説明

毒素またはウィルス含有汚染液の固相抽出方法および無毒化方法、並びにそれに用いる固相抽出用捕集剤および除染剤

【課題】周囲環境に悪影響を与えることなく、簡便な手法で人体に有害な毒素やウィルスを高精度に効率よく固相抽出する方法ならびに無毒化する方法の提供。
【解決手段】ラクトース誘導体を含む無機系多孔質体であって、該ラクトース誘導体の末端アミノ基にアミド結合するカルボキシル基が、表面または細孔内面に結合した該無機系多孔質体を流路の少なくとも一部に充填する工程、該ラクトース誘導体と特異的に結合する毒素またはウィルスを含む汚染液を、該無機系多孔質体が充填された流路に流下させる工程を含み、該汚染液中の毒素またはウィルスを該無機系多孔質体の該ラクトース誘導体に固定することにより該汚染液中から固相抽出および除去する、汚染液の固相抽出方法および無毒化方法、並びにそれに用いる固相抽出用捕集剤および除染剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトース誘導体で修飾された無機系多孔質体を利用した毒素またはウィルス含有汚染液の固相抽出方法および無毒化方法、並びに毒素またはウィルス含有汚染液用固相抽出用捕集剤および除染剤に関する。
【背景技術】
【0002】
東京地下鉄サリン事件、合衆国郵便物炭疽菌事件発生以来、化学剤や生物剤(生物化学剤)を用いたテロは顕在化し、またこれらに類する危険物質による災害、感染症流行の可能性が高まっている。テロや大規模災害に対処するための行政の危機管理の取り組みにおいて、危険物質の検知・モニタリング、適切な解毒・治療を行うために危険物質を特定する迅速分析手法が重要となるが、併せて被害の最小化を目的とした危険物質からの防護、除染を的確に実施することが求められている。
【0003】
ところで、毒素タンパク質として知られるリシンは、トウゴマ(ヒマ:Ricinus communis)の種子から抽出され、2種の構造的に関連した蛋白質の混合物として得られる。一つは分子量が60kDaのリシン60、他の一つはリシン60とホモロジーが約90%と極めて類似なタンパク質の2量体である分子量120kDaのリシン120である。
【0004】
分子量60kDaのリシン60の場合、A鎖(分子量28kDa)とB鎖(分子量32kDa)の2つのサブユニットで構成され、両鎖は−S−S−結合でつながっている。B鎖は、細胞表面の糖鎖(ラクトース、N−アセチルラクトサミン)に結合し、−S−S−結合を還元した後、エンドサイトーシスによって、A鎖を細胞の中に取り込む。A鎖は、28SリボソームRNAに作用し、A4324を加水分解することで、タンパク質の生合成を阻害し、細胞を死滅させる。このような性質を持つリシン60は、3〜5μg/kg(吸引)投与量で死に至らしめる強力な毒素である。
【0005】
これまでのところ、リシンを利用したテロ発生現場等において有効に利用できる除染方法や除染剤はほとんど存在しないが、その一方で、当該毒素を特異的に検出する方法として、ラクトース含有セラミド化合物およびガラクトース含有セラミド化合物を利用したものが知られている(特許文献1、2)。
【0006】
また、新型肺炎(SARS(サーズ);Severe Acute Respiratory Syndrome)は、2003年に中国、台湾、カナダで流行した。この感染症は、SARSコロナウィルス(SARS−CoV)によるもので、死亡率は10%以上に達する。SARS−CoVの表面には、スパイクタンパク質とよばれるタンパク質が多数存在しており、このスパイクタンパク質がホスト細胞上の特定のレセプターと結合して感染が始まると考えられている。このウィルスは、発見後歴史が新しく、ヒトSARSウィルスのレセプターに関しても現段階では不明な点が多い。サーズウィルスの検出方法、吸着剤としては、サーズウィルスの表面に存在するスパイクタンパク質と結合しうる糖鎖化合物を利用するものなどが知られている(特許文献3、4)。
【0007】
一方、トリインフルエンザやH5N1型のインフルエンザといった新興感染症の発生も危惧されている。これらのインフルエンザウィルスは、ウィルス表面のヘマグルチニンが、細胞表層の特定の糖鎖に結合することが知られている(非特許文献1)。しかしながら、有効なワクチン開発は発展途上であり、インフルエンザの流行を確実に阻止する手段は知られていない。
【0008】
多くの感染性因子である生物毒素や細菌、ウィルスは、糖鎖を認識して結合し感染することが知られており、この感染機構を材料工学的に応用して糖複合体を分子認識ツールとして活用できるものと考えられる。そのため、上記の他にも特異な糖鎖が化学的に独自に合成され(非特許文献1、2)、腸管出血性大腸菌O−157の生産するベロ毒素(非特許文献3−8)や狂牛病の異常プリオン蛋白質の増殖を効果的に抑制する方法、除去する方法(特許文献5、非特許文献9)などが報告されている。
【0009】
一方、物質を分析あるいは除去する技術として、クロマトグラフィーの分離原理があり、吸着、分配、イオン交配、サイズ排除、生物学的アフィニティーなどが知られている。クロマトグラフィー用充填剤としては、シリカゲルが一般的であり、粒子状充填剤の粒径は、数μm〜数十μmが広く使用され、粒子表面上には無数の細孔が存在する。
【0010】
クロマトグラフィーを利用した、タンパク質等の吸着剤としては、シリカゲルなど無機系多孔質体を利用できることが知られている。具体的には、例えば無機系多孔質の連続構造体であるモノリス型シリカゲル構造体をピペットチップ等のデバイスの通液孔に固定させ、反応液をピペッティングし活性基を修飾させると共に、ピペッティングによりリガンドを固定するアフィニティクロマトグラフィ用デバイスの製法(特許文献6)や、モノリス型シリカゲル構造体の通孔に対応する大きさの核酸を吸着させ、洗浄液で洗浄後、溶出させるDNAの分離精製方法(特許文献7、8)などが報告されている。また、無機系多孔質体を用い、クロマトグラフィー分析のための固相抽出用捕集剤として利用することが報告されている(特許文献9)。
モノリス型シリカゲルは、最近、粒子状充填剤を用いたクロマトグラフィー分離カラムを上回る性能を発揮することが知られている(非特許文献10)。
【0011】
固相抽出法とは、対象目的物質を固相捕集剤と相互作用させて選択的に単離・精製・濃縮を行う手法である。固相に対象物質を捕集する場合、妨害物を捕集して除去する場合、また段階的に分離溶出させる場合とがある。カラムから目的成分を回収する際は、なるべく希釈しないように次の操作に適した溶媒で抽出する。機器分析の前処理にかぎらず、細胞からの核酸の抽出や、固相上での医薬品の合成と抽出など薬学、臨床医学、食品分析、有機合成、環境分析など広範囲に利用されている。(非特許文献11)
【特許文献1】国際公開第2005/075493号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/015377号パンフレット
【特許文献3】特開2006−347908号公報
【特許文献4】特開2006−347909号公報
【特許文献5】国際公開第2005/077382号パンフレット
【特許文献6】特開2005−345379号公報
【特許文献7】特開2005−224167号公報
【特許文献8】国際公開第2005/078088号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2002/086488号パンフレット
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed., Vol.41 (No.23), P.4463、2002年
【非特許文献2】Biomacromolecules, Vol.1、P.68, 2000年
【非特許文献3】ChemBioChem, Vol.8、P.2117, 2007年
【非特許文献4】Tetrahedron, Vol.61、P.5895, 2005年
【非特許文献5】Trends in Glycoscience and Glycotechnology, Vol.17 (No.95), P107、2005
【非特許文献6】Bioorg. Med. Chem., Vol.7、P.2053, 1999年
【非特許文献7】Tetrahedron Lett., Vol.39、P.8681, 1998年
【非特許文献8】Biomacromolecules, Vol.3、P.411, 2002年
【非特許文献9】BBRC, Vol.349、P.485, 2006年
【非特許文献10】ぶんせき、10、p576、2004年
【非特許文献11】分離分析化学辞典、朝倉書店、p165、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
生物化学剤を用いたテロや感染症流行の対策として、現状では、HEPAフィルター、次亜塩素酸塩、アルデヒド、短波長電磁波、酸化剤(過酸化水素、過酢酸)、界面活性剤などが用いられている。しかしながら、これらの試薬は毒性が強く、また環境負荷が大きく、除染が完了するまでに長時間を要し、効果の持続性がない等の深刻な問題点が浮き彫りにされている。
さらに、これらの試薬は、非特異的で無害な一般物質にまで作用するため、除染効率は非常に低いものであり、生物化学テロ事案発生時や感染症流行時の現場事後管理を適切に行えるとは言い難い。
【0013】
また、上記の文献などに開示された糖鎖化合物あるいは糖鎖ポリマーは、主にバイオセンサーの検出における特異性の証明に用いられており、生物化学剤を用いたテロや大規模災害発生時や感染症流行時に散布等された大量の毒素やウィルスを効率的に処理するための現場除染システムとして、必ずしも開発されたものではないし、また、言及もされていない。
【0014】
さらに、無機系多孔質体に係る上記文献には、無機系多孔質体の生物化学兵器に対する固相抽出用捕集剤および除染技術への応用について何の示唆も与えていなかった。
【0015】
従って、本発明は、このような問題点を解決すべく、周囲環境に悪影響を与えることなく、人体に有害な毒素やウィルスを迅速に無毒化する方法、並びに該毒素やウィルスの固相抽出用捕集剤および除染剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究した結果、親水性スペーサーを介し高密度に糖鎖を導入した無機系多孔質体が、毒素やウィルスを特異的に吸着し、生物化学テロ事案発生時や感染症流行時における毒素やウィルスの分析システムや現場除染システムに有効に利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち本発明は以下を含む。
〔1〕下記一般式(1)
【化1】


(式中、Lは親水性スペーサーであり、XはOまたはSであり、Rは−OHまたは−NHCOCHであり;RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または下記式(2)
【化2】


で示されるシアル酸残基(式中、−COOMは、−COOHまたはその生理的に許容される塩であり、Acはアセチル基を意味する。)である。)
で表されるラクトース誘導体を含む無機系多孔質体であって、
該ラクトース誘導体の末端アミノ基にアミド結合するカルボキシル基を含め、総カルボキシル基が1g当たり0.25mmol以上、表面又は細孔内面に結合した該無機系多孔質体を流路の少なくとも一部に充填する工程、
該ラクトース誘導体と特異的に結合する毒素またはウィルスを含む汚染液を、該無機系多孔質体が充填された流路に流下させる工程を含み、
該汚染液中の毒素またはウィルスを該無機系多孔質体のラクトース誘導体に固定することにより該汚染液から固相抽出および除去する、汚染液の毒素またはウィルスの固相抽出方法および無毒化方法。
〔2〕 前記Rおよび前記Rが水素原子である、〔1〕に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔3〕 前記Rがシアル酸残基であり、前記Rが水素原子である、〔1〕に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔4〕 前記Rが水素原子であり、前記Rがシアル酸残基である、〔1〕に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔5〕 前記Lが下記式(3)
【化3】


(式中、mは1〜5の整数である。)で示される基である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔6〕 前記毒素がリシン60である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔7〕 前記ウィルスがサーズウィルス、またはインフルエンザウィルスである、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔8〕 前記ラクトース誘導体のアミノ基とアミド結合していない前記無機系多孔質体上の遊離のカルボキシル基がエンドキャップ処理された、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔9〕 前記無機系多孔質体が、3次元網目状に連続した孔径0.5〜500μmの貫通孔と、無機系多孔質体の表面および該貫通孔の内壁面に形成された孔径0〜400nmの細孔とを有し、骨格径が500nm以上のモノリス型シリカゲルである、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔10〕 前記汚染液が、使用済み洗浄液である、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
〔11〕 下記一般式(1)
【化4】


(式中、Lは親水性スペーサーであり、XはOまたはSであり、Rは−OHまたは−NHCOCHであり;RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または下記式(2)
【化5】


で示されるシアル酸残基(式中、−COOMは、−COOHまたはその生理的に許容される塩であり、Acはアセチル基を意味する。)である。)
で表されるラクトース誘導体の末端アミノ基とアミド結合したカルボキシル基を含め、総カルボキシル基が表面又は細孔内面に1g当たり少なくとも0.25mmol以上結合した無機系多孔質体を含む、毒素またはウィルス含有汚染液用の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔12〕 前記Rおよび前記Rが水素原子である、〔11〕に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔13〕 前記Rがシアル酸残基であり、前記Rが水素原子である、〔11〕に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔14〕 前記Rが水素原子であり、前記Rがシアル酸残基である、〔11〕に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔15〕 前記Lが下記式(3)
【化6】


