説明

毛髪処理方法及び毛髪処理キット

【課題】酸化剤を含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を染毛処理する場合において、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを簡易な手段によって十分に防止できる毛髪処理方法と、この毛髪処理方法を実施するための毛髪処理キットを提供する。
【解決手段】酸化剤と、染料と、(A1)並びに(A2)として特定するイオン性重合体の1種以上とを含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を処理し、次いで毛髪が濡れた状態で紫外線吸収剤を含有する後処理剤組成物を用いて処理する毛髪処理方法。これらの染毛剤組成物及び染毛後処理剤組成物を含んで構成される毛髪処理キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪処理方法及び毛髪処理キットに関する。更に詳しくは本発明は、酸化剤を含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を染毛処理する場合において、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを簡易な手段によって十分に防止できる毛髪処理方法と、この毛髪処理方法を実施するための毛髪処理キットに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化剤と染料を配合した染毛剤が広く用いられている。かかる染毛剤による染毛処理後の毛髪の色調を良好に保持するためには、その後の洗髪等の際における毛髪からの染料の流出(色落ち)を防いだり、日光等の影響による染料自体の分解(褪色)を防止するという対策が有効である。このような対策のために提案された発明として、例えば下記の特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−522726号公報。 この特許文献1には、毛髪が既に染毛されたものであることを前提として、(a)このような毛髪を疎水性及び/又はカチオン系のコンディショニング剤を含む組成物で処理し、その後、(b)毛髪を濡らし、その後そのまま、又は(c)コンディショニング剤を含む組成物で毛髪を処理した後に、(d)その毛髪を紫外線フィルターを含む組成物で処理する化粧方法が開示されている。
【0004】
この化粧方法においては、一般的なコンディショニング成分の使用によって毛髪を密封し色落ちを防止しようとする狙いと、紫外線フィルター(紫外線吸収剤)の使用によって日光等の影響による染料の褪色を防止しようとする狙いを読み取ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の化粧方法は、その段落0009や実施例の記載から分かるように、毎日行うシャンプーの度毎に特定の組成物で処理し続けることが好ましいとする方法であって、手間がかかり、又、そのことから、処理の効果に持続性のないことが理解できる。しかも、本願明細書において比較例として検証するように、十分な色落ち防止効果や褪色防止効果が得られるとは言い難い。
【0006】
そこで本発明は、酸化剤を含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を染毛処理する場合において、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを簡易な手段によって十分に防止できる毛髪処理方法を提供することを、解決すべき課題とする。更に本発明は、このような毛髪処理方法を実施するための毛髪処理キットを提供することも、解決すべき課題とする。
【0007】
本願発明者は、上記課題の解決手段を追求する過程で、(1)毛髪を染毛処理するための染毛剤そのものに特定のイオン性重合体を含有させ、しかも(2)染毛処理後ただちに(即ち、毛髪が処理後の濡れた状態にある内に)紫外線吸収剤を含有する後処理剤で処理することにより、上記の課題を解決できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、酸化剤と、染料と、下記(A1)に列挙する両性イオン性重合体並びに(A2)に列挙するカチオン性重合体から選ばれるイオン性重合体の1種以上とを含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を処理し、次いで毛髪が濡れた状態で紫外線吸収剤を含有する後処理剤組成物を用いて処理する、毛髪処理方法である。
(A1):塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸三元共重合体、アクリル酸・アクリル酸メチル・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム三元共重合体、アクリル酸・アクリルアミド・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム三元共重合体。
(A2):ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体。
【0009】
(第1発明の効果)
第1発明のように、(1)染毛剤組成物そのものに(A1)並びに(A2)に列挙する特定のイオン性重合体の1種以上を含有させ、しかも(2)その処理後、毛髪が濡れた状態で紫外線吸収剤を含有する後処理剤で処理すると、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを十分に防止できることが分かった。
