説明

殺虫スレッド

本発明による第1のタイプのフィラメントおよび第2のタイプのフィラメントを含む殺虫スレッド。第1のタイプのフィラメントは、第1のタイプのフィラメントのポリマーの材料中に、取り込まれた殺虫剤もしく共力剤または両方を有する。第2のタイプのフィラメントは、第2のタイプのフィラメントのポリマーの材料中に、取り込まれた殺虫剤もしく共力剤または両方を有する。第2のタイプのフィラメント中での殺虫剤または共力剤の内容物は、第1のタイプのフィラメント中での殺虫剤または共力剤の内容物と異なる。あるいは、スレッドは、殺虫剤および/または共力剤を有する第1の部分および第2の部分とともに押し出されたモノフィラメントである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、蚊帳および織物用として使用される、殺虫スレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
網の異なる殺虫剤処理およびそうした網の異なる用途が、従来技術、例えば、Skovmandによる国際公開第01/37662号パンフレットの網製品の一般的な処理、BauerおよびSkovmandによる国際公開第03/003827号パンフレットの柵としての適用、Vestergaard Frandsenによる国際公開第03/090532号パンフレットの保護カバーとしての適用に開示されている。
【0003】
蚊帳および殺虫剤織物の直面する問題の一つは、実地調査において明らかとなり、太陽光に暴露される場合、または一般的に熱に曝される場合に、蚊帳の性能が低下することを見いだした。長期間持続する性能を保つために、Vestergaard Frandsenによる国際公開第03/063587号パンフレットにおいて、繊維構造の内側に殺虫剤を取り込み、殺虫剤が繊維の表面に徐々に移動することが提案された。company Sumitomo(登録商標)による、登録商標Olyset Net(登録商標)を有する蚊帳は、ヤーンの中に取り込まれた殺虫剤を有するモノフィラメントポリエチレンヤーンを含む。
【0004】
一般的な基準において性能を高めるために、織物および網製品に共力剤を含ませることが提案されてきた。例えば、Hataipitisukによる米国特許出願公開第2007/0009563号明細書およびMooneyらによる国際公開第90/14006号パンフレットでは、PBOが殺虫剤繊維および織物における性能増強剤として提案されている。Koradinらによる国際公開第06/128867号パンフレットおよびKarlらによる国際公開第06/128870号パンフレットは、織物および網製品における共力剤としてのPBOを提案する。
【0005】
一般的に、殺虫剤に対する虫の代謝に伴い問題が増え、そしてピペロニルブトキシド(PBO)は反作用的耐性のために提案されてきた。野外スプレーとの関係で、PBOは、耐性を低下させるとして知られており、例えば、Rothamstedに譲渡された英国特許出願公開第2388778号明細書に開示されている。Samsonらによる米国特許第5503918号明細書は、テント織物中の殺虫剤の共力剤としてアミロペクチンを開示し、そしてYeadonらによる米国特許第3859121号明細書は、包装中の共力剤としてPBOの使用を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Vestergaard Frandsenらによる国際公開第03/063587号パンフレットに開示されたように、例えば、異なる殺虫剤がポリマーマトリックス中に取り込まれる場合、またはAlbrightによる国際公開第06/1247067号パンフレットに開示されたように、異なる殺虫剤がペットの首輪用ポリマーマトリックス中に共力剤とともに取り込まれる場合、1種の殺虫剤または共力剤の移動促進剤または移動阻害剤が、もう1種の殺虫剤の移動に影響する場合があるので、殺虫剤の移動は、制御が難しい場合がある。従って、異なる殺虫剤のある程度の放出が所望の場合、非常に望まれるにもかかわらず、これは達成が困難である。
【0007】
特に、蚊帳または他の形態の繊維性殺虫バリアーと関連して、異なる殺虫剤の制御された放出または共力剤と組み合わせた殺虫剤の制御された放出が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の目的は、殺虫剤と、別の殺虫剤および/または共力剤との組み合わせの放出が、よりよい方法で制御されている繊維性製品の製造方法を提供することである。
【0009】
