説明

殺菌組成物及び医薬

【課題】本発明は、殺菌効果に優れ、特に創傷面等に対して優れた殺菌治療効果を有し、さらには長時間に渡って殺菌効果を維持することのできる殺菌組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、[A]水に[B]銀粒子を添加して調製される殺菌組成物であって、銀イオン濃度が30質量ppm以上1000質量ppm以下であることを特徴とする殺菌組成物である。また、本発明の殺菌組成物が含有する[B]銀粒子の平均粒子径は50nm以上500nm以下である。さらに銀粒子の添加量は0.003質量%以上10質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀粒子を含む殺菌組成物及び医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
急性創傷面又は慢性創傷面等の創傷面は、創傷部位からの滲出液等により細菌等の繁殖を招き、雑菌感染を極めて起こしやすい状態となっている。そのため炎症、創傷のさらなる悪化、雑菌等が原因であるメタンガス系の強い臭気の発生等がおこる。
【0003】
そこで、治療のために創傷面を被覆するのに用いられる創傷被覆材には、創傷面における細菌の繁殖を抑制する目的で、抗生物質等を含有する組成物等が広く用いられている。しかし、これらの抗生物質等は早期に創傷面に拡散し代謝されてしまうため、長時間に渡って殺菌効果を維持することは難しい。
【0004】
一方、銀イオンは優れた殺菌効果を有することが知られている。また、銀イオン及び銀粒子は人間の皮膚に対して刺激が少ないことから、銀イオン又は銀粒子を含有する低刺激化粧料等が種々開発されている。例えば、(1)銀イオンと、皮膚に対して刺激の低い抗菌成分とを併用する低刺激化粧料(特開2009−7266号公報参照)や、(2)銀粒子の粒子径や含有量を制御することでアクネ菌等に対して持続的に抗菌効果を奏する抗菌性組成物(特開2006−169222号公報参照)が開発されている。
【0005】
しかしながら、(1)の低刺激化粧料及び(2)の抗菌性組成物は、その銀イオン濃度が低いことから創傷面に対して充分な殺菌効果を発揮するには至っていない。このような状況の中、創傷面に対して優れた殺菌性を有し、長時間に渡って殺菌効果を維持することができ、かつ安全性の高い殺菌組成物の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−7266号公報
【特許文献2】特開2006−169222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、殺菌効果に優れ、特に創傷面等に対して優れた殺菌効果を有し、さらには長時間に渡って殺菌効果を維持することのできる殺菌組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]水に[B]銀粒子を添加して調製される殺菌組成物であって、
銀イオン濃度が30質量ppm以上1000質量ppm以下であることを特徴とする殺菌組成物である。
【0009】
本発明の殺菌組成物は、[A]水及び[B]銀粒子を含有する。[B]銀粒子が[A]水と接触することで、当該殺菌組成物中に銀イオンを放出する。当該殺菌組成物は、30質量ppm以上1000質量ppm以下の高濃度の銀イオンを有し、その濃度が従来の殺菌組成物と比較して高いため、創傷部位等の雑菌等に対して優れた殺菌効果を発揮することができる。また、当該殺菌組成物中に銀粒子と銀イオンが混在する場合には、当該殺菌組成物の塗布後時間が経過した後であっても、銀粒子は創傷部位に残存する。そのため、創傷部位からの滲出液や汗等の水分により銀イオンを放出し、創傷部位等の雑菌等に対してさらに優れた殺菌効果を発揮することができると共に、この殺菌効果を長時間に渡って維持することができる。また、当該殺菌組成物は、上記殺菌効果により、雑菌等が原因となって生じるメタンガス系の強い臭気の発生を抑えることができる。さらに当該殺菌組成物は、安全性にも優れるため、人体に対して安心して用いることができる。なお、本発明の殺菌組成物としては、[B]銀粒子が銀イオンを放出した後に、イオン化しなかった[B]銀粒子が粒子のままで一部分散している場合、及び[B]銀粒子の全てが銀イオンとなり、銀粒子が残存していない場合が考えられ、[B]銀粒子が銀イオンを放出した後に、イオン化しなかった[B]銀粒子が粒子のままで一部分散している場合の方が好ましい。当該殺菌組成物中に銀粒子と銀イオンが混在する場合には、創傷部位等の雑菌等に対してさらに優れた殺菌効果を発揮することができるからである。
【0010】
