説明

毛髪化粧料および毛髪処理方法

【課題】カラーやパーマなどの化学的処理でダメージを受けた毛髪に良好な「弾力性」、「すべり感」を付与すると共に、シャンプーを繰り返してもその感触を長時間持続させることができる毛髪化粧料、この毛髪化粧料を用いた有用な毛髪処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の毛髪化粧料は、下記(A)および(B)を含有する毛髪補修剤と、下記(C)および(D)を含有する弾力付与剤からなるものである。
(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウム、(C):キトサン、(D):カルシウムを含む塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーやパーマなどでダメージを受けた毛髪に「弾力性」(ハリ・こし感)や「すべり感」を付与するための毛髪化粧料、およびこうした毛髪化粧料を用いて毛髪を処理する有用な方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、毛髪にカラーやパーマ(縮毛矯正を含む)などの化学的処理を施すことが一般化し、その化学的処理により毛髪はダメージを受け、シャンプーする際に毛髪同士が絡まりやすく、また指を通す際にひっかかる(即ち、「すべり感」が悪い)などの現象が起こっている。
【0003】
ダメージを受けた毛髪に「すべり感」や「しなやかさ」、「しっとり感」を付与する目的で、ヘアリンスやヘアトリートメントなどが使用されている。ヘアリンスやヘアトリートメントは、カチオン性界面活性剤、油剤、タンパク加水分解物などのコンディショニング成分を含有し、これらの成分が毛髪表面に吸着することで、コンディショニング効果を発揮している。しかしながら、ヘアリンスやヘアトリートメントは、コンディショニング効果が得られるものの、シャンプーによりその効果が失われやすく、持続性が不十分である。
【0004】
また、カラーやパーマなどでダメージを受けた毛髪は、手触り感が低下するだけでなく、毛髪から間充物質などが流出し、これが原因となって毛髪のハリやこし(これを「ハリ・こし感」と呼ぶ)が無くなり、非常に扱い難いものとなる。そのような毛髪へのケアとしては、加水分解ケラチンやその誘導体を作用(毛髪内部に浸透)させて弾力性を向上させる技術があるが、上記のヘアリンスやヘアトリートメントと同様に一時的な効果しか発揮されず、シャンプーを行うことによってその効果は失われやすく、持続性が不十分である。
【0005】
コンディショニング効果の持続性を高める技術として、アニオン性物質(ポリマー、タンパク質加水分解物など)とカチオン性物質(ポリマー、カチオン性界面活性剤など)との組み合わせなどのイオン的な水不溶性のコンプレックスを形成させる技術が提案されている(例えば、特許文献1〜5)。
【0006】
また、アニオン性物質とカチオン性物質の組み合わせ以外の技術としては、反応性が高いメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて毛髪に親油性の皮膜を形成し、コンディショニング効果を持続させる技術も提案されている(例えば、特許文献6〜8)。
【0007】
しかしながら、アニオン性物質とカチオン性物質とを組み合わせた技術では、イオン結合の反応を促進させるために加温を必要とし、そのため加温を行なう時間や加温を行なうための特別な装置を要する。また、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いた技術では、加温を行なう必要は無いが、反応性の高いメチルハイドロジェンポリシロキサンと水が反応して水素を発生する恐れがあったり、毛髪に出来た皮膜にはシリコーン特有の硬さが感じられるという問題がある。
【0008】
一方、アミノ酸の誘導体であるN−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液は、市販されており(例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製「ペリセア L−30」:商品名)、一般的に入手できるものとして知られている。アミノ酸誘導体は、毛髪保護成分や補修剤としての効果が期待されるが、油性タイプのものや高分子タイプのものは毛髪内部に浸透しにくく、毛髪表面への吸着がほとんどである。また、低分子タイプのものは毛髪内部に浸透し易いものの、シャンプーなどによる水洗で容易に流出してしまうといった問題があった。
【0009】
これに対して、N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液は、肌や毛髪に対する保護効果が高く、また特殊な構造(ジェミニ型構造)を有しているため、毛髪内部に浸透した後も水洗などで容易に流出しない特徴がある。肌用化粧料では、保護効果を利用して肌荒れによる水分量の低下を抑制し、水分保持力を向上させる目的で用いられている(例えば、特許文献9、10)。また、毛髪化粧料としても用いられ始められている。
【0010】
カルボキシメチルデキストランナトリウムは、市販されており(例えば、名糖産業株式会社製「CMD」:商品名)、一般的に入手できるものとして知られている。カルボキシメチルデキストランナトリウムは、ショ糖を原料としてLeuconostoc mesenteroidesという乳酸菌の1種が生産する高分子デキストランを部分的に加水分解し、カルボキシメチル化して得られるアニオン性のポリマーである。その平均分子量は約1,000,000で毛髪保護効果が期待されている。肌用および毛髪用の化粧料では、一般的に保湿剤として用いられている。また、持続性トリートメントの基剤として用いられることもある(前記特許文献1、2)。
【0011】
キトサンは、エビやカニの殻から得られるムコ多糖体で、皮膜効果が高いことから、セット剤において、セットポリマーである樹脂などのセット力を向上させる補助剤として用いられている(例えば、特許文献11、12)。
【0012】
塩化カルシウムなどのカルシウムを含む塩は、広く市販されており(例えば、富田製薬株式会社製「食品添加物 塩化カルシウムH」:商品名)、一般的に入手できるものである。例えば塩化カルシウムは、食品分野においてタンパク質と併用して用いる技術が知られており、牛乳中のタンパク質と塩化カルシウムの錯体を形成させることによって、固化や凝集させる加工技術が開示されている(例えば、特許文献13、14)。しかしながら、毛髪化粧料の分野では、ほとんど利用されていない。
【特許文献1】特開2001−192325号公報 特許請求の範囲など
【特許文献2】特開2006−248985号公報 特許請求の範囲など
【特許文献3】特開平10−87441号公報 特許請求の範囲など
