説明

気体検体の検出器中の一酸化炭素干渉の低減

【課題】微量の酸化窒素および/または気体試料中の他の気体検体を検出するための、改善した装置を提供する。
【解決手段】気体状試料中の酸化窒素の検出用の装置であって、酸化窒素および一酸化炭素の両方と結合するセンサーを含み、該センサーは酸化窒素と結合して検出可能な変化を受け、該装置または該センサーを保持する筐体は、一酸化炭素を遊離する物質によって作られている、または更には一酸化炭素を遊離する物質を保持しており、該装置が該筐体中に、または該装置を入れている包装内に、または該装置内に、保持された一酸化炭素スカベンジャーを更に含んで、該スカベンジャーによって引き起こされる酸化窒素の検出でのばらつきが、酸化窒素の濃度において1ppbおよび検出された酸化窒素の量の10%の大きい方よりも小さいように、該一酸化炭素スカベンジャーが該センサーから3mm〜300mm離れた局部的な領域に拘束されている装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高感度の気体分析の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
喘息を患っている人は、彼らの呼気中の酸化窒素(NO)の量を監視することにより、彼らの状態の具合を監視し、また喘息の発作の可能性を予測することができる。呼気中の酸化窒素の量を検出するセンサーが、1998年8月18日発行の米国特許第5795787号明細書、2000年1月4日発行の米国特許第6010459号明細書、2004年1月29日公開の米国特許出願公開第2004−0017570号明細書、2005年4月21日公開の米国特許出願公開第2005−0083527号明細書、および2005年3月10日公開の米国特許出願公開第2005−0053549号明細書の中に開示されている。これらの文献のそれぞれは、そのすべてが参照によりここに組み込まれる。これらの文献中に記載されているセンサーは、酸化窒素を結合する物質の保持のための流通する(flow-through)流路を備えた装置中に収容されており、使用者が装置の中へ息を吐き出し、そして呼気中の酸化窒素の量を示す装置からの表示を得ることを可能にする。センサー自身は、シトクロムCおよび他のタンパク質などの酸化窒素結合剤とともに高性能のゾルゲル技術を用いており、それらの結合剤は接触によって酸化窒素と結合し、そして、そのような結合が生じると、光学的に検出可能な変化、特には光学的吸収、を受ける。この技術の下に開発されているセンサーは、ppbの領域の酸化窒素を検出するに十分なほど感度が高い。
【0003】
このような高い水準の感度は、センサーを、装置自体の構造材料から放出される気体の干渉物質を含む、極めて少量存在する干渉物質に対して脆弱にする。特定の重合体の筐体、とりわけアクリル樹脂から作られた筐体中にこれらのセンサーを収容する監視装置は、長期にわたり感度の緩やかな低下を示すことが実際に見出されている。感度の低下はこれらの装置の貯蔵寿命を制限し、そしてそれ故に、長距離の出荷のための長期貯蔵と、成長するもしくは変動する需要に合わせた適切な品揃えの形成に対するこれらの装置の適合性を制限する。この感度の低下は、装置の筐体を作っている重合体物質による少ない量の一酸化炭素の放出によるものである。一酸化炭素放出の原因は不明であるが、おそらく溶解している一酸化炭素を遊離するポリマーの脱ガスであり、ポリマー中に含まれる添加剤の分解であり、またはポリマー自体の分解であろう。それぞれの用語「放出」および「遊離」は、ここではこれらの可能性のある機構のすべてに一般的に及ぶように用いられている。放出の原因に関係なく、検出する物質による放出された一酸化炭素の累積的な吸着は、酸化窒素に使用可能である結合位置の減少を引き起こすと信じられている。この説明が疑う余地のないものであると断言するものではないが、発明者らはこれを感度の低下の可能性のある説明としてここに提供する。鼻からの放出などの呼気以外の、大気の検査もしくは生理学の検査用に設計された装置を含めて、一酸化炭素を放出するポリマーで作られた他の酸化窒素検出装置でも同様の心配が生じる。これらの装置の多くでは、喘息を患う個人の呼気で遭遇するよりも、より高い濃度での酸化窒素の検出が必要である。それでもなお、これらの装置もまた、上記のように呼気分析器と同じ理由から、感度の低下の影響を受けやすい可能性がある。
【0004】
