説明

殺菌後仕上げ乳化を行う酸性水中油型乳化食品の製造方法

【課題】酸性水中油型乳化食品の水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化して得られる、高粘度で耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供する。
【解決手段】ホスホリパーゼA2処理された卵黄を主な乳化剤として含有する水相原料と油相原料とが乳化されてなる酸性水中油型乳化食品の製造において、水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を60〜75℃で3.5〜10分間加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性水中油型乳化食品の製造方法に関し、詳しくは、仕上げ乳化前にホスホリパーゼA2処理された卵黄を主な乳化剤として含有する水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化して得られる、高粘度で耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵黄を主な乳化剤とする酸性水中油型乳化食品の代表的なものとして、マヨネーズやドレッシング類が挙げられるが、これらは独特の風味を持ち、栄養価の高い食品として知られている。近年、消費者の健康志向や嗜好性の変化により、低酸度・低食塩の組成でマイルドな風味を持ち、更に加熱調理用として耐熱性を有するマヨネーズやドレッシング類の要望が高まっている。
【0003】
しかしながら、低酸度・低食塩のマヨネーズやドレッシング類では、Lactobacillus属やZygosaccharomyces属のような耐酸性菌が生育し易いといった問題がある。これらの耐酸性菌は危害菌ではないがマヨネーズやドレッシング類中で増殖すると、炭酸ガスを発生し、内容物がぶつぶつとした状態を呈したり、又、包装が膨らんだり、更には、風味も変化するなどして商品価値が著しく低下してしまうことになる。
【0004】
このような耐酸性菌の増殖を抑制する方法として、マヨネーズやドレッシング類中の酢酸酸度や食塩濃度を増加させたり、静菌剤(保存料)を添加したりするなどの方法が従来から用いられてきた。即ち、水相原料中で酢酸酸度が2質量%以上及び食塩濃度が8質量%以上となるような組成を組み立てたり、ソルビン酸やデヒドロ酢酸ナトリウム等のような静菌剤を使用したりするのが一般的であった。前述したように、消費者の酸味・塩味に対する嗜好性の変化や静菌剤のような添加物に対して消費者は敬遠する傾向にあり、従来の酢酸酸度や食塩濃度を増加させたり、静菌剤を添加したりするなどの方法は次第に用いられなくなりつつある。
【0005】
こうしたことから、マヨネーズやドレッシング類といった酸性水中油型乳化食品に対する耐酸性菌の安定性を確保するために、加熱殺菌による方法が次第に着目されつつある。一般に、酸と食塩が共存した食品では、加熱殺菌することにより比較的低温度で耐酸性菌等の微生物を死滅させ易いが、これは低pHと食塩の存在下で微生物中の蛋白が変性し易いことや殺菌性のある酢酸が菌体内に入り易いこと等に因るものと考えられる。尚、マヨネーズやドレッシング類中で乳化剤として用いている卵黄も、酸と食塩の共存下で変性し易く、又、加熱によって卵黄の乳化力や乳化安定性が低下することが従来から知られている。
【0006】
酸性水中油型乳化食品を加熱殺菌する場合、次のような2方法が考えられる。即ち、油相原料の微生物汚染が無視できる場合には、水相原料のみを加熱殺菌する方法が考えられ、一方、油相原料も微生物汚染が無視できない場合には、予備乳化物を加熱殺菌する方法が考えられる。こうして、酸性水中油型乳化食品の水相を殺菌する技術として、水相を加熱殺菌冷却した後、油相を加えて調製する液体調味料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、該液体調味料の油相は35質量%以下であり、粘度も低いといった問題点があった。
【0007】
又、香味油と香味油以外の油脂を除いた水相原料を混合した後、加熱殺菌し、その後、前記香味油とそれ以外の油脂を添加・乳化して得られる乳化型調味液の製造方法 及び卵黄を使用しない豆乳ベースの水相を加熱殺菌し冷却した後、植物油脂を滴下しながら乳化して得られる豆乳ドレッシングの製造方法に関する技術が開示されている(例えば、特許文献2及び3参照)。しかしながら、該乳化型調味液や豆乳ドレッシングは、乳化剤として卵黄を使用していないため、風味が異なることや低油分であるといった問題点があった。
【0008】
一方、酸性の水中油型乳化食品の予備乳化物を殺菌する技術については殆ど見当たらないが、ホイップクリーム用水中油型乳化物の予備乳化物を殺菌又は滅菌した後、仕上げ乳化である高圧乳化処理する技術が開示されている(例えば、特許文献4〜7参照)。しかしながら、該ホイップクリーム用水中油型乳化物は酸性ではないこと、比較的低油分であること、及び乳化剤として卵黄を使用せず、乳蛋白、多糖類や合成乳化剤を使用しているといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−11206号公報
【特許文献2】特開2008−5463号公報
【特許文献3】特開2003−274899号公報
【特許文献4】特許第3368842号公報
【特許文献5】特開2006−304665号公報
【特許文献6】特開2004−254603号公報