【特許文献4】特開2001−48751号公報 特許請求の範囲など
【特許文献5】特開2006−124278号公報 特許請求の範囲など
【特許文献6】特開2001−226236号公報 特許請求の範囲など
【特許文献7】特開2003−81784号公報 特許請求の範囲など
【特許文献8】特開2006−306823号公報 特許請求の範囲など
【特許文献9】特開2007−332089号公報 特許請求の範囲など
【特許文献10】特開2008−019230号公報 特許請求の範囲など
【特許文献11】特許3571844号公報 特許請求の範囲など
【特許文献12】特許3521513号公報 特許請求の範囲など
【特許文献13】特表2003−510057号公報 特許請求の範囲など
【特許文献14】特許2516034号公報 特許請求の範囲など
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、カラーやパーマなどの化学的処理でダメージを受けた毛髪に良好な「弾力性」、「すべり感」を付与すると共に、シャンプーを繰り返してもその感触を長時間持続させることができる毛髪化粧料、この毛髪化粧料を用いた有用な毛髪処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成することができた本発明の毛髪化粧料とは、下記(A)および(B)を含有する毛髪補修剤と、下記(C)および(D)を含有する弾力付与剤からなる点に要旨を有するものである。
(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液
(B):カルボキシメチルデキストランナトリウム
(C):キトサン
(D):カルシウムを含む塩
【0015】
本発明の毛髪化粧料においては、(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の含有量が毛髪補修剤に占める割合で0.01〜30.0質量%、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量が毛髪補修剤に占める割合で0.01〜5.0質量%であり、(C):キトサンの含有量が弾力付与剤に占める割合で0.001〜2.0質量%、(D):カルシウムを含む塩の含有量が弾力付与剤に占める割合で0.01〜5.0質量%であることが好ましい。
【0016】
また毛髪補修剤中の(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液と、弾力付与剤中の(D):カルシウムを含む塩の配合比[(A):(D)]が1:30〜100:1(質量比)であることや、毛髪補修剤中の(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムと、弾力付与剤中の(C):キトサンの配合比[(B):(C)]が1:10〜2000:3(質量比)であることも好ましい要件である。
【0017】
前記(D):カルシウムを含む塩としては、塩化カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムのいずれかが挙げられ、いずれを用いても同様の効果が得られる。
【0018】
上記のような本発明の毛髪化粧料を用いて毛髪を処理するに当たっては、(1)前記毛髪補修剤で処理した後、洗い流さずに前記弾力付与剤で処理し、その後洗い流す、(2)前記弾力付与剤で処理した後、洗い流さずに前記毛髪補修剤で処理し、その後洗い流す、のいずれの方法も採用できる。いずれの方法を採用するにしても、洗い流す前に一定時間放置することが好ましい要件となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、(A)および(B)を含有する毛髪補修剤と、(C)および(D)を含有する弾力付与剤からなる毛髪化粧料を用いて毛髪を適切に処理することによって、カラーやパーマなどの化学的処理でダメージを受けた毛髪であっても、良好な「弾力性」や「すべり感」を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者は、上記課題を解決するため、様々な角度から検討した。その結果、毛髪補修剤および弾力付与剤からなる、いわゆる「2液式毛髪化粧料」において、毛髪補修剤として(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液と(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムを含有するものとし、弾力付与剤として(C):キトサンと(D):カルシウムを含む塩を含有するものとすることで、上記目的に適う毛髪化粧料が実現できることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の毛髪化粧料で使用する各成分による作用について説明する。
【0021】
本発明の毛髪化粧料で用いる毛髪補修剤は、少なくとも(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液、および(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムを含有するものであるが、これらの成分が毛髪補修剤塗布時に毛髪に浸透および吸着し、弾力付与剤に含有させた(C):キトサンと、これら[(A)および(B)]がイオン結合し、また(D):カルシウムを含む塩と上記(A)とで錯体を形成することにより、ダメージを受けた毛髪に良好な「弾力性」および「すべり感」を付与する役割を果たすことになる。
【0022】
(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の含有量は、毛髪補修剤に占める割合で0.01〜30.0質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜20.0質量%とするのが良い。(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の含有量が、0.01質量%より少なくなると、毛髪内で(D):カルシウムを含む塩と結合する量が少なくなり、毛髪化粧料処理直後の「弾力性」や「すべり感」が低下したり、シャンプーによる洗浄を繰り返し行なった(持続性)際の「弾力性」や「すべり感」が早期に悪くなる。一方、(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の含有量が、30.0質量%よりも多くなると、毛髪への浸透および吸着が多くなり、毛髪のベタつき感が強くなり、「弾力性」が損なわれ、「すべり感」が低下することになる。
【0023】
