説明

殺菌洗浄装置

【課題】定流量弁を有すると共に、給水に銀イオンを電解溶出する電解槽を有する殺菌洗浄装置において、銀イオンの過度の電解溶出を抑え、かつ消費電力を抑制する殺菌洗浄装置を提供すること。
【解決手段】給水路の中途に設けられ、下流への給水流量を略一定に調整する定流量弁と、給水流量を検出する流量センサと、少なくとも一方が銀電極を有する一対の電極を有し、この電極への通電により銀イオンを給水中に電解溶出する電解槽と、電解槽の電極に通電する電流を制御する制御部とを設けた殺菌洗浄装置において、制御部は、流量センサにより検出した流量が、定流量弁により調整できない流量のとき、予め設定した流量に対応する電流制御から低減した流量に対応する制御に変更するように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌洗浄装置に関し、特に銀イオンなどの殺菌性金属イオンを給水中に溶出する殺菌洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器などの洗浄は、例えば、人体センサにより使用者の存在を感知し、自動的に上水又は中水の洗浄水を流すことにより、便器洗浄を行っている。
【0003】
しかし、これらの洗浄は便器使用後に単に上水又は中水を流すだけであるため、徐々に便器表面その他、給水路中に水アカやぬめりが発生し臭気が生起していた。また、小便器においては尿石が配管内に付着して、汚水の通過路を狭くする。そして、これらの付着により便器全体の外観を損ね、細菌繁殖の温床となり、臭気も放つようになる。しかも一旦付着してしまった尿石は通常の清掃では除去する事は難しく、ブラシで強くこすらないと取れない。このため、尿石除去は専門の業者に依頼する必要があり、大きな負担となっていた。
【0004】
これらの欠点を解消するため、水に銀イオンを電界溶出することで、菌の繁殖を抑制する方法が広く知られている。具体的には便器洗浄給水路内に銀極板を有するイオン発生器を設け、給水動作に連動して銀極板に給電し銀イオンを電解溶出する殺菌洗浄装置が知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、このような殺菌洗浄装置として、給水の電気伝導度を検出し、検出値に基づいて銀イオンの電解溶出を制御し、給水路内の給水に効果的な銀イオンを含有させる装置も知られている。これは、殺菌用として混入しようとする銀イオンの溶出が、水の電気伝導度に依存することを考慮して、所定濃度の銀イオンを給水の水質に応じて制御するものである。
【0006】
【特許文献1】実開平7−17391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の殺菌洗浄装置においては、上水や中水等からの給水を、定流量弁を介して、便器への洗浄用給水として使用している。この定流量弁は、上水や中水等からの給水の水圧を減圧する機能を有しており、この機能により便器に給水する給水の流量を略一定にするものである。このように定流量弁が設けられていることから、従来の殺菌洗浄装置においては、給水の水量は考慮されていなかった。
【0008】
ところが、殺菌洗浄装置の設置場所によっては、定流量弁が減圧できる水圧より極端に低い水圧の上水等しか給水できない環境においてこの殺菌洗浄装置を使用しなければならないことがある。
【0009】
このような環境で使用すると、給水を略一定の流量にすることができず、給水の流量は少なくなるため、銀イオン濃度が適正な値以上となる。その結果、余分な銀イオンを供給してしまうのみならず、その銀イオンを電解溶出するための余分な電力を消費してしまうことになる。
【0010】