(式中、mは1〜5の整数である。)で示される基である、〔11〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔16〕 前記毒素がリシン60である、〔11〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔17〕 前記ウィルスがサーズウィルス、またはインフルエンザウィルスである、〔11〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔18〕 前記ラクトース誘導体のアミノ基とアミド結合していない前記無機系多孔質体上の遊離のカルボキシル基がエンドキャップ処理された、〔11〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔19〕 前記無機系多孔質体が、3次元網目状に連続した孔径0.5〜500μmの貫通孔と、無機系多孔質体の表面および該貫通孔の内壁面に形成された孔径0〜400nmの細孔とを有し、骨格径が500nm以上のモノリス型シリカゲルである、〔11〕〜〔18〕のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
〔20〕 前記汚染液が、使用済み洗浄液である、〔11〕〜〔19〕のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【0018】
本発明に係る「親水性スペーサー」とは、一般式(1)で示されるラクトース誘導体のX原子と2−アミノエチル基とを結合することができ、親水性を示す任意の原子団のことをいう。
【0019】
本発明に係る「無機系多孔質体」とは、シリカやチタンなどの無機系材料を利用した粒子状またはモノリス型の多孔質材料であり、クロマトグラフィー用分離カラムの充填剤などに利用される。
【0020】
本発明に係る「総カルボキシル基」とは、前記無機系多孔質体上に存在する、前記ラクトース誘導体と結合したカルボキシル基、及び前記無機系多孔質体と前記ラクトース誘導体とが結合していない遊離のカルボキシル基との合計のカルボキシル基をいう。
【0021】
本発明に係る「無機系多孔質体表面」とは、無機系多孔質体の最外面をいい、「細孔内面」とは、無機系多孔質体内部に存在する微少開孔あるいは微少な開空隙の表面をいう。
【0022】
本発明に係る「毒素またはウィルスを含む汚染液」、及び「毒素またはウィルス含有汚染液」とは、毒素またはウィルスを少なくとも1種以上含み、該毒素またはウィルスが無毒化あるいは除染処理されていない液のことをいう。
【0023】
本発明に係る「モノリス型シリカゲル」とは、前記無機系多孔質体のうち、上端から下端まで3次元網目状に連通した貫通孔(スルーポア)と、無機系多孔質体の表面、及び貫通孔の内壁面に形成された細孔(メソポア)とを有する一体型多孔質体のことをいう。
ここで一体型多孔質体とは、3次元網目構造状の骨格と空隙(貫通孔)とが一体となった無機系多孔質体をいい、必ずしも骨格内に細孔(メソポア)を有しなくてもよい。
【0024】
本発明に係る「固相抽出用捕集剤」とは、生物化学兵器として使用され得る毒素またはウィルスを固相抽出法により濃縮した、分析用前処理を目的とする組成物のことをいう。
【0025】
本発明に係る「除染剤」とは、生物化学兵器として使用され得る毒素またはウィルスの無毒化あるいは除染を目的とする、組成物のことをいう。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、毒素またはウィルスと特異的に結合可能なラクトース糖鎖部分、あるいはシアリルラクトース糖鎖部分を親水性スペーサーを介して高密度に導入した無機系多孔質体からなる充填層に、毒素またはウィルスを含有する汚染液を流下させることにより、毒素またはウィルスを効率的かつ迅速に固相抽出(濃縮)および除染(無毒化する)ことが可能である。また、本発明に係るラクトース誘導体修飾無機系多孔質体を用いた固相抽出方法および無毒化方法、並びに固相抽出用捕集剤および除染剤は、使用の際、周辺環境に悪影響を与えることがない。
したがって、本発明に係る固相抽出方法および無毒化方法、並びに固相抽出用捕集剤および除染剤は、生物化学剤を用いたテロや感染症流行時に散布等された、大量の毒素やウィルスを迅速分析するための固相抽出用捕集剤および効率的に処理するための現場除染システムとして有効である。
【0027】
〔発明を実施するための形態〕
本発明に係る毒素またはウィルスの無毒化に用いることができる無機系多孔質体は、下記一般式(1)
【化7】

で表されるラクトース誘導体の末端アミノ基とアミド結合したカルボキシル基を少なくとも含む。
【0028】
式中、Rは、−OHまたは−NHCOCHである。無毒化の対象となる毒素がリシンの場合には、−OHが好ましく、無毒化の対象となるウィルスがサーズウィルスの場合には、サーズウィルス表面に存在するスパイクタンパク質との結合が強いNHCOCHが好ましい。また、インフルエンザウィルスの場合には、−OHが好ましい。
【0029】
本明細書において「リシン」という場合は、「リシン60」および「リシン120」の両方を意味することがあるが、主に「リシン60」を指す。また、「スパイクタンパク質」とは、コロナウィルスに特異的なタンパク質である。このスパイクタンパク質は、サーズウィルス(サーズウィルスは、コロナウィルスに属する)の膜表面に存在する突起状のタンパク質である。これは、S1サブユニットとS2サブユニットから構成される(Clinical Immunology, 113, 145-150, 2004)。また、ホスト細胞に感染する(結合する)ために必要なタンパク質である(感染機構の詳細は、Trend in Microbiology, 12, 466-472 (2004)に掲載されている。)。
【0030】
式中、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または下記式(2)
【化8】

で示されるシアル酸残基(式中、−COOMは、−COOHまたはその生理的に許容される塩)である。無毒化の対象となる毒素がリシンの場合には、RおよびRは、いずれも水素原子が好ましい。また、無毒化の対象となるウィルスがサーズウィルス、またはインフルエンザウィルスの場合には、RおよびRのいずれか一方が上記式(2)で示されるシアル酸残基であり、残りの一方が水素原子であることが好ましい。
【0031】
前記式(2)で示されるシアル酸残基における−COOMが、その生理的に許容される塩である場合、その塩の形態は特に限定されず、例えば、無機塩基塩、有機塩基塩などが挙げられる。
【0032】
無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン塩、トリメチルアミン塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。
【0033】
Lは、親水性スペーサーを示す。このような親水性スペーサーとして具体的には、下記式(3)
【化9】

(式中、mは1〜5の整数を示す。)で表されるポリエチレングリコール由来の2価の基、デキストラン由来の2価の基などが挙げられる。これらのうちでは、mが2、3または4である基が好ましい。
【0034】
本発明に係る親水性スペーサーを有するラクトース誘導体と無機系多孔質体とを結合させた場合には、疎水性スペーサーを介した場合やスペーサーを介さない場合と比べて、きわめて高精度にリシンやサーズウィルスなどの病原体を結合あるいは捕捉できるため、毒素またはウィルスの固相抽出および無毒化に有効に使用することができる。
【0035】
式中、Xは酸素原子または硫黄原子を示す。これらのうちでは、酸素原子が好ましい。
【0036】
本発明に係る無機系多孔質体としては、ガラス又はガラスセラミックス、好ましくはシリカSiOなどの無機物、あるいは無機物に有機物を含有するハイブリッド体からなり、微少細孔あるいは微少な空隙を有する多孔質体などが挙げられる。
ハイブリット体とは、具体的にはメチル基やフェニル基など有機基がケイ素やチタンなどに結合した金属酸化物のことである。
【0037】
このような無機系多孔質体は、毒素またはウィルスを含む汚染溶液の流速あるいは流量を確保し、効率的に汚染液を流下させる観点から、上端から下端まで3次元網目状に連続した孔径0.5〜500μm、好ましくは0.5〜50μmの貫通孔(スルーポア)と、無機系多孔質体の表面、及び該貫通孔の内壁面に形成された孔径0〜400nm、好ましくは10〜100nmの細孔(メソポア)とを有し、骨格径が500nm以上であるモノリス型シリカゲルが好ましい。
なお、本明細書において骨格径とは、三次元網目構造を構成している骨格の太さをいう。
モノリス型シリカゲルの電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0038】
また、モノリス型シリカゲルの空隙率は、好ましくは20〜90%、より好ましくは60〜90%であり、全気孔中の細孔の占める容積率が、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上である。また、無機系多孔質体1gあたりの細孔の全容積は、10m/t以下であることが機械的強度を保つために好ましい。かかる貫通孔や細孔の孔径や全容積は、標的とする毒素やウィルスの種類、および汚染液溶媒の種類などに応じて、適宜選択することができるが、リシンの場合、貫通孔が0.5μm〜50μm、細孔が5nm〜100nm、全容積が3m/t以下であることが好ましい。
【0039】
このようなモノリス型シリカゲルの具体的なものとしては、ジーエルサイエンス社から商品名「MonoTip(登録商標)」や「MonoCap(登録商標)」の下で入手できるモノリスが挙げられる。
【0040】
また、例えば特開2005−345379号公報や特開2005−224167号公報、国際公開第2005/078088号パンフレットに記載された製法により製造されたモノリスを使用することもできる。
具体的には、例えば、まず100nm以上の巨大空孔となる溶媒リッチ相を持つゾルをゾルーゲル法によって作製し、そのバルク状ゲルを粉砕せずに様々な組成を持つ水溶液に浸漬することにより、巨大空孔の内壁が最大20nm程度の狭い細孔分布を持った、二重気孔の多孔質体に変化させることにより製造されたものを利用できる。
【0041】
本明細書における「カルボキシル基修飾無機系多孔質体(以下、本明細書においてカルボキシル基修飾体という場合がある。)」とは、前記無機系多孔質体の表面または細孔内部にカルボキシル基が共有結合した無機系多孔質体をいう。このカルボキシル基修飾体は、前記ラクトース誘導体を高密度に結合させる観点から、1gあたり少なくとも0.25mmol以上のカルボキシル基を有することが好ましく、0.5mmol以上のカルボキシル基を有することがより好ましい。
【0042】
カルボキシル基修飾体としては、例えば、前記モノリス型シリカゲルにアミノ基やエポキシ基を導入する場合と同様に、カルボキシル基を有するシランカップリング剤を用いる方法や、酸無水物を有するシランカップリング剤を修飾後、加水分解によって調整した、カルボキシル基が共有結合したカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲルを好ましく用いることができる。また、このカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲルは、例えば特許第2893104号公報などに記載された以下の方法により製造されたものを利用することもできる。
「ホルムアミドあるいは水溶性高分子等の共存物質を酸性水溶液に溶かし、それに金属・炭素結合を介して結合した非加水分解性の有機官能基と加水分解性の官能基を有する有機金属化合物を添加して加水分解反応を行う。なお、共存物質が高分子成分の場合、混合時から均一状態になるまでに長時間を要するため、あらかじめ溶媒に高分子を溶解あるいは分散させておくのが望ましい、ホルムアミドなどの低分子成分のみを共存物質として含む系の場合にはその必要がないので、共存物質及び有機金属化合物を同時に混合して、加水分解してもよい。
そうすると、系のゾル−ゲル転移と重合反応に起因する溶媒相とゲル構成成分との相分離がほぼ同時に起こるような原料組成・温度を選んだ場合にのみ、溶媒リッチ相と骨格相とに分離したゲルが生成する。
「ゾル−ゲル転移と相分離がほぼ同時に起こるような原料組成・温度」の一般的な範囲は定かでないが、高分子成分を用いる場合と、極性溶媒のみを用いる場合に大別すると、およそ次のような範囲となる。高分子成分を用いる場合、重量基準で、高分子成分0〜30%、金属アルコキシド20〜70%、溶媒0〜60%、加水分解のための水(触媒を含む)5〜50%の組成とし、0℃程度から、溶媒相の沸点程度までの温度で反応させる。極性溶媒のみを用いる場合、重量基準で、金属アルコキシド20〜50%、溶媒0〜60%、加水分解のための水5〜50%の組成とし、0℃程度から、溶媒相の沸点程度までの温度で反応させる。
有機金属化合物に含まれる有機官能基の極性が低い場合には、系がゾル−ゲル転移に至るまでに相分離が起こりやすい。このような場合、溶媒相の極性を下げたり、共存物質としての高分子の分子量あるいは添加量を調節することによって、相分離の起こる時期を遅らせるのが望ましい。
また、有機官能基中にカルボキシル基あるいはアミノ基のような、酸性あるいは塩基性の基が含まれる場合には、局所的なpH変化によって不均一なゲル形成反応が起こることを防ぐために、通常の加水分解条件よりも酸あるいは塩基触媒の量を加減するのが望ましい。すなわち、例えば、塩基性の有機官能基を含む有機金属化合物に対しては、加水分解の触媒としてかなり多い酸を使って、全体の反応が酸性条件下で進むようにするとよい。
有機官能基を含む有機金属化合物の加水分解・重合反応が遅いために、相分離がゾル−ゲル転移よりもはるかに早く起こってしまう場合には、加水分解性の官能基をより多く含む有機金属化合物を混合してゾル−ゲル転移を早めることにより、100ナノメートル以上の3次元網目状に連続したゲル骨格相と溶媒相とからなる構造を作製することができる。
上記の連続したゲル骨格相と溶媒相とからなる構造を持つゲルは、溶媒を気化させることによって収縮を伴って乾燥し、乾燥ゲルとなる。この乾燥ゲル中には、出発溶液中の共存物質が残存する可能性があるので、有機官能基が分解されないような適当な温度および雰囲気下で熱処理を行い、共存物質のみを揮発・分解することによって、目的の無機系多孔質体を得ることができる。
ただし、硫酸根や硝酸根などの無機系結晶は、有機官能基の分解温度よりも高温でなければ分解・揮発しない。従って、このような場合、既述の溶媒置換法によって、一旦触媒や共存物質等の不要物質を除去した後、加熱乾燥する必要がある。」
【0043】
本発明に係る、「ラクトース誘導体の末端アミノ基にアミド結合するカルボキシル基を含む、カルボキシル基が結合した無機系多孔質体(以下、本明細書において「ラクトース誘導体修飾体」という場合がある。)」とは、少なくとも1分子以上の前記ラクトース誘導体の末端アミノ基と前記カルボキシル基修飾体のカルボキシル基とがアミド結合により結合した前記カルボキシル基修飾体をいう。
高精度かつ迅速に毒素またはウィルスを吸着あるいは捕捉する観点から、カルボキシル基修飾体の1g当たり、ラクトース誘導体が0.005mmol以上結合することが好ましく、0.5mmol以上結合することがより好ましい。
【0044】
本発明にかかるラクトース誘導体修飾体は、例えば熱変性処理への抵抗性が強いなど、固体として安定に存在し、しかも生体に対する毒性が低いため取扱いが容易で環境負荷が小さい。さらに、該ラクトース誘導体修飾体表面に存在する糖鎖と該毒素・ウィルスとの特異的な相互作用、いわゆる、「糖鎖-毒素相互作用」により、リシン60やサーズウィルスなどの除染すべき有害物質のみを特異的(選択的)に吸着あるいは捕捉することができる。従って、かかるラクトース誘導体修飾体からなる充填層は、毒素やウィルスを含む汚染溶液の固相抽出および無毒化(除染)にきわめて実用的であり、例えば分析前処理用カートリッジカラムやろ過フィルター、カートリッジとして使用することができる。
【0045】
また、このラクトース誘導体修飾体には、さらにエンドキャップ処理を施すことができる。
本発明に係る「エンドキャップ処理」とは、ラクトース誘導体修飾体上に存在する、遊離のカルボキシル基を特定の有機官能基と結合させる処理のことをいう。エンドキャップ処理後のラクトース誘導体修飾体は、遊離のカルボキシル基と標的毒素あるいは標的ウィルス以外の物質との非特異的な結合を防止することができるため、より選択的に標的毒素あるいはウィルスを吸着させることができる。
【0046】
上記の目的を達成できればエンドキャップ処理に用いる有機官能基は限定されないが、具体的にはアミノアルコール基が挙げられる。アミノアルコール基のうちでは、アミノエタノール基が好ましい。
【0047】
本発明に係る汚染液は、毒素またはウィルスを一種以上含有しており、ラクトース誘導体修飾体からなる充填層を流下できれば、毒素やウィルスは液に溶解していても、懸濁していても良い。
【0048】
本発明に係る「使用済み洗浄液」とは、洗浄液を散布して毒素を洗浄した後に回収した汚染液のことをいう。このような洗浄液としては、周囲環境に悪影響を与えない観点から、例えば、水、無機塩水溶液などを好ましく用いることができる。これらのうちでは、ラクトース誘導体修飾体と除染対象の毒素またはウィルス以外の物質との静電的な相互作用による非特異的吸着を排除し、除染効率を向上させる観点から、無機塩水溶液が好ましく、無機塩水溶液のうちでは、塩化ナトリウム水溶液がより好ましい。
【0049】
ラクトース誘導体の合成方法
本発明に係るラクトース誘導体は例えば、下記に示すスキームにより合成することができる。
【0050】
スキーム1−1
【化10】

