説明

気体放出装置

【課題】一層の小型化を図ることが可能であると共に、砲身部における渦輪の発射タイミングの同期を取ることが可能な気体放出装置を提供すること。
【解決手段】ピストン520を一方側に付勢する付勢手段523を備える少なくとも2つの空気砲部51,52と、付勢手段523の付勢力に抗する駆動力を与える少なくとも2つの駆動モータ530と、それぞれの駆動モータ530によるピストンロッド522に与える駆動力を開放する解放機構522a,532cと、ピストンロッドの有無を検出する検出手段72と、検出手段72によりいずれかのピストンロッドが検出される場合、検出されたピストンロッド522を駆動させる駆動モータ530の作動を一時停止させ、全ての駆動モータ530が一時停止状態となっている状態で、解放機構522a,532cによってピストンロッドを同時に開放させるタイミングを揃える制御を行う制御手段100と、具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体放出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車の室内においては、臭気が良好とならない場合があるが、そのような場合に車の室内における臭気を良好にするべく、車の室内に芳香剤を設置することが多い。これに対して、例えば、特許文献1に示すような空気砲(気体放出装置)を車の室内に設置し、芳香成分を局所的に供給することが考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−275196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に開示されている空気砲においては、例えばダッシュボード等に搭載される関係上、一層の小型化が望まれている。しかしながら、上述の特許文献1には、その全体構成の概略は開示されているものの、小型化を達成する上での具体的な構成についての開示はない。一方、空気砲の小型化は、メカ的な側面からアプローチする必要があり、その具体化が望まれている。
【0005】
また、上述の特許文献1に開示されている空気砲においては、一対の空気砲部からそれぞれ発射される渦輪の発射タイミングを揃える(同期させる)必要がある。仮に、渦輪の発射タイミングを同期させることができなく、2つの渦輪が前後してしまうと、2つの渦輪は、互いに反発し合って、混ざり合わない状態となる。2つの渦輪が混ざり合わない場合、芳香成分を拡散させることが困難となる。しかしながら、渦輪の発射タイミングは、駆動源であるモータの特性バラ付きを始めとして、各種のメカ的なバラ付きの影響を受けるため、当該渦輪の発射タイミングの同期を取ることは困難である。
【0006】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、一層の小型化を図ることが可能であると共に、空気砲部における渦輪の発射タイミングの同期を取ることが可能な気体放出装置を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の気体放出装置の第1の側面は、シリンダ室を内部に備え、このシリンダ室に気体を導入可能なシリンダおよびシリンダ室を摺動するピストンを備え、このピストンに連結されるピストンロッドを備えると共に、ピストンを一方側に付勢して気体を押し出す向きの付勢力を与える付勢手段を備える少なくとも2つの空気砲部と、それぞれのピストンロッドに付勢手段の付勢力に抗する駆動力を与える少なくとも2つの駆動モータと、それぞれの駆動モータによるピストンロッドに与える駆動力を開放する解放機構と、それぞれのピストンロッドの有無を検出する検出手段と、検出手段によりいずれかのピストンロッドが検出される場合に、検出されたピストンロッドを駆動させる駆動モータの作動を一時停止させると共に、全ての駆動モータが一時停止状態となっている状態で、ピストンロッドに与える駆動力を解放機構によって同時に開放させるタイミングを揃えるタイミングでそれぞれの駆動モータを駆動させる制御を行う制御手段と、を具備するものである。
【0008】
また、本発明の気体放出装置の他の側面は、上述の発明において、空気砲部および駆動モータは、それぞれ2つずつ設けられていると共に、それぞれのシリンダ室に気体を導入可能に連結される2つのチャンバを備えると共に、一方のチャンバからはシリンダ室に気体を導入する向きに気流を発生させ、そのときに他方のチャンバにはシリンダ室から気体が導入される向きに気流を発生させる回転部材をそれぞれのチャンバに備える気流発生部と、回転部材を回転させる駆動力を与えると共に、正逆回転可能であり、この正逆回転によって一方のチャンバおよび他方のチャンバにおける気体の導入と排出を切り替える駆動力を与え、かつ制御手段によって駆動の制御が為される切替モータとを備えることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の気体放出装置の他の側面は、上述の発明において、一方のチャンバに気体を導入可能に連結され、導入された気体を滞留させるキャビティ空間を備えると共に、このキャビティ空間に存在する気体に含まれる酸素からオゾンを発生させ、当該発生したオゾンを気体放出部から放出させるオゾン発生部を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明の気体放出装置の他の側面は、上述の発明において、2つの空気砲部の間に気流発生部が配置されると共に、2つの駆動モータ、2つの解放機構、2つの検出手段は、2つの空気砲部が配置されている方向とは直交する方向に向かって配置されていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の気体放出装置の他の側面は、上述の発明において、制御手段は、複数の作動スイッチのうちのいずれかが押されるかに応じて切替モータの正逆回転を切り替えると共に、当該制御手段は、切替モータの正逆回転と駆動モータとの駆動の組み合わせに応じた複数の動作パターンを実行可能としていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の気体放出装置の他の側面は、上述の発明において、解放機構は、ピストンロッドに存在する凹凸が入り組む形状の噛合部と、駆動モータによって回転させられる出力ギヤ体に設けられると共に、その出力ギヤ体の円周方向に間欠的に設けられ、当該出力ギヤ体の回転によって噛合部に噛合および離間する間欠歯部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、気体放出装置の一層の小型化を図ることが可能となる。加えて、空気砲部における渦輪の発射タイミングの同期を取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る気体放出装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1の気体放出装置の下筐体部側に取り付けられる内部構成を示す斜視図である。
