説明

段付き金属管の製造方法及び拡管用プラグ

【課題】冷間での拡管加工時に、焼き付きの発生を抑制できる段付き金属管の製造方法を提供する。
【解決手段】先端から後端に向かって徐々に外径が大きくなる表面を有するテーパ部20と、前記テーパ部の表面に形成されたステライト肉盛層とを含む拡管用のプラグ10を準備する。続いて、冷間で、金属管50の管端にプラグ10を挿入し、金属管50の管端を拡管する。管端を拡管した後、プラグ10を金属管50から引き抜く。プラグ10の表面にステライト肉盛層を形成することにより、冷間での拡管において、従来の超硬合金やコーティング法による皮膜と同等に焼き付きを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段付き金属管の製造方法及び拡管用プラグに関し、さらに詳しくは、冷間で金属管の管端を拡管して、段付き金属管にする段付き金属管の製造方法及びその製造方法に使用される拡管用プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
冷間圧延や冷間鍛造に代表される冷間塑性加工では、ロールやダイス、プラグ等の工具が利用される。これらの工具は、金属板や金属管といった被加工材と接触し、塑性加工中の被加工材により面圧を受ける。この面圧により、工具表面に焼き付きが発生しやすくなる。したがって、冷間塑性加工に用いられる工具には、優れた耐焼き付き性が求められる。
【0003】
耐焼き付き性を改善するために、工具素材に超硬合金を利用する技術が知られている。また、イオンプレーティングに代表されるPVD(Physical Vapor Deposition)法や、CVD(Chemical Vapor deposition)法等の蒸着法により、工具表面に硬質の皮膜を形成する技術が知られている。
【0004】
ところで、冷間での塑性加工の1つとして、本発明者らは、段付き金属管の製造方法を提案している(特許文献1を参照)。この製造方法では、拡管用プラグを用いて、冷間で、金属管の管端を拡管する。これにより、金属管の管端の寸法精度、特に内径の寸法精度が向上する。
【0005】
上述の金属管の拡管の加工度は、冷間圧延や冷間鍛造よりも小さい。しかしながら、拡管用プラグも、他の冷間塑性加工用の工具と同様に、塑性加工中の金属管により面圧を受ける。したがって、拡管用プラグには優れた耐焼き付き性が要求される。
【0006】
拡管用プラグに上述の公知技術を適用すれば、優れた耐焼き付き性が得られる。しかしながら、超硬合金は製造コストが高い。また、蒸着法は、真空又は低真空で皮膜を形成するため、製造プロセスが複雑であり、製造コストも高い。さらに、蒸着法により形成される皮膜は薄いため、剥離する可能性がある。したがって、これらの公知技術に代わる、耐焼き付き性の改善技術が求められる。
【特許文献1】国際公開第2006/033376号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、冷間での拡管加工時に、焼き付きの発生を抑制できる段付き金属管の製造方法及び拡管用プラグを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明者らは、冷間での拡管において、超硬工具や、蒸着法による皮膜(以下、蒸着皮膜という)よりも製造コストが安く、優れた耐焼き付き性を有する材質を検討した。本発明者らは、熱間塑性加工で用いられる熱間工具に利用される肉盛層に注目した。肉盛層は、プラズマ粉体肉盛溶接(PTA:Plasma Transferred Arc)法や、MIG(Metal Inert Gas)溶接法、TIG(Tungsten Insert Gas)溶接法といった周知の肉盛溶接により工具表面に形成される。肉盛層の種類としては、NbCやVC、TiC等の硬質炭化物を含有した肉盛層(以下、硬質炭化物肉盛層という)や、ステライトからなる肉盛層(以下、ステライト肉盛層という)がある。これらの肉盛層を形成する肉盛溶接は、蒸着法のように、真空又は低真空を必要としない。そのため、製造工程が蒸着法よりも簡潔であり、製造コストが抑えられる。さらに、肉盛層は、蒸着皮膜よりも厚く形成されるため、剥離しにくい。また、母材(プラグ本体)に炭素鋼やステンレス鋼を使用することができるため、超硬合金よりも安価に製造できる。
【0009】