先行技術は、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化の触媒となる遷移金属酸化物の存在を認識しており、また二酸化炭素は、一酸化炭素と同様の親和力ではタンパク質とは結合しないこともまた知られている。これらの金属酸化物、および酸化触媒としてのそれらの利用の開示は、1989年4月4日発行の米国特許第4818745号明細書、1999年9月21日発行の米国特許第5955214号明細書、2000年9月5日発行の米国特許第6113869号明細書、2001年3月20日発行の米国特許第6203596号明細書、および2005年2月15日発行の米国特許第6855297号明細書にみられる。これらの文献のそれぞれは、同様にここにその全てを参照により組み込まれる。しかしながら、同じ金属酸化物は酸化窒素の二酸化窒素(NO)への酸化の触媒となる可能性がある。従って、酸化による干渉物の除去はまた、検体の除去を引き起こし、そして従って酸化窒素の検出を干渉することを予期することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5795787号明細書
【特許文献2】米国特許第6010459号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004−0017570号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005−0083527号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005−0053549号明細書
【特許文献6】米国特許第4818745号明細書
【特許文献7】米国特許第5955214号明細書
【特許文献8】米国特許第6113869号明細書
【特許文献9】米国特許第6203596号明細書
【特許文献10】米国特許第6855297号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、一酸化炭素の干渉の影響を受けやすいセンサーによって、微量の酸化窒素および/または気体試料中の他の気体検体を検出する装置の改善に存在しているこれらの事項および他の事項が扱われている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
種々の理由から酸化窒素の検出が望ましい気体は、口もしくは鼻を通した呼気、大気、自動車排出物、産業プラント排出物、および居住、商業的、そして産業環境中の空気一般を含んでいる。他の気体検体も、極めて低水準の検出では同様に興味深い。分子酸素はそのような検体の1つである。分子酸素は、ヘモグロビンおよびヘモグロビンと同じ結合基を含む他の種と結合する能力に基づいて検出することができるものの、これらの基は酸化窒素と結合する基と同じ仕方で一酸化炭素の干渉の影響を同様に受けやすい。
【0008】
改善される装置は、固定化された、非気体状の結合剤を含み、それはここでセンサーと称され、興味の対象の検体に結合し、そして引用した参照文献のセンサーによって説明されている。通常の酸化窒素検出器用のセンサーは、酸化窒素と気体混合物からの一酸化炭素の両方と接触によって結合することができ、また極めて低濃度で一酸化炭素を遊離するポリマー物質の筐体中に収容されている。一般に、一酸化炭素による干渉は、一酸化炭素を遊離する物質で作られた筐体中で起こり、または筐体中に入れられた一酸化炭素を遊離する部品から起こる。本発明によって与えられる改善は、一酸化炭素を遊離する物質もしくは部品からの気体の拡散による接近の機会をスカベンジャーに与えるような仕方での、装置中への、または装置を収容する包装中への一酸化炭素スカベンジャーの配置である。用語「一酸化炭素スカベンジャー」は、ここでは結合することによって一酸化炭素を固定化し、そしてそれによって一酸化炭素を付近の雰囲気から抽出するか、またはセンサーと結合する検体と競合しない種へと一酸化炭素を転換する、のどちらかの物質を表している。転換を起こすスカベンジャーとしては、最も典型的な転換は一酸化炭素を二酸化炭素へと転換する酸化反応であり、スカベンジャーは従って酸化触媒として機能する。特定のスカベンジャーは酸素が存在する場合は酸化触媒として機能し、また酸素が存在しない場合は単なる結合剤として機能する。触媒として機能する場合、スカベンジャーは、無制限の数の一酸化炭素分子の転換が可能な再生可能な物質である。結合剤として機能する場合には、スカベンジャーは一酸化炭素によって消費され、そして使用可能な結合位置が消耗され得る。
【0009】
一酸化炭素を遊離するポリマーで作られた筐体を含む装置では、スカベンジャーと筐体の内部表面、そして特にセンサーとも拡散による接近の機会を持つ内部表面との間に、拡散による接近の機会を与えるような仕方で、スカベンジャーを筐体の内部に位置させることができる。封止された包装中に入れられ、そして長期間もしくは輸送のために包装された形態で貯蔵された装置では、スカベンジャーは、装置筐体の内部ではなく、包装中に装置に近接して置くことができる。この配置のスカベンジャーは、同様に雰囲気から一酸化炭素を取り出し、雰囲気中と装置自体の中の両方で一酸化炭素の蓄積を低下または防止し、そしてそれ故にどのような一酸化炭素のセンサーへの干渉をも制御する。これらの実施態様の全てで、スカベンジャーは筐体の中で、もしくは筐体から放出される一酸化炭素を消費し、それによって筐体の内部の一酸化炭素の量を、センサーの性能に有害でない量に維持する。