[B]銀粒子の平均粒子径(一次粒子平均粒子径)が50nm以上500nm以下であることが好ましい。[B]銀粒子の平均粒子径を上記範囲とすることで、[B]銀粒子の銀イオン化が促進され、当該殺菌組成物中の銀イオン濃度を簡便に適度な濃度にすることができる。また、[B]銀粒子の平均粒子径を上記範囲とすることで、創傷部位等に[B]銀粒子が残存し易くなり、その結果、当該殺菌組成物による優れた殺菌効果をより長く維持することができる。なお、一次粒子平均粒子径とは、銀粒子を構成している粒子のうち、他と明確に分離できる最小単位の粒子の直径の平均値であり、動的光散乱法により測定される。
【0011】
[B]銀粒子の添加量が0.003質量%以上10質量%以下であることが好ましい。[B]銀粒子の添加量を上記範囲とすることで、当該殺菌組成物中の銀イオンを高濃度で維持することができ、優れた殺菌効果を実現できる。また、創傷部位等に銀粒子が残存し易く、当該殺菌組成物による殺菌効果がさらに高まる。添加した[B]銀粒子の一部は[A]水の作用でイオン化し、一部は銀粒子のまま分散する。但し、添加した銀粒子の量が少ない場合等には、当該殺菌組成物中で全てイオン化する場合も含まれる。
【0012】
当該殺菌組成物は[C]殺菌剤をさらに含有するとよい。当該殺菌組成物は[C]殺菌剤を含有することで、より幅広い種類の雑菌に対して殺菌効果を発揮することができる。また、当該殺菌組成物は[B]銀粒子と殺菌剤を併用することで、創傷部位等における雑菌感染をさらに抑制することができるため、雑菌等による臭気の発生をも効果的に抑制できる。
【0013】
[C]殺菌剤が塩化ベンザルコニウム及びアクリノールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの殺菌剤は幅広い種類の雑菌に対する殺菌効果を有しているため、当該殺菌組成物が含有する銀粒子及び銀イオンの殺菌効果に加えて、さらに優れた殺菌効果を実現することができる。また上記殺菌剤は肌への刺激も少なく安全性も高いため、当該殺菌組成物は人体に対し安心して用いることができる。
【0014】
[C]殺菌剤の含有量が0.00001質量%以上0.05質量%以下であるとよい。[C]殺菌剤の含有量が上記範囲内であると、当該殺菌組成物は幅広い種類の雑菌に対してより優れた殺菌効果を示す。
【0015】
[D]ハイドロゲル化合物をさらに含有するとよい。[D]ハイドロゲル化合物は水分保持機能を有することから、創傷部位に対して適度な湿潤状態を維持することができる。その結果、創傷表面の乾燥による皮膚細胞の懐死が起こりにくくなるため、創傷跡を目立ち難くすることができる。
【0016】
[D]ハイドロゲル化合物が、カラギーナン、アルギン酸エステル、アルギン酸、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種であるとよい。[D]ハイドロゲル化合物として、上記群から選択される少なくとも1種を用いることにより、創傷部位等における当該殺菌組成物の水分保持機能がより向上することから、創傷部位に対して銀イオンを持続的に放出することが可能となる。その結果、当該殺菌組成物によると創傷部位を短期間で治療することができ、さらに創傷部位から細菌繁殖が原因となって発生する臭いをもより効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の殺菌組成物は医薬として好適に用いられる。当該殺菌組成物は高い殺菌効果を有するため、裂傷、火傷、褥瘡等の様々な創傷に対して優れた治療効果を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明の殺菌組成物は、[B]銀粒子及び[A]水を含有し、[B]銀粒子が[A]水と接触することで、当該殺菌組成物中に銀イオンを放出する。当該殺菌組成物は、30質量ppm以上1000質量ppm以下の高濃度の銀イオンを有し、その濃度が従来の殺菌組成物と比較して高いため、創傷部位等の雑菌等に対して優れた殺菌効果を発揮することができる。また、当該殺菌組成物中に銀粒子と銀イオンが混在する場合には、創傷部位等の雑菌等に対してさらに優れた殺菌効果を発揮することができる。当該殺菌組成物の塗布後時間が経過した後であっても、微量の銀粒子は創傷部位に残存しているため、創傷部位からの滲出液や汗等の水分により銀イオンを放出することができるからである。このため、当該殺菌組成物は殺菌効果を長時間に渡って維持することができる。また、当該殺菌組成物は、上記殺菌効果により、雑菌等が原因となって生じるメタンガス系の強い臭気の発生を抑えることができる。さらに当該殺菌組成物は、安全性にも優れるため人体に対して安心して用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<殺菌組成物>