スキーム1−1において、LおよびXは、前記一般式(1)のLおよびXと同意義を意味する。
【0051】
スキーム1−1における第一工程は、化合物(A)に「−X−L−(CHCl」基を導入し、化合物(B)を合成する工程であり、溶媒中、試薬存在下、HX−L−(CHClを加えて攪拌することにより合成することができる。試薬としては、ボロントリフルオロエテラート(BF・EtO)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)、tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBDMSOTf)、メチルトリフレート(MeOTf)などを好ましく用いることができ、溶媒としては、ジクロロエタン、トルエン、ジクロロメタンなどの無極性溶媒を好ましく用いることができる。第一工程の反応温度は、通常−78℃〜20℃であり、反応時間は通常30分〜24時間である。
【0052】
スキーム1−1における第二工程は、化合物(B)の末端塩素原子をアジド基に変換し、化合物(C)を合成する工程であり、溶媒中、アジ化ナトリウムを加えて攪拌することにより合成することができる。溶媒としては、DMF、DMSOなどの極性溶媒を好ましく用いることができる。第一工程の反応温度は、通常0℃〜140℃であり、反応時間は通常6時間〜48時間である。また、反応には15−クラウン−5−エーテル、12−クラウン−4−エーテル、18−クラウン−6−エーテルなどのクラウンエーテルを加えることが好ましい。また、NaBr,KBr、NaI,KIなどを添加してもよい。
【0053】
スキーム1−1における第三工程は、化合物(C)のアセチル基を脱保護し、化合物(D)を合成する工程であり、例えば「Green and Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis"(第2版、John Wiley & Sons 1991)」に記載の方法により行うことができる。具体的には、例えば、溶媒中、触媒量のナトリウムメトキシドを加えて一定時間攪拌後、イオン交換樹脂を加えてさらに攪拌することにより脱保護することができる。
【0054】
スキーム1−1における第四工程は、化合物(D)のアジド基をアミノ基に変換し、化合物(E)を合成する工程であり、溶媒中、好ましくは酸存在下、触媒を利用した水素添加反応により合成することができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、水、あるいはこれらの混合溶液などの極性溶媒が好ましく、酸としては、塩酸、硫酸、酢酸などを好ましく添加することができる。また、水素源としては、水素ガスや蟻酸を用いることができ、これらのうちでは、水素ガスを好ましく用いることができる。触媒としては、パラジウム触媒などを用いることができる。パラジウム触媒のうちでは、酸を添加する場合は、水酸化パラジウムが好ましく、酸を添加しない場合には、パラジウムブラックが好ましい。反応温度は、通常、15〜40℃であり、反応時間は通常1〜48時間である。
【0055】
一般式(1)で示されるラクトース誘導体のRが、NHCOCH基の場合には、前記化合物(A)の還元末端側のグルコースの2位がNHCOCH基に置換された化合物を出発原料とすることによりスキーム1−1と同様に合成することができる。
【0056】
一般式(1)で示されるラクトース誘導体のRおよびRのいずれか一方が、前記式(2)で示されるシアル酸残基であり、他の一方が水素原子の場合には、下記に示すスキーム1−2により製造することができる。
【0057】
スキーム1−2
【化11】

(スキーム1−2中、R、LおよびXは、前記一般式(1)のR、LおよびXと同意義を意味する。)
【0058】
すなわち、一般式(1)で示されるラクトース誘導体のRおよびRのいずれか一方が、前記式(2)で示されるシアル酸残基であり、他の一方が水素原子である化合物は、スキーム1−1により合成することができる化合物にCMP−シアル酸、およびシアリルトランスフェラーゼを作用させて酵素的にシアル酸残基を導入する方法により製造することができる。その場合、Rにシアル酸残基を導入するには、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを、Rにシアル酸残基を導入するには、α2,6−シアリルトランスフェラーゼを好ましく使用することができる。
【0059】
この酵素反応には、カゴジル酸緩衝液、HEPES緩衝液、MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液を好ましく添加することができる。また、pHは5〜7が好ましく、反応温度は、30℃〜40℃が好ましい。反応時間は、通常30分〜8時間である。反応に用いるシアリルトランスフェラーゼは微生物由来でも、哺乳動物由来でも、組み換え体でもよく、哺乳動物由来の場合には、アルブミンを添加してもよい。
【0060】
ラクトース誘導体修飾体の製造方法
本発明に係るラクトース誘導体修飾体は、例えば、下記に示すスキームにより製造することができる。
【0061】
スキーム2
【化12】

スキーム2において、R〜R、LおよびXは、前記一般式(1)に記載されたR〜R、LおよびXと同意義を意味する。
【0062】
スキーム2の第一工程は、化合物(1)に活性エステル化無機系多孔質体(4)を加えて、ラクトース誘導体修飾体(5)を製造する工程である。溶媒中、塩基存在下、活性エステル化無機系多孔質体(4)を加え、マイクロ波を用いて加熱することにより製造することができる。
【0063】
第一工程における溶媒としては、DMF、DMSO、HMPTなどの極性溶媒を好ましく用いることができ、塩基としては、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのN−アルキルアミン類を好ましく用いることができる。マイクロ波の電力は、通常100〜500W、好ましくは200〜400Wである。また加熱温度は、通常50℃〜200℃であり、ラクトース誘導体を高密度に導入する観点から、80℃〜200℃が好ましい。また、加熱時間は、通常10分〜2時間であり、好ましくは20分〜1時間である。
【0064】
第一工程で用いる活性エステル化無機系多孔質体(4)は、カルボキシル基修飾体のカルボキシル基を活性エステル化することにより合成される。活性エステルの種類は、化合物(A)で示されるラクトース誘導体の末端アミノ基とアミド結合を形成できれば良く、例えば、スクシンイミド基、1−ベンゾトリアゾール、7−アザベンゾトリアゾールなどにより活性エステル化することが好ましい。
【0065】
カルボキシル基修飾体のスクシンイミド基による活性エステル化は、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、カルボキシル基修飾無機系多孔質体を加えた後に、減圧脱気を数回繰り返すことにより製造することができる。
【0066】
スキーム2の第二工程は、ラクトース誘導体修飾体(5)の遊離のカルボキシル基にアミノアルコール基によるエンドキャップ処理を施す工程である。具体的には、ラクトース誘導体修飾体の遊離のカルボキシル基を前記と同様の方法により活性エステル化した後、アミノアルコールを加え、マイクロ波を用いて加熱することにより製造することができる。アミノアルコールとしては、2−アミノエタノールを好ましく用いることができる。マイクロ波の電力は、通常100〜500W、好ましくは200〜400Wであり、加熱温度は、通常50℃〜200℃、好ましくは80℃〜160℃である。また、加熱時間は、通常10分〜2時間であり、好ましくは20分〜1時間である。
【0067】
汚染液の無毒化方法
本発明に係る汚染液の無毒化方法は、前記ラクトース誘導体修飾体を流路の少なくとも一部に充填する工程、およびラクトース誘導体と特異的に結合する毒素またはウィルスを含む汚染液を、該流路に流下させる工程を含む。
【0068】
ラクトース誘導体修飾体の流路における充填量や、充填箇所数(充填層数)は、毒素またはウィルスを無毒化できれば、限定されない。ラクトース修飾体の単位重量あたりに結合したラクトース誘導体の結合量にも依存するが、汚染液の流速または流量を確保しつつ、効率的に毒素またはウィルスをラクトース誘導体に固定(吸着)する観点に基づき、充填層を設けることができる。
【0069】
親水性スペーサーを介して糖鎖部分が結合した無機系多孔質体は、毒素やウィルス、特にリシンやサーズウィルス、インフルエンザウィルスを特異的に吸着あるいは捕捉するため、該毒素やウィルスを含む汚染液を迅速(例えば、60分以内に)に無毒化することができる。
【0070】
また、本発明に係る固相抽出方法は、前記無毒化方法と同一の工程に、さらに危険物質の回収工程を追加することもでき、かかる回収工程を経て調製される分析用試料を機器分析(定性、定量)することができる(図13)。
【0071】
本発明の別の態様は、前記ラクトース誘導体修飾体を含む、毒素またはウィルス含有汚染液用の固相抽出用捕集剤および除染剤である。前記ラクトース誘導体修飾体は、リシンやサーズウィルスなどの毒素またはウィルスを特異的に吸着するので、かかる毒素やウィルスを含有する汚染液用の固相抽出用捕集剤および除染剤として使用することができる。
【0072】
固相抽出用捕集剤は、汚染液から危険物質を吸着後、溶離して汚染物質を分析する用途で使用され、除染剤は、汚染液から危険物質を吸着し、該汚染液を無毒化する用途で使用される。
【0073】
本発明に係る固相抽出用捕集剤および除染剤は、好ましくは粉末状であり、各種のフィルター用充填剤として使用したり、汚染液に散布して使用することができる。除染剤には、生体に悪影響を与えない範囲内で、NaCl、KClなどの成分を添加することもできる。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明の実施例および比較例を挙げ、具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0075】
[2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エトキシβ−D−ラクトシド 塩酸塩(化合物V)の合成]
以下のスキーム3−1に従って2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エトキシβ−D−ラクトシド 塩酸塩を合成した。
【0076】
スキーム3−1
【化13】

