、この直線部の長さの下限値については、ロール40a、40bおよび段付き異形断面銅条材12の表面の硬さや両者の間での摩擦係数などのような諸条件によっても変わってくるので、実際上、例えば製造ライン投入前にあらかじめ実験等によって、その最低限の値を確認しておくようにすることが望ましい。あるいは、ロール40a、40bの幅が狭くて、この直線部を設ける余地がどうしても得られない場合などには、踏面47を上記の肩部のような4mm以上の曲率半径を有する曲面状にすればよい。
【0048】
このような本実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置およびそれを用いて実行される段付き異形断面銅条材の製造方法によれば、ロール40aとロール40bとをそれぞれ計測対象の段付き異形断面銅条材12の表裏に接触させて、その厚さを計測するようにしているので、その段付き異形断面銅条材12の表裏に金属加工油などが残存していても、その金属加工油の油膜やオイルミストなどの存在に起因した計測誤差が混入する虞がない。このため、本実施の形態に係る製造装置および製造方法では、オイルミスト除去用および油膜排除用のノズルやエア噴射等を全く省略することが可能で、極めて簡易な装置構成によって、正確な厚さの計測を実現することができる。
また、計測対象の段付き異形断面銅条材12の表面にスジ状疵等を残すことなく、測対象の部位の厚さを正確に計測することができる。
なお、本実施の形態では、平盤状V型ダイス1の溝部3がV字状突起2の中央を貫通して左右分断するように1本設けられている場合について説明したが、溝部3は、この他にも、2本以上設けるようにすることも可能である。すなわち、V字状突起2を3つ以上に分断して、一条の平板状銅条材6の幅方向内に、2つ以上の厚板部10を設けると共に3つ以上の薄板部9を設けるようにすることなども可能である。
【実施例】
【0049】
<第1の実施例>
上記の第1の実施の形態で説明したような圧延装置および計測装置を備えた、段付き異形断面銅条材の製造装置を試験的に作製し、それを用いて平板状銅条材を加工して、段付き異形断面銅条材を製造した。
図8は、第1の実施例で製造した段付き異形断面銅条材の厚さの誤差率を纏めて示す図である。
【0050】
エアノズル24は、内径1.5mmのパイプ状のものとした。そのエアノズル24の先端のエア噴出口と段付き異形断面銅条材12の表面との距離は、約20mmとした。そのエアノズル24へのエア25の供給圧は、約0.2MPaとした。
エアノズル28は、横幅8mm×縦幅0.8mmのエア噴出口を有する断面が細長い矩形状のダクトとした。そのエアノズル28へのエア25の供給圧は、約0.4MPaとした。
レーザ変位計としては、株式会社キーエンス(社名)のLK−G35(製品名)を用いた。
【0051】
インラインで製造される段付き異形断面銅条材12の圧延加工開始時と終了時ごとにサンプルを採取し、本実施例に係る計測装置によるリアルタイムの厚さ計測とは別に、高精度マイクロメータを用いて段付き異形断面銅条材12の薄板部9の厚さを測定し、その測定値を真値と見做して、本実施例に係る計測装置による厚さ計測の誤差率を算出した。この誤差率は、高精度マイクロメータによる測定値と本実施例に係る計測装置による計測値との差の絶対値を、高精度マイクロメータによる測定値を基準とした百分率で表したもので、次式のように計算される。
誤差率(%)=(高精度マイクロメータによる測定値−計測装置による計測値)×100/高精度マイクロメータによる測定値
【0052】
このような誤差率の実験を合計3日(3回)に亘って実施した。
その結果、誤差率は、図8に示したように、最大でも第1日目の終了時点の0.94で、いずれも1%未満となり、充分に実用的な高精度の厚さ計測が実現できることが確認された。
【0053】
<第2の実施例>
上記の第2の実施の形態で説明したような計測装置、および第1の実施例と同様の圧延装置を備えた、段付き異形断面銅条材の製造装置を試験的に作製し、それを用いて平板状銅条材を加工して、段付き異形断面銅条材を製造した。
【0054】