特に、給水の水力を用いて発電し、この発電した電力により動作するタイプの殺菌洗浄装置においては、供給する給水の水量が小さくなっているにもかかわらず、銀イオンの電解溶出のために余分な電力を消費してしまうことから、発電量よりも電力消費量の方が多くなってしまう。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、定流量弁を有すると共に、給水に銀イオンなどの殺菌性金属イオンを電解溶出する電解槽を有する殺菌洗浄装置において、殺菌性金属イオンの過度の電解溶出を抑え、かつ消費電力を抑制する殺菌洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、給水路の中途に設けられ、下流への給水流量を略一定に調整する定流量弁と、前記給水流量を検出する流量センサと、少なくとも一方が殺菌性金属電極を有する一対の電極を有し、この電極への通電により殺菌性金属イオンを給水中に電解溶出する電解槽と、電解槽の電極に通電する電流を制御する制御部と、を設けた殺菌洗浄装置において、前記制御部は、前記流量センサにより検出した流量が、前記定流量弁により調整できない流量のとき、前記定流量弁により調整可能な流量の電流制御から低減した流量に対応する制御に変更するように構成している。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御部には、前記定流量弁により調整可能な第1の制御情報と、前記定流量弁により調整できない流量に応じた第2の制御情報を記憶する記憶手段を設け、前記制御部は、前記流量センサにより検出した流量が、予め設定した流量よりも大きい場合には、前記第1の制御情報に基づいて前記電解槽の電極に通電する電流を制御し、予め設定した流量よりも少ない流量になった場合には、前記第2の制御情報に基づいて前記電解槽の電極に通電する電流を制御するように構成したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、給水の電気伝導度を検出する電気伝導度検出部を設けるとともに、前記制御部は、前記電気伝導度検出部の検出結果に応じて電解槽の電極への通電電流を算出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記給水路を流れる給水より発電する発電機を設け、前記流量センサは、前記発電機の発電量に基づいて給水路内の給水の流量を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流量センサにより検出した流量が、定流量弁により調整できない流量よりも少ない流量になった場合には、予め設定した流量に対応する電流制御から低減した流量に対応する制御に変更するように構成したので、殺菌性金属イオンの過度の電解溶出を抑え、かつ消費電力を抑制することができる。ここで、定流量弁により調整できない流量とは、給水源の水圧が定流量弁によって調整できる所定水圧よりも低いときに給水路に流れる給水の流量であり、定流量弁により調整される略一定の給水流量よりも低い流量である。
【0017】
また、制御部に第1の制御情報と第2の制御情報を設け、給水の流量に応じてこれらの情報のいずれかを選択して電流制御するようにすれば、電流制御の変更を容易に行なうことができる。
【0018】
また、給水の電気伝導度に応じて電流制御を変更するようにすれば、給水の水質に応じて、殺菌性金属イオンの電解溶出のための制御精度を向上させることができる。
【0019】
また、給水路を流れる給水より発電する発電機を設け、この発電機の発電量に基づいて給水路内の給水の流量を検出するようにすれば、流量検出のための特別な構成を別途も受ける必要がなく、構成が簡易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本実施形態における殺菌洗浄装置は、給水路の中途に設けられ、給水源が所定水圧以上のときに下流への給水流量を略一定に調整する定流量弁と、給水流量を検出する流量センサと、少なくとも一方が殺菌性金属電極を有する一対の電極を有し、この電極への通電により殺菌性金属イオンを給水中に電解溶出する電解槽と、電解槽の電極に通電する電流を制御する制御部とを設けている。この殺菌洗浄装置は、小便器などへ殺菌性金属イオンを含む殺菌用の洗浄水を供給するものである。なお、この電解槽の両方の電極共に殺菌性金属電極であってもよい。また、本実施形態においては、殺菌性金属電極として銀電極を用いるものとし、銀イオンを溶出することとするがこれに限られるものではない。
【0021】
しかも、制御部は、流量センサにより検出した流量が、定流量弁により略一定に調整可能な流量以下であって予め設定した流量よりも少ない流量になった場合には、定流量弁により調整可能な流量の電流制御から低減した流量に対応する制御に変更する。
【0022】