【0010】
装置の1つまたはそれ以上の部品から放出され、そしてスカベンジャーによって取り除かれ、もしくは転換される他の気体干渉物質も同様に濃度を低下させられる。特定のポリマーは、例えば、一酸化炭素の代わりに、または一酸化炭素に加えて水素ガスを放出する。スカベンジャーが酸化触媒であり、また酸素が存在する場合は、スカベンジャーは放出された水素ガスを酸化することができ、従って濃度を低下させるか、もしくは結果として触媒によって取り除かれる。一般に、一酸化炭素スカベンジャーを組み込む装置は、ここで説明したように、長期にわたり感度の低下を被らず、そして数ヶ月、数年または無期限の期間の貯蔵寿命を享受する。
【0011】
本発明の実施において一酸化炭素スカベンジャーとして有用な特定の物質はまた、検体と結合するか、または酸化もしくは他の方法で検体を他の種へと転換するかのいずれかによって、検体と相互に作用する。これらの物質の1つがスカベンジャーとして用いられた場合には、もしもスカベンジャーがセンサーから検体を引き離すならば、検体に対するセンサーの感度は弱められる可能性がある。従って、スカベンジャーがセンサーでの競合する結合を減少させる一方で、スカベンジャーはまたセンサーに到達する検体の量を低下させる可能性がある。このことは、例えば、検体が酸化窒素であり、スカベンジャーが金属酸化物などの酸化触媒である場合には、このようなスカベンジャーは酸化窒素と一酸化炭素の両方と結合もしくは酸化のいずれかをするために、起こり得る。このことは、装置をいくつかの方法のうちのいずれかで作ることによって、どのような程度にも発生を防ぐことができる。例えば、スカベンジャーとセンサーは、センサーからスカベンジャーへの検体へのいかなる拡散をも最小化するような空間的距離によって隔てることができる。あるいは、膜またはオリフィスなどの拡散を制限する部品を触媒と結合剤との間に配置することもできる。どちらの場合も、スカベンジャーの存在に起因するセンサーに結合する検体の量のいかなる低下も最大で、体積で検体の絶対量の1ppb、または検出される検体の量の10体積%の、いずれか大きい方に制限することができる。スカベンジャーとセンサーの間には、気体が拡散することのできる流路があるにもかかわらず、このことは事実である。
【0012】
本発明の、これらの目的および他の目的、特徴および利点は、以下の記載によってより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明による装置の透視図である。
【図2】図2は同じ装置の平面図であり、装置の内部構造を示している。
【図3】図3は本発明による第二の装置の平面図である。
【図4】図4は本発明による第三の装置の平面図である。
【図5】図5は本発明による第四の装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記のように、本発明の実施に用いられる一酸化炭素スカベンジャーは、周囲の雰囲気から一酸化炭素を抽出し、そして親和型もしくは共有結合のどちらかで結合することによって抽出した一酸化炭素を固定化するか、または検体の検出用のセンサーへの干渉が著しく小さい種へと一酸化炭素を転換するかのいずれかの化学物質もしくは成分を含んでいる。この説明に合致するスカベンジャーの1つの群は、一酸化炭素酸化触媒である。このような触媒は当技術分野で知られており、また種々の金属および金属酸化物を含んでいる。これらの中で優れているものは、遷移金属酸化物であり、そして最も頻繁に報告される例は、マンガン、銅、ニッケルおよびこれらの金属の2つもしくはそれ以上の混合物の酸化物である。これらの酸化物および混合物はまた、銀、鉄、錫、および種々の他の金属の酸化物と組み合わせて用いることができる。一酸化炭素の酸化の触媒として有用な他の金属はインジウムおよびビスマスであり、単独で、もしくは1つまたはそれ以上の遷移金属酸化物と組み合わせて、のいずれかで用いられる。遷移金属酸化物としては、二酸化マンガンと酸化銅の混合物が好ましい。これらの混合物はさまざまな商品として入手可能である。商品の1つの分類は、カルライト(CARULITE)(登録商標)の名称で称されており、カルライト150、カルライト200、カルライト300などを含んでいる。この分類の中の商品は、約60〜75%の二酸化マンガン、約11〜14%の酸化銅、および約15〜16%のアルミナを、全て質量基準で含んでいる。他の知られている商品はホップカライト(HOPCALITE)であり、これは約60%の二酸化マンガンと約40%の酸化銅を、いずれも質量基準で含んでいる。