この目的は、第1の断面部分および第2の断面部分を有する殺虫スレッドを用いて達成され、第1の部分は、第1の部分のポリマー材料に取り込まれた殺虫剤、昆虫殺菌剤(insect sterilizing agent)、昆虫病原物質(entomopathogen)もしくは共力剤またはそれらの組み合わせを有し、第2の部分には、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、および共力剤がないか、または第2の部分は、第2の部分のポリマー材料に取り込まれた、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせを有する。第2の部分中の殺虫剤または共力剤の内容物は、第1の部分中の殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、または共力剤またはそれらの組み合わせの内容物と異なる。
【0010】
例えば、第1の部分は、第1のタイプのフィラメントであり、一方、第2の部分は、第2のタイプのフィラメントである。この場合、殺虫スレッドは、本発明による第1のタイプのフィラメントおよび第2のタイプのフィラメントを含む。第1のタイプのフィラメントは、第1のタイプのフィラメントのポリマーの材料中に取り込まれた、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、または共力剤またはそれらの組み合わせを有する。第2のタイプには、殺虫剤がなく、昆虫殺菌剤がなく、昆虫病原物質がなく、そして共力剤がないか、または第2のタイプのフィラメントのポリマーの材料中に取り込まれた、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせを有する。第2のタイプのフィラメント中の、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせの内容物は、第1のタイプのフィラメント中の、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせの内容物と異なる。
【0011】
駆虫用真菌性バイオ殺虫剤(fungal biopesticide)の例が、Thomas and Read in Nature Reviews Microbiology、Vol.5、May 2007、p.377に記載されている。現在ではあるが、特に、真菌性昆虫病原物質が最も有用なようであり、あるいはまたはさらに、昆虫に感染するウイルス、バクテリアまたは原虫を適用できる。
【0012】
あるいは、第1の部分および第2の部分は、共押し出しフィラメントの部分であることができる。例えば、押出機は、スレッドの第1の側が第1の部分を構成し、そしてスレッドの第2の側が第2の部分を構成できるスレッドを押し出すように構成されていることができる。もう一つの例は、共押し出しスレッドであり、第1の部分が第2の部分を取り囲んでいる。第2の部分は、安定性を高めるコアとして使用できる。
【0013】
そうしたスレッドを提供することにより、第1の部分および第2の部分、例えば、あるタイプのフィラメント中での殺虫剤または共力剤の放出は、独立して調整できる。
【0014】
例えば、第1の部分および第2の部分は、異なる内容物の殺虫剤を有する。あるいは、またはさらに、第1の部分および第2の部分は、異なる内容物の共力剤を有する。別の代替として、またはさらに、第1の部分および第2の部分は、異なる内容物の昆虫病原物質を有する。さらなる代替として、またはさらに、第1の部分および第2の部分は、異なる内容物の昆虫殺菌剤を有する。
【0015】
「異なる内容物」の用語は、異なる量または異なるタイプをいう。
【0016】
本発明のある態様において、第1の部分、例えば、第1のタイプのフィラメントは、第1の移動速度および第1の殺虫剤性能を有する第1のタイプの殺虫剤、例えば、ピレスロイドを第1のタイプのフィラメント中に取り込んでいることができる。第2の部分、例えば、第2のタイプのフィラメントは、第2の移動速度を有する共力剤、例えば、PBOを第2のタイプのフィラメント中に取り込んでいることができる。最適な量の放出された殺虫剤および共力剤を達成するために、第1の移動速度および第2の移動速度は、移動阻害剤および促進剤が、スレッドの独立した部分中、例えば、独立したフィラメント中に、相互に干渉することなく存在するので、移動阻害剤または移動促進剤により、独立して調整できる。
【0017】
あるいは、第1の部分は、第1の移動速度および第1の殺虫剤性能を有する第1のタイプの殺虫剤を第1の部分中に取り込んでいることができる。第2の部分は、例えば、第1のタイプの殺虫剤に対して耐性がある虫を攻撃するために、第2のタイプの殺虫剤を第2の部分に取り込んでいることができる。これらの2つのタイプの殺虫剤の放出は、例えば、好適な移動促進剤または阻害剤によって、独立して調整できる。