したがって、定流量弁が減圧できる水圧より低い水圧の上水等しか給水できない環境において、殺菌性金属イオンの過度の電解溶出を抑え、かつ消費電力を抑制することが可能となる。
【0023】
また、制御部には、定流量弁により調整可能な第1の制御情報と定流量弁により調整できない流量に応じた第2の制御情報を記憶する記憶手段を設けている。この第1及び第2の制御情報として、関数情報を用いることができるほか、電流値テーブルを用いることができる。
【0024】
そして、制御部は、前記流量センサにより検出した流量が、予め設定した流量よりも大きい場合には、第1の制御情報に基づいて電解槽の電極に通電する電流を制御し、予め設定した流量よりも少ない流量になった場合には、第2の制御情報に基づいて電解槽の電極に通電する電流を制御する。
【0025】
このように、給水の流量に応じてこれらの情報のいずれかを選択して電流制御することができるので、電流制御の変更を容易に行なうことができる。
【0026】
また、給水の電気伝導度を検出する電気伝導度検出部を設けるとともに、第1の制御情報及び第2の制御情報に給水の電気伝導度を関連させている。そして、制御部は、給水の流量のみならず、電気伝導度検出部の検出結果に応じて電解槽の電極への通電電流を算出するようにしている。給水の水質に応じて、殺菌性金属イオンの電解溶出のための制御精度を向上させることができる。
【0027】
また、給水路を流れる給水より発電する発電機を設け、この発電機の発電量に基づいて給水路内の給水の流量を検出するようにしているため、流量検出のための特別な構成を別途も受ける必要がなく、構成が簡易となる。
【0028】
(第1実施形態)
以下に、本実施の形態に係る殺菌洗浄装置20について、図面を用いてさらに具体的に説明する。図1、2は、本実施の形態における殺菌洗浄装置20を示すブロック図である。
【0029】
本実施の形態における殺菌洗浄装置20は、上水や中水などの給水源に接続され、この給水源から供給される小便器洗浄用給水の流路である給水路1と、給水源の下手に設けられ、給水路1から小便器6への給水流量を略一定に調整する定流量弁2と、その下流に設けられ、小便器6への給水の断続を行うラッチ式電磁弁3と、さらにその下流に設けられ、小便器6への給水流量を検出するための流量センサ4と、さらに流量センサ4の下流に設けられた電解槽5と、電解槽5への通電を行なうと共に、電解槽5の電圧を検出するための通電回路7と、人体を検出する人体センサ8と、殺菌洗浄装置20全体を制御する制御部9と、ラッチ式電磁弁3を駆動させるための電磁弁駆動回路10と、電源部11とを有している。
【0030】
なお、本実施形態においては、殺菌洗浄する対象として小便器6を例にとり説明するが、これに限られるものではない。
【0031】
ここで、定流量弁2は、所定水圧以上の給水源からの給水に対し、その給水の流量を略一定に調整するものであり、定流量弁2より下流では、略一定の流量となるように制限される。なお、給水源の水圧が定流量弁2によって調整できる所定水圧よりも低い場合は、この定流量弁2にて加圧制御ができないために定流量性が確保できず、給水の流量は調整されない。したがって、給水源の水圧に従った流量の給水が定流量弁2を介して小便器6に流れ込む。
【0032】
図3は、定流量弁2の特性を示したものであり、定流量弁2を使用しなかったときの給水の流量を横軸にし、定流量弁2を使用したときの給水の流量を縦軸として表したものである。ここで、定流量弁2により調整できる最低限の流量をL1(図3参照)とする。
【0033】
本実施の形態における殺菌洗浄装置20においては、定流量弁2により調整できない流量、すなわち流量L1以下の流量Lxを予め後述の演算情報記憶部15に記憶して設定し、このように設定された流量(以下、「設定流量」とする。)よりも給水の流量が小さくなったとき、電解槽5へ通電する電流の制御を、定流量弁2により調整可能な流量(L1以上の流量)に対する電流制御から低減した流量に対応する制御に変更するものである。
【0034】
このように、給水源の水圧が定流量弁2によって調整できる所定水圧よりも低いときに流量電流制御を変更するために、殺菌洗浄装置20は、定流量弁2を介して供給される流量を検出する流量検出機能と、このように検出した給水の流量に応じて電解槽5へ通電する電流の制御を行う通電制御機能を有する。