当該殺菌組成物は[B]銀粒子及び[A]水を含有する。さらに、当該殺菌組成物は、好適な成分として[C]殺菌剤及び/又は[D]ハイドロゲル化合物を含有してもよく、本発明の効果を損なわない限りその他の任意成分を含有することができる。当該殺菌組成物は、[B]銀粒子及び[A]水を含有することで銀粒子は銀イオンを放出し、特にイオン化しなかった銀粒子が溶液中に分散している場合には、創傷部位等においても銀粒子から効果的に銀イオンを放出することができるため、創傷部位等に対して優れた殺菌効果を発揮することができると共に、創傷部位に残存する[B]銀粒子により殺菌効果を維持することができる。さらに当該殺菌組成物は、雑菌等が原因となって生じるメタンガス系の強い臭気を消臭することができる。以下、各成分について詳述する。
【0020】
<[A]水>
[A]水は当該殺菌組成物において、[B]銀粒子から銀イオンを放出させるための必須成分である。[A]水としては特に限定されず、例えば純水、水道水、鉱水、鉱泉水、井戸水、温泉水、湧水、淡水等又はこれらに各種処理を施したものを用いることができる。かかる処理としては、例えば精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換等を挙げることができる。
【0021】
<[B]銀粒子>
当該殺菌組成物において[B]銀粒子は、銀イオンを放出して殺菌効果を発揮するための必須成分である。本発明において[B]銀粒子としては、実質的に金属銀のみからなるものであって、臭化銀、硝酸銀等の銀塩及び銀複合体等を含まないことが好ましい。また[B]銀粒子はその表面に被覆処理が施されていてもよいが、銀イオン化を促進させる観点から被覆処理が施されていないことが好ましい。
【0022】
[B]銀粒子の平均粒子径としては50nm以上500nm以下が好ましく、55nm以上400nm以下がより好ましく、60nm以上250nm以下がさらに好ましい。[B]銀粒子の粒子径が500nmを超えると、[B]銀粒子が放出する銀イオン量が減少し、組成物中の銀イオン濃度が低下することにより、殺菌効果が低下するおそれがある。[B]銀粒子の平均粒子径が50nm未満となると、組成物の塗布後に創傷部位に対して残存する[B]銀粒子の量が少なくなり、その結果、当該殺菌組成物の有する殺菌効果の維持が不十分となる場合がある。また、その理由は明らかではないが、肌や爪が黒変する等の感光作用が発生するというおそれもある。
【0023】
[B]銀粒子の添加量の下限は0.003質量%であり、0.01%が好ましく、0.1質量%がより好ましい。一方、[B]銀粒子の添加量の上限は10質量%であり、5質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。[B]銀粒子の添加量が上記下限未満であると、創傷部等に直接付着して作用する銀粒子の数が少なくなるため殺菌効果の持続が不十分となるおそれがある。また[B]銀粒子の添加量が上記上限を超えても、当該殺菌組成物の殺菌効果はあまり向上しないため、低コスト化の観点から好ましくない。さらに、[B]銀粒子の添加量を上記範囲とすることで、組成物中に[B]銀粒子を容易に分散させることができるという効果もある。
【0024】
<[B]銀粒子の製造方法>
次に、[B]銀粒子の製造方法について説明する。[B]銀粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、一般的な公知の方法により製造することができる。これらの製造方法のうち、不純物の混入等による毒性等を抑制するため、不純物の混入が少なく、精製度を高めた製造方法が好ましい。また、一般に販売されている銀粒子を用いてもよいが、市販されている銀粒子には、表面被覆処理等により銀イオンの放出量が少ないものが存在するため選択に注意を要する。例えば以下の方法を好ましいものとして挙げることができる。
【0025】
浅い坩堝に入れた50gの銀を、電気炉で1000℃まで加熱し融解させる。さらに、1000℃に温度を維持することで銀を気化させる。この時、アルゴン等の不活性ガスを電気炉に供給して排気を行うことで、気相となった銀は電気炉の排気口に流入する。気相となった銀を、予め電気炉の排気口に取り付けられたフィルターにより捕獲した後、冷却し金属銀とする。このような製造方法により所望の粒子径をもつ銀粒子を得ることができる。この製法により製造した銀粒子は、銀イオンを発生し易いため、当該洗浄組成物は優れた抗菌効果を示すことができる。その理由は明らかではないが、この製法により製造される銀粒子は、表面の形状に凹凸が多く見られ、水に触れることができる表面積が通常よりも大きくなることで、銀イオンを発生し易くなっていると考えられる。またその形状のためか、皮膚等に付着し易く、洗い流されにくいため、その抗菌効果を長時間にわたって維持することができるものと考えられる。さらに、製造される銀粒子の粒子径を、本発明の洗浄組成物として優れた抗菌効果を有することができるために適した50nm以上500nm以下のサイズに制御することができる。