【0018】
他の代替は、第1の部分および第2の部分中に異なるタイプの昆虫殺菌剤、および/または第1の部分および第2の部分中に異なる昆虫病原物質を含む。さらなる代替は、殺菌剤を1つの部分のみに、そしてまたは1つの部分もしくは他方の部分の中に昆虫病原物質を含む。
【0019】
さらなる代替として、第1の部分、例えば、第1のタイプのフィラメントは、第1のタイプのフィラメントの材料中に移動可能なように取り込んだ共力剤を含むことができる。第2の部分、例えば、第2のタイプのフィラメントは、なんら殺虫剤または共力剤を含まないが、ある所望の物理的特性をスレッドに与えるように使用される。もう一つの例は、殺虫剤を有さない安定性を高めるコアおよび共力剤を含んでいるコアを囲む外側部分を有する共押し出しスレッドである。スレッド全体は、所望の殺虫剤の特性を達成するために殺虫剤を用いて含浸されることができる。フィルムを用いた可能な含浸は、Skovmandによる国際公開第01/37662号パンフレットに開示されている。共力剤、例えば、PBOが、スレッドの表面に到達するために、含浸フィルムは、フィルムを通して共力剤の移動のために開放されていることが好ましい。本発明と関連して適用可能な代替殺虫剤は、Liuらによる国際公開第2006/092094号パンフレット、またはHataipitisukによる米国特許出願公開第2007/009563号明細書に開示されている。
【0020】
好ましい態様では、本発明によるスレッドは、第1のタイプのフィラメントに属する複数のフィラメントおよび第2のタイプのフィラメントに属する複数のフィラメントを有する単一のマルチフィラメントヤーンである。そうしたヤーンは、複数の開口を有する押し出し紡糸口金を通して押出機中での押し出しにより加工できる。第1のタイプのフィラメントのための材料は、複数の紡糸口金の開口の部分にかけて提供され、そして第2のタイプのフィラメントのための材料は、複数の開口の別の部分にかけて提供される。有利に、第1のタイプのフィラメントのための材料は、殺虫剤または共力剤の内容物を別として、第2のタイプのフィラメントの材料と同一である。
【0021】
押し出しのための適切な材料は、押し出しの間に、低溶融温度により、ポリプロピレンであり、この低溶融温度は、溶融したポリマー中で使用される殺虫剤および共力剤の蒸発または分解の低リスクを意味する。しかし、その低い可燃性および綿のような感触により、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)は、本発明によるスレッドが使用される織物及び網製品のための好ましい材料である。しかし、ポリエステルの250℃の溶融温度は、殺虫剤および共力剤の分解のリスクを意味する。
【0022】
共力剤は、ポリマー輸送スピンドルの前に、溶融したポリマーにチャネルを通して加えることができ、または熱いポリマーと殺虫剤/共力剤との間での非常に短い接触時間のみが望ましい場合には、押し出しノズルのちょうど上、または押し出しノズルの中においてさえ加えることができる。特に、その温度への暴露の時間が短いままである場合、充分な量のPBOが、ポリエステルに取り込まれることができることを実験的に確認した。
【0023】
共力剤のこの「充分な量」がどのくらいであるかは、共力剤に依存し、そして受け入れることのできる損失のレベルに依存する。ある場合には、1%残った共力剤が依然長期間の反作用的殺虫剤耐性への有効量の範囲内にある場合には、99%の損失を受け入れることができる。他の場合には、90%未満の損失率を受け入れることができる。ポリエステルでは、250℃超の押し出し温度であるにもかかわらず、50%超の共力剤がそこなわれていないままであることを実験的に確認した。
【0024】
さらに、押し出されたポリマーは、押し出しノズルから近距離の下流で、例えば、冷たい空気ジェットにより、積極的に冷却されることができる。
【0025】
他の態様では、スレッドは、異なるタイプのヤーンの組み合わせであり、第1のヤーンが、第1のタイプのフィラメントのみからなり、そして第2のヤーンが、第2のタイプのフィラメントのみからなる。例えば、スレッドは、第1のヤーンおよび第2のヤーンのみの撚り等の組み合わせである。
【0026】
