説明

毛髪処理過程添加剤

【課題】 酸化型処理剤による脱色・染毛またはパーマ等各種毛髪処理にあたって、主処理の効果を改善すると共に毛髪ないし排水中に残留して悪影響を与える可能性のある過酸化水素を毛髪処理過程において除去し得る毛髪処理過程添加剤を提供する。
【解決手段】
下記A群に記載の有効成分中から選ばれたいずれか1種の成分と、
A群 (A−1) カタラーゼ 20,000ユニットの水溶液
(A−2) グルタチオンペルオキシダーゼ 20,000ユニットの水溶液
そして下記B群に記載の有効成分から選ばれた1種または複数種の組合せ成分と、
B群 (B−1) 2価鉄化合物
(B−2) 3価鉄化合物
(B−3) ニッケル化合物
を含有し、酸化型毛髪処理剤を用いた各種毛髪処理の進行過程において添加する毛髪処理過程添加剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化型毛髪処理剤を用いる毛髪脱色処理、染毛処理、パーマネントウェーブ(以下「パーマ」と略記)処理、ストレートパーマ処理等の毛髪関連の各種処理にあたって、各処理の進行過程中に添加することにより脱色・染毛効果またはパーマ等の主たる効果を改善すると共に、処理後毛髪に残存してダメージを与える可能性がありさらに排水中に残留して自然環境に悪影響を及ぼす過酸化水素成分を、処理過程において大幅に低減することが可能な毛髪処理過程添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を脱色しさらに任意色彩に染毛し、またパーマ処理やストレートパーマ処理によってそれぞれ好みのヘアースタイルを実現することが男女共に広く普及している。このような毛髪処理に際しては、当初毛髪に還元反応を生じさせて主処理を実行し、その後過酸化水素による酸化反応により処理効果を定着させる処理が広く採用されている。したがって、使用される脱色剤(ブリーチ)、染毛剤(ヘアダイ)、パーマ剤、ストレートパーマ(縮毛矯正)剤等には過酸化水素(H22)を含有するもの、または処理に先立って過酸化水素を含有する成分を追加混練して使用する酸化型のものが多い。
【0003】
しかしながら、処理終了後の頭髪に過酸化水素成分が残存付着していると、染毛、脱色、パーマ等の処理後にも酸化作用が持続し、主たる処理目的の効果が減殺されるばかりでなく、毛髪のシスチンと反応してシスチン酸となって毛髪を傷めるような不都合を生ずる。また、過酸化水素成分が排水中に残存して拡散される状態も環境汚染につながり好ましくない。したがって、各々の処理後における洗髪を十分に行う必要があるが、現実には完全に除去することが困難であることが経験上知られている。
【0004】
毛髪関連の各種処理において使用される過酸化水素成分に関する諸問題の解決を指向する先行技術として、特許文献1は、酸化型染毛剤を用いて染毛処理を行った後に毛髪に適用することにより毛髪中に残留する過酸化水素を分解除去することを目的とする頭髪用化粧料を開示している。このような目的を達成するために、動植物から抽出、精製されたカタラーゼの水溶液に対して安定化剤として還元剤を配合する頭髪用化粧料を提案している。かかる頭髪用化粧料を頭記の主処理が終了した後に、改めて毛髪に適用することにより、いわゆる後処理によって毛髪中に残留する過酸化水素を中和しようとするものである。
【0005】
また、特許文献2は、パーマ処理、ストレートパーマ処理、染毛処理、脱色処理等が行われた後に使用する毛髪処理剤を開示している。この毛髪処理剤は、毛髪処理後に毛髪に残留する過酸化水素の分解、反応臭の消臭、トリートメントを同時に実行しようとするものである。この毛髪処理剤も、特許文献1と同様に主たる処理が終了して洗髪を行なった後に過酸化水素の中和または低減を目的として使用される後処理剤である。
【特許文献1】特開平8−175935号公報
【特許文献2】特開2007−332125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、酸化型処理剤による脱色・染毛またはパーマ等各種毛髪処理にあたって、主処理の効果を改善持続させると共に、毛髪および排水中に残留して悪影響を与える可能性のある過酸化水素を処理過程において除去し得る毛髪処理過程添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、下記A群に記載の有効成分
A群 (A−1) カタラーゼ 20,000ユニットの水溶液
(A−2) グルタチオンペルオキシダーゼ 20,000ユニットの水溶液
中から選ばれたいずれか1種の成分0.01〜50重量%と、
そして下記B群に記載の有効成分
B群 (B−1) 2価鉄化合物