【図3】図1の気体放出装置の下筐体部側に取り付けられる内部構成を示す平面図である。
【図4】図1の気体放出装置の上筐体部側に取り付けられる内部構成を示す斜視図である。
【図5】図1の気体放出装置の上筐体部側に取り付けられる内部構成を示す分解斜視図である。
【図6】図1の気体放出装置のうち、気流発生部および芳香剤充填部の構成を示す分解斜視図である。
【図7】図1の気体放出装置のうち、空気砲部の構成を示す分解斜視図である。
【図8】図1の気体放出装置のうち、ピストンロッドの噛合部と間欠歯部との噛合の開始状態を拡大して示す部分的な斜視図である。
【図9】図1の気体放出装置のうち、ピストンロッドの噛合部と間欠歯部との噛合の終了状態を拡大して示す部分的な斜視図である。
【図10】図2の下筐体部側に取り付けられる内部構成に対して、作動スイッチおよびロッド検出センサを有する回路基板が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図11】図1の気体放出装置のうち、制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図1の気体放出装置の各部の動作による、車の始動時における気体の流れを説明する模式図である。
【図13】図1の気体放出装置の右側作動スイッチを押した場合にピストン体が奥側に引き込まれた状態における気体の流れを説明する模式図である。
【図14】図13の状態の後に、ピストン体が手前側に押し出された状態における気体の流れを説明する模式図である。
【図15】図1の気体放出装置の左側作動スイッチを押した場合にピストン体が奥側に引き込まれた状態における気体の流れを説明する模式図である。
【図16】図15の状態の後に、ピストン体が手前側に押し出された状態における気体の流れを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係る、気体放出装置10について、各図に基づいて説明する。
【0016】
図1は、気体放出装置10の全体構成を示す斜視図であり、図2は、気体放出装置10の内部構成を示す斜視図である。また、図3は、同じく気体放出装置10の内部構成を示す平面図であり、図4は、ハウジング20を構成する上蓋を裏面側から見た状態を示す斜視図である。
【0017】
なお、以下の説明においては、図1におけるX1側を左側、X2側を右側、Y1側を手前側、Y2側を奥側、Z1側を上側、Z2側を下側と規定する。また、X軸方向を幅方向と規定し、Y軸方向を奥行き方向と規定し、さらにZ軸方向を高さ方向と規定する。また、左右にそれぞれ一対(合計2個)存在する各部材に附する符号については、原則として、右側にあるものはRを附し、左側にあるものはLを附するものとするが、左右の各部材を区別する必要がない場合には、R,Lを附さない状態で説明する。
【0018】
本実施の形態における気体放出装置10は、ハウジング20と、気流発生部30と、芳香剤充填部40と、空気砲ユニット50と、オゾン発生部60と、制御部100とを備えている。
【0019】
これらのうち、ハウジング20は、図1他に示すように、上筐体部21と、下筐体部22(図2等参照)と、フロントパネル23とから構成されていて、これらは嵌合可能に設けられている。そして、これら上筐体部21、下筐体部22およびフロントパネル23が嵌合された後に、上筐体部21と下筐体部22とがネジ止めされることにより、ハウジング20が構成されている。
【0020】
図2〜図4に示すように、ハウジング20の背面部には、カートリッジ挿入孔24が設けられている。カートリッジ挿入孔24は、上筐体部21と下筐体部22の両方に跨って設けられている。なお、図2と図3には、カートリッジ挿入孔24のうち、下筐体部22側の部分が示されている。また、図4には、カートリッジ挿入孔24のうち、上筐体部21側の部分が示されている。
【0021】
このカートリッジ挿入孔24には、芳香剤から構成されると共に円柱状(パイル状)の芳香剤カートリッジ41(図12等参照)が挿入される。なお、カートリッジ挿入孔24は、ハウジング20の背面に一対設けられている。また、ハウジング20の正面部(フロントパネル23)には、噴射孔231が設けられている。噴射孔231は、後述する空気砲ユニット50から発射される渦輪を外部に向けて噴射させるための孔部分である。この噴射孔231は、フロントパネル23の幅方向に沿って一対設けられている。また、噴射孔231は、フロントパネル23のうち、ハウジング20の内部に向かって突出している(外部から見て窪んでいる)凹嵌部230に設けられている。この凹嵌部230は、ハウジング20の内部に向かって進行するにつれて、その内径寸法が小さくなるように、内壁がテーパを為している。
【0022】
図1および図5に示すように、上筐体部21には、開口部210が設けられている。この開口部210は、後述するキャビティ上部63の気体放出部630が位置する部分である。本実施の形態では、開口部210は、幅方向に長尺となる矩形状に設けられている。
【0023】
また、図1および図5に示すように、上筐体部21には、一対の露出孔211が設けられている。露出孔211は、後述する押込操作部212を上面側に露出させるための孔部分である。この露出孔211は、押込スイッチに対応する大きさの開口となっている。なお、本実施の形態では、露出孔211は、上述の開口部210よりも開口面積が小さく設けられている。
【0024】
また、図1、図4および図5に示すように、上筐体部21には、当該上筐体部21とは別パーツからなる押込操作部212が取り付けられている。押込操作部212には、取付部212aと、撓み部212bと、押込部212cとが設けられている。取付部212aは、上筐体部21の裏面側に、ネジ等の固定手段を介して取り付けられる部分である。また、撓み部212bは、取付部212aと押込部212cとの間に位置する連結部分である。押込部212cがユーザによって押込まれる場合、撓み部212bは弾性変形する。それにより、押込部212cのうち撓み部212cから離間する部位が下方に移動し、後述する作動スイッチ71を押し込む状態となる。
【0025】