【0026】
<[C]殺菌剤>
[C]殺菌剤は、[B]銀粒子と共に殺菌効果を付与するための好適成分である。殺菌剤は、雑菌等に対して殺菌効果を有するものであれば特に限定されず、例えばヨードチンキ、ポビドンヨード、次亜塩素酸ナトリウム、クロル石灰、マーキュロクロム液、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール、エタノール、イソプロパノール、過酸化水素水(オキシドール)、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、クレゾール石鹸液等が挙げられる。この中で、皮膚安全性が特に高い殺菌組成物が得られる観点から、塩化ベンザルコニウム又はアクリノールが好ましい。
【0027】
これら[C]殺菌剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]殺菌剤の当該殺菌組成物に対する含有量は特に限定されないが、0.00001質量%以上0.05質量%以下であることが好ましく、0.00005質量%以上0.01質量%以下がより好ましい。[C]殺菌剤の含有量を上記好ましい範囲とすることで、当該殺菌組成物は[B]銀粒子又は銀イオンの殺菌効果に加えて、さらに幅広い種類の雑菌等に対する優れた殺菌効果を有する。
【0028】
<銀イオン濃度>
当該殺菌組成物においては銀イオン濃度が30質量ppm以上1000質量ppm以下である。銀イオン濃度が上記範囲であることで、当該殺菌組成物は、創傷部位の雑菌に対して殺菌効果を発揮することができる。
【0029】
銀イオン濃度の当該殺菌組成物に対する上限としては、1,000質量ppmである。銀イオン濃度の当該殺菌組成物に対する下限としては、30質量ppmであり、60質量ppmが好ましく、100質量ppmがより好ましく、200質量ppmがさらに好ましい。銀イオン濃度が上記上限を超えても、殺菌効果があまり向上しないためコスト削減の観点から好ましくない。さらに、皮膚等に対して上記上限を超える濃度で使用すると、殺菌効果等はあるものの、皮膚等が茶褐色に変色するおそれがあり好ましくない。また、銀イオン濃度が上記下限未満であると、雑菌に対する殺菌効果が低下するおそれがある。
【0030】
<[D]ハイドロゲル化合物>
ハイドロゲル化合物は、本発明の殺菌組成物に添加することで、創傷部位を適度な湿潤状態に維持することができる。ハイドロゲル化合物が、組成物中の水や創傷部位からの滲出液を吸収して形成したゲル構造を長期間保持できるため、[B]銀粒子から創傷部位に対して長期間に渡って効果的に銀イオンを放出させることができる。結果として、当該殺菌組成物は、創傷部位を短期間で治癒することができる。
【0031】
ハイドロゲル化合物としては、水分等を吸収することでゲル構造を形成できるものであれば特に限定されないが、例えばポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、変性アクリルアミド、カラギーナン、アルギン酸エステル、アルギン酸、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン、トラガカントガム、メチルセルロース、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらのうち、液体吸収能力及び液体保持能力に優れている観点から、カラギーナン、アルギン酸エステル、アルギン酸、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリアクリル酸が好ましい。また、ハイドロゲル化合物によるゲル膜は、創傷部位に密着しても貼りつくおそれが少ないため、ゲル膜を除去する際に創傷部位に損傷を与えるおそれが殆どない。結果として、当該殺菌組成物により形成されたゲル膜は、容易に取替え作業を行うことができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0032】
