説明

母乳搾乳器

【課題】負圧が過大になって乳頭トラブルが発生するのを防止できる母乳搾乳器10を提供すること。
【解決手段】両端を開口にした外筒12と、両端を開口にすると共に一端開口11aを、乳首を覆うように乳房に圧接できるラッパ状に形成した内筒11を備え、外筒12に内筒11を気密に、かつ出入可能に嵌合して外筒12と内筒11で母乳貯留部16を区画し、外筒12の一端開口から内筒11のラッパ口11aを突出させ、外筒12の他端開口12bに母乳貯留部16の外部から内部への空気の流入を阻止すると共に、母乳貯留部16の内部から外部への空気の流出を許容する主チェック弁13cを設けた母乳搾乳器10であって、母乳貯留部16の内部から外部への空気の流出を阻止し、母乳貯留部16が所定負圧以上になると開いて外気が母乳貯留部内へ流入するのを許容する副チェック弁13gを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母乳搾乳器に関する。
【背景技術】
【0002】
母乳搾乳器の一形式として、実公昭55−28271号公報には両端を開口にした外筒と、両端を開口にすると共に一端開口を乳首に被せることのできるラッパ状に形成した内筒を備えた搾乳器が開示されている。この搾乳器では、外筒に内筒を気密に、かつ出入可能に嵌合し、外筒の一端開口から内筒のラッパ口を突出させている。そして、外筒の他端開口に内筒の外部から内部への空気の流入を阻止し、内筒の内部から外部への空気の流出を許容するチェック弁を設けている。
【0003】
上記した従来の搾乳器によれば、内筒のラッパ口を、乳首を覆うように乳房に圧接し、外筒を引っ張って内筒を外筒から引き出すと、内筒と外筒で区画される母乳貯留部の容積が拡大してここに負圧が発生する。この負圧が乳首に作用して母乳が母乳貯留部へ吸引される。内筒を外筒から引き出すとき、チェック弁は閉じて外部から母乳貯留部へ空気が流入するのを阻止するように作用する。
【0004】
続いて、引き出した内筒を外筒に押し込むと、チェック弁が開き、母乳が母乳貯留部からチェック弁を通って外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭55−28271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の母乳搾乳器では、母乳貯留部に発生する負圧を乳首に作用させて母乳を吸引しているが、負圧が大き過ぎると、乳頭が充血して炎症を起こしたり、乳管が延びて細くなり乳汁の流通を阻害し搾乳できなくなる等の乳頭トラブルの原因となるという問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑み、負圧が過大になって乳頭トラブルが発生するのを防止できる母乳搾乳器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、母乳貯留部に発生した負圧を乳首に作用させて母乳を乳首から母乳貯留部に吸引し、母乳貯留部の外部から内部への空気の流入を阻止し、母乳貯留部の内部から外部への空気の流出を許容する主チェック弁を通して母乳貯留部から母乳を外部へ排出するように構成した母乳搾乳器であって、母乳貯留部の内部から外部への空気の流出を阻止し、母乳貯留部が所定負圧以上になると開いて外気が母乳貯留部内へ流入するのを許容する副チェック弁を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、両端を開口にした外筒と、両端を開口にすると共に一端開口を、乳首を覆うように乳房に圧接できるラッパ状に形成した内筒を備え、外筒に内筒を気密に、かつ出入可能に嵌合して外筒と内筒で母乳貯留部を区画し、外筒の一端開口から内筒のラッパ口を突出させ、外筒の他端開口に母乳貯留部の外部から内部への空気の流入を阻止すると共に、母乳貯留部の内部から外部への空気の流出を許容する主チェック弁を設けた母乳搾乳器であって、前記母乳貯留部の内部から外部への空気の流出を阻止し、母乳貯留部が所定負圧以上になると開いて外気が母乳貯留部内へ流入するのを許容する副チェック弁を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の母乳搾乳器において、前記主チェック弁を、軟質ゴムから成る中空突起部を備え、中空突