説明

殺生物製剤

【課題】
ピレスロイド系殺虫剤、アゾール系殺菌剤及び有機ヨード系殺菌剤を含有した殺生物製剤であり、殺虫殺菌効果に優れ、殺生物製剤の製剤安定性がよく、その水希釈液が長期の安定性を有した殺生物製剤を提供することにある。
【解決手段】
ピレスロイド系殺虫剤、アゾール系殺菌剤、有機ヨード系殺菌剤、溶剤及び界面活性剤を含有し、溶剤が(A)20℃における水への溶解度が5%以下であるジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル及びエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上のグリコールエーテル系溶剤、(B)N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、カプロラクトン及びブチロラクトンから選ばれる少なくとも1種以上の極性溶剤(C)水の混合物であることを特徴とする殺生物製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物や木材に対して昆虫による食害や微生物による劣化や汚染を防止するため、水希釈して使用するのに有効な殺生物製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物や木材を昆虫による食害や微生物による劣化や汚染から保護するため、各種殺虫剤、殺菌剤が開発され、それらを含む殺生物製剤により農作物や木材に処理する方法が採用されてきた。殺生物製剤を処理する方法としては、殺生物製剤の水希釈液を農作物や木材に塗布する方法や、スプレーする方法、その水希釈液中に木材を浸漬する方法等が行われている。殺生物製剤は製剤安定性がよく、殺虫殺菌効果に優れ、取扱いの容易なもの、水希釈倍率の高いもの、水希釈液の安定性の良好なもの、特に工業用用途の浸漬処理に使用する殺生物製剤は水希釈液の安定性が長期間良好なものが要望されている。ピレスロイド系殺虫剤、アゾール系殺菌剤及び有機ヨード系殺菌剤を組み合わせたものを殺生物製剤として使用することや、これらの有効成分をフェニルキシリルエタンやジフェニルアルカンなどの高沸点芳香族系有機溶剤、アジピン酸イソノニルなどのアジピン酸エステルなどやグリコール系溶剤に溶解し、ノニオン及びアニオン系界面活性剤を組み合わせた殺生物製剤は良く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−7502
【特許文献2】特開2005−263813
【特許文献3】特開2005−263686
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェニルキシリルエタンやジフェニルアルカンなどの高沸点芳香族系有機溶剤、アジピン酸イソノニルなどのアジピン酸エステルなどやグリコール系溶剤を使用したものは殺生物製剤の製剤安定性が不十分である、水希釈して使用するときの希釈倍率が低い、水希釈液の安定性が十分でない、また工業用用途の浸漬処理に使用するには水希釈液の長期の安定性が十分でない等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ピレスロイド系殺虫剤、アゾール系殺菌剤及び有機ヨード系殺菌剤と、溶剤として下記(A)、(B)及び(C)の混合溶剤を用い、さらに界面活性剤を配合することにより殺生物製剤の製剤安定性が良く、水希釈して使用するときの水希釈倍率が高く、取り扱いが容易で、また工業用用途の浸漬処理に使用するのに水希釈液の長期の安定性が十分で、殺虫殺菌効果の良好なものが得られることを見出した。
(A)20℃における水への溶解度が5%以下であるジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上のグリコールエーテル系溶剤
(B)N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、カプロラクトン及びブチロラクトンから選ばれる少なくとも1種以上の極性溶剤
(C)水