殺菌組成物中のハイドロゲル化合物の含有量としては、長期間ゲル構造を保持し、創傷部位を適度な湿潤状態に維持することができれば特に限定されないが、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1質量%以下がより好ましい。ハイドロゲル化合物の含有量が上記範囲未満であると、長期間ゲル構造を保持することができなくなるおそれがあるため、創傷部位を適度な湿潤状態に維持する時間が短くなり、治癒期間が長くなるおそれがある。逆にハイドロゲル化合物の含有量が上記範囲を超えることで、創傷部位に対して塗布することが困難となる場合がある。
【0033】
<その他の任意成分>
当該殺菌組成物は、[B]銀粒子、[B]水、好適成分としての[C]殺菌剤及び[D]ハイドロゲル化合物に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分として通常使用される添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、特に限定されず、例えば保湿剤、柔軟剤、抗炎症剤、経皮吸収促進剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、抗アレルギー剤、界面活性剤、pH調整剤等を適宜含有することができる。
【0034】
保湿剤としては、例えばカンテン、ジステアリルジモニウムヘクトライト、ジグリセリン、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ヨクイニンエキス、ワセリン、尿素、ヒアルロン酸、セラミド、リピジュア、イソフラボン、アミノ酸、コラーゲン、フコダイン、ラクトフェリン、ソルビトール、キチン・キトサン、リンゴ酸、グルクロン酸、プラセンタエキス、海藻エキス、ボタンピエキス、アマチャエキス、オトギリソウエキス、コレウスエキス、マサキ抽出物、チョレイエキス、ローズマリーエキス、サンザシエキス、マイカイ花エキス、コウカエキス、デュークエキス、カミツレエキス、オドリコソウエキス、レイシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、マロニエエキス、アスナロエキズ、オスモインエキス、アロエエキス、ヒバマタエキス、オーツ麦エキス、チューベロースポリサッカライド、冬虫夏草エキス、大麦エキス、オレンジ抽出物、ジオウエキス、サンショウエキス、ヨクイニンエキス等が挙げられる。
【0035】
柔軟剤としては、例えばグリセリン、オレイン酸、オレイン酸グリセリル、ワセリン、オリーブ油、スクワラン、ラノリン、合成エステル油等が挙げられる。
【0036】
抗炎症剤としては、例えばグリチルリチン酸、グリチルレチン酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、ε−アミノカプロン酸、酸化亜鉛、ジクロフェナクナトリウム、アロエ抽出物、サルビア抽出物、アルニカ抽出物、カミツレ抽出物、シラカバ抽出物、ゲンチアナ根抽出物等が挙げられる。
【0037】
経皮吸収促進剤としては、例えばエタノール、クエン酸、アジピン酸ジエステル、アジピン酸ジイソプロピル、オレイン酸、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸イソプロピル等が挙げられる。
【0038】
防腐剤としては、例えば安息香酸、ソルビン酸、パラベン、ギ酸、ギ酸エチル、次亜塩素酸ナトリウム、フェノキシエタノール、プロピオン酸、ポリリジン等が挙げられる。
【0039】
酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、α−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、トコトリエノール、クエン酸イソプロピル、カイネチン、α−リポ酸、ポリフェノール、SOD等が挙げられる。
【0040】
増粘剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ペクチン、アラビアゴム、デンプン等が挙げられる。
【0041】
抗アレルギー剤としては、例えばアンレキサノクス、クロモグリク酸ナトリウム、塩酸オザグレル、イブジラスト、トシル酸スプラタスト、トラニラスト、フマル酸ケトチフェン等が挙げられる。
【0042】
界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0043】
pH調整剤としては、例えば乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸、リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
【0044】
<殺菌組成物の調製方法>
当該殺菌組成物は、常法に基づき調製することができ、例えば上記[B]銀粒子及び[A]水、必要に応じて加えられる好適成分である[C]殺菌剤、[D]ハイドロゲル化合物、その他の任意成分を混合して得ることができる。得られた当該殺菌組成物は、適宜容器に充填する等して使用することができる。