また、押込部212cは、上述の露出孔211から外面(上面)に露出する部分であり、取付部212aよりも上方に向かって突出している部分である。この押込部212cの上面側は、上筐体部21の上面側と面一となるように形成されている。
【0026】
なお、押込操作部212は、上筐体部21に対して別体的に設けられる構成には限られず、上筐体部21に対して一体的に設けられる構成を採用しても良い。押込操作部212が上筐体部21に対して一体的に設けられる構成を採用する場合、上筐体部21に切り欠き部分や薄肉部を設けることにより、当該押込操作部212が形成される。
【0027】
<気流発生部について>
上述の下筐体部22には、気流発生部30が設けられている。図6等に示すように、気流発生部30は、上チャンバ部材31と、下チャンバ部材32と、切替モータ33と、羽根軸体34と、を備えている。これらのうち、上チャンバ部材31は、下チャンバ部材32と嵌合される。この嵌合および/またはネジ止めにより、両者の間には、モータ収納部35と、左チャンバ36Lと、右チャンバ36Rとが構成される。モータ収納部35は、切替モータ33を収納するスペースであるが、その出力軸33aのみはフロント側に向かって突出するように、当該モータ収納部35には孔部35aが形成される。
【0028】
なお、モータ収納部35には、上述の切替モータ33が収納されるが、この切替モータ33の出力軸33aには、駆動ギヤ33bが取り付けられる。駆動ギヤ33bは、後述する伝達ギヤ343と噛み合っていて、この噛合により、羽根軸体34を回転駆動させる駆動力が伝達される。
【0029】
また、左チャンバ36Lおよび右チャンバ36Rは、上チャンバ部材31と下チャンバ部材32との嵌合により、円筒状の空洞に形成される部分である。これら左チャンバ36Lおよび右チャンバ36Rには、それぞれ羽根軸体34が配置される。なお、左チャンバ36Lおよび右チャンバ36Rの長手方向の手前側には、羽根軸体34を軸支すると共に後述する軸受を支持するための軸支孔36a,37aが設けられている。ここで、上チャンバ部材31の上部側であって、後述する連通管路311L,311Rよりも奥側の部位には、空気供給孔310が設けられている。この空気供給孔310は、左チャンバ36L側から送り込まれる空気を、後述するオゾン発生装置61に供給するための孔部分である。
【0030】
また、上チャンバ部材31の上部側であってフロント側の部位には、連通管路311L,311Rが設けられている。連通管路311L,311Rは、左チャンバ36Lまたは右チャンバ36Rと、後述する空気砲ユニット50のシリンダ室512とを連通させるための管路である。なお、左チャンバ36Lは、左側に配置される空気砲ユニット50のシリンダ室512と連通管路311Lを介して連通すると共に、右チャンバ36Rは、右側に配置される空気砲ユニット50のシリンダ室512と連通管路311Rを介して連通する。
【0031】
左チャンバ36Lと右チャンバ36Rには、図6に示すような羽根軸体34が配置される。羽根軸体34は、シャフト340と、インペラ341と、軸受342と、伝達ギヤ343と、を有している。シャフト340は、例えば金属の長尺状部材であり、左チャンバ36Lおよび右チャンバ36Rの内部の長さ寸法よりも長く設けられている。また、軸受342は、左チャンバ36Lおよび右チャンバ36Rの手前側の軸支孔36a,37aにそれぞれ差し掛かるように、シャフト340に取り付けられている。
【0032】
上述のシャフト340には、インペラ341が取り付けられている。インペラ341は、シャフト340のうち手前側の軸受342と奥側の軸受342との間の位置に取り付けられる。なお、本実施の形態では、それぞれのシャフト340には、2つのインペラ341が取り付けられていて、1つのシャフト340に取り付けられる2つのインペラ341の間隔は、所定だけ空けられるように設定されている。なお、本実施の形態では、左チャンバ36Lに配置される羽根軸体34のインペラ341と、右チャンバ36Rに配置される羽根軸体34のインペラ341とが同じ向きに回転させられる場合に、それぞれのインペラ341で生じさせる気流の向きが互いに逆向きとなっている。すなわち、羽根軸体34を側面視する場合、左チャンバ36Lと右チャンバ36Rとでは、左下がりの羽根形状のインペラ341と、右下がりの羽根形状のインペラ341とが存在していて、羽根形状の異なるインペラ341が互いに異なるチャンバに配置されている。
【0033】
また、シャフト340のうち、手前側の軸受342よりも手前側の部位には、伝達ギヤ343が取り付けられている。この伝達ギヤ343は、上述の駆動ギヤ33bに噛み合うものである。なお、左チャンバ36L側の伝達ギヤ343と、右チャンバ36R側の伝達ギヤ343とは、駆動ギヤ33bに対して同時に噛み合っている。そのため、左チャンバ36Lに配置される羽根軸体34と、右チャンバ36Rに配置される羽根軸体34とでは、回転する向きが常に等しくなっている。
【0034】
<芳香剤充填部について>
図2、図3および図6等に示すように、気流発生部30の後方(奥側)には、一対の芳香剤充填部40が配置されている。芳香剤充填部40は、芳香剤から構成されるパイル状のカートリッジ41を充填させるための部分である。この芳香剤充填部40は、筒状に形成されていて、気流発生部30の後端に連結される。この連結状態では、芳香剤充填部40は、左チャンバ36Lまたは右チャンバ36Rに連通する状態となる。また、芳香剤充填部40には、その内筒側に向かって突出するフランジ部(図示省略)が設けられていて、このフランジ部によりカートリッジ41の気流発生部30側への侵入を防いでいる。また、芳香剤充填部40の後方側の開口部分を塞ぐべく、当該芳香剤充填部40には、閉塞キャップ42が取り付けられている。
【0035】
<空気砲ユニットについて>
続いて、空気砲ユニット50の構成について説明する。空気砲ユニット50(空気砲ユニット50L,50R)は、図7に示すように、ハウジング20の内部のうち、気流発生部30を挟んで幅方向の両側にそれぞれ配置されている。空気砲ユニット50の構成は、大きく分けて、シリンダ51と、ピストン体52と、駆動ユニット53とから構成されている。
【0036】
これらのうちシリンダ51は、ピストン体52と共に、請求項でいう空気砲部を構成する。このシリンダ51は、シリンダ筒510に対して蓋体511が取り付けられることにより構成されている。これらの取り付けにより、シリンダ51には、シリンダ室512(図12等参照)が形成される。なお、以下の説明では、左側のシリンダ室512をシリンダ室512L、右側のシリンダ室512をシリンダ室512Rと称呼し、両者を区別する必要がない場合には、シリンダ室512と称呼する。