【発明の効果】
【0006】
本発明の混合溶剤を用いた殺生物製剤は製剤安定性が良く、水希釈して使用するときの水希釈倍率が高く、また水希釈液の長期の安定性がよく、分離、沈降や結晶析出を起こさないので、均一処理を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の殺生物製剤はピレスロイド系殺虫剤、アゾール系殺菌剤及び有機ヨード系殺菌剤、水への溶解度が5%以下であるグリコールエーテル系溶剤、極性溶媒、水及び界面活性剤を含んでいる。
【0008】
ピレスロイド系殺虫剤としてはアレスリン、プラレトリン、フタルスリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、エンペントリン、イミプロトリン、ビフェントリン、シペルメトリン、フェンバレレート、トラロメトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン及びそれらの光学異性体や幾何異性体などが挙げられる。それらは単独もしくは2種以上を用いてもよい。
【0009】
アゾール系殺菌剤としてはシプロコナゾール、ヘキサコナゾール、プロピコナゾール、テブコナゾール、イプコナゾール、アザコナゾール、エポキシコナゾール、メトコナゾール、テトラコナゾール、ペンコナゾール、トリアジメフォン、ビテルタノール、ミクロブタニル、ジニコナゾール、ジフェノコナゾール、イミベンコナゾール、トリアジメール等が挙げられる。それらは単独もしくは2種以上を用いてもよい。
【0010】
有機ヨード系殺菌剤としては3-ヨード−2−プロピニル−n−ブチルカルバメート(IPBC)、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルフォルマール、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナート等が挙げられる。それらは単独もしくは2種以上を用いてもよい。
【0011】
上記例示のピレスロイド系殺虫剤の中ではペルメトリンを、アゾール系殺菌剤の中ではヘキサコナゾールを、有機ヨード系殺菌剤の中では3-ヨード−2−プロピニル−n−ブチルカルバメートを用いることが殺虫殺菌性能や水希釈液の安定性等から好ましい。
【0012】
本発明の殺生物製剤は全量100重量部に対してアゾール系殺菌剤を1.5〜15重量部、好ましくは3〜10重量部、有機ヨード系殺菌剤を0.5〜6重量部、好ましくは1〜4重量部及びピレスロイド系殺虫剤を1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部を含む。溶剤は40重量部から95重量部が含まれるが、活性成分の溶解性や取扱いの容易さから45重量部から85重量部が好ましい。界面活性剤は3〜40重量部、好ましくは5〜33重量部が含有される。
【0013】
20℃における水への溶解度が5%以下であるグリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2―エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を混合しても良い。これらの中では各活性剤成分の溶解性や希釈液の安定性からジエチレングリコールモノヘキシルエーテルやジエチレングリコールモノ−2―エチルヘキシルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルとジエチレングリコールモノフェニルエーテル及び/またはエチレングリコールモノフェニルエーテルとの混合溶剤の使用が好ましい。この時のジエチレングリコールモノフェニルエーテルまたはエチレングリコールモノフェニルエーテルの使用量は、グリコールエーテル系混合溶剤 全量100重量部に対して、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル及び/又はエチレングリコールモノフェニルエーテルは10〜90重量部、特に15〜85重量部が好ましい。
【0014】
極性溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、カプロラクトン、ブチロラクトンが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を用いても良い。これらの中ではN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0015】
グリコールエーテル系溶剤と極性溶剤と水の混合溶剤100重量部に対する各溶剤の割合はグリコールエーテル系溶剤(A)が65〜97重量部、好ましくは、78〜92重量部が含有される。極性溶媒(B)は2〜20重量部、好ましくは、3〜15重量部が含有される。水(C)は1〜15重量部、好ましくは3〜14重量部が含有される。
【0016】
界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油などのノニオン系界面活性剤が上げられる。また、アルキル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩、α―オレフィンスルホン酸ナトリウムなどのα―オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩などのアニオン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を用いてもよい。
【0017】
殺生物製剤の活性成分の溶解性や水希釈液の安定性の面から、(D)ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルおよびポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上の界面活性剤と、(E)ポリオキシエチレンヒマシ油エーテルおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテルから選ばれる少なくとも1種以上の界面活性剤と、(F)ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートアミン塩あるいはそのアンモニウム塩、及びポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルフェートアミン塩あるいはそのアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種以上の界面活性剤を併用することが好ましい。
その時の(D)、(E)、(F)の使用量は界面活性剤100重量部に対して(D)は3〜92重量部、好ましくは、5〜85重量部が含有される。(E)は3〜92重量部、好ましくは5〜85重量部が含まれる。(F)は5〜40重量部であり、好ましくは10〜30重量部が含まれる。
【0018】
本発明の殺生物製剤には、公知の溶剤、界面活性剤や樹脂成分、必要に応じて酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定化剤、着色剤等を本発明の組成物に添加しても良い。
【0019】
本発明の殺生物製剤は使用時に、重量基準で、水で5〜50倍、好ましくは10〜30倍に希釈し農作物や木材に散布、塗布、吹き付け又はその希釈液中に木材を浸漬させることによって使用することができる。水希釈液100重量部中のアゾール系殺菌剤濃度は0.05重量部〜1重量部、有機ヨード系殺菌剤の濃度は0.05〜1重量部及びピレスロイド系殺虫剤濃度としては0.05〜0.5重量部に調整することが好ましい。
【実施例】
【0020】
次に本発明の試験例をあげて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例と比較例に挙げるグリコールエーテル系溶剤は表1、界面活性剤は表2のとおりである。
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
(実施例1〜7)
上記各成分を25℃で5時間混合攪拌し、均一な殺生物製剤を調製した。同様にして以下の実施例、比較例を調整した。表3に実施例1〜7の各成分量を示した。
【0023】
【表3】