また、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量は、毛髪補修剤に占める割合で0.01〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量%にするのが良い。(B)カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量が0.01質量%より少なくなると、毛髪への吸着が少なくなり、また(C)キトサンと結合する量が少なくなり、毛髪化粧料処理直後の「すべり感」が低下したり、シャンプーによる洗浄を繰り返し行なった(持続性)際の「すべり感」が早期に悪くなる。(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量が、5.0質量%よりも多くなると、毛髪への吸着が多くなり、毛髪の「ベタつき感」が強くなり、「すべり感」が低下することになる。
【0024】
本発明の毛髪化粧料で用いる毛髪補修剤は、(A)N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液および(B)カルボキシメチルデキストランナトリウム以外に、それらの効果を損なわない範囲内で他の成分を適宜添加することができる。そのような添加成分としては、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタインなどの可溶化剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどの湿潤剤、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチルなどの防腐剤、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色素、香料などが挙げられる。
【0025】
本発明の毛髪化粧料で用いる弾力付与剤は、少なくとも(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩を含有するものである。このうち(C):キトサンは、毛髪補修剤に含有される(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液および(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムとイオン結合し、毛髪に「弾力性」と「すべり感」を付与し、しかもその効果の持続性を高める作用を発揮する。また弾力付与剤中に含有される(D):カルシウムを含む塩は、毛髪補修剤中に含有される(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液とで錯体を形成し、毛髪に「弾力性」を付与し、およびその効果の持続性を高める作用を発揮するものである。
【0026】
(C):キトサンの含有量は、弾力付与剤に占める割合で0.001〜2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜1.0質量%とするのが良い。(C):キトサンの含有量が0.001質量%より少なくなると、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムと結合する量が少なくなり、毛髪化粧料処理直後の「弾力性」や「すべり感」が低下したり、シャンプー処理を繰り返し行なった(持続性)際の「弾力性」や「すべり感」が早期に悪くなる。また(C):キトサンの含有量が2.0質量%より多くなると、毛髪にバリ感(バリバリとした硬い感触)が感じられ、「すべり感」が低下することになる。
【0027】
(D):カルシウムを含む塩の含有量は、弾力付与剤に占める割合で0.01〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量%とするのが良い。(D):カルシウムを含む塩の含有量が0.01質量%よりも少なくなると、(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液と結合する量が少なくなり、毛髪化粧料処理直後の「弾力性」や「すべり感」が低下したり、シャンプーによる洗浄を繰り返し行なった(持続性)際の「弾力性」や「すべり感」が早期に悪くなる。また(D):カルシウムを含む塩の含有量が5.0質量%よりも多くなると、「すべり感」が低下することになる。
【0028】
(D):カルシウムを含む塩によって、上記のような効果が得られる理由については、次のように考えることができた。即ち、(D):カルシウムを含む塩中のカルシウムイオンと(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液とが錯体を形成し、上記の効果が発揮されるものと推察された。(D):カルシウムを含む塩としては、代表的なものとして塩化カルシウムが挙げられるが、塩化カルシウム以外でも、カルシウムイオンを示す物質であれば同様の効果が認められる。こうした物質(カルシウムを含む塩)としては、例えば炭酸カルシウムや硫酸カルシウムが挙げられる。
【0029】
本発明において用いる弾力付与剤は、(C):キトサンと(D):カルシウムを含む塩以外に、それらの効果を損なわない範囲内で他の成分を適宜添加することができる。そのような添加成分としては、例えばセトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの固形油剤、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムなどの柔軟剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの乳化剤、アミノ変性シリコーンなどの感触向上剤、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチルなどの防腐剤、クエン酸、乳酸、リンゴ酸などのpH調整剤、炭化水素、エステル油、植物油、動物油、シリコーン油などの液状油剤、植物エキス、多価アルコールなどの湿潤剤、キレート剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色素、香料などが挙げられる。
【0030】
本発明の毛髪化粧料においては、毛髪補修剤中の(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液と、弾力付与剤中の(D):カルシウムを含む塩の配合比[(A):(D)]が1:30〜100:1(質量比)となるようにすることが好ましく、より好ましくは1:20〜20:1とするのが良い。
【0031】
上記配合割合[(A):(D)]で1:30よりも(D):カルシウムを含む塩が多くなると毛髪が硬くなり過ぎ、「すべり感」も低下することになる。一方、上記配合割合[(A):(D)]で100:1よりも(D):カルシウムを含む塩が少なくなると毛髪の弾力性が低下することになる。