【特許文献7】特開平8−256716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、酸性水中油型乳化食品の水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化して得られる、高粘度で耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことにホスホリパーゼA2処理された卵黄を主要な乳化剤として含有する水相原料を使用することにより、水相原料又は該水相を使用した予備乳化物を加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化しても、高粘度で耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明(1)は、ホスホリパーゼA2処理された卵黄を主な乳化剤として含有する水相原料と油相原料とが乳化されてなる酸性水中油型乳化食品の製造において、水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を60〜75℃で3.5〜10分間加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化して得られることを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供するものである。
【0013】
次に、本発明(2)は、油相原料が65〜85質量%及び水相原料が35〜15質量%、並び卵黄量が生卵黄換算で4〜10質量%である本発明(1)記載の酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ホスホリパーゼA2処理された卵黄を主な乳化剤として含有させた水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を加熱殺菌した後、仕上げ乳化して得られた酸性水中油型乳化食品では、加熱殺菌したにも係わらず高粘度で耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品が得られる。しかも、本発明によれば、水相原料を加熱殺菌した後、仕上げ乳化を行う技術に見られる、油分が30質量%以下のため、粘度が低いといったことや、卵黄を使用せず、乳化剤として豆乳ベースを用いるため、風味が異なるといった問題点もない。又、予備乳化物を加熱殺菌した後、仕上げ乳化を行う技術に見られる、酸性乳化物ではないこと、比較的低油分であること及び乳化剤として卵黄の代わりに多糖類や合成乳化剤を使用するといった問題点もない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ホスホリパーゼA2処理された卵黄を主な乳化剤として含有する水相原料と油相原料とが乳化されてなる酸性水中油型乳化食品の製造において、水相原料又は該水相原料を使用する予備乳化物を加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化することを特徴とするものである。ここで酸性水中油型乳化食品とは、水相原料と油相原料とを混合し水中油型に予備乳化し、次いで仕上げ乳化して得られた食品をいい、代表的なものとしてマヨネーズ、ドレッシング類などが挙げられる。 又、予備乳化物とは、仕上げ乳化にかける前の粗乳化物を言い、通常、予備乳化から仕上げ乳化の順で酸性水中油型乳化食品が製造される。本発明において、ホスホリパーゼA2の他に、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼDでも同様の検討を行うことができる。
【0016】
本発明で使用するホスホリパーゼA2とは、リン脂質の2位の脂肪酸を加水分解する酵素であり、卵黄中のリン脂質は、2位の脂肪酸が加水分解されて、リゾリン脂質へと変換される。このようなホスホリパーゼA2としては、例えばノボザイムズジャパン(株)製のホスホリパーゼA2(製品名:「レシターゼ10L」10,000IU/ml)を使用することができ、その他、ジェネンコア協和(株)製の「Lipomod699L」(10,000IU/ml)やサンヨーファイン(株)製の「リゾナーゼ」(10,000IU/ml)等も同様に使用することができる。ここで、IU(International Unit)とは、ホスホリパーゼA2の活性単位を意味し、リン脂質を基質とし、pH8、40℃、Ca2+の存在下の条件で、1分間当り1マイクロモルの脂肪酸を遊離することをさす。
【0017】
本発明において好適に用いられるノボザイムズジャパン(株)製のホスホリパーゼA2「レシターゼ10L」について述べると、このホスホリパーゼA2は、ブタの膵臓より抽出精製されたものであって、pH5〜11に活性領域を有するホスホリパーゼA2であり、かつ、作用至適pHが6から10であり、作用至適温度が40〜60℃であって、35〜90℃の安定性上限温度を有するものである。 しかしながら、作用至適温度が60℃を超えた領域、即ち、60〜70℃付近でも卵黄を基質とした場合、十分な酵素活性を示し、更に、酵素反応は短時間で起こることが把握されている。又、作用至適温度が40℃未満の領域、30〜40℃であっても十分な酵素活性を示しており、卵黄をホスホリパーゼA2処理することができる。
【0018】
次に、ホスホリパーゼA2処理卵黄の調製方法は以下の通りである。本発明で使用される卵黄としては、通常の未変性状態の卵黄液や乾燥卵黄であればよく、特別な制限はない。例えば、割卵した後、卵白を分離して得られる卵黄液やスプレー乾燥などによる卵黄粉末が一般的なものであり、必要に応じて、これらを水で希釈したり、或いは水戻したりしたものであってもよい。本発明におけるホスホリパーゼA2の添加量は、生卵黄1kgに対して、少なくとも1,000IU以上、好ましくは3,000〜10,000IUが適当である。ホスホリパーゼA2の添加量が1,000IU未満では、得られた酸性水中油型乳化食品の粘度が高粘度でなく、又、優れた耐熱性を有していない恐れがあり、一方、ホスホリパーゼA2の添加量が10,000IUを超えても、処理効果が向上せず、経済的にも好ましくないため、いずれも好ましくない。
