説明

気体供給装置とこの装置を用いた浄水器、養殖装置、水槽と浴槽

【課題】大気中に放出する気体、いわゆる損失となる気体を抑制して、効率よく液体に気体を溶け込ませ、システムとしてのエネルギー効率が高い気体供給装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】液体6に気体を供給するための放出ユニット7に気体分離膜10を用いた構成とすることで、気体が液体6中に溶解することとなり、大気中へ気体を放出することなく、必要な分量のみ液体6中へ気体を提供することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器中の液体の中に所定の気体を供給する気体供給装置、及びこの装置を用いた浄水器、養殖装置、水槽と浴槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術としては、観賞魚水槽用酸素補給器などが知られている。
【0003】
その一例について、図面を用いて説明する。
図7中、1は酸素補給器であり、圧縮空気発生機(図示せず)で圧縮された空気が圧縮空気搬送用チューブ2を通じて、瞬時に充満されるようになっている。
【0004】
充満した圧縮空気は、酸素補給器1に設けられたクレーズ入り通気性フィルム3を通して微泡沫状の状態で水中に排出される。
【0005】
図8を用いて、クレーズ入り通気性フィルム3について説明する。
【0006】
図中、4はシートの厚み方向に形成されたクレーズであり、酸素や窒素、あるいは水蒸気などの気体がこのクレーズ帯域を通過することが記載されている。(特許文献1)
また、同様のクレーズ入り通気性フィルムを用いた活魚運搬用容器の従来例が示されたものもあり、特許文献1と同様に微泡沫を水槽内へ排出することが記載されている。(特許文献2)
【特許文献1】特開2003−102325号公報
【特許文献2】特開2003−153644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の技術で用いられる通気性フィルムは、液体中に酸素等の微泡沫、すなわち気泡を供給するものであり、供給された気泡の一部は液体中に溶けるものの大半は、液体を通過して大気中に放出されるという課題を有していた。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、液体が気体分離膜に接する部分に気体を溶解することで液体中の気体濃度を高くすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液体を貯める容器と、液体に含有させる気体を供給する気体供給手段と、容器内に配設され気体供給手段から連絡管を介して流入した気体を前記液体内へ放出する放出ユニットとを具備し、この放出ユニットの気体の放出部に気体分離膜を設けたものである。
【0010】
上記したように、高分子から成る無孔膜の気体分離膜で液体の部分と気体の部分とを仕切ることにより、気体の部分の気体分圧に応じて液体へ気体分離膜を介して平衡に達するように溶解する作用が働くため、気泡などを発生させることなく所定の溶存気体濃度を満足する液体を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成により、大気中へ気体を放出することなく液体中で消費された気体を補うように気体分離膜から液体へ気体を溶解させることで、効率よく液体中の気体濃度を所定の濃度に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態は、液体を貯める容器と、液体に含有させる気体を供給する気体供給手段と、容器内に配設され気体供給手段から連絡管を介して流入した気体を液体内へ放出する放出ユニットとを具備し、この放出ユニットの気体の放出部に気体分離膜を設けたものである。
【0013】
このように高分子から成る無孔膜の気体分離膜で液体の部分と気体の部分とを仕切ることにより、気体の部分の気体分圧に応じて液体へ気体分離膜を介して平衡に達するように溶解する作用が働くため、気泡などを発生させることなく所定の溶存気体濃度を満足する液体を得ることができるので、従来のように気泡となって大気中へ放出していた気体を抑制することができるため、従来よりも効率よく気体を液体内へ供給することができる。
【0014】
また、液体に対する気体の溶解度は気体の分圧により決定するので、気体供給手段の圧力を高くすると液体中の気体の溶存量を多くすることができる。従って、消費される気体量と同じ量が溶解するように気体供給手段の圧力を調整することにより、常に一定の圧力差を生じるようにすれば、液体中の気体濃度を一定濃度に保つことが可能となる。
【0015】
つまり、液体中で消費した分量だけ気体を供給すればよく、液体中に溶解する以外の不要な気体を準備する必要がなくなる。
