説明

殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法

【課題】殻付きゆで卵又は殻付き生卵に、容易に甘味を付与する方法を提供する。
【解決手段】殻付き茹で卵又は殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬するか、又は、殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させ、茹でることにより、殻付きゆで卵又は殻付き生卵に甘味を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法、詳細には、殻付き茹で卵又は殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬するか、又は、殻付き生卵をスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させ、茹でることを特徴とする、殻付き茹で卵への甘味付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、駅の売店やコンビニエンスストアなどでは、殻付きの味付け茹で卵として、塩味をつけたものが販売されている。
これは、卵の殻があることによる携帯のしやすさや、殻をむいた後に塩をつける手間を省いたものである。
殻付きの茹で卵に、塩味などをつける方法として、例えば、特許文献1には、高濃度の食塩水と調味料とを混合し、煮沸して冷却した溶液の中に、別途に真水から茹でた殻付の卵を長時間つける、味付け茹で卵の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、原料卵をボイルしてボイル卵を得て、食塩水が溜められた加圧タンク内に卵を入れ加圧することで卵を味付けする、味付け茹で卵の製造方法が記載されている。
さらに、特許文献3には、殻付き茹で卵をプラスチック製の小袋に収納し、その袋に塩味や、バニラなどのフレーバーなどの調味液を入れて封をし、その状態で数日以上放置する、殻付き味付け茹で卵の製造方法が記載されている。
【0003】
スクラロース、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウムは、いずれもショ糖の数百倍の甘味を有しており、高甘味度甘味料として、種々の飲食品の甘味付けや、風味の向上などに用いられている。
例えば、特許文献4には、カットフルーツを、スクラロースを含有する保存液中に浸漬することにより、カットフルーツの風味を改良する方法が記載されている。
また、特許文献5には、スクラロースを、卵を使用する食品に添加することにより、食品中の卵の風味の向上させることが記載されている。
しかしながら、これらの特許文献には、殻付き茹で卵又は殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬するか、又は、殻付き生卵をスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させ、茹でることで、殻付き茹で卵に甘味を付与することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−274904号公報
【特許文献2】特開平7−255430号公報
【特許文献3】特開2010−268726号公報
【特許文献4】特開2008−99674号公報
【特許文献5】特開平8−196240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、殻付きの茹で卵に塩味などをつけることはされているが、甘味をつけることはあまりされておらず、味のバリエーションが少ない。
特許文献3には、殻付き味付け茹で卵を製造する際に、バニラやイチゴなど香料成分を用いる場合には、アルコールや砂糖、ステビアなどの植物由来の甘味料、塩などに加えて使用することが記載されているが、砂糖やステビアでは、殻付き茹で卵に十分な甘味を付与することができない。
本発明は、殻付き茹で卵又は殻付き生卵に、容易に甘味を付与することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するために種々の甘味料を用いて鋭意研究を重ねていたところ、高甘味度甘味料の一種であるスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを用いて、殻付き茹で卵又は殻付き生卵を、これらの高甘味度甘味料を含有する水溶液中に浸漬するか、又は、殻付き生卵をこれらの高甘味度甘味料を含有する水溶液中に浸漬させ、茹でることにより、殻付き茹で卵や殻付き生卵に簡単に甘味が付与できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に掲げる殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法に関するものである。
項1.殻付き茹で卵又は殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬することを特徴とする、殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法。
項2.殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させ、茹でることを特徴とする、殻付き茹で卵への甘味付与方法。
項3.水溶液中のスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウム濃度が0.01〜5質量%である、項1又は2記載の殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法。
項4. スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液に、さらに食塩及び/又はフレーバーを含有する、項1〜3に記載の殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法。
【発明の効果】
【0008】
殻付き茹で卵又は殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬するか、又は、殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させ、茹でることによって、殻付き茹で卵又は殻付き生卵に簡単に甘味を付与することができる。
そのため、甘味という味のバリエーションをつけた殻付き茹で卵や殻付き生卵を供給することができる。さらに、スクラロースを用いた場合には、茹で卵の硫黄臭を、同時にマスキングできるという効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、殻付き茹で卵又は殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬するか、又は、殻付き生卵をスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させ茹でることによる、殻付き茹で卵への甘味付与方法に関するものである。
本発明に用いるスクラロースは、ショ糖の約600倍の甘味を有する高甘味度甘味料であり、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンスイートSU100等を挙げることができる。
また、本発明に用いるサッカリンナトリウムは、ショ糖の約300倍の甘味を示す高甘味度甘味料であって、商業的に入手することができ、例えば、大和化成株式会社製のサッカリンナトリウムA-1等を挙げることができる。
さらに、本発明に用いるアセスルファムカリウムは、ショ糖の約200倍の甘味を示す高甘味度甘味料であって、商業的に入手することができ、例えば、キリン協和フーズ株式会社製のサネット等を挙げることができる。
【0010】
殻付き茹で卵に甘味を付与するには、一例として、水に卵を入れて加熱し、沸騰してから数分から20分間程度保持して、茹で卵を作製する。
なお、この際、茹で卵は固茹ででも、半熟であっても良い。
次いで、得られた茹で卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを常温の水に溶解した水溶液に浸し、冷蔵庫(4℃)に移して、一晩程度静置させておくことで、容易に甘味を付与することができる。
水溶液中のスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムの濃度は、0.01〜5質量%、好ましくは0.02〜2質量%である。
スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムの濃度が0.01質量%より低濃度であると、甘味の付与が十分ではなく、また5質量%より高濃度にしても、卵の表面のみに強い甘味がつきすぎて、いずれも好ましくない。
【0011】
別法として、殻付きの生卵を、一例として、前記濃度のスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させて加熱し、数分から20分間程度茹でた後、そのまま茹で汁に浸したままで、一晩冷蔵庫(4℃)に静置しておくことによっても、容易に甘味を付与することができる。
【0012】
さらに、殻付き生卵についても同様に、前記濃度のスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させた後、冷蔵庫(4℃)に移して、一晩程度静置させておくことで、容易に甘味を付与することができる。
【0013】
スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液には、食塩、醤油、味噌、カレー、ガーリック、和風ダシ、わさび、とうがらし、抹茶、コーヒー、紅茶などや、バニラ、ストロベリー、オレンジ、レモン、グレープ、メロン、ミント、チョコレート、プリン、コーヒーなどのフレーバーを、溶解し添加しても良い。
これらを添加することで、甘味と同時に、塩味や醤油味などや、フレーバーの香気も、殻付き茹で卵や殻付き生卵に付与することができる。
一例として、水溶液中の食塩濃度は、10〜30質量%、フレーバー濃度は、0.5〜5質量%が好ましい。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の内容を以下の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の記載において、「%」は質量%を示し、「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製を示す。
【0015】
実施例1
水に卵を入れて加熱し、沸騰してから9分間保持して、殻付き茹で卵を作製した。
得られた殻付き茹で卵を、熱が冷めないうちに常温の表1の各種甘味料溶液に浸し、冷蔵庫(4℃)に移して、一晩静置した。
各甘味料の濃度は、スクラロース0.5%濃度と同等の甘味となるように調製した(砂糖については、30%とした)。
評価は、官能により、甘味が十分付与されているものを5点、甘味がないものを0点として、6段階で行った。結果を表1に示す。
【0016】
【表1】