起部の先端に主スリットを形成したキャップで構成し、該キャップで外筒の他端開口を覆蓋し、内筒を外筒から引き出すとき前記主スリットが閉じ、内筒を外筒に押し込むとき前記主スリットが開くように構成し、前記副チェック弁を、前記主チェック弁に形成した主チェック弁の内外を導通する主空気通路と、主空気通路の内端開口を覆蓋するように主空気通路外側へ突出形成した断面半円形の中空凸部で構成し、中空凸部の頂部に母乳貯留部が所定負圧以上になると開く副スリットを形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の母乳搾乳器において、前記主チェック弁にフランジを形成し、前記外筒の他端開口に、哺乳瓶類の瓶口に締め付けることのできるリングねじ蓋を設け、リングねじ蓋を瓶口に締め付けたときリングねじ蓋の裏面と瓶口の上端部によって前記フランジが挟持されるように構成し、かつフランジに瓶口の内外を連通する副空気通路を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、母乳貯留部が所定負圧以上になると、副チェック弁が開いて母乳貯留部へ外気が導入されるので、母乳貯留部の負圧が低減する。これにより、過大な負圧が乳房や乳首に作用して乳頭トラブルが発生するのを防止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、内筒のラッパ口を、乳首を覆うように乳房に圧接し、内筒を外筒から引き出すと、内筒と外筒で区画される母乳貯留の容積が拡大してここに負圧が発生する。この負圧が乳首に作用して母乳が母乳貯留部へ吸引される。内筒を外筒から引き出すとき、主チェック弁は外部から母乳貯留部へ空気が流入するのを阻止するように作用する。
続いて、引き出した内筒を外筒に押し込むと、主チェック弁が開き、母乳が母乳貯留部から主チェック弁を通って外部へ排出される。
しかして、本発明によれば内筒を外筒から引き出したとき母乳貯留部に発生する負圧が所定負圧以上になると、副チェック弁が開いて母乳貯留部へ外気が導入されるので、母乳貯留部の負圧が低減し、所定負圧を越えることはない。そのため、過大な負圧が乳房や乳首に作用して乳頭トラブルが発生するのを防止できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、内筒を外筒から引き出して母乳を乳首から母乳貯留部内へ吸引するとき、キャップ状の主チェック弁の主スリットは閉じていて外部から母乳貯留部へ空気が流入するのを阻止するように作用する。
一方、引き出した内筒を外筒に押し込んで母乳貯留部から母乳を排出するとき、主チェック弁の主スリットが開き、母乳が母乳貯留部から主スリットを通って外部へ排出される。
内筒を外筒から引き出したとき母乳貯留部に発生する負圧が所定負圧以上になると、副チェック弁の副スリットが開き、主空気通路を通って母乳貯留部へ外気が導入されるので、母乳貯留部の負圧が低減する。
しかして、本発明によれば、主チェック弁と副チェック弁が一体構造となっているので、構造が簡素化され、母乳搾乳器の製造コストを低減できる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、リングねじ蓋を瓶口に締め付けることにより、母乳搾乳器を哺乳瓶類に装着でき、母乳貯留部から哺乳瓶類へ母乳を注入できる。
しかして、本発明によれば母乳搾乳器を哺乳瓶類に装着したとき、副空気通路を通して外気が哺乳瓶類の内部に導入されるので、母乳貯留部の負圧が所定負圧以上になったとき、哺乳瓶類の内部から外気が副チェック弁の副スリットを通って母乳貯留部に流入し、負圧が低減される。従って、乳房や乳首に過大な負圧が作用することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例に係る母乳搾乳器を示す断面図である。
【図2】同母乳搾乳器の弁体を示す弁体の平面図である。
【図3】同弁体を示す側面図である。
【図4】同弁体を示す底面図である。
【図5】図4のA−A線切断断面図である。
【図6】図4のB−B線切断断面図である。
【図7】図4のC−C線切断断面図である。
【実施例1】
【0016】
本発明を図面に基づき説明する。図1には本発明の一実施例に係る母乳搾乳器が示されている。当該母乳搾乳器10は硬質プラスチック成型品の内筒11と外筒12及び軟質プラスチックゴム製の弁体13を備えている。