【0010】
しかも第1発明の方法は、染毛剤組成物による毛髪処理とその直後の後処理剤組成物による毛髪処理のみで済む。又、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを防止する効果には十分な持続性があるため、特許文献1の化粧方法のように毛髪処理を頻繁に繰り返す必要がない。従って本発明の毛髪処理方法は、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを防止するための手段として、非常に簡易なものであるといえる。
【0011】
なお、前記した特許文献1には、既染の毛髪に対する処理剤に含有させるコンディショニング成分として種々に化学構造の異なる多様な成分が開示されている。しかし、仮に、染毛処理時に用いる染毛剤にこれらのコンディショニング成分を含有させるとした場合に、多種多様なコンディショニング成分の内の如何なる成分が好適であるか、という点の示唆は特許文献1からは全く得られない。
【0012】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る毛髪処理方法において、染毛剤組成物に含有されるイオン性重合体が(A1)に列挙する両性イオン性重合体から選ばれる1種以上である、毛髪処理方法である。
【0013】
(第2発明の効果)
染毛剤組成物に含有されるイオン性重合体としては、(A1)並びに(A2)に列挙する特定のイオン性重合体のいずれでも良いが、特に(A1)に列挙する両性イオン性重合体から選ばれたものが好ましい。
【0014】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る毛髪処理方法において、後処理剤組成物に含有される紫外線吸収剤が、安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選ばれる1種以上である、毛髪処理方法である。
【0015】
(第3発明の効果)
後処理剤組成物に含有される紫外線吸収剤の種類は、発明の効果達成上の見地からは特に限定されないが、入手容易性および毛髪処理への適合性という理由から、第3発明に列挙する紫外線吸収剤が好ましい。
【0016】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、第1発明〜第3発明のいずれかに記載の染毛剤組成物及び染毛後処理剤組成物を含んで構成されるものである、毛髪処理キットである。
【0017】
(第4発明の効果)
第4発明の毛髪処理キットにおいては、第1発明〜第3発明のいずれかに記載した毛髪処理方法を実施するために必要な製剤が一揃いに準備されているので、本発明の毛髪処理方法を容易に実施することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、酸化剤を含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を染毛処理する場合において、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを簡易な手段によって十分に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0020】
〔毛髪処理方法〕
本発明の毛髪処理方法は、以下に述べる染毛処理ステップと後処理ステップを行うことにより、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを十分に防止する効果を得る方法である。
【0021】
(染毛処理ステップ)
染毛処理ステップは、酸化剤と、染料と、後述するイオン性重合体の1種以上とを含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を処理するステップである。
【0022】
このステップにおける染毛処理は、通常は酸化染毛処理であるが、用いる染毛剤組成物が酸化剤、染料及び特定のイオン性重合体の1種以上を含有するという点を除けば、公知の各種の染毛処理と同様の実施形態にて行うことができる。
【0023】
(後処理ステップ)
後処理ステップでは、染毛処理ステップに次いで、毛髪が濡れた状態で紫外線吸収剤を含有する後処理剤組成物を用いて毛髪を処理する。
【0024】
ここにおいて「毛髪が濡れた状態で」とは、(a)染毛処理後に毛髪が水洗された状態で、(b)又はその水洗後にシャンプー、リンスで洗浄された状態で、(c)更には上記の水洗後又はシャンプー、リンスでの洗浄後にタオル等を用いて水分を拭き取った湿潤状態で、という(a)〜(c)のいずれの状態であっても良い。言い換えれば、「染毛処理後の濡れた状態にある毛髪を、乾燥させることなくそのまま」という意味である。このようなタイミングの問題を除けば、後処理ステップは公知の各種の染毛処理の後処理と同様の実施形態にて行うことができる。
【0025】
〔染毛剤組成物〕
染毛剤組成物は、少なくとも、酸化剤と、染料と、特定のイオン性重合体の1種以上とを含有する。好ましくはアルカリ剤も含有する。染毛剤組成物は通常は使用時に混合調製される2剤式や3剤式等の複数剤式に構成されるが、このような複数剤式に限定されない。通常、染料、イオン性重合体、アルカリ剤は第1剤に配合され、酸化剤は第2剤に配合されるが、このような配合形態に限定されない。
【0026】