【0037】
また、シリンダ筒510には、当該シリンダ筒510の他の部分よりも小径であると共に後方に向かって突出する小径部510aが設けられていて、この小径部510aの後端側には、挿通孔510b(図12等参照)が設けられている。挿通孔510bは、後述するピストンロッド522を挿通させるための孔部分である。なお、小径部510aの内方には、付勢バネ523の奥側の端部を受け止めるための部分が存在している(図示省略)。
【0038】
また、蓋体511には、射出孔511aが設けられている。射出孔511aは、ピストン520が作動してシリンダ室512の内部の空気を外部に向けて噴射させるための孔部分である。この射出孔511aから空気が発射させられる際に、当該空気は図14等に示すような渦輪となる。また、射出孔511aは、ハウジング20の外方に向かうにつれて、その内径寸法が徐々に大きくなるようなテーパ孔形状に設けられている。また、この射出孔511aは、フロントパネル23の噴射孔231と連通するが、射出孔511aの手前側の孔径と噴射孔231の奥側の孔径とは略一致するように設けられている。
【0039】
また、ピストン体52は、ピストン520と、取付ガイド部521と、ピストンロッド522と、付勢バネ523とを有している。これらのうち、ピストン520は、シリンダ室512の内径と略同一か、僅かに小さな直径(すなわち、シリンダ室512を移動可能でありながら空気のシール性が保たれる程度の直径)を有する円盤状部材である。なお、このピストン520の径方向の中心には、挿通孔520aが設けられていて、取付ガイド部521の挿入部を挿通させることが可能に設けられている。
【0040】
また、取付ガイド部521は、ピストン520とピストンロッド522との間に配置されて、両者の取付状態を良好にするための部材である。この取付ガイド部521は、円盤部521aと、一対の挿入部521b,521cとを有している。円盤部521aは、ピストンロッド522のロッド径よりも大径かつピストン520よりも小径に設けられている円盤状の部分である。この円盤部521aは、ピストン520に対して面的に接触し、それによりピストン520のシリンダ室512内での挙動が安定化させられる。また、円盤部521aは、付勢バネ523の圧力を受け持つ部分でもあり、ピストン520が変形し易い柔らかな材料から形成されていても、この円盤部521aによって当該ピストン520の変形を抑えることが可能となる。
【0041】
また、一対の挿入部521b,521cは、円盤部521aを挟んで対称となる位置にそれぞれ設けられている。そのため、一対の挿入部521b,521cは、同一の軸線上に配置されている。これらのうち、挿入部521bは、ピストン520の挿通孔520aに挿入されると共に、挿入部521cはピストンロッド522のロッド孔に挿入される。それにより、ピストン520とピストンロッド522とが取り付けられる。なお、挿入部521b,521cには、ネジ溝が形成されていても良いが、ピストン520および/またはピストンロッド522に対する取付性が良好となる場合には、ネジ溝が形成されていなくても良い。
【0042】
また、ピストンロッド522は、棒状の部材であり、その手前側に取付ガイド部521が取り付けられる。一方、ピストンロッド522の奥側は、シリンダ室512から十分な長さだけ突出している。このピストンロッド522のうち、シリンダ室512から突出する部位の中途には、噛合部522aが設けられている。噛合部522aは、後述する間欠ギヤ532bの間欠歯部532cが噛み合いする部分であり、その噛み合いの接離により、ピストンロッド522は、付勢バネ523のバネ力の作用を受けながら前後方向に移動する。なお、ピストン520が蓋体511に接触している状態のとき(押し出し状態のとき)、噛合部522aは、後述する間欠歯部532cと噛み合うことが可能な位置に位置している。
【0043】
上述のピストンロッド522には、付勢バネ523が取り付けられている。付勢バネ523は、付勢手段に対応し、ピストン520が手前側に向かう付勢力を与えるものである。本実施の形態では、付勢バネ523は、ピストン520が蓋体511に当接している状態でも、当該ピストン520に円盤部521aを介して付勢力を与え続ける状態となっている。すなわち、付勢バネ523は、空気砲ユニット50が組み立てられている状態においては、如何なるときでも自然長ではなく収縮している状態となっている。
【0044】
また、駆動ユニット53は、駆動モータ530と、第1シャーシ531と、ギヤ輪列532と、第2シャーシ533とを有している。駆動モータ530は、ギヤ輪列532の各ギヤを回転駆動させる駆動力を与える手段である。また、第1シャーシ531は、下筐体部22に取り付けられると共に、上述の駆動モータ530を取り付け、かつギヤ輪列532に存在する出力ギヤ体532aの回転軸533aを軸支する。そのため、第1シャーシ531には、回転軸533aを挿通可能な軸支孔531aが設けられている。また、ギヤ輪列532は、駆動モータ530の駆動力により、それぞれ回転させられ、最終的には出力ギヤ体532aにその駆動力が伝達される。
【0045】
ここで、出力ギヤ体532aは、図7〜図9に示すように二段のギヤとなっており、そのうち上段側には間欠ギヤ532bが設けられている。間欠ギヤ532bは、その円周方向に沿って所定の間隔毎に間欠歯部532cが設けられているギヤ形状を為している。なお、本実施の形態では、間欠歯部532cは、円周方向に沿って120度間隔毎に設けられていて、また間欠歯部532cは数枚の歯から構成されている。この間欠歯部532cが回転させられると、その円周運動に伴って、噛合部522aに接離する。そして、間欠歯部532cが噛合部522aに最も近接している状態においては、間欠歯部532cと噛合部522aとが衝突して、ギヤの噛合のように凹凸が互いに入り組む状態となる。その状態で更に間欠歯部532cが同じ方向に回転させられると、当該間欠歯部532cの円周運動に伴って、間欠歯部532cは噛合部522aから徐々に遠ざかっていき、遂には間欠歯部532cと噛合部522aとの噛合状態が解除される状態となる。すると、ピストン体52は、付勢バネ523の作用によって、勢い良く手前側に向かって押し出される。
【0046】
また、第2シャーシ533は、上述のギヤ輪列532のそれぞれのギヤが回転可能に軸支すると共に、下筐体部22に取り付けられる部分である。なお、この第2シャーシ533には、上述の出力ギヤ体532aを回転自在に軸支する回転軸533aが設けられている。また、第1シャーシ531のうち軸支孔531aが形成されている近傍は、出力ギヤ体532aに最大圧力が掛かった場合に、当該出力ギヤ体532aが回転軸533aから逃げないように保持する役目も果たしている。