本発明者らは、これらの肉盛層が形成された複数の拡管用プラグを作製し、冷間拡管時の耐焼き付き性を調査した。具体的には、複数の拡管用プラグを用いて、冷間で同じサイズの金属管の管端を同じ拡管率で拡管した。そして、拡管時の荷重を調査し、荷重に基づいて耐焼き付き性を評価した。一般に、熱間塑性加工では、硬質炭化物肉盛層の方が、ステライト肉盛層よりも加工時の荷重が小さく、耐焼き付き性に優れる。しかしながら、冷間で拡管した結果、ステライト肉盛層の方が、硬質炭化物肉盛層よりも荷重が小さく、さらに、蒸着皮膜と同等の荷重を示した。以上の結果から、本発明者らは、冷間での拡管においては、ステライト肉盛層の耐焼き付き性が、硬質炭化物肉盛層よりも優れ、かつ、蒸着皮膜と同等であることを見出した。
【0010】
以上の知見に基づいて、本発明者らは以下の発明を完成した。
【0011】
本発明による段付き金属管の製造方法は、金属管を準備する工程と、先端から後端に向かって徐々に外径が大きくなる表面を有するテーパ部と、テーパ部の表面に形成されたステライト肉盛層とを含む拡管用のプラグを準備する工程と、冷間で、金属管の管端にプラグを挿入して、金属管の管端を拡管する工程と、プラグを金属管から引き抜く工程とを備える。ここで、冷間で金属管の管端を拡管するとは、常温で、金属管の管端を拡管することをいう。
【0012】
好ましくは、ステライト肉盛層は、質量%で、C:0.1〜3.5%、Si:2.5%以下、Mn:2.5%以下、Cr:20〜35%、Ni:4.0%以下、W:20%以下、Fe:5.5%以下、Mo:7.5%以下を含有し、残部はCo及び不純物である溶接材料を用いて、肉盛溶接により形成される。ここで、溶接材料とは、たとえば、溶接棒や溶接用の粉末である。
【0013】
本発明による拡管用プラグは、上述の段付き金属管の製造方法に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
初めに、段付き金属管の製造方法について説明する。まず、図1Aに示すようなエキスパンド装置1を準備する。また、被加工材である金属管50を準備する。金属管50は、熱間塑性加工により製造される。金属管50は継目無金属管でもよいし、溶接金属管でもよい。
【0016】
エキスパンド装置1は、チャック2と、シリンダ装置3と拡管用プラグ(以下、単にプラグという)10とを備える。チャック2は、図示しない開閉装置により上下方向に開閉可能である。チャック2は、金属管50の外周面と接触し、金属管50を挟んで固定する。シリンダ装置3は、シリンダ軸4を含む。シリンダ軸4の先端には、プラグ10が周知の方法で取り付けられる。たとえば、シリンダ軸4の先端及びプラグ10の後端に雄ネジ又は雌ネジが切られており、プラグ10はシリンダ4の先端に螺着される。シリンダ装置3は、シリンダ軸4を前進又は後退させ、プラグ10を水平方向に移動させる。
【0017】
プラグ10は、金属管50の管端を拡管する。換言すれば、プラグ10は、金属管50の管端を半径方向に拡張する。プラグ10は、表面がテーパ状のテーパ部20と、テーパ部20と連続的に形成される円柱部30とを含む。プラグ10の詳細については後述する。
【0018】
金属管50がチャック2により固定された後、図1Aに示すように、金属管50の軸心CAをプラグ10の軸心と合わせる。続いて、シリンダ装置3がプラグ10を押し進めて、プラグ10を金属管50の管端に挿入する。このとき、図1Bに示すように、金属管50の管端は拡管される。
【0019】
拡管用プラグ10を所定距離押し進めた後、シリンダ装置3はシリンダ軸4を引く。これにより、プラグ10は後退し、図1Cに示すように、金属管50から引き抜かれる。
【0020】
以上の工程により、段付き金属管60が製造される。段付き金属管60は、内径の寸法精度を向上できる。そのため、段付き金属管60は、管端の内径寸法の精度が要求される分野に利用される。たとえば、パイプラインでは、複数の鋼管の管端同士が溶接されるために、管端の内径の寸法精度が要求される。したがって、段付き金属管は、たとえば、パイプラインに利用される。
【0021】
[拡管用プラグの構成]