カルライト製品およびホップカライトは両方とも米国イリノイ州ペルー市のカルスケミカル社(Carus Chemical Co.)から入手できる。この金属酸化物または金属酸化物の混合物は通常は固体の形態であって、粉末、顆粒、ペレット、押出し品、網目スクリーン、または被覆などであり、また希釈されずに、もしくは担持されない形態で、または多孔質の顆粒もしくは網などの不活性な触媒担体に担持されて、のいずれでも用いることができる。このような形態は、不均一触媒の分野ではよく知られている。これらの物質は酸化触媒として知られており、またここではそのように呼んでいるが、これらはまた、酸素または一般的な酸化剤が環境から排除された場合には、一酸化炭素との直接の反応によって、非触媒的な仕方のスカベンジャーとして機能する。これらの金属および金属酸化物は、本発明が適用される全ての環境において触媒としては機能しない場合があるけれども、しかしながら、これらの物質が実際に触媒であるという事実を反映させて、ここでは便宜上「触媒」と呼ぶ。
【0015】
本発明の実施において用いられる一酸化炭素スカベンジャーの量は、本発明にとって重大ではなく、そして広範に変えることができる。筐体の内部、そして特にセンサーの近傍での一酸化炭素の蓄積を防ぐのに十分な速度で、装置の内部または装置を取り巻く雰囲気から一酸化炭素を取り出すことにより、長期間にわたりセンサーの感度低下を低減し、もしくはなくすのに十分な、如何なる量も有効である。大抵の場合、このことは一酸化炭素を遊離する物質に応じた少量のスカベンジャーを用いることによって達成することができる。一酸化炭素を遊離する物質が重合体物質であり、それで装置の筐体が作られている実施態様では、粒状の固体の形態のスカベンジャーの使用によって、有効な効果を達成することができ、この粒状の固体は、筐体中の重合体物質の100質量部について約0.005〜約0.3質量部である。より狭い範囲としては、筐体中の重合体物質の100質量部について約0.01〜約0.1質量部である。スカベンジャー量の選択は、膜もしくはオリフィスなどの拡散を制限する部品の存否、または装置内部の雰囲気などの因子によって影響を受ける可能性がある。酸化窒素を検出するように設計され、また金属酸化物をスカベンジャーとして用いる装置では、スカベンジャーの最適な量を決める1つの因子は、酸素が装置内にあるのが容認されるか、または装置から排除されるかであり、すなわち、スカベンジャーが主として一酸化炭素酸化触媒として機能するか、もしくは一酸化炭素結合剤として機能するかである。主に触媒として機能する場合には、より少量を用いることができ、それはスカベンジャーが一酸化炭素によって消費されないからである。
【0016】
スカベンジャーが装置の内部に配置される本発明の実施態様では、スカベンジャーの位置は、装置内で放出され、センサーとの結合を検体と競い合ういずれの気体も、スカベンジャーへの拡散的な接近の機会を有する、すなわち、筐体の内部を通してスカベンジャーへと拡散することができるように選択される。用語「拡散的な接近の機会」および「気体の拡散に接近の機会がある」はここでは、それを通して気体成分が拡散することのできる全ての内部の空洞および流路への、スカベンジャーまたはセンサーの露出を意味しており、これらの空洞もしくは流路中に存在するまたはそれらの中に、空洞もしくは流路の境界をなす表面もしくは壁から遊離されるいかなる成分も、気体を通したスカベンジャーもしくはセンサーへの拡散の経路を有するようになる。空洞もしくは流路中の、センサーに影響を与えるであろう気体状の種、再びとりわけ一酸化炭素は、このように継続してセンサーからスカベンジャーに向けて引き離され、そしてスカベンジャーによる該成分の消費によりスカベンジャーによって生み出される濃度勾配によって、筐体内のこれらの成分の蓄積が回避される。センサーに結合した一酸化炭素分子は、近傍の気体が一酸化炭素を減らした場合には、センサーから容易に分離して、そして近傍の元の気体混合物中に遊離される。気体組成物の平衡への性向が、センサーに結合する一酸化炭素が少ない量であることを維持するのをこのように助け、それ故に信頼性および再現性を促進する。
【0017】
スカベンジャーによる一酸化炭素の量の低下は、このように拡散制御されており、そして装置の貯蔵寿命にわたって継続して起こっている。検体のセンサーへの結合は、それに反して、気体試料が装置内に引き入れられる、または押し込まれる数秒間にわたる強制された流れの間に起こる。このことと、加えて試料の中の検体のセンサーに向かった拡散および検体とセンサーの間の反応は、一酸化炭素が遊離されるのが、例えば貯蔵の間のように長期間にわたっているのに比較して、すべて数分以下の期間内に起こっている。この時間の尺度における違いは、分析に影響するスカベンジャーと検体との相互作用の数を減少させ、またはいかなる重大な、そのような相互作用をも回避する。