【0035】
次に、流量センサ4について説明する。流量センサ4は、図1に示すように、給水路1に設けられた発電機41と、この発電機41からの出力に基づいてその流量を検出する流量検出部42とから構成される。
【0036】
発電機41は、水車のような回転軸を持ち、流路1内に給水が流れることで、回転軸に連結されたコイルが回転し、交流電圧を出力する。なお、この発電機41が発電した交流電圧は、流量検出に用いられると共に、殺菌洗浄装置20の電力源としても用いられる。
【0037】
流量検出部42は、図2に示すように、整流平滑回路43及び抵抗R1、R2とから構成されており、発電機41で得られた交流電圧は整流平滑回路43で直流電圧に変換し、このように変換した直流電圧を抵抗R1、R2によって分圧した値を出力する。この分圧した値の高低が水量の大小と対応している。例えば、給水の流量がないときは分圧された電圧が0Vとなり、上述のように給水の流量が略一定となるときには分圧された電圧がV1となる。なお、後述のように制御部9は、この分圧した電圧を、そのA/D変換端子に入力することによって、流量を判定する。
【0038】
このように、本実施形態における流量センサ4は、発電を行なう発電機41を利用していることから、別途の流量センサを設ける必要がなく、回路構成が簡易となり動作させるための電力が不要となる点で有利である。
【0039】
なお、流量センサ4としては、回転体の回転を検出する流量センサを採用しても良い。この流量センサ4は、給水路1内に水車のような回転軸を持つ回転体を設け、その回転体が給水によって回転することで、給水が行われていることを検出する機能を有する。回転体の回転軸の動きを検出するデバイスとして、フォトインタラプタや磁気センサが利用される。フォトインタラプタは回転体の回転軸円周方向に、黒と白のような光の反射率の異なる縞模様を施し、回転軸が給水によって回転することで、光を投光し反射率の違う縞模様を検知し、回転を検出する方式である。
【0040】
次に、電解槽5について、図1及び図4を参照して説明する。図4は電解槽5の構成を示す図である。この電解槽5は、1対の電極51,52を有している。また、この1対の電極51,52のうち少なくとも一方の電極が銀であって、この電極51,52間に通電回路7から供給される電流によって給水に銀イオンが電解溶出される。
【0041】
そして、この電極51,52間に流れる電流が大きければ大きいほど、給水中に溶出する銀イオンの量が増す。すなわち、給水の流量が一定であれば、給水における銀イオンの含有濃度は、この電極51,52に流す電流が大きければ大きいほど高くなる。
【0042】
ここで、給水における銀イオンの含有濃度が所定以上であれば、小便器6の殺菌を行なうことができる一方、小便器6を殺菌するのに給水に対して必要以上に銀イオンを含有させてしまうと、銀電極の寿命を短縮させてしまうのみならず、電解溶出のための電力を余分に消費してしまうことになる。
【0043】
本実施形態における殺菌洗浄装置20においては、給水が定流量弁2を介して、小便器6に供給されており、給水源が所定水圧以上のときは給水の流量は略一定となる。したがって、流量が略一定にある範囲においては、電極51,52に流す電流は一定でよいことになる。
【0044】
ところが、上述のように給水源が所定水圧よりも小さい環境に殺菌洗浄装置20が設置されるときには、給水の流量が少なくなってしまうことから、流量が略一定にある範囲と同様の電流を流すと、余分な銀イオンが電解溶出してしまうと共にこの電解溶出のための電力を余分に消費してしまうことになる。そこで、本実施形態における殺菌洗浄装置20においては、給水源が所定水圧よりも小さいときには、電極51,52への電流制御を変えることとしている。この点追って詳解する。
【0045】
ところで、この電解槽5は、給水の電気伝導度σを検出するためにも用いており、この電気伝導度σを検出することにより、給水の汚れ度合い(水質)を検出することができる。
【0046】
このように、給水の水質を検出するのは、給水の水質によって銀イオンを溶出させるために流す必要がある電流が異なるためである。上述のように給水源が所定水圧以上のときは給水の流量は略一定であるが、給水の水質が異なるような場合には、銀イオンの含有率を所定のものとするために、給水の水質に基づいた電流にする必要がある。図5は、給水に一定割合で銀イオンを含有させるために必要な電流と給水の電気伝導度σとの関係を示すものである。
