説明

殺菌性N−[2−(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド

式(I)[式中、n=0又は1、Hal=ハロゲン、X=C2-C4-ハロアルキル、Het=ピラゾール基(a)、チアゾール基(b)又はピリジン基(c)、ここで、R1=C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキル、R2=水素又はハロゲン、R3=C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキル、R5=ハロゲン、C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキルである]で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド(但し、N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-1,3-ジメチルピラゾール-4-イル-カルボキサミド、N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド及びN-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イル-カルボキサミドを除く)。少なくとも1種類の化合物(I)を含んでいる殺菌剤組成物、有害な菌類を防除するのに適した組成物を調製するための化合物(I)の使用、化合物(I)を使用して有害な菌類を防除する方法、及び、少なくとも1種類の化合物(I)を含んでいる種子。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】

【0002】
[式中、可変部分は以下で定義されているとおりである:
nは、0又は1であり;
Halは、ハロゲンであり;
Xは、C2-C4-ハロアルキルであり;
Hetは、式(a)、式(b)又は式(c):
【化2】

【0003】
で表されるピラゾール基、チアゾール基又はピリジン基であり、
ここで、
R1は、C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキルであり;
R2は、水素又はハロゲンであり;
R3は、C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキルであり;
R4は、ハロゲン、C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキルである]
で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド(但し、N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-1,3-ジメチルピラゾール-4-イル-カルボキサミド、N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド、及び、N-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イル-カルボキサミドを除く)に関する。
【0004】
さらに、本発明は、上記化合物を調製する方法、それらを含んでいる組成物、及び、有害な植物病原性菌類を防除するためのそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0005】
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-1,3-ジメチルピラゾール-4-イルカルボキサミド、及び、N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド、並びに、それらの殺菌作用は、EP-A 589301によって既に知られている。
【0006】
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド、及び、N-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イル-カルボキサミド、並びに、それらの殺菌作用は、JP 04/316559によって既に知られている。
【0007】
さらに、N-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド(I)のタイプの化合物も、EP-A 545099、US 7,015,218、JP 10/072420、JP 63/048269、及び、JP 2001/342179に記載されている。しかしながら、それら既知化合物の殺菌活性は、必ずしも完全に満足できるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、上記種類の構造から、向上した殺菌活性及び/又は改善された活性スペクトルを有する新規化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、この目的が冒頭で定義したN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミドによって達成されるということを見いだした。さらに、本発明者らは、それらを含んでいる組成物、及び、化合物(I)を用いて有害な菌類を防除する方法も見いだした。
【0010】
既知化合物と比較して、式(I)で表される化合物は、有害な菌類に対する向上した活性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
式(I)で表される化合物は、さまざまな結晶変態(crystal modification)で存在することが可能であり、ここで、それら結晶変態は、その生物学的活性が異なり得る。それらも、本発明の主題の一部を構成する。
【0012】
式(I)において、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、好ましくは、フッ素又は塩素である;
C1-C4-アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル又は1,1-ジメチルエチルであり、好ましくは、メチル又はエチルである;
C1-C4-ハロアルキルは、部分的に又は完全にハロゲン化されているC1-C4-アルキル基(ここで、1個又は複数個の該ハロゲン原子は、特に、フッ素、塩素及び/又は臭素である)であり、即ち、例えば、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロ-エチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、1,1,2,2-テトラクロロエチル、ペンタフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロピル、1,1,2,3,3,3-ヘキサ-フルオロ-1-プロピル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル、ヘプタフルオロ-1-プロピル、ヘプタフルオロ-2-プロピル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブチル又はノナフルオロ-1-ブチルなどであり、特に、ハロメチル、特に好ましくは、CH2-Cl、CH(Cl)2、CH2-F、CH(F)2、CF3、CHFCl、CF2Cl又はCF(Cl)2である;
C2-C4-ハロアルキルは、部分的に又は完全にハロゲン化されているC2-C4-アルキル基(ここで、1個又は複数個の該ハロゲン原子は、特に、フッ素であり、また、望ましい場合には、塩素である)であり、即ち、例えば、1-フルオロ-エチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロピル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロピル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル、ヘプタフルオロ-1-プロピル、ヘプタフルオロ-2-プロピル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタ-フルオロ-1-ブチル又はノナフルオロ-1-ブチルなどであり、特に、5個のフッ素原子と1個の塩素原子からなる群から選択される1〜5個のハロゲン原子を有するエチルであるか、又は、7個のフッ素原子と1個の塩素原子からなる群から選択される1〜7個のハロゲン原子を有するn-プロピルであるか、又は、7個のフッ素原子と1個の塩素原子からなる群から選択される1〜7個のハロゲン原子を有するイソプロピルである。
【0013】
式(I)で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミドの意図されている用途に関し、置換基の下記意味(いずれの場合にも、それら自体で又は組合せにおける)が特に好ましい:
nは、ゼロである;
Halは、フッ素又は塩素であり、特に、フッ素である;
Xは、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルであり、特に、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルである。
【0014】
さらに、Hetが式(a)で表されるピラゾール基である化合物(I)が好ましい。
【0015】
Hetが(a)であり及びXがC3-C4-ハロアルキルである(又は、R1がC2-C4-アルキル、CHF2若しくはCHFClである場合、XはC2-ハロアルキルであってもよい)化合物(I)が好ましい。
【0016】
Hetが(a)である化合物(I)の中で、R1がメチル又はジフルオロメチル(特に、ジフルオロメチル)であり及び/又はR2がハロゲン(特に、フッ素又は塩素)である化合物(I)が、極めて特に好ましい。
【0017】
さらにまた、Hetが式(b)で表されるチアゾール基である化合物(I)も好ましい。
【0018】
さらにまた、Hetが式(c)で表されるピリジン基である化合物(I)も好ましい。
【0019】
Hetがピラゾール基(a)であるN-[2-(ハロアルコキシ(又は、ハロアルケニルオキシ))フェニル]カルボキサミド(I)の中で、R1がメチル又はハロメチル(特に、CH3、CHF2又はCF3)である化合物(I)が好ましい。
【0020】
Hetが(a)であり及びR1がトリフルオロメチルである化合物(I)の中で、Xが2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル又は1,1,2,3,3,3-ヘキサ-フルオロプロピルである化合物(I)が極めて特に好ましい。
【0021】
Hetが(a)であり及びR1がメチル又はジフルオロメチルである化合物(I)の中で、Xが1,1,2,2-テトラフルオロエチルである化合物(I)が極めて特に好ましい。
【0022】
さらに、Hetが(a)(ここで、R2は、水素、フッ素又は塩素である)である化合物(I)も好ましい。ここで、第1に、R2が水素である化合物(I)も好ましく、さらにまた、第2に、R2がフッ素又は塩素(特に、フッ素)である化合物(I)も好ましい。
【0023】
Hetが(a)であり及びR2が水素である化合物(I)の中で、Xが2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルである化合物(I)が極めて特に好ましい。
【0024】
Hetが(a)であり及びR2がフッ素又は塩素である化合物(I)の中で、Xが1,1,2,2-テトラフルオロエチルである化合物(I)が極めて特に好ましい。
【0025】
Hetがチアゾール基(b)であるN-[2-(ハロアルコキシ(又は、ハロアルケニルオキシ))フェニル]カルボキサミド(I)の中で、R3がメチル又はハロメチル(特に、CH3、CHF2又はCF3)である化合物(I)が好ましい。
【0026】
Hetがピリジン基(c)であるN-[2-(ハロアルコキシ(又は、ハロアルケニルオキシ))フェニル]カルボキサミド(I)の中で、R4がハロゲン、メチル又はハロメチル(特に、フッ素、塩素、臭素、メチル、CHF2又はCF3)である化合物(I)が好ましい。
【0027】
特に好ましいのは、下記表1、表2及び表3に記載されている化合物(Ia)、化合物(Ib)及び化合物(Ic)である。
【0028】
表1
化合物(Ia)[nが0であり及びHetが式(a)のピラゾール基である化合物(I)]
【表1】