上記したように、この相互作用の発生を最小化する1つの方法は、スカベンジャーをセンサーから十分な距離に配置することによるものであり、そのことにより、分析の継続時間の間には、取るに足らない量の検体しかセンサーからスカベンジャーへと移動しない。その距離は、従って3mm以上であり、好ましくは約3mm〜約300mm、そして最も好ましくは約10mm〜約100mmであることができる。現在の好ましい実施態様では、検体が酸化窒素であり、センサーとスカベンジャーは約45mmの長さの拡散経路によって隔てられている。拡散の線速度を更に低下させるのに、邪魔板または粒子を拡散経路に配置してもよい。検体のスカベンジャーに向かう拡散が、拡散を低減する膜または流動を制限するオリフィスなどの障害物によって制限される実施態様では、センサーとスカベンジャーの間のより短い距離で同じ結果が得られる。全ての実施態様の目標は、スカベンジャーによって引き起こされる検体の検出におけるばらつきを、検体の1ppb未満(絶対値で)、または試料中で検出される検体の量の約10%未満のいずれか大きい方に制限することである。本明細書および添付の特許請求の範囲において、気体混合物の成分について言及する場合に、ppm、ppb、またはパーセントへの全ての言及は体積による。粒状の充てん剤粒子が拡散経路中に配置された実施態様では、好ましい粒子状の充てん剤は分子篩物質であり、これはまた湿度制御をもたらす。
【0018】
特定の重合体物質が、百万分の1(ppm)および10億分の1(ppb)の領域で作用するセンサーに影響を与える量の一酸化炭素を遊離することが知られている。これらの物質の例は、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、および環状ポリオレフィン共重合体である。アクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、およびアクリロニトリルの重合体もしくは共重合体を含んでいる。その例は、プレキシグラス(PLEXIGLAS)(登録商標)(ロームアンドハース社(Rohm & Haas))、ルーサイト(LUCITE)(登録商標)(デュポン社(DuPont))、およびアクリライト(ACRYLITE)(登録商標)(サイロインダストリィ)(Cyro Industries)がある。ポリカーボネートの例は、レキサン(LEXAN)(登録商標)(ジーイープラスチックス社(GE Plastics))、カリバー(CALIBRE)(登録商標)(ダウケミカル社(Dow Chemical Company))、およびマクロロン(MAKROLON)(登録商標)(バイエル社(Bayer AG))がある。環状ポリオレフィン共重合体の例は、トパス(TOPAS)(登録商標)(チコナエンジニアリングポリマー社(Ticona Engineering Polymers)、米国ケンタッキー州フローレンス市)がある。一酸化炭素放出の比率は、これらのポリマーのロットもしくは製造の違いによって変わる可能性があり、そして特定の試料は全く放出を起こさず、または検出水準を下回る放出を起こす可能性がある。放出の量は、慣用のガスクロマトグラフィーによって容易に測定される。アクリル樹脂およびポリカーボネートプラスチックスについてのこれらの測定の例が、ロドキー(Rodkey, F. L.)らによって「アクリル樹脂およびポリカーボネートプラスチックスからの一酸化炭素の遊離」("Release of carbon monoxide from acrylic and polycarbonate plastics,")、応用生理学誌(J. Appl. Physiol.)、1969年10月、第27巻、第4号、p.554−555に与えられている。
【0019】
酸化窒素(NO)の検出用に設計された、本発明の範囲に入る装置には、NOとの結合によって検出可能な、また好ましくは測定可能な変化を受ける種類の知られた如何なるNO結合剤をもセンサーとして用いることができる。これらの結合剤の例は、上記の[背景技術]の中で引用した文献中に開示されている。これらの例は、シトクロムC、いずれかの酸化状態にあるヘモグロビン、いずれかの酸化状態にあるミオグロビン、ポルフィリン基を含むタンパク質、色素でラベルしたいずれかの前記のタンパク質の類似物、およびいずれかの前記のタンパク質のNOと結合する断片を含んでいる。結合剤は担持基質に取り付けることができ、それで結合剤を固定化し、けれども結合剤が、接触によって結合するために気体混合物との接近の機会があるようにする。ゾルゲル、有機基修飾ケイ酸塩(ormosils)、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、およびポリジメチルシロキサンが例示される。
【0020】