【0032】
また毛髪補修剤中の(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムと弾力付与剤中の(C):キトサンの配合比[(B):(C)]が1:10〜2000:3(質量比)となるようにすることが好ましく、より好ましくは1:5〜100:3とするのが良い。
【0033】
上記配合割合[(B):(C)]1:10よりも(C):キトサンが多くなると毛髪にベタつきが出て、「すべり感」も低下することになる。一方、上記配合割合[(B):(C)]で2000:3よりも(C):キトサンが少なくなると毛髪の「すべり感」が低下することになる。
【0034】
尚、上記各配合割合[(A):(D)および(B):(C)]は、毛髪補修剤中の各成分[(A)および(B)]の含有量、および弾力付与剤中の各成分[(C)および(D)]の含有量、並びに使用する際の毛髪補修剤と弾力付与剤の比率によっても異なるが、要するに最終的に上記配合比率となるように各成分の含有量や毛髪補修剤と弾力付与剤の比率を調整すれば良い。
【0035】
上記本発明の毛髪化粧料を用いて毛髪を処理する方法(操作手順)は、毛髪補修剤を塗布する前にシャンプーで毛髪の汚れを落とし、十分に水気を取り除き、毛髪補修剤を毛髪全体に塗布し、なじませる。その後、洗い流さずに弾力付与剤を塗布し、なじませ、お湯ですすぎ流すことが好ましい。弾力付与剤を塗布した後、5〜30分間放置することもできる。5〜30分間放置することで、各成分の浸透及び結合がより促進され、トリートメント効果や持続効果を向上させることができる。また弾力付与剤を塗布した後、毛髪補修剤を毛髪全体に塗布した場合でも同様の効果が得られる。
【0036】
いずれの方法(操作手順)を採用するにしても、ダメージが強い場合などは、毛髪補修剤や弾力付与剤(その前後は問わず)を毛髪全体に塗布し、なじませた後にスチーマーやローラーボールなどを用いて加温放置した後、お湯ですすぎ流すこともできる。加温放置することで、各成分の浸透および結合がより促進され、トリートメント効果や持続効果を向上させることができる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例によって本発明をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0038】
後述する各種毛髪化粧料(処方例)について、下記のブリーチ処理をした毛髪に対して塗布し、後記各項目(検討項目1〜5)について評価した。
【0039】
(ブリーチ処理毛の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪に以下のブリーチ処理をし、以下の評価に用いた。
【0040】
(ブリーチ処理)
トーナーブリーチパウダーEX(粉末ブリーチ剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコオキサイドEX06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:3(質量比)となるように混合したブリーチ剤を、毛髪に質量比(ブリーチ剤:毛髪)1:1の割合で塗布し、35℃、30分間の条件で処理した後、40質量%のラウリル硫酸トリエタノールアミン液によって洗浄し、その後乾燥した。
【0041】
[検討項目1](毛髪のすべり感の評価方法)
専門パネラー10名により、上記ブリーチ処理をした毛束(20cm、20g)を毛髪補修剤(後記表1〜3)および弾力付与剤(後記表4〜6)で処理(毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した後、洗い流し、乾燥させる)し、毛髪のすべり感を、下記の5段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
[評価点]
5点:非常にすべり感が良い
4点:すべり感が良い
3点:普通
2点:すべり感が悪い
1点:非常にすべり感が悪い
【0042】
[評価基準]
◎:4点以上
○:3点以上、4点未満
△:2点以上、3点未満
×:1点以上、2点未満
【0043】
[検討項目2](毛髪の弾力性の評価方法)
専門パネラー10名により、上記の様にブリーチ処理をした毛束(20cm、20g)を毛髪補修剤(後記表1〜3)および弾力付与剤(後記表4〜6)で処理(毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した後、洗い流し、乾燥させる)し、毛髪の弾力性を下記の5段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
[評価点]
5点:非常に弾力性がある
4点:弾力性がある
3点:普通
2点:弾力性が無い
1点:全く弾力性が無い
【0044】
[評価基準]
◎:4点以上
○:3点以上、4点未満
△:2点以上、3点未満
×:1点以上、2点未満
【0045】
[検討項目3](シャンプーによる洗浄を行なった際の毛髪の手触り(すべり感)の評価方法)
専門パネラー10名により、上記と同様にブリーチ処理をした毛束(20cm、20g)を毛髪補修剤(後記表1〜3)および弾力付与剤(後記表4〜6)で処理(毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した後、洗い流し、乾燥させる)し、その後ラデュラ シャンプー ライトモイスト(シャンプー:中野製薬株式会社製)で洗浄した後の毛髪のすべり感を、下記の5段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
[評価点]
5点:非常にすべり感が良い
4点:すべり感が良い
3点:普通
2点:すべり感が悪い
1点:非常にすべり感が悪い
【0046】
[評価基準]
◎:4点以上
○:3点以上、4点未満
△:2点以上、3点未満
×:1点以上、2点未満
【0047】
[検討項目4](シャンプーによる洗浄を14回行ない、乾燥した後の手触り(すべり感)の評価方法)
専門パネラー10名により、上記と同様にブリーチ処理をした毛束(20cm、20g)を毛髪補修剤(後記表1〜3)および弾力付与剤(後記表4〜6)で処理(毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した後、洗い流し、乾燥させる)し、その後ラデュラ シャンプー ライトモイスト(シャンプー:中野製薬株式会社製)で14回洗浄(2週間のシャンプーに相当する回数)した後の毛髪のすべり感を、下記の5段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
[評価点]