【0029】

【0030】

【0031】

【0032】
表2
化合物(Ib)[nが0であり、R4がCH3であり及びHetが式(b)のチアゾール基である化合物(I)]
【表2】

【0033】

【0034】
表3
化合物(Ic)[nが0であり及びHetが式(c)のピリジン基である化合物(I)]
【表3】

【0035】

【0036】
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-1,3-ジメチル-5-フルオロピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-5-フルオロ-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-5-フルオロ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-5-クロロ-1,3-ジメチルピラゾール-5-クロロ-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-5-クロロ-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-5-クロロ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2,4-ジメチルチアゾール-5-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-メチル-4-トリフルオロメチルチアゾール-5-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-メチルニコチンアミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-トリフルオロメチルニコチンアミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-フルオロニコチンアミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-クロロニコチンアミド;
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-2-クロロニコチンアミド;
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-2-メチル-4-トリフルオロメチルチアゾール-5-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-(クロロフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-フルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-(ジクロロフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-2-クロロニコチンアミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-2-メチル-4-トリフルオロメチルチアゾール-5-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-カルボキサミド;
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;及び
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
が、極めて特に好ましい。
【0037】
本発明の化合物(I)は種々の経路で得ることができる。有利には、本発明の化合物(I)は、式(II)で表されるハロゲン化カルボニルを塩基の存在下で式(III)で表されるアニリンと反応させて調製する(cf., 例えば, J. March, Advanced Organic Chemistry, 2nd Ed., 382f., McGraw-Hill 1977):
【化3】