検体と結合する際にセンサーが受けた変化は、標準と比較して、もしくは比較なしに、また更正をして、もしくは更正なしで、機械による読み取りによってのみ検出可能なものか、もしくは肉眼で検出可能なもの、であることができる。吸光度、透過率、反射率、蛍光性、および化学ルミネセンスなどでの変化を含む、光学的に検出可能な変化が好ましい。変化を光学的吸光度で示すセンサーと基質は特に好ましい。電気的性質の変化もまた、用いることができ、電導性、インピーダンス、電流、および電位などである。
【0021】
本発明による装置は広範囲な構成と配置が可能であるが、全体としての発明は特定の実施態様の詳細な検討によって理解することができる。4つのそのような実施態様を図面に示した。
【実施例】
【0022】
図1の透視図中に示された装置11はプラスチック筐体12を有し、それは拡がった端部13を含むように形作られており、これによって使用者は装置を親指と人差し指の間に保持することができ、一方、機能的な構成要素は胴体14中に備わっている。使用者が息を吹き込む注入口および置き換えられた空気が抜け出る排気口が装置の端部15に位置しているが、この図では見えない。貯蔵および輸送の間には、これらの口は容易に取り外し可能な栓16、17で塞がれている。穿孔可能なアルミニウム処理したテープの使用が栓の代替となり、テープは使用の直前に使用者によって穴を開けることができる。装置の上側表面の窓18は、光学的検出用の基準とともにセンサーへの接近の機会を与え、そして紙または箔のカバー21、22、23が上部の表面に接着剤で付けられており、その目的は、保護または製造者のロゴ、連続番号、もしくは有効期限などのしるしの表示のいずれかである。
【0023】
図2は、カバーと栓を取り除いた上面図である。筐体が透明なので、装置の内部構造を観ることができる。注入口24と排気口25が見え、内部を区画と流路に分割するひと続きの仕切りも見える。外側の仕切り26、27、28は気体を遮断する仕切りであり、装置の筐体の2つの平らな部分(該図面の平面に平行な)の間の距離の全体に及んでいる。これらの仕切りは気体試料の通過を遮断し、従って試料を装置の機能性の領域に保持する。中央の仕切り29は、筐体の2つの平らの部分の1つのみに結合されており、そして他方では隙間を残している。この隙間により、中央の仕切り29は試料気体の通過を部分的にだけ遮断し、センサーを収容する装置の中心の領域30へと気体を通過させる。内部の空洞と流路は乾燥剤31で満たされており、装置の内部の湿度を調節している。3A分子篩はこの目的に有効な乾燥剤の一例である。センサー32は中心の領域30に取り付けられており、参照窓33の近くである。装置を通る気体試料の進行の経路は、従って注入口24から始まり、装置の外側の壁と外側の仕切り28の間の周囲の流路34を通って、次いで開口部35を通って、中心領域30を取り囲む中間領域36の中へ、そして次いで中央の仕切り29を越えて(示されていないが、隙間を通して)中心領域30へと通り、ここで試料はセンサー32と接触する。試料によって置き換えられた空気は、外側の仕切り26中の開口部37を通して、そしてそこから排気口25を通して排出される。
【0024】
一酸化炭素スカベンジャー41は、注入口24に隣接する注入領域に保持され、そして、スカベンジャーがセンサー32を取り囲む領域から有意な量の酸化窒素を引き出してしまうことを防ぐように、センサーから十分に離されている。この場合の分離は、周囲の流路34、開口部35、および中間領域36の中に乾燥剤粒子を通して伸びている拡散経路によって確立されている。一酸化炭素を遊離する可能性のある筐体の表面は、平らな上部の、そして下部の部分の表面(図面の平面に平行である)であり、また種々の仕切りおよび筐体の周囲のそれぞれの壁である。あるいは、スカベンジャーは排気口25に隣接する排気領域中に保持することができ、または注入と排気の領域の両方に保持することもできる。
【0025】
スカベンジャーがセンサーから検体を引き離すことを防ぐ、または少なくともこの効果を最小化する別の1つの配置が図3に示されている。この配置では、スカベンジャー41は外側の仕切り26、27、28の外側に配置されており、そしてオリフィス42がスカベンジャー41とセンサー32の間の気体の拡散速度を制限している。また別の配置が図4に示されており、ここでは図3のオリフィス42が膜44によって置き換えられており、膜は透過性ではあるが、しかしながら干渉を最小化する、または防ぐのに十分な程度の低い速度でのみの拡散を可能にする。更に他の代替案が図5に示されており、ここではスカベンジャー46が中心領域30の中に、センサーと極く接近して配置されているが、しかしながら全ての側面を多孔質の被覆47で被覆されており、それが図4の膜44と同様の仕方で拡散を制限する。拡散を制限する膜および被覆は、当技術分野において知られている。
【0026】