【0045】
当該殺菌組成物のpHとしては、通常3以上9以下であり、4以上8以下が好ましく、5.5以上7.5以下がより好ましい。当該殺菌組成物のpHを上記範囲とすることで、創傷部位に対して刺激を与えるおそれがなくなる。但し、当該殺菌組成物が奏する殺菌効果は、[B]銀粒子から放出される銀イオンによるものであるため、殺菌組成物のpHに関係なく殺菌効果を発揮することができる。
【0046】
当該殺菌組成物の剤型は、必須成分及び好適な任意成分を含有することができ殺菌効果を発揮することができれば特に限定されず、例えば水系、乳化系、ゲル系等の幅広い種類の剤型を選択することができる。例えば当該殺菌組成物が水系の場合は、殺菌組成物をスプレーボトル容器等に入れ、創傷部位に対して満遍なく吹き付けて使用することができる。例えば当該殺菌組成物が[D]ハイドロゲル化合物を含有する場合のようにゲル系の場合は、殺菌組成物をチューブ容器や軟膏容器等に入れ、創傷部位に指やへら等を用いて塗布して使用することができる。
【0047】
<殺菌組成物の使用方法>
当該殺菌組成物は、例えば急性創傷又は慢性創傷を治療するための塗布又は噴霧等の手段により直接創傷部位に対して使用することができる。急性創傷としては、例えば切開創または切創、裂傷、擦過傷、熱傷、針やナイフ等に起因する刺傷、打撲傷、血腫、挫滅傷等が挙げられる。慢性創傷としては、例えば高齢者を冒す静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、細菌感染に起因する角膜潰瘍等が挙げられる。
【0048】
当該殺菌組成物は、噴霧等により直接創傷部位に使用することで効果的に[B]銀粒子から放出される銀イオンにより、優れた殺菌効果を発揮することができる。具体的に殺菌効果を奏することのできる対象としては、例えば大腸菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ菌、ミュウタンス菌、O−157、白癬菌、黒酵母カビ菌、MRSA、多剤耐性緑膿菌、VRE、マイコプラズマ肺炎菌等が挙げられる。また、ゲル系の当該殺菌組成物は、塗布等により直接創傷部位に使用することができ、空気と接している表面側の水分が蒸発することでフィルムを形成し、創傷部位側の水分蒸発を抑制することができるため、創傷部位を適度な湿潤状態に長時間維持することができる。
【0049】
当該殺菌組成物は、創傷部位に残存する[B]銀粒子により殺菌効果を維持することができる。これにより、創傷部位に対する治療回数が減少するため、看護者の肉体的負担を軽減させることができる。さらに、当該殺菌組成物は、雑菌等が原因となって生じるメタンガス系の強い臭気を消臭することができる。その結果、特に慢性創傷である褥瘡性潰瘍等の患者から発生する臭気が消臭されるため、看護者の精神的負担を軽減させることができる。
【0050】
なお当該洗浄組成物は、これらの実施形態に限定されるものではない。例えば、当該殺菌組成物が水系の場合は、創傷部位への噴霧後の水分蒸発を抑制するため、噴霧直後に合成樹脂製のフィルム等を創傷部位に巻き付けて使用することもできる。この場合、合成樹脂製のフィルム等は、創傷部位を適度な湿潤状態に維持することができる。例えば、当該殺菌組成物がゲル系の場合は、直接創傷部位に塗布するのではなく、合成樹脂製のフィルム等に塗布した後、殺菌組成物側を創傷部位に貼付して使用することもできる。
【0051】
<医薬>
当該殺菌組成物は、例えば急性創傷又は慢性創傷を治療するための医薬として好適に用いられる。当該殺菌組成物は、[B]銀粒子及び[A]水を含有し、[B]銀粒子が[A]水と接触することで、当該殺菌組成物中に30質量ppm以上1000質量ppm以下の高濃度の銀イオンを含有し、その濃度が従来の殺菌組成物と比較して高いため、当該医薬は、創傷部位等の雑菌等に対して優れた殺菌効果を発揮し、高い治療効果を有する。また、当該医薬による処置後時間が経過した後であっても、微量の銀粒子は創傷部位に残存するため、創傷部位からの滲出液や汗等の水分により銀イオンを放出することができ、治療効果を長時間に渡って維持することができる。さらに当該医薬は、安全性にも優れるため人体に対して安心して用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<殺菌組成物の調製>
[実施例1]