【0047】
<オゾン発生部について>
続いて、オゾン発生部60の構成について説明する。オゾン発生部60は、オゾン発生装置61と、キャビティ下部62と、キャビティ上部63とを備えている。オゾン発生装置61は、放電極610と誘導電極(埋設;図示省略)とを備えている。このオゾン発生装置61では、電源613aから高周波高電圧を放電極610と誘導電極との間に印加すると、放電極610から誘導電極が埋設されている端面にかけて、放電領域が形成され、この放電領域にてオゾンが生成される。
【0048】
なお、オゾン発生装置61には、放電極610を支持する脚部611を有すると共に誘導電極を埋設している基台612が設けられている。この基台612には、回路基板613が取り付けられていて、この回路基板613には電源613aが取り付けられている。また、回路基板613は、脚部611が突出する側から反対側に向かって突出する態様で取り付けられている。基台612のうち、回路基板613が突出する側の縁部には、フランジ部612aが設けられている。フランジ部612aは、上述の縁部の全周に亘るように設けられている。そして、フランジ部612aと当該フランジ部612aの付け根の周縁部分とが、キャビティ64の開口部の周囲に当接することにより、キャビティ空間641がハウジング20の内部から隔離され、キャビティ空間641で発生したオゾンがキャビティ空間641からハウジング20の内部に漏れ出すのを防いでいる。
【0049】
また、キャビティ下部62とキャビティ上部63とは、互いにネジ止めされる(これをキャビティ64と称呼する。)。キャビティ64の内部には、キャビティ空間641が形成され、このキャビティ空間641に上述のオゾン発生装置61が設置される。なお、キャビティ下部62およびキャビティ上部63には、切欠部(図示省略)がそれぞれ設けられている。そして、キャビティ下部62とキャビティ上部63とが取り付けられることにより、2つの切欠部から開口部(図示省略)が構成され、この開口部には、上述のフランジ部612aを位置させることが可能となる。
【0050】
また、キャビティ上部63には、気体放出部630が設けられている。気体放出部630は、オゾン発生装置61で発生したオゾンを外部に向けて放出するための開口部分を有している。なお、本実施の形態では、気体放出部630は、複数のスリットが列状に並べられることにより(図1、図5参照)構成されており、発生したオゾンはハウジング20の外部に容易に放出できるものの、塵埃はハウジング20の内部に入り込み難い構成となっている。
【0051】
さらに、キャビティ上部63には、枠体部631が設けられている。枠体部631は、気体放出部630と一体成型によって形成されているが、枠体部631を別体的に設けるようにしても良い。この枠体部631は、回路基板613の周縁部に当接して、回路基板613の保持を行う部分である。
【0052】
<作動スイッチ、ロッド検出センサについて>
続いて、作動スイッチ71およびロッド検出センサ72について説明する。図10に示すように、作動スイッチ71は、回路基板70に取り付けられている。この作動スイッチ71は、本実施の形態では、押込操作部212の個数に対応させて、一対設けられている。かかる一対の作動スイッチ71のうち、図10において右側に位置する作動スイッチ(以下、右側作動スイッチ71Rと称呼する。)は、切替モータ33を左回転(例えば、時計回りの回転)させるためのスイッチである。ここで、右チャンバ36Rにおいては、切替モータ33の左回転により、インペラ341が左回転させられ、それによって右側に位置する芳香剤充填部40の空気が右チャンバ36Rに向けて吸引され、後述するように芳香成分を含む空気(以下、芳香気体と称呼する。)が右チャンバ36Rに供給される。また、切替モータ33およびインペラ341の左回転により、左側のシリンダ室512Lの空気が左チャンバ36Lに供給される。
【0053】
また、図10において左側に位置する作動スイッチ71(以下、左側作動スイッチ71Lと称呼する。)は、切替モータ33を右回転(例えば、反時計回りの回転)させるためのスイッチである。ここで、左チャンバ36Lにおいては、切替モータ33の右回転により、インペラ341が右回転させられ、それによって左側に位置する芳香剤充填部40の空気が左チャンバ36Lに向けて吸引され、芳香気体が左チャンバ36Lに供給される。また、切替モータ33およびインペラ341の右回転により、右側のシリンダ室512Rの空気が右チャンバ36Rに供給される。
【0054】
また、ロッド検出センサ72も、作動スイッチ71と同様に、回路基板70に取り付けられていると共に、合計一対設けられている。このロッド検出センサ72は、検出手段に対応し、奥側におけるピストンロッド522の有無を検出するセンサである。すなわち、噛合部522aと間欠歯部532cとが噛合していない場合には、ピストンロッド522は、付勢バネ523の作用によって手前側に押し出された状態となり、そのときロッド検出センサ72は、ピストンロッド522に接触せず、ロッド検出センサ72のオフ状態となる。一方、噛合部522aと間欠歯部532cとが噛合し、かつ間欠ギヤ532bの回転によってピストンロッド522が奥側に押し込まれると、ピストンロッド522がロッド検出センサ72を押し込んで、ロッド検出センサ72のオン状態となる。
【0055】
なお、ロッド検出センサ72のオン状態/オフ状態に対応する駆動モータ530の作動等の詳細については、後述する。また、以下の説明では、左側のロッド検出センサ72をロッド検出センサ72L、右側のロッド検出センサ72をロッド検出センサ72Rと称呼し、両者を区別する必要がない場合には、ロッド検出センサ72と称呼する。
【0056】
<制御部について>
続いて、制御部100の構成について説明する。制御部100は、制御手段に対応し、ハウジング20の内部に設置される、回路基板613,70等から構成される。この制御部100には、作動スイッチ71からの信号、ロッド検出センサ72等のセンサからの検出信号、イグニッションコイルに対する作動信号が入力されると共に、当該制御部100は、切替モータ33、駆動モータ530を制御する。この制御部100は、CPU、ROM、RAM、EPROM、各種の専用回路等を具備していて、これらが例えばバス等の伝送路を介して接続されている。そして、これらのハードウエアと、ROMやEPROMに記憶されているソフトウエアおよび/またはデータの協働、または専用回路等の協働によって、図11のブロック図に示すような構成が機能的に実現される。
【0057】