【0019】
次に、ホスホリパーゼA2を添加した卵黄は、ホスホリパーゼA2処理されることが不可欠であるが、通常、卵黄は、30〜70℃で3.5分〜2時間の条件にてホスホリパーゼA2処理される。このようにして得られたホスホリパーゼA2処理卵黄は、本発明(2)に記載したように、酸性水中油型乳化食品中、4質量%〜10質量%、好ましくは6〜9質量%が使用される。ここで、ホスホリパーゼA2処理卵黄の使用量が4質量%未満では、得られた酸性水中油型乳化食品が高粘度にならず、又、優れた耐熱性を有していない恐れがあり、何れも好ましくない。
【0020】
ホスホリパーゼA2処理卵黄以外、本発明における酸性水中油型乳化食品の水相原料は、マヨネーズ、ドレッシング類やスプレッド類の製造に際して使用される原料や、その配合割合に準じて決定すればよく、特に制限されない。通常、用いられる水相原料の例としては、水の他に、卵黄、卵白、乳蛋白、大豆蛋白、食塩、食酢、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等の調味料、乳化剤、糖類、澱粉、乳成分、果汁、ガム類、香辛料、着香料、着色料などが挙げられる。 乳化剤としては、ホスホリパーゼA2処理卵黄を用いることが必須であるが、卵黄の他に卵白、乳蛋白、大豆蛋白等を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
水相原料の調製としては、水以外の水相原料を水に分散・溶解して調製される。前述したように水相原料中の酢酸酸度及び食塩濃度がそれぞれ2質量%及び8質量%以下では、耐酸性菌が増殖する可能性があり、油相原料での耐酸性菌の汚染が無視できるならば、水相原料のみを加熱殺菌することができる。前述したように、酸と食塩が共存した食品では、加熱による蛋白変性が起き易い等の理由のため、比較的低温での加熱殺菌が可能となる。例えば、特開2005−160313号報では、マヨネーズ等の水中油型酸性調味料と茹で卵とを和えた、卵スプレッドの殺菌温度について開示しているが、ここで60〜90℃での湯中で加熱殺菌する技術が報告されている。酸性下でなければ、通常、より高温下で加熱殺菌する必要があるが、水中油型酸性調味料を使用しており、該調味料が酸性で、且つ食塩を含有するため、60〜90℃での加熱殺菌が可能なものと考えられる。
【0022】
本発明では、前記調製した水相原料を60〜75℃で3.5〜10分間加熱殺菌することが必要である。加熱温度が60℃以下及び加熱時間が3.5分間以内では、水相を十分に加熱殺菌することができず、一方、加熱温度及び加熱時間がそれぞれ75℃及び10分間を超えると卵黄蛋白が変性し過ぎて乳化力や乳化安定性が低下し、得られた酸性水中油型乳化食品の粘度が激減するおそれがあるため、何れも好ましくない。
【0023】
本発明における酸性水中油型乳化食品の油相原料としては、通常、食品に添加可能な親油性の物質であれば、特に制限が無く、例えば動植物油や、親油性のある香辛料等が挙げられる。植物油としては、常温で液体の菜種油、大豆油、べに花油、ひまわり油、とうもろこし油、しそ油、ごま油等、及び魚油、牛脂、豚脂等の動物油脂が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0024】
本発明の酸性水中油型乳化食品の油相原料と水相原料との割合については、油相原料65〜85質量%に対して、水相原料35〜15質量%が好ましく、更に70〜80質量%がより好ましい。ここで、油相原料の比率が65質量%未満、水相原料が35質量%を超えると、水相の割合が多くなりすぎ、粘度が低下してしまうこと、一方、油相原料の割合が85質量%を超え、水相原料15質量%未満であると、調製時に転相し易くなるので、何れも好ましくない。ここで、前記加熱殺菌された水相原料を使用する場合では、該水相原料を攪拌しながら、これに油相原料を加えて、一般的な攪拌機、例えば市販の万能混合攪拌機などにより、予備乳化物を調製し、次に、コロイドミル等の乳化機で仕上げ乳化を行う方法により、目的とする酸性水中油型乳化食品を製造することができる。
【0025】
一方、水相原料を加熱殺菌せず、該水相原料を使用した予備乳化物を加熱殺菌する場合は、次のような方法で行うことができる。水相原料を攪拌しながら、これに油相原料を加え前記と同様にして予備乳化する。次いで、この予備乳化物をチューブラータイプ、又はプレートタイプの熱交換機により、60〜75℃で3.5〜10分間の条件にて加熱殺菌を行った後、室温付近まで冷却し、次に、コロイドミル等の乳化機で仕上げ乳化を行う方法により、目的とする酸性水中油型乳化食品を製造することができる。
【0026】
本発明では、ホスホリパーゼA2処理された卵黄を主な乳化剤として含有する水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化しても、高粘度で耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品を製造することができる。本発明で用いたホスホリパーゼA2処理卵黄は、酸と食塩の存在下で加熱されても比較的変性し難く、乳化力や乳化安定性の低下が少ない性質を有するものと考えられる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
実施例1〜12
(1)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の水相原料及び該水相原料を使用した予備乳化物の加熱殺菌品の製造例
製造例1〔本発明品1の製造方法:水相の加熱殺菌品〕
先ず、水相に使用するホスホリパーゼA2処理卵黄の調製は以下のように行う。