(B−2) 3価鉄化合物
(B−3) ニッケル化合物
中から選ばれた1種または複数種の組合せ成分0.01〜10重量%と、をそれぞれ含有する毛髪処理添加剤であって、酸化型毛髪処理剤を用いた各種毛髪処理の進行過程において添加することを特徴とする毛髪処理過程添加剤である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪処理過程添加剤に対して、下記C群に記載の有効成分
C群 (C−1) 頭髪洗浄剤成分
(C−2) トリートメント剤
から選ばれたいずれか1種の成分0.01〜50重量%、を含有せしめたことを特徴とする毛髪処理過程添加剤である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪処理過程添加剤に対して、下記C群に記載の有効成分
C群 (C−1) 頭髪洗浄剤成分
(C−2) トリートメント剤、それぞれ0.01〜50重量%、を含有せしめたことを特徴とする毛髪処理過程添加剤である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3に記載の毛髪処理過程添加剤が液状体であることを特徴とし、請求項5に記載の発明は毛髪処理過程添加剤が乳液状であることを特徴とし、請求項6に記載の発明は毛髪処理過程添加剤がクリーム状体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る毛髪処理過程添加剤は、過酸化水素(H22)を含有する酸化型毛髪処理剤による毛髪脱色処理、染毛処理、パーマネント処理、ストレートパーマ処理等毛髪関連の各種処理進行中の適宜タイミングにおいて、毛髪に添加しながら各処理剤と混合した後に洗髪することにより、各種処理効果の定着向上を図り、同時に過酸化水素成分を中和することを目的とするものである。
【0012】
このような効果は、過酸化水素から酸化能の強いOHラジカルを発生させて酸化作用を促進することにより、主処理剤の効果を助長し、併せて過酸化水素からOHラジカルを発生させた後に水と酸素に分解させることによって得られる。その結果、脱色、染毛、パーマ、ストレートパーマ等の処理促進が図れることに加えて、処理終了後に残存する可能性のある過酸化水素成分を大幅に低減し、脱色、染毛、パーマ等本処理の効果が減殺される事態を回避することができる。また、通常の処理剤において、処理剤の準備中から処理過程、さらに洗髪までの間に生じている反応臭を低減する効果も期待できる。
【0013】
毛髪処理終了後の洗髪の際に、排水中に放出される過酸化水素成分を上述のような化学反応により実害が生じない程度まで低減することができ、環境保持上の効果も期待できる。また、毛髪洗浄剤成分およびトリートメント剤を添加した実施例に拠れば、シャンプー効果が得られる。そのため、各種処理後における洗髪が容易となり、洗浄およびすすぎ時間が短縮され、同時にこれらの処置に要する水の使用量および排水量が低減される利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る毛髪処理過程添加剤について開示する。本添加剤を構成する有効成分のA群として、共に20,000ユニットの水溶液として入手可能な(A−1)カタラーゼまたは(A−2)グルタチオンペルオキシダーゼのいずれかを0.01〜50重量%含む溶液を基剤として使用する。これら両剤(A−1)および(A−2)はほぼ同様に作用し同等の効果を発揮するため、成分(A−1)のカタラーゼを使用する実施例についてのみ以下に開示し、成分(A−2)グルタチオンペルオキシダーゼについては省略する。
【0015】
カタラーゼは以前より過酸化水素を水と酸素に分解する物質としてよく知られている酵素で、自然界にも多く存在し、動物の肝臓などの臓器から抽出され、また微生物からも産出し製剤化したものを利用することができる。活性度に関して種々のレベルのものが存在するが、本実施例では20,000〔UN/g〕の濃度の水溶液を0.01〜50重量%の割合で使用した。
【0016】
有効成分B群の物質として(B−1)2価鉄化合物、(B−2)3価鉄化合物、(B−3)ニッケル化合物が挙げられる。これら物質を単独で、または2以上を組み合わせて配合することができる。
【0017】
B成分の第1の物質(B−1)2価鉄化合物としては、例えば硫酸第一鉄を0.01〜10重量%の割合で使用することができる。同様の機能を発揮する物質としては、塩化第一鉄がある。
【0018】
B成分の第2の物質(B−2)3価鉄化合物としては、例えば塩化第二鉄を0.01〜10重量%の割合で使用することができる。その他、同様の機能を発揮する物質として硝酸第二鉄、硝酸第二鉄溶液などが挙げられる。