【0038】
Lは、塩素、臭素又はヨウ素であり、特に、塩素又は臭素である。
【0039】
上記反応は、通常、(-20)〜100℃の温度、好ましくは、0〜50℃の温度で、大気圧下で実施する。
【0040】
適切な溶媒は、脂肪族炭化水素類、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン及び石油エーテル、芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレン、ハロゲン化炭化水素類、例えば、塩化メチレン、クロロホルム及びクロロベンゼン、エーテル類、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、アニソール及びテトラヒドロフラン、ニトリル類、例えば、アセトニトリル及びプロピオニトリル、ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン及びt-ブチルメチルケトン、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール及びt-ブタノール、さらに、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドであり、トルエン及びテトラヒドロフランが特に好ましい。しかしながら、上記溶媒の混合物を使用することも可能である。
【0041】
適切な塩基は、一般に、無機化合物、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化物、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム及び水素化カルシウム、アルカリ金属アミド、例えば、リチウムアミド、ナトリウムアミド及びカリウムアミド、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸リチウム及び炭酸カルシウム、さらに、アルカリ金属炭酸水素塩、例えば、炭酸水素ナトリウム、並びに、有機金属化合物、特に、アルカリ金属アルキル、例えば、メチルリチウム、ブチルリチウム及びフェニルリチウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、例えば、塩化メチルマグネシウム、さらに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシド、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド及びジメトキシマグネシウム、さらに、有機塩基、例えば、第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルエチルアミン及びN-メチルピペリジン、ピリジン、置換ピリジン、例えば、コリジン、ルチジン及び4-ジメチルアミノピリジン、さらに、二環式アミンである。トリエチルアミン又はピリジンを使用するのが特に好ましい。
【0042】
上記塩基は、一般に、ハロゲン化カルボニル(II)を基準にしてほぼ等モル量で使用する。しかしながら、最大で30mol%までの過剰量で、好ましくは、最大で10mol%までの過剰量で使用することも可能であり、又は、第三級アミンを使用する場合、適切な場合には溶媒として使用してもよい。
【0043】
該出発物質は、一般に、互いにほぼ等モル量で反応させる。しかしながら、収率の点から見て、アニリン(III)を基準にして、1〜20mol%、好ましくは、0.5〜10mol%の過剰な(II)を使用することが有利な場合もある。
【0044】
出発物質(II)及び出発物質(III)は、既知であるか、又は、それ自体公知の方法で調製することができる(cf., 例えば, Helv. Chim. Acta 60, 978 (1977);Zh. Org. Chim 26, 1527 (1990);Heterocyclus 26, 1885 (1987);Izv. Akad. Nauk. SSSR Ser. Khim 1982, 2160;THL 28, 593 (1987);THL 29, 5463 (1988))。
【0045】
(II)と(III)を反応させて個々の化合物(I)を得ることができない場合、それらは、別の化合物(I)から誘導体化によって調製することができる。
【0046】
化合物(I)は、殺菌剤として使用するのに適している。それらは、広範囲の植物病原性菌類に対して優れた活性を示すこと、特に、子嚢菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)、不完全菌類(Deuteromycetes)及び卵菌類(Peronosporomycetes (異名 Oomycetes))の類に属する植物病原性菌類に対して優れた活性を示すことを特徴とする。それらの中には浸透移行的な活性を示すものもある。また、それらの中には、茎葉殺菌剤として、種子粉衣用の殺菌剤として及び土壌殺菌剤として作物保護において使用可能なものもある。
【0047】
それらは、コムギ、ライムギ、オオムギ、エンバク、イネ、トウモロコシ、芝生、バナナ、ワタ、ダイズ、コーヒー、サトウキビ、ブドウの木、各種果樹植物、各種観賞用植物及び各種野菜(例えば、キュウリ、インゲンマメ、トマト、ジャガイモ及びウリ科植物など)などの種々の作物植物並びにそれら植物の種子における多くの種類の菌類を防除する上で特に重要である。
【0048】
それらは、以下の植物病害を防除するのに特に適している:
・ 野菜、ナタネ、テンサイ及び果実及びイネにおけるアルテルナリア属各種(Alternaria species)、例えば、ジャガイモ及びトマトにおけるアルテルナリア・ソラニ(A.solani)又はアルテルナリア・アルテルナタ(A.alternata);
・ テンサイ及び野菜におけるアファノミセス属各種(Aphanomyces species);
・ 穀類及び野菜におけるアスコキタ属各種(Ascochyta species);
・ トウモロコシ、穀類、イネ及び芝生におけるビポラリス属各種(Bipolaris species)及びドレクスレラ属各種(Drechslera species)、例えば、トウモロコシにおけるドレクスレラ・マイジス(D.maydis);
・ 穀類におけるブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)(うどんこ病);
・ イチゴ、野菜、花及びブドウの木におけるボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色かび病);
・ レタスにおけるブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae);
・ トウモロコシ、ダイズ、イネ及びテンサイにおけるセルコスポラ属各種(Cercospora species);
・ トウモロコシ、穀類及びイネにおけるコクリオボルス属各種(Cochliobolus species)、例えば、穀類におけるコクリオボルス・サチブス(Cochliobolus sativus)、イネにおけるコクリオボルス・ミヤベアヌス(Cochliobolus miyabeanus);
・ ダイズ及びワタにおけるコレトトリクム属各種(Colletotrichum species);
・ トウモロコシ、穀類、イネ及び芝生におけるドレクスレラ属各種(Drechslera species)、ピレノホラ属各種(Pyrenophora species)、例えば、オオムギにおけるドレクスレラ・テレス(D.teres)、又は、コムギにおけるドレクスレラ・トリチシ-レペンチス(D.tritici-repentis);
・ ブドウの木におけるエスカ(Esca)、これは、ファエオアクレモニウム・クラミドスポリウム(Phaeoacremonium chlamydosporium)、ファエオアクレモニウム・アレオフィルム(Ph.Aleophilum)及びフォルミチポラ・プンクタタ(Formitipora punctata)(異名 フェリヌス・プンクタツス(Phellinus punctatus))に起因する;
・ ブドウの木におけるエルシノエ・アムペリナ(Elsinoe ampelina);
・ トウモロコシにおけるエクセロヒルム属各種(Exserohilum species);
・ キュウリにおけるエリシフェ・シコラセアルム(Erysiphe cichoracearum)及びスファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea);
・ 種々植物におけるフザリウム属各種(Fusarium species)及びベルチシリウム属各種(Verticillium species)、例えば、穀類におけるフザリウム・グラミネアルム(F.graminearum)又はフザリウム・クルモルム(F.culmorum)、又は、多くの植物(例えば、トマト)におけるフザリウム・オキシスポルム(F.oxysporum);