【0047】
そこで、本実施形態における殺菌洗浄装置20においては、給水の水質を検出するために、給水の電気伝導度σを検出する。そして、電解槽5の電極51,52は、この電気伝導度σを検出するために用いられる。具体的には、通電回路7により電極51,52に所定の電流が流され、この電極51,52間に生じる電圧のレベルに応じて制御部9によって電気伝導度σが検出される。
【0048】
なお、電気伝導度σとは物体がどのくらい電気を通すかを示す一つの指標であり、給水の汚れ度合いと相関する。給水が汚れていると電気伝導度は高く、給水がきれいだと電気伝導度は低くなる。電気伝導度は電気抵抗の逆数(電気伝導度=1/電気抵抗)として表現される。なお、1cmの距離の電極間の電気抵抗値に1000をかけた数字が電気伝導度(ミリジーメンス:mS/cm)である。
【0049】
次に、通電回路7について説明する。この通電回路7は、制御部9からの制御内容に応じた電流を電解槽5の電極51,52へ電流を流すことにより、給水に銀イオンを溶出させる機能を有する。
【0050】
また、通電回路7は、制御部9からの制御内容に応じて所定の電流を電解槽5の電極51,52へ電流を流すと共に、そのときの電極51,52間の電圧を検出し、制御部9へ出力する機能をも有している。なお、電極51,52の電圧は、通電回路7を介さず、直接制御部9によって検出するようにしてもよい。この場合、制御部9の2つのA/D端子に各電極51,52をそれぞれ接続し、制御部9が電極51,52間の電圧差を検出することができる。
【0051】
人体センサ8は、LED等の発光素子とフォトダイオード等の受光素子、両素子のコントローラの役割を持つマイクロコンピュータとの組み合わせによって構成され、検知対象箇所(小便器であっては便器前方箇所、手洗い器、洗面器にあっては水洗金具の前方箇所)に人体、手等の検知対象物が入ると、受光素子の受光光量状態が変化したことをマイクロコンピュータで人体検知し、制御部9への信号を発生するものである。
【0052】
電磁弁駆動回路10は、制御部9から制御され、ラッチ式電磁弁3の開閉を制御する。この制御により、小便器6への給水及び断水が制御される。
【0053】
電源部11は、殺菌洗浄装置20の電源として用いられるものであり、制御部9、電磁弁駆動回路10、通電回路7、人体センサ8等に電力を供給すると共に、発電機41から供給される電力を蓄積する機能を有する。
【0054】
この電源部11は、発電機41から供給される電力の逆流を防止するためのダイオードD1と、発電機41から供給される電力を蓄積するための電気二重相コンデンサC1と、電気二重相コンデンサC1の電圧が低下したときに制御部9等へ電力を供給するための電池BATと、この電池BATへの電流が流れ込むことを防止するダイオードD2とから構成される。
【0055】
このように電源部11が構成されているため、小便器6に給水が給水されるたびに発電機41が動作し、電気二重相コンデンサC1へ電力が供給されることになり、通常この電気二重相コンデンサC1に蓄積された電力によって制御部9等が動作することになる。一方で、電気二重相コンデンサC1の電圧が低下したときには、電池BATからの電力が制御部9へ供給される。
【0056】
次に、制御部9の構成及び制御について説明する。なお本実施形態においては、制御部9はマイコンから構成されている。
【0057】
制御部9は、図1に示すように、流量を演算する流量演算部12と、電解槽5の電気伝導度σを検出する電気伝導度検出部13と、通電回路7を介して電解槽5の電極に供給する電流値を演算する電流演算部14と、電流演算部14に用いられる演算情報や設定流量Lxなどを記憶する演算情報記憶部15とを有している。
【0058】
流量演算部12は、流量センサ4から出力される信号を入力し、給水の流量を検出する機能を有する。
【0059】