ロール40の直径49は、30mmとした。面取形状の曲率半径48は、4mmとした。ロールの厚みは8mmとした。すなわち、本実施例では、直線的な断面形状の踏面47は設けておらず、その代りに踏面の形状を曲率半径4mmの曲線状のものとした。
その結果、段付き異形断面銅条材12の表面にスジ状の疵などを全く残すことなく、簡易に正確な厚さ計測を実現することができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置における、特に計測装置の部分を抜き出して示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置における、特に圧延装置の部分を抜き出して示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造装置における、特に計測装置の部分を抜き出して示す図である。
【図4】図3に示した計測装置に用いられるタイヤ状のローラを示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態に係る段付き異形断面銅条材の製造方法に用いられる平盤状V型ダイスを示す図である。
【図6】図5に示した平盤状V型ダイスを用いて行われる圧延工程を模式的に示す側面図である。
【図7】図5に示した平盤状V型ダイスを用いて行われる圧延工程を模式的に示す平面図である。
【図8】第1の実施例で製造した段付き異形断面銅条材の厚さの誤差率を纏めて示す図である。
【図9】従来のレーザ測距計を用いて平条材の厚さを計測する装置構成の主要部を示す図である。
【図10】従来の平盤状V型ダイスを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 平盤状V型ダイス
2 V字状突起
3 溝部
4 基台
5 基面
6 平板状銅条材
8 押圧用ロール
9 薄板部
10 厚板部
11 斜面
20 レーザ変位計
21 ケース
22、26 エアチャンバ
23、27 エア供給ダクト27
24、28 エアノズル
25 エア
31 金型取付台
32、33 スライド案内アングル部材
34 基盤
35 上下動アクチュエータ
40 ロール
41 アーム
42 ばね
43 支持部材
44 反射板
45 レーザ変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な基面上に、先端からV字状に末広がりの形状を成すV字状突起と、前記V字状突起の先端から後方へと当該V字状突起の略中央部を貫通するように設けられた溝部とを有する平盤状V型ダイスを用い、当該平盤状V型ダイスの前記V字状突起が形成された面に対して加工対象の平板状銅条材を押圧する押圧プレス加工を行い、当該押圧プレス加工を行った後、平板銅条材を前記金型のV字先端から末広がりの後方へと移動させる引き抜き加工を行うことにより、前記平板状銅条材のうち前記平盤状V型ダイスの前記溝部を通過した部分を厚板部と成し、前記平盤状V型ダイスの前記V字状突起を経由した部分を薄板部と成して段付き異形断面銅条材を形成する圧延工程を含んだ、段付き異形断面銅条材の製造方法であって、
前記段付き異形断面銅条材を形成した後、当該段付き異形断面銅条材の薄板部または厚板部のうち少なくともいずれか一方の厚さを前記圧延工程の後に連続的にインラインで計測する計測工程を、さらに含む
ことを特徴とする段付き異形断面銅条材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の段付き異形断面銅条材の製造方法において、
前記圧延工程では、当該圧延の加工対象となる前記平板状銅条材の表面に金属加工油を塗付しており、
前記計測工程では、レーザ変位計を用い、少なくとも当該レーザ変位計におけるレーザ光の出射面および入射面に対して飛来して来ようとする前記金属加工油のオイルミストを前記出射面および前記入射面に付着しない方向へと排除するようにエア噴射ノズルから気流を噴射すると共に、前記厚さの計測の対象となる段付き異形断面銅条材の表面に残る金属加工油を前記厚さの計測の対象となる部位から排除するようにエア噴射ノズルから気流を噴射しながら、前記厚さの計測を行う
ことを特徴とする段付き異形断面銅条材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の段付き異形断面銅条材の製造方法において、