異なる組み合わせがあり、例えば、第1のヤーンはモノフィラメントである。ポリエチレンでできた殺虫剤モノフィラメントは、上記導入部に記載したOlyset Net(登録商標)で公知である。第2のヤーンはまたモノフィラメント、例えば、共力剤を有するポリエチレンモノフィラメントであることができるであろう。あるいは、モノフィラメントヤーンは、マルチフィラメントヤーンと組み合わせることができる。ヤーンは、異なる数のフィラメントで撚るだけでなく、材料が異なることができる。例えば、硬質ポリエステルヤーンは、それぞれのヤーンの利点の組み合わせを達成するために、マルチフィラメントポリエステルヤーンを撚り技術によって組み合わせることができる。
【0027】
本発明によるスレッドは、2つのタイプのフィラメントに限定されず、またさらなるタイプのフィラメントを含むことができる。さらなる態様では、さらなるタイプのフィラメント中の殺虫剤または共力剤の内容物は、第1のタイプのフィラメントおよび第2のタイプのフィラメントの殺虫剤または共力剤の内容物と異なる。
【0028】
単一のマルチフィラメントヤーンの撚り技術において、および押し出し技術において、共力剤の量に対する殺虫剤の量は、独立して調整できる。撚り技術において、第2のヤーンの厚さに対する第1のヤーンの厚さは、異なる撚り技術において変えることができる。マルチフィラメントヤーンの押し出しにおいて、押出機における相乗作用ポリマーの量に対する殺虫ポリマーの量は、押し出し紡糸口金における開口の所定の数にわたるように変えることができる。結果は、相乗作用のフィラメントの数に対する殺虫フィラメントの数の調整となる。共押し出しモノフィラメントの場合、第1の部分と第2の部分との間の断面積の比は、所望の長期間の放出速度に有利に対応するように調整できる。
【0029】
ある態様での先の記載から分かるように、第1のタイプのフィラメントは、殺虫剤を含むが、共力剤を含まないことができ、そして第2のタイプのフィラメントは、共力剤を含むが、殺虫剤を含まないことができるか、または少なくとも、第1のタイプのフィラメントの殺虫剤を含まないことができる。しかし、第2のタイプのフィラメントにおいて他の代替物、例えば、第1のタイプにおけるのと異なるタイプおよび/もしくは組み合わせの殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、ならびに/もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせが可能である。
【0030】
さらなる態様では、スレッドは、第1の殺虫剤と異なる第2の殺虫剤もしくは第3の殺虫剤、または殺虫剤のさらなる組み合わせを含む、第3のタイプのフィラメントを含む。また、第3のタイプのフィラメントは、異なるタイプの昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、もしくは共力剤またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0031】
上記に記載したように、共押し出しが、本発明によるスレッドを提供するために使用できる。本発明によるスレッドは、モノフィラメント中に第1の部分および第2の部分を有する共押し出しモノフィラメントであることができ、または他のフィラメント、例えば、モノフィラメントまたはマルチフィラメントの中に共押し出しフィラメントを含むことができる。異なる共押し出し技術を適用でき、例えば、第1の部分は、第2の部分の周りのシェルであり、または第1の部分および第2の部分は、モノフィラメントの中心からモノフィラメントの周縁に伸びている。第1の部分および第2の部分は、同じポリマーでできていることができ、またあるいは、異なるポリマーを含むことができる。また、既に上記に記載したように、例えば、殺虫剤耐性に対抗するためにまたは異なる殺虫剤に異なる感受性を有する虫を駆除するために、第1の部分および第2の部分は、異なる殺虫剤を含むことができる。あるいは、第1の部分は、第1の殺虫剤を含むが共力剤を含まず、そして第2の部分は、共力剤、例えばPBOを含み、殺虫剤を有するかまたは有さない。
【0032】
さらに、上記に記載したように、第1の部分および第2の部分は、異なる昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、共力剤またはそれらの組み合わせを含む。
【0033】
スレッドのさらなる部分は、異なる試薬を含むことができる。例えば、1つの部分は、共力剤を含むことができ、別の部分は、殺虫剤を含むことができ、第3の部分は、昆虫病原物質を含むことができ、そして第4の部分は、殺菌剤を含むことができる。あるいは、スレッドは、これらの4種の試薬のうち3種のみを含むことができる。
【0034】
スレッドの殺虫剤を部分的に保護するために、スレッドは、有利に、UV劣化からの殺虫剤の保護のための紫外線保護材を含む。
【0035】