【0017】
内筒11は両端11a,11bが開口に形成され、一端開口11aは乳首を覆うように乳房に圧接できるようにラッパ状に形成され、ラッパ口11aの基端部に1本のリング凸条11cが形成されている。また、内筒11の他端開口11b側の外周部には2本のリング凸条11e,11dが形成され、両リング凸条11e,11d間にパッキン14が装着されている。
【0018】
外筒12は両端12a,12bが開口に形成され、一端開口12aから内筒11が挿入され、内筒11のラッパ口11aが一端開口12aから突出している。外筒12の他端開口12bの周縁部には哺乳瓶類15の瓶口15aに締め付けることのできるリングねじ蓋12cが一体成形されている。また、外筒の一端開口12aの外周部には着脱可能なストッパリング17が係止されている。
【0019】
内筒11は外筒12の一端開口12aに出入可能に、かつパッキン14により気密に嵌合され、内筒11の押し込みストローク端が外筒12の一端開口端部12aと内筒11のリング凸条11cとの当接で規制される。また、内筒11の引き出しストローク端がリング凸条11dとストッパリング17の爪17aとの当接によって規制される。
【0020】
弁体13の詳細を図2〜図7に示す。図2は弁体の平面図、図3は弁体の側面図、図4は弁体の底面図、図5は図4のA−A線切断断面図、図6は図4のB−B線切断断面図、図7は図4のC−C線切断断面図である。図2〜図7に示すように、弁体13はフランジ13aと、フランジ13aの内側のリング面13bと、断面逆三角形の中空突起部13cを有し、フランジ13a、リング面13b及び中空突起部13cを連続して成形したキャップ構造を備えている。中空突起部13cはリング面13bから反フランジ側13aへ突出し、突起先端部13dに1本の主スリット13eが形成されている。中空突起部13cは本発明における主チェック弁を構成する。
【0021】
図5に詳細を示すように、リング面13bの一箇所に断面円形の空気導入部13fが形成され、空気導入部13fのキャップ内側端部に断面半円形の中空凸部13gが一体成形され、空気導入部13fの開口を覆蓋している。この中空凸部13gの頂部に1本の副スリット13hが形成されている。中空凸部13gと空気導入部13fはそれぞれ本発明における副チェック弁と主空気通路構成する。また、フランジ13aの裏面の2箇所に断面半円形の溝13iが形成されている。この溝13iは本発明における副空気通路を構成する。
【0022】
本実施例に係る母乳搾乳器10の構成は以上の通りであって、哺乳瓶15に母乳を貯える場合、リングねじ蓋12cを哺乳瓶15の瓶口15aに締め付け、弁体13のフランジ13aをリングねじ蓋12cの裏面と哺乳瓶15の瓶口15aの上端部で挟持し、弁体13で外筒12の他端開口12bを副蓋する。このようにして母乳搾乳器10を哺乳瓶15に装着する。リングねじ蓋12cを瓶口15aに締め付けても溝13iによって哺乳瓶15の内外が連通されるので、外気が哺乳瓶15中に導入される。
【0023】
母乳搾乳器10をリングねじ蓋12cで哺乳瓶15に装着したら、内筒11のラッパ口11aを、乳首を覆うように乳房に圧接し、外筒12を引っ張って内筒11を外筒12から引き出すと、内筒11と外筒12で区画される母乳貯留部16の容積が拡大してここに負圧が発生する。この負圧が乳首に作用して母乳が母乳貯留部16へ吸引される。
【0024】
内筒11を外筒12から引き出すとき、弁体13の中空突起部13cの突起先端13dに形成した主スリット13eは、軟質プラスチックゴムの弾力により閉じているので、主チェック弁である中空突起部13dは哺乳瓶15から母乳貯留部16へ空気が流入するのを阻止するように作用する。また、中空凸部13gの副スリット13hも母乳貯留部16の所定負圧以下のうちは軟質プラスチックゴムの弾力で閉じているので、副チェック弁である中空凸部13gは哺乳瓶15から空気導入部13fを通って母乳貯留部16へ空気が流入するのを阻止する。
【0025】
続いて、引き出した内筒11を外筒12に押し込むと、空気圧で主スリット13eが開き、母乳が母乳貯留部16から主スリット13eを通って哺乳瓶15に注入される。
【0026】