喘息を患っている人用に設計された分析器では、本発明による一酸化炭素スカベンジャーの組み込みが、これらの分析器に、長い貯蔵寿命と酸化窒素に対する約1ppb〜約300ppbのように低い検出水準の持続を与える。鼻からの気体または大気または産業上の気体などの他の気体中の酸化窒素の量を検出する分析器では、酸化窒素を100ppm以下の、または1000ppm以下の水準で検出することを求めることができる。これらの検出器の貯蔵寿命は、本発明の実施によって同様に延長することができ、またその検出感度も同様に維持することができる。
【0027】
前述の内容は、主に説明を目的として提供されたものである。本発明の範囲の中にありながらの、物質および構成における更なる変化は、当業者には容易で明らかであろう。
【0028】
本発明の要点は下記の通りである。
(1)気体状試料中の気体検体の検出用の装置であって、該装置はセンサーを含み、該センサーは、該検体および一酸化炭素の両方と結合し、また該検体と結合したときに検出可能な変化を受け、該センサーは、一酸化炭素を遊離する物質によって作られている、または更に一酸化炭素を遊離する物質を保持している筐体中に保持されており、該装置が該筐体中に保持された一酸化炭素スカベンジャーを更に含んでいる、または該筐体を入れている包装内に一酸化炭素スカベンジャーを含んでいることを特徴とする装置。
(2)前記一酸化炭素スカベンジャーが、前記スカベンジャー、前記センサーおよび前記一酸化炭素を遊離する物質の間での気体の拡散を可能にする配置で、前記センサーおよび前記一酸化炭素を遊離する物質と連通していることを特徴とする前記(1)の装置。
(3)前記スカベンジャーによって引き起こされる酸化窒素の検出でのばらつきが、酸化窒素の1ppbおよび検出された酸化窒素の量の10%の大きい方よりも小さいように、前記一酸化炭素スカベンジャーが前記センサーから十分に空間的に離れた局部的な領域に隔離されていることを特徴とする前記(2)の装置。
(4)前記スカベンジャーによって引き起こされる酸化窒素の検出でのばらつきを、酸化窒素の1ppbおよび検出された酸化窒素の量の10%の大きい方未満に制限する流動を制限するオリフィスによって、前記一酸化炭素スカベンジャーが前記センサーから隔てられていることを特徴とする前記(2)の装置。
(5)前記スカベンジャーによって引き起こされる酸化窒素の検出でのばらつきを、酸化窒素の1ppbおよび検出された酸化窒素の量の10%の大きい方未満に制限する拡散を低下させる膜によって、前記一酸化炭素スカベンジャーが前記センサーから隔てられていることを特徴とする前記(2)の装置。
(6)前記一酸化炭素スカベンジャーが、一酸化炭素の酸化を起こす金属または金属酸化物であることを特徴とする前記(1)の装置。
(7)前記一酸化炭素スカベンジャーが、一酸化炭素の酸化を起こす遷移金属酸化物であることを特徴とする前記(1)の装置。
(8)前記一酸化炭素スカベンジャーが、二酸化マンガン、酸化第二銅、および酸化ニッケル、およびそれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする前記(1)の装置。
(9)前記一酸化炭素スカベンジャーが、二酸化マンガンおよび酸化第二銅の混合物であることを特徴とする前記(1)の装置。
(10)前記一酸化炭素を遊離する物質が前記筐体に組み込まれた重合体物質であることを特徴とする前記(1)の装置。
(11)前記重合体物質が、アクリル樹脂およびポリカーボネートからなる群から選ばれることを特徴とする前記(10)の装置。
(12)前記重合体物質が、アクリル樹脂であることを特徴とする前記(10)の装置。
(13)前記センサーが、ゾルゲル基質中に封入されたシトクロムCであることを特徴とする前記(1)の装置。
(14)前記一酸化炭素スカベンジャーが粒状の固体であり、前記重合体物質の100質量部当たりスカベンジャーが約0.005〜約0.3質量であることを特徴とする前記(10)の装置。
(15)前記一酸化炭素スカベンジャーが粒状の固体であり、前記重合体物質の100質量部当たりスカベンジャーが約0.01〜約0.1質量であることを特徴とする前記(10)の装置。
(16)前記局部的な領域が、前記センサーから約3mm〜約300mmにあることを特徴とする前記(3)の装置。