本発明によるスレッドの典型的な使用は、殺虫バリアー、例えば、蚊帳、および種々の織物または編物または不織物を含む。別の用途は、Dumuria織物または網製品、特に、テクスチャライズド(texturised)織物である。商業的に、これらは、商標PermaNet(登録商標)Dumuriaの下で入手可能である。
【0036】
他の使用は、BauerおよびSkovmandによる国際公開第03/003827号パンフレットに開示されたような柵、例えば、Vestergaard Frandsenにより国際公開第03/090532号パンフレットに開示されたような保護カバーとしての用途、または例えば、Vestergaard Frandsenによる国際公開第06/024304号パンフレットに開示されたようなエアークリーニングネット(air cleaning net)を含む。
【0037】
先の記載から既に明らかなように、「共力剤」の用語は、1種の共力剤または複数種の共力剤をいい、この複数の共力剤は、混合物であることができるが、混合物である必要がない。「殺虫剤」の用語は、1種の殺虫剤または複数種の殺虫剤を含み、この複数の殺虫剤は、混合物であることができるが、混合物である必要はない。例えば、ピレスロイドは、耐性を有する虫も駆除するために、カルバメートまたは有機ホスフェートと混合できる。
【0038】
材料に取り込まれる殺虫剤および/または共力剤に加えて、材料は、他の関連性のある成分、例えば、静電気を防止するための伝導度向上剤、難燃剤、汚れ防止剤、防汚剤、さらに殺生剤、顔料および染料を材料中に取り込むか、または材料の表面上に含浸されていることができる。
【0039】
好ましくは、本発明に関連する殺虫剤は、ピレスロイド、好ましくはデルタメトリンまたはペルメトリンであるが、国際公開第01/37662号パンフレットにリストとして開示された他のピレスロイドも適用できる。しかし、本発明も同様に、含浸のための組成物中に、カルバメートまたは有機ホスフェートと関連して適用される。虫除けの例をまた含むさらに広範な可能な殺虫剤のリストは、国際公開第01/37662号パンフレットまたは国際公開第06/128870号パンフレット中に見いだされる。
【0040】
網が大量に(mass campaigns)使用される場合、代替または補助殺虫剤はまた、不妊効果を有する殺菌剤であることができ、従って蚊を殺菌し、そして次世代の蚊を回避する。そうした殺虫剤は、ベンゾイル尿素基またはトリアジンで作られていることができる。
【0041】
さらなる可能な組み合わせは、例えば、ピレスロイドと組み合わせた、国際公開06/127407第号パンフレットに開示されたメタフルミゾン、国際公開第06128870第号パンフレットに開示されたN−アリールヒドラジン、または国際公開第06128867第号パンフレットに開示された1−フェニルトリアゾールの誘導体を含む。
【0042】
上記のPBO以外の共力剤は、スルホキシド、トロピタ−ル、ブカルポラート、エチオン、プロフェノホス、またはジメトエート、ピペロニルシロネン(Piperonyl Cylonene)、TPP、マレイン酸ジエチル、NIA−16388(NIA)、S−421、MGK−264(ビシクロヘプテンジカルボキシイミド)、S、S、S−トリブチルホスホチリホスホロトリチオアート(DEF)、−N−オクチルビシクロヘプテンジカルボキシアミド、セサミン、セサモリン、またはセサメックスである。
【0043】
さらなる代替として、本発明によるスレッドは、ポリマーマトリックス中に取り込まれた第1の殺虫剤、およびさらなる殺虫剤フィルム、例えば、別の殺虫剤を含むフィルムを備えている。スレッド中での共力剤および/または殺虫剤の移動の場合、マトリックス中での共力剤および/または殺虫剤の移動速度ならびにさらなる共力剤または殺虫剤の移動速度を考慮することは重要である。例えば、これは、移動促進剤および移動阻害剤を選択的に働かせる適切な選択によって制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明は、図を参照してさらに詳細に説明されるであろう、
【図1】図1は、2つの異なるモノフィラメントヤーンを有する本発明によるスレッドの具体的な説明であり;
【図2】図2は、移動する殺虫剤を有する第1のヤーンを具体的に示し;
【図3】図3は、1つのモノフィラメントヤーンおよび1つのマルチフィラメントヤーンを有する本発明によるスレッドの具体的な説明であり;
【図4】図4は、マルチフィラメントヤーンであるスレッドの具体的な説明であり;
【図5】図5は、押し出し工程の具体的な説明であり、
【図6】図6は、異なるタイプのヤーンおよび殺虫剤被膜を有する本発明によるスレッドの具体的な説明であり、