図11に示すように、制御部100は、コントロール部110を備えている。コントロール部110は、押し込まれる作動スイッチ71等のスイッチ、入力される信号等に応じて、いずれの動作パターン(シーケンス制御)にて各モータ33,530および/またはオゾン発生装置61を作動させるかを決定(選択)する。加えて、コントロール部110は、一対の作動スイッチ71からの信号の入力パターンに応じて、駆動モータ530の作動のオン/オフを制御する。なお、コントロール部110におけるシーケンス制御(動作パターン)の詳細については、後述する動作の説明にて詳述する。また、コントロール部110は、後述するようなタイマ機能を備えている。
【0058】
また、コントロール部110は、切替モータドライバ120と、第1駆動モータドライバ130と、第2駆動モータドライバ140とを備えている。切替モータドライバ120は、コントロール部110からの制御信号に基づいて、所定の電力を、切替モータ33に出力する。また、第1駆動モータドライバ130は、コントロール部110からの制御信号に基づいて、所定の電力を、駆動モータ530Lに出力する。また、第2駆動モータドライバ140は、コントロール部110からの制御信号に基づいて、所定の電力を、駆動モータ530Rに出力する。
【0059】
<動作について>
続いて、気体放出装置10の動作について、以下に説明する。なお、以下の説明においては、各動作パターン毎に、それぞれ説明する。
(1)車の始動時における動作パターン
ユーザが車のキーを回す等により、イグニッションコイルに対する作動信号が発せられると、その作動信号は、制御部100にも入力される。すると、コントロール部110は、切替モータ33を左回転させるための指令を発して、当該切替モータ33を左回転させる。しかしながら、コントロール部110は、駆動モータ530に対しては回転させるための指令を発せずに、停止状態を維持する。加えて、コントロール部110は、オゾン発生装置61に向けて、当該オゾン発生装置61を作動させる指令を発する。
【0060】
すると、図12に示すように、左チャンバ36Lには、シリンダ室512を介してハウジング20の内部の空気が供給される。この空気は、左チャンバ36Lから空気供給孔310を介してキャビティ空間641に送り込まれる。そして、オゾン発生装置61が作動することにより、キャビティ空間641でオゾンが発生し、気体放出部630からオゾンが外部に放出される。
【0061】
一方、右チャンバ36Rには、右側の芳香剤充填部40を介して、芳香気体が供給される。この芳香気体は、連通管路311Rを介してシリンダ室512に送り込まれる。しかしながら、駆動モータ530L,530Rおよびピストン体52が作動していないため、右側のシリンダ室512Rに入り込んだ芳香気体は、ハウジング20の内部に放出される。その一部は、ハウジング20の隙間等から外部に放出され、その他はハウジング20の内部を流れる状態となる。
【0062】
そして、上述のような動作がタイマカウントされ、規定の時間継続すると、コントロール部110は切替モータ33およびオゾン発生装置61の作動を停止させる。以上が、グニッションコイルを作動させる場合の気体放出装置10の動作パターンである。なお、車の停止時においても、同様の動作を実行させるようにすることは、例えばイグニッションコイルの動作終了に対応する信号が制御部100に入力されることにより、実行可能である。ここで、車の始動時と車の停止時とでは、気体放出装置10の動作のタイマカウントの時間長さが異なるようにしても良い。
【0063】
(2)右側作動スイッチ71Rが押された場合の動作パターン
次に、右側作動スイッチ71Rが押されたときの動作パターンについて、図13および図14に基づいて説明する。ユーザが右側の押込操作部212Rを押し込むと、右側作動スイッチ71Rが押される。すると、右側作動スイッチ71Rからオン状態に対応する操作信号がコントロール部110に出力され、コントロール部110は、切替モータ33を左回転させるための指令を発して、当該切替モータ33を左回転させる。この切替モータ33の作動と同時、または所定のタイミングだけ前後させて、一対の駆動モータ530を作動させるための指令を発して、当該駆動モータ530を作動させる。
【0064】
ここで、切替モータ33が左回転させられる場合、上述の(1)の動作パターンと同様に、左チャンバ36Lには、シリンダ室512Lを介して空気が供給され、さらに左チャンバ36Lから空気供給孔310を介してキャビティ空間641に送り込まれる。そして、オゾン発生装置61の作動により、キャビティ空間641でオゾンが発生し、気体放出部630からオゾンが外部に放出される。しかしながら、図13に示すように、右側作動スイッチ71Rが押される場合、一対の駆動モータ530も作動し、ピストン体52は奥側に向かって移動させられるため、外部の空気がシリンダ室512Lの内部に導入される点で、(1)の動作パターンとは異なっている。また、右チャンバ36Rには右側の芳香剤充填部40を介して芳香気体が供給され、この芳香気体は連通管路311Rを介してシリンダ室512Rに送り込まれる。
【0065】
また、切替モータ33の作動と共に、一対の駆動モータ530も作動させられる。一対の駆動モータ530が作動すると、間欠ギヤ532bが回転させられるが、この間欠ギヤ532bの回転により、間欠歯部532cが噛合部522aに対して徐々に近接し、その後に間欠歯部532cが噛合部522aと噛み合う。その状態でさらに駆動モータ530が作動させられ、それによって、ピストン体52は付勢バネ523の付勢力に抗しながら奥側に向かって引き込まれる。
【0066】
ピストン体52が奥側に向かって引き込まれると、一対のピストンロッド522のうち奥側への引き込みが早い方の先端部分がロッド検出センサ72に当接し、当該ロッド検出センサ72からコントロール部110に、ピストンロッド522の検出に対応する検出信号が送信される。すると、コントロール部110は、一対のピストンロッド522のうち、未だ検出していない(奥側への引き込みが遅い方)のピストンロッド522の先端部分がロッド検出センサ72に当接し、その当接に対応する検出信号がコントロール部110に入力されるまで、駆動モータ530の作動を一時的に停止させる。
【0067】
そして、引き込みが遅い方のピストンロッド522の先端部分がロッド検出センサ72に当接すると、当該ロッド検出センサ72からコントロール部110に、ピストンロッド522の検出に対応する検出信号が送信される。すると、コントロール部110は、駆動モータ530を一時的に停止させる。そして、2つの駆動モータ530が一時的に停止している状態において、当該2つの駆動モータ530に対して、同時に駆動させるための指令を出力する。