・ 穀類におけるガエウマノミセス・グラミニス(Gaeumannomyces graminis);
・ 穀類及びイネにおけるジベレラ属各種(Gibberella species)(例えば、イネにおけるジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi));
・ ブドウの木及び他の植物におけるグロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata);
・ イネにおけるグラインスタイニング複合菌(Grainstaining complex);
・ ブドウの木におけるグイグナルジア・ブドウェリ(Guignardia budwelli);
・ トウモロコシ及びイネにおけるヘルミントスポリウム属各種(Helminthosporium species);
・ ブドウの木におけるイサリオプシス・クラビスポラ(Isariopsis clavispora);
・ 穀類におけるミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale);
・ 穀類、バナナ及びラッカセイにおけるミコスファエレラ属各種(Mycosphaerella species)、例えば、コムギにおけるミコスファエレラ・グラミニコラ(M.graminicola)、又は、バナナにおけるミコスファエレラ・フィジエンシス(M.fijiensis);
・ キャベツ及び球根植物におけるペロノスポラ属各種(Peronospora species)、例えば、キャベツにおけるペロノスポラ・ブラシカエ(P.brassicae)、又は、タマネギにおけるペロノスポラ・デストルクトル(P.destructor);
・ ダイズにおけるファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)及びファコプソラ・メイボミアエ(Phakopsora meibomiae);
・ ダイズ及びヒマワリにおけるホモプシス属各種(Phomopsis species)、ブドウの木におけるホモプシス・ビチコラ(P.viticola);
・ ジャガイモ及びトマトにおけるフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans);
・ 種々植物におけるフィトフトラ属各種(Phytophthora species)、例えば、ピーマンにおけるフィトフトラ・カプシシ(P.capsici);
・ ブドウの木におけるプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola);
・ リンゴにおけるポドスファエラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha);
・ 穀類におけるシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides);
・ 種々植物におけるシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)、例えば、キュウリにおけるシュードペロノスポラ・クベンシス(P.cubensis)、又は、ホップにおけるシュードペロノスポラ・フミリ(P.humili);
・ ブドウの木におけるシュードペジクラ・トラケイフィライ(Pseudopezicula tracheiphilai);
・ 種々植物におけるプクキニア属各種(Puccinia species)、例えば、穀類におけるプクキニア・トリチシナ(P.triticina)、プクキニア・ストリホルミンス(P.striformins)、プクキニア・ホルデイ(P.hordei)若しくはプクキニア・グラミニス(P.graminis)、又は、アスパラガスにおけるプクキニア・アスパラギ(P.asparagi);
・ イネにおけるピリクラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、コルチシウム・ササキイ(Corticium sasakii)、サロクラジウム・オリザエ(Sarocladium oryzae)、サロクラジウム・アテヌアツム(S.attenuatum)、エンチロマ・オリザエ(Entyloma oryzae);
・ 芝生及び穀類におけるピリクラリア・グリセア(Pyricularia grisea);
・ 芝生、イネ、トウモロコシ、ワタ、ナタネ、ヒマワリ、テンサイ、野菜及び他の植物におけるピシウム属種(Pythium spp.)、例えば、種々植物におけるピシウム・ウルチウムム(P.ultiumum)、芝生におけるピシウム・アファニデルマツム(P.aphanidermatum);
・ ワタ、イネ、ジャガイモ、芝生、トウモロコシ、ナタネ、テンサイ、野菜及び種々植物におけるリゾクトニア属各種(Rhizoctonia species)、例えば、ビート及び種々植物におけるリゾクトニア・ソラニ(R.solani);
・ オオムギ、ライムギ及びライコムギにおけるリンコスポリウム・セカリス(Rhynchosporium secalis);
・ ナタネ及びヒマワリにおけるスクレロチニア属各種(Sclerotinia species);
・ コムギにおけるセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)及びスタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum);
・ ブドウの木におけるエリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator)(異名 ウンシヌラ・ネカトル(Uncinula necator));
・ トウモロコシ及び芝生におけるセトスファエリア属各種(Setospaeria species);
・ トウモロコシにおけるスファセロテカ・レイリニア(Sphacelotheca reilinia);
・ ダイズ及びワタにおける、チエバリオプシス属各種(Thievaliopsis species);
・ 穀類におけるチレチア属各種(Tilletia species);
・ 穀類、トウモロコシ及びサトウキビにおけるウスチラゴ属各種(Ustilago species)、例えば、トウモロコシにおけるウスチラゴ・マイジス(U.maydis);
・ リンゴ及び西洋ナシにおけるベンツリア属各種(Venturia species)(そうか病)、例えば、リンゴにおけるベンツリア・イナエクアリス(V.inaequalis)。
【0049】
化合物(I)は、さらに、材料(例えば、木材、紙、塗料分散液、繊維又は織物など)の保護及び貯蔵生産物の保護における有害な菌類を防除するのにも適している。木材の保護においては、以下の有害な菌類が特に留意される:子嚢菌類(Ascomycetes)、例えば、オフィオストマ属種(Ophiostoma spp.)、セラトシスチス属種(Ceratocystis spp.)、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、スクレロフォマ属種(Sclerophoma spp.)、カエトミウム属種(Chaetomium spp.)、フミコラ属種(Humicola spp.)、ペトリエラ属種(Petriella spp.)及びトリクルス属種(Trichurus spp.);担子菌類(Basidiomycetes)、例えば、コニオフォラ属種(Coniophora spp.)、コリオルス属種(Coriolus spp.)、グロエオフィルム属種(Gloeophyllum spp.)、レンチヌス属種(Lentinus spp.)、プレウロツス属種(Pleurotus spp.)、ポリア属種(Poria spp.)、セルプラ属種(Serpula spp.)及びチロミセス属種(Tyromyces spp.);不完全菌類(Deuteromycetes)、例えば、アスペルギルス属種(Aspergillus spp.)、クラドスポリウム属種(Cladosporium spp.)、ペニシリウム属種(Penicillium spp.)、トリコデルマ属種(Trichoderma spp.)、アルテルナリア属種(Alternaria spp.)及びパエシロミセス属種(Paecilomyces spp.);並びに、接合菌類(Zygomycetes)、例えば、ムコル属種(Mucor spp.)。さらに、材料の保護においては、以下の酵母類が特に留意される:カンジダ属種(Candida spp.)及びサッカロミセス・セレビサエ(Saccharomyces cerevisae)。
【0050】
化合物(I)は、殺菌剤として有効な量の該活性化合物(I)で上記菌類を処理するか又は菌類の攻撃から保護すべき植物、種子、材料若しくは土壌を処理することにより、使用する。材料、植物又は種子に菌類が感染する前及び感染した後のいずれにおいて施用してもよい。
【0051】