【0077】
ラクトシルイミデイト(化合物(I))の合成
オクタアセチルラクトシド(和光純薬社製)19.1g(28.1mmol)をテトラヒドロフラン(和光純薬社製)150mLに溶かし、ベンジルアミン(アルドリッチ社製)7.5mLを加えた。1晩攪拌した後、反応混合物を濃縮し、その残渣を酢酸エチル(和光純薬社製)600mLに溶かした。分液ロートを用いて、酢酸エチル溶液を、特級塩酸(和光純薬社製)を希釈して調製した1Nの塩酸50mLで2回洗浄した。さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した後、硫酸マグネシウム(和光純薬社製)で乾燥した。その溶液を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル60,ヘキサン/酢酸エチル=2/3)により分離した。分離後の化合物に窒素雰囲気下で脱水ジクロロメタン(アルドリッチ社製)38.5mL、トリクロロアセトニトリル12.3mL、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセー7ーエン(東京化成社製)3.47mLを加え、1晩攪拌した後、反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル60,ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により分離し、目的とする化合物(I)(9.8g,46%)を得た。
【0078】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) : δ 8.66 (s, 1H, NH), 6.49 (d, 1H, J 3.6 Hz Glc-1), 5.56 (t, 1H, J 9.6 Hz, Glc-3), 5.36 (dd, 1H, J 0.8, 3.6 Hz, Gal-4), 5.13 (dd, 1H, J 8.0, 10.4 Hz, Gal-2), 5.06 (dd, 1H, J 3.6, 9.6 Hz, Glc-2), 4.96 (dd, 1H, J 3.6, 10.4 Hz, Gal-3), 4.52 (d, 1H, J 8.0 Hz, Gal-1), 4.46-4.51 (m, 1H, Glc-6), 4.07 -4.18 (m, 4H, Glc-5, Glc-6, Gal-6, Gal-6), 3.87 -3.90 (m, 1H, Gal-5), 3.79 (t, 1H, J 9.6 Hz, Glc-4), 2.16 (s, 3H, Ac), 2.11 (s, 3H, Ac), 2.070 (s, 3H, Ac), 2.068 (s, 3H, Ac), 2.01 (s, 3H, Ac), 1.97 (s, 3H, Ac). 13C-NMR (100.5MHz, CDCl3) : δ 170.5, 170.4, 170.34, 170.29, 170.27, 169.6, 169.3, 161.2, 101.4, 93.1, 90.9, 76.1, 71.3, 71.1, 70.9, 70.2, 69.8, 69.3, 66.8, 61.7, 61.0, 21.1, 21.0, 20.89, 20.86, 20.73, 20.69.
【0079】
1−[2−{2−(クロロエトキシ)エトキシ}エトキシ]パー−O−アセチル−β−D−ラクトシド(化合物(II))の合成
フラスコ内の粉末状のモレキュラーシーブ3A 400mg(アルドリッチ社製)をガスバーナーで加熱することにより活性化させた。フラスコが冷えた後に、化合物(I)2.85g(3.65mmol)をすばやく加え、窒素に置換した。そこに脱水ジクロロメタン(アルドリッチ社製)5mLと2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール(和光純薬社製)863mg(745L,5.12mmol)を入れ攪拌した。窒素雰囲気下、1時間室温で攪拌した後に、0℃に冷却し、ボロントリフルオリドエテラート(BF・EtO)300μL(アルドリッチ社製)をゆっくり加えた。2時間そのまま攪拌した後、モレキュラーシーブ3Aをろ過により除いた。そのろ液を酢酸エチル(和光純薬社製)90mLで希釈し、分液ロートを用いて水で9回洗浄した。有機層をさらに飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウム(和光純薬社製)で乾燥させた。乾燥させた溶液を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル60,ヘキサン/酢酸エチル=1/1−1/2)による分離により目的とする化合物(II)(1.48g,52%)を得た。
【0080】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) : δ 5.35 (dd, 1H, J 1.2, 3.6 Hz Gal-H4), 5.20 (t, 1H, J 9.6 Hz, Glc-3), 5.11 (dd, 1H, J 8.0, 10.4 Hz, Gal-2), 4.95 (dd, 1H, J 3.6, 10.4 Hz, Gal-3), 4.90 (dd, 1H, J 8.0, 9.6 Hz, Glc-2), 4.57 (d, 1H, J 8.0 Hz, Glc-1), 4.49 (dd, 1H, J 2.0, 12.0 Hz, Glc-6), 4.48 (d, 1H, J 8.0 Hz, Gal-1), 4.16 -4.04 (m, 3H, Glc-6, Gal-6, Gal-6), 3.94 -3.89 (m, 1H, CH), 3.87 (m, 1H, Gal-5), 3.79 (t, 1H, J 9.6 Hz, Glc-4), 3.77-3.59 (m, 12H, Glc-5, CH), 2.15 (s, 3H, Ac), 2.12 (s, 3H, Ac), 2.06 (s, 3H, Ac), 2.05 (s, 9H, Ac) , 1.97 (s, 3H, Ac). 13C-NMR (100.5MHz, CDCl3) : δ 170.6, 170.5, 170.3, 170.2, 170.0, 169.8, 169.3, 101.2, 100.8, 76.4, 73.0, 72.8, 71.8, 71.5, 71.2, 70.8, 70.5, 69.3, 69.2, 66.8, 62.2, 61.0, 43.0, 21.1, 21.0, 20.9, 20.8, 20.7.
【0081】
1−[2−{2−(アジドエトキシ)エトキシ}エトキシ]パー−O−アセチル−β−D−ラクトシド(化合物(III))の合成
化合物(II)(1.50g、1.91mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製)15mLに溶解し、15−クラウン−5−エーテル(和光純薬社製)1滴とアジ化ナトリウム(アルドリッチ社製)621mg(9.55mmol)を加え、80℃で16時間攪拌した。未反応のアジ化ナトリウムをろ過により除いた後、ろ液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル(和光純薬社製)70mLに溶解させた。その溶液を分液ロートを用いて水、飽和食塩水の順で十分洗浄した後、硫酸マグネシウム(和光純薬社製)で乾燥させた。乾燥させた溶液を減圧濃縮することで目的とする化合物(III)(1.31g,86%)を得た。
【0082】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) : δ 5.26 (dd, 1H, J 1.2, 3.2 Hz, Gal-H4), 5.11 (t, 1H, J 9.6 Hz, Glc-3), 5.02 (dd, 1H, J 8.0, 10.4 Hz, Gal-2), 4.88 (dd, 1H, J 3.2, 10.4 Hz, Gal-3), 4.81 (dd, 1H, J 8.0, 9.6 Hz, Glc-2), 4.50 (d, 1H, J 8.0 Hz, Glc-1), 4.42 (d, 1H, J 8.0 Hz, Gal-1), 4.40 (dd, 1H, J 2.0, 12.0 Hz, Glc-6), 4.08-3.98 (m, 3H, Glc-6, Gal-6, Gal-6), 3.86 -3.83 (m, 1H, CH), 3.81 (m, 1H, Gal-5), 3.72 (t, 1H, J 9.6 Hz, Glc-4), 3.67-3.52 (m, 12H, Glc-5, CH), 3.32 (t, 2H, J 4.8 Hz, CH), 2.07 (s, 3H, Ac), 2.05 (s, 3H, Ac), 1.98 (s, 3H, Ac), 1.97 (s, 9H, Ac) , 1.88 (s, 3H, Ac). 13C-NMR (100.5MHz, CDCl3) : δ 170.5, 170.5, 170.3, 170.2, 169.9, 169.8, 169.2, 101.2, 100.8, 76.4, 73.0, 72.8, 71.8, 71.1, 70.9, 70.8, 70.5, 70.2, 69.3, 69.2, 66.8, 62.2, 61.0, 50.8, 21.0, 21.0, 20.9, 20.8, 20.7.
【0083】
1−[2−{2−(アジドエトキシ)エトキシ}エトキシ]−β−D−ラクトシド(化合物(IV))の合成
化合物(III)(477mg、0.601mmol)をメタノール(和光純薬社製)10mLに溶解させ、触媒量のナトリウムメトキシド(和光純薬社製)を加えて室温で攪拌した。5.5時間後にイオン交換樹脂(Dowex(H)form、ダウエックス社製)を加え10分攪拌した後、ろ過によりイオン交換樹脂を除いた。そのろ液を減圧濃縮することで目的とする化合物(IV)(296mg,99%)を得た。
【0084】
1H-NMR (400MHz, CD3OD) : δ 4.35 (d, 1H, J 7.6 Hz, Gal-1), 4.33 (d, 1H, J 8.0 Hz, Glc-1), 4.06 (m, 1H, CH), 3.89 (dd, 1H, J 2.4, 12.4 Hz, Glc-6), 3.82 (dd, 1H, J 4.0, 12.4 Hz, Glc-6), 3.81 (d, 1H, J 3.2 Hz, Gal-4), 3.78 -3.63 (m, 11H, Gal-6, Gal-6, CH), 3.59 -3.52 (m, 4H, Gal-5, Glc-4, Glc-3, Gal-2), 3.48 (dd, 1H, J 3.2, 9.6 Hz, Gal-3), 3.40 (m, 1H, Glc-5), 3.48 (t, 2H, J 5.2 Hz, CH2), 3.26 (dd, 1H, J 8.0, 8.0 Hz, Glc-2). 13C-NMR (100.5MHz, CD3OD): δ 103.9, 103.1, 79.4, 75.9, 75.3, 75.1, 73.6, 73.5, 71.4, 70.4, 70.3, 70.3, 69.9, 69.1, 68.6, 61.3, 60.7, 50.6. ESI-MS: calcd for C18H32N3O13 (M-H-), 498.2; found, 498.2
【0085】
2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エトキシ−β−D−ラクトシド塩酸塩(化合物(V))の合成
化合物(IV)(126mg、0.252mmol)をメタノール(和光純薬社製)10mLに溶解し、そこに10等量の塩酸(和光純薬社製)と触媒量の水酸化パラジウムカーボン(アルドリッチ社製)を加え、水素に置換した。水素雰囲気下、室温で1.5時間攪拌した後、水酸化パラジウムカーボンをろ過により除き、そのろ液を減圧濃縮した。残渣をメタノールに溶解し、減圧濃縮を繰り返すことで塩酸を除き、目的の化合物(V)(128mg,99%)を得た。
【0086】
1H-NMR (400MHz, D2O) : δ 4.40 (d, 1H, J 8.0 Hz, Gal-1), 4.32 (d, 1H, J 8.0 Hz, Glc-1), 3.95 (ddd, 1H, J 4.0, 4.0, 11.2 Hz, CH), 3.85 (dd, 1H, J 2.0, 12.0 Hz, Gal-6) 3.79 (d, 1H, J 3.2 Hz, Gal-4), 3.75 -3.59 (m, 13H, Gal-6, Gal-5, Glc-6, , Glc-6, Glc-4, CH), 3.55 -3.50 (m, 2H, Gal-3, Glc-4), 3.53 (dd, 1H, J 2.8, 10.0 Hz, Glc-3), 3.47 (m, 1H, Glc-5), 3.41 (dd, 1H, J 8.0, 10.0 Hz, Glc-2), 3.26 (dt, 1H, J 2.8, 8.0 Hz, Gal-2), 3.08 (t, 2H, J 5.2 Hz, CH2). 13C-NMR (100.5MHz, D2O): δ 103.1, 102.2, 78.5, 75.5, 74.9, 74.5, 73.0, 72.7, 71.1, 69.84, 69.81, 69.6, 68.9, 68.7, 66.5, 61.2, 60.2, 39.3. ESI-MS: calcd for C18H36NO13 (M+H+), 474.2; found, 474.2
【0087】
[シアリルラクトース3糖体(化合物VIII、化合物IX)の合成]
以下のスキーム3−2に従い、シアリルラクトース3糖体を合成した。
【0088】
スキーム3−2
【化14】