図2を参照して、プラグ10は、テーパ部20と、円柱部30とを備える。テーパ部20及び円柱部30は、連続的に形成される。テーパ部20は、プラグ先端11からプラグ後端12に向かって徐々に外径が大きくなる表面21を有する。円柱部30は、テーパ部20に接し、テーパ部20と連続的に形成される。円柱部の表面31の外径は一定である。図2では、テーパ部20の表面21の縦断形状が直線であるが、図3に示すように、表面21の縦断形状が曲線であってもよい。要するに、表面21の外径は、プラグ先端11からプラグ後端12に向かって徐々に大きくなればよい。また、図4に示すように、プラグ10がテーパ部20のみを含み、円柱部30を含まなくてもよい。なお、プラグ後端12の周縁部は丸みを帯びていてもよい。
【0022】
拡管用プラグ10の表面21及び31には、ステライト肉盛層が形成される。ステライトは、Crを含有するコバルト合金である。ステライト肉盛層は周知の肉盛溶接により形成される。ステライト肉盛層の好ましい厚さは2mm〜4mmである。さらに好ましい厚さは、2mm〜2.5mmである。
【0023】
熱間塑性加工においては、ステライト肉盛層の耐焼き付き性は、NbCやVC、TiCといった硬質炭化物を含有する硬質炭化物肉盛層よりも劣る。しかしながら、冷間での拡管において、ステライト肉盛層が形成されたプラグ10は、硬質炭化物肉盛層が形成されたプラグよりも、優れた耐焼き付き性を有する。さらに、プラグ10は、蒸着皮膜が形成されたプラグと同等の耐焼き付き性を有する。
【0024】
表1は、ステライト肉盛層、硬質炭化物肉盛層及び蒸着皮膜が形成された複数のプラグの冷間拡管時の荷重を示す。荷重の調査方法の詳細は実施例で説明する。
【表1】

表1中の「材質」は、プラグに形成された肉盛層又は皮膜の種類を示す。「NbC肉盛層」は、硬質炭化物としてNbCを含有した硬質炭化物肉盛層である。「VC肉盛層」及び「TiC肉盛層」は、それぞれ、硬質炭化物としてVC、TiCを含有した硬質炭化物肉盛層である。表1を参照して、ステライト肉盛層の拡管時の荷重は、硬質炭化物肉盛層よりも小さい。さらに、ステライト肉盛層の荷重は、蒸着皮膜と同等である。一般的に、加工時の荷重が大きいほど、焼き付きが発生しやすい。すなわち、荷重が大きいほど耐焼き付き性は低い。したがって、冷間での拡管においては、ステライト肉盛層の耐焼き付き性は、硬質炭化物肉盛層よりも優れ、かつ、蒸着皮膜と同等である。
【0025】
ステライト肉盛層の荷重が硬質炭化物肉盛層よりも小さいのは、以下の理由によるものと推定される。硬質炭化物肉盛層では、複数の硬質炭化物が、表面に露出している。熱間塑性加工時、被加工材は表面に露出した硬質炭化物と接触する。このとき、被加工材の熱により硬質炭化物表面に酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜が潤滑作用を有するため、熱間塑性加工時の荷重を小さくすることができ、優れた耐焼き付きを示す。
【0026】
一方、冷間拡管では、常温で被加工材を加工する。そのため、露出した硬質炭化物は熱間塑性加工時ほど熱を受けない。そのため、酸化被膜が形成されず、潤滑作用が生じないと推定される。
【0027】
これに対して、ステライト肉盛層は、熱間塑性加工時の耐焼き付き性のメカニズムが炭化物肉盛層と異なるため、熱間塑性加工時と同様に、冷間拡管でも優れた耐焼き付き性を示すと推定される。
【0028】
ステライト肉盛層は上述のとおり、周知の肉盛溶接により形成される。より具体的には、ステライト層は、ステライト溶接材料を原料として、PTA法、MIG溶接法、TIG溶接法等の肉盛溶接により形成される。肉盛溶接は、蒸着法のように真空又は低真空を必要とせず、製造工程が簡潔である。そのため、蒸着法と比較して、安価に製造できる。さらに、肉盛層は、蒸着皮膜よりも厚い。したがって、蒸着皮膜よりも剥離しにくい。
【0029】
ステライト溶接材料の好ましい化学組成は、質量%で、C:0.1〜3.5%、Si:2.5%以下、Mn:2.5%以下、Cr:20〜35%、Ni:4.0%以下、W:20%以下、Fe:5.5%以下、Mo:7.5%以下を含有し、残部はCo及び不純物からなる。ここで、Mn、Ni、W及びMoは任意添加元素である。好ましいMn含有量の下限値は、0.1質量%である。好ましいNi含有量の下限値は、0.1質量%である。好ましいW含有量の下限値は、0.1質量%である。好ましいMo含有量は0.1%である。なお、好ましいSi含有量の下限値は0.5質量%であり、好ましいFe含有量は、0.1%以上である。なお、Si及びFeは、積極的に添加しない場合であっても、不純物として含有される。ステライト溶接材料は、溶接棒であってもよいし、粉末であってもよい。