染毛剤組成物における各剤の剤型は、公知の各種の剤型の内から任意に選択することができる。例えば、液体状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、霧状(噴霧式)、エアゾールフォーム等を例示することができる。
【0027】
(酸化剤)
酸化剤としては過酸化水素が代表的であるが、その他にも臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化物等が例示される。過酸化物としては、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が例示される。酸化剤の種類及び配合量は、技術常識に応じて適宜に決定すれば良く、特段に限定されない。
【0028】
(染料)
染料としては、限定はされないが、酸化染料中間体が配合され、必要に応じてニトロ染料等の直接染料も配合される。酸化染料中間体は主要中間体からなり、又は主要中間体とカプラーからなる。
【0029】
主要中間体としては、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノピリジン類及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の塩類を例示することができる。具体的には、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−β−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、N−β−ヒドロキシエチル−N−エチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、p−アミノフェニルスルファミン酸、2,5−ジアミノピリジン及びそれらの塩類等を例示することができる。
【0030】
カプラーとしては、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、3,3’−イミノジフェニール、1,5−ジヒドロキシナフタレンおよびタンニン酸等が例示される。
【0031】
ニトロ染料としては、4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等を例示できる。
【0032】
上記の主要中間体、カプラー、直接染料の種類及び配合量は、目的とする染毛色の色調や濃淡に応じて適宜に決定すれば良く、特段に限定されない。
【0033】
(アルカリ剤)
アルカリ剤の種類は限定されないが、例えばアンモニア、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、アンモニウム塩、有機アミン類(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等を適宜に選択して使用することができる。用いるアルカリ剤の種類及び配合量も技術常識に応じて適宜に決定すれば良く、特段に限定されない。
【0034】
(イオン性重合体)
イオン性重合体としては、下記(A1)に列挙する両性イオン性重合体並びに(A2)に列挙するカチオン性重合体から選ばれるイオン性重合体の1種以上を用いる。とりわけ、(A1)に列挙する両性イオン性重合体から選ばれる1種以上が好ましい。
【0035】
(A1):塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸三元共重合体、アクリル酸・アクリル酸メチル・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム三元共重合体、アクリル酸・アクリルアミド・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム三元共重合体。
【0036】
(A2):ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体。
【0037】
染毛剤組成物におけるイオン性重合体の含有量は必ずしも限定されないが、染毛剤組成物中の0.001〜10質量%の範囲内、とりわけ0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましい。この含有量は、染毛剤組成物が使用時に混合調製される2剤式や3剤式等の複数剤式に構成される場合には、混合調製時における含有量であることを前提とした表記である。
【0038】
〔後処理剤組成物〕
後処理剤組成物は少なくとも紫外線吸収剤を含有する。後処理剤組成物の剤型は特段に限定されず、例えば、液体状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、霧状(噴霧式)、エアゾールフォーム等を例示することができる。
【0039】
(紫外線吸収剤)
後処理剤組成物に配合する紫外線吸収剤の種類は限定されないが、安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選ばれる1種以上であることが好ましい。後処理剤組成物における紫外線吸収剤の含有量も限定されないが、0.001〜10質量%の範囲内、とりわけ0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0040】
上記した安息香酸系紫外線吸収剤の具体例としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸ブチル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラアミノ安息香酸アミル等が挙げられる。