卵黄1kgに対し、ノボザイムズジャパン(株)製のホスホリパーゼA2「レシターゼ10L」を、3,000IU添加混合した後、65℃で5分間加熱処理を行って、ホスホリパーゼA2処理卵黄を得た。次いで、表1に示した基本配合組成のマヨネーズ1の水相原料を0.75kg調製し、60℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品1を得た。
【0028】
製造例2〔本発明品2の製造方法:水相の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表1に示した基本配合組成のマヨネーズ1の水相原料を0.75kg調製し、65℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品2を得た。
【0029】
製造例3〔本発明品3の製造方法:水相の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表1に示した基本配合組成のマヨネーズ1の水相原料を0.75kg調製し、70℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品3を得た。
【0030】
製造例4〔本発明品4の製造方法:水相の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表1に示した基本配合組成のマヨネーズ1の水相原料を0.75kg調製し、75℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品4を得た。
【0031】
製造例5〔本発明品5の製造方法:水相の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表2に示した基本配合組成のマヨネーズ2の水相原料を0.75kg調製し、60℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品5を得た。
【0032】
製造例6〔本発明品6の製造方法:水相の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表2に示した基本配合組成のマヨネーズ2の水相原料を0.75kg調製し、65℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品6を得た。
【0033】
製造例7〔本発明品7の製造方法:水相の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表2に示した基本配合組成のマヨネーズ2の水相原料を0.75kg調製し、70℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品7を得た。
【0034】
製造例8〔本発明品8の製造方法:水相の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表2に示した基本配合組成のマヨネーズ2の水相原料を0.75kg調製し、75℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品8を得た。
【0035】
製造例9〔本発明品9の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表1に示した基本配合組成のマヨネーズ1の予備乳化物を調製する。即ち、調製した水相原料0.75kgをプロペラ攪拌機により攪拌しながら、油相である菜種油2.25kgを徐々に添加・混合し、予備乳化物3kgを調製する。得られた予備乳化物3kgを60℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品9を得た。
【0036】
製造例10〔本発明品10の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表1に示した基本配合組成のマヨネーズ1の予備乳化物を製造例9と同様にして調製する。得られた予備乳化物3kgを65℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品10を得た。
【0037】
製造例11〔本発明品11の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表1に示した基本配合組成のマヨネーズ1の予備乳化物を製造例9と同様にして調製する。得られた予備乳化物3kgを70℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品11を得た。
【0038】
製造例12〔本発明品12の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表1に示した基本配合組成のマヨネーズ1の予備乳化物を製造例9と同様にして調製する。得られた予備乳化物3kgを75℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品12を得た。
【0039】
製造例13〔本発明品13の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表2に示した基本配合組成のマヨネーズ2の予備乳化物を製造例9と同様にして調製する。得られた予備乳化物3kgを60℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品13を得た。
【0040】
製造例14〔本発明品14の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表2に示した基本配合組成のマヨネーズ2の予備乳化物を製造例9と同様にして調製する。得られた予備乳化物3kgを65℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品14を得た。