【0089】
アルファ2,3−シアリルラクトース(化合物(VIII))の合成
組み換えラット由来アルファ2,3−(N)−シアリルトランスフェラーゼを用いて化合物(VIII)をシアル化し、シアリルラクトース3糖体化合物(VIII)を合成した。
2本のPCRチューブにそれぞれ2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エトキシ−β−D−ラクトシド塩酸塩(化合物(V))50mg(0.106mmol)、CMPシアル酸2ナトリウム塩(ヤマサ醤油社製)73mgを、7.2mg/mLの子牛血清アルブミン(BSA) (キシダ化学社製)と120mMの塩化マンガン(キシダ化学社製)とを含む1Mの2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.3,100μL)に加え、溶かした。そこにアルカリフォスファターゼ(和光純薬社製)90U、アルファ2,3−(N)−シアリルトランスフェラーゼ250mU(カルビオケム社製)を加え、37℃でインキュベーションした。40時間インキュベーションした後、この反応混合物をODS(水、メタノール混合液)、およびBiogel P2カラムクロマトグラフィーで精製し、シアリルラクトース3糖体化合物(VIII)を合成し、ドナーを基にして21%(2本の合計29.9mg)の収量で得た。
【0090】
1H-NMR (400MHz, D2O) : δ 4.39 (d, 2H, J 8.0 Hz, Gal-1, Glc-1), 3.97 (dd, 1H, J 3.2, 10.0 Hz, Gal-3), 3.95-3.91 (m, 1H, CH) 3.86 (dd, 1H, J 2.0, 12.0 Hz, Gal-6), 3.82 (d, 1H, J 3.2 Hz, Gal-4), 3.77-3.46 (m, 23H, Gal-6, Gal-5, Glc-6, Glc-6, Glc-5, Glc-4, Glc-3, NeuAc, CH), 3.44 (dd, 1H, J 8.0, 10.0 Hz, Gal-2), 3.46-3.41 (m, 1H, Glc-2) 3.06 (t, 2H, J 4.8 Hz, CH2), 2.66 (dd, 1H, J 5.6, 12.0 Hz, NeuAc H-3eq), 1.89 (s, 3H, Ac), 1.66(t, 1H, J 12.0 Hz, NeuAc H-3ax). 13C-NMR (100.5MHz, D2O): δ 175.2, 174.0, 102.8, 102.2, 100.0, 78.4, 75.7, 75.4, 74.9, 74.5, 73.05, 72.96, 71.9, 69.84, 69.79, 69.6, 69.5, 68.9, 68.5, 68.3, 67.6, 66.8, 62.8, 61.2, 60.2, 51.8, 39.8, 39.3, 22.2. ESI-MS: calcd for C29H53N2O21 (M+H+), 765.3; found, 765.3
【0091】
アルファ2、6−シアリルラクトース(化合物(IX))の合成
組み換えフォトバクテリア由来アルファ2,6−シアリルトランスフェラーゼを用いて化合物(IX)をシアル化し、シアリルラクトース3糖体化合物(IX)を合成した。
2本のPCRチューブにそれぞれ、2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エトキシ−β−D−ラクトシド(化合物(V))48mg(0.101mmol)、CMPシアル酸2ナトリウム塩(ヤマサ醤油社製)64mgを、1.2mg/mLの子牛血清アルブミン(BSA) (キシダ化学社製)と20mMの塩化マンガン(キシダ化学社製)とを含む1Mの2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.3,0.5mL)に加え、溶かした。そこにアルカリフォスファターゼ(和光純薬社製)90U、アルファ2,6−シアリルトランスフェラーゼ200mUを加え、37℃でインキュベーションした。24時間インキュベーションした後、この反応混合物をODS(水、メタノール混合液)、およびBiogel P2カラムクロマトグラフィーで精製し、シアリルラクトース3糖体化合物(IX)を合成し、ドナーを基にして15%(2本の合計23.6mg)の収量で得た。
【0092】
1H-NMR (400MHz, D2O) : δ 4.40 (d, 1H, J 8.0 Hz, Glc-1), 4.29 (d, 1H, J 8.0 Hz, Gal-1), 3.97-3.92 (m, 1H, CH), 3.80 (d, 1H, J 3.2 Hz, Gal-4), 3.86-3.37 (m, 25H, Gal-6, Gal-6, Gal-5, Gal-3, Glc-6, Glc-6, Glc-5, Glc-4, Glc-3, NeuAc, CH), 3.39 (dd, 1H, J 8.0, 10.0 Hz, Gal-2), 3.23 (dd, 1H, J 8.0, 8.0 Hz, Glc-2) 3.02 (t, 2H, J 4.8 Hz, CH2), 2.57 (dd, 1H, J 4.8, 12.4 Hz, NeuAc H-3eq), 1.89 (s, 3H, Ac), 1.60(t, 1H, J 12.0 Hz, NeuAc H-3ax). 13C-NMR (100.5MHz, D2O): δ 175.1, 173.6, 103.4, 102.1, 100.5, 79.8, 74.8, 74.7, 73.9, 72.9, 72.7, 72.5, 72.0, 70.9, 69.8, 69.6, 68.9, 68.6, 68.5, 66.9, 63.8, 62.8, 60.4, 51.9, 40.3, 39.3, 22.2. ESI-MS: calcd for C29H53N2O21 (M+H+), 765.3; found, 765.3
【0093】
[モノリス型シリカゲルへのラクトース誘導体の導入]
〔製造例1−1〕
トリエチレングリコールスペーサーを有するラクトース誘導体のカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲル(2.7μmolカルボキシル基/個))への導入(TGLac修飾モノリス型シリカゲルの合成)
1個当たり2.7μmol(1.2mmol/g)のカルボキシル基が修飾されたモノリス型シリカゲル(φ2.8×厚1mm、2.3mg、スルーポア:15〜20μm、メソポア:25〜30nm、細孔容積:0.8m/t、ジーエルサイエンス社製)40個を、ディーンスターク管を用いてトルエン(和光純薬社製)中で加熱することにより脱水した。脱水後、減圧しトルエンを除去した。
【0094】
モノリス型シリカゲル表面上のカルボン酸を活性エステル化するため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(略称「EDC」、国産化学社製)207mg(1.08mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(略称「NHS」、和光純薬社製)124mg(1.08mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(略称「DMF」、和光純薬社製)0.504mLに溶かした溶液に、脱水および溶媒除去したモノリス型シリカゲル40個を入れた。このモノリス型シリカゲルの入った溶液を3回、減圧脱気することにより、モノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。そのまま室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたモノリス型シリカゲルを、DMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。
【0095】
モノリス型シリカゲルへラクトース誘導体を導入するため、2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エトキシ−β−D−ラクトシド塩酸塩(化合物(V))128mg(251μmol)、およびトリエチルアミン(和光純薬社製)22μLをDMF(和光純薬社製)0.3mLに溶解させ、バイアル容器(容量1mL)に入れた。そこに活性エステル化されたモノリス型シリカゲル40個を入れ、減圧脱気を3回行うことによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液を、300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80℃(最大100℃)で30分間加熱することによりラクトース誘導体を導入した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。さらに洗浄するため、DMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱し、再度、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した、このマイクロ波による加熱、洗浄操作をさらに一回繰り返した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去することによりトリエチレングリコールスペーサーを介してモノリス型シリカゲルと糖鎖とが結合したラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0096】
〔製造例1−2〕
2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理
製造例1−1で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルには未反応のカルボキシル基(遊離のカルボキシル基)が残っているため、2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理を行った。
未反応のカルボン酸をNHSで活性エステル化するため、EDC(国産化学社製)104mg(0.54mmol)、及びNHS(和光純薬社製)62mg(0.54mmol)をDMF(和光純薬社製)0.252mLに溶解させた溶液に、ラクトース修飾モノリス型シリカゲルを20個加え、3回、減圧脱気することによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。活性エステル化されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルを、2−アミノエタノール(和光純薬社製)が0.7mL入ったバイアル容器(容量1mL)に加え、3回、減圧脱気することによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液を300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱することにより、2−アミノエタノールによるエンドキャップを行った。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF、メタノールで洗浄し、さらに洗浄するためDMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で再度洗浄した。このマイクロ波による加熱、洗浄操作をさらに一回繰り返した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去することによって2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理が施されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0097】
〔製造例2−1〕
トリエチレングリコールスペーサーを有するラクトース誘導体のカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲル(1.0μmolカルボキシル基/個))への導入(TGLac修飾モノリス型シリカゲルの合成)
製造例1−1と同様に、1個当たり1.0μmol(0.45mmol/g)のカルボン酸が修飾された多孔質モノリス型シリカゲル(φ2.8×厚1mm、2.2mg、スルーポア:15〜20μm、メソポア:25〜30nm、細孔容積:0.8m/t、ジーエルサイエンス社製)40個を、ディーンスターク管を用いてトルエン(和光純薬社製)中で加熱することにより脱水した。脱水後、減圧し、トルエンを除去した。
モノリス型シリカゲル表面上のカルボン酸を活性エステル化するため、EDC(国産化学社製)201mg(1.05mmol)、NHS(和光純薬社製)124mg(1.08mmol)をDMF(和光純薬社製)0.505mLに溶かした溶液に、脱水および溶媒除去を行ったモノリス型シリカゲル40個を加えた。このモノリス型シリカゲルの入った溶液を3回、減圧脱気することにより、モノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。そのまま室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたモノリス型シリカゲルを、DMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。
【0098】
モノリス型シリカゲルへラクトース誘導体を導入するため、2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エトキシ−β−D−ラクトシド塩酸塩(化合物(V))599mg(195μmol)、およびトリエチルアミン(和光純薬社製)17μLをDMF(和光純薬社製)0.233mLに溶解させ、バイアル容器(容量1mL)に入れた。そこに活性エステル化されたモノリス型シリカゲル40個を加え、減圧脱気を3回行うことによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液を、300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80℃(最大100℃)で30分間加熱することによりラクトース誘導体を導入した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。さらに洗浄するため、DMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱し、再度、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。このマイクロ波による加熱、洗浄操作をさらに一回繰り返した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去することによりトリエチレングリコールスペーサーを介してモノリス型シリカゲルと糖鎖とが結合したラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0099】
〔製造例2−2〕
2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理
製造例2−1で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルには未反応のカルボキシル基(遊離のカルボキシル基)が残っているため、2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理を行った。
未反応のカルボン酸をNHSで活性エステル化するため、EDC(国産化学社製)100mg(0.53mmol)、及びNHS(和光純薬社製)62mg(0.54mmol)をDMF(和光純薬社製)0.252mLに溶解させた溶液に、ラクトース修飾モノリス型シリカゲルを20個加え、3回、減圧脱気することによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。活性エステル化されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルを、2−アミノエタノール(和光純薬社製)が4mL入ったバイアル容器(容量5mL)に加え、3回、減圧脱気することによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液を300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱することにより、2−アミノエタノールによるエンドキャップを行った。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF、メタノールで洗浄し、さらに洗浄するためDMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で再度洗浄した。このマイクロ波による加熱、洗浄操作をさらに一回繰り返した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去することによって2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理が施されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0100】
〔製造例3〕
トリエチレングリコールスペーサーを有するアルファ2,3−シアリルラクトース誘導体のカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲル(1.0μmolカルボキシル基/個))への導入
1個当たり1.0μmol(0.45mmol/g)のカルボキシル基が修飾されたモノリス型シリカゲル(φ2.8×厚1mm、2.2mg、スルーポア:15〜20μm、メソポア:25〜30nm、細孔容積:0.8m/t、ジーエルサイエンス社製)22個を、ディーンスターク管を用いてトルエン(和光純薬社製)中で加熱することにより脱水した。脱水後、減圧によりトルエンを除去した。
【0101】
モノリス型シリカゲル表面上のカルボン酸を活性エステル化するため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)(略称「EDC」、国産化学社製)110mg(0.558mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(略称「NHS」、和光純薬社製)68mg(0.591mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(略称「DMF」、和光純薬社製)0.280mLに溶かした溶液に、脱水そして溶媒除去を行ったモノリス型シリカゲル22個を入れた。このモノリス型シリカゲルの入った溶液を3回、減圧脱気することにより、モノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。そのまま室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたモノリス型シリカゲルを、DMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。
【0102】
モノリス型シリカゲルへアルファ2、3−ラクトース誘導体を導入するため、アルファ2,3−シアリルラクトース(化合物(VIII))29.9mg(39μmol)、およびトリエチルアミン(和光純薬社製)5μLをDMF(和光純薬社製)94μLに溶解させ、バイアル容器(容量1mL)に入れた。そこに活性エステル化されたモノリス型シリカゲル20個を入れ、減圧脱気を3回行うことによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液にDMF(和光純薬社製)150μLを加え、300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80℃(最大100℃)で30分間加熱することによりアルファ2,3−シアリルラクトース誘導体を導入した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。さらに洗浄するため、DMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱し、再度、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。さらに洗浄するため、純水(MilliQ)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により70度(最大100度)で30分間加熱し、再度、モノリス型シリカゲルを純水(MilliQ)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去することによりトリエチレングリコールスペーサーを介してモノリス型シリカゲルと糖鎖とが結合したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0103】
〔製造例4〕
トリエチレングリコールスペーサーを有するアルファ2,6−シアリルラクトース誘導体のカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲル(1.0μmolカルボキシル基/個))への導入
製造例3と同様に、1個当たり1.0μmol(0.45mmol/g)のカルボキシル基が修飾されたモノリス型シリカゲル(φ2.8×厚1mm、2.2mg、スルーポア:15〜20μm、メソポア:25〜30nm、細孔容積:0.8m/t、ジーエルサイエンス社製)20個を、ディーンスターク管を用いてトルエン(和光純薬社製)中で加熱することにより脱水した。脱水後、減圧し、トルエンを除去した。
【0104】
モノリス型シリカゲル表面上のカルボン酸を活性エステル化するため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)(略称「EDC」、国産化学社製)110mg(0.558mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(略称「NHS」、和光純薬社製)68mg(0.591mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(略称「DMF」、和光純薬社製)0.280mLに溶かした溶液に、脱水そして溶媒除去を行ったモノリス型シリカゲル20個を入れた。このモノリス型シリカゲルの入った溶液を3回、減圧脱気することにより、モノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。そのまま室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたモノリス型シリカゲルを、DMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。
【0105】
モノリス型シリカゲルへアルファ2、6−ラクトース誘導体を導入するため、アルファ2,6−シアリルラクトース(化合物(IX))19mg(25μmol)、およびトリエチルアミン(和光純薬社製)3μLをDMF(和光純薬社製)60μLに溶解させ、バイアル容器(容量1mL)に入れた。そこに活性エステル化されたモノリス型シリカゲル13個を入れ、減圧脱気を3回行うことによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液にDMF(和光純薬社製)160μLを加え、300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80℃(最大100℃)で30分間加熱することによりアルファ2,6−シアリルラクトース誘導体を導入した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。さらに洗浄するため、DMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱し、再度、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。さらに洗浄するため、純水(MilliQ)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により70度(最大100度)で30分間加熱し、再度、モノリス型シリカゲルを純水(MilliQ)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去することによりトリエチレングリコールスペーサーを介してモノリス型シリカゲルと糖鎖とが結合したアルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0106】
比較製造例に用いたパラアミノフェニルラクトシド(pAPLac)の合成
以下のスキーム4に従ってパラアミノフェニルラクトシド(pAPLac)を合成した。
【0107】
スキーム4
【化15】