【0068】
それによって、ピストン体52の引き込みのタイミングのずれが解消される。そして、2つの駆動モータ530が駆動させられると、間欠歯部532cが円弧に沿って移動するが、間欠歯部532cは噛合部522aに対して最も近接する部位を通過後、噛合部522aから徐々に離間し、遂には間欠歯部532cと噛合部522aとの噛合状態が解除される。すると、2つのピストン体52は、付勢バネ523の作用によって、勢い良く、かつ同時に手前側に向かって押し出される。
【0069】
すると、図14に示すように、右側のシリンダ室512Rからは、ピストン520により芳香気体が渦輪となって押し出される。一方、左側のシリンダ室512Lからは、ピストン520により空気が渦輪となって押し出される。そして、所定距離だけ離間した目標位置においては、芳香気体の渦輪と空気の渦輪とが混ざり合う。そのため、その目標位置においては、渦輪の風圧による違和感を生じさせることなく、芳香成分を供給可能となる。
【0070】
なお、2つのピストン体52を同時に手前側に押し出すためには、ロッド検出センサ72の取付位置等の調整を行うことが好ましい。以上が、右側作動スイッチ71Rが押された場合の動作パターンである。なお、上述のような渦輪の発射は、例えば連続して3回程度為されるようにしても良いが、その発射の回数は3回に限られるものではない。
【0071】
(3)左側作動スイッチ71Lを押した場合の動作パターン
次に、左側作動スイッチ71Lが押されたときの動作パターンについて説明する。左側作動スイッチ71Lが押される場合、基本的には、(2)の右側作動スイッチ71Rを押した場合の動作パターンと左右が入れ替わる動作となる。しかしながら、右チャンバ36Rは、キャビティ空間641とは連通していない。そのため、図15に示すように、シリンダ室512Rを介して右チャンバ36Rに送り込まれた空気は、芳香剤充填部40を通過して外部に放出される点が、(2)の右側作動スイッチ71Rを押した場合の動作パターンと相違している。
【0072】
なお、その他の動作については、左右逆になるのみであり、詳細についての説明は省略するが、概略的には、図15の状態の後には、図16に示すように、左側のシリンダ室512Lからは、ピストン520により芳香気体が渦輪となって押し出される。一方、右側のシリンダ室512Rからは、ピストン520により空気が渦輪となって押し出され、目標位置に芳香成分を供給可能となる。
【0073】
<効果>
以上のような構成の気体放出装置10によれば、当該気体放出装置10の一層の小型化を図ることが可能となる。特に、図2、図3および図10等に示すように、2つの空気砲ユニット50の間(図1のX軸方向)に気流発生部30が配置されると共に、2つの駆動モータ530、2つの駆動ユニット53および2つのロッド検出センサ72等は、それぞれの空気砲部(シリンダ51とピストン体52)に対して、Y方向(奥行き方向)に向かって配置されている。そのため、各部材の配置は、概略的にはXY平面に沿った配置となっており、スペース効率に優れたものとなっている。このため、気体放出装置10は、図1に示すように薄型化が可能となっており、従来の構成(特許文献1のもの)と比較して、小型化が可能となっている。
【0074】
また、本実施の形態では、制御部100は、奥側への引き込みが早い方のピストンロッド522の先端部分がロッド検出センサ72で検出された場合に、そのピストンロッド522を引き込む駆動力を与えている駆動モータ530の作動を一時停止させ、奥側への引き込みが遅い方のピストンロッド522の先端部分がロッド検出センサ72で検出された後に、再び2つの駆動モータ530を駆動させて、噛合部522aと間欠歯部532cとの噛合が解除されるタイミングを揃えるようにしている。このため、空気砲ユニット50から発射される2つの渦輪の発射タイミングの同期を取ることが可能となる。
【0075】
それにより、所定距離だけ離間した目標位置においては、芳香気体の渦輪と空気の渦輪とを反発させずに混合させることが可能となり、その目標位置においては、渦輪の風圧による違和感を生じさせることなく、芳香成分を供給可能となる。
【0076】
また、本実施の形態では、気流発生部30が設けられていて、左チャンバ36Lおよび/または右チャンバ36Rへの気体の導入および気体の排出を、切替モータ33の正逆回転にて切替可能としている。それによって、2つのカートリッジ41のうちの、いずれの芳香成分を目標位置に供給するのかを、容易に切替可能となる。
【0077】
さらに、本実施の形態では、気体放出装置10はオゾン発生部60を備えているため、芳香成分の供給のみならず、オゾンによる消臭作用も実現可能となっている。加えて、本実施の形態では、オゾンは、ハウジング20から閉塞されたキャビティ空間641の内部で発生させられ、気体放出部630から外部に放出されるので、オゾンがキャビティ空間641以外のハウジング20の内部に侵入する量を低減でき、ハウジング20の内部の各部材がオゾンによって悪影響を受けるのを防止可能となる。
【0078】
また、本実施の形態では、制御部100は、作動スイッチ71のいずれかが押されるか、または車の始動/車の停止に応じて、上述の(1)〜(3)の動作パターンのいずれかを実行している。すなわち、気体放出装置10の動作パターンが複数存在している。そのため、気体放出装置10においては、2つのカートリッジ41のうちの、いずれの芳香成分を供給させるのか、またはオゾン発生による消臭動作を実行させるのか、という具合に、動作バリエーションが豊富化され、ユーザの好みに応じた動作を選択可能となる。
【0079】
さらに、本実施の形態では、噛合部522aと間欠歯部532cとの噛合および噛合解除によって、それぞれの空気砲ユニット50から渦輪が発射されている。このように機械的な噛合/噛合解除という方式で2つの渦輪の発射タイミングが設定されるので、ロッド検出センサ72の位置調整やピストンロッド522の位置調整といった手法により、比較的容易に2つの渦輪の発射タイミングの同期を図ることが可能となる。
【0080】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態に係る、気体放出装置10について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0081】