内筒11を外筒12から引き出したとき母乳貯留部16に発生する負圧が所定負圧以上になると、中空凸部13gの副スリット13hが開き、空気導入部13fを通って母乳貯留部16へ外気が導入されるので、母乳貯留部16の負圧が低減し、所定負圧を越えることはない。そのため、過大な負圧が乳房や乳首に作用して乳頭トラブルが発生するのを防止できる。
【0027】
また、本実施例に係る母乳搾乳器10は、主チェック弁である中空突起部13cと副チェック弁である中空凸部13gが一体成形されているので、構造が簡素化され、母乳搾乳器10の製造コストを低減できる。
【0028】
なお、主チェック弁は母乳貯留部の負圧が高まればそれに比例して弁の気密性も高まるが、副チェック弁は弁の構造上所定負圧を越えると外気から空気を導入して圧力を一定圧に抑える効果がある。このため母乳貯留部の所定負圧は中空凸部の肉厚、硬度及びスリット長の各要素で決定される。製造時にこれらの各要素を調整して所定負圧が設定される。
【0029】
また、本実施例に係る母乳搾乳器10は一例として哺乳瓶15に装着したが、例えば両端を開口にし、各開口の周囲にねじを形成した中間筒の一端にリングねじ蓋を締め付け、他端開口に特公平6−8140号に開示されたような樹脂フィルム製袋を装着し、この袋に母乳を貯えることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
10…母乳搾乳器
11…内筒
11a…ラッパ口
11b…他端開口
12…外筒
12a…一端開口
12b…他端開口
13…弁体
13a…フランジ
13b…リング面
13c…中空突起部(主チェック弁)
13d…突起先端
13e…主スリット
13f…空気導通部(主空気通路)
13g…中空凸部(副チェック弁)
13h…副スリット
13i…溝(副空気通路)
15…哺乳瓶
16…母乳貯留部
17…ストッパリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母乳貯留部に発生した負圧を乳首に作用させて母乳を乳首から母乳貯留部に吸引し、母乳貯留部の外部から内部への空気の流入を阻止し、母乳貯留部の内部から外部への空気の流出を許容する主チェック弁を通して母乳貯留部から母乳を外部へ排出するように構成した母乳搾乳器であって、母乳貯留部の内部から外部への空気の流出を阻止し、母乳貯留部が所定負圧以上になると開いて外気が母乳貯留部内へ流入するのを許容する副チェック弁を設けたことを特徴とする母乳搾乳器。
【請求項2】
両端を開口にした外筒と、両端を開口にすると共に一端開口を、乳首を覆うように乳房に圧接できるラッパ状に形成した内筒を備え、外筒に内筒を気密に、かつ出入可能に嵌合して外筒と内筒で母乳貯留部を区画し、外筒の一端開口から内筒のラッパ口を突出させ、外筒の他端開口に母乳貯留部の外部から内部への空気の流入を阻止すると共に、母乳貯留部の内部から外部への空気の流出を許容する主チェック弁を設けた母乳搾乳器であって、前記母乳貯留部の内部から外部への空気の流出を阻止し、母乳貯留部が所定負圧以上になると開いて外気が母乳貯留部内へ流入するのを許容する副チェック弁を設けたことを特徴とする母乳搾乳器。
【請求項3】
前記主チェック弁を、軟質ゴムから成る中空突起部を備え、中空突起部の先端にスリットを形成したキャップで構成し、該キャップで外筒の他端開口を覆蓋し、内筒を外筒から引き出すとき前記スリットが閉じ、内筒を外筒に押し込むとき前記スリットが開くように構成し、前記副チェック弁を、前記主チェック弁に形成した主チェック弁の内外を導通する主空気通路と、主空気通路の内端開口を覆蓋するように主空気通路外側へ突出形成した断面半円形の中空凸部で構成し、中空凸部の頂部に母乳貯留部が所定負圧以上になると開くスリットを形成したことを特徴とする請求項2に記載の母乳搾乳器。
【請求項4】
前記主チェック弁にフランジを形成し、前記外筒の他端開口に、哺乳瓶類の瓶口に締め付けることのできるリングねじ蓋を設け、リングねじ蓋を瓶口に締め付けたときリングねじ蓋の裏面と瓶口の上端部によって前記フランジが挟持されるように構成し、かつフランジに瓶口の内外を連通する副空気通路を形成したことを特徴とする請求項3に記載の母乳搾乳器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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