浅い坩堝に入れた50gの銀を、電気炉内で1000℃に加熱することにより融解、気化させた。アルゴン等の不活性ガスを電気炉に供給して排気を行い、気相となった銀を、予め電気炉の排気口に取り付けておいたフィルターにより捕獲した後、冷却を経て金属銀を得た。このような製造方法により約80nmの粒子径をもつ銀粒子を得ることができた。[A]水としては、市販の滅菌水を用いた。上記[B]銀粒子0.002質量部を、[A]水100質量部に添加し、低速で撹拌混合して殺菌組成物を得た。この殺菌組成物中の銀イオン濃度は30ppmであった。なお、得られた組成物中の銀イオン濃度は、ICP発光分光分析装置を用いて測定した。
【0054】
[実施例2〜11及び比較例1〜3]
実施例1と同様の手順によって、表1に示す成分を[A]水100質量部中に撹拌混合して組成物を得た。なお、カラギーナンを含有している組成物については、カラギーナンを充分に膨潤することに注意して調製した。各組成物の銀イオン濃度も表1に合わせて記載した。
【0055】
【表1】

【0056】
<消臭効果>
約10ppmのメタンガス系の臭気ガスを充満させた一辺が約20cmの立方体の箱を7個用意した。それらの内部に、霧吹きスプレーを使用して上記組成物S−3、S−4、S−5、s−1、s−2又はs−3をそれぞれ約1.0g噴霧した。噴霧後3分における立方体中の臭いについて、官能評価を行った。評価基準としては、全く臭わない場合を「○」、少し臭う場合を「△」、強く臭う場合を「×」とした。なお、カラギーナンを含有している殺菌組成物S−6は噴霧することができないので、約1.0gを塗布した一辺約15cmのシートを立方体の内部に入れて上記と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示す通り、当該殺菌組成物は優れた消臭効果を有することが確認された。特に、空気中に充満しているメタンガス系の悪臭に対して、水系の当該殺菌組成物を噴霧することが有効であることが確認された。
【0059】
<抗菌・殺菌性試験>
実施例3で調製した殺菌組成物S−3を用いて抗菌・殺菌性試験を実施した。この試験では(1)大腸菌、(2)黄色ブドウ球菌、(3)ミュウタンス菌、(4)カンジダ菌、(5)耐性緑膿菌、(6)MRSA、(7)白癬菌を対象として実施した。試験方法は、滅菌済みシャーレ上に固形培地を20mL/シャーレの割合で入れ、平板とした後、予め培養された上記の膿菌を均一に塗抹した。これに殺菌組成物S−1又はS−3約1.0gを、固定培地平板に霧吹きスプレーで噴霧した。これを37℃で静置し、5分後及び2時間後における接触面の菌の発育を観察した。その試験結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
当該殺菌組成物は試験を実施した全ての菌に対して、優れた殺菌効果を有することが確認された。特に、殆どの菌が5分後に死滅していることから、当該殺菌組成物は短時間で殺菌効果を奏することが確認された。
【0062】
<治療効果>
慢性創傷のひとつである褥瘡(床ずれ)患者7人、裂傷(切り傷)の患者6人、擦傷の患者2人、火傷(やけど)の患者2人に対して、当該殺菌組成物による治療を行った。全ての結果を表4に示した。治療開始後5日以内に完治した場合を「○」、回復効果が認められた場合を「△」、治療効果が見られなかった場合を「×」とした。それぞれの治療方法及び効果については、以下に説明する。
【0063】
患者Aは、皮膚に緑膿菌感染及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染による軽度の褥瘡を起こしていた。殺菌組成物S−2をガーゼに浸して褥瘡部位に直接当てて治療を行った。毎日1回、殺菌組成物S−2を浸したガーゼの交換を行い経過を見た。その結果、治療開始後3日目に浸出液が止まり、傷の乾燥化が始まった。7日目には浸出液が完全に止まり傷の乾燥後回復が認められた。2週間後には傷の縮小が認められ治療が完了した。
【0064】
患者B及び患者Cは、皮膚に緑膿菌感染及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染による重度の褥瘡を起こしていた。両者の褥瘡の程度は同程度であった。殺菌組成物S−2をガーゼに浸して褥瘡部位に直接当てて治療を行った。毎日2回、殺菌組成物S−2を浸したガーゼの交換を行い経過を見た。その結果、治療開始後3日目に浸出液が止まり傷の乾燥化が始まった。7日目には浸出液が完全に止まり傷の乾燥後回復が認められた。2週間後には上記菌は完全に無くなった。
【0065】
患者D〜Gは、皮膚に緑膿菌感染及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染による軽度の褥瘡を起こしていた。霧吹きスプレーを用いて、殺菌組成物S−3を褥瘡部位に直接噴霧する治療を行った。全員について、褥瘡部位の緑膿菌及びMRSA付着層を約2時間で除去することができ、褥瘡部位の著しい改善治療効果が確認された。