【0041】
上記したサリチル酸系紫外線吸収剤の具体例としては、サリチル酸エチルヘキシル、サリチル酸トリエタノールアミン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸アミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸イソプロピルベンジル、サリチル酸カリウム等が挙げられる。
【0042】
上記したケイ皮酸系紫外線吸収剤の具体例としては、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、ジパラメトキシケイ皮酸−モノ−エチルヘキサン酸グリセリル等が挙げられる。
【0043】
上記したベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン−3)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸(オキシベンゾン−4)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム(オキシベンゾン−5)、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(オキシベンゾン−1)、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン−6)、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン(オキシベンゾン−2)等が挙げられる。
【0044】
〔染毛剤組成物、後処理剤組成物におけるその他の任意的成分〕
染毛剤組成物や後処理剤組成物には、上記の成分の他にも、任意に、油性成分、多価アルコール、ポリオキシエチレン(以下、POEという)(10)オクチルドデシルエーテルやラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の界面活性剤、高分子物質、ポリペプタイド、タンパク加水分解物、アミノ酸、アスコルビン酸等のビタミン類、エタノール等のアルコール、オレイン酸等の脂肪酸、香料、殺菌・防腐剤、抗炎症剤、噴射剤、増粘剤等を配合できる。又、染毛剤組成物や後処理剤組成物の各成分の溶媒又は分散媒として水が配合され、各成分の濃度が調整される。これらの配合成分の幾つかについて以下に述べる。
【0045】
(油性成分)
油性成分としては油脂、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル、シリコーン類等が挙げられる。他にも油性成分として、炭素数12未満の脂肪酸や、炭化水素、ロウ及びエステル類も挙げられる。これらは、その1種類を単独に配合し、又は2種類以上を併せ配合することができる。
【0046】
油脂としては、各種の植物油、動物油、等が挙げられる。
【0047】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0048】
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0049】
シリコーン類としては、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。アミノ変性シリコーンとしては、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。
【0050】
(多価アルコール)
多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等、グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0051】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0052】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、N,N−ジ(アシロキシ),N−(ヒドロキシエチル),N−メチルアンモニウムメトサルフェート等が例示される。
【0053】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のPOEアルキル硫酸塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類等が挙げられる。
【0054】
非イオン性界面活性剤としては、POE(20)セチルエーテル、POE(2)セチルエーテル、POE(5)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルカノールアミド類等が挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0056】
(高分子物質)
高分子物質としては、前記(A2)成分以外のカチオン性ポリマー、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマー、前記(A1)成分以外の両性ポリマー、あるいは各種の水溶性ポリマーが例示される。これらは、その1種類を単独に配合し、又は2種類以上を併せ配合することができる。
【0057】