上述の実施の形態においては、付勢手段としては、付勢バネ523を用いて、ピストンロッド522を手前側に押し出す構成となっている。しかしながら、付勢手段は、付勢バネ523には限られず、それ以外の部材を用いるようにしても良い。他の部材としては、例えばシリンダ内部でのガス圧縮方式の構成(ガス圧縮手段)を、付勢手段としても良い。このガス圧縮手段においては、圧縮されるガス圧の調整により、渦輪の衝突するタイミングの微調整が可能となる。また、たとえばそれぞれのピストンロッドに掛け止め部を設け、当該賭け止め部にそれぞれのレバーが掛け止めされ、2つのレバーの出し入れを制御部で同期させる制御を行うことにより、渦輪の衝突タイミングを揃えるようにしても良い。
【0082】
また、上述の実施の形態では、駆動モータ530、切替モータ33を動力源とする構成となっているが、その他の方式の動力源を用いるようにしても良い。その他の動力源としては、たとえば、ゼンマイ仕掛け方式を動力源とするものがある。
【0083】
また、本実施の形態では、空気砲ユニット50の個数、作動スイッチ71の個数、ロッド検出センサ72の個数等、上述の実施の形態で一対(2つ)と述べられているものについては、その個数は2つに限られるものではなく、2つ以上用いるようにしても良い。また、1つのみ存在する構成を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の気体放出装置は、車載用を始めとする各種の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10…気体放出装置
20…ハウジング
21…上筐体部
22…下筐体部
23…フロントパネル
30…気流発生部
31…上チャンバ部材
32…下チャンバ部材
33…切替モータ
34…羽根軸体
36…左チャンバ
37…右チャンバ
40…芳香剤充填部
50…空気砲部
51…シリンダ(空気砲部の一部に対応)
52…ピストン体(空気砲部の一部に対応)
53…駆動ユニット
60…オゾン発生部
61…オゾン発生装置
62…キャビティ下部
63…キャビティ上部
64…キャビティ
70,530…回路基板
71…作動スイッチ
72…ロッド検出センサ(検出手段に対応)
100…制御部(制御手段に対応)
110…コントロール部
341…インペラ
512…シリンダ室
520…ピストン
522…ピストンロッド
522a…噛合部(解放機構の一部に対応)
523…付勢バネ(付勢手段に対応)
532b…間欠ギヤ
532c…間欠歯部(解放機構の一部に対応)
630…気体放出部
641…キャビティ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ室を内部に備え、このシリンダ室に気体を導入可能なシリンダおよびシリンダ室を摺動するピストンを備え、このピストンに連結されるピストンロッドを備えると共に、上記ピストンを一方側に付勢して上記気体を押し出す向きの付勢力を与える付勢手段を備える少なくとも2つの空気砲部と、
それぞれの上記ピストンロッドに上記付勢手段の付勢力に抗する駆動力を与える少なくとも2つの駆動モータと、
それぞれの上記駆動モータによる上記ピストンロッドに与える駆動力を開放する解放機構と、
それぞれの上記ピストンロッドの有無を検出する検出手段と、
上記検出手段によりいずれかの上記ピストンロッドが検出される場合に、検出された上記ピストンロッドを駆動させる上記駆動モータの作動を一時停止させると共に、全ての上記駆動モータが一時停止状態となっている状態で、上記ピストンロッドに与える駆動力を上記解放機構によって同時に開放させるタイミングを揃えるタイミングでそれぞれの上記駆動モータを駆動させる制御を行う制御手段と、
を具備することを特徴とする気体放出装置。
【請求項2】
請求項1記載の気体放出装置において、
前記空気砲部および前記駆動モータは、それぞれ2つずつ設けられていると共に、
それぞれの前記シリンダ室に気体を導入可能に連結される2つのチャンバを備えると共に、一方のチャンバからは前記シリンダ室に気体を導入する向きに気流を発生させ、そのときに他方のチャンバには前記シリンダ室から気体が導入される向きに気流を発生させる回転部材をそれぞれの上記チャンバに備える気流発生部と、
前記回転部材を回転させる駆動力を与えると共に、正逆回転可能であり、この正逆回転によって一方の上記チャンバおよび他方の上記チャンバにおける気体の導入と排出を切り替える駆動力を与え、かつ前記制御手段によって駆動の制御が為される切替モータと、
を備えることを特徴とする気体放出装置。
【請求項3】
請求項2記載の気体放出装置において、
前記一方のチャンバに気体を導入可能に連結され、導入された気体を滞留させるキャビティ空間を備えると共に、このキャビティ空間に存在する気体に含まれる酸素からオゾンを発生させ、当該発生したオゾンを気体放出部から放出させるオゾン発生部を備える、
ことを特徴とする気体放出装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の気体放出装置において、
2つの前記空気砲部の間に前記気流発生部が配置されると共に、
2つの前記駆動モータ、2つの前記解放機構、2つの前記検出手段は、2つの前記空気砲部が配置されている方向とは直交する方向に向かって配置されている、
ことを特徴とする気体放出装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の気体放出装置において、
前記制御手段は、複数の作動スイッチのうちのいずれかが押されるかに応じて前記切替モータの正逆回転を切り替えると共に、
当該制御手段は、前記切替モータの正逆回転と前記駆動モータとの駆動の組み合わせに応じた複数の動作パターンを実行可能としている、
ことを特徴とする気体放出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の気体放出装置において、
前記解放機構は、
前記ピストンロッドに存在する凹凸が入り組む形状の噛合部と、
前記駆動モータによって回転させられる出力ギヤ体に設けられると共に、その出力ギヤ体の円周方向に間欠的に設けられ、当該出力ギヤ体の回転によって上記噛合部に噛合および離間する間欠歯部と、
を備えることを特徴とする気体放出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−6035(P2011−6035A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154355(P2009−154355)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(595128455)大栄工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】