5点:非常にすべり感が良い
4点:すべり感が良い
3点:普通
2点:すべり感が悪い
1点:非常にすべり感が悪い
【0048】
[評価基準]
◎:4点以上
○:3点以上、4点未満
△:2点以上、3点未満
×:1点以上、2点未満
【0049】
[検討項目5](シャンプーによる洗浄を14回行ない、乾燥した後の弾力性の評価方法)
専門パネラー10名により、上記と同様にブリーチ処理をした毛束(20cm、20g)を毛髪補修剤(後記表1〜3)および弾力付与剤(後記表4〜6)で処理(毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した後、洗い流し、乾燥させる)し、その後ラデュラ シャンプー ライトモイスト(シャンプー:中野製薬株式会社製)で14回洗浄(2週間のシャンプーに相当する回数)した後の毛髪の弾力性を、下記の5段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
[評価点]
5点:非常に弾力性がある
4点:弾力性がある
3点:普通
2点:弾力性が無い
1点:全く弾力性が無い
【0050】
[評価基準]
◎:4点以上
○:3点以上、4点未満
△:2点以上、3点未満
×:1点以上、2点未満
【0051】
[実施例1]
下記表1〜3に示す毛髪補修剤(処方例I−1〜I−16)、および下記表4〜6に示す弾力付与剤(処方例II−1〜II−20)を調製し、これらの毛髪補修剤および弾力付与剤を適宜組み合わせて毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
まず、前記表1に示した毛髪補修剤(処方例I−1〜I−6)と、前記表4に示した弾力付与剤(処方例II―3)を組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.1〜6)は、毛髪補修剤中の(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の含有量が毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表7に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
この結果から次のように考察できる。(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の含有量が0.01%未満(実験No.1)では、毛髪内で(D):カルシウムを含む塩と結合する(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液が不足し、毛髪の弾力性が悪くなる。これに対して(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の含有量が30.0質量%よりも多くなると(実験No.6)、毛髪への浸透や吸着が多くなり、毛髪がベタつき、すべり感が悪くなることが分かる。
【0061】
[実施例2]
前記表2に示した毛髪補修剤(処方例I−7〜I−11)と、前記表4に示した弾力付与剤(処方例II―3)を組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.7〜11)は、毛髪補修剤中の(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量が毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表8に示す。
【0062】
【表8】

【0063】
この結果から次のように考察できる。(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量が0.01%未満(実験No.7)では、毛髪への吸着が不足し、また(C):キトサンと結合する(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムが不足し、毛髪のすべり感が悪くなる。これに対して(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量が5.0%よりも多くなると(実験No.11)、毛髪への吸着が多くなり、毛髪がベタつき、すべり感が悪くなることが分かる。
【0064】
[実施例3]
前記表3に示した毛髪補修剤(処方例I−12〜I−16)と、前記表4に示した弾力付与剤(処方例II―3)を組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.12〜16)は、毛髪補修剤中に(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液および(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの両方を配合しない場合に、毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表9に示す。
【0065】
【表9】

【0066】
この結果から次のように考察できる。毛髪補修剤の(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の代わりにグルタミン酸誘導体であるN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン液を用いた場合(実験No.12、14)や、(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液を含有しない場合(実験No.15、16)は、(D):塩化カルシウムとの結合が不十分で毛髪に十分な弾力性を付与することができない。また、毛髪補修剤の(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの代わりにアニオン性ポリマーであるポリアスパラギン酸ナトリウムを用いた場合(実施例13、14)や、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムを含有しない場合(実験No.16)は、(C):キトサンとの結合が不十分で毛髪のすべり感が悪くなる。つまり、毛髪にすべり感と弾力性を付与し、その効果を持続させるためには、毛髪補修剤に(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液と(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムが必要であることが分かる。
【0067】
[実施例4]