水溶性ポリマーの具体例としては、アラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、デンプン等の植物性ポリマー、デキストラン、プルラン等の微生物系ポリマー、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン等の動物性ポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系ポリマーが例示され、その他にも、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリオキシエチレン系ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0058】
(ポリペプタイド、タンパク加水分解物、アミノ酸)
ポリペプタイドとしては、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、エッグ、シルク、コンキオリン、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質、コメ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ダイズ、エンドウ、アーモンド、ブラジルナッツ、ジャガイモ及びトウモロコシなどの植物から得られるタンパク質が挙げられる。タンパク加水分解物としては、上記の各種のタンパク質を酸、アルカリ、酵素等により加水分解したタンパク加水分解物が挙げられる。アミノ酸としては各種の酸性、中性又は塩基性アミノ酸が挙げられる。
【0059】
〔毛髪処理キット〕
本発明の毛髪処理キットは、前記いずれかの実施形態に係る染毛剤組成物及び後処理剤組成物を含んで構成されるものである。この毛髪処理キットにおいては、それぞれ保存及び使用に適した容器又は包装に収納された染毛剤組成物と後処理剤組成物がワンセットで提供される。染毛剤組成物が複数剤式に構成される場合には、それらの各剤も、それぞれ保存及び使用に適した容器又は包装に収納された状態でセットになって提供される。
【実施例】
【0060】
以下に本発明の実施例と比較例を説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例、比較例によって限定されない。
【0061】
〔実施例及び比較例の内容〕
末尾の表1に示す実施例1〜実施例9(表1において「実1」〜「実9」と表記)、表2に示す比較例1〜比較例10(表2において「比1」〜「比10」と表記)、及び表3に示す実施例10及び実施例11(表3において「実10」及び〜「実11」と表記)に係る毛髪処理方法を行った。
【0062】
以上の各実施例及び各比較例においては、染毛剤として表に示す組成の第1剤及び第2剤からなる2剤式の酸化染毛剤又は泡状酸化染毛剤を用いており、又、表に示す組成の後処理剤を用いた。表中の組成を示す数値はいずれも質量%を示す。
【0063】
(染毛処理ステップ)
各実施例及び各比較例における染毛剤組成物を用いた毛髪処理(染毛処理ステップ)は、次のように行った。即ち、クリーム状の酸化染毛剤を用いた実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例10及び液体状の酸化染毛剤を用いた実施例11においては、第1剤と第2剤を1:1の質量比で容器内で混合し、よく振とうして混合液を調製した後、その混合液をそれぞれ毛髪に塗布した。泡状の酸化染毛剤を用いた実施例10においては、第1剤及び第2剤を原液とし、この原液を噴射剤LPG3.5と共に、質量比で原液:噴射剤=96:4となるようにアクチュエーター付きエアゾール用耐圧容器に充填し、この容器から吐出される泡状の酸化染毛剤第1剤および第2剤を質量比1:1になるよう混合し、それぞれ毛髪に塗布した。
【0064】
(後処理ステップ)
各実施例及び各比較例における上記の染毛処理ステップ後の後処理剤を用いた毛髪処理(後処理ステップ)は、比較例3を除き、それぞれ、表中の「後処理」の欄に示す「A」〜「C」のいずれかのパターンで行った。これらのパターンについては以下に説明するが、その説明中、単に「シャンプー、リンス」と表現するものは、本発明の後処理剤に該当しない組成のものである。比較例3では、染毛処理ステップで酸化染毛剤を毛髪に塗布して適当な時間放置した後に毛髪を水洗してそのまま乾かしたもので、後処理ステップを行っていない。又、実施例10及び実施例11は表中の「後処理」の欄を設けていないが、いずれも「A」のパターンで後処理を行った。
【0065】
「A」のパターン:染毛処理ステップでの酸化染毛剤の毛髪への適用後、適当な時間放置してから毛髪を水洗し、次いでシャンプー、リンスで毛髪を洗浄してからタオルで毛髪の水分を拭き取り、その濡れた状態で後処理剤を毛髪に塗布して、そのままドライヤーで乾燥させた。
【0066】
「B」のパターン:染毛処理ステップでの酸化染毛剤の毛髪への適用後、適当な時間放置してから毛髪を水洗し、次いでシャンプー、リンスで毛髪を洗浄してからタオルで毛髪の水分を拭き取り、そのままドライヤーで乾燥させた。そして24時間後に、シャンプー、リンスで毛髪を洗浄してからタオルで毛髪の水分を拭き取り、その濡れた状態で後処理剤を毛髪に塗布して、そのままドライヤーで乾燥させた。
【0067】
「C」のパターン:染毛処理ステップでの酸化染毛剤の毛髪への適用後、適当な時間放置してから毛髪を水洗し、次いでシャンプー、リンスで毛髪を洗浄してからタオルで毛髪の水分を拭き取り、そのままドライヤーで乾燥させた。そして、24時間後に、ラウレス硫酸ナトリウム8質量%、コカミドプロピルベタイン5質量%、プロピレングリコール3質量%、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸三元共重合体1.5質量%及び水(残分)からなる組成のシャンプー剤で洗浄し、次いで本発明の後処理剤をリンスとして使用してから、タオルで毛髪の水分を拭き取り、ドライヤーで乾燥させた。