【0108】
パラニトロフェニルラクトシド(化合物VI)(アルドリッチ社製)500mg(1.07mmol)をメタノール(和光純薬社製)400mLに溶解し、1滴の特級塩酸(和光純薬社製)と触媒量の水酸化パラジウムカーボン(アルドリッチ社製)を加え、水素に置換した。水素雰囲気下、室温で2時間攪拌した後、水酸化パラジウムカーボンをろ過により除き、そのろ液を減圧濃縮することで目的のパラアミノフェニルラクトシド(化合物VII)(465mg,99%)を得た。
【0109】
1H-NMR (400MHz, D2O) : δ 7.24 (d, 2H, J 9.2 Hz, pNP), 7.09 (d, 2H, J 9.2 Hz, pNP),5.04 (d, 1H, J 7.6 Hz, Glc-1), 4.34 (d, 1H, J 8.0 Hz, Gal-1), 3.86(d, 1H, J 11.2 Hz, Glc-6), 3.79 (d, 1H, J 3.2 Hz, Gal-4), 3.86(dd, 1H, J 4.4, 12.0 Hz, Gal-6), 3.72 -3.58 (m, 7H, Gal-6, Gal-6, Gal-5, Glc-6, Glc-5, Glc-4 Glc-3), 3.55 -3.50 (m, 2H, Glc-4), 3.53 (dd, 1H, J 3.2, 10.0 Hz, Gal-3), 3.42 (dd, 1H, J 8.0, 10.0 Hz, Gal-2), 3.51-3.47 (m, 1H, Glc-2). 13C-NMR (100.5MHz, D2O): δ 156.8, 124.9, 124.5, 117.9, 103.1, 100.0, 78.2, 75.6, 75.2, 74.3, 72.7, 71.1, 68.7, 61.2, 60.0.
【0110】
〔比較製造例1−1〕
パラアミノフェニル(pAP)スペーサーを介したラクトースのカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲル(2.7μmolカルボキシル基/個))への導入(pAP修飾モノリス型シリカゲルの合成)(80℃で縮合させた場合)
製造例1−1と同様に、1個当たり2.7μmol(1.2mmol/g)のカルボン酸が修飾された多孔質モノリス型シリカゲル(φ2.8×厚1mm、2.3mg、スルーポア:15〜20μm、メソポア:25〜30nm、細孔容積:0.8m/t、ジーエルサイエンス社製)50個を、ディーンスターク管を用いてトルエン(和光純薬社製)中で加熱することにより脱水した。脱水後、減圧し、トルエンを除去した。
モノリス型シリカゲル表面上のカルボン酸を活性エステル化するため、EDC(国産化学社製)259mg(1.35mmol)、NHS(和光純薬社製)155mg(1.35mmol)をDMF(和光純薬社製)0.63mLに溶かした溶液に、脱水および溶媒除去を行ったモノリス型シリカゲル50個を加えた。このモノリス型シリカゲルの入った溶液を3回、減圧脱気することにより、モノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。そのまま室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたモノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。
【0111】
モノリス型シリカゲルへ糖鎖を導入するため、パラアミノフェニル−β−D−ラクトシド(化合物(VII))125mg(289μmol)をDMF(和光純薬社製)0.233mLに溶解させ、バイアル容器(容量1mL)に入れた。そこに活性エステル化されたモノリス型シリカゲル50個を加え、減圧脱気を3回行うことによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液を、300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80℃(最大100℃)で30分間加熱することにより糖鎖を導入した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。さらに洗浄するため、DMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱し、再度、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した、このマイクロ波による加熱、洗浄操作をさらに一回繰り返した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去することによりpAPスペーサーを介してモノリス型シリカゲルと糖鎖とが結合したラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0112】
〔比較製造例1−2〕
2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理
比較製造例1−1で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルには未反応のカルボキシル基(遊離のカルボキシル基)が残っているため、2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理を行った。
未反応のカルボン酸をNHSで活性エステル化するため、EDC(国産化学社製)130mg(0.68mmol)、及びNHS(和光純薬社製)76mg(0.68mmol)をDMF(和光純薬社製)0.315mLに溶解させた溶液に、ラクトース修飾モノリス型シリカゲルを25個加え、3回、減圧脱気することによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。活性エステル化されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルを、2−アミノエタノール(和光純薬社製)が0.6mL入ったバイアル容器(容量5mL)に加え、3回、減圧脱気することによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液を300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱することにより、2−アミノエタノールによるエンドキャップを行った。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF、メタノールで洗浄し、さらに洗浄するためDMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により80度(最大100度)で30分間加熱した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で再度洗浄した。このマイクロ波による加熱、洗浄操作をさらに一回繰り返した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩減圧することにより溶媒を除去し、2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理が施されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0113】
〔比較製造例2〕
パラアミノフェニル(pAP)スペーサーを介したラクトースのカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲル(2.7μmolカルボキシル基/個))への導入(pAP修飾モノリス型シリカゲルの合成)(160℃で縮合させた場合)
製造例1−1と同様に、1個当たり2.7μmol(1.2mmol/g)のカルボン酸が修飾された多孔質モノリス型シリカゲル(φ2.8×厚1mm、2.3mg、スルーポア:15〜20μm、メソポア:25〜30nm、細孔容積:0.8m/t、ジーエルサイエンス社製)42個を、ディーンスターク管を用いてトルエン(和光純薬社製)中で加熱することにより脱水した。脱水後、減圧し、トルエンを除去した。
モノリス型シリカゲル表面上のカルボン酸を活性エステル化するため、EDC(国産化学社製)82mg(0,428mmol)、NHS(和光純薬社製)52mg(0.449mmol)をDMF(和光純薬社製)0.257mLに溶かした溶液に、脱水および溶媒除去を行ったモノリス型シリカゲル42個を加えた。このモノリス型シリカゲルの入った溶液を3回、減圧脱気することにより、モノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。そのまま室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたモノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。残っているカルボン酸をさらに活性エステル化するため、EDC(国産化学社製)82mg(428mmol)、NHS(和光純薬社製)52mg(449mmol)をDMF(和光純薬社製)0.257mLに溶かした溶液に、一度目の活性エステル化処理後のモノリス型シリカゲルを40個加えた。この溶液を3回、減圧脱気し、モノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。そのまま室温で1晩放置し、NHSで活性エステル化されたモノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、アセトン(和光純薬社製)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去した。
【0114】
モノリス型シリカゲルへ糖鎖を導入するため、パラアミノフェノキシβ−D−ラクトシド(pAPLac)100mg(231μmol)をDMF(和光純薬社製)0.5mLに溶解させ、バイアル容器(容量1mL)に入れた。そこに活性エステル化されたモノリス型シリカゲル40個を加え、減圧脱気を3回行うことによりモノリス型シリカゲルに含まれる空気を除いた。減圧脱気した溶液を、300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により160℃で30分間加熱することにより糖鎖を導入した。加熱後、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。さらに洗浄するため、DMF(和光純薬社製)中で300Wのマイクロ波(東京理化器械社製、MWO−1000)により160度で30分間加熱し、再度、モノリス型シリカゲルをDMF(和光純薬社製)、メタノール(和光純薬社製)で洗浄した。このマイクロ波による加熱、洗浄操作をさらに一回繰り返した。洗浄後のモノリス型シリカゲルを1晩、減圧し、溶媒を除去することによりpAPスペーサーを介してモノリス型シリカゲルと糖鎖とが結合したラクトース修飾モノリス型シリカゲルを得た。
【0115】
製造例1−1〜比較製造例2で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルの特徴を表1−1に示す。
【表1−1】

※TGはトリエチレングリコールスペーサーを、pAPは、パラアミノフェニルスペーサーを意味する。
【0116】
TG/DTAによるモノリスに固定化した糖鎖の重量測定
モノリスに固定化した糖鎖の重量を測定するため、示差熱熱重量同時測定装置(TGDTA、EXSTAR6000、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて重量減少率を測定した。
TG/DTA測定に用いたモノリスは50℃、14時間減圧下で乾燥させた。TG/DTA測定における昇温は、室温から130℃まで1分間あたり20度の速度で温度を上昇させた。130℃で5分間保った後、さらに130℃から800℃まで1分間あたり40℃の速度で温度を上昇させ、800℃で5分間保持した。
糖鎖が未修飾のカルボキシル基修飾モノリスを含め、それぞれのモノリスの重量減少率と、重量減少率から次の計算式に基づき計算したラクトースまたはラクトースと2−アミノエタノールの修飾量を以下の表1−2に示す。

修飾量(μg)={[ラクトース修飾モノリスの重量(mg)×[100(%)−130度までにおける重量減少率(%)]/100}×{[ラクトース修飾モノリスの重量減少率(%)−糖鎖未修飾モノリスの重量減少率(%)]/100}×1000
ラクトース誘導体の固定化量(nmol)=修飾量(μg)/(ラクトース誘導体の分子量−水の分子量)×1000
【表1−2】

*糖鎖または糖鎖+2−アミノエタノールの修飾量
ラクトース修飾モノリスはカルボキシル基修飾モノリスにラクトースを修飾したものであり、その修飾量は糖鎖未修飾のカルボキシル基修飾モノリスの重量減少を引いた値になる。
【0117】
TG/DTAの結果から比較製造例1−1、1−2、2で調製したpAPスペーサーのラクトース修飾モノリスに比べて、製造例1−1、1−2、2−1、2−2で調製したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリスのラクトース修飾量は大きく、ラクトースが多く固定化されていることがわかった。また、エンドキャップ修飾時の重量減少量の変化は、エンドキャップ基が修飾されることによる重量変化と、修飾官能基の脱離による変化によるものであり、ラクトース修飾時の重量変化よりも僅かであった。
【0118】
〔実施例1〕
SPRセンサーによる糖結合性タンパク質の検出
1)ラクトース固定化センサーチップの作成
Biacore社より市販されているSIA kit Auの金基板を、63μmol/Lのラクトシル−セラミドのチオオクト酸誘導体のメタノール(和光純薬社製)溶液2mLに、室温で24時間浸漬した。その後、メタノール、水の順で3回洗浄することにより、ラクトース固定化センサーチップを作成した。得られたセンサーチップは、自己組織化により高密度にラクトースが固定化されている。糖結合性タンパク質であるリシンと、センサーチップに高密度に固定化されたラクトースとの高い親和性を利用して、表面プラズモン共鳴バイオセンサーを用いてリシンを高感度に検出、定量できる。
【0119】
2)表面プラズモン共鳴(SPR)測定
得られたラクトース固定化センサーチップを、市販の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore3000またはT−100、Biacore社製)に装着して、設定温度25℃、流速10μL/minでHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液を流した。計測前にセンサーグラムが安定したことを確認した。糖結合性タンパク質はリシン120(Ricinus communis agglutinin120、Vector社製)を用い、HEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液で調製した。該HEPES緩衝液で1μg/mL(8.3 nM)に調製したリシン120溶液を、流速10μL/minで50μLインジェクトした。その結果、図2に示すように、リシン120の検出強度は実施例1で697RUであった。なお、「RU」は「Resonance unit」の略で、基板表面に物質が吸着、付着、固定化されると、その量に応じて値が増大することを意味する。Biacore社によると、1RU=約1pg/mmである。
【0120】
3)糖修飾モノリス型シリカゲルによる糖結合性タンパク質の吸着能力のSPRによる評価
製造例1−1、1−2および比較製造例1−1、1−2で調製した、4種類のラクトース修飾モノリス型シリカゲルをエッペンドルフのチップ先に熱で融着させることにより取り付けた。HEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液で調製した各濃度のリシン120(Ricinus communis agglutinin 120、Vector製)100μg/mL・100μL、10μg/mL・100 μL、1μg/mL・200μLを、それぞれトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル(未エンドキャッピング)を取り付けたエッペンドルフのチップへ入れ、吐出、吸引を10往復繰り返してモノリス型シリカゲルにリシン120を吸着させた。それらの溶液を100μg/mLの濃度では該HEPES緩衝液で100倍(10×10)に希釈し、10μg/mLの濃度では該HEPES緩衝液で10倍に希釈した。この希釈操作により、モノリス型シリカゲルにリシン120が全く吸着していない場合のリシン120の濃度は1μg/mLになる。なお1μg/mLの濃度ではモノリス型シリカゲルを通した溶液をそのまま使用した。
【0121】
ラクトース固定化センサーチップを、市販の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore3000、Biacore社製)に装着後、設定温度25℃、流速10μL/minでHEPES緩衝液(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)を流して、計測前にセンサーグラムが安定したことを確認した。製造例1−1で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通し、さらに希釈した液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈)、または1μg/mLの濃度では通した液を、この表面プラズモン共鳴バイオセンサーにそれぞれ50μL(5分間)打ち込み、センサーグラムを測定した。また比較のためモノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLの濃度のリシン120のHEPES緩衝液(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)50μL(5分間)を標準として打ち込み、センサーグラムを測定した。
【0122】
その結果、図2に示すように、モノリス型シリカゲルに通していないHEPES緩衝液では良好なセンサーグラムが得られ、リシン120の検出強度は697RUであった。
【0123】
一方、製造例1−1で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、流速100μg/mLでは52RU、10μg/mLでは32RU、1μg/mLでは210RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLのリシン120のセンサーグラムの検出強度697RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0124】
この結果から、製造例1−1で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルが効率よくリシン120を吸着、除染できることが確認できた。
【0125】
同様の手順で、製造例1−2で調製した、2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理が施されたラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるリシン120の吸着能を評価した。
その結果、図3に示すように、エンドキャップ処理が施された該ラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは154RU、10μg/mLでは190RU、1μg/mLでは500RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない溶液(1μg/mL)のリシン120のセンサーグラムの検出強度903RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0126】
この結果から、製造例1−2で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルが効率よくリシン120を吸着、除染できることが確認できた。
【0127】
〔比較例1〕
また同様の手順で、比較製造例1−1で調製した、pAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるリシン120の吸着能を評価した。
【0128】
その結果、図4に示すように、pAPスペーサーの該ラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは564RU、10μg/mLでは139RU、1μg/mLでは283RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLのリシン120のセンサーグラムの検出強度768RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0129】
この結果から、比較製造例1−1で調製したpAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルでは、製造例1−1で調製したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルほど効率よくリシン120を吸着、除染できないことが確認された。
【0130】
また同様の手順で、比較製造例1−2で調製した、2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理が施されたpAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルを用いてリシン120の吸着能を評価した。
【0131】
その結果、図5に示すように、比較製造例1−2で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは740RU、10μg/mLでは528RU、1μg/mLでは464RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLのリシン120のセンサーグラムの検出強度783RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0132】
この結果から、比較製造例1−2で調製した、2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理が施されたpAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルは、製造例1−1、または1−2で調製したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルほど効率よくリシン120を吸着、除染できないことが確認された。
【0133】
〔実施例2〕
表面プラズモン共鳴(SPR)によるリシン60の吸着能の評価
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いたリシン120の吸着能の評価と同様の手順で、製造例1−1で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルのリシン60(Ricinus communis agglutinin 60、ホーネン社製)の吸着能を評価した。
【0134】
その結果、図6に示すように、製造例1−1で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは57RU、10μg/mLでは43RU、1μg/mLでは118RUであった。モノリスモノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLのリシン60のセンサーグラムの検出強度368RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0135】
この結果から、製造例1−1で調製したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルが、効率よくリシン60を吸着、除染できることが確認できた。
【0136】
また同様の手順で、製造例1−2で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルのリシン60の吸着能を評価した。
【0137】
その結果、図7に示すように、製造例1−2で調製したのラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは84RU、10μg/mLでは41RU、1μg/mLでは76 RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLのリシン60のセンサーグラムの検出強度500RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0138】
この結果から、製造例1−2で調製した2−アミノエタノールによるエンドキャップ処理が施されたトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルが、効率よくリシン60を吸着、除染できることが確認できた。
【0139】
以下の実施例3−1〜4−1において、Bradford法を用いたタンパク質の定量を行った。Bradford法とは、タンパク質サンプル溶液とクーマシーブルー試薬とを混和し、タンパク質を含まないバックグラウンドとの波長595nmにおける吸光度の差を分光光度計により測定することによる、タンパク質の定量方法である。
【0140】
〔実施例3−1〕
Bradford法を用いたラクトース修飾モノリス型シリカゲルのリシン60除染能の定量的評価
製造例1−1、1−2、及び比較製造例1−1、1−2で調製したラクトース修飾モノリス型シリカゲルをエッペンドルフのチップにそれぞれ取り付け、超純水(MilliQ水)または500mMの塩化ナトリウム水溶液で調製したリシン60溶液(150μg/mL、100μL)による吐出、吸引を10往復繰り返すことにより、該モノリス型シリカゲルにリシン60溶液を通した。
【0141】
超純水(MilliQ水)または500mMNaCl水溶液で調製した0、1、5、25、50、100、150μg/mLの各濃度のリシン60溶液50μLをBradford試薬(Coomassie PlusTM−The Better Bradford Assay Kit、PIERCE社製)1mLに加え、30分後に吸光光度計(日本分光社製V−580)による、595nmにおける吸光度の測定から、検量線を作成した。
【0142】
またラクトース誘導体とカルボキシル基修飾モノリス型シリカゲルとの縮合反応で用いた試薬(NHS、EDC、およびDMF)をBradford試薬に加え、その595nmの吸光度が有意に変化しないことから、これらの試薬が、本測定に影響しないことを確認した。
【0143】
超純粋(MilliQ水)または500mM塩化ナトリウム水溶液で調製したリシン60溶液を製造例1−1、1−2、2−1、2−2、及び比較製造例1−1、1−2、2の計7種のラクトース修飾モノリス型シリカゲルにそれぞれ通した(計14溶液)。その溶液50μLを量り取り、Bradford試薬1mLに加え、30分後に吸光光度計により595nmにおける吸光度を測定した。それぞれの溶液の595nmの吸光度を測定し、検量線を用いて7種のラクトース修飾モノリス型シリカゲルに吸着されずに残っているリシン60の濃度を定量した。
【0144】
7種のラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した後の溶液中に残っているリシン60濃度、および除染率を表2に示す。
【表2】