前記表1に示した毛髪補修剤(処方例I−3)と、前記表4に示した弾力付与剤(処方例II―1〜6)を組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.17〜21)は、弾力付与剤中の(C):キトサンの含有量が毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表10に示す。
【0068】
【表10】

【0069】
この結果から次のように考察できる。(C):キトサンの含有量が0.001%未満(実験No.17)では、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムと結合する(C):キトサンが不足し、毛髪のすべり感が悪くなる。これに対して(C):キトサンの含有量が2.0%よりも多くなると(実験No.21)、毛髪への吸着が多くなり、毛髪がベタつき、すべり感が悪くなることが分かる。
【0070】
[実施例5]
前記表1に示した毛髪補修剤(処方例I−3)と、前記表5に示した弾力付与剤(処方例II―7〜11)を組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.22〜26)は、弾力付与剤中の(D):カルシウムを含む塩の含有量が毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表11に示す。
【0071】
【表11】

【0072】
この結果から次のように考察できる。(D):カルシウムを含む塩の含有量が0.01%未満(実験No.22)では、(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液と結合する(D):カルシウムを含む塩が不足し、毛髪の弾力性が悪くなる。これに対して(D):カルシウムを含む塩の含有量が5.0%よりも多くなると(実験No.26)毛髪への吸着が多くなり、すべり感が悪くなることが分かる。
【0073】
[実施例6]
前記表1に示した毛髪補修剤(処方例I−3)と、前記表6に示した弾力付与剤(処方例II―12〜20)を組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.27〜35)は、弾力付与剤中に(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩の両方を配合しない場合に、毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表12に示す。
【表12】

【0074】
この結果から次のように考察できる。弾力付与剤の(C):キトサンの代わりにヒドロキシプロピルトリモニウムキトサン、ヒドロキシメチルキチン、N−アセチルグルコサミンやカチオン性ポリマーであるポリクオタニウム−64を用いた場合(実験No.27〜30)や、(C):キトサンを含有しない場合(実験No.35)は、(C):キトサンとの結合が不十分で毛髪に十分なすべり感を付与することができない。また、塩化カルシウムの代わりに炭酸カルシウムや硫酸カルシウムを用いても毛髪にすべり感や弾力性を付与することが分かる(実験No.31、32)。しかし、(D):塩化カルシウムの代わりに塩化マグネシウムや塩化アルミニウムを用いた場合(実験No.33、34)や(D):カルシウムを含む塩を含有しない場合(実験No.35)は、(D):カルシウムを含む塩との結合が不十分で毛髪に十分な弾力性を付与することができない。つまり、毛髪に良好なすべり感と弾力性を付与し、その効果を持続させるためには、(C):キトサンと(D):カルシウムを含む塩が必要であることが分かる。
【0075】
[実施例7]
前記表3に示した毛髪補修剤(処方例I−15)と、前記表4、5に示した弾力付与剤(処方例II―3、7〜11)を組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.36〜40)は、毛髪補修剤中に(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液を配合しない場合に、(D):カルシウムを含む塩(特に塩化カルシウム)が毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表13に示す。尚、この表13には前記表9の実験No.15の結果も同時に示した。
【0076】
【表13】

【0077】
この結果から次のように考察できる。(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液を含有しない毛髪補修剤を用いて(D):塩化カルシウムを作用させても(実験No.15、36〜40)毛髪に十分な弾力性を付与することができない。タンパク質と(D):カルシウムを含む塩とが錯体を形成することにより、タンパク質の構造が変化して毛髪に硬さを付与することができるが、その硬さは毛髪に対して適度な硬さ(弾力性)ではない。つまり、毛髪に対して適度な弾力性を付与し、その効果を持続させるためには、毛髪補修剤には成分(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液が必要であることが分かる。
【0078】
[実施例8]
前記表1、2に示した毛髪補修剤(処方例I−1、2、5、7〜11)と、前記表4、5に示した弾力付与剤(処方例II―1、2、4〜8、10、11)を適宜組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.41〜51)は、毛髪補修剤中の(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量、弾力付与剤中の(C):キトサン、(D):カルシウムを含む塩の含有量、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]が毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表14、15に示す。
【0079】
【表14】

【0080】
【表15】

【0081】
表14の結果から次のように考察できる。(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液、(B)カルボキシメチルデキストランナトリウム、(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩が、毛髪化粧料中に適した含有量より少ない場合(実験No.42、43、45、46)は、毛髪に良好なすべり感や弾力性を付与することができないことが分かる。毛髪化粧料中に適した含有量よりも多い場合(実験No.41、44)は、毛髪への吸着が多くなり、毛髪がベタつき、すべり感が悪くなることが分かる。
【0082】