【0068】
〔実施例及び比較例の評価〕
以上の内容の各実施例及び各比較例に係る毛髪処理方法について、下記の各評価項目を下記の評価要領に基づいて評価した。それらの評価の結果を各表の該当欄に示す。
【0069】
(酸化染毛剤使用後の流し時の指通り)
酸化染毛剤を毛髪に塗布し、放置後に水洗する際の毛髪の指通りを、パネラー10名が手触りによって確認し、指通りが良い場合を2点、指通りが悪い場合を0点、どちらとも言えない場合を1点として評価し、パネラー10名の評価点の合計が20点〜16点の場合には◎、15点〜10点の場合には○、9点〜5点の場合には△、4点以下の場合には×として評価した。
【0070】
(乾燥後の指通り)
最後に毛髪を乾燥させた後の毛髪の指通りを、パネラー10名が手触りによって確認し、指通りが良い場合を2点、指通りが悪い場合を0点、どちらとも言えない場合を1点として評価し、パネラー10名の評価点の合計が20点〜16点の場合には◎、15点〜10点の場合には○、9点〜5点の場合には△、4点以下の場合には×として評価した。
【0071】
(乾燥後の柔らかさ)
最後に毛髪を乾燥させた後の毛髪の柔らかさを、パネラー10名が手触りによって確認し、柔らかさを感じる場合を2点、硬さを感じる場合を0点、どちらとも言えない場合を1点として評価し、パネラー10名の評価点の合計が20点〜16点の場合には◎、15点〜10点の場合には○、9点〜5点の場合には△、4点以下の場合には×として評価した。
【0072】
(褪色防止効果)
毛髪処理を終えた直後の毛髪の色調に対して、その毛髪を日光に1週間暴露した時点における毛髪の色調を、染毛色の濃さおよび色調に基づいて対比し、その間における毛髪褪色の防止効果を評価した。パネラー10名が目視で確認し、褪色が防止されている場合を2点、褪色が防止されておらず、変色が確認できる場合を0点、どちらとも言えない場合を1点として評価し、パネラー10名の評価点の合計が20点〜16点の場合には◎、15点〜10点の場合には○、9点〜5点の場合には△、4点以下の場合には×として評価した。
【0073】
(洗浄液への色落ちの少なさ)
毛髪処理を終えた直後の毛束を、50℃の1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液に浴比1:20で浸漬させ、5分経過後の水溶液を回収した(回収液1)。当該毛束をそのまま乾燥させ、1週間室温25℃、50%RHの恒温恒湿槽に静置後、この毛束を同上の未使用の水溶液に上記同様に浸漬させて得られた回収液(回収液2)の色濃度を目視で確認し、回収液1との比較で、回収液2の色濃度が変わらないか又はより薄い場合を2点、色濃度が濃くなった場合を0点、どちらとも言えない場合を1点として評価し、パネラー10名の評価点の合計が20点〜16点の場合には◎、15点〜10点の場合には○、9点〜5点の場合には△、4点以下の場合には×として評価した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、酸化剤を含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を染毛処理する場合において、染毛後の毛髪の褪色及び色落ちを簡易な手段によって十分に防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤と、染料と、下記(A1)に列挙する両性イオン性重合体並びに(A2)に列挙するカチオン性重合体から選ばれるイオン性重合体の1種以上とを含有する染毛剤組成物を用いて毛髪を処理し、次いで毛髪が濡れた状態で紫外線吸収剤を含有する後処理剤組成物を用いて処理することを特徴とする毛髪処理方法。
(A1):塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸三元共重合体、アクリル酸・アクリル酸メチル・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム三元共重合体、アクリル酸・アクリルアミド・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム三元共重合体。
(A2):ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体。
【請求項2】
前記毛髪処理方法において、染毛剤組成物に含有されるイオン性重合体が(A1)に列挙する両性イオン性重合体から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理方法。
【請求項3】
前記毛髪処理方法において、後処理剤組成物に含有される紫外線吸収剤が、安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪処理方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の染毛剤組成物及び後処理剤組成物を含んで構成されるものであることを特徴とする毛髪処理キット。

【公開番号】特開2011−42584(P2011−42584A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189840(P2009−189840)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】