該殺菌剤組成物は、一般に、0.1〜95重量%、好ましくは、0.5〜90重量%の活性化合物(I)を含有する。
【0052】
植物の保護において使用する場合、その施用量は、所望する効果の質に応じて、1ヘクタール当たり0.01〜2.0kgの活性化合物である。
【0053】
種子の処理(例えば、種子に散粉することによる種子の処理、種子にコーティングすることによる種子の処理、又は、種子を浸漬することによる種子の処理)においては、一般に、種子100kg当たり1〜1000gの量の活性化合物、好ましくは、種子100kg当たり5〜100gの量の活性化合物が必要である。
【0054】
材料又は貯蔵生産物の保護において使用する場合、活性化合物の施用量は、施用領域の種類と所望する効果に依存する。材料の保護における通常の施用量は、例えば、処理する材料1立方メートル当たり、0.001g〜2kgの活性化合物、好ましくは、0.005g〜1kgの活性化合物である。
【0055】
化合物(I)は、慣習的な製剤、例えば、溶液剤、エマルション剤、懸濁製剤、粉剤(dusts)、粉状剤(powders)、ペースト剤及び粒剤などに変換することができる。その使用形態は、特定の使用目的に依存するが、いずれの場合も、本発明の化合物(I)が微細に且つ均一に分配されることが保証されるべきである。
【0056】
該製剤は、既知方法で、例えば、必用に応じて乳化剤及び分散剤を用いて、該活性化合物(I)を溶媒及び/又は担体で増量することにより調製する。この目的に適する溶媒/補助剤は、本質的に以下のものである:
・ 水、芳香族溶媒(例えば、Solvesso製品、キシレン)、パラフィン類(例えば、鉱油留分)、アルコール類(例えば、メタノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール)、ケトン類(例えば、シクロヘキサノン、ガンマ-ブチロラクトン)、ピロリドン類(N-メチルピロリドン、N-オクチルピロリドン)、酢酸エステル類(グリコールジアセテート)、グリコール類、脂肪酸ジメチルアミド類、脂肪酸類及び脂肪酸エステル類。概ね、溶媒混合物も使用することができる。
【0057】
・ 担体、例えば、粉砕された天然鉱物(例えば、カオリン、粘土、タルク、チョーク)、及び、粉砕された合成鉱物(例えば、高分散シリカ、シリケート); 乳化剤、例えば、非イオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル類、アルキルスルホネート類及びアリールスルホネート類)、並びに、分散剤、例えば、リグノスルファイト廃液及びメチルセルロース。
【0058】
使用する適切な界面活性剤は、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、脂肪アルコールスルフェート、脂肪酸及び硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテル類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、さらに、スルホン化ナフタレン及びナフタレン誘導体とホルムアルデヒドとの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル類、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール類、アルコール及び脂肪アルコールエチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル類、リグノスルファイト廃液、並びに、メチルセルロースである。
【0059】
直接散布可能な溶液、エマルション、ペースト又は油性分散液を調製するのに適している物質は、中〜高沸点の鉱油留分、例えば、灯油若しくはジーゼル油、さらに、コールタール油、及び、植物若しくは動物起源の油、脂肪族炭化水素類、環状炭化水素類及び芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン若しくはそれらの誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロン、強極性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン及び水などである。
【0060】
粉状剤、散布用物質及び散粉可能製剤は、該活性物質を固体担体と混合させるか又は同時に粉砕することにより調製することができる。
【0061】
粒剤、例えば、被覆粒剤、含浸粒剤及び均質粒剤などは、該活性化合物を固体担体に結合させることにより調製することができる。固体担体の例は、例えば、鉱物質土壌(mineral earth)、例えば、シリカゲル、シリケート、タルク、カオリン、アタクレー(attaclay)、石灰石、石灰、チョーク、膠灰粘土、黄土、粘土、ドロマイト、ケイ藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、粉砕された合成材料、肥料、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、及び、植物に由来する生成物、例えば、穀類粉、樹皮粉、木粉及び堅果殻粉、セルロース粉末、並びに、別の固体担体などである。
【0062】
種子処理用の製剤には、さらに、結合剤及び/又はゲル化剤も含ませることができ、また、適切な場合には、着色剤を含ませることができる。
【0063】
結合剤を添加して、処理後における当該活性化合物の種子への付着を増強することができる。適切な結合剤は、例えば、EO/POブロックコポリマー界面活性剤であり、さらに、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリブテン類、ポリイソブチレン類、ポリスチレン類、ポリエチレンアミン類、ポリエチレンアミド類、ポリエチレンイミン類(Lupasol(登録商標)、Polymin(登録商標))、ポリエーテル類、ポリウレタン類、ポリ酢酸ビニル類、チロース、及び、これらポリマーのコポリマーなども適している。適切なゲル化剤は、例えば、カラギーン(Satiagel(登録商標))などである。
【0064】
一般に、上記製剤は、0.01〜95重量%、好ましくは、0.1〜90重量%の、活性化合物(I)を含んでいる。該活性化合物(I)は、90%〜100%の純度、好ましくは、95%〜100%の純度のものを使用する(NMR又はHPLCスペクトルによる)。
【0065】
そのまま使用可能な(ready-for-use)調製物における活性化合物(I)の濃度は、比較的広い範囲で変えることができる。一般に、それらは、0.0001〜10%、好ましくは、0.01〜1%である。
【0066】
該活性化合物(I)は、微量散布法(ULV)に用いて極めて良好な結果を得ることも可能である。微量散布法では、95重量%を超える活性化合物を含有する製剤を施用することが可能であり、又は、該活性化合物を添加剤無しで施用することも可能である。
【0067】
種子の処理に関しては、当該製剤を2〜10倍希釈した後、そのまま使用可能な調製物中の活性化合物の濃度0.01〜60重量%、好ましくは、0.1〜40重量%が得られる。
【0068】
以下は、製剤の例である。
【0069】
1.水で希釈するための製品
(A) 水溶剤(water-soluble concentrate)(SL)
10重量部の本発明化合物(I)を、90重量部の水又は水溶性溶媒に溶解させる。別法として、湿潤剤又は別の補助剤を添加する。水で希釈すると、当該活性化合物は溶解する。このようにして、活性化合物の含有量が10重量%の製剤が得られる。
【0070】
(B) 分散性濃厚物(dispersible concentrate)(DC)
20重量部の本発明化合物(I)を、10重量部の分散剤(例えば、ポリビニルピロリドン)を加えてある70重量部のシクロヘキサノンに溶解させる。水で希釈することにより、分散液が得られる。活性化合物の含有量は、20重量%である。
【0071】
(C) 乳剤(emulsifiable concentrate)(EC)
15重量部の本発明化合物(I)を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムとエトキシル化ヒマシ油(いずれも、5重量部)を加えてある75重量部のキシレンに溶解させる。水で希釈することにより、エマルションが得られる。この製剤の活性化合物の含有量は15重量%である。
【0072】
(D) エマルション剤(emulsion)(EW, EO)
25重量部の本発明化合物(I)を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムとエトキシル化ヒマシ油(いずれも、5重量部)を加えてある35重量部のキシレンに溶解させる。この混合物を、乳化機(例えば、Ultraturrax)を用いて30重量部の水に導入し、均質なエマルションとする。水で希釈することにより、エマルションが得られる。この製剤の活性化合物の含有量は25重量%である。