電気伝導度検出部13は、通電回路7を制御して電解槽5の電極51,52に所定の電流を流し、この電極51,52間に生じる電圧のレベルを検出する。このように検出した電圧レベルから電気伝導度σを算出するように構成される。なお、電気伝導度σは、検出した電圧レベルと相関関係があることから、電気伝導度検出部13において、電気伝導度σそのものを算出する必要はなく、電気伝導度σに対応する情報を算出するようにしてもよく、検出した電圧レベルそのものを電気伝導度σの情報としてもよい。以下、電気伝導度σに対応する情報を含め、電気伝導度σとする。
【0060】
電流演算部14は、流量演算部12によって検出された給水の流量と、電気伝導度検出部13によって検出された電気伝導度σとに基づいて、電解槽5の電極に供給する電流値を演算する機能を有する。この電流演算部14による演算は、以下に説明する演算情報記憶部15に記憶された情報を用いて行なわれる。
【0061】
演算情報記憶部15は、小便器6に給水される給水が定流量弁2により略一定となる給水流量とその給水流量よりも小さい流量、すなわち定流量弁2が調整できる範囲とできない範囲とを区別するために、設定流量Lxの値が設定されている。
【0062】
さらに、流量センサ4で検出される流量が設定流量Lx以上のときに使用される第1の制御情報として関数I1(σ)が、設定流量Lxよりも小さい流量のときに使用される第2の制御情報として関数I2(σ)が演算情報記憶部15に記憶されている。
【0063】
本実施形態においては、関数I1(σ)及び関数I2(σ)はそれぞれ、
I1(σ)=K1×f1(σ) K1:定数
I2(σ)=K2×f2(σ) K2:定数
とする。また、これらの関数I1(σ)、I2(σ)による電流及び電気伝導度との関係を図6に示す。図6に示すように、同一の電気伝導度においては、関数I2(σ)による演算結果は、関数I1(σ)による演算結果よりも小さくなる。
【0064】
このように、演算情報記憶部15には、設定流量Lx、第1の制御情報及び第2の制御情報が記憶されているため、これらの情報を用いて、電流演算部14は、流量センサ4により検出した流量が、定流量弁2により略一定とされる給水流量以下の流量であって予め設定した流量(設定流量Lx)よりも少ない流量になった場合には、設定流量Lx以上の流量に対応する電流制御(関数I1(σ)に応じた制御)から低減した流量に対応する制御(関数I2(σ)に応じた制御)に変更することができる。
【0065】
次に図7を用いて、殺菌洗浄装置20の制御部9の動作について具体的に詳細な説明を行う。
【0066】
まず、殺菌洗浄装置20に電源が入ると、制御部9により人体センサ8が動作(ステップS101)し、人体を検出するまで動作を繰り返す(ステップS102:N)。人体センサ8によって人体が検出される(ステップS102:Y)と、電磁弁駆動回路10はラッチ式電磁弁3に通電してその弁を開にし(ステップS103)、給水路1の給水を小便器6に流す。
【0067】
次に、流量演算部12は、この給水が流れ始めたときの流量を流量センサ4で検出し、その検出結果を記憶する(ステップS104)。その流量が演算情報記憶部15に記憶されている設定流量Lx以上であれば(ステップS105:Y)、電解槽5に供給する電流値を関数I1(σ)によって演算するために、この関数を演算情報記憶部15から取り出す(ステップS106)。
【0068】
給水路1の流量が設定流量Lxよりも小さければ(ステップS105:N)、電解溶出される銀イオンの量を少なくするため、言い換えれば電解槽5に供給する電流値を関数I2(σ)によって演算するために、この関数を演算情報記憶部15から取り出す(ステップS107)。次に電気伝導度σの検出動作を、水流の安定した期間で検出するために、流れ初めの過渡的な状態を避け、流量が安定するまでの一定時間後に(ステップS108)、通電回路7の機能を切り替えて、電気伝導度σの検出を行い、演算情報記憶部15に記憶する(ステップS109)。なお、この制御は、電気伝導度検出部13によって行われる。
【0069】
S109で得られた電気伝導度σをパラメータとして、ステップS106又はステップS107にて演算情報記憶部15から取り出した関数を用いて電解槽5に通電する電流を電流演算部14により演算する(ステップS110)。
【0070】