【0041】
製造例15〔本発明品15の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表2に示した基本配合組成のマヨネーズ2の予備乳化物を製造例9と同様にして調製する。得られた予備乳化物3kgを70℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品15を得た。
【0042】
製造例16〔本発明品16の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例1と同様にして調製したホスホリパーゼA2処理卵黄を用い、表2に示した基本配合組成のマヨネーズ2の予備乳化物を製造例9と同様にして調製する。得られた予備乳化物3kgを75℃の熱水中にて5分間殺菌処理を行って、本発明品16を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
(2)酸性水中油型乳化食品の(マヨネーズ)の調製
下記表1に示すマヨネーズの基本配合組成1に従い、製造例1〜4で得られた水相の原料の加熱殺菌品(本発明品1〜4)及び下記表2に示すマヨネーズの基本配合組成2に従い、製造例5〜8で得られた水相の加熱殺菌品(本発明品5〜8)と油相原料とを攪拌混合して予備乳化物を調製した。次いでコロイドミル(クリアランス:3/1,000インチ、回転数:3,000rpm)により、実施例1〜8の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)2kgを調製した。
次に、下記表1に示すマヨネーズの基本配合組成1に従い、製造例9〜12で得られた予備乳化物(本発明品9〜12)及び下記表2に示すマヨネーズの基本配合組成2に従い、製造例13〜16で得られた予備乳化物の加熱殺菌品(本発明品13〜16)を用い、実施例1〜8と同様な条件にて実施例9〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)2kgを調製した。
【0046】
(3)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度測定
上記(2)で得られた実施例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度を次のような条件で測定した。即ち、(2)で得られた酸性水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を200mlの容器に充填し、24℃で1日保存後、ブルックフィールド粘度計を用い、スピンドル:TC及び回転数:5rpmの条件にて測定した。 測定された粘度に基づき、好ましい粘度領域を以下のようにして評価した。結果を表3に示す。
〔粘度の評価〕
・ 80,000mPa・sを超え、300,000mPa・s未満 : 良好
・ 40,000mPa・sを超え、 80,000mPa・s未満 : やや良好
・ 40,000 mPa・s未満 : 不良
【0047】
(4)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性の評価
上記(2)で得られた実施例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性の評価を次のようにして行った。
約20g容のプラスチック容器に、上記(2)で得られた酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)15gを充填・シールした後、95℃にて30分間加熱した。 冷却後、酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性を次の3段階で評価した。尚、評価は経験豊かな5名のパネラーによる視覚観察の平均値で示した。結果を表3に示す。
〔耐熱性の評価〕
・油分離していない。 : 安定
・僅かな油分離がみられる。 : やや安定
・かなりの油分離がみられる。 : 不安定
【0048】
(5)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度及び耐熱性の総合評価
上記(2)で得られた酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度評価及び耐熱性評価結果より、以下のようにして総合評価をおこなった。結果を表3に示す。
〔総合評価〕
・粘度及び耐熱性評価共に良好なもの : 良好
・粘度及び耐熱性評価が良好とやや良好の : やや良好
組み合わせのもの又は何れもやや良好なもの
・粘度又は耐熱性評価の何れかが不良なもの : 不良
【0049】
【表3】

【0050】
表3の結果より、次のようなことがわかる。ホスホリパーゼA2処理された卵黄を5質量%含有する、表1に示す基本配合組成のマヨネーズ1及びホスホリパーゼA2処理された卵黄を7質量%含有する表2に示す基本配合組成のマヨネーズ2の水相原料を60〜75℃で5分間加熱殺菌した後、油相原料を加え仕上げ乳化して得られた実施例1〜4及び実施例5〜8の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度の評価では、全て“やや良好”な結果が得られた。一方、耐熱性の評価は全て“良好”であり、総合評価では、全て“やや良好”な結果が得られた。実施例1〜4及び実施例5〜8の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は、何れも殺菌温度が高くなるにつれて、粘度は減少する傾向が見られた。