【0073】
(E) 懸濁製剤(suspension)(SC, OD)
撹拌下にあるボールミル内で、20重量部の本発明化合物(I)に10重量部の分散剤と湿潤剤及び70重量部の水又は有機溶媒を添加して微粉砕することにより、活性化合物の微細懸濁液が得られる。水で希釈することにより、活性化合物の安定した懸濁液が得られる。この製剤中の活性化合物の含有量は20重量%である。
【0074】
(F) 顆粒水和剤(water-dispersible granule)及び水溶性粒剤(water-soluble granule)(WG, SG)
50重量部の本発明化合物(I)に50重量部の分散剤及び湿潤剤を添加して微粉砕し、専門的な装置(例えば、押出機、噴霧塔、流動床など)を用いて顆粒水和剤又は水溶性粒剤として調製する。水で希釈することにより、活性化合物の安定な分散液又は溶液が得られる。この製剤の活性化合物の含有量は50重量%である。
【0075】
(G) 水和剤(water-dispersible powder)及び水溶剤(water-soluble powder)(WP, SP)
ローターステータミル内で、75重量部の本発明化合物(I)に25重量部の分散剤、湿潤剤及びシリカゲルを添加して粉砕する。水で希釈することにより、活性化合物の安定な分散液又は溶液が得られる。この製剤の活性化合物の含有量は75重量%である。
【0076】
2.希釈せずに施用する製品
(H) 散粉性粉状剤(dustable powder)(DP)
5重量部の本発明化合物(I)を微粉砕し、95重量部の微粉砕カオリンと充分に混合させる。これにより、活性化合物の含有量が5重量%である粉剤(dustable product)が得られる。
【0077】
(J) 粒剤(granule)(GR, FG, GG, MG)
0.5重量部の本発明化合物(I)を微粉砕し、99.5重量部の担体と合する。現行方法は、押出、噴霧乾燥又は流動床である。これにより、活性化合物の含有量が0.5重量%である希釈せずに施用する粒剤が得られる。
【0078】
(K) ULV溶液剤(ULV solution)(UL)
10重量部の本発明化合物(I)を90重量部の有機溶媒(例えば、キシレン)に溶解させる。これにより、活性化合物の含有量が10重量%である希釈せずに施用する製品が得られる。
【0079】
該活性化合物は、散布、噴霧、散粉、ばらまき又は流し込みにより、それ自体で、それらの製剤形態で、又は、該製剤形態から調製した使用形態で、例えば、直接散布可能な溶液、粉末、懸濁液若しくは分散液、エマルション、油性分散液、ペースト、粉剤、散布用物質又は粒剤の形態で使用することができる。該使用形態は、もっぱらその使用目的に依存する。それらは、いずれの場合も、本発明の活性化合物(I)を確実に最も微細に分配し得ること目的としている。
【0080】
水性の使用形態は、エマルション濃厚剤(emulsion concentrate)、ペースト剤又は水和剤(散布可能粉末、油性分散液)から、水を加えることにより調製することができる。エマルション、ペースト又は油性分散液を調製するために、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤又は乳化剤を用いて、該物質をそのまま水中で均質化することができる、又は、該物質を油若しくは溶媒に溶解させた状態で、水中で均質化することができる。しかしながら、活性物質と湿潤剤と粘着付与剤と分散剤又は乳化剤と、適切な場合には、さらに、溶媒又は油とから構成される濃厚物を調製することも可能であり、そのような濃厚物は、水で希釈するのに適している。
【0081】
該活性化合物には、様々なタイプの油、湿潤剤、アジュバント、除草剤、殺菌剤、別の農薬又は殺細菌剤を添加することが可能であり、適切な場合には、使用直前に添加することもできる(タンクミックス)。これらの作用物質は、本発明の組成物と、1:100〜100:1、好ましくは、1:10〜10:1の重量比で混合させることができる。
【0082】
この意味における適切なアジュバントは、特に、以下のものである:有機的に修飾されたポリシロキサン、例えば、Break Thru S 240(登録商標);アルコールアルコキシレート、例えば、Atplus 245(登録商標)、Atplus MBA 1303(登録商標)、Plurafac LF 300(登録商標)、及び、Lutensol ON 30(登録商標);EO/POブロックコポリマー、例えば、Pluronic RPE 2035(登録商標)、及び、Genapol B(登録商標);アルコールエトキシレート、例えば、Lutensol XP 80(登録商標);並びに、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、例えば、Leophen RA(登録商標)。
【0083】
本発明のN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド(I)は、別の活性化合物(例えば、除草剤、殺虫剤、生長調節剤)と一緒に使用することも可能であり、は、肥料と一緒に使用することも可能である。
【実施例】
【0084】
調製実施例
下記合成実施例において記載されている手順を使用し、出発物質を適切に変えることにより、さらなる化合物(I)を調製した。そのようにして得られた化合物(I)を、物理データと一緒に、下記表4に記載する。
【0085】
実施例1
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの合成
0.25gの2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニルアミン及び0.14gのピリジンを8.5mLのテトラヒドロフランに溶解させた溶液に、約20℃で、0.23gの3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルクロリドを滴下して加えた。次いで、その混合物を約20℃で16時間撹拌した。次いで、40mLのメチルt-ブチルエーテルを添加し、その有機相を、順次、2%濃度の塩酸で洗浄し、2%濃度の水酸化ナトリウム水溶液で2回洗浄し、希薄塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を脱水し、減圧下に濃縮した。得られた粗製生成物にジイソプロピルエーテルを添加した。次いで、未溶解固体を分離し、ペンタンで洗浄し、乾燥させた。収量:0.43gの価値ある生成物(白色の粉末);m.p. 117-119℃。
【0086】
実施例2
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド
0.29gの2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)-フェニルアミン及び0.15gのピリジンを10mLのトルエンに溶解させた溶液に、室温で、0.28gの3-トリフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルクロリドを滴下して加えた。次いで、その混合物を約20℃で16時間撹拌した。次いで、30mLのメチルt-ブチルエーテルを添加し、その有機相を、順次、2%濃度の塩酸で洗浄し、2%濃度の水酸化ナトリウム水溶液で2回洗浄し、希薄塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を脱水し、減圧下に濃縮した。得られた粗製生成物を、トルエン/メチルt-ブチルエーテル/シクロヘキサン(1:1:1)の混合物を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。収量:0.37gの価値ある生成物(白色の粉末);m.p. 94-95℃。
【0087】
実施例3
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド
0.43gの1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸及び0.45gのトリエチルアミンを30mLのジクロロメタンに溶解させた溶液に、室温で、0.50gの2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニルアミン及び0.86gのビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスホリルクロリドを添加した。その混合物を約20℃で60時間撹拌し、次いで、順次、希塩酸で2回洗浄し、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄し、水で1回洗浄した。有機相を脱水し、濃縮した。得られた粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン/メチルt-ブチルエーテル=1:2)で精製した。収量:0.35gの価値ある生成物(透明な油状物)。
【表4】