ステップS110において演算した結果に基づいて、電流演算部14は、通電回路7を介して電解槽の電極に通電を始め(ステップS111)、流量センサ4によって得られる、給水の総水量が設定値に達するまで(ステップS112:N)通電し、給水の総水量が設定値に達すると(ステップS112:Y)、ラッチ式電磁弁3の通電及び電解槽5の電極への電流供給を停止(ステップS113)し、ステップS101へ戻る。
【0071】
ここでは給水開始を、人体を検出した時点からと説明したが、人体が人体センサ8の前から立ち去ったことを検出してから、給水を開始してもよい。さらに、一度の小便器6の使用で一度の給水である必然性はなく、給水開始を人体センサ8が人体を検出した直後と、人体が人体センサの前から立ち去った2回にしてもかまわない。また、給水の流れ初めの過渡的な状態を避けるためのタイマ(ステップS108)は、なくてもよい。
【0072】
本実施形態における殺菌洗浄装置は、上記のように構成され動作するものであるため定流量弁が調整動作可能な範囲における給水流量では、その流量に対応した電流制御がなされて給水流量に適正なる銀イオンが電解溶出される。しかし、水圧が定流量弁による調整動作ができない流量に低下したような場合には、その流量に対応する電流制御を行うように構成しているため、銀イオンの過度な溶出を抑制することができると共に、消費電力をも抑制することが可能となる。しかも、流量に応じた電流制御を2段階のみとした極めて簡単な構成となるため、その設計及び制御も極めて簡易である。
【0073】
また、このように給水の水力で発電する発電機による電力で動作する殺菌洗浄装置においては、供給する給水の水量が小さくなり発電量が減少しても、銀イオンの電解溶出のために過度の電力の消費を抑えることができ、電池の消耗を抑制することができる。
【0074】
なお、本実施形態では流量センサ4の下流に電解槽5が設けられているが、位置を変更し電解槽5の下流に流量センサを設けてもよい。
【0075】
また、本実施形態においては、電解槽5へ通電すべき電流を関数I1(σ)、関数I2(σ)を用いて電流演算部14によって演算することとしたが、図8に示すような電流値テーブルから電解槽5へ通電すべき電流を決定するようにしてもよい。この場合、関数I1(σ)の選択に代えて第1テーブルから、又関数I2(σ)の選択に代えて第2テーブルから、検出した電気伝導度σに対応する電流値を取り出し、その電流値によって電解槽5へ通電することができる。たとえば、定流量弁2が調整できる流量でかつ給水の電気伝導度a2であるとき、電流演算部14は、第1のテーブルからA2を取出し、定流量弁2が調整できない少ない流量でかつ給水の電気伝導度a2であるとき、電流演算部14は、第2のテーブルからA5を取出すようにする。
【0076】
(第2実施形態)
本第2実施形態の殺菌洗浄装置20は、第1実施形態の殺菌洗浄装置20と同様の構成を有しており、電流演算部14及び演算情報記憶部15の構成のみ異なるため、これらの符号は同一のものとし、また第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0077】
この第2実施形態においては、給水が設定流量Lxよりも小さい流量のときに、更に細かく制御をすることができるものとしたものであり、以下具体的に説明する。
【0078】
演算情報記憶部15には、設定流量Lx以上の流量のときに電流演算部14により用いられる関数I1(σ)と、設定流量Lxよりも小さい第1の範囲の流量(Lx1≦L<Lx)のときに用いられる関数I3(σ)と、第1の範囲の流量よりも更に小さい第2の範囲の流量(Lx2<L≦Lx1)のときに用いられる関数I4(σ)と、第1の範囲の流量よりも更に小さい第3の範囲の流量(L≦Lx2)のときに用いられる関数I5(σ)とが記憶されている。
【0079】
また、演算情報記憶部15には、設定流量Lxの他、上述のLx1、Lx2が記憶される。
【0080】
電流演算部14は、以上のように構成された演算情報記憶部15に記憶された情報に基づき、電解槽5へ通電すべき電流を決定する。
【0081】