(比較例1〜6)
表4に比較例1〜6の各成分量を示した。
【0024】
【表4】

【0025】
(製剤の安定性試験)
各配合の成分を混合溶解し、調整した殺生物製剤100mlをガラスびんに入れて、5℃で1ケ月の保存試験を実施し、外観を観察しすることにより安定性を評価した。評価の基準は下記のとおりであった。
○ 分離や沈殿がほとんどなく、実用可能な水準
× 分離や沈殿が生成し、実用不可能な水準
【0026】
(水希釈液の安定性試験)
殺生物製剤を水道水で20倍の重量に希釈し、調整した水希釈液100mlをガラスびんに入れて、1週間後に水希釈液の状態を観察することにより評価を行った。評価の基準は下記のとおりであった。
○ 水希釈液に分離や沈殿がほとんどなく、実用可能な水準
× 分離や沈殿が生成し、実用不可能な水準
【0027】
表5に、実施例1〜7及び比較例1〜6の殺生物製剤の製剤安定性試験及び水希釈液の安定性試験結果を示した。
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の殺生物製剤は、農作物や木材の表面処理や浸漬処理用途に用いることができる。殺生物製剤の水希釈液を農作物や木材に対して散布、塗布、吹き付けや浸漬等によって処理することにより、農作物や木材への昆虫による食害や微生物による劣化や汚染から保護することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピレスロイド系殺虫剤、アゾール系殺菌剤、有機ヨード系殺菌剤、溶剤及び界面活性剤を含有し、溶剤が下記(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする殺生物製剤。
(A)20℃における水への溶解度が5%以下であるジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル及びエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上のグリコールエーテル系溶剤
(B)N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、カプロラクトン及びブチロラクトンから選ばれる少なくとも1種以上の極性溶剤
(C)水

【請求項2】
ピレスロイド系殺虫剤、アゾール系殺菌剤、有機ヨード系殺菌剤、溶剤及び界面活性剤を含有し、界面活性剤が、下記(D)、(E)及び(F)を含有することを特徴とする請求項1項記載の殺生物製剤。
(D)ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上の界面活性剤
(E)ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテルから選ばれる少なくとも1種以上の界面活性剤
(F)ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートアミン塩あるいはそのアンモニウム塩及びポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルフェートアミン塩あるいはそのアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種以上の界面活性剤

【公開番号】特開2012−126655(P2012−126655A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277033(P2010−277033)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000250018)住化エンビロサイエンス株式会社 (69)
【Fターム(参考)】