【0016】
また本発明の実施の形態は、液体を貯める容器と、この容器中の液体をポンプを介して循環させる循環路と、液体に含有させる気体を供給する気体供給手段と、循環路内に配設され、気体供給手段から連絡管を介して流入した気体をこの循環路内の液体中へ放出する放出ユニットとを具備し、この放出ユニットの気体の放出部に気体分離膜を設けたものである。
【0017】
このような構成とすることにより、容器内の液体中の気体を消費することで、液体中の気体濃度が低下した液体が、ポンプを用いて循環路に供給されるため、常に所定の気体の濃度が低下した液体が流れてくる。
【0018】
その結果、所定の圧力差を掛け続けることで、液体内の気体濃度が一定の値となるよう、気体分離膜から液体へ気体が溶解して供給される。
【0019】
特に、本実施の形態では、常に循環路内に循環流が発生しているため、上記実施の形態に比べて、より気体が消費された液体が気体分離膜へ供給されるので、気体分離膜の表面上での気体の溶解作用を促進することとなる。
【0020】
次に本発明の実施の形態は、気体供給手段に封入する気体を酸素、または二酸化炭素とするものである。
【0021】
このような気体供給装置とすることで、液体内へ供給する気体を酸素、または二酸化炭素とし、各々酸素富化の液体、または二酸化炭素富化の液体を提供することができる。
【0022】
また、本発明の実施の形態は、これらの気体供給装置を浄水器に用いたものである。
このように、浄水器に用いることにより、例えば、供給する気体を酸素とすれば、酸素富化の飲料水を提供することができるようになり、一般に知られている酸素水による人体のリフレッシュ効果を期待することが可能となる。
【0023】
次に、本発明の実施の形態は、これらの気体供給装置を養殖装置、あるいは水槽に用いたものである。
【0024】
このように、養殖装置、あるいは水槽に用いることにより、例えば、供給する気体を酸素とすれば、常に酸素濃度が一定となるような水を提供することができるため、養殖装置、あるいは水槽に入れられた魚などの生物に、従来に比べて効率よく酸素を供給することができる。
【0025】
しかも、気体分離膜の特性として供給気体濃度、気体圧力を調整することで、気体濃度を一定に保つことが可能となるため、養殖装置、あるいは水槽に入れられた魚などの生物の多い、少ないに関わらず、その生物に最適な酸素濃度を維持することができる。
【0026】
また、従来装置のように供給した気泡を大気中に放出することがないため、酸素供給効率がよくなり、システム全体としての省エネルギー化を促進することができる。
【0027】
次に、本発明の実施の形態は、この気体供給装置を浴槽に用いたものである。
【0028】
このように、浴槽に用いることにより、お湯の表面から抜け出す二酸化炭素を補給できるため、常に二酸化炭素の濃度が一定のお湯を提供できる浴槽を実現することが可能となり、いつ浴槽に浸かっても温浴効果が期待できる風呂を提供できる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
本発明の詳細な実施例を図面を用いて説明する。
【0030】
図1中、5は液体6を貯めておく容器である。この液体6中に設けられた放出ユニット7には、気体を充填している気体供給手段8から連絡管9を介して液体6に供給する気体が送付される。
【0031】
まず、液体6と容器5は、目的に応じて様々な組合せが考えられるが、例えば、浄水器などに用いる場合には、液体6としては飲料用の水、容器5としては浄水器を形作る金属製や樹脂製の容器などが用いられる。
【0032】
また、液体6を海水、容器5を断熱機能を有する容器などで構成すれば、海で取れた魚の運搬に使用することができる養殖装置を提供することができる。
【0033】
さらに、液体6を淡水、容器5をガラスや樹脂などの容器内側が透けて見える容器にすれば、金魚や熱帯魚などの観賞用の魚を飼育することに用いることができる。
【0034】
次に、放出ユニット7に用いる気体分離膜10について図2を用いて説明する。
【0035】
この気体分離膜10は不織布にポリシロキサンとスチレンの共重合体を主成分とする高分子で形成された高分子膜11から成り立っており、高分子を形成する高分子鎖12が熱振動するため、気体が通る間隙13が生じる。
【0036】
さらに、気体分離膜10の両面に圧力差を設けることで、高圧側からヘンリー(Henry)の法則に従って気体分離膜10に生じた間隙13に気体14が溶解し、フィック(Fick)の法則に従って溶解した気体14が気体分離膜10中を拡散した後、低圧側に脱離する。
【0037】
従って、図1に示すように、この気体分離膜10を用いた放出ユニット7を液体6中に設け、気体供給手段8から所定の気体14を供給すると、液体6中に存在する所定の気体14の溶存気体濃度が飽和濃度に達していない場合には、飽和濃度に達するまで所定の気体14が液体6中へ溶け込もうとする。