【0051】
次に、ホスホリパーゼA2処理された卵黄を5質量%含有する表1に示す基本配合組成のマヨネーズ1及びホスホリパーゼA2処理された卵黄を7質量%含有する表2に示す基本配合組成のマヨネーズ2の予備乳化物を60〜75℃で5分間加熱殺菌した後、仕上げ乳化して得られた実施例9〜12及び実施例13〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度の評価では、それぞれ“やや良好”及び“良好”な結果が得られた。一方、耐熱性の評価は全て“良好”であり、総合評価では、それぞれ“やや良好”及び“良好”な結果が得られた。実施例9〜12及び実施例13〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)は、何れも殺菌温度が高くなるにつれて粘度は低下する傾向が見られるが、実施例1〜8よりも高めの値を示しており、予備乳化物を加熱殺菌する方が、粘度の低下は比較的小さかった。
【0052】
これらの結果より、基本配合組成のマヨネーズ1及び2のそれぞれ水相原料及び該水相原料を使用した予備乳化物を加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化しても、高粘度で耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の得られることが理解される。
【0053】
比較例1〜16
(1)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の水相原料及び該水相原料を使用した予備乳化物の加熱殺菌品の比較製造例
比較製造例1〔比較品1の製造方法:水相原料の加熱殺菌品〕
製造例1で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例1と同様にして、比較品1を得た。
【0054】
比較製造例2〔比較品2の製造方法:水相原料の加熱殺菌品〕
製造例2で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例2と同様にして、比較品2を得た。
【0055】
比較製造例3〔比較品3の製造方法:水相原料の加熱殺菌品〕
製造例3で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例3と同様にして、比較品3を得た。
【0056】
比較製造例4〔比較品4の製造方法:水相原料の加熱殺菌品〕
製造例4で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例4と同様にして、比較品4を得た。
【0057】
比較製造例5〔比較品5の製造方法:水相原料の加熱殺菌品〕
製造例5で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例5と同様にして、比較品5を得た。
【0058】
比較製造例6〔比較品3の製造方法:水相原料の加熱殺菌品〕
製造例6で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例6と同様にして、比較品6を得た。
【0059】
比較製造例7〔比較品3の製造方法:水相原料の加熱殺菌品〕
製造例7で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例7と同様にして、比較品7を得た。
【0060】
比較製造例8〔比較品3の製造方法:水相原料の加熱殺菌品〕
製造例8で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例8と同様にして、比較品8を得た。
【0061】
比較製造例9〔比較品9の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例9で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例9と同様にして、比較品9を得た。
【0062】
比較製造例10〔比較品10の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例10で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例10と同様にして、比較品10を得た。
【0063】
比較製造例11〔比較品11の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例11で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例11と同様にして、比較品11を得た。
【0064】
比較製造例12〔比較品12の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例12で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例12と同様にして、比較品12を得た。
【0065】
比較製造例13〔比較品13の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例13で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例13と同様にして、比較品13を得た。
【0066】
比較製造例14〔比較品14の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例14で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例14と同様にして、比較品14を得た。
【0067】