【0019】
B成分の第3の物質(B−3)ニッケル化合物としては、例えば塩化ニッケルとすることができ、0.01〜10重量%の割合で使用することができる。その他ニッケル化合物として、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケルなどがある。
【0020】
任意成分であるC群の物質として(C−1)毛髪洗浄剤、(C−2)トリートメント剤が挙げられる。これら物質は任意成分で、本発明において主目的とする毛髪処理、例えば脱色・染毛処理またはパーマ処理それぞれの効果を改善し、同時に毛髪および排水中に残留して悪影響を与える可能性のある過酸化水素を除去する点で直接効果を発揮するものではない。しかし、上記のようなそれぞれの毛髪処理後における洗髪仕上げを容易にする効果が得られる。したがって、いずれか一方の成分のみを添加してもよく、また双方共に添加してもよい。
【0021】
本発明に係る毛髪処理過程進行中の添加剤の剤形は、液剤、乳液剤またはクリーム剤等自由に選択することができる。主処理剤がチューブ入りの1剤と2剤をそれぞれ所要量押し出し混練して使用するタイプの場合、同様にチューブ入りのクリーム剤としてもよい。また、手に所定量取り出して頭髪に塗りつけることを想定すると乳液剤とすることも任意である。さらに、主処理の途中に手軽に振り掛ける場合は液剤が良く、そして吹き付け添加することを考慮すれば、噴射剤を加えてエアゾール剤とすることもでき、剤形には特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係る毛髪処理過程添加剤は、酸化型毛髪処理剤による毛髪脱色処理、染毛処理、パーマネント処理、ストレートパーマ処理等毛髪関連の各主処理進行中の適宜タイミングで頭髪に振り掛け、手による乳液状剤またはクリーム剤の混ぜ合わせ等により主処理剤と混練して頭髪全体に行き渡らせ、その後洗髪を行う。
その過程において過酸化水素から酸化能の強いOHラジカルを発生させて「発泡作用」を伴いながら酸化作用を促進させて、主処理剤の効果を助長し、併せて過酸化水素からOHラジカルを発生させた後に水と酸素に分解させることができ、排水中における過酸化水素量を大幅に低減させ、環境への悪影響を解消することができる。このような効果は、本発明に係る毛髪処理過程添加剤を加えた処理の際の上述のような「発泡作用」によって目視確認することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A群に記載の有効成分、
A群 (A−1) カタラーゼ 20,000ユニットの水溶液
(A−2) グルタチオンペルオキシダーゼ 20,000ユニットの水溶液
の中から選ばれたいずれか1種の成分0.01〜50重量%と、
そして下記B群に記載の有効成分、
B群 (B−1) 2価鉄化合物
(B−2) 3価鉄化合物
(B−3) ニッケル化合物
の中から選ばれた1種または複数種の組合せによる成分0.01〜10重量%と、
をそれぞれ含有する毛髪処理添加剤であって、酸化型毛髪処理剤を用いた各種毛髪処理の進行過程において添加する、ことを特徴とする毛髪処理過程添加剤。
【請求項2】
請求項1に記載の毛髪処理過程添加剤に対して、下記C群
C群 (C−1) 頭髪洗浄剤成分
(C−2) トリートメント剤
に記載の有効成分から選ばれたいずれか1種の成分0.01〜50重量%、を含有せしめたことを特徴とする毛髪処理過程添加剤。
【請求項3】
請求項1に記載の毛髪処理過程添加剤に対して、下記C群
C群 C−1 頭髪洗浄剤成分
C−2 トリートメント剤
に記載の有効成分それぞれ0.01〜50重量%、を含有せしめたことを特徴とする毛髪処理過程添加剤。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載の毛髪処理過程添加剤が液状剤である、ことを特徴とする毛髪処理過程添加剤。
【請求項5】
請求項1ないし3に記載の毛髪処理過程添加剤が乳液状剤である、ことを特徴とする毛髪処理過程添加剤。
【請求項6】
請求項1ないし3に記載の毛髪処理過程添加剤がクリーム状剤である、ことを特徴とする毛髪処理過程添加剤。

【公開番号】特開2009−184956(P2009−184956A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25890(P2008−25890)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(301078652)エコナック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】