例えば、流量センサ4により検出した流量Lが設定流量Lx以上であるときには、関数I1(σ)を用い、電気伝導度検出部13によって検出した電気伝導度σをパラメータとしてこの関数I1(σ)で演算し、その結果に基づいた電流値によって電解槽5へ通電する。また、流量センサ4により検出した流量LがLx2<L≦Lx1の範囲であるときには、関数I4(σ)を用い、電気伝導度検出部13によって検出した電気伝導度σをパラメータとしてこの関数I4(σ)で演算し、その結果に基づいた電流値によって電解槽5へ通電する。さらに、流量センサ4により検出した流量LがLx2以下であるときには、関数I5(σ)を用い、電気伝導度検出部13によって検出した電気伝導度σをパラメータとしてこの関数I5(σ)で演算し、その結果に基づいた電流値によって電解槽5へ通電する。
【0082】
このように定流量弁2で調整できない流量のときに、その流量に応じて複数の関数を用いて電解槽5へ通電する電流値を決定することができるため、銀イオンの余分な溶出をより抑制することができると共に、消費電力をもより抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態の殺菌洗浄装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態の殺菌洗浄装置の全体構成を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施形態の定流量弁の特性を示す図。
【図4】本発明の一実施形態の電解槽の構成を示す図。
【図5】電気伝導度と電解槽への通電電流との関係を示した図。
【図6】本発明の一実施形態の演算関数を示した図。
【図7】本発明の一実施形態の殺菌洗浄装置の動作フローチャート。
【図8】本発明の一実施形態の電流値テーブルを示した図。
【図9】本発明の一実施形態の演算関数を説明するための図。
【符号の説明】
【0084】
1 給水路
2 定流量弁
3 ラッチ式電磁弁
4 流量センサ
5 電解槽
6 小便器
9 制御部
13 電気伝導度検出部
14 電流演算部
15 演算情報記憶部
20 殺菌洗浄装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路の中途に設けられ、下流への給水流量を略一定に調整する定流量弁と、
前記給水流量を検出する流量センサと、
少なくとも一方が殺菌性金属電極を有する一対の電極を有し、この電極への通電により殺菌性金属イオンを給水中に電解溶出する電解槽と、
電解槽の電極に通電する電流を制御する制御部と、を設けた殺菌洗浄装置において、
前記制御部は、前記流量センサにより検出した流量が、前記定流量弁により調整できない流量のとき、前記定流量弁により調整可能な流量の電流制御から低減した流量に対応する制御に変更するように構成したことを特徴とする殺菌洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部には、前記定流量弁により調整可能な第1の制御情報と、前記定流量弁により調整できない流量に応じた第2の制御情報を記憶する記憶手段を設け、
前記制御部は、前記流量センサにより検出した流量が、予め設定した流量よりも大きい場合には、前記第1の制御情報に基づいて前記電解槽の電極に通電する電流を制御し、予め設定した流量よりも少ない流量になった場合には、前記第2の制御情報に基づいて前記電解槽の電極に通電する電流を制御するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の殺菌洗浄装置。
【請求項3】
給水の電気伝導度を検出する電気伝導度検出部を設けるとともに、
前記制御部は、前記電気伝導度検出部の検出結果に応じて電解槽の電極への通電電流を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給水制御装置。
【請求項4】
前記給水路を流れる給水より発電する発電機を設け、
前記流量センサは、前記発電機の発電量に基づいて給水路内の給水の流量を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の殺菌洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−740(P2007−740A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182249(P2005−182249)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】