表15の結果から次のように考察できる。(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウム、(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩が、毛髪化粧料中に適した含有量でも、(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液と(D):塩化カルシウム、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムと(C):キトサンの配合比が、適正な配合比の範囲でない場合(実験No.47〜51)は、毛髪に良好なすべり感と弾力性を付与することができないことが分かる。
【0083】
[実施例9]
前記表1、3に示した毛髪補修剤(処方例I−3、16)と、前記表4、6に示した弾力付与剤(処方例II―3、20)を適宜組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.52)は、(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウム、(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩の少なくともいずれかの成分を含有しないときに毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表16に示す。尚、この表16に示した実験No.16および35は、夫々前記表9および表12に示したものと同じである。
【0084】
【表16】

【0085】
この結果から次のように考察できる。(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液および(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムを含有しない毛髪補修剤を用いて弾力付与剤を作用させた場合(実験No.16)や、(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩を含有しない弾力付与剤を用いて毛髪補修剤を作用させた場合(実験No.35)、および(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液および(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムを含有しない毛髪補修剤と、(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩を含有しない弾力付与剤を作用させた場合(実験No.52)、毛髪に良好なすべり感と弾力性を付与することができないことが分かる。つまり、毛髪に対して良好なすべり感と弾力性を付与し、その効果を持続させるためには、毛髪補修剤には(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液および(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムを配合すると共に、弾力付与剤には(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩を配合することが必要であることが分かる。
【0086】
[実施例10]
前記表1、3に示した毛髪補修剤(処方例I−3、16)と、前記表4、6に示した弾力付与剤(処方例II―3、20)を適宜組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し、上記検討項目1〜5について評価すると共に、下記の検討項目6、7についても評価した。この実験(実験No.53〜56)の検討項目6、7は、毛髪処理時の加熱の有無が毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表17に示す。尚、この表17に示した実験No.55および56の検討項目1〜5は、夫々前記表7の実験No.3および表16の実験No.52に示したものと同じである。
【0087】
[検討項目6]摩擦係数(毛髪のすべり感)の測定
化学処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を受けていな毛髪に対して上記と同様にブリーチ処理を2回行なった毛束を調製した。この毛束より毛髪をサンプリングし、スライドガラス上に0.5mm間隔で25本貼り付けた摩擦感測定用固定ヘアピース(以下、「測定用毛束」と略記する)を作製した。また、測定用毛束には、摩擦特性にバラツキがあるため、各処理を行なう前に「初期値」を計測し同様の摩擦特性を有する測定用毛束を選出した。このときの計測方法は下記の通りである。
【0088】
(測定方法)
表17の実験No.55、56の組み合わせで測定用毛束に毛髪補修剤および弾力付与剤処理(毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した後、洗い流し、乾燥させる:室温)を行なった(加温なし)。また、実験No.53、54の組み合わせで、毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した測定用毛束をラップ(「サランラップ」商品名:旭化成株式会社製)に包み45℃、10分間加温後洗い流し、乾燥を行ない、その後20℃、湿度60%で24時間以上調湿した(加温あり)。そして、測定用毛束を摩擦感テスター「KES−SE」(カトーテック株式会社製)を用いて、以下の測定条件で摩擦係数の測定を行なった。
【0089】
(測定条件)
測定感度:H
摩擦静荷重:50gf
センサー:シリコンタイプ
尚、走査は、順方向(根元からの毛先)にて行ない、MIU値(算出数値)に係数0.1を掛け、摩擦係数μを求めた。このときの毛髪のすべり感の評価基準は下記の通りである。
【0090】
[評価基準]
◎:摩擦係数μが0.470未満
○:摩擦係数μが0.470以上、0.490未満
△:摩擦係数μが0.490以上、0.510未満
×:摩擦係数μが0.510以上
【0091】
[検討項目7]曲げ硬さ(毛髪の弾力性)の測定
化学処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を受けていない毛髪に対して上記と同様にブリーチ処理を2回行なった毛束を調製した。この毛束より毛髪をサンプリングし、幅12mmのスチロール板上に1mm間隔で8本貼り付けた(測定長さは10mm)曲げ剛性測定用毛束(以下、「測定用毛束」と略記する)を作製した。また、測定用毛束には、曲げ硬さにバラツキがあるため、各処理を行なう前に「初期値」を計測し同様の曲げ特性を有する測定用毛束を選出した。このときの計測方法は下記の通りである。
【0092】
(測定方法)