好ましくは、ステライト溶接材料は、JIS規格のDCoCrA、DCoCrB、DCoCrC又はDCoCrDに相当する化学組成を有する。さらに好ましくは、ステライト溶接材料は、DCoCrB又はDCoCrCに相当する化学組成を有する。
母材(拡管用プラグ)の材質は特に限定されない。母材はたとえば、炭素鋼や、低合金鋼、ステンレス鋼等である。そのため、プラグ10は、超硬合金からなるプラグと比較して、安価に製造できる。
【0030】
なお、冷間拡管の加工度は、他の冷間塑性加工と比較して低い。このような加工度の低さも、ステライト肉盛層の耐焼き付き性の高さに寄与しているものと推定される。好ましくは、式(1)で示される拡管率(%)は10%以下である。
【0031】
拡管率=(D1/D0−1)×100 (1)
ここで、D1は拡管後の管端の内径であり、D0は拡管前の管端の内径である。金属管の管端が半径方向に塑性加工されれば、拡管率の下限値に制限はない。つまり、0<拡管率≦10%の範囲が好ましい。拡管率が上述の範囲内であれば、拡管用プラグに形成されたステライト肉盛層は、特に優れた耐焼き付き性を示す。
【実施例1】
【0032】
互いに異なる肉盛層又は皮膜が形成された複数のプラグを準備した。準備されたプラグを用いて、冷間で金属管の管端を拡管した。拡管時の荷重を測定し、荷重に基づいて、各プラグの耐焼き付き性を評価した。
【0033】
具体的な調査方法は以下のとおりである。複数のプラグの形状は、いずれも、図5に示すとおりとした。図中のRは369.6mmとし、D(最大外径)は76.8mmとした。
【0034】
各プラグの表面に形成される肉盛層又は皮膜は、表1の通りとした。具体的には、プラグ番号1のプラグ表面には、ステライト肉盛層が形成された。ステライト肉盛層は、PTA法により形成された。PTA法に利用された溶接材料は、JIS規格のDCoCrB(ステライト#12に相当)であった。
【0035】
プラグ番号2のプラグ表面には、硬質粒子としてNbCを含む硬質炭化物肉盛層(以下、NbC肉盛層と称する)が形成された。NbC肉盛層は、30体積%のNbC粒子粉末を含有し、残部はJIS規格のSUS316に相当する粉末及び不純物からなる原料(溶接材料)を用いて、PTA法により形成された。プラグ番号3のプラグ表面には、硬質粒子としてVCを含む硬質炭化物肉盛層(以下、VC肉盛層と称する)が形成された。VC肉盛層は、30体積%のVC粒子粉末を含有し、残部はSUS316粉末及び不純物からなる原料を用いて、PTA法により形成された。プラグ番号4のプラグ表面には、硬質粒子としてTiCを含む肉盛層(以下、TiC肉盛層と称する)が形成された。TiC肉盛層は、30体積%のTiC粒子粉末を含有し、残部はSUS316粉末及び不純物からなる原料を用いて、PTA法により形成された。なお、プラグ番号1〜4の肉盛層の厚さは3mmであった。
【0036】
プラグ番号5のプラグ表面には、イオンプレーティング法による蒸着皮膜が形成された。蒸着皮膜はTiN及び不純物で構成された。なお、蒸着皮膜の厚さは、5μmであった。
なお、プラグ番号1〜5の母材(プラグ本体)の材質は、JIS規格のS45Cに相当する炭素鋼であった。
上述の各プラグを用いて、金属管を拡管した。準備した金属管の外径は89.1mm、内径は75.3mm、肉厚は6.9mm、長さは150mmであった。金属管は、JIS規格のS45Cに相当する炭素鋼とした。
図6に示すように、直立した芯金200の先端にプラグ100を取り付けた。そして、プラグ100の上方に金属管300を配置した。このとき、金属管300の軸心をプラグ100の軸心と合わせた。軸心を合わせた後、図示しないプレス機を用いて、金属管300を上方から下方に押し下げ、金属管300を拡管した。拡管時にプレス機に掛かる荷重を、プレス機に取り付けられたロードセルを用いて測定した。なお、拡管率は2.0%であった。各プラグにおいて、5本の金属管を拡管し、5つの荷重値の平均を、各プラグにおける荷重とした。
【0037】
調査結果を表1に示す。表1を参照して、プラグ番号1の荷重は、プラグ番号2〜4の荷重よりも小さかった。したがって、プラグ番号1のプラグは、プラグ番号2〜4のプラグよりも耐焼き付き性が優れていた。また、プラグ番号1の荷重は、プラグ番号5の荷重と同等であった。したがって、プラグ番号1のプラグは、プラグ番号5のプラグと同等の耐焼き付き性を示した。