※除染率=(150−定量されたリシン60の濃度)/150×100
【0145】
これらの結果から、トリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル(製造例1−1)、およびエンドキャップ処理が施されたトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル(製造例1−2)は、純水(MilliQ水)中および500mM塩化ナトリウム水溶液の双方で、効率よくリシン60を吸着、除染できることが確認できた。
【0146】
一方、エンドキャップ処理を施したpAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル(比較製造例1−2)では、ほとんどリシン60を吸着することができなかった。エンドキャップ処理を施していないpAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル(比較製造例1−1)では、純水中のみリシン60を吸着することができたが、500mM塩化ナトリウム水溶液中ではリシン60をほとんど吸着することができなかった。これらの結果は、表面プラズモン共鳴(SPR)によるリシン60の吸着能の評価の結果とほぼ一致した。
【0147】
〔実施例3−2〕
ラクトース修飾モノリス型シリカゲルに吸着されたリシン60の溶出実験
ラクトース修飾モノリス型シリカゲルに吸着されたリシン60が、モノリス型シリカゲル表面上のラクトースと結合して吸着されているのかを調べるため、下記の手順でラクトース修飾モノリス型シリカゲルに吸着されたリシン60の溶出実験を行った。
【0148】
実施例3−1において使用したリシン60吸着後のラクトース修飾モノリス型シリカゲル(計14個)のそれぞれを3mLの超純水(MilliQ水)で洗浄した。洗浄後のモノリス型シリカゲルに50mMのラクトース水溶液100μLを加え、吐出、吸引を10往復繰り返した。そのラクトース水溶液を50μL量り取り、Bradford試薬1mLに加え、30分後に吸光光度計により595nmにおける吸光度を測定した。モノリス型シリカゲルから溶出するリシン60の濃度を、検量線を用いて定量した結果を表3に示す。
なお、50mMのラクトース水溶液50μLをBradford試薬に加え、その595nmの吸光度が有意に変化しないことから、50mMのラクトース水溶液が、本測定に影響しないことを確認した。
【0149】
【表3】

※溶出率(%)=定量されたリシン60の濃度/150×100
【0150】
トリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル(製造例1−1、2−2)、エンドキャップ処理を施したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル(製造例1−2、2−1)は、超純水中および500mM塩化ナトリウム水溶液中の双方において、リシン60の吸着量が大きいほど、ラクトースにより溶出されるリシン60の濃度が高い。一方、pAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル(比較製造例1−1、1−2、2)では、純水中および500mM塩化ナトリウム水溶液中の双方において、リシン60の吸着に関係なくラクトースにより溶出されるリシン60の濃度は低かった。
【0151】
これは、トリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルでは、リシン60は、該モノリス型シリカゲル上の糖鎖と特異的に結合し、安定に吸着されている一方で、pAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルでは、モノリス型シリカゲル上のカルボキシル基との静電的な相互作用やモノリス型シリカゲルの空隙との物理的相互作用などにより、リシン60が不安定に吸着されていることを示唆する。すなわち、トリエチレングリコールスペーサーを用いたラクトース修飾モノリス型シリカゲルは、pAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルと比べて、リシン60との親和力が高く、リシン60を効率的に除去できる。
【0152】
ラクトース修飾モノリス型シリカゲルが、他のタンパク質と非特異的に結合しないかを調べるため、一般的なタンパク質であるアルブミンやレクチン(糖結合性タンパク質)を用いて、その吸着能力を調べた。
【0153】
〔実施例4−1〕
Bradford法を用いたBSA(Bovine Serum Albumin)の吸着評価
製造例2−1で調製したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル、製造例2−2で調製したエンドキャップ処理を施したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル、および未修飾のカルボン酸モノリス型シリカゲル(未エンドキャッピング、1個当たり1.0μmolカルボン酸修飾)のそれぞれを取り付けたエッペンドルフのチップに、実施例3−1と同様、超純水(MilliQ水)または500mMの塩化ナトリウム水溶液で調整したBSA(150μg/mL、100μL)をそれぞれ入れ、吐出、吸引を10往復繰り返した。
【0154】
超純水(MilliQ水)および500mM塩化ナトリウム水溶液で調製した0、1、5、25、50、100、150μg/mLの各濃度のBSA溶液50μLをBradford試薬1mLに加え、30分後に吸光光度計により595nmにおける吸光度を測定し、検量線を作成した。
【0155】
前記3種類のモノリス型シリカゲルに通した溶液(超純水(MilliQ水)、500mM塩化ナトリウム水溶液 計6溶液)50μLを量り取り、Bradford試薬1mLに加え、30分後に、吸光光度計により595nmにおける吸光度を測定した。それぞれの溶液の595nm吸光度から、検量線を用いてモノリス型シリカゲルに吸着されずに残っているBSAの濃度を定量した。その結果を表4に示す。
【0156】
【表4】

※吸着率(%)=(150−定量されたBSAの濃度)/150×100
【0157】
以上の結果からラクトース修飾モノリス型シリカゲルは、BSAの非特異的な吸着が僅少であることがわかった。
【0158】
〔実施例4−2〕
Bradford法を用いたN−アセチルグルコサミン、N−アセチルノイラミン酸結合性タンパク質WGA(Wheat germ agglutinin、小麦胚芽レクチン)の吸着評価
製造例2−1で調製したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル、製造例2−2で調製したエンドキャップ処理を施したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲル、および未修飾のカルボン酸モノリス型シリカゲル(未エンドキャッピング、1個当たり1.0μmolカルボン酸修飾)のそれぞれを取り付けたエッペンドルフのチップに実施例3−1、実施例4−1と同様、超純水(MilliQ水)または500mMの塩化ナトリウム水溶液で調製したWGA(150μg/mL、100μL)をそれぞれ入れ、吐出、吸引を10往復繰り返した。
【0159】
超純水(MilliQ水)および500mM塩化ナトリウム水溶液で調製した0、1、5、25、50、100、150μg/mLの各濃度のWGA溶液50μLをBradford試薬1mLに加え、30分後に、吸光光度計により595nmにおける吸光度を測定し、検量線を作成した。
【0160】
前記3種類のモノリス型シリカゲルに通した溶液(超純水(MilliQ水)、500mM塩化ナトリウム水溶液 計6溶液)50μLを量り取り、Bradford試薬1mLに加え、30分後に、吸光光度計により595nmにおける吸光度を測定した。それぞれの溶液の595nm吸光度から、検量線を用いてモノリス型シリカゲルに吸着されずに残っているWGAの濃度を定量した。その結果を表5に示す。
【表5】