注1:ステビア抽出物100%製剤(守田化学株式会社製)
注2:ネオテーム2%製剤(大日本住友化学株式会社製)
スクラロース、サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムを用いた場合に、甘味の付与が認められたが、これらの中でスクラロースを用いた場合に、特に十分な甘味付与が認められた。
【0017】
実施例2
表1の各種甘味料溶液に、殻付き生卵を浸漬させて9分間茹でた後、そのまま茹で汁に浸したまま、一晩冷蔵庫(4℃)にて静置して、殻付き茹で卵を作製した。
評価は、実施例1と同様に行ったが、結果は全ての甘味料で表1とほぼ同じであり、実施例1と同様に、スクラロース、サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムを用いた場合に、甘味の付与が認められた。
【0018】
実施例3
殻つきの生卵を、常温のスクラロースの1%溶液に浸し、冷蔵庫(4℃)に移して、一晩静置した。
結果は、スクラロース水溶液に浸漬することによって、実施例1の殻付きの茹で卵に付与された甘味の強さに比べるとやや弱いが、殻付きの生卵にも十分な甘味が付与できた。
【0019】
実施例4
水に卵を入れ、加熱し、沸騰してから9分間保持し、茹で卵を作製した。
得られた茹で卵を、熱が冷めないうちに、スクラロース0.5%、及び表2の各フレーバー1%を含有する水溶液に浸し、冷蔵庫(4℃)に移して、一晩静置した。
甘味とともに、フレーバーも卵に浸透するか評価を行い、結果を表2に示した。
【0020】
【表2】

【0021】
実施例5
20%の食塩水に、スクラロースを添加又は添加しない調味液で卵を9分間茹でた後、そのまま茹で汁に浸して、一晩冷蔵庫(4℃)にて静置した。
甘味の評価は、実施例1と同様に行い、さらに塩味がどのように付与されるか評価を行った。結果を表3に示す。
【0022】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明により、殻付き茹で卵又は殻付き生卵に簡単に甘味を付与することができるので、食品工業において有用である。























【特許請求の範囲】
【請求項1】
殻付き茹で卵又は殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬することを特徴とする、殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法。
【請求項2】
殻付き生卵を、スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液中に浸漬させ、茹でることを特徴とする、殻付き茹で卵への甘味付与方法。
【請求項3】
水溶液中のスクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウム濃度が0.01〜5質量%である、請求項1又は2記載の殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法。
【請求項4】
スクラロース、サッカリンナトリウム又はアセスルファムカリウムを含有する水溶液に、さらに食塩及び/又はフレーバーを含有する、請求項1〜3に記載の殻付き茹で卵又は殻付き生卵への甘味付与方法。





















【公開番号】特開2013−27364(P2013−27364A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166567(P2011−166567)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】