【0066】
急性創傷のひとつである裂傷患者H、具体的には足の裏を貝殻で創傷した患者に対してその裂傷部位に霧吹きスプレーを用いて当該殺菌組成物S−4を直接噴霧する治療を行った。その結果、裂傷の程度は軽いものであったが、通常の一般的な治療を行う場合と比較して2日程度早期に完治し、当該殺菌組成物の裂傷に対する早期治療効果が確認された。
【0067】
急性創傷のひとつである擦過傷の子供患者I、Jの2人に対して、擦過傷部位に殺菌組成物S−4を霧吹きスプレーを用いて1日1回噴霧した。その結果、擦過傷は2日で完全に治った。
【0068】
急性創傷のひとつである軽度の火傷の患者K、Lの2人に対して、殺菌組成物S−2をガーゼに浸して直接火傷部位に当てて治療を行った。毎日1回、殺菌組成物S−2を浸したガーゼの交換を行い経過を見た。その結果、患者Kは3日目に完治し、患者Lは7日目に完治した。当該殺菌組成物の火傷に対する早期治療効果を確認することができた。
【0069】
急性創傷のひとつである裂傷患者M〜Qに対して、その裂傷部位に霧吹きスプレーを用い、表4に示す殺菌組成物を直接噴霧し、その部位をフィルムで覆い治療を行った。その結果、通常の一般的な治療を行う場合と比較して2日程度早期に完治し、当該殺菌組成物の裂傷に対する早期治療効果が確認された。
【0070】
軽度の裂傷患者Rに対して、実施例1において得られた銀粒子をガーゼに塗布し、その裂傷部位に直接当てて治療を行った(参考例1)。その結果、裂傷の程度は軽いものであったが、治療後3日目には完治し、本発明で用いられる銀粒子が、裂傷に対して著しい治療効果を有することが確認された。
【0071】
【表4】

【0072】
以上のように、本発明の殺菌組成物は、上記創傷等に対して著しい治療効果を示した。特に、殺菌組成物を霧吹きスプレー等で噴霧する方法によると、重度の褥瘡等の創傷に対しても優れた治療効果を示すことが確認された。なお、殺菌組成物を浸したガーゼの交換や、霧吹きスプレーによる噴霧は1日1回で十分な効果を示し、複数回の処置等を必要としなかったことから、当該殺菌組成物は、持続的な治療効果を有すると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明の殺菌組成物は、消臭効果及び殺菌効果に優れ、さらには褥瘡、裂傷、擦傷、火傷等の創傷部に対する著しい治療効果を有する。また当該殺菌組成物は、安全性にも優れるため人体に対して安心して用いることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]水に[B]銀粒子を添加して調製される殺菌組成物であって、
銀イオン濃度が30質量ppm以上1000質量ppm以下であることを特徴とする殺菌組成物。
【請求項2】
[B]銀粒子の平均粒子径が50nm以上500nm以下である請求項1に記載の殺菌組成物。
【請求項3】
[B]銀粒子の添加量が0.003質量%以上10質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の殺菌組成物。
【請求項4】
[C]殺菌剤をさらに含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の殺菌組成物。
【請求項5】
[C]殺菌剤が塩化ベンザルコニウム及びアクリノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の殺菌組成物。
【請求項6】
[C]殺菌剤の含有量が0.00001質量%以上0.05質量%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の殺菌組成物。
【請求項7】
[D]ハイドロゲル化合物をさらに含有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の殺菌組成物。
【請求項8】
[D]ハイドロゲル化合物が、カラギーナン、アルギン酸エステル、アルギン酸、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項7に記載の殺菌組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の殺菌組成物を含む医薬。

【公開番号】特開2012−153682(P2012−153682A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16784(P2011−16784)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(506240229)
【Fターム(参考)】