【実施例2】
【0038】
ステライト肉盛層の化学組成が互いに異なる複数のプラグで金属管を拡管し、荷重を調査した。
【0039】
具体的な調査方法は以下のとおりである。複数のプラグの形状は、いずれも、図5に示すとおりであった。図中のRは376.4mmであり、Dは77.5mmであった。各プラグのステライト肉盛層は、表2に示す原料を用いてPTA法により形成された。なお、母材(プラグ本体)はJIS規格のS45Cに相当する炭素鋼であった。肉盛層の厚さは3mmであった。
【表2】

表2に示すプラグ番号6〜8の各プラグを用いて、実施例1と同様に、金属管を拡管し、荷重を調査した。金属管の外径は88.9mm、内径は76.0mm、肉厚は6.45mm、長さは150mmであった。拡管率は2%であった。
【0040】
表2に拡管時の荷重を示す。表2に示すとおり、プラグ番号6〜8の荷重はいずれも同程度であった。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明による段付き金属管の製造方法は、冷間での金属管の塑性加工、具体的には、冷間で金属管の管端の拡管に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】本発明の実施の形態による段付き金属管の製造方法の第1の工程を示す図である。
【図1B】図1の工程に続く第2の工程を示す図である。
【図1C】図2の工程に続く第3の工程を示す図である。
【図2】本実施の形態による段付き金属管の製造方法に利用される拡管用プラグの側面図である。
【図3】図2と異なる形状の拡管用プラグの側面図である。
【図4】図2及び図3と異なる形状の拡管用プラグの側面図である。
【図5】実施例で用いたプラグの形状を示す側面図である。
【図6】実施例の試験方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0044】
10 拡管用プラグ
20 テーパ部
50 金属管
60 段付き金属管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管を準備する工程と、
先端から後端に向かって徐々に外径が大きくなる表面を有するテーパ部と、前記テーパ部の表面に形成されたステライト肉盛層とを含む拡管用のプラグを準備する工程と、
冷間で、前記金属管の管端に前記プラグを挿入して前記管端を拡管する工程と、
前記プラグを前記金属管から引き抜く工程とを備えることを特徴とする、管端が拡管された段付き金属管の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の段付き金属管の製造方法であって、
前記ステライト肉盛層は、
質量%で、C:0.1〜3.5%、Si:2.5%以下、Mn:2.5%以下、Cr:20〜35%、Ni:4.0%以下、W:20%以下、Fe:5.5%以下、Mo:7.5%以下を含有し、残部はCo及び不純物からなる溶接材料を用いて、肉盛溶接により形成されることを特徴とする段付き金属管の製造方法。
【請求項3】
冷間で金属管の管端を拡管するための拡管用プラグであって、
先端から後端に向かって徐々に外径が大きくなる表面を有するテーパ部と、
前記テーパ部の表面に形成されたステライト肉盛層とを備えることを特徴とする拡管用プラグ。
【請求項4】
請求項3に記載の拡管用プラグであって、
前記ステライト肉盛層は、
質量%で、C:0.1〜3.5%、Si:2.5%以下、Mn:2.5%以下、Cr:20〜35%、Ni:4.0%以下、W:20%以下、Fe:5.5%以下、Mo:7.5%以下を含有し、残部はCo及び不純物からなる溶接材料を用いて、肉盛溶接により形成されることを特徴とする拡管用プラグ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−90352(P2009−90352A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265309(P2007−265309)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(591056569)ナイス株式会社 (10)