【図7】図7は、スレッドの共押し出しを具体的に説明し、
【図8】図8は、種々のタイプの共押し出しスレッドを具体的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1において、本発明によるスレッド1が具体的に説明される。スレッドは、共にスレッドを形成する第1のモノフィラメント2および第2のフィラメント3を含む。図2に示した様に、第1のスレッド2は、スレッド2中に移動可能なように取り込まれた、殺虫剤4、昆虫殺菌剤、および/または昆虫病原物質、および/または共力剤を含む。殺虫剤4は、スレッド2の内部からスレッドの表面5に移動し、これは、矢印6により具体的に説明されている。スレッドの表面上にいったん位置すると、殺虫剤4は、虫により取られることができる。第2のスレッド3は、第2の殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、または共力剤を含むことができる。
【0046】
図3は、第1のヤーン7が、モノフィラメントである第2のヤーン3と組み合わせたマルチフィラメントヤーンである、さらなる態様を具体的に示す。
【0047】
図4aおよび図4bにおいて拡大された形態は、殺虫剤を含む多数の第1のタイプのフィラメント9および共力剤を含む多数の第2のタイプのフィラメント10を有する単一のマルチフィラメントヤーン8であるスレッドを具体的に示す。
【0048】
そうしたマルチフィラメントは、図5中で具体的に説明されたような押し出しによって生産できる。押出機11において、ピストン12は、内側ハウジング14から、そして開口24を通して、溶融したポリマー13を押す。1つの供給管18から、殺虫剤17が、溶融したポリマー13中に供給され、そして第2の供給管15から、共力剤16が溶融したポリマー中に供給される。殺虫剤および共力剤の場所が異なることにより、より低い流れ20で押し出されたポリマーは、共力剤を含み、そしてより高い流れ19で押し出されたポリマーは、殺虫剤を含む。多くの開口24が、多数のフィラメントを有するマルチフィラメントを同時に生産するために提供される。区分壁23は、殺虫剤17と共力剤16との混合を防止することができる。
【0049】
あるいは、具体的に説明されていないが、しかし、第1の押出機のキャビティーからノズルに殺虫剤を有する第1の溶融したポリマーを、そしておよび第2の押出機のキャビティーからノズルに、共力剤を有する第2の溶融したポリマーを提供できる。2種のポリマーは、同じノズルから2種のタイプのマルチフィラメントを提供するために、ノズルの異なる部分に加えることができる。共力剤に代えてまたは共力剤に加えて、昆虫殺菌剤または昆虫病原物質を含むことができる。
【0050】
図6は、多くのヤーンを有するスレッド1、第1の殺虫剤を含むマルチフィラメントヤーンである第1のヤーン7、共力剤を含む第2のヤーン3、および殺虫剤または共力剤を有さないが、物理的特性、例えば、高められた強度をヤーンに加える第3のヤーン21を具体的に示す。スレッド1は、さらなる殺虫剤を含み、そして共力剤および第1の殺虫剤がフィルム22を通して移動できる。洗浄保護フィルム22で被覆されている。
【0051】
図7は、ポリマー17を含む1つの部分32および共力剤16を有する第2の部分33を有するモノフィラメント31のための共押出機30を具体的に示す。殺虫剤17を含む溶融したポリマー34は、第1の管35を介して圧力を供給され、そして共力剤16を含む溶融したポリマー36は、第2の管37を介して圧力を供給されている。ノズル39に伸びる区切り壁38は、2つの異なる溶融したポリマー32、33が押し出し前に混合することを防ぐ。
【0052】
2つの半断面を用いて図8a中で具体的に説明されたように、共押し出し方法は、モノフィラメント40を提供するために使用でき、第1の半分41は、殺虫剤17を含み、そして第2の半分42は、共力剤16を含む。モノフィラメントは、図8bなどに具体的に説明するように、2超の、例えば4つの断面部分を含むことができる。
【0053】
図8c中で具体的に説明したように、モノフィラメント40'は、フィラメント40'のための例えば、特別な機械的な特性を有する中央のコアを構成する第2の部分42'を取り囲む、第1の部分41'を含むことができる。コア42'は、第1の部分41'を通ってフィラメントの表面に移動する6'共力剤16を含む。同様に、殺虫剤17は、モノフィラメント40'の表面に移動する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の断面部分および第2の断面部分を有する、殺虫スレッド、