【0088】
使用実施例
本発明の化合物(I)の殺菌効果について、以下の試験により実証した。
【0089】
活性化合物を、別々に又は一緒に、25mgの活性化合物を含んでいる原液として調製した。25mgの活性化合物を、アセトン及び/又はジメチルスルホキシドと乳化剤 Uniperol(登録商標) EL(エトキシル化アルキルフェノールを主成分とし、乳化作用と分散作用を有する湿潤剤)の溶媒/乳化剤の容積比が99:1である混合物を用いて10mLとした。次いで、その混合物を、水を用いて100mLとした。この原液を、溶媒/乳化剤/水の上記混合物で希釈して、活性化合物の所望の濃度とした。
【0090】
使用実施例1: フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)に起因するトマトの疫病に対する活性(1日保護的処理)
鉢植のトマト植物の葉に、63ppm又は250ppmの活性化合物を含んでいる水性懸濁液を、液が流れ落ちるようになるまで噴霧した。その施用の1日後、3日後又は5日後、当該葉に、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)の胞子嚢の水性懸濁液を用いて感染させた。次いで、その植物を、水蒸気で飽和した18〜20℃の温度のチャンバー内に置いた。6日後、処理はしていないが感染はさせた対照植物において、感染を割合(%)により視覚的に測定できるほどに疫病が発生した。
【0091】
使用実施例2:アルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)に起因するトマトの夏疫病に対する活性
鉢植の品種「Goldene Konigin」のトマト植物の葉に、以下に記載されている活性化合物濃度を有する水性懸濁液を、液が流れ落ちるようになるまで噴霧した。その翌日、当該葉に、2%Biomalt溶液中のアルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)の0.17×106胞子/mLの密度を有する水性胞子懸濁液を用いて感染させた。次いで、その植物を、水蒸気で飽和した20〜22℃の温度のチャンバー内に置いた。5日後、処理はしていないが感染はさせた対照植物において、感染を割合(%)により視覚的に測定できるほどに夏疫病が発生した。
【0092】
この試験において、250ppmの化合物(No.I-1)、化合物(No.I-2)、化合物(No.I-3)、化合物(No.I-4)及び化合物(No.I-5)で処理された植物は、30%未満の感染しか示さなかった。
【0093】
それに対して、250ppmの比較化合物(N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-1,3-ジメチルピラゾール-4-イル-カルボキサミド)で処理された植物は、60%の感染を示した。未処理植物の感染は、90%であった。
【0094】
使用実施例3: エリシフェ[異名 ブルメリア]・グラミニス 分化型 トリチシ(Erysiphe [syn Blumeria] graminis forma specialis. tritici)に起因するコムギのうどんこ病に対する活性
鉢植のコムギ実生の葉に、以下に記載されている活性化合物濃度を有する水性懸濁液を、液が流れ落ちるようになるまで噴霧した。その懸濁液は、上記で記載したように調製した。噴霧による被膜が乾燥してから24時間後、該植物に、コムギのうどんこ病(エリシフェ[異名 ブルメリア]・グラミニス 分化型 トリチシ(Erysiphe [syn Blumeria] graminis forma specialis. tritici))の胞子を振りかけた。次いで、その被験植物を、温度20〜24℃で相対大気湿度60〜90%の温室内に置いた。7日後、うどんこ病の発生の程度を、葉全体の面積に対する感染(%)として視覚的に測定した。
【0095】
この試験において、63ppmの化合物(No.I-1)、化合物(No.I-2)、化合物(No.I-3)、化合物(No.I-4)及び化合物(No.I-5)で処理された植物は、40%未満の感染しか示さなかった。
【0096】
それに対して、63ppmの比較化合物(N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イル-カルボキサミド)で処理された植物は、70%の感染を示した。未処理植物の感染は、90%であった。
【0097】
250ppmの化合物(No.I-1)、化合物(No.I-2)、化合物(No.I-3)、化合物(No.I-4)及び化合物(No.I-5)で処理された該植物は、20%未満の感染しか示さなかった。
【0098】
それに対して、250ppmの比較化合物(N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イル-カルボキサミド)で処理された植物は、40%の感染を示した。未処理植物の感染は、80%であった。
【0099】
使用実施例4: ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)に起因するピーマンの葉の灰色かび病に対する活性(保護的施用)
品種「Neusiedler Ideal Elite」のピーマンの実生の2〜3枚の葉が充分に展開した後、その実生に、以下に記載されている活性化合物濃度を有する水性懸濁液を液が流れ落ちるようになるまで噴霧した。その翌日、その処理された植物に、2%濃度水性Biomalt溶液中に1.7×106胞子/mLを含んでいるボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)の胞子懸濁液を用いて接種した。次いで、その被験植物を、22〜24℃で高大気湿度の暗い人工気象室(climatized chamber)内に置いた。5日後、葉面上の当該菌による感染の程度(%)を視覚的に測定することができた。
【0100】
この試験において、250ppmの化合物(No.I-1)、化合物(No.I-2)、化合物(No.I-3)、化合物(No.I-4)、化合物(No.I-5)、化合物(No.I-6)、化合物(No.I-8)、化合物(No.I-9)、化合物(No.I-11)、化合物(No.I-12)、化合物(No.I-13)及び化合物(No.I-14)で処理された植物は、20%未満の感染しか示さなかったが、それに対して、未処理植物の感染は、75%であった。
【0101】
使用実施例5: プクキニア・レコンジタ(Puccinia recondita)に起因するコムギの赤さび病に対する治療活性
鉢植の品種「Kanzler」のコムギの実生の葉に、赤さび病(プクキニア・レコンジタ(Puccinia recondita))の胞子懸濁液を用いて接種した。次いで、そのポットを、20〜22℃で高大気湿度(90〜95%)のチャンバー内に24時間置いた。その24時間の間に、胞子が発芽し、発芽管が葉の組織内に侵入した。翌日、その感染植物に、以下に記載されている活性化合物濃度を有する上記活性化合物の溶液を、液が流れ落ちるようになるまで噴霧した。その噴霧による被膜が乾燥した後、その被験植物を、温度20〜22℃で相対大気湿度65〜70%の温室内で7日間成育させた。次いで、葉面上におけるさび病菌の発生の程度を測定した。
【0102】
この試験において、250ppmの化合物(No.I-1)、化合物(No.I-2)、化合物(No.I-3)、化合物(No.I-4)、化合物(No.I-5)、化合物(No.I-6)、化合物(No.I-7)、化合物(No.I-8)、化合物(No.I-9)、化合物(No.I-11)、化合物(No.I-12)、化合物(No.I-13)及び化合物(No.I-14)で処理された植物は、15%未満の感染しか示さなかったが、それに対して、未処理植物の感染は、90%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、可変部分は以下で定義されているとおりである:
nは、0又は1であり;
Halは、ハロゲンであり;
Xは、C2-C4-ハロアルキルであり;
Hetは、式(a)、式(b)又は式(c):
【化2】