(17)前記局部的な領域が、前記センサーから約10mm〜約100mmにあることを特徴とする前記(3)の装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体状試料中の気体検体の検出用の装置であって、該装置はセンサーを含み、該センサーは、該検体および一酸化炭素の両方と結合し、また該検体と結合したときに検出可能な変化を受け、該センサーは、一酸化炭素を遊離する物質によって作られている、または更に一酸化炭素を遊離する物質を保持している筐体中に保持されており、該装置が該筐体中に保持された一酸化炭素スカベンジャーを更に含んでいる、または該筐体を入れている包装内に一酸化炭素スカベンジャーを含んでいることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記一酸化炭素スカベンジャーが、前記スカベンジャー、前記センサーおよび前記一酸化炭素を遊離する物質の間での気体の拡散を可能にする配置で、前記センサーおよび前記一酸化炭素を遊離する物質と連通していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記スカベンジャーによって引き起こされる酸化窒素の検出でのばらつきが、酸化窒素の1ppbおよび検出された酸化窒素の量の10%の大きい方よりも小さいように、前記一酸化炭素スカベンジャーが前記センサーから十分に空間的に離れた局部的な領域に隔離されていることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記スカベンジャーによって引き起こされる酸化窒素の検出でのばらつきを、酸化窒素の1ppbおよび検出された酸化窒素の量の10%の大きい方未満に制限する流動を制限するオリフィスによって、前記一酸化炭素スカベンジャーが前記センサーから隔てられていることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記スカベンジャーによって引き起こされる酸化窒素の検出でのばらつきを、酸化窒素の1ppbおよび検出された酸化窒素の量の10%の大きい方未満に制限する拡散を低下させる膜によって、前記一酸化炭素スカベンジャーが前記センサーから隔てられていることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記一酸化炭素スカベンジャーが、一酸化炭素の酸化を起こす金属または金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記一酸化炭素スカベンジャーが、一酸化炭素の酸化を起こす遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記一酸化炭素スカベンジャーが、二酸化マンガン、酸化第二銅、および酸化ニッケル、およびそれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記一酸化炭素スカベンジャーが、二酸化マンガンおよび酸化第二銅の混合物であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記一酸化炭素を遊離する物質が前記筐体に組み込まれた重合体物質であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記重合体物質が、アクリル樹脂およびポリカーボネートからなる群から選ばれることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記重合体物質が、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項13】
前記センサーが、ゾルゲル基質中に封入されたシトクロムCであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記一酸化炭素スカベンジャーが粒状の固体であり、前記重合体物質の100質量部当たりスカベンジャーが約0.005〜約0.3質量であることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項15】
前記一酸化炭素スカベンジャーが粒状の固体であり、前記重合体物質の100質量部当たりスカベンジャーが約0.01〜約0.1質量であることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項16】
前記局部的な領域が、前記センサーから約3mm〜約300mmにあることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項17】
前記局部的な領域が、前記センサーから約10mm〜約100mmにあることを特徴とする請求項3記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−18181(P2012−18181A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−220279(P2011−220279)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【分割の表示】特願2008−535753(P2008−535753)の分割
【原出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(511240221)エアロクライン アクティエボラーグ (4)
【Fターム(参考)】