該第1の部分は、該第1の部分のポリマーの材料中に取り込まれた、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせを有し、該第2の部分には、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質、および共力剤がないか、または該第2の部分は、該第2の部分のポリマーの材料中に取り込まれた、殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせを有し、該第2の部分中の殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせの内容物は、該第1の部分中の殺虫剤、昆虫殺菌剤、昆虫病原物質もしくは共力剤、またはそれらの組み合わせの内容物と異なる。
【請求項2】
該第1の部分が、第1のタイプのフィラメントであり、そして該第2の部分が、第2のタイプのフィラメントである、請求項1に記載の殺虫スレッド。
【請求項3】
該スレッドが、該第1のタイプのフィラメントの複数のフィラメントを有するマルチフィラメントヤーンを含む、請求項2に記載の殺虫スレッド。
【請求項4】
該マルチフィラメントヤーンがまた、該第2のタイプのフィラメントの複数のフィラメントを有する、請求項3に記載の殺虫スレッド。
【請求項5】
該マルチフィラメントヤーンが、該第1のタイプのフィラメントに属する複数のフィラメントおよび該第2のタイプのフィラメントに属する複数のフィラメントを有する、単一のマルチフィラメントである、請求項4に記載の殺虫スレッド。
【請求項6】
該スレッドが、第1のヤーンと第2のヤーンとの組み合わせであり、該第1のヤーンが、該第1のタイプのフィラメントのみからなり、そして該第2のヤーンが、該第2のタイプのフィラメントのみからなる、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項7】
該第2のヤーンが、モノフィラメントである、請求項6に記載の殺虫スレッド。
【請求項8】
該スレッドが、該第1のタイプのフィラメントの第1のモノフィラメントヤーンおよび該第2のタイプのフィラメントの第2のモノフィラメントヤーンの撚られたヤーンである、請求項1または2に記載の殺虫スレッド。
【請求項9】
さらなるタイプのフィラメント中の殺虫剤または共力剤の内容物が、該第1のタイプのフィラメントおよび第2のタイプのフィラメントの殺虫剤または共力剤の内容物と異なる、少なくとも1種のさらなるタイプのフィラメントを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項10】
該第1のタイプのフィラメントが、第1の殺虫剤を含むが共力剤を含まず、そして該第2のタイプのフィラメントが、共力剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項11】
該第2のタイプのフィラメントが、該第1の殺虫剤を含まない、請求項9に記載の殺虫スレッド。
【請求項12】
該第2のタイプのフィラメントが、該第1の殺虫剤と異なる第2の殺虫剤を含む、請求項10に記載の殺虫スレッド。
【請求項13】
該スレッドが、該第1の殺虫剤と異なる殺虫剤を含む第3のタイプのフィラメントを含む、請求項10、11、または12のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項14】
単数種または複数種の殺虫剤および該共力剤が、該材料の内側から該材料の表面への緩やかな移動のために、該ポリマーの材料中に移動可能なように取り込まれている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項15】
該ポリマーの材料が、UV劣化からの該殺虫剤の保護のためのUV保護剤を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項16】
該スレッドが、殺虫フィルムにより被覆されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項17】
該材料が、ポリエステルである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項18】
該第1のタイプのフィラメントが、ピレスロイドを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項19】
該第2のタイプのフィラメントが、PBOを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項20】