で表されるピラゾール基、チアゾール基又はピリジン基であり、
ここで、
R1は、C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキルであり;
R2は、水素又はハロゲンであり;
R3は、C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキルであり;
R4は、ハロゲン、C1-C4-アルキル又はC1-C4-ハロアルキルである]
で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド:
(但し、
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-1,3-ジメチルピラゾール-4-イル-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド;及び
N-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-3-トリフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イル-カルボキサミド;
を除く)。
【請求項2】
nが0である、請求項1に記載の式(I)で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド。
【請求項3】
Xが、n-プロピル又はイソプロピル(ここで、これらは、いずれの場合も、7個のフッ素原子と1個の塩素原子から選択される1〜7個のハロゲン原子を有している)である、請求項1に記載の式(I)で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド。
【請求項4】
Xが、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルである、請求項1に記載の式(I)で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド。
【請求項5】
Xが、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルである、請求項1に記載の式(I)で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド。
【請求項6】
R1が、ジフルオロメチルであり、Xが、1,1,2,2-テトラフルオロエチルである、請求項1に記載の式(I)で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド。
【請求項7】
以下の群から選択される、請求項1に記載の式(I)で表されるN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミド:
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-1,3-ジメチル-5-フルオロピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-5-フルオロ-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-5-フルオロ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-5-クロロ-1,3-ジメチルピラゾール-5-クロロ-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-5-クロロ-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-5-クロロ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2,4-ジメチルチアゾール-5-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-メチル-4-トリフルオロメチルチアゾール-5-イルカルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-メチルニコチンアミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-トリフルオロメチルニコチンアミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-フルオロニコチンアミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-2-クロロニコチンアミド;
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-2-クロロニコチンアミド;
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-2-メチル-4-トリフルオロメチルチアゾール-5-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-(クロロフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-フルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]-3-(ジクロロフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-2-クロロニコチンアミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-2-メチル-4-トリフルオロメチルチアゾール-5-カルボキサミド;
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-カルボキサミド;
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド;及び、
N-[2-(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド。
【請求項8】
液体又は固体の少なくとも1種類の担体及び請求項1に記載の式(I)で表される少なくとも1種類の化合物を含む殺菌剤組成物。
【請求項9】
別の活性化合物をさらに含む、請求項8に記載の殺菌剤組成物。
【請求項10】
有害な菌類を防除するのに適した組成物を調製するための、請求項1に記載の化合物(I)の使用。
【請求項11】
有害な植物病原性菌類を防除する方法であって、有効量の請求項1に記載の少なくとも1種類の化合物(I)で、当該菌類、それらの生息環境、又は、菌類の攻撃から保護すべき植物、土壌、種子、領域、材料若しくは空間を処理することを含む、前記方法。
【請求項12】
100kg当たり1〜1000gの量の請求項1に記載の式(I)で表される少なくとも1種類のN-[2-(ハロアルコキシ)フェニル]ヘテロアリールカルボキサミドを含む種子。

【公表番号】特表2009−503033(P2009−503033A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524525(P2008−524525)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064991
【国際公開番号】WO2007/017450
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】