表17の実験No.55、56の組み合わせで測定用毛束に毛髪補修剤および弾力付与剤処理(毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した後、洗い流し、乾燥させる:室温)を行なった。また実験No.53、54の組み合わせで、毛髪補修剤1.0gを塗布し、その後弾力付与剤2.0gを塗布した測定用毛束をラップ(「サランラップ」商品名:旭化成株式会社製)に包み45℃、10分間加温後洗い流し、乾燥を行ない、その後20℃、湿度60%で24時間以上調湿した。そして、各測定用毛束をシングルヘアーベンディングテスター「KES−SH」(カトーテック株式会社製)を用いて、以下の測定条件で曲げ硬さの測定を行ない、曲げ硬さを下記の基準で評価した。尚、計測値は、毛髪1本当たりの曲げ硬さ(N・m2)で表した。
【0093】
(測定条件)
最大曲率:2cm-1
トルク感度:1.0(1.00gf・cm)
最大変位速度レンジ:5(0.42cm-1/sec)
【0094】
[評価基準]
◎:曲げ剛性が6.4×10−6N・m2以上
○:曲げ剛性が6.0×10−6N・m2以上、6.4×10−6N・m2未満
△:曲げ剛性が5.6×10−6N・m2以上、6.0×10−6N・m2未満
×:曲げ剛性が5.6×10−6N・m2未満
【0095】
【表17】

【0096】
この結果から次のように考察できる。(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液および(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムを含有する毛髪補修剤を用いて、(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩を含有する弾力付与剤を作用させる場合、弾力付与剤塗布後に加温しても毛髪にすべり感と弾力性を付与することができ、またその効果を持続させることができることがわかる(実験No.53、55)。また(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液および(B)カルボキシメチルデキストランナトリウムを含有しない毛髪補修剤を用いて(C):キトサンおよび(D):カルシウムを含む塩を含有しない弾力付与剤を作用させた場合(実験No.54、56)、弾力付与剤を塗布後に加温しても毛髪に良好なすべり感と弾力性を付与することができないことが分かる。
【0097】
[実施例11]
前記表1に示した毛髪補修剤(処方例I−3)と、前記表4に示した弾力付与剤(処方例II―3)を適宜組み合わせて用い、上記した各方法に従って毛髪を処理し(但し、塗布する順序を変えることや、塗布後に加温した)、上記検討項目1〜5について評価した。この実験(実験No.57、58)は、毛髪補修剤と弾力付与剤を塗布する順序を変えたとき、および加温の有無が毛髪化粧料の性能に与える影響を検討したものである。その結果を、処理方法(毛髪補修剤と弾力付与剤の組合わせ、手順)、および各成分の配合比[(A):(D)、(B):(C)]と共に、下記表18に示す。尚、この表18には、前記実験No.3(前記表7)および53(表17)の場合も同時に示した。
【表18】

【0098】
この結果から次のように考察できる。毛髪補修剤と弾力付与剤を毛髪に作用させる際、毛髪補修剤塗布後に弾力付与剤を塗布する毛髪処理方法(実験No.3、53)に限らず、弾力付与剤塗布後に毛髪補修剤を塗布する処理方法(実験No.57、58)でも、毛髪に良好なすべり感と弾力性を付与することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)および(B)を含有する毛髪補修剤と、下記(C)および(D)を含有する弾力付与剤からなることを特徴とする毛髪化粧料。
(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液
(B):カルボキシメチルデキストランナトリウム
(C):キトサン
(D):カルシウムを含む塩
【請求項2】
(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液の含有量が毛髪補修剤に占める割合で0.01〜30.0質量%、(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムの含有量が毛髪補修剤に占める割合で0.01〜5.0質量%であり、(C):キトサンの含有量が弾力付与剤に占める割合で0.001〜2.0質量%、(D):カルシウムを含む塩の含有量が弾力付与剤に占める割合で0.01〜5.0質量%である請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
毛髪補修剤中の(A):N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩水溶液と、弾力付与剤中の(D):カルシウムを含む塩の配合比[(A):(D)]が1:30〜100:1(質量比)であり、毛髪補修剤中の(B):カルボキシメチルデキストランナトリウムと、弾力付与剤中の(C):キトサンの配合比[(B):(C)]が1:10〜2000:3(質量比)である請求項1または2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記(D):カルシウムを含む塩は、塩化カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムのいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料を用いて毛髪を処理するに当たり、前記毛髪補修剤で処理した後、洗い流さずに前記弾力付与剤で処理し、その後洗い流すことを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項6】
洗い流す前に一定時間放置する請求項5に記載の毛髪処理方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料を用いて毛髪を処理するに当たり、前記弾力付与剤で処理した後、洗い流さずに前記毛髪補修剤で処理し、その後洗い流すことを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項8】
洗い流す前に一定時間放置する請求項7に記載の毛髪処理方法。

【公開番号】特開2010−37208(P2010−37208A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198223(P2008−198223)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】