前記圧延工程における、前記平盤状V型ダイスの前記V字状突起が形成された面に対して前記加工対象の平板状銅条材を押圧させる押圧力を、前記厚さの計測値に対応してフィードバック制御する
ことを特徴とする段付き異形断面銅条材の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の段付き異形断面銅条材の製造方法において、
前記計測工程では、20mm以上の直径を有する略タイヤ状のロールであって、当該ロールのタイヤコンタが、タイヤ肩部に曲率半径4mm以上の面取形状を有する、またはそれと共に0mm以上〜2mm以下の略直線状の踏面を有する形状であるロールを、2個用いて、当該2個のロールの前記踏面同士の間に前記厚さの計測の対象である段付き異形断面銅条材を挟むことで変位する前記ロール同士の間隔に基づいて、前記厚さを計測する
ことを特徴とする段付き異形断面銅条材の製造方法。
【請求項5】
平坦な基面上に、先端からV字状に末広がりの形状を成すV字状突起と、前記V字状突
起の先端から後方へと当該V字状突起の略中央部を貫通するように設けられた溝部とを有する平盤状V型ダイスを用い、当該平盤状V型ダイスの前記V字状突起が形成された面に対して加工対象の平板状銅条材を押圧する押圧プレス加工を行い、当該押圧プレス加工を行った後、平板銅条材を前記金型のV字先端から末広がりの後方へと移動させる引き抜き加工を行うことにより、当該平板状銅条材のうち前記平盤状V型ダイスの前記溝部を通過した部分を厚板部と成し前記平盤状V型ダイスの前記V字状突起を経由した部分を薄板部と成して段付き異形断面銅条材を形成する圧延装置を備えた、段付き異形断面銅条材の製
造装置であって、
前記段付き異形断面銅条材が形成された後、当該段付き異形断面銅条材の薄板部または厚板部のうち少なくともいずれか一方の厚さを前記圧延加工の後に連続的にインラインで計測するように、前記圧延装置のライン下流側に当該圧延装置とインラインに配置された計測装置を、さらに備えた
ことを特徴とする段付き異形断面銅条材の製造装置。
【請求項6】
請求項5記載の段付き異形断面銅条材の製造装置において、
前記圧延装置では、当該圧延の対象となる前記平板状銅条材の表面に金属加工油を塗付しており、
前記計測装置は、レーザ変位計を用い、少なくとも当該レーザ変位計におけるレーザ光の出射面および入射面に対して飛来して来ようとする前記金属加工油のオイルミストを前記出射面および前記入射面に付着しない方向へと排除するように気流を噴射するエア噴射ノズルと、前記厚さの計測の対象となる段付き異形断面銅条材の表面に残る金属加工油を前記厚さの計測の対象となる部位から排除するように気流を噴射するエア噴射ノズルとを備えて、当該エア噴射ノズルから前記気流を噴射しながら前記厚さの計測を行う
ことを特徴とする段付き異形断面銅条材の製造装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の段付き異形断面銅条材の製造装置において、
前記圧延装置における、前記平盤状V型ダイスの前記V字状突起が形成された面に対して前記加工対象の平板状銅条材を押圧させる押圧力を、前記計測装置によって計測された前記厚さの計測値に対応してフィードバック制御する
ことを特徴とする段付き異形断面銅条材の製造装置。
【請求項8】
請求項5ないし7のうちいずれか1項に記載の段付き異形断面銅条材の製造装置において、
前記計測装置は、20mm以上の直径を有する略タイヤ状のロールであって、当該ロールのタイヤコンタが、タイヤ肩部に曲率半径4mm以上の面取形状を有する、またはそれと共に0mm以上〜2mm以下の略直線状の踏面を有する形状であるロールを、少なくとも2個用いて、当該2個のロールの前記踏面同士の間に前記厚さの計測の対象である段付き異形断面銅条材を挟むことで変位する前記ロール同士の間隔に基づいて、前記厚さを計測する
ことを特徴とする段付き異形断面銅条材の製造装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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