※吸着率(%)=(150−定量されたWGAの濃度)/150×100
【0161】
以上の結果からラクトース修飾モノリス型シリカゲルは、WGAの非特異的な吸着が僅少であることがわかった。
【0162】
実施例4−1及び4−2の測定結果は、本発明に係るラクトース誘導体修飾体が、リシン以外のタンパク質を非特異的に吸着せず、極めて効率的にリシン含有汚染液を無毒化できることを示す。これに対し、一般的な活性炭カラムを使用した場合には、タンパク質など汚染液中に含まれる様々な夾雑物が活性炭に吸着することから、目詰まりを起こし、すぐに使用できなくなる。また、一般的な活性炭カラムは、リシン以外のタンパク質を非特異的に吸着することから、リシン吸着能を著しく減少させる。
【0163】
〔実施例5〕
SPRセンサーによる糖結合性タンパク質の検出
1)アルファ2,3−シアリルラクトース及びアルファ2,6−シアリルラクトース固定化センサーチップの作成
特開2006−347908号公報に記載されているアルファ2,3−シアリル−N−アセチルラクトサミニド及びアルファ2,6−シアリル−N−アセチルラクトサミニドのチオオクト酸誘導体の合成方法と同様に、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)で活性化したチオオクト酸と、アルファ2,3−シアリルラクトース又はアルファ2,6−シアリルラクトースとを、DMF中で反応させることにより、アルファ2,3−シアリルラクトース及びアルファ2,6−シアリルラクトースのチオオクト酸誘導体を合成した。
【0164】
Biacore社より市販されているSIA kit Auの金基板を100mg/Lのアルファ2,3−シアリルラクトースまたは、アルファ2,6−シアリルラクトースのチオオクト酸誘導体のメタノール(和光純薬社製)溶液1mLに室温で24時間浸漬した。その後、メタノール、水の順で3回洗浄することにより、アルファ2,3−シアリルラクトース及びアルファ2,6−シアリルラクトース固定化センサーチップを作成した。得られたセンサーチップは、自己組織化により高密度にアルファ2,3−シアリルラクトースまたはアルファ2,6−シアリルラクトースが固定化されている。糖結合性タンパク質でありインフルエンザの表面タンパクでもあるヘマグルチニンと、センサーチップに高密度に固定化されたアルファ2,3−シアリルラクトースまたは、アルファ2,6−シアリルラクトースとの高い親和性を利用して、表面プラズモン共鳴バイオセンサーを用いてインフルエンザの表面タンパクであるヘマグルチニンを高感度に検出、定量できる。
【0165】
2)シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるインフルエンザのヘマグルチニンの吸着能力のSPRによる評価
製造例3、4で調製した、2種類のシアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルをエッペンドルフのチップ先に熱で融着させることにより取り付けた。
HEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液で調製した各濃度のヘマグルチニン100μg/mL・100μL、10μg/mL・100 μL、1μg/mL・100μLをそれぞれシアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルを取り付けたエッペンドルフのチップへ入れ、吐出、吸引を10往復繰り返してシアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルにヘマグルチニンを吸着させた。それらの溶液を100μg/mLの濃度では該HEPES緩衝液で100倍(10×10)に希釈し、10μg/mLの濃度では該HEPES緩衝液で10倍に希釈した。この希釈操作により、モノリス型シリカゲルにヘマグルチニンが全く吸着していない場合のインフルエンザのヘマグルチニンの濃度は1μg/mLになる。なお1μg/mLの濃度ではモノリス型シリカゲルを通した溶液をそのまま使用した。
【0166】
吸着実験にはヘマグルチニンH5N1 A Vietnum1203/2004(Protein Science社製)を用いた。
アルファ2,3−シアリルラクトース固定化センサーチップを市販の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore3000、Biacore社製)に装着後、設定温度25℃、流速10μL/minでHEPES緩衝液(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)を流して、計測前にセンサーグラムが安定したことを確認した。製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通し、さらに希釈した液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈)、または1μg/mLの濃度では通した液を、この表面プラズモン共鳴バイオセンサーにそれぞれ50μL(5分間)打ち込み、センサーグラムを測定した。また比較のためモノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLの濃度のヘマグルチニンのHEPES緩衝液(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)50μL(5分間)を標準として打ち込み、センサーグラムを測定した。
【0167】
その結果、図8に示すように、モノリス型シリカゲルに通していないヘマグルチニンH5N1の緩衝液では良好なセンサーグラムが得られ、ヘマグルチニンH5N1の検出強度は1000RUであった。
【0168】
一方、製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは235RU、10μg/mLでは102RU、1μg/mLでは79RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLのヘマグルチニンのセンサーグラムの検出強度1000RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0169】
この結果から、製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルが効率よくヘマグルチニンH5N1を吸着、除染できることが確認できた。
【0170】
また同様の手順で、製造例3で調製した、アルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルを用いてヘマグルチニンH3N1 A Panama2007/99(Protein Science社製)の吸着能を評価した。なお表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore3000、Biacore社製)にはアルファ2,6−シアリルラクトース固定化センサーチップを用いた。
【0171】
その結果、図9に示すように、製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは56RU、10μg/mLでは155RU、1μg/mLでは200RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLのヘマグルチニンのセンサーグラムの検出強度872RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0172】
この結果から、製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルが効率よくヘマグルチニンH3N1を吸着、除染できることが確認できた。
【0173】
また同様の手順で、製造例4で調製した、アルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルを用いてヘマグルチニンH3N1 A Panama2007/99(Protein Science社製)の吸着能を評価した。なお表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore3000、Biacore社製)にはアルファ2,6−シアリルラクトース固定化センサーチップを用いた。
【0174】
その結果、図10に示すように、製造例4で調製したアルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では100倍(10×10)に希釈、10μg/mLの濃度では10倍に希釈、1μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは37RU、10μg/mLでは32RU、1μg/mLでは47RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない1μg/mLのヘマグルチニンのセンサーグラムの検出強度758RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0175】
この結果から、製造例4で調製したアルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルが効率よくヘマグルチニンH3N1を吸着、除染できることが確認できた。
【0176】
また同様の手順で、製造例3で調製した、アルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルを用いて不活性化インフルエンザウイルスH3N2 A Panama2007/99(Protein Science社製)の吸着能を評価した。なお表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore3000、Biacore社製)にはアルファ2,6−シアリルラクトース固定化センサーチップを用いた。
【0177】
その結果、図11に示すように、製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では50倍(10×5)に希釈、10μg/mLの濃度では5倍に希釈、2μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは8RU、10μg/mLでは19RU、2μg/mLでは95RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない2μg/mLの不活性化インフルエンザウイルスのセンサーグラムの検出強度157RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0178】
この結果から、製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルが効率よく不活性化インフルエンザウイルスを吸着、除染できることが確認できた。
【0179】
また同様の手順で、製造例4で調製した、アルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルを用いて不活性化インフルエンザウイルスH3N2 A Panama2007/99(Protein Science社製)の吸着能を評価した。なお表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore3000、Biacore社製)にはアルファ2,6−シアリルラクトース固定化センサーチップを用いた。
【0180】
その結果、図12に示すように、製造例4で調製したアルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルに通した溶液(100μg/mLの濃度では50倍(10×5)に希釈、10μg/mLの濃度では5倍に希釈、2μg/mLでは希釈なし)のセンサーグラムの強度は、100μg/mLでは7RU、10μg/mLでは19RU、2μg/mLでは42RUであった。モノリス型シリカゲルに通していない2μg/mLの不活性化インフルエンザウイルスのセンサーグラムの検出強度155RUとの差がモノリス型シリカゲルに吸着された量である。
【0181】
この結果から、製造例4で調製したアルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルが効率よく不活性化インフルエンザウイルスを吸着、除染できることが確認できた。
【0182】
実施例5の測定結果は、本発明に係るシアリルラクトース誘導体修飾体が、極めて効率的にインフルエンザウイルス含有汚染液を無毒化できることを示す。これに対し、一般的な活性炭カラムを使用した場合には、タンパク質など汚染液中に含まれる様々な夾雑物が活性炭に吸着することから、目詰まりを起こし、すぐに使用できなくなる。また、一般的な活性炭カラムは、インフルエンザウイルス以外のタンパク質を非特異的に吸着することから、インフルエンザウイルス吸着能を著しく減少させる。
【産業上の利用可能性】
【0183】
以上のとおり、本発明は、周囲環境に悪影響を与えることなく、毒素またはウィルスに汚染された洗浄液等の液を簡便かつハイスループットで固相抽出する方法および無毒化する方法、並びにそれを用いる固相抽出用捕集剤および除染剤を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】モノリス型シリカゲルの電子顕微鏡写真 (図中、(a)は、モノリス型シリカゲルの電子顕微鏡写真であり、W.D.(ワーキングディスタンスの略)は、物質に焦点を合わせる為の入力値を、kVは、加速電圧値を、xは、測定倍率を、μmは、単位長さ(10μmの場合には、数値の上部の10個のドットで10μmを表現する)をそれぞれ意味する。また、(b)は(a)の拡大図である。)
【図2】製造例1−1で調製したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるリシン120の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないリシン120溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(1μg/mL、200μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図3】製造例1−2で調製したエンドキャップ処理が施されたトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるリシン120の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないリシン120溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(1μg/mL、200μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図4】比較製造例1−1で調製したpAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるリシン120の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないリシン120溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(1μg/mL、200μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図5】比較製造例1−2で調製したエンドキャップ処理が施されたpAPスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるリシン120の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないリシン120溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン120溶液(1μg/mL、200μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図6】製造例1−1で調製したトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるリシン60の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないリシン60溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン60溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン60溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン60溶液(1μg/mL、200μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図7】製造例1−2で調製したエンドキャップ処理が施されたトリエチレングリコールスペーサーのラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるリシン60の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないリシン60溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン60溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン60溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したリシン60溶液(1μg/mL、200μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図8】製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるヘマグルチニンH5N1の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないヘマグルチニンH5N1溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH5N1溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH5N1溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH5N1溶液(1μg/mL、100μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図9】製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるヘマグルチニンH3N1の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないヘマグルチニンH3N1溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH3N1溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH3N1溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH3N1溶液(1μg/mL、100μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図10】製造例4で調製したアルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルによるヘマグルチニンH3N1の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していないヘマグルチニンH3N1溶液(1μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH3N1溶液(100μg/mL、100μL)を100倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH3N1溶液(10μg/mL、100μL)を10倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通したヘマグルチニンH3N1溶液(1μg/mL、100μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。なお、図中(B)は、(A)におけるヘマグルチニンH3N1溶液注入前50秒から注入後300秒までのセンサーグラムの拡大図である。)
【図11】製造例3で調製したアルファ2,3−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルによる不活性化インフルエンザウイルスH3N2の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していない不活性化インフルエンザウイルスH3N2溶液(2μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通した不活性化インフルエンザウイルスH3N2溶液(100μg/mL、100μL)を50倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通した不活性化インフルエンザウイルスH3N2溶液(10μg/mL、100μL)を5倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通した不活性化インフルエンザウイルスH3N2溶液(2μg/mL、100μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図12】製造例4で調製したアルファ2,6−シアリルラクトース修飾モノリス型シリカゲルによる不活性化インフルエンザウイルスH3N2の除染効果を評価するためのSPRセンサーグラム(図中、a)は、該モノリス型シリカゲルに通していない不活性化インフルエンザウイルスH3N2(2μg/mL)のセンサーグラムを、b)は、該モノリス型シリカゲルに通した不活性化インフルエンザウイルスH3N2溶液(100μg/mL、100μL)を50倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、c)は、該モノリス型シリカゲルに通した不活性化インフルエンザウイルスH3N2溶液(10μg/mL、100μL)を5倍に希釈した溶液のセンサーグラムを、d)は、該モノリス型シリカゲルに通した不活性化インフルエンザウイルスH3N2溶液(2μg/mL、100μL)のセンサーグラムをそれぞれ意味する。)
【図13】本発明の処理過程を模式的に示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Lは親水性スペーサーであり、XはOまたはSであり、Rは−OHまたは−NHCOCHであり;RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または下記式(2)
【化2】

で示されるシアル酸残基(式中、−COOMは、−COOHまたはその生理的に許容される塩であり、Acはアセチル基を意味する。)である。)
で表されるラクトース誘導体を含む無機系多孔質体であって、
該ラクトース誘導体の末端アミノ基にアミド結合するカルボキシル基を含め、総カルボキシル基が1g当たり0.25mmol以上、表面又は細孔内面に結合した該無機系多孔質体を流路の少なくとも一部に充填する工程、
該ラクトース誘導体と特異的に結合する毒素またはウィルスを含む汚染液を、該無機系多孔質体が充填された流路に流下させる工程を含み、
該汚染液中の毒素またはウィルスを該無機系多孔質体のラクトース誘導体に固定することにより該汚染液から固相抽出および除去する、汚染液の毒素またはウィルスの固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項2】
前記Rおよび前記Rが水素原子である、請求項1に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項3】
前記Rがシアル酸残基であり、前記Rが水素原子である、請求項1に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項4】
前記Rが水素原子であり、前記Rがシアル酸残基である、請求項1に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項5】
前記Lが下記式(3)
【化3】

(式中、mは1〜5の整数である。)で示される基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項6】
前記毒素がリシン60である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項7】
前記ウィルスがサーズウィルス、またはインフルエンザウィルスである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項8】
前記ラクトース誘導体のアミノ基とアミド結合していない前記無機系多孔質体上の遊離のカルボキシル基がエンドキャップ処理された、請求項1〜7のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項9】
前記無機系多孔質体が、3次元網目状に連続した孔径0.5〜500μmの貫通孔と、無機系多孔質体の表面および該貫通孔の内壁面に形成された孔径0〜400nmの細孔とを有し、骨格径が500nm以上のモノリス型シリカゲルである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項10】
前記汚染液が、使用済み洗浄液である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の固相抽出方法および無毒化方法。
【請求項11】
下記一般式(1)
【化4】

(式中、Lは親水性スペーサーであり、XはOまたはSであり、Rは−OHまたは−NHCOCHであり;RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または下記式(2)
【化5】

で示されるシアル酸残基(式中、−COOMは、−COOHまたはその生理的に許容される塩であり、Acはアセチル基を意味する。)である。)
で表されるラクトース誘導体の末端アミノ基とアミド結合したカルボキシル基を含め、総カルボキシル基が表面又は細孔内面に1g当たり少なくとも0.25mmol以上結合した無機系多孔質体を含む、毒素またはウィルス含有汚染液用の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項12】
前記Rおよび前記Rが水素原子である、請求項11に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項13】
前記Rがシアル酸残基であり、前記Rが水素原子である、請求項11に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項14】
前記Rが水素原子であり、前記Rがシアル酸残基である、請求項11に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項15】
前記Lが下記式(3)
【化6】

(式中、mは1〜5の整数である。)で示される基である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項16】
前記毒素がリシン60である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項17】
前記ウィルスがサーズウィルス、またはインフルエンザウィルスである、請求項11〜15のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項18】
前記ラクトース誘導体のアミノ基とアミド結合していない前記無機系多孔質体上の遊離のカルボキシル基がエンドキャップ処理された、請求項11〜17のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項19】
前記無機系多孔質体が、3次元網目状に連続した孔径0.5〜500μmの貫通孔と、無機系多孔質体の表面および該貫通孔の内壁面に形成された孔径0〜400nmの細孔とを有し、骨格径が500nm以上のモノリス型シリカゲルである、請求項11〜18のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。
【請求項20】
前記汚染液が、使用済み洗浄液である、請求項11〜19のいずれか一項に記載の固相抽出用捕集剤および除染剤。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−256297(P2009−256297A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127995(P2008−127995)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)文部科学省 平成19年度科学技術総合研究委託事業「重要課題解決型研究等の推進 生物化学テロにおける効果的な除染法の開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(592083915)警察庁科学警察研究所長 (23)
【出願人】(390030188)ジーエルサイエンス株式会社 (37)
【Fターム(参考)】