【0038】
例えば、海水を用いて養殖装置を構成した場合、海水中の魚が呼吸をすることで海水中の酸素を消費した後、魚の回遊などにより液体6が攪拌されることにより、放出ユニット7に設けられた気体分離膜10表面の溶存気体濃度が低下すると、新たな気体14が気体分離膜10を介して溶解される。
【0039】
なお、液体6への気体14の飽和溶解度は液体6と接している気体の圧力(濃度)で決まる。
【0040】
すなわち、濃度の高い気体を放出ユニット7に供給すると液体6中の溶存気体濃度が飽和濃度に達していないため、放出ユニット7に設けられた気体分離膜10から気体14が脱離し、気体分離膜10と液体が接している液体6中に気体14が溶解する。
【0041】
ここで気体分離膜10表面の液体6移動がなければ、溶存気体濃度は飽和濃度に達し、気体14が液体6へ溶解できなくなるため、気体14の気体分離膜10透過は抑制される。
【0042】
その後、気体分離膜10表面に接する飽和濃度に達した液体6が容器5内に拡散したり、液体6を攪拌するなどして気体分離膜10表面の溶存気体濃度が低下すると、気体14は気体分離膜10を透過して液体6中に溶解する。
【0043】
上記したように、高分子から成る無孔膜の気体分離膜10を用いることで、液体6の部分と気体14の部分とを仕切ることにより、気体14の部分の気体分圧に応じて液体6へ気体分離膜10を介して平衡に達するように溶解する作用が働くため、気泡などを発生させることなく所定の溶存気体濃度を満足する液体6を得ることができる。
【0044】
また次に、気体供給手段8について説明する。
【0045】
図1に記載のものは、気体供給手段8としてガスボンベを用いた一実施例を示している。
ガスボンベを用いる利点としては、気体の濃度が高いため、溶存気体濃度が高い液体を提供することが可能となることである。
【0046】
また、ガスボンベで提供できる気体であれば、上述した酸素以外の気体、例えば、窒素や二酸化炭素など様々な気体を液体に溶解させることが可能となる。
【0047】
(実施例2)
次にメンテナンスフリーとなる気体供給手段について説明する。
【0048】
図3に特定の気体を分離する気体分離ユニット15を示す。この気体分離ユニット15は、枠状の支持体16に、不織布にポリシロキサンとスチレンの共重合体を主成分とする薄膜を形成した気体分離膜17を取付けて構成したモジュール18を複数個所定の間隔をもって積層し、隣接するモジュール18どうしの隙間に生じる吸気口19と、吐出口20とを設けた構成となっている。
【0049】
上記気体分離ユニット15を用いた気体供給手段の作用について、図3、図4を用いて説明する。
【0050】
なお、図4中、図1と同じ機能を有するものについては、同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0051】
以下、液体6に酸素を供給する場合を一例として説明する。
【0052】
まず、ポンプ21を用いて気体分離ユニット15の吐出口20側圧力を低圧とする。
【0053】
その結果、気体分離ユニット15において、高圧側となる吸気口19から吸気した空気から気体分離膜17の両面に発生した圧力差により、高酸素濃度空気を生成して吐出口20から吐出することが可能となる。
【0054】
よって、ポンプ21から放出ユニット7を介して高酸素濃度空気を液体6に供給することができるようになる。
【0055】
上記した気体分離ユニット15及びポンプ21を用いた気体供給手段8を用いた場合、実施例1に示したガスボンベを用いた場合に比べて気体濃度が低くなるという欠点はあるが、例えば、自然状態の酸素濃度21%を常に維持するだけの気体供給能力があるなど、他の気体においても実使用上、不具合が生じないだけの気体供給能力は期待できる。
【0056】
一方、上記した気体供給手段8を用いる利点としては、実施例1に示したガスボンベが有限のものであるのに対し、本構成は、気体分離ユニット15の交換などは不要であり、メンテナンスを限りなく不要とすることができるというものである。
【0057】
よって、養殖装置に用いた場合、魚を長距離移動するときでもガスボンベの残量を気にする必要がなくなる。
【0058】
また、個人宅で金魚を飼育する水槽に用いた場合、長期間の旅行など不在となるときでも、ガスボンベの残量を気にしなくても良い、という効果を得ることができる。
【0059】
なお、上記実施例1及び実施例2において、供給する気体を酸素とすると、液体6中が酸素富化の状態となり、二酸化炭素を供給すると二酸化炭素富化の状態になる。
【0060】
すなわち、容器5をステンレスや木製の浴槽とし、液体6をお湯、供給する気体を二酸化炭素とすることで、お湯が二酸化炭素富化の状態となるため、いつ入っても温浴効果が期待できる風呂を提供することができる。
【0061】
(実施例3)