該スレッドが、モノフィラメント中に、該第1の部分および該第2の部分を有する共押し出しされたモノフィラメントを含む、請求項1に記載の殺虫スレッド。
【請求項21】
該第1の部分が、該第2の部分の周りのシェルである、請求項20に記載の殺虫スレッド。
【請求項22】
該第1の部分および該第2の部分が、該モノフィラメントの中心から該モノフィラメントの周縁に伸びている、請求項20に記載の殺虫スレッド。
【請求項23】
該第1の部分および該第2の部分が、異なるポリマーを含む、請求項20に記載の殺虫スレッド。
【請求項24】
該第1の部分および該第2の部分が、異なる殺虫剤を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項25】
該第1の部分が、第1の殺虫剤を含むが、共力剤を含まず、そして該第2のタイプのフィラメントが、共力剤を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項26】
該第2の部分が、該第1の殺虫剤を含まない、請求項25に記載の殺虫スレッド。
【請求項27】
該第2の部分が、該第1の殺虫剤と異なる第2の殺虫剤を含む、請求項26に記載の殺虫スレッド。
【請求項28】
該第2の部分が、殺虫剤を含まない、請求項25に記載の殺虫スレッド。
【請求項29】
該共力剤がPBOである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項30】
該スレッドが、共押し出しされたモノフィラメントである、請求項20〜29のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項31】
該スレッドが、少なくとも1つの共押し出しされたモノフィラメントを含み、そして少なくとも1つのマルチフィラメントを含む、請求項20〜29のいずれか一項に記載の殺虫スレッド。
【請求項32】
該モノフィラメントが、該マルチフィラメントと異なるポリマーでできている、請求項31に記載の殺虫スレッド。
【請求項33】
該モノフィラメントが、ポリエチレンでできている、請求項32に記載の殺虫スレッド。
【請求項34】
該マルチフィラメントが、ポリエステルでできている、請求項32または33に記載の殺虫スレッド。
【請求項35】
殺虫バリアーのための、請求項1〜34のいずれか一項に記載のスレッドの使用。
【請求項36】
該殺虫バリアーが、蚊帳である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
マルチフィラメントヤーンの生産方法であって、該方法が、複数の開口を有する押し出し紡糸口金を通して押出機中でマルチフィラメントを押し出すことを含み、第1のタイプのフィラメントのための材料が、該複数の紡糸口金の開口の部分にかけて供給され、そして第2のタイプのフィラメントのための材料が、該複数の開口の別の部分にかけて供給される、方法。
【請求項38】
該第1のタイプのフィラメントのための材料が、殺虫剤または共力剤の内容物は別として、該第2のタイプのフィラメントのための材料と同一である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
該第1のタイプのフィラメントのための該材料および該第2のタイプの材料のための材料が、ポリエステルである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
該第1のタイプのフィラメント中での第1の殺虫剤の第1の移動速度および第2のタイプのフィラメント中での第2の殺虫剤の第2の移動速度を予め定める工程、ならびに該予め定めた第1の移動速度および第2の移動速度に従って、該第1の殺虫剤および該第2の殺虫剤の移動速度を調整するために、該第1のタイプのフィラメントまたは該第2のタイプのフィラメント中または両方のタイプのフィラメント中に移動阻害剤または促進剤を提供する工程を含む、請求項37、38、39のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【公表番号】特表2010−532325(P2010−532325A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513647(P2010−513647)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000319
【国際公開番号】WO2009/003468
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(508310263)ベステルガールド フランドセン ソシエテ アノニム (8)
【Fターム(参考)】