比較製造例15〔比較品15の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例15で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例15と同様にして、比較品15を得た。
【0068】
比較製造例16〔比較品16の製造方法:予備乳化物の加熱殺菌品〕
製造例16で、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに未処理卵黄を用いること以外は、製造例16と同様にして、比較品16を得た。
【0069】
(2)酸性水中油型乳化食品の(マヨネーズ)の調製
実施例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)と同様にして、上記(1)で得られた比較品1〜16を用いて、比較例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製した。
【0070】
(3)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度測定
実施例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)と同様にして、上記(2)で得られた比較例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度測定を行った。結果を表4に示す。
【0071】
(4)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性の評価
実施例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)と同様にして、上記(2)で得られた比較例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0072】
(5)酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度及び耐熱性の総合評価
実施例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)と同様にして、上記(2)で得られた比較例1〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度及び耐熱性の総合評価を行った。結果を表4に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
表4の結果より、次のようなことがわかる。ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに生卵黄を5質量%含有する表1に示す基本配合組成のマヨネーズ1及びホスホリパーゼA2処理卵黄を使用せず、生卵黄を7質量%含有する表2に示す基本配合組成のマヨネーズ2の水相原料を60〜75℃で5分間加熱殺菌した後、油相原料を加え仕上げ乳化して得られた比較例1〜4及び比較例5〜8の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度の評価は、それぞれ“不良”及び“やや良好〜不良”な結果が得られた。一方、耐熱性の評価は全て“不良”であり、総合評価でも全て“不良”な結果が得られた。ホスホリパーゼA2処理卵黄を使用した場合に比べ、生卵黄を使用した酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度は、殺菌温度が高くなるにつれて、更に低下する傾向が見られた。
【0075】
次に、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに生卵黄を5質量%含有する表1に示す基本配合組成のマヨネーズ1及びホスホリパーゼA2処理卵黄を使用せず、生卵黄を7質量%含有する表2に示す基本配合組成のマヨネーズ2の予備乳化物を60〜75℃で5分間加熱殺菌した後、仕上げ乳化して得られた比較例9〜12及び比較例13〜16の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)の粘度の評価は、それぞれ“不良”及び“やや良好”な結果が得られた。 一方、耐熱性の評価は全て“不良”であり、総合評価でも全て“不良”な結果が得られた。 比較例1〜8の酸性水中油型乳化食品(マヨネーズ)と同様に、殺菌温度が高くなるにつれて粘度は低下するが、予備乳化物を加熱殺菌する方が粘度低下は比較的小さかった。
【0076】
これらの結果より、ホスホリパーゼA2処理卵黄の代わりに生卵黄を含有させた水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を60〜75℃で5分間加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化しても、高粘度で耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品が得られないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホリパーゼA2処理された卵黄を主な乳化剤として含有する水相原料と油相原料とが乳化されてなる酸性水中油型乳化食品の製造において、水相原料又は該水相原料を使用した予備乳化物を60〜75℃で3.5〜10分間加熱殺菌した後、次いで仕上げ乳化して得られることを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法。
【請求項2】
油相原料が65〜85質量%及び水相原料が35〜15質量%、並び卵黄量が生卵黄換算で4〜10質量%である請求項1記載の酸性水中油型乳化食品の製造方法。