次に、図5に示したものは、容器5中の液体6をポンプ22を用いて、循環路23内を通って循環させるものである。
【0062】
一般的に、このような装置には、循環路23にフィルター(図示せず)などが設けられており、例えば、金魚などを飼育する場合、金魚のフンや、えさの残りなどを清掃する仕組みとなっている。
【0063】
この循環路23に本願発明の気体分離膜を設けた放出ユニット24を設置すると、放出ユニット24には、ポンプ22を介して常に気体濃度が低下した液体6が供給されるため、放出ユニット24に設けられた気体分離膜25表面に溶解された気体が次々と容器5中へ運ばれることとなり、実施例1、2に比べ、より気体の溶解を促進するような効果が期待できる気体供給装置を提供することができる。
【0064】
(実施例4)
次に、図6に示したものは、気体供給手段8を実施例3に示したガスボンベから実施例2で説明した気体分離ユニット15とポンプ21の組合せに代えたものである。
【0065】
その効果としては、実施例3で説明したように、実施例2よりも気体の溶解が促進されるとともに、実施例3の有限な気体の供給手段であるガスボンベよりもメンテナンス性に優れている、ということである。
【0066】
なお、図中、気体供給手段の例として気体を封入したガスボンベや、気体分離ユニット及びポンプの組合せを記載したが、連絡管などを用いて放出ユニットに気体を供給できるものであれば、他の手段を用いても同様の効果を期待できることは言うまでもない。
【0067】
例えば、酸素の場合、本発明の気体分離膜を用いた酸素富化空気発生器から発生した酸素富化空気やPSA方式により発生した高濃度酸素富化空気を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の気体供給装置は、魚など水中で飼育する生物の養殖装置や水槽として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施例における養殖装置を示す概略図
【図2】本発明の一実施例における気体分離膜を示す断面図
【図3】本発明の一実施例における気体分離ユニットを示す斜視図
【図4】本発明の他の実施例における養殖装置を示す概略図
【図5】本発明の他の実施例における養殖装置を示す概略図
【図6】本発明の他の実施例における養殖装置を示す概略図
【図7】従来の酸素補給器を示す斜視図
【図8】従来の通気性フィルムを示す断面図
【符号の説明】
【0070】
5 容器
6 液体
7 放出ユニット
8 気体供給手段
9 連絡管
10 気体分離膜
22 ポンプ
23 循環路
24 放出ユニット
25 気体分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯める容器と、前記液体に含有させる気体を供給する気体供給手段と、前記容器内に配設され前記気体供給手段から連絡管を介して流入した気体を前記液体内へ放出する放出ユニットとを具備し、この放出ユニットの気体の放出部に気体分離膜を設けたことを特徴とする気体供給装置。
【請求項2】
液体を貯める容器と、この容器中の液体をポンプを介して循環させる循環路と、前記液体に含有させる気体を供給する気体供給手段と、前記循環路内に配設され前記気体供給手段から連絡管を介して流入した気体をこの循環路内の液体中へ放出する放出ユニットとを具備し、この放出ユニットの気体の放出部に気体分離膜を設けたことを特徴とする気体供給装置。
【請求項3】
気体供給手段に封入する気体を酸素としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気体供給装置。
【請求項4】
気体供給手段に封入する気体を二酸化炭素としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気体供給装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の気体供給装置を用いた浄水器。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の気体供給装置を用いた養殖装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の気体供給装置を用いた水槽。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の気体供給装置を用いた浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−136813(P2